特許第6808272号(P6808272)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6808272
(24)【登録日】2020年12月11日
(45)【発行日】2021年1月6日
(54)【発明の名称】広口容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 51/24 20060101AFI20201221BHJP
   B65D 43/08 20060101ALI20201221BHJP
   B65D 55/12 20060101ALI20201221BHJP
【FI】
   B65D51/24 200
   B65D43/08 100
   B65D55/12
【請求項の数】10
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-212875(P2016-212875)
(22)【出願日】2016年10月31日
(65)【公開番号】特開2018-39568(P2018-39568A)
(43)【公開日】2018年3月15日
【審査請求日】2019年5月31日
(31)【優先権主張番号】特願2016-169109(P2016-169109)
(32)【優先日】2016年8月31日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100076598
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 一豊
(74)【代理人】
【識別番号】100165607
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 一成
(74)【代理人】
【識別番号】100196690
【弁理士】
【氏名又は名称】森合 透
(72)【発明者】
【氏名】新渡戸 耕太
(72)【発明者】
【氏名】石塚 徹也
【審査官】 加藤 信秀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−196118(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0159536(US,A1)
【文献】 独国実用新案第29600635(DE,U1)
【文献】 特開2003−118763(JP,A)
【文献】 実開平01−137852(JP,U)
【文献】 実開平01−069744(JP,U)
【文献】 特開平09−124060(JP,A)
【文献】 特開2014−166864(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 51/24
B65D 43/08
B65D 55/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物が充填される広口状の容器本体(10)と、前記容器本体(10)の口筒部(11)に対して開閉自在に装着される蓋体(40)とを有する広口容器であって、
前記蓋体(40)が、前記口筒部(11)の周壁(12)に設けられたネジ(13)に螺合するネジ(38)を有する内蓋(30)と、該内蓋(30)の外側に回転可能に外挿されて成る外蓋(20)とを有して構成され、
前記外蓋(20)の天面には外蓋側透明領域(22)と素地色から成る外蓋側不透明領域(23)とが同じ大きさ且つ同形状を有して交互に配置されて成る外蓋側模様部(24)が天面中心の周りに全周にわたって形成され、前記内蓋(30)の天面には前記外蓋側不透明領域(23)と同じ素地色から成る内蓋側第1領域(32)と該内蓋側第1領域(32)とは異なる色で形成された内蓋側第2領域(33)とが前記外蓋側透明領域(22)及び前記外蓋側不透明領域(23)と同じ大きさ且つ同形状を有して交互に配置されて成る内蓋側模様部(34)が天面中心の周りに全周にわたって形成されており、
前記蓋体(40)を閉じた閉蓋状態では、前記外蓋側不透明領域(23)と前記外蓋側透明領域(22)を介して外部に表出される前記内蓋側第1領域(32)とにより蓋体(40)の天面中心の周りに全周にわたって前記素地色から成る一様な模様が形成され、前記蓋体(40)を開いた開蓋状態では、前記外蓋側不透明領域(23)と前記外蓋側透明領域(22)を介して外部に表出される前内蓋側第2領域(33)とにより蓋体(40)の天面中心の周りに全周にわたって前記外蓋側不透明領域(23)と前内蓋側第2領域(33)とが周方向に交互に配置されて成る模様が形成されることを特徴とする広口容器。
【請求項2】
外蓋側不透明領域(23)と内蓋側第1領域(32)とが同じ色又は柄で形成され、外蓋側不透明領域(23)と内蓋側第2領域(33)とが異なる色又は柄で形成されている請求項1記載の広口容器。
【請求項3】
外蓋側模様部(24)を構成する外蓋側透明領域(22)及び外蓋側不透明領域(23)と、内蓋側模様部(34)を構成する内蓋側第1領域(32)及び内蓋側第2領域(33)とが全て同じ形状で形成されている請求項1又は2に記載の広口容器。
【請求項4】
蓋体(40)の天面に形成される模様が渦巻き模様である請求項1乃至3のいずれか一項に記載の広口容器。
【請求項5】
外蓋(20)の周壁(25)と内蓋(30)の周壁(35)とが対向し合う一方の周壁(35)に凸部(37)が形成されており、他方の周壁(25)に前記凸部(37)が摺動可能な溝部(27)が形成されると共に該溝部(27)の周方向の長さ寸法(L1)よりも前記凸部(37)の長さ寸法(L2)が短く設定されている請求項1乃至4のいずれか一項に記載の広口容器。
【請求項6】
溝部(27)内に、凸部(37)の摺動を規制する規制凸部(28)が形成されている請求項5記載の広口容器。
【請求項7】
容器本体(10)側の口筒部(11)を形成する周壁(12)に本体側係止片(14)が突設され、これと対向する内蓋(30)の周壁(35)に、前記本体側係止片(14)を周方向に乗り越え可能な内蓋側係止片(39)が突設されている請求項1乃至6のいずれか一項に記載の広口容器。
【請求項8】
内蓋(30)側の内蓋側係止片(39)と容器本体(10)側の本体側係止片(14)との間の係合力が、前記内蓋(30)側の主凸部(37B)と前記外蓋(20)の規制凸部(28)との間の係合力よりも大きく設定されている請求項7記載の広口容器。
【請求項9】
外蓋(20)の周壁(25)の内面(25B)と、これと対向する内蓋(30)の周壁(35)の外面(35A)との一方に移動リブ(20a)が突設され、他方に周方向に移動しようとする前記移動リブ(20a)を拘束する拘束部(30c)と前記移動リブ(20a)の周方向への移動を規制する規制リブ(30d)とが設けられている請求項1乃至4のいずれか一項に記載の広口容器。
【請求項10】
拘束部(30c)は、一対の傾斜面と垂直面とを有して構成される傾斜リブ(30b)と、該傾斜リブ(30b)を周方向に乗り越えた移動リブ(20a)のさらなる移動を阻止するストッパリブ(30a)とにより構成される請求項9記載の広口容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓋体の開閉状態や不正開封を視覚的に把握し得る広口容器に関する。
【背景技術】
【0002】
保湿クリームやマッサージクリームといった比較的粘度の高い化粧料は、従来より広口状の容器本体と、この容器本体の口筒部に螺着される蓋体とを有して開閉可能に構成された広口容器(いわゆる「ジャー容器」)に充填された状態で販売されている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−195450号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の広口容器では、蓋体の閉塞が完全でなくても、見かけ上は蓋体が閉じているように見える場合が多い。そのため、使用者は、蓋体の開閉状態を一見して把握することができず、結局のところ、蓋体の開閉状態を手で操作して確認する必要があった。
【0005】
また従来の広口容器では、店頭に陳列されている状態においては、蓋体を開けて異物を混入することが比較的容易であることから、蓋体が不正に開封されたか否かを判別する機能を備えることが要求されている。
【0006】
本発明は、上記した従来技術における問題点を解消すべく、蓋体の開閉状態を視覚的に容易に把握することを可能にする機能、これに加えて不正開封判別機能を備えた広口容器を創出することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための手段のうち、本発明の主たる手段は、内容物が充填される広口状の容器本体と、容器本体の口筒部に対して開閉自在に装着される蓋体とを有する広口容器であって、
蓋体が、口筒部の周壁に設けられたネジに螺合するネジを有する内蓋と、内蓋の外側に回転可能に外挿されて成る外蓋とを有して構成され、
外蓋の天面には外蓋側透明領域と素地色から成る外蓋側不透明領域とが同じ大きさ且つ同形状を有して交互に配置されて成る外蓋側模様部が天面中心の周りに全周にわたって形成され、内蓋の天面には外蓋側不透明領域と同じ素地色から成る内蓋側第1領域と内蓋側第1領域とは異なる色で形成された内蓋側第2領域とが外蓋側透明領域及び外蓋側不透明領域と同じ大きさ且つ同形状を有して交互に配置されて成る内蓋側模様部が天面中心の周りに全周にわたって形成されており、
蓋体を閉じた閉蓋状態では、外蓋側不透明領域と外蓋側透明領域を介して外部に表出される内蓋側第1領域とにより蓋体の天面中心の周りに全周にわたって素地色から成る一様な模様が形成され、蓋体を開いた開蓋状態では、外蓋側不透明領域と外蓋側透明領域を介して外部に表出される内蓋側第2領域とにより蓋体の天面中心の周りに全周にわたって外蓋側不透明領域と内蓋側第2領域とが周方向に交互に配置されて成る模様が形成されることを特徴とする、と云うものである。
【0008】
本発明の主たる手段では、蓋体の天面の状態を、閉蓋状態と開蓋状態とで異なる模様とすることを達成し得る。
【0009】
本発明の他の手段は、上記本発明の主たる手段に、外蓋側不透明領域と内蓋側第1領域とが同じ色又は柄で形成され、外蓋側不透明領域と内蓋側第2領域とが異なる色又は柄で形成されている、との手段を加えたものである。
【0010】
上記手段では、閉蓋状態及び開蓋状態における蓋体の天面の状態を、色又は柄の異なりにより区別することを達成し得る。
【0011】
また本発明の他の手段は、上記いずれかの手段に、外蓋側模様部を構成する外蓋側透明領域及び外蓋側不透明領域と、内蓋側模様部を構成する内蓋側第1領域及び内蓋側第2領域とが全て同じ形状で形成されている、との手段を加えたものである。
【0012】
上記手段では、外蓋側透明領域の真下の位置に内蓋側第1領域又は内蓋側第2領域が位置するときには、これらを外蓋側透明領域を介して表出させ、外蓋側不透明領域の真下の位置に内蓋側第1領域又は内蓋側第2領域が位置するときには、これらを隠すことを達成し得る。
【0013】
また本発明の他の手段は、上記いずれかの手段に、蓋体の天面に形成される模様が渦巻き模様である、との手段を加えたものである。
【0014】
上記手段では、例えば開蓋状態のときに蓋体の天面に渦巻き模様を表出し得る。
【0015】
また本発明の他の手段は、上記いずれかの手段に、外蓋の周壁と内蓋の周壁とが対向し合う一方の周壁に凸部が形成されており、他方の周壁に凸部が摺動可能な溝部が形成されると共に溝部の周方向の長さ寸法よりも凸部の長さ寸法が短く設定されている、との手段を加えたものである。
【0016】
上記手段では、外蓋と内蓋とが互いに所定の範囲内で回転する関係を維持することが可能となり、閉蓋状態のときには蓋体の天面の状態を渦巻き模様が隠れる状態とし、開蓋状態のときには蓋体の天面の状態を渦巻き模様が表出される状態に確実に設定し得る。
【0017】
また本発明の他の手段は、上記の手段に、溝部内に、凸部の摺動を規制する規制凸部が形成されている、との手段を加えたものである。
【0018】
上記手段では、例えば外蓋側の規制凸部が内蓋側の副凸部と係合して回転規制状態に至り、外蓋と内蓋とは相対的に回転が規制されるようになるため、閉蓋状態においては、蓋体はその天面に渦巻き模様が表出されない閉蓋状態を維持し得るようになる。
【0019】
また本発明の他の手段は、上記いずれかの手段に、容器本体側の口筒部を形成する周壁に本体側係止片が突設され、これと対向する内蓋の周壁に、本体側係止片を周方向に乗り越え可能な内蓋側係止片が突設されている、との手段を加えたものである。
【0020】
上記手段では、閉蓋状態において、蓋体が容易に開き方向に回転することを防止し得る。
【0021】
また本発明の他の手段は、上記手段に、内蓋側の内蓋側係止片と容器本体側の本体側係止片との間の係合力が、内蓋側の主凸部と外蓋の規制凸部との間の係合力よりも大きく設定されている、との手段を加えたものである。
【0022】
上記手段では、これらの間の係合が解除されるときに、最初に内蓋側の主凸部と外蓋の規制凸部との間の係合が解除される仕組みとし得る。
【0023】
また本発明の他の手段は、上記いずれかの手段に、外蓋の周壁の内面と、これと対向する内蓋の周壁の外面との一方に移動リブが突設され、他方に周方向に移動しようとする移動リブを拘束する拘束部と移動リブの周方向への移動を規制する規制リブとが設けられている、との構成を加えたものである。
【0024】
この場合例えば、拘束部は、一対の傾斜面と垂直面とを有して構成される傾斜リブと、この傾斜リブを周方向に乗り越えた移動リブのさらなる移動を阻止するストッパリブとにより構成される、ものが好ましい。
【0025】
上記手段では、一度使用後の状態にとなった蓋体を元の使用前の状態に戻そうとしたときに、外蓋側の移動リブが傾斜リブを逆方向(閉じ方向)に乗り越えることを阻止して使用後の状態を維持し得る。
【発明の効果】
【0026】
本発明では、閉蓋状態のときには蓋体の天面に模様が形成されず、蓋体を開いた開蓋状態のときに蓋体の天面に模様が形成されるようになることから、蓋体の天面の状態を視覚的に確認することにより、蓋体の開閉状態を容易に把握することができる。
【0027】
また閉蓋状態のときには、外蓋と内蓋とが相対的に回転が規制される回転規制状態となることから、誤って蓋体が開き方向に回転してしまうことを防止できると共に、蓋体の天面については、閉塞状態を示す渦巻き模様が表出されない状態を維持し、誤って開蓋状態示す渦巻き模様が表出されてしまう状態となることを防止することができる。
【0028】
さらに店頭に陳列されている広口容器にあっては、悪戯等による不正開封操作が行われたか否かを蓋体の天面の状態を確認することにより容易に判別することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の第1実施例を示す広口容器の分解斜視図である。
図2】Aは外蓋の周壁の内面を部分的に示す拡大斜視図、BはAの2B−2B線における断面図、CはAの2C−2C線における断面図である。
図3】Aは内蓋の周壁の外面を部分的に示す拡大斜視図、BはAの3B−3B線における部分断面図、CはAの3C−3C線における部分断面図である。
図4】Aは閉蓋状態を示す広口容器の平面図、Bは開蓋体状態を示す広口容器の平面図である。
図5】Aは閉蓋状態を示す広口容器の平断面図、Bは開蓋体状態を示す広口容器の平断面図である。
図6】閉蓋状態から開蓋状態へ移行する過程を段階的に示す広口容器の部分的な拡大平断面図である。
図7】開蓋状態から閉蓋状態へ移行する過程を段階的に示す広口容器の部分的な拡大平断面図である。
図8】本発明の第2実施例を示す広口容器の半断面図である。
図9図8のIX−IX線における平断面であり、Aは蓋体を一度も開けたことのない使用前の状態、Bは少なくとも外蓋に対して開封操作が行われたことのある使用後の状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
図1は本発明の第1実施例を示す広口容器の分解斜視図、図2Aは外蓋の周壁の内面を部分的に示す拡大斜視図、図2B図2Aの2B−2B線における断面図、図2C図2Aの2C−2C線における断面図、図3Aは内蓋の周壁の外面を部分的に示す拡大斜視図、図3B図3Aの3B−3B線における部分断面図、図3C図3Aの3C−3C線における部分断面図である。
【0031】
図1に示すように本発明の広口容器1は、化粧用のクリームなどの内容物が充填される容器本体10と、容器本体10の口筒部11に開閉自在に装着される蓋体40とを有して構成されている。
【0032】
容器本体10は合成樹脂製から成る有底筒状の容器であり、その上部開口端に設けられた口筒部11の周壁12にはネジ(雄ネジ)13が形成され、このネジ13の下部側の位置で且つ軸対称となる2箇所の位置には本体側係止片14が刻設されている。
【0033】
蓋体40は、外蓋20とこの外蓋20の内側に相対的に回転可能に設けられた内蓋30とを有する二重蓋である。
一方の外蓋20は合成樹脂材料により有頂筒状に形成されており、その天面21には複数(第1実施例では6ヶ)の外蓋側透明領域22とこれと同数から成る外蓋側不透明領域23とが周方向に交互に設けられて成る外蓋側模様部24が形成されている。尚、外蓋側模様部24は、好ましくは外蓋20の素地色(例えば白色)で形成されており、図1及び図4A,Bでは分かりやすくするために外蓋側不透明領域23をハッチングを付して示している。外蓋側透明領域22及び外蓋側不透明領域23は同じ大きさ且つ同形状で形成されており、各形状は中心点から外縁部に向かう各辺を円弧状とする渦巻き形状として形成されている。この外蓋20では、外部から外蓋側透明領域22を介して外蓋20の内部の状態を把握することが可能であるが、外蓋側不透明領域23を介して内部の状態を把握することは不可能となっている。
【0034】
図2に示すように、外蓋20の周壁25の内面25Bの下端には段差部26が周設されており、軸対称となる2箇所の位置には周方向に長さ寸法L1を有して構成される溝部27が形成されている。溝部27は基部側を構成する大きめの副溝部27Aと、その下部側に細溝状に形成されて成る主溝部27Bとが一体に形成されたものである。主溝部27Bの一端には閉方向エッジ27aが設けられ、他方の端部には開方向エッジ27bが形成されている。この主溝部27B内の閉方向エッジ27aから開方向エッジ27b側に少し寄った位置には規制凸部28が突設されている。
【0035】
他方の内蓋30も合成樹脂材料によって外蓋20よりも一回り小さな大きさを有して有頂筒状に形成されている。内蓋30の周壁35の内面35Bには容器本体10側のネジ13に螺合可能なネジ(雌ネジ)38(図3B,C参照)が刻設され、その天面31には複数(第1実施例では6ヶ)の内蓋側第1領域32とこれと同数から成る内蓋側第2領域33とが周方向に交互に設けられて成る内蓋側模様部34が形成されている。内蓋側第1領域32及び内蓋側第2領域33は、上述した外蓋20側の外蓋側透明領域22及び外蓋側不透明領域23と同じ大きさ且つ同形状で形成されている。
内蓋側第1領域32と内蓋側第2領域33は互いに異なる色に着色されている。この第1実施例では、内蓋側第1領域32を内蓋30の素地色(例えば白色)で形成し、内蓋側第2領域33が他の色(例えば青色)に着色されている。この内蓋側第2領域33は、外蓋側不透明領域23とも異なる色である。尚、図1及び図4Bでは内蓋側第2領域33をグレーで示している。
【0036】
図3に示すように、内蓋30の周壁35の外面35Aの下端にはフランジ部36が周設されており、軸対称となる2箇所の位置には周方向に長さ寸法L2を有して構成される凸部37が形成されている。凸部37は基部を構成する大きめな副凸部37Aと、その下部側には細長凸状に形成されて成る主凸部37Bとが一体に形成されたものである。
また内蓋30の周壁35の内面35Bの下端で且つ軸対称となる2箇所の位置には、上述した容器本体10側の本体側係止片14と係合可能な内蓋側係止片39が夫々突設されている(後述の図5A,B参照)。
【0037】
内蓋30の外側に外蓋20を外挿させた状態の蓋体40を容器本体10の口筒部11に装着し、口筒部11のネジ13に内蓋30のネジ38を螺合させることにより、蓋体40で容器本体10の口筒部11を閉塞することができる。内蓋30の外側に外蓋20を外挿させた状態では、外蓋20側の段差部26が内蓋30のフランジ部36上に載置され、且つ外蓋20側の副溝部27A及び主溝部27B内に、この内蓋30側の副凸部37A及び主凸部37Bが夫々嵌合しており、この状態で外蓋20と内蓋30とは相対的に周方向に摺動することが可能となっている。ただし、内蓋30側の凸部37の長さ寸法L2は、外蓋20側の溝部27の長さ寸法L1よりも短く設定されており、凸部37は溝部27内を周方向に摺動可能となっているため、外蓋20と内蓋30とが相対的に周方向に摺動可能な範囲は溝部27の長さ寸法L1の範囲内である。
【0038】
次に広口容器の動作について説明する。
図4Aは閉蓋状態を示す広口容器の平面図、図4Bは開蓋体状態を示す広口容器の平面図、図5Aは閉蓋状態を示す広口容器の平断面図、図5Bは開蓋体状態を示す広口容器の平断面図、図6は閉蓋状態から開蓋状態へ移行する過程を段階的に示す広口容器の部分的な拡大平断面図、図7は開蓋状態から閉蓋状態へ移行する過程を段階的に示す広口容器の部分的な拡大平断面図である。
【0039】
図4Aに示すように、閉蓋状態では、外蓋側透明領域22の真下の位置に内蓋側第1領域32(白色)が、外蓋側不透明領域23(白色)の真下の位置に内蓋側第2領域33(青色)が夫々対向しており、内蓋側第1領域32(白色)がその上の外蓋側透明領域22を介して外部に表出される状態にある。すなわち。閉蓋状態では蓋体40の天面(外蓋20の天面21)は、外蓋側不透明領域23(白色)と内蓋側第1領域32(白色)とが周方向に交互に配置された状態にあるため、天面の全体が白色に見え、渦巻き模様が隠れた状態となっている。よって、使用者は蓋体40の天面の状態から一見して広口容器1が閉蓋状態にあると把握することができる。
【0040】
また図4Bに示すように、開蓋状態では、外蓋側透明領域22の真下の位置に内蓋側第2領域33(青色)が、外蓋側不透明領域23(白色)の真下の位置に内蓋側第1領域32(白色)が夫々対向しており、内蓋側第2領域33(青色)がその上の外蓋側透明領域22を介して外部に表出された状態にある。すなわち、開蓋状態では蓋体40の天面(外蓋20の天面21)は、外蓋側不透明領域23(白色)と外蓋側透明領域22を介して外部に表出される内蓋側第2領域33(青色)とにより形成され、外蓋側不透明領域23(白色)と内蓋側第2領域33(青色)とが周方向に交互に配置されることによる渦巻き模様が表出された状態にある。よって、使用者は蓋体40の天面の状態から一見して広口容器1が開蓋状態にあると把握することができる。
【0041】
図5A及び図6Aに示すように、閉蓋状態では、蓋体40は閉じ方向(図示時計回り方向)に回転し切っており、内蓋30の内蓋側係止片39が容器本体10側の本体側係止片14を閉じ方向に乗り越えて係止し合う係合状態にある。また内蓋30側の主凸部37Bが外蓋20側の主溝部27B内を摺動し、閉方向エッジ27aと規制凸部28と間に保持され、外蓋20と内蓋30とは相対的な回転が規制された回転規制状態にある。したがって、蓋体40は閉じ方向だけでなく、開き方向(図示反時計回り方向)にも回転し得ない回転停止の状態に設定されている。このため、蓋体40は、その天面に渦巻き模様が表出されない閉蓋状態を維持することができると共に、渦巻き模様が表出される開蓋状態に容易に移行することが不可能な状態にある。
【0042】
次に、蓋体40を閉蓋状態から開蓋状態にする過程について説明する。
図6Bに示すように、使用者が蓋体40を構成する外蓋20を把持しながら閉蓋状態から開き方向(反時計回り方向)回転させると、まず蓋体40は外蓋20のみが回転することになる。すなわち、内蓋30側の内蓋側係止片39と容器本体10側の本体側係止片14との間の内側の係合力は、内蓋30の主凸部37Bと外蓋20の規制凸部28との間の外側の係合力よりも大きく設定されており、これらの間の係合が解除されるときに、最初に外側の係合が解除される仕組みとなっている。
よって、外蓋20のみが回転する際には、外蓋20の規制凸部28が内蓋30側の主凸部37Bを開き方向に乗り越えることにより、外蓋20が回転規制状態から解放される。このとき、蓋体40の天面に渦巻き模様が表れ始める。また内蓋30は回転せず、内蓋30の内蓋側係止片39と容器本体10側の本体側係止片14との係合状態は維持されている。
【0043】
図6Cに示すように、さらに蓋体40を開き方向に回転させると、外蓋20のみが回転し、外蓋20の開方向エッジ27bが内蓋30の主凸部37Bに当接する。この状態からさらに蓋体40を開き方向に回転させると、外蓋20の開方向エッジ27bが内蓋30の主凸部37Bを開き方向に押圧するため、外蓋20と内蓋30とが一体となって回転する。
【0044】
図6Dに示すように、さらに蓋体40を開き方向に回転させると、内蓋30の内蓋側係止片39が容器本体10側の本体側係止片14を開き方向に乗り越える。これにより内蓋側係止片39と本体側係止片14との係合状態が解除され、広口容器1を開蓋状態とすることができる。この開蓋状態では、蓋体40の天面は、開蓋状態を示す渦巻き模様となっている。よって、使用者は蓋体40の天面の状態から広口容器1が開蓋状態にあると一見して把握することができる。
【0045】
そして、使用者はさらに蓋体40を開き方向に回転させることにより、蓋体40を口筒部11から螺脱させ、容器本体10内の内容物を取り出すことが可能となる。
【0046】
次に、蓋体40を開蓋状態から閉蓋状態にする過程について説明する。
使用者は、蓋体40を容器本体10の口筒部11に装着して閉じ方向に回して螺着させる。
図7Aに示すように、この螺着の最初の過程においては、外蓋20の規制凸部28が内蓋30側の主凸部37Bに当接し、続いて内蓋3の内蓋側係止片39が容器本体10側の本体側係止片14に当接する。
【0047】
図7Bに示すように、さらに蓋体40を閉じ方向に回転させると、外蓋20の規制凸部28が内蓋30側の主凸部37Bを閉じ方向に乗り越える。これにより、内蓋30の主凸部37Bが外蓋20側の主溝部27Bの閉方向エッジ27aと規制凸部28と間に保持される。
【0048】
図7Cに示すように、さらに蓋体40を閉じ方向に回転させると、外蓋20側の閉方向エッジ27aが内蓋30側の主凸部37Bを閉じ方向に押圧するため、外蓋20と内蓋30とが一体となって閉じ方向に回転する。そして、内蓋30の内蓋側係止片39が容器本体10側の本体側係止片14を閉じ方向に乗り越えることにより、上述した図5A及び図6A同様の閉蓋状態に至る。この状態では、蓋体40が容易に開き方向に回転することが防止され、閉蓋状態を維持することができる。
またこの状態では、蓋体40の天面は、渦巻き模様が隠れた状態にあるため、使用者は蓋体40の天面の状態から広口容器1が閉蓋状態にあると一見して把握することができる。
【0049】
次に、不正開封判別機能を備えた広口容器について説明する。図8は本発明の第2実施例を示す広口容器の半断面図、図9図8のIX−IX線における平断面であり、Aは蓋体を一度も開けたことのない使用前の状態、Bは少なくとも外蓋に対して開封操作が行われたことのある使用後の状態を示している。
第2実施例が上記第1実施例と異なる点は、外蓋20の周壁25と内蓋30の周壁35とが対向し合う部分の構成にあり、その他の構成は上記第1実施例と同様である。
【0050】
図8又は図9に示すように、外蓋20の周壁25の内面25Bには、径中心方向に突出する移動リブ20aが形成され、これに対向する内蓋30の周壁35の外面35Aには外径方向に突出するストッパリブ30aと傾斜リブ30bが周方向に隣接配置され、これらの間に拘束部30cが設けられている。傾斜リブ30bは、開き方向である一方に周方向に移動する移動リブ20aが乗り越え可能な傾斜面を有し、閉じ方向である他方に移動リブ20aの乗り越えを阻止する垂直面を備えた横断面略台形状からなる凸リブとして構成されている。またストッパリブ30aは、傾斜リブ30bを開き方向に乗り越えた移動リブ20aがさらに開き方向に移動しようとすること阻止するための凸リブである。また図9A,Bに示すように、傾斜リブ30bから閉じ方向(図示時計回り方向)に所定の間隔(又は所定の回転角度(図9では約30度))離れた位置には、規制リブ30dが突設されている。
【0051】
図9Aに示す使用前の状態では、閉じ方向に移動した外蓋20の移動リブ20aが内蓋30の規制リブ30dに当接しており、外蓋20がこれ以上の閉じ方向に回転することを規制している。そして、この使用前の状態は外蓋20及び内蓋30は共に閉蓋状態あり、蓋体40の天面は図4A同様となっている。すなわち、図4Aに示すように、蓋体40の天面(外蓋20の天面21)は、外蓋側不透明領域23(白色)と内蓋側第1領域32(白色)とが周方向に交互に配置された状態にあり、天面の全体が白色に見え、渦巻き模様が隠れた状態となっている。よって、使用者は蓋体40の天面の状態から、一見して過去に一度も開封されたことのない広口容器1であると把握することができる。
【0052】
図9Aに示す使用前の状態から外蓋20を把持して開き方向(図示反時計回り方向)に僅かに(第2実施例では約30度)回転させると、外蓋20のみが回転した使用後の状態となる(図9B参照)。すなわち、図9Bに示す使用後の状態は、内蓋30は元の閉じた状態にあり、外蓋20のみが開き方向に回転した状態である。使用前の状態から使用後の状態に至る過程では、外蓋20側の移動リブ20aが開き方向に移動して規制リブ30dから離れると共に、傾斜リブ20bを乗り越え、さらにストッパリブ30aに当接し、これらの間の拘束部30cによって離脱不能に拘束される。これにより、外蓋20と内蓋30とは一体化され、以後両者は一緒に回転することになる。この状態から、さらに外蓋20を把持して開き方向に回し、蓋体40(一体化された外蓋20と内蓋30)を口筒部11から螺脱させることにより、容器本体10内の内容物を取り出すことが可能となる。
【0053】
また使用後の状態に至った蓋体40の天面は図4B同様である。すなわち、蓋体40の天面(外蓋20の天面21)は、外蓋側不透明領域23(白色)と外蓋側透明領域22を介して外部に表出される内蓋側第2領域33(青色)とにより形成され、外蓋側不透明領域23(白色)と内蓋側第2領域33(青色)とが周方向に交互に配置されることによる渦巻き模様が表出された状態にある。
【0054】
しかも一度使用後の状態にとなった後に、把持した蓋体40を閉じ方向に回して使用前の状態に戻そうとしても、外蓋20側の移動リブ20aが傾斜リブ30bを逆方向(閉じ方向)に乗り越えることは不可能であり、移動リブ20aは拘束部30cにて離脱不能に拘束された使用後の状態が継続され、その結果蓋体40の天面も渦巻き模様が表出された状態(図4B)を維持される。
このように第2実施例に示す広口容器1は、一度使用後の状態にとなった後に再び使用前の状態に戻すことは不可能であるため、過去に開封操作が行われたことがある広口容器1であるか否かを容易に判別することができる。
よって、第2実施例に示す広口容器1では、開封操作の有無を容易且つ迅速に判別可能であることから、悪戯等による不正開封を抑止する効果が期待できる。あるいは不正開封操作が行われことのない広口容器1であるか、または不正開封操作が行われたことのある広口容器1であるか、について証明することもできる。
【0055】
以上、実施例に沿って本発明の構成とその作用効果について説明したが、本発明の実施の形態は上記実施例に限定されるものではない。
例えば、上記第1実施例では蓋体40の天面に異なる色による渦巻き模様が表出される場合を示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、その他の柄(例えば縞模様の柄、チェック柄、絵柄、記号による柄等)が表出される構成であっても良い。
【0056】
また上記第1、第2実施例では、閉蓋状態のときに渦巻き模様が隠れ、開蓋状態にすると渦巻き模様が表出する場合を示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、閉蓋状態のときに渦巻き模様が表出し、開蓋状態にすると渦巻き模様が隠れる構成であっても良い。
【0057】
また上記第1実施例では外蓋20の周壁25の内面25Bに溝部27を設け、これと対向する内蓋30の周壁35の外面35Aに凸部37を設けた場合を示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、外蓋20の周壁25の内面25Bに凸部を設け、これと対向する内蓋30の周壁35の外面35Aに溝部を設ける構成であっても良い。
【0058】
同様に、上記第2実施例では外蓋20の周壁25の内面25Bに移動リブ20aを設け、これと対向する内蓋30の周壁35の外面35Aにストッパリブ30a、傾斜リブ30b、拘束部30c及び規制リブ30dを設けた場合を示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、外蓋20の周壁25の内面25Bに係止リブ、傾斜リブ、拘束部及び規制リブを設け、これと対向する内蓋30の周壁35の外面35Aに移動リブを設ける構成であっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明の広口容器は、開閉状態を把握することを望む容器の分野における用途展開をさらに広い領域で図ることができる。
【符号の説明】
【0060】
1 : 広口容器
10 : 容器本体
11 : 口筒部
12 : 口筒部の周壁
13 : ネジ(雄ネジ)
14 : 本体側係止片
20 : 外蓋
20a : 移動リブ
21 : 外蓋の天面
22 : 外蓋側透明領域
23 : 外蓋側不透明領域
24 : 外蓋側模様部
25 : 周壁
25B : 周壁の内面
26 : 段差部
27 : 溝部
27A : 副溝部
27B : 主溝部
27a : 閉方向エッジ
27b : 開方向エッジ
28 : 規制凸部
30 : 内蓋
30a : ストッパリブ
30b : 傾斜リブ
30c : 拘束部
30d : 規制リブ
31 : 内蓋の天面
32 : 内蓋側第1領域
33 : 内蓋側第2領域
34 : 内蓋側模様部
35 : 周壁
35A : 周壁の外面
35B : 周壁の内面
36 : フランジ部
37 : 凸部
37A : 副凸部
37B : 主凸部
38 : ネジ(雌ネジ)
39 : 内蓋側係止片
40 : 蓋体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9