特許第6808250号(P6808250)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6808250
(24)【登録日】2020年12月11日
(45)【発行日】2021年1月6日
(54)【発明の名称】屋根遮熱構造及び屋根遮熱工法
(51)【国際特許分類】
   E04D 3/00 20060101AFI20201221BHJP
【FI】
   E04D3/00 D
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2019-3456(P2019-3456)
(22)【出願日】2019年1月11日
(65)【公開番号】特開2020-111967(P2020-111967A)
(43)【公開日】2020年7月27日
【審査請求日】2019年8月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】519012448
【氏名又は名称】プロックスマテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099508
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 久
(74)【代理人】
【識別番号】100182567
【弁理士】
【氏名又は名称】遠坂 啓太
(74)【代理人】
【識別番号】100197642
【弁理士】
【氏名又は名称】南瀬 透
(72)【発明者】
【氏名】井上 哲一
(72)【発明者】
【氏名】井上 一馬
【審査官】 瓦井 秀憲
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−353811(JP,A)
【文献】 特開2009−079448(JP,A)
【文献】 特開2018−105002(JP,A)
【文献】 特開2008−127871(JP,A)
【文献】 特開平10−280577(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2017/0051502(US,A1)
【文献】 米国特許第09580912(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 3/00
E04B 1/76− 1/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
折板と、前記折板を支持するため前記折板の下面側に前記折板の流れ方向と交差する方向に配置された複数の梁材と、を備えた折板屋根において、
所定距離を隔てて隣り合う前記梁材の間であって前記折板の山部の下方に前記折板の流れ方向と平行をなす姿勢で且つ両端部をそれぞれ前記折板の山部の下方の前記梁材の上面に載置した状態で所定距離を隔てて配列された複数の支持部材と、
前記支持部材の両端部を前記梁材に係止する係止手段と、
前記支持部材の上面に載った状態で、複数の前記支持部材が配列された領域を面状に閉塞するように敷設された遮熱シートと、を備えた屋根遮熱構造。
【請求項2】
折板と、前記折板を支持するため前記折板の下面側に前記折板の流れ方向と交差する方向に配置された複数の梁材と、を備えた折板屋根において、
所定距離を隔てて隣り合う前記梁材の間であって前記折板の山部の下方に前記折板の流れ方向と平行をなす姿勢で且つ両端部をそれぞれ前記折板の山部の下方の前記梁材の上面に載置した状態で所定距離を隔てて複数の支持部材を配列する工程と、
前記支持部材の両端部を前記梁材に係止する工程と、
前記支持部材の上面に載った状態で、複数の前記支持部材が配列された領域を面状に閉塞するように遮熱シートを敷設する工程と、を備えた屋根遮熱工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、折板屋根の建物並びにスレート屋根の建物における屋根遮熱構造及び屋根遮熱工法に関する。
【背景技術】
【0002】
折板屋根の建物における屋根の断熱技術や遮熱技術については、従来、様々な構造、機能を有するものが提案されているが、本発明に関連する従来技術として、例えば、特許文献1に記載された「屋根遮熱構造及びその形成方法」がある。
【0003】
特許文献1に記載された屋根遮熱構造は、並設された複数の小梁の間に梁配置方向と交差して架け渡され、複数の小梁に取り付けられた複数の折板からなる折板屋根の内側の梁上面側に並置された複数の支持部材と、小梁と支持部材に周囲を載置した一枚ずつからなり、折板との間に空間を確保した状態でそれぞれが支持部材に固着され、折板から建物内部へ輻射熱を遮るシート状遮熱部材と、を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−155507号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された「屋根遮熱構造」は、その施工工程において、小梁の上面にタイトフレームを取り付け固着するとき、小梁の上面に、所定間隔で、且つ、両端をそれぞれ小梁の側辺から突出させてフラットバーを溶接しなければならないので、施工に手間を要する。
【0006】
また、前記「屋根遮熱構造」を施工する場合、折板をタイトフレームに取り付ける前に、遮熱シートが固着された支持部材をフラットバーに取り付ける必要があるため、既設の建物の屋根に施工することが困難である。
【0007】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、既設の建物の屋根に対して施工することが可能であり、施工も容易な屋根遮熱構造及び屋根遮熱工法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る第一の屋根遮熱構造は、
折板と、前記折板を支持するため前記折板の下面側に前記折板の流れ方向と交差する方向に配置された複数の梁材と、を備えた折板屋根において、
所定距離を隔てて隣り合う前記梁材の間であって前記折板の山部の下方に前記折板の流れ方向と平行をなす姿勢で且つ両端部をそれぞれ前記折板の山部の下方の前記梁材の上面に載置した状態で所定距離を隔てて配列された複数の支持部材と、
前記支持部材の両端部を前記梁材に係止する係止手段と、
前記支持部材の上面に載った状態で、複数の前記支持部材が配列された領域を面状に閉塞するように敷設された遮熱シートと、を備えたことを特徴とする。
【0009】
次に、本発明に係る第二の屋根遮熱構造は、
折板と、前記折板を支持するため前記折板の下面側に前記折板の流れ方向と交差する方向に配置された複数の梁材と、を備えた折板屋根において、
所定距離を隔てて隣り合う前記梁材の間であって前記折板の山部の下方に前記折板の流れ方向と平行をなす姿勢で且つ両端部をそれぞれ前記折板の山部の下方の前記梁材の上面に載置した状態で所定距離を隔てて配列された複数の支持部材と、
前記支持部材の両端部を前記梁材に係止する係止手段と、
複数の前記支持部材が配列された領域を面状に閉塞するように前記支持部材の下面側に敷設された遮熱シートと、
前記遮熱シートを前記支持部材に固着する固着手段と、を備えたことを特徴とする。
【0010】
次に、本発明に係る第三の屋根遮熱構造は、
スレート板と、前記スレート板を支持するため前記スレート板の下面側に配置された複数の母屋材と、を備えたスレート屋根において、
複数の前記母屋材が配列された領域を面状に閉塞するように前記母屋材の下面側に敷設された遮熱シート材と、
前記遮熱シートを前記母屋材に固着する固着手段と、を備えたことを特徴とする。
【0011】
前記屋根遮熱構造においては、前記支持部材は、バー材、ワイヤー若しくはケーブルを使用することができる。
【0012】
前記屋根遮熱構造においては、前記係止手段は、前記梁材の一部を把持するクリップと、前記クリップと前記支持部材とを締結する結束バンドを使用することができる。
【0013】
前記屋根遮熱構造においては、前記固着手段は、両面粘着テープ(若しくは接着剤)とビスを使用することができる。
【0014】
次に、本発明に係る第一の屋根遮熱工法は、
折板と、前記折板を支持するため前記折板の下面側に前記折板の流れ方向と交差する方向に配置された複数の梁材と、を備えた折板屋根において、
所定距離を隔てて隣り合う前記梁材の間であって前記折板の山部の下方に前記折板の流れ方向と平行をなす姿勢で且つ両端部をそれぞれ前記折板の山部の下方の前記梁材の上面に載置した状態で所定距離を隔てて複数の支持部材を配列する工程と、
前記支持部材の両端部を前記梁材に係止する工程と、
前記支持部材の上面に載った状態で、複数の前記支持部材が配列された領域を面状に閉塞するように遮熱シートを敷設する工程と、を備えたことを特徴とする。
【0015】
次に、本発明に係る第二の断熱屋根工法は、
折板と、前記折板を支持するため前記折板の下面側に前記折板の流れ方向と交差する方向に配置された複数の梁材と、を備えた折板屋根において、
所定距離を隔てて隣り合う前記梁材の間であって前記折板の山部の下方に前記折板の流れ方向と平行をなす姿勢で且つ両端部をそれぞれ前記折板の山部の下方の前記梁材の上面に載置した状態で所定距離を隔てて複数の支持部材を配列する工程と、
前記支持部材の両端部を前記梁材に係止する工程と、
複数の前記支持部材が配列された領域を面状に閉塞するように前記支持部材の下面側に遮熱シートを敷設する工程と、
前記遮熱シートを前記支持部材に固着する工程と、を備えたことを特徴とする。
【0016】
次に、本発明に係る第三の断熱屋根工法は、
スレート板と、前記スレート板を支持するため前記スレート板の下面側に配置された複数の母屋材と、を備えたスレート屋根において、
複数の前記母屋材が配列された領域を面状に閉塞するように前記母屋材の下面側に遮熱シートを敷設する工程と、
前記遮熱シートを前記母屋材に固着する工程と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明により、既設の建物の屋根に対して施工することが可能であり、施工も容易な屋根遮熱構造及び屋根遮熱工法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の第一の実施形態である屋根遮熱構造を示す一部省略垂直断面図である。
図2図1に示す屋根遮熱構造の施工工程を示す一部省略垂直断面図である。
図3図2中の矢線Aで示す領域の一部省略拡大図である。
図4図2中の矢線B方向から見た一部切欠平面図である。
図5】本発明の第二の実施形態である屋根遮熱構造を示す一部省略垂直断面図である。
図6】本発明の第三の実施形態である屋根遮熱構造を示す一部省略垂直断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図1図6に基づいて本発明の実施形態である屋根遮熱構造100,200,300並びにその施工法について説明する。
【0020】
初めに、図1図4に基づいて、本発明の第一の実施形態である屋根遮熱構造100並びにその施工法について説明する。
【0021】
図1図4に示すように、屋根遮熱構造100は、折板10と、折板10を支持するため折板10の下面10b側に折板10の流れ方向Fと交差する方向に配置された複数の梁材11と、を備えた折板屋根13に施工されたものである。梁材11は、ウェブ11bと、ウェブ11bの上下に形成されたフランジ11fとを有するH型鋼が使用されている。
【0022】
屋根遮熱構造100は、所定距離を隔てて隣り合う梁材11の間であって折板10の山部10aの下方に折板10の流れ方向Fと平行をなす姿勢で、且つ、両端部12bをそれぞれ折板10の山部10aの下方の梁材11の上面11aに載置した状態で所定距離を隔てて配列された複数の支持部材12と、支持部材12の両端部12bを梁材11に係止する係止手段20(図3参照)と、支持部材12の上面12aに載った状態で複数の支持部材12が配列された領域を面状に閉塞するように敷設された遮熱シート14と、を備えている。
【0023】
ここで、図2図4に基づいて、屋根遮熱構造100の施工法について説明する。図2図4に示すように、折板10と、複数の梁材11と、を備えた折板屋根13において、所定距離を隔てて隣り合う梁材11の間であって折板10の山部10aの下方に、折板10の流れ方向Fと平行をなす姿勢で、且つ、両端部12bをそれぞれ折板10の山部10aの下方の梁材11の上面11aに載置した状態で所定距離を隔てて複数の支持部材12を配列する。
【0024】
本実施形態において、支持部材12は断面C字状のWバー材を使用しているが、これに限定するものではないので、その他の部材、例えば、ワイヤーやケーブルなどを使用することもできる。
【0025】
次に、図3図4に示すように、支持部材12の両端部12bを係止手段20により梁材11に係止する。これにより、支持部材12の両端部12bは梁材11の上面11aに固定される。本実施形態において、係止手段20は、梁材11の一部(フランジ11f)を把持するクリップ21と、クリップ21と支持部材12とを締結する結束バンド22を使用している。クリップ21は、ネグロス電工株式会社の商品名「FVラック(LF4)」を使用しているが、これに限定するものではない。
【0026】
この後、図1に示すように、支持部材12の上面12aに載った状態で、複数の支持部材12が配列された領域S(図4参照)を面状に閉塞するように遮熱シート14を敷設すると、屋根遮熱構造100が完成する。図1に示すように、遮熱シート14は、シート状のガラスファイバー14aの両面にアルミ箔14bが接着剤で貼着され、アルミ箔14bの表面には耐食コートが施された構造を有する。遮熱シート14は、株式会社ライフテックの商品名「サーモバリア」が好適であるが、これに限定するものではない。
【0027】
屋根遮熱構造100は、折板屋根13の下方側(建物の内側)から施工することができるので、既設の建物の屋根に対して容易に施工することが可能である。また、屋根遮熱構造100は、既設の建物の構造体に対して溶接や切削加工などを施す必要がないので、施工も容易であり、ビス穴などで建物の構造材を傷つけることもないので、テナント物件やリース物件でも施工可能である。さらに、屋根遮熱構造100は施工後の撤収も容易であるため、建物から退去する際などは容易に施工前の状態へ復帰させることができる。
【0028】
次に、図5に基づいて、本発明の第二の実施形態である屋根遮熱構造200について説明する。なお、屋根遮熱構造200において、図1に示す屋根遮熱構造100と共通する部分については、図1中の符号と同符号を付して説明を省略する。
【0029】
図5に示すように、屋根遮熱構造200は、折板10と、複数の梁材11と、を備えた折板屋根13において、支持部材12の両端部12bを係止手段20(図3参照)により梁材11に係止するところまでは、図1に示す屋根遮熱構造100と同様である。
【0030】
係止手段20により、支持部材12の両端部12bが梁材11の上面11aに固定されたら、複数の支持部材12が配列された領域を面状に閉塞するように支持部材12の下面12c側に遮熱シート14を敷設し、支持部材12の下面12cに貼着された粘着テープ(図示せず)に遮熱シート14の上面を貼着し、遮熱シート14の下面側から支持部材12に向かってビス30を螺着することによって遮熱シート14を支持部材12に固着している。ビス30は、一般に「ピアスシンワッシャー」などと呼称されているものが好適であるが、これに限定するものではない。
【0031】
屋根遮熱構造200は、折板屋根13の下方側(建物の内側)から施工することができるので、既設の建物の屋根に対して容易に施工することが可能である。また、既設の建物の構造体に対して溶接や切削加工などを施す必要がないので、施工も容易であり、ビス穴などで建物の構造材を傷つけることもないので、テナント物件やリース物件でも施工可能である。さらに、屋根遮熱構造100は施工後の撤収も容易であるため、建物から退去する際などは容易に施工前の状態へ復帰させることができる。
【0032】
次に、図6に基づいて、本発明の第三の実施形態である屋根遮熱構造300について説明する。なお、屋根遮熱構造300において、図1に示す屋根構造100と共通する部分については図1中の符号と同符号を付して説明を省略する。
【0033】
屋根遮熱構造300は、スレート板15と、スレート板15を支持するためスレート板15の下面側に配置された複数の母屋材16と、を備えたスレート屋根17において、複数の母屋材16が配列された領域を面状に閉塞するように母屋材16の下面16b側に敷設された遮熱シート14と、遮熱シート14を母屋材16に固着する固着手段と、を備えている。
【0034】
本実施形態において、固着手段は、母屋材16の下面16bと遮熱シート14の上面との間に介在する粘着テープ(図示せず)と、遮熱シート14の下面側から母屋材16に向かって螺着されるビス30を使用している。
【0035】
屋根遮熱構造300は、スレート屋根17の下方側(建物の内側)から施工することができるので、既設の建物の屋根に対して容易に施工することが可能である。また、既設の建物の構造体に対して溶接などを施す必要がないので、施工も容易である。
【0036】
なお、図1図6に基づいて説明した屋根遮熱構造100,200,300及びその施工方法は、本発明に係る屋根遮熱構造及び屋根遮熱工法を例示するものであり、本発明に係る屋根遮熱構造及び屋根遮熱工法は、前述した屋根遮熱構造100,200,300及びその施工方法に限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明に係る屋根遮熱構造及び屋根遮熱工法は、折板屋根の建物並びにスレート屋根の建物における屋根遮熱手段として建設業の分野において広く利用することができる。
【符号の説明】
【0038】
10 折板
10a 山部
10b 下面
11 梁材
11a 上面
11b ウェブ
11f フランジ
12 支持部材
12a 上面
12b 端部
12c 下面
13 折板屋根
14 遮熱シート
14a ガラスファイバー
14b アルミ箔
15 スレート板
16 母屋材
16b 下面
17 スレート屋根
20 係止手段
21 クリップ
22 結束バンド
30 ビス
100,200,300 屋根遮熱構造
F 流れ方向
S 領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6