特許第6808319号(P6808319)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6808319有機電子輸送材料及びこれを用いた有機電界発光素子
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  • 特許6808319-有機電子輸送材料及びこれを用いた有機電界発光素子 図000081
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6808319
(24)【登録日】2020年12月11日
(45)【発行日】2021年1月6日
(54)【発明の名称】有機電子輸送材料及びこれを用いた有機電界発光素子
(51)【国際特許分類】
   H01L 51/50 20060101AFI20201221BHJP
   C09K 11/06 20060101ALI20201221BHJP
   C07F 9/6571 20060101ALN20201221BHJP
   C07F 9/6578 20060101ALN20201221BHJP
   C07F 9/6584 20060101ALN20201221BHJP
【FI】
   H05B33/22 B
   H05B33/14 B
   C09K11/06 690
   !C07F9/6571
   !C07F9/6578
   !C07F9/6584
【請求項の数】3
【全頁数】53
(21)【出願番号】特願2015-257138(P2015-257138)
(22)【出願日】2015年12月28日
(65)【公開番号】特開2017-120842(P2017-120842A)
(43)【公開日】2017年7月6日
【審査請求日】2018年10月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000207089
【氏名又は名称】大電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100168114
【弁理士】
【氏名又は名称】山中 生太
(74)【代理人】
【識別番号】100162259
【弁理士】
【氏名又は名称】末富 孝典
(74)【代理人】
【識別番号】100146916
【弁理士】
【氏名又は名称】廣石 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100177149
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 浩義
(74)【代理人】
【識別番号】100182903
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 武慶
(72)【発明者】
【氏名】林田 剛
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 正敬
(72)【発明者】
【氏名】小坪 正信
(72)【発明者】
【氏名】槙 泉
(72)【発明者】
【氏名】納戸 光治
【審査官】 高橋 純平
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−545630(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/080182(WO,A1)
【文献】 国際公開第2016/109274(WO,A1)
【文献】 中国特許出願公開第103183710(CN,A)
【文献】 特開2014−122218(JP,A)
【文献】 特表2014−529586(JP,A)
【文献】 特開平05−238138(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 51/50−51/56
H05B 33/00−33/28
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の式(1)で表される化合物を含むことを特徴とする有機電子輸送材料。
【化1】
式(1)において、
は1又は複数のアリール基及び1又は複数のヘテロアリール基の一方又は双方を有する原子団を表し、
がヘテロアリール基を有していない場合、Rにおいて、式(1)に示された一方のPから他方のPまでを原子間結合の個数が最少となるように辿ったときの原子間結合にベンゼン環を構成する炭素−炭素結合が含まれ、前記ベンゼン環の個数は2個以下であって、
がヘテロアリール基を有する場合、Rにおいて、式(1)に示された一方のPから他方のPまでを原子間結合の個数が最少となるように辿ったときの原子間結合に6員環の複素環を構成する結合が含まれ、
〜R17は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1以上12以下の直鎖又は分岐鎖アルキル基、直鎖又は分岐鎖フルオロアルキル基、アリール基、置換アリール基、ヘテロアリール基及び置換ヘテロアリール基からなる群より選択される原子又は原子団を表し、
式(1)において、
Xは、下記の式(2)〜(7)のいずれかで表される原子又は原子団であり、
【化2】
式(2)において、
21、R22は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1以上12以下の直鎖又は分岐鎖アルキル基、直鎖又は分岐鎖フルオロアルキル基、アリール基、置換アリール基、ヘテロアリール基及び置換ヘテロアリール基からなる群より選択される原子又は原子団を表し、
式(3)において、
31は、水素原子、炭素数1以上12以下の直鎖又は分岐鎖アルキル基、直鎖又は分岐鎖フルオロアルキル基、アリール基、置換アリール基、ヘテロアリール基及び置換ヘテロアリール基からなる群より選択される原子又は原子団を表す。
【請求項2】
陽極及び陰極からなる一対の電極と、前記一対の電極間に、該電極から直接又は他の薄膜層を介して正孔及び電子を注入可能に形成され、前記電極より注入された正孔と電子の再結合により電気的に励起され発光する発光層を備える有機電界発光素子において、下記の式(1)で表されるホスフィンオキシド誘導体を含み、前記発光層の陰極側に接するように配置される電子輸送層を有することを特徴とする有機電界発光素子。
【化3】
式(1)において、
は1又は複数のアリール基及び1又は複数のヘテロアリール基の一方又は双方を有する原子団を表し、
がヘテロアリール基を有していない場合、Rにおいて、式(1)に示された一方のPから他方のPまでを原子間結合の個数が最少となるように辿ったときの原子間結合にベンゼン環を構成する炭素−炭素結合が含まれ、前記ベンゼン環の個数は2個以下であって、
がヘテロアリール基を有する場合、Rにおいて、式(1)に示された一方のPから他方のPまでを原子間結合の個数が最少となるように辿ったときの原子間結合に6員環の複素環を構成する結合が含まれ、
〜R17は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1以上12以下の直鎖又は分岐鎖アルキル基、直鎖又は分岐鎖フルオロアルキル基、アリール基、置換アリール基、ヘテロアリール基及び置換ヘテロアリール基からなる群より選択される原子又は原子団を表し、
式(1)において、
Xは、下記の式(2)〜(7)のいずれかで表される原子又は原子団であり、
【化4】
式(2)において、
21、R22は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1以上12以下の直鎖又は分岐鎖アルキル基、直鎖又は分岐鎖フルオロアルキル基、アリール基、置換アリール基、ヘテロアリール基及び置換ヘテロアリール基からなる群より選択される原子又は原子団を表し、
式(3)において、
31は、水素原子、炭素数1以上12以下の直鎖又は分岐鎖アルキル基、直鎖又は分岐鎖フルオロアルキル基、アリール基、置換アリール基、ヘテロアリール基及び置換ヘテロアリール基からなる群より選択される原子又は原子団を表す。
【請求項3】
陽極及び陰極からなる一対の電極と、前記一対の電極間に、該電極から直接又は他の薄膜層を介して正孔及び電子を注入可能に形成され、前記電極より注入された正孔と電子の再結合により電気的に励起され発光する化合物と、下記の式(1)で表されるホスフィンオキシド誘導体を含む発光層を有することを特徴とする有機電界発光素子。
【化5】
式(1)において、
は1又は複数のアリール基及び1又は複数のヘテロアリール基の一方又は双方を有する原子団を表し、
がヘテロアリール基を有していない場合、Rにおいて、式(1)に示された一方のPから他方のPまでを原子間結合の個数が最少となるように辿ったときの原子間結合にベンゼン環を構成する炭素−炭素結合が含まれ、前記ベンゼン環の個数は2個以下であって、
がヘテロアリール基を有する場合、Rにおいて、式(1)に示された一方のPから他方のPまでを原子間結合の個数が最少となるように辿ったときの原子間結合に6員環の複素環を構成する結合が含まれ、
〜R17は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1以上12以下の直鎖又は分岐鎖アルキル基、直鎖又は分岐鎖フルオロアルキル基、アリール基、置換アリール基、ヘテロアリール基及び置換ヘテロアリール基からなる群より選択される原子又は原子団を表し、
式(1)において、
Xは、下記の式(2)〜(7)のいずれかで表される原子又は原子団であり、
【化6】
式(2)において、
21、R22は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1以上12以下の直鎖又は分岐鎖アルキル基、直鎖又は分岐鎖フルオロアルキル基、アリール基、置換アリール基、ヘテロアリール基及び置換ヘテロアリール基からなる群より選択される原子又は原子団を表し、
式(3)において、
31は、水素原子、炭素数1以上12以下の直鎖又は分岐鎖アルキル基、直鎖又は分岐鎖フルオロアルキル基、アリール基、置換アリール基、ヘテロアリール基及び置換ヘテロアリール基からなる群より選択される原子又は原子団を表す。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分解安定性が向上した有機電子輸送材料及びこれを用いた有機電界発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
陽極と陰極との間に発光性有機化合物層(有機エレクトロルミネッセンス層)が設けられた有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子(以下、「有機EL素子」という。)は、無機EL素子に比べ、直流低電圧での駆動が可能であり、輝度及び発光効率が高いという利点を有しており、次世代の表示装置として注目を集めている。最近になってフルカラー表示パネルが市販されるに至り、表示面の大型化、耐久性の向上等に向けて盛んに研究開発が行われている。
【0003】
有機EL素子は、注入した電子とホール(正孔)との再結合により有機化合物を電気的に励起し発光させる電気発光素子である。有機EL素子の研究は、有機積層薄膜素子が高輝度で発光することを示したコダック社のTangらの報告(非特許文献1参照)以来、多くの企業及び研究機関によりなされている。コダック社による有機EL素子の代表的な構成は、透明陽極であるITO(酸化インジウムスズ)ガラス基板上に正孔輸送材料であるジアミン化合物、発光材料であるトリス(8−キノリノラート)アルミニウム(III)、陰極であるMg:Alを順次積層したもので、10V程度の駆動電圧で約1000cd/cmの緑色発光が観測された。現在研究及び実用化がなされている積層型有機EL素子は、基本的にはこのコダック社の構成を踏襲している。
【0004】
有機EL素子は、その構成材料により、高分子系有機EL素子と低分子系有機EL素子に大別され、前者は湿式法により、後者は蒸着法等の乾式法又は湿式法により製造される。高分子系有機EL素子は、素子の作製に用いられる導電性高分子材料における正孔輸送特性と電子輸送特性とのバランスを取るのが困難であるため、近年では、電子輸送、正孔輸送及び発光の機能を分離した積層型低分子系有機EL素子が主流となりつつある。
【0005】
インクジェット法等の印刷技術を利用して製造される湿式法では、大面積を一度に塗布することが可能なため、大画面の素子でも容易に作製でき、生産性が高く、乾式法に変わる次世代の有機EL素子の製造法として期待されている。湿式法による積層型低分子系有機EL素子の製造法は2種類に大別され、1つは、下層を製膜後、熱や光により架橋や重合を行い不溶化し上層を製膜する方法、もう1つは、下層と上層で溶解性の大きく違う材料を用いる方法である。前者の方法は、材料の選択の幅が広い反面、架橋又は重合後、反応開始剤や未反応物を取り除くことが困難で耐久性に問題がある。後者の方法は、材料の選択が難しいが不溶化させる方法に比較し化学反応を伴わないため高純度で耐久性の高い素子の構築が可能になる。このような化学反応のリスクを考えると湿式による積層の方式は、材料の選択は難しいが溶解性の違いによる積層が適していると考えられる。しかし、溶解性の違いを利用した積層を難しくしている要因の1つに、導電性高分子やスピンコート可能な有機半導体の殆どが、トルエン、クロロホルム、テトラヒドロフラン等の比較的溶媒能の高い溶媒にしか溶けないことが挙げられる。多くの場合、積層型有機EL素子は、ITO等の透明な金属酸化物からなる陽極上に、P型有機半導体からなる正孔輸送層、発光層、N型有機半導体からなる電子輸送層を順次積層させることにより製造される。この場合、P型有機半導体高分子で正孔輸送層を製膜した後、同様の溶媒を用いてN型有機半導体高分子をスピンコートすると、下地の正孔輸送層が浸食を受けるため、平坦で欠陥の少ないPN界面を有する積層構造を形成できないという問題がある。特にインクジェット法を用いる場合には、溶媒が自然乾燥で除去されるため、正孔輸送層や発光層の浸食が激しくなり、実用上問題のないデバイス特性を得ることが著しく困難になるおそれがある。
【0006】
本発明者らは、湿式法有機ELの製造における上記のような問題を解決するために、優れた電子輸送特性及び電子注入特性を有するホスフィンオキシド誘導体に、電気陰性度の低い(1.6以下)金属を配位させることにより、電子輸送特性及び電子注入特性が更に向上すると共に耐久性が大幅に向上するという知見に基づき、アルコール可溶性のホスフィンオキシド誘導体と電気陰性度が1.6以下の金属とを含む電子輸送材料を開発した(特許文献1参照)。この材料を用いることにより、湿式法による電子輸送層の製膜にアルコールを使用することが可能になり、発光性高分子からなる発光層を損なうことなく電子輸送層を構築することが可能になった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−278376号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】C. W. Tang,S. A. Van Slyke著、「Organic electroluminescent diodes」、Applied Physics Letters(米国)、米国物理学会(The American Institute of Physics)、1987年9月21日、第51巻、第12号、p.913−915
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、金属によるドーピングを行わないホスフィンオキシド誘導体を、電子輸送材料又は発光層のホスト材料として有機EL素子に用いた際、非常に短寿命であり、このことがホスフィンオキシド誘導体の発光層への適用を困難にする一つの要因になっている。Linらは、密度汎関数法を用いた第一原理計算結果を元に、電子の注入を受けたアニオン状態におけるC−P結合の化学的不安定性が、電子輸送材料又は発光層のホスト材料に用いるホスフィンオキシド誘導体の不安定性の要因であることを報告した(Na Lin,Juan Qiao,Lian Duan,Haifang Li,Liduo Wang,and Yong Qiu,J. Phys. Chem. C,2012,116(36),pp 19451−19457)。
【0010】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、アニオン状態におけるC−P結合の化学的安定性を向上させることにより、安定性及び耐久性に優れる新規な有機電子輸送材料及びそれを用いた有機電界発光素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、かかる事情に鑑みて、アニオン状態におけるホスフィンオキシド誘導体のC−P結合の化学的安定性について、Linらによる密度汎関数法に基づく第一原理計算を行った結果、環状構造を有するジアリールホスフィンオキシド構造が、アニオン状態におけるC−P結合の化学的安定性を向上させる上で好適であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、前記目的に沿う本発明の第1の側面は、下記の式(1)で表される化合物を含むことを特徴とする有機電子輸送材料を提供することにより上記課題を解決するものである。
【0013】
【化1】
【0014】
式(1)において、
は1又は複数のアリール基及び1又は複数のヘテロアリール基の一方又は双方を有する原子団を表し、
がヘテロアリール基を有していない場合、Rにおいて、式(1)に示された一方のPから他方のPまでを原子間結合の個数が最少となるように辿ったときの原子間結合にベンゼン環を構成する炭素−炭素結合が含まれ、前記ベンゼン環の個数は2個以下であって、
がヘテロアリール基を有する場合、Rにおいて、式(1)に示された一方のPから他方のPまでを原子間結合の個数が最少となるように辿ったときの原子間結合に6員環の複素環を構成する結合が含まれ、
〜R17は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1以上12以下の直鎖又は分岐鎖アルキル基、直鎖又は分岐鎖フルオロアルキル基、アリール基、置換アリール基、ヘテロアリール基及び置換ヘテロアリール基からなる群より選択される原子又は原子団を表し、
【0016】
(1)において、
Xは、下記の式()〜()のいずれかで表される原子又は原子団であり、
【0017】
【化2】
【0018】
式()において、
21、R22は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1以上12以下の直鎖又は分岐鎖アルキル基、直鎖又は分岐鎖フルオロアルキル基、アリール基、置換アリール基、ヘテロアリール基及び置換ヘテロアリール基からなる群より選択される原子又は原子団を表し、
式()において、
31は、水素原子、炭素数1以上12以下の直鎖又は分岐鎖アルキル基、直鎖又は分岐鎖フルオロアルキル基、アリール基、置換アリール基、ヘテロアリール基及び置換ヘテロアリール基からなる群より選択される原子又は原子団を表す。
【0019】
本発明の第2の側面は、陽極及び陰極からなる一対の電極と、前記一対の電極間に、該電極から直接又は他の薄膜層を介して正孔及び電子を注入可能に形成され、前記電極より注入された正孔と電子の再結合により電気的に励起され発光する発光層を備える有機電界発光素子において、下記の式(1)で表されるホスフィンオキシド誘導体を含み、前記発光層の陰極側に接するように配置される電子輸送層を有することを特徴とする有機電界発光素子を提供することにより上記課題を解決するものである。
【0020】
【化3】
【0021】
式(1)において、
は1又は複数のアリール基及び1又は複数のヘテロアリール基の一方又は双方を有する原子団を表し、
がヘテロアリール基を有していない場合、Rにおいて、式(1)に示された一方のPから他方のPまでを原子間結合の個数が最少となるように辿ったときの原子間結合にベンゼン環を構成する炭素−炭素結合が含まれ、前記ベンゼン環の個数は2個以下であって、
がヘテロアリール基を有する場合、Rにおいて、式(1)に示された一方のPから他方のPまでを原子間結合の個数が最少となるように辿ったときの原子間結合に6員環の複素環を構成する結合が含まれ、
〜R17は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1以上12以下の直鎖又は分岐鎖アルキル基、直鎖又は分岐鎖フルオロアルキル基、アリール基、置換アリール基、ヘテロアリール基及び置換ヘテロアリール基からなる群より選択される原子又は原子団を表し、
【0023】
(1)において、
Xは、下記の式()〜()のいずれかで表される原子又は原子団であり、
【0024】
【化4】
【0025】
式()において、
21、R22は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1以上12以下の直鎖又は分岐鎖アルキル基、直鎖又は分岐鎖フルオロアルキル基、アリール基、置換アリール基、ヘテロアリール基及び置換ヘテロアリール基からなる群より選択される原子又は原子団を表し、
式()において、
31は、水素原子、炭素数1以上12以下の直鎖又は分岐鎖アルキル基、直鎖又は分岐鎖フルオロアルキル基、アリール基、置換アリール基、ヘテロアリール基及び置換ヘテロアリール基からなる群より選択される原子又は原子団を表す。
【0026】
本発明の第3の側面は、陽極及び陰極からなる一対の電極と、前記一対の電極間に、該電極から直接又は他の薄膜層を介して正孔及び電子を注入可能に形成され、前記電極より注入された正孔と電子の再結合により電気的に励起され発光する化合物と、下記の式(1)で表されるホスフィンオキシド誘導体を含む発光層を有することを特徴とする有機電界発光素子を提供することにより上記課題を解決するものである。
【0027】
【化5】
【0028】
式(1)において、
は1又は複数のアリール基及び1又は複数のヘテロアリール基の一方又は双方を有する原子団を表し、
がヘテロアリール基を有していない場合、Rにおいて、式(1)に示された一方のPから他方のPまでを原子間結合の個数が最少となるように辿ったときの原子間結合にベンゼン環を構成する炭素−炭素結合が含まれ、前記ベンゼン環の個数は2個以下であって、
がヘテロアリール基を有する場合、Rにおいて、式(1)に示された一方のPから他方のPまでを原子間結合の個数が最少となるように辿ったときの原子間結合に6員環の複素環を構成する結合が含まれ、
〜R17は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1以上12以下の直鎖又は分岐鎖アルキル基、直鎖又は分岐鎖フルオロアルキル基、アリール基、置換アリール基、ヘテロアリール基及び置換ヘテロアリール基からなる群より選択される原子又は原子団を表し、
【0030】
(1)において、
Xは、下記の式()〜()のいずれかで表される原子又は原子団であり、
【0031】
【化6】
【0032】
式()において、
21、R22は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1以上12以下の直鎖又は分岐鎖アルキル基、直鎖又は分岐鎖フルオロアルキル基、アリール基、置換アリール基、ヘテロアリール基及び置換ヘテロアリール基からなる群より選択される原子又は原子団を表し、
式()において、
31は、水素原子、炭素数1以上12以下の直鎖又は分岐鎖アルキル基、直鎖又は分岐鎖フルオロアルキル基、アリール基、置換アリール基、ヘテロアリール基及び置換ヘテロアリール基からなる群より選択される原子又は原子団を表す。
【発明の効果】
【0033】
本発明によると、アニオン状態におけるC−P結合の化学的安定性が高いので、安定性及び耐久性に優れる新規な有機電子輸送材料及びそれを用いた有機電界発光素子が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】本発明の第2の実施の形態に係る有機EL素子の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
【0036】
[第1の実施の形態]
本発明の第1の実施の形態に係る有機電子輸送材料(以下、単に「有機電子輸送材料」と略称する場合がある。)は、下記の式(1)で表される構造を有するホスフィンオキシド誘導体である。
【0037】
【化10】
【0038】
式(1)において、
は1又は複数のアリール基及び1又は複数のヘテロアリール基の一方又は双方を有し、任意の1又は複数の炭素原子上に下記の式(2)で表されるホスフィンオキシド基を有していてもよい原子団を表し、
〜Rは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1以上12以下の直鎖又は分岐鎖アルキル基、直鎖又は分岐鎖フルオロアルキル基、アリール基、置換アリール基、ヘテロアリール基及び置換ヘテロアリール基からなる群より選択される原子又は原子団を表し、
【0039】
【化11】
【0040】
式(2)において、
11〜R18は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1以上12以下の直鎖又は分岐鎖アルキル基、直鎖又は分岐鎖フルオロアルキル基、アリール基、置換アリール基、ヘテロアリール基及び置換ヘテロアリール基からなる群より選択される原子又は原子団を表し、
式(1)及び(2)において、
Xは、下記の式(3)〜(8)のいずれかで表される原子又は原子団であり、
【0041】
【化12】
【0042】
式(3)において、
21、R22は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1以上12以下の直鎖又は分岐鎖アルキル基、直鎖又は分岐鎖フルオロアルキル基、アリール基、置換アリール基、ヘテロアリール基及び置換ヘテロアリール基からなる群より選択される原子又は原子団を表し、
式(4)において、
31は、水素原子、炭素数1以上12以下の直鎖又は分岐鎖アルキル基、直鎖又は分岐鎖フルオロアルキル基、アリール基、置換アリール基、ヘテロアリール基及び置換ヘテロアリール基からなる群より選択される原子又は原子団を表す。
【0043】
有機電子輸送材料の具体例としては、下記の式で表される化合物が挙げられる。
【0044】
【化13】
【0045】
有機電子輸送材料は、任意の公知の方法を用いて合成することができるが、その具体例として、例えば、下記のスキーム1及び2に示す方法が挙げられる。
【0046】
スキーム1
【0047】
【化14】
【0048】
スキーム1は、公知のジアリールホスフィンオキシド化合物とハロゲン化アリールのカップリング反応を適用することができる。式(1)で表される化合物(上の式では、R〜Rが全て水素原子の場合を示している。)上記の一般式(9)で表される化合物と、上記の一般式(10)で表される化合物とを、溶媒(solvent)中、縮合触媒(catalyst)および/または塩基(base)の存在下で縮合(脱ハロゲン化水素反応)させることにより得ることができる。
【0049】
上の式では、化合物(10)が1分子当たり1つの脱離基Yを有する場合を示しているが、1分子当たり複数の脱離基Yを有していてもよい。ここで使用できる脱離基Yの具体例としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、トリフリル基(トリフルオロメタンスルホキシル基)、トシル基(トルエンスルホキシル基)等が挙げられる。
【0050】
上記の溶媒としては、炭素数1〜8のアルコール、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン、ピリジン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどが挙げられ、これらの中でも、収率の点で、DMSOが好ましい。
【0051】
上記の縮合触媒としては、例えば、酢酸パラジウム[Pd(OAc)2]、酢酸ニッケル[Ni(OAc)2]、およびPd(OAc)2−1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン[dppp]、Pd(OAc)2−1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン[dppe]、Pd(OAc)2−1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン[dppb]、Ni(OAc)2−dppe、Ni(OAc)2−dpppのような白金族元素とビスホスフィノアルカンとの錯化合物が挙げられる。これらの中でも、Pd(OAc)2、Pd(OAc)2−dpppおよびPd(OAc)2−dppbが収率の点から好ましい。
【0052】
その他、一般にクロスカップリングに使用されるテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)、[1,1'−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)等も使用可能である。
【0053】
触媒の使用量は、化合物4の1モルに対して0.005〜0.1モル程度である。
【0054】
上記の塩基は、縮合により生成されるハロゲン化水素を捕捉する機能を有する。このような塩基としては、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミンなどのトリアルキルアミンやN−エチルジイソプロピルアミン[DIEA]のような脂肪族第3級アミンやピリジン、N,N’−ジメチルアミノピリジン[DMAP]のような芳香族第3級アミンが挙げられ、これらの中でも、沸点の点で、DIEAおよびDMAPが好ましい。塩基の使用量は、生成するハロゲン化水素の理論量を捕捉するに十分な量、すなわち化合物4の1モルに対して、1.0〜2モル程度である。
【0055】
反応温度は、80℃から180℃で行うことが可能である。収率の観点から、100℃から160℃が好ましい。
【0056】
スキーム2
【0057】
【化15】
スキーム2は、広く知られる鈴木カップリングを使用する。鈴木カップリングの条件は、一般的に用いられる触媒、塩基、溶媒が使用できる。これらの詳細は、「Organic Syntheses via Boranes Vol. 2」(Akira Suzuki他著)等の成書に書かれているのでここでは省略する。また、鈴木カップリング以外でも根岸カップリング、熊田カップリング等のクロスカップリング反応は代替に使用できる。しかし、収率や操作の簡便さから鈴木カップリングが好ましい。
【0058】
[第2の実施形態:有機電界発光素子]
本発明の第2の実施の形態に係る有機電界発光素子の一例である有機EL素子1は、透明基板2の上に形成された陽極3と陰極7に挟まれるように積層された複数の有機化合物層(本実施の形態に係る有機EL素子1においては、陽極3側から順に、正孔輸送層4と、発光層5と、電子輸送層6)を有し、その全体が封止部材8で封止されている。
なお、以下の説明において用いられている「(電極又は有機化合物層)X上には(電極又は有機化合物層)Yが設けられている」という表現は、「Xの陰極7側の表面上に、Yが、互いに表面を接するように形成されている」ことを意味し、「(電極又は有機化合物層)X上に(電極又は有機化合物層)Yを形成する」という表現は、「Xの陰極7側の表面上に、互いに表面を接するようにYを形成する」ことを意味する。
【0059】
まず、有機EL素子1を構成する透明基板2、陽極3及び陰極7について説明する。
[透明基板2]
透明基板2は、有機EL素子1の支持体となるものである。本実施の形態に係る有機EL素子1は、透明基板2側から光を取り出す構成(ボトムエミッション型)であるため、透明基板2及び陽極3は、それぞれ、実質的に透明(無色透明、着色透明又は半透明)な材料より構成されている。透明基板2の構成材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレン、シクロオレフィンポリマー、ポリアミド、ポリエーテルサルフォン、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリアリレートのような樹脂材料や、石英ガラス、ソーダガラスのようなガラス材料等が挙げられ、これらのうちの1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0060】
透明基板2の平均厚さは、特に限定されないが、0.1〜30mm程度であるのが好ましく、0.1〜10mm程度であるのがより好ましい。なお、有機EL素子1が透明基板2と反対側から光を取り出す構成(トップエミッション型)の場合、透明基板2の代わりに不透明基板が用いられる場合がある。不透明基板の例としては、アルミナ等のセラミックス材料で構成された基板、ステンレス鋼等の金属基板の表面に酸化膜(絶縁膜)を形成したもの、樹脂材料で構成された基板等が挙げられる。
【0061】
[陽極3]
陽極3は、後述する正孔輸送層4に正孔を注入する電極である。この陽極3の構成材料としては、仕事関数が大きく、導電性に優れる材料を用いるのが好ましい。陽極3の構成材料としては、例えば、ITO(酸化インジウムスズ)、IZO(酸化インジウムジルコニウム)、In、SnO、Sb含有SnO、Al含有ZnO等の酸化物、Au、Pt、Ag、Cu又はこれらを含む合金等が挙げられ、これらのうちの1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。陽極3の平均厚さは、特に限定されないが、10〜200nm程度であるのが好ましく、50〜150nm程度であるのがより好ましい。
【0062】
[陰極7]
一方、陰極7は、後述する電子輸送層6に電子を注入する電極であり、電子輸送層6の発光層5と反対側に設けられている。この陰極7の構成材料としては、仕事関数の小さい材料を用いるのが好ましい。陰極7の構成材料としては、例えば、Li、Mg、Ca、Sr、La、Ce、Er、Eu、Sc、Y、Yb、Ag、Cu、Al、Cs、Rb又はこれらを含む合金等が挙げられ、これらのうちの1種又は任意の2種以上を組み合わせて(例えば、複数層の積層体等)用いることができる。
【0063】
特に、陰極7の構成材料として合金を用いる場合には、Ag、Al、Cu等の安定な金属元素を含む合金、具体的には、MgAg、AlLi、CuLi等の合金を用いるのが好ましい。かかる合金を陰極7の構成材料として用いることにより、陰極7の電子注入効率及び安定性の向上を図ることができる。陰極7の平均厚さは、特に限定されないが、50〜10000nm程度であるのが好ましく、80〜500nm程度であるのがより好ましい。
【0064】
トップエミッション型の場合、仕事関数の小さい材料、又はこれらを含む合金を5〜20nm程度とし、透過性を持たせ、さらにその上面にITO等の透過性の高い導電材料を100〜500nm程度の厚さで形成する。
なお、本実施の形態に係る有機EL素子1は、ボトムエミッション型であるため、陰極7の光透過性は特に要求されない。
【0065】
次に、有機EL素子を構成する有機化合物層(陽極3側から順に、正孔輸送層4、発光層5、電子輸送層6)について説明する。
陽極3上には、正孔輸送層4が設けられている。この正孔輸送層4は、陽極3から注入された正孔を、発光層5まで輸送する機能を有するものである。
【0066】
[正孔輸送層4]
正孔輸送層4の構成材料の具体例としては、フタロシアニン、銅フタロシアニン(CuPc)、鉄フタロシアニンのような金属又は無金属のフタロシアニン系化合物、ポリアニリン等のポリアリールアミン、芳香族アミン誘導体、フルオレン−アリールアミン共重合体、フルオレン−ビチオフェン共重合体、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、ポリビニルピレン、ポリビニルアントラセン、ポリチオフェン、ポリアルキルチオフェン、ポリヘキシルチオフェン、ポリ(p−フェニレンビニレン)、ポリチニレンビニレン、ピレンホルムアルデヒド樹脂、エチルカルバゾールホルムアルデヒド樹脂又はその誘導体等が挙げられる。これらのうちの1種又は2種以上を混合または積層して組み合わせて用いることができる。
【0067】
芳香族アミン誘導体の具体例としては、下記の化合物が挙げられる。
【0068】
【化16】
【0069】
【化17】
【0070】
【化18】
【0071】
【化19】
【0072】
【化20】
【0073】
また、上記の化合物は、他の化合物との混合物として用いることもできる。一例として、ポリチオフェンを含有する混合物としては、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン/スチレンスルホン酸)(PEDOT/PSS)等が挙げられる。
【0074】
正孔輸送層4の平均厚さは、特に限定されないが、10〜150nm程度であるのが好ましく、50〜100nm程度であるのがより好ましい。
【0075】
[発光層5]
正孔輸送層4上、すなわち、正孔輸送層4の陰極7側の表面上には、発光層5が設けられている。この発光層5には、後述する電子輸送層6から電子が、また、前記正孔輸送層4から正孔がそれぞれ供給(注入)される。そして、発光層5内では、正孔と電子とが再結合し、この再結合に際して放出されたエネルギーにより励起子(エキシトン)が生成し、励起子が基底状態に戻る際にエネルギー(蛍光やりん光)が放出(発光)される。
【0076】
発光層5の構成材料のうち、発光機能を担う発光物質(ゲスト材料)の具体例としては、1,3,5−トリス[(3−フェニル−6−トリフルオロメチル)キノキサリン−2−イル]ベンゼン(TPQ1)、1,3,5−トリス[{3−(4−t−ブチルフェニル)−6−トリフルオロメチル}キノキサリン−2−イル]ベンゼン(TPQ2)のようなベンゼン系化合物、トリス(8−ヒドロキシキノリノレート)アルミニウム(Alq)、ファクトリス(2−フェニルピリジン)イリジウム(Ir(ppy))のような低分子系のものや、オキサジアゾール系高分子、トリアゾール系高分子、カルバゾール系高分子、ポリフルオレン系高分子、ポリパラフェニレンビニレン系高分子のような高分子系のものが挙げられ、これらの1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0077】
また、発光層は、電子又は正孔の電荷輸送を担う材料(ホスト材料)として、本発明の第1の実施の形態に係る有機電子輸送材料を含んでいる。ゲスト材料は、ホスト材料中に均一に分布している。ゲスト材料の濃度は、一般に、ホスト材料の0.1〜1重量%程度である。
【0078】
発光層5は、上述のホスト材料及びゲスト材料以外に、電子輸送補助材料及び正孔輸送補助材料を更に含んでいてもよい。
発光層5に添加することができる電子輸送補助材料及び正孔輸送補助材料の具体例としては、正孔輸送層4及び後述する電子輸送層6の構成材料として用いられる任意の材料及びこれらの任意の2以上の組み合わせが挙げられる。或いは、本発明の第1の実施の形態に係る電子輸送材料を、単独で又は上述の他の化合物とを任意に組み合わせたものを、電子輸送層6の構成材料として用いてもよい。
【0079】
発光層5の平均厚さは、特に限定されないが、10〜150nm程度であるのが好ましく、50〜100nm程度であるのがより好ましい。
【0080】
[電子輸送層6]
発光層5上には、電子輸送層6が設けられている。この電子輸送層6は、陰極7から注入された電子を、発光層5まで輸送する機能を有するものである。
【0081】
電子輸送層6の構成材料の一例としては、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、多環系化合物、バソクプロイン等のヘテロ多環系化合物、オキサジアゾール誘導体、フルオレノン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、アントラキノンジメタン誘導体、アントロン誘導体、カルボジイミド誘導体、フルオレニリデンメタン誘導体、ジスチリルピラジン誘導体、ナフタレンテトラカルボン酸又はペリレンテトラカルボン酸等の芳香環テトラカルボン酸の酸無水物、フタロシアニン誘導体、8−キノリノール誘導体の金属錯体やメタルフタロシアニン、ベンゾオキサゾールやベンゾチアゾールを配位子とする金属錯体等の各種金属錯体、有機シラン誘導体、イリジウム錯体、特開2010−278376号公報記載のアルコール可溶性ホスフィンオキシド誘導体等のホスフィンオキシド誘導体、これらの化合物の任意の2以上の組み合わせが挙げられる。
【0082】
電子輸送層6の平均厚さは、特に限定されないが、1〜100nm程度であるのが好ましく、10〜50nm程度であるのがより好ましい。
【0083】
封止部材8は、有機EL素子1(陽極3、正孔輸送層4、発光層5、電子輸送層6及び陰極7)を覆うように設けられ、これらを気密的に封止し、酸素や水ェを遮断する機能を有する。封止部材8を設けることにより、有機EL素子1の信頼性の向上や、変質及び劣化の防止(耐久性向上)等の効果が得られる。
【0084】
封止部材8の構成材料としては、例えば、Al、Au、Cr、Nb、Ta、Ti又はこれらを含む合金、酸化シリコン、各種樹脂材料等を挙げることができる。なお、封止部材8の構成材料として導電性を有する材料を用いる場合には、短絡を防止するために、封止部材8と有機EL素子1との間には、必要に応じて、絶縁膜を設けるのが好ましい。また、封止部材8は、平板状として、透明基板2と対向させ、これらの間を、例えば熱硬化性樹脂等のシール材で封止するようにしてもよい。
【0085】
有機EL素子1は、例えば、次のようにして製造することができる。
まず、透明基板2を用意し、この透明基板2上に陽極3を形成する。
陽極3は、例えば、プラズマCVD、熱CVD、レーザーCVDのような化学蒸着法(CVD)、真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング等の乾式メッキ法、電界メッキ、浸漬メッキ、無電界メッキ等の湿式メッキ法、溶射法、ゾル・ゲル法、MOD法、金属箔の接合等を用いて形成することができる。
【0086】
次に、陽極3上に正孔輸送層4を形成する。
正孔輸送層4は、真空蒸着法または塗布法を用い成膜することが可能である。塗布法であれば、例えば、溶媒に溶解又は分散媒に分散した正孔輸送材料を陽極3上に供給した後、乾燥(脱溶媒又は脱分散媒)することにより形成することができる。正孔輸送層形成用材料の供給方法としては、例えば、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイヤーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェット印刷法等の各種塗布法を用いることができる。このような塗布法を用いることにより、正孔輸送層4を比較的容易に形成することができる。
【0087】
溶解または分散に用いる溶媒又は分散媒は、用いられる正孔輸送材料の溶解性、コスト、入手容易性、乾燥の容易さ及び安全性等に応じて、適宜選択される。溶媒又は分散媒の具体例としては、硝酸、硫酸、アンモニア、過酸化水素、水、二硫化炭素、四塩化炭素、エチレンカーボネイト等の無機溶媒、メチルエチルケトン(MEK)、アセトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン(MIBK)、メチルイソプロピルケトン(MIPK)、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール(DEG)、グリセリン等のアルコール系溶媒、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、1,2−ジメトキシエタン(DME)、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、テトラヒドロピラン(THP)、アニソール、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグリム)、ジエチレングリコールエチルエーテル(カルビトール)等のエーテル系溶媒、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、フェニルセロソルブ等のセロソルブ系溶媒、ヘキサン、ペンタン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒、トルエン、キシレン、ベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒、ピリジン、ピラジン、フラン、ピロール、チオフェン、メチルピロリドン等の芳香族複素環化合物系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMA)等のアミド系溶媒、クロロベンゼン、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化合物系溶媒、酢酸エチル、酢酸メチル、ギ酸エチル等のエステル系溶媒、ジメチルスルホキシド(DMSO)、スルホラン等の硫黄化合物系溶媒、アセトニトリル、プロピオニトリル、アクリロニトリル等のニトリル系溶媒、ギ酸、酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸等の有機酸系溶媒のような各種有機溶媒、又は、これらを含む混合溶媒等が挙げられる。
なお、乾燥は、例えば、大気圧又は減圧雰囲気中での放置、加熱処理、不活性ガスの吹付け等により行うことができる。
【0088】
また、本工程に先立って、陽極3の上面には、酸素プラズマ処理を施すようにしてもよい。これにより、陽極3の上面に親液性を付与すること、陽極3の上面に付着する有機物を除去(洗浄)すること、陽極3の上面付近の仕事関数を調整すること等を行うことができる。
ここで、酸素プラズマ処理の条件としては、例えば、プラズマパワー:100〜800W程度、酸素ガス流量:50〜100mL/min程度、被処理部材(陽極3)の搬送速度:0.5〜10mm/sec程度、透明基板2の温度:70〜90℃程度とするのが好ましい。
【0089】
次に、正孔輸送層4上(陽極3の一方の面側)に、発光層5を形成する。
発光層5は、真空蒸着法または塗布法を用い成膜することが可能である。塗布法であれば、例えば、溶媒に溶解又は分散媒に分散したホスト材料及びゲスト材料を、正孔輸送層4上に供給した後、乾燥(脱溶媒又は脱分散媒)することにより形成することができる。用いられる溶媒又は分散媒は、正孔輸送層4を溶解、浸食又は膨潤させないものを選択して用いることが望ましい。
【0090】
溶媒に溶解又は分散媒に分散したホスト材料及びゲスト材料の供給方法及び乾燥の方法は、前記正孔輸送層4の形成で説明したのと同様である。
【0091】
次に、発光層5上(陽極3の一方の面側)に、電子輸送層6を形成する。
電子輸送層6は、正孔輸送層4及び発光層5と同様に真空蒸着法または塗布法を用い成膜することが可能である。塗布法であれば、溶媒に溶解又は分散媒に分散した電子輸送材料を発光層5上に供給した後乾燥することにより、電子輸送層6が得られる。用いられる溶媒又は分散媒は、発光層5を溶解、浸食又は膨潤させないものを選択して用いることが望ましい。溶媒に溶解又は分散媒に分散した電子輸送材料の供給方法及び乾燥の方法は、前記正孔輸送層4及び発光層5の形成で説明したのと同様であるため、詳しい説明を省略する。
【0092】
次に、電子輸送層6上(発光層5と反対側)に、陰極7を形成する。陰極7は、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、金属箔の接合、金属微粒子インクの塗布及び焼成等を用いて形成することができる。
最後に、得られた有機発光素子1を覆うように封止部材8を被せ、透明基板2に接合する。以上のような工程を経て、有機EL素子1が得られる。
【0093】
このような有機EL素子1は、例えば光源等として使用することができる。また、複数の有機EL素子1をマトリックス状に配置することにより、ディスプレイ装置を構成することができる。なお、ディスプレイ装置の駆動方式としては、特に限定されず、アクティブマトリックス方式、パッシブマトリックス方式のいずれであってもよい。
【0094】
有機EL素子1に供給される電気エネルギー源としては、主に直流電流であるが、パルス電流や交流電流を用いることも可能である。電流値及び電圧値は特に制限はないが、素子の消費電力、寿命を考慮するとできるだけ低いエネルギーで最大の輝度が得られるようにするべきである。
【0095】
ディスプレイ装置を構成する「マトリックス」とは、表示のための画素(ピクセル)が格子状に配置されたものをいい、画素の集合で文字や画像を表示する。画素の形状、サイズは用途によって決まる。例えばパーソナルコンピュータ、モニター、テレビの画像及び文字表示には、通常一辺が300μm以下の四角形の画素が用いられるし、表示パネルのような大型ディスプレイの場合は、一辺がmmオーダーの画素を用いることになる。モノクロ表示の場合は、同じ色の画素を配列すればよいが、カラー表示の場合には、赤、緑、青の画素を並べて表示させる。この場合、典型的には、デルタタイプとストライプタイプがある。そして、このマトリックスの駆動方法としては、パッシブマトリックス方式及びアクティブマトリックス方式のどちらでもよい。前者には、構造が簡単であるという利点があるが、動作特性を考慮した場合、後者のアクティブマトリックスの方が優れる場合があるので、これも用途によって使い分けることが必要である。
【0096】
有機EL素子1は、セグメントタイプの表示装置であってもよい。「セグメントタイプ」とは、予め決められた情報を表示するように所定形状のパターンを形成し、決められた領域を発光させることになる。例えば、デジタル時計や温度計における時刻や温度表示、オーディオ機器や電磁調理器等の動作状態表示、自動車のパネル表示などがあげられる。マトリックス表示とセグメント表示は同じパネルの中に共存していてもよい。
【0097】
有機EL素子1は、自発光しない表示装置の視認性を向上させるために、液晶表示装置、時計、オーディオ機器、自動車パネル、表示板、標識等に使用されるバックライトであってもよい。特に液晶表示装置、中でも薄型化が課題となっているパーソナルコンピュータ用途のバックライトとしては、蛍光灯や導光板からなる従来のものに比べ、薄型化、軽量化が可能になる。
【0098】
このような有機EL素子1は、例えば光源等として使用することができる。また、複数の有機EL素子1をマトリックス状に配置することにより、ディスプレイ装置を構成することができる。
なお、ディスプレイ装置の駆動方式としては、特に限定されず、アクティブマトリックス方式、パッシブマトリックス方式のいずれであってもよい。
【0099】
有機EL素子1において、陰極7と電子輸送層6の間には、図示しない電子注入層を設けることができる。電子注入層は、陰極7から電子輸送層6へ電子注入の効率向上、すなわち駆動電圧の低下のために用いられる。電子注入層は、アルカリ金属カルコゲニド、アルカリ土類金属カルコゲニド、アルカリ金属のハロゲン化物、アルカリ土類金属のハロゲン化物、アルカリ金属の炭酸塩、アルカリ土類金属の炭酸塩、アルカリ金属の炭酸水素塩、アルカリ土類金属及び炭酸水素塩からなる群から選択される少なくとも一つの金属化合物を使用するのが好ましい。電子注入層がこれらのアルカリ金属カルコゲニドなどで構成されていれば、電子注入性をさらに向上させることができる点で好ましい。具体的に、好ましいアルカリ金属カルコゲニドとしては、例えば、酸化リチウム(LiO)、酸化カリウム(KO)、硫化ナトリウム(NaS)、セレン化ナトリウム(NaSe)及び酸化ナトリウム(NaO)が挙げられる。好ましいアルカリ土類金属カルコゲニドとしては、例えば、酸化カルシウム(CaO)、酸化バリウム(BaO)、酸化ストロンチウム(SrO)、酸化ベリリウム(BeO)、硫化バリウム(BaS)及びセレン化カルシウム(CaSe)が挙げられる。また、好ましいアルカリ金属のハロゲン化物としては、例えば、フッ化リチウム(LiF)、フッ化ナトリウム(NaF)、フッ化カリウム(KF)、塩化リチウム(LiCl)、塩化カリウム(KCl)及び塩化ナトリウム(NaCl)などが挙げられる。また、好ましいアルカリ土類金属のハロゲン化物としては、例えば、フッ化カルシウム(CaF)、フッ化バリウム(BaF)、フッ化ストロンチウム(SrF)、フッ化マグネシウム(MgF)及びフッ化ベリリウム(BeF)などのフッ化物や、フッ化物以外のハロゲン化物が挙げられる。
上記の無機化合物の他に、アルカリ金属及びアルカリ土類金属を含む有機金属錯体も使用可能である。好ましい有機金属錯体の具体例としては、アセチルアセトン、ジベンゾイルメタン、2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオン等のβ−ジケトン類、8−ヒドロキシキノリン、2−ピコリン酸等の複素環を含む配位子とアルカリ金属及びアルカリ土類金属との錯体などが挙げられる。
【0100】
また、発光層5と電子輸送層6との間に、図示しない正孔ブロッキング層を設けてもよい。正孔ブロッキング層を設けることによって、電子輸送層6への正孔の流入を抑制でき、発光効率を高めることができるとともに、有機EL素子1の寿命を延長することもできる。ここで、正孔ブロッキング層は、前述の電子輸送材料を用いて設けることができ、2つ以上の種類の電子輸送材料を共蒸着などにより混合して積層された混合層とすることが好ましい。正孔ブロッキング層に含有する電子輸送材料は、そのイオン化ポテンシャルを発光層5のイオン化ポテンシャルよりも大きくすることが好ましい。
【0101】
また、正孔輸送層4と陽極3との間に、図示しない正孔注入層を設けてもよい。正孔注入層の構成材料としては、前述した正孔輸送層4の構成材料の具体例から適宜選択した任意のものを用いることができるが、正孔輸送層4の構成材料よりも低い電界強度で正孔を発光層5に輸送する材料が好ましい。
【実施例】
【0102】
次に、本発明の作用効果を確認するために行った実施例について説明する。
実施例1:密度汎関数法を用いた第一原理計算による、アニオン状態におけるホスフィンオキシド誘導体の安定性の評価
【0103】
計算プログラムにGAMESSを用い、ワークステーション上で、下記の条件により構造の最適化及び生成熱の計算を行った。
中性分子、カチオン、アニオンフラグメント:RHF(制限閉殻法)/6−31G(d)/B3LYP
カチオン、アニオン分子、中性フラグメントは、UHF(非制限開核法)/6−31G(d)/B3LYP
以上の内フラグメント分子は、親イオンの配座のまま1点計算した。
【0104】
これらの生成熱より、下式(1)で示される解離反応の結合解離エネルギー(BDE:Bond Dissociation Energy)を計算した。
M→F1+F2・・・・・(1)
【0105】
この時の結合解離エネルギーは、下記の式(2)で求められる。
BDE=H−(HF1+HF2)・・・・(2)
BDE:結合解離エネルギー
:親分子の生成熱
F1、HF2:それぞれのフラグメント分子の生成熱
【0106】
モデル化合物系において、Linらの計算結果が再現できることを確認し、下記の化合物について、結合解離エネルギーの計算を行った。結果を表1に示す。アニオンのBDEが架橋することにより12〜15kcal/mol向上することがわかった。
【0107】
【化21】
【0108】
【表1】
【0109】
実施例2:電子輸送材料の基本骨格の合成
2,6−(p−ブロモフェニル)−4−ビフェニルピリジンの合成
【0110】
【化22】
【0111】
4−フェニルベンズアルデヒド4.61g(25.3mmol)、4’−ブロモアセトフェノン10.1g(50.6mmol)、酢酸アンモニウム25.1g(325mmol)を酢酸63.4mLに加え9時間還流させた。反応終了後、室温まで冷却し、析出した結晶をろ取し、エタノールで洗浄した。結晶はジクロロメタン/IPAで再結晶を行い、表題化合物4.42g(32%)を得た。
APCI TOF MS m/z=538,540,542
【0112】
2,6−ビス(3−ブロモフェニル)−4−ビフェニルピリジンの合成
【0113】
【化23】
【0114】
4−フェニルベンズアルデヒド4.62g(25.3mmol)、3’−ブロモアセトフェノン10.1g(50.6mmol)、酢酸アンモニウム25.1g(325mmol)を酢酸63.4mLに加え、9時間還流した。反応終了後、室温まで冷却し、析出した結晶をろ取し、沈殿をエタノールで洗浄した。結晶はジクロロメタン/IPAで再結晶を行い、表題化合物3.85g(28%)を得た。
APCI TOF MS m/z=538,540,542
【0115】
2,4−ビス(4−ブロモフェニル)−6−フェニル−1,3,5−トリアジンの合成
【0116】
【化24】
【0117】
塩化ベンゾイル3.51g(25mmol)、4−ブロモベンゾニトリル9.10g(50mmol)をクロロベンゼン37.5mLに溶解し、0℃に冷却した。この溶液に塩化アンチモン(V)7.48g(25mmol)を滴下し、室温で20分、100℃で2時間撹拌した。反応終了後、−20℃に冷却し、激しく撹拌しながら25%アンモニア水20mLを加えクエンチした。室温でクロロベンゼン25mLを加え、共沸により水を取り除いた。残渣は130℃に加熱して熱時ろ過した。ろ紙上の残留物はクロロホルム25mLに加え、加熱して再度熱時ろ過した。得られたろ液はメタノール50mLを加え、生じた沈殿をろ取し、表題化合物7.00g(60%)を得た。
APCI TOF MS m/z=465,467,469
【0118】
2,6−(4−ヨードフェニル)−4−ビフェニルピリジンの合成
【0119】
【化25】
【0120】
4−フェニルベンズアルデヒド2.31g(13mmol)、4’−ヨードアセトフェノン6.22g(25mmol)、酢酸アンモニウム12.6g(163mmol)を酢酸32mLに加え、9時間還流した。反応終了後、室温まで冷却し、析出した結晶をろ取した。結晶はさらにエタノールで洗浄した。得られた結晶はジクロロメタン/IPAで再結晶を行い、表題化合物0.75g(9%)を得た。
APCI TOF MS m/z=634
【0121】
2,6−(3−ヨードフェニル)−4−ビフェニルピリジンの合成
【0122】
【化26】
【0123】
4−フェニルベンゾアルデヒド1.15g(6.3mmol)、3’−ヨードアセトフェノン3.11g(13mmol)、酢酸アンモニウム6.30g(82mmol)を酢酸16mLに溶解し、9時間還流した。反応終了後、室温まで冷却し、析出した結晶をろ取した。結晶はさらにエタノールで洗浄した。得られた結晶はジクロロメタン/IPAで再結晶を行い、表題化合物0.46g(12%)を得た。
APCI TOF MS m/z=634
【0124】
2,6−(3−ヨードフェニル)−4−フェニルピリジンの合成
【0125】
【化27】
【0126】
ベンズアルデヒド669mg(6.3mmol)、3’−ヨードアセトフェノン3.11g(12.6mmol)、酢酸アンモニウム6.30g(81.7mmol)を酢酸15.9mLに加え、9時間還流した。室温まで冷却し、析出した結晶をろ取し、結晶はさらにエタノールで洗浄した。得られた結晶はジクロロメタン/IPAで再結晶を行い、表題化合物750mg(21%)を得た。
APCI TOF MS m/z=558、559
【0127】
1,3−ジブロモ−5−(カルバゾール−9−イル)−ベンゼンの合成
【0128】
【化28】
【0129】
55%水素化ナトリウム500mg(11.5mmol)をDMF20mLに懸濁させ、カルバゾール1.67g(10mmol)を加え、この懸濁液を80℃に加熱して溶解させた。続いて1,3−ジブロモ−5−フルオロベンゼン2.54g(10mmol)を滴下して100℃で16時間加熱撹拌を行った。反応反応混合物は室温に冷却し、氷水でクエンチした。この水溶液をジクロロメタンを用いて抽出し、得られた有機層は硫酸マグネシウムで乾燥し減圧下でで濃縮した。得られた残渣はカラムクロマトグラフィーで精製し、ヘプタンより再結晶を行い、表題化合物1.63g(41%)を得た。
APCI TOF MS m/z=402
【0130】
1,3−ジヨード−5−(カルバゾール−9−イル)−ベンゼンの合成
【0131】
【化29】
【0132】
1,3−ジブロモ−5−(カルバゾール−9−イル)−ベンゼン360mg(0.9mmol)、ヨウ化銅(I)2.57g(13.5mmol)、ヨウ化カリウム5.57g(33.6mmol)をDMF10.6mLに加え、140℃で22時間加熱撹拌を行った。反応終了後、不溶物をセライトろ過で取り除いた。ろ液は水に注ぎ、ジクロロメタンで抽出した。得られた有機層は硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下で濃縮した。得られた結晶はジクロロメタン/メタノールで再結晶を行い、表題化合物380mg(85%)を得た。
APCI TOF MS m/z=496
【0133】
1,3−ジブロモ−5−((3,6−ジ−tert−ブチル)カルバゾール−9−イル)−ベンゼンの合成
【0134】
【化30】
【0135】
55%水素化ナトリウム400mg(9.2mmol)をDMF16mLに懸濁し、3,6−ジ−tert−ブチルカルバゾール2.24g(8.0mmol)を加えた。この懸濁液を80℃に加熱し溶解させた。続いて1,3−ジブロモ−5−フルオロベンゼン2.03g(8.0mmol)を加え、100℃で16時間撹拌した。反応終了後、水を注ぎ、ジクロロメタンで抽出した。得られた有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下で濃縮した。得られた残渣はカラムクロマトグラフィーで精製し、得られた固体は2−プロパノールより再結晶を行い、表題化合物2.25g(55%)を得た。
APCI TOF MS m/z=514
【0136】
1,3−ジヨード−5−(3,6−ジ−tert−ブチルカルバゾール−9−イル)−ベンゼンの合成
【0137】
【化31】
【0138】
1,3−ジブロモ−5−((3,6−ジ−tert−ブチル)カルバゾール−9−イル)−ベンゼン770mg(1.5mmol)、ヨウ化銅(I)4.29g(22.5mmol)、ヨウ化カリウム9.29g(56mmol)をDMF17.6mLに加え、140℃で22時間撹拌した。反応終了後、不溶物をセライトろ過でを取り除いた。ろ液は水に注ぎ、ジクロロメタンで抽出した。得られた有機層は硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下で濃縮した。得られた結晶はジクロロメタン/メタノールより再結晶を行い、表題化合物800mg(87%)を得た。
APCI TOF MS m/z=608
【0139】
3,6−ジ−tert−ブチル−9−(3,5−ビス(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)フェニル)カルバゾールの合成
【0140】
【化32】
【0141】
1,3−ジブロモ−5−((3,6−ジ−tert−ブチル)カルバゾール−9−イル)−ベンゼン230mg(0.45mmol)、ビス(ピナコラート)ジボロン46mg(1.8mmol)、酢酸カリウム880mg(9.0mmol)をジオキサン5.4mLに加え、60℃で15分間加熱撹拌を行った。続いてPdCl(dppf)−CHCl20mg(0.03mmol)を加え、80℃で16時間撹拌した。反応終了後、水に注ぎ、ジクロロメタンで抽出した。有機層は硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下で濃縮した。得られた残渣はカラムクロマトグラフィーで精製し、表題化合物210mg(78%)を得た。
APCI TOF MS m/z=455
【0142】
5−ブロモイソフタル酸の合成
【0143】
【化33】
【0144】
イソフタル酸9.97g(60mmol)を濃硫酸27mLに加え、60℃に加熱した。続いてNBS12.8g(72mmol)を20分おきに3回に分けて添加し、室温で一晩撹拌した。反応終了後、氷水に注ぎ生じた沈殿をろ取した。沈殿はさらに水、ヘキサンで洗浄し、乾燥した。得られた固体は酢酸エチルより再結晶を行い、表題化合物12.6g(86%)を得た。
1H NMR(DMSO) δ 8.44(s,1H),δ 8.26(s,2H)
【0145】
5−ブロモ−1,3−ベンゼンジカルボキシアミドの合成
【0146】
【化34】
【0147】
5−ブロモイソフタル酸610mg(2.49mmol)、DMF0.05mLをトルエン2.0mLに加えた。この溶液に塩化チオニル0.45mL(6.22mmol)を10分かけて滴下し、滴下終了後、3.5時間還流した。反応終了後、0℃に冷却し、25%アンモニア水溶液5mLを滴下し、0℃で10分、室温で1時間撹拌した。生じた沈殿はろ取し、沈殿はさらに水で洗浄した。得られた固体は酢酸より再結晶を行い、表題化合物376mg(62%)を得た。
APCI−TOF−MS(m/z)=242,244
【0148】
5−ブロモベンゼン−1,3−ジカルボニトリルの合成
【0149】
【化35】
【0150】
2M塩化オキサリル−ジクロロメタン溶液43.9mL(87.8mmol)をDMF150mL加え、0℃に冷却した。5−ブロモ−1,3−ベンゼンジカルボキシアミド7.55g(31mmol)−DMF溶液150mLを滴下し、0℃で6時間撹拌した。反応終了後、酢酸エチルで希釈し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄した。有機層は硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下で濃縮した。得られた残渣はエタノールより再結晶を行い、表題化合物4.12g(64%)を得た。
APCI−TOF−MS(m/z)=206,208
1H NMR(DMSO− d6) δ 8.04(s,2H),δ 7.91(s,1H)
【0151】
2,8−ジメチルフェノキサホスフィン−10−オキシド(DMPOPO)の合成
【0152】
【化36】
【0153】
ジ−p−トリルエーテル5.95g(30mmol)、三塩化リン16.5g(120mmol)に塩化アルミニウム(III)5.07g(38mmol)を少量ずつ加え、8時間還流した。反応終了後、室温まで冷却し、反応混合物を減圧下で濃縮した。得られた残渣はトルエンで希釈し、氷冷した希塩酸にゆっくり滴下し、室温で1時間で撹拌した。水層は取り除き、有機層は重層水で中和した。セライトろ過後、得られたろ液は水に注ぎ、ジクロロメタンで抽出した。有機層は減圧下で濃縮した。得られた残渣はカラムクロマトグラフィーにより精製し、得られた結晶はシクロヘキサンで再結晶を行い、表題化合物4.63g(63%)を得た。
APCI TOF MS m/z=245 [M+1]
1H NMR(CDCl3) δ 2.42(s,6H) 7.06−7.89(m,6H),8.56(d,1H,1JHP=518Hz)
【0154】
フェノキサホスフィン−10−オキシド(POPO)の合成
【0155】
【化37】
【0156】
ジフェニルエーテル2.35g(13.8mmol)、三塩化リン11.4g(83.0mmol)に塩化アルミニウム(III)2.39g(17.9mmol)を少量ずつ加え、8時間還流した。反応終了後、室温まで冷却し、反応混合物を減圧下で濃縮した。得られた残渣はトルエンで希釈し、氷冷した希塩酸にゆっくり滴下し、室温で1時間で撹拌した。水層は取り除き、有機層は重層水で中和した。セライトろ過後、得られたろ液は水に注ぎ、ジクロロメタンで抽出した。有機層は減圧下で濃縮した。得られた残渣はカラムクロマトグラフィーにより精製し、得られた結晶はシクロヘキサンで再結晶を行い、表題化合物0.30g(10%)を得た。
APCI TOF MS m/z=217
【0157】
2.8−ジフルオロフェノキサホスフィン−10−オキシド(DFPOPO)の合成
【0158】
【化38】
【0159】
ビス(4−フルオロフェニル)エーテル12.5g(61mmol)、三塩化リン33.4g(240mmol)、塩化ガリウム(III)13.9g(79mmol)を少量ずつ加え、8時間還流した。反応終了後、室温まで冷却し、反応混合物を減圧下で濃縮した。得られた残渣はトルエンで希釈し、氷冷した希塩酸にゆっくり滴下し、室温で1時間で撹拌した。水層は取り除き、有機層は重層水で中和した。セライトろ過後、得られたろ液は水に注ぎ、ジクロロメタンで抽出した。有機層は減圧下で濃縮した。得られた残渣はカラムクロマトグラフィーにより精製し、得られた結晶はシクロヘキサンで再結晶を行い、表題化合物13.1g(86%)を得た。
APCI TOF MS m/z=253
1H NMR(CDCl3) δ6.91−7.84(m,6H,ArH),8.61(d,1H,J=528Hz)
【0160】
1−ブロモ−4−(2,8−ジフルオロフェノキサホスフィノイル)ベンゼンの合成
【0161】
【化39】
【0162】
1−ブロモ−4−ヨードベンゼン3.39g(12mmol)、2,8−ジフルオロフェノキサホスフィンオキシド1.51g(6mmol)、酢酸パラジウム70mg(0.3mmol)、dppp0.25g(0.6mmol)、DIEA1.55g(12mmol)をDMSO48mLを加え、80℃で4時間撹拌した。反応終了後、水に注ぎ、ジクロロメタンで抽出した。有機層は硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下で濃縮した。得られた残渣はカラムクロマトグラフィーで精製した。得られた固体はジクロロメタン/シクロヘキサンより再結晶を行い、表題化合物1.22g(50%)を得た。
APCI TOF MS m/z=408
【0163】
ビス(2−ブロモフェニル)スルフィドの合成
【0164】
【化40】
【0165】
o−ブロモベンゼンチオール5.67g(30mmol)、1−ブロモ−2−ヨードベンゼン8.49g(30mmol)、水酸化カリウム3.37g(60mmol)、CuO0.22g(1.5mmol)、水5.5mLをDMSO21.8mLに加えて80℃で18時間撹拌した。混合物は水に注ぎ、ジクロロメタンで抽出した。有機層は硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下で濃縮した。得られた残渣はカラムクロマトグラフィーにより精製を行い、表題化合物8.85g(86%)を得た。
APCI TOF MS m/z=341、343、345
【0166】
フェノチアホスフィン−10−オキシド(PTPO)の合成
【0167】
【化41】
【0168】
ビス(2−ブロモフェニル)スルフィド2.00g(5.80mmol)をTHF17.4mLに溶解し、−80℃に冷却した。1.6Mn−BuLi−ヘキサン溶液8mL(12.8mmol)を滴下し、−80℃で1.5時間撹拌した後、ジクロロ(ジメチルアミノ)ホスフィン1.06g(6.10mmol)−THF5mL溶液を滴下した。−80℃で2時間撹拌後、ゆっくり室温まで昇温し、濃塩酸3.0mLを加えて室温で1時間撹拌した。反応混合物は水に注ぎ、ジクロロメタンで抽出した。有機層は硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下で濃縮した。得られた残渣はカラムクロマトグラフィーにより精製を行い、表題化合物0.65g(48%)を得た。
APCI TOF MS m/z=233
1H NMR(CDCl3) δ 5.09(s,1H),7.17−8.24(m,8H)
【0169】
(2−カルボメトキシフェニル)ジフェニルホスフィンオキシド(TPPO−2−CO2Me)の合成
【0170】
【化42】
【0171】
2−ヨード安息香酸メチル36.7g(140mmol)、DPPO28.3g(140mmol)、酢酸パラジウム943mg(4.2mmol)、dppp3.46g(8.4mmol)、DIEA43.9mLをDMSO280mLに加え、100℃で26時間撹拌した。得られた反応混合物は飽和塩化アンモニア水溶液に注ぎ、ジクロロメタンで抽出した。有機層は再度飽和塩化アンモニウム水溶液で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下で濃縮した。得られた残渣はトルエンより再結晶を行い、表題化合物12.3g(26%)を得た。
APCI TOF MS m/z=337
1H NMR(CDCl3) δ 3.49(s,3H),7.33−8.06(m,14H)
【0172】
ジフェニル(2−(2−ヒドロキシプロパン−2−イル)フェニル)ホスフィンオキシド(TPPO−2−CMe2OH)の合成
【0173】
【化43】
【0174】
Ar雰囲気下、メカニカルスターラーで撹拌しながらMg19.5g(804mmol)にヨードメタン137g(965mmol)−ジエチルエーテル溶液400mLを30分間かけて滴下した。滴下終了後、室温で30分間撹拌した。続いて氷浴で冷却し、TPPO−2−CO2Me90.0g(268mmol)を加え、0℃で30分間、室温で90分間撹拌した。反応終了後、1N塩酸100mLをゆっくり加えてクエンチした。得られた溶液はジクロロメタンで抽出し、有機層はさらに1N塩酸、水、飽和NaHCO水溶液で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下で濃縮後、得られた残渣はトルエン/ヘプタンより再結晶を行い、表題化合物57.2g(63%)を得た。
MS m/z=337,319
【0175】
10,10−ジメチル−5−フェニルアクリドホスフィン−5−オキシド(Ph−DMAPO)の合成
【0176】
【化44】
【0177】
TPPO−2−CMe2OH63.7g(189mmol)をポリリン酸80mLに分散させ、160℃で4時間撹拌した。反応終了後、水50mL加えて反応混合物を希釈し、氷冷した水へ注ぎクエンチした。ジクロロメタンで抽出した。水層は酢酸エチルで抽出し、有機層と合わせた。有機層は水で洗浄縺A硫酸マグネシウムで乾燥し減圧下で濃縮した。得られた残渣はカラムクロマトグラフィーで精製後、酢酸エチルを用いて再結晶を行い、表題化合物28.9g(48%)を得た。
APCI TOF MS m/z=319
1H NMR(CDCl3) δ 1.79(s,3H),1.90(s,3H),7.27−7.84(m,13H)
【0178】
10,10−ジメチルアクリドホスフィン−5−オキシド(H−DMAPO)の合成
【0179】
【化45】
【0180】
Ph−DMAPO28.7g(90mmol)をTHF180mLに溶解し、Li1.52g(219mmol)を加え18時間還流した。反応終了後、注意深く水を注ぎ、飽和塩化アンモニウム水溶液を加えた。ジクロロメタンで抽出し、硫酸マグネシウムで有機層を乾燥後、減圧下で濃縮した。得られた残差はカラムクロマトグラフィーで精製し目的物を含む混合物10.5gを得た。得られた混合物はシクロヘキサン/ジオキサンより再結晶を行い,、表題化合物8.31g(38%)を得た。
APCI TOF MS m/z=243
1H NMR(CDCl3) δ 1.86(s,6H),7.41−8.40(m,8H),11.02(s,1H)
【0181】
実施例3:トリアリールホスフィンオキシド類の合成
【0182】
2,6−ビス(4−(2,8−ジメチルフェノキサホスフィノイル)フェニル)−4−(4−フェニルフェニル)ピリジン((DMPOPO−p−Ph)2BP−Py)(I)の合成
【0183】
【化46】
【0184】
2,6−(4−ブロモフェニル)−4−ビフェニルピリジン1.24g(2.3mmol)、DMPOPO1.69g(6.9mmol)、酢酸パラジウム51.6mg(0.23mmol)、dppp142mg(0.345mmol)、DIEA7.65mLをDMSO15.3mLに加え、100℃で26時間撹拌した。得られた反応混合物は水に注ぎ、ジクロロメタンで抽出した。得られた有機層は硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下で濃縮した。得られた残渣はカラムクロマトグラフィーにより精製を行った。得られた固体はメタノール/トルエンで再結晶を行い、表題化合物300mg(15%)を得た。
APCI TOF MS m/z=867,868
1H NMR(CDCl3) δ 2.31(s,12H,7.10 − 8.25(m,31H)
【0185】
2,6−ビス(3−(2,8−ジメチルフェノキサホスフィノイル)フェニル)−4−(4−フェニルフェニル)ピリジン(DMPOPO−m−Ph)2BP−Py(II)の合成
【0186】
【化47】
【0187】
2,6−(3−ブロモフェニル)−4−ビフェニルピリジン1.24g(2.30mmol)と、DMPOPO1.69g(6.90mmol)、酢酸パラジウム51.6mg(0.230mmol)、dppp142mg(0.345mmol)、DIEA7.65mLをDMSO15.3mLに加え、100℃で26時間撹拌した。得られた反応混合物は水に注ぎ、ジクロロメタンで抽出した。有機層は硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下で濃縮した。得られた残渣はカラムクロマトグラフィーにより精製を行った。得られた結晶はメタノール/トルエンで再結晶を行い、表題化合物200mg(10%)を得た。
APCI TOF MS m/z=867,868
1H NMR(CDCl3) δ2.31(s,12H),7.20−8.76(m,31H)
【0188】
2.4−ビス(4−(2,8−ジメチルフェノキサホスフィノイル)フェニル)−5−フェニル−1,3,5−トリアジン((DMPOPO−p−Ph)2Ph−TAZ)(III)の合成
【0189】
【化48】
【0190】
2,4−ビス(4−ブロモフェニル)−6−フェニル−1,3,5−トリアジン1.07g(2.3mmol)、DMPOPO1.69g(6.9mmol)、酢酸パラジウム52mg(0.23mmol)、dppp142mg(0.345mmol)、DIEA7.35mLをDMSO15.3mLに加え、100℃で48時間撹拌した。得られた反応混合物は水に注ぎ、ジクロロメタンで抽出した。有機層は硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下で濃縮した。得られた残渣はカラムクロマトグラフィーにより精製を行った。得られた結晶はメタノール/トルエンで再結晶を行い、表題化合物800mg(44%)を得た。
APCI TOF MS m/z=794
1H NMR(CDCl3) δ 2.32(s,12H),7.12−8.01(m,19H),8.66−8.85(m,6H)
【0191】
2,4,6−トリス(4−(2,8−ジメチルフェノキサホスフィノイル)フェニル)トリアジン((DMPOPO−p−Ph)3−TAZ)(IV)の合成
【0192】
【化49】
【0193】
2,4,6−トリス(4−ブロモフェニル)−1,3,5−トリアジン835mg(1.53mmol)、2,8−ジメチルフェノキサホスフィンオキシド1.69g(6.90mmol)、酢酸パラジウム52mg(0.230mmol)、dppp142mg(0.345mmol)、DIEA7.35mLをDMSO15.3mLに加え、100℃で48時間撹拌した。得られた反応混合物は水に注ぎ、ジクロロメタンで抽出した。有機層は硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下で濃縮した。得られた残渣はカラムクロマトグラフィーにより精製を行った。得られた結晶はメタノール/トルエンで再結晶を行い、表題化合物650mg(41%)を得た。
APCI TOF MS m/z=1036
1H NMR(CDCl3) δ 2.31(s,18H),7.12−8.00(m,24H),8.63 − 8.81(d,6H)
【0194】
2,2’,7,7’−テトラキス(2,8−ジメチルフェノキサホスフィノイル)−9,9−スピロビフルオレン(4DMPO−SPF)(V)の合成
【0195】
【化50】
【0196】
2,2’,7,7’−テトラブロモ−9,9’−スピロビフルオレン683mg(1.08mmol)、DMPOPO2.20g(9.00mmol)、酢酸パラジウム48mg(0.216mmol)、DIEA18mLをDMSO36mLに加え、100℃で60時間撹拌した。得られた反応混合物は水に注ぎ、ジクロロメタンで抽出した。有機層は硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下で濃縮した。得られた残渣はカラムクロマトグラフィーにより精製を行った。得られた結晶はメタノール/トルエンで再結晶を行い、表題化合物280mg(20%)を得た。
APCI TOF MS m/z=1285
【0197】
2,7−ビス(2,8−ジメチルフェノキサホスフィノイル)−9,9−ジメチルフルオレン((BDMPOPO)2DMFlu)(VI)の合成
【0198】
【化51】
【0199】
2,7−ジヨード−9,9−ジメチルフルオレン446mg(1.0mmol)、DMPOPO586mg(2.4mmol)、酢酸パラジウム23mg(0.10mmol)、dppp62mg(0.15mmol)、DIEA3.3mLをDMSO6.7mLに加え100℃で48時間撹拌した反応混合物は水に注ぎ、ジクロロメタンで抽出した。有機層は硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下で濃縮した。得られた残渣はカラムクロマトグラフィーにより精製を行った。得られた結晶はメタノール/トルエンで再結晶を行い、表題化合物350mg(52%)を得た。
APCI TOF MS m/z=678
【0200】
2,7−ビス(フェノキサホスフィノイル)−9,9−ジメチルフルオレン((DPOPO)2DMFlu)(VII)の合成
【0201】
【化52】
【0202】
2,7−ジヨード−9,9−ジメチルフルオレン180mg(0.40mmol)、POPO210mg(0.97mmol)、酢酸パラジウム9.1mg(0.040mmol)、DIEA1.3mLをDMSO2.7mLに加え、100℃で60時間撹拌した。得られた反応混合物は水に注ぎ、ジクロロメタンで抽出した。有機層は硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下で濃縮した。得られた残渣はカラムクロマトグラフィーにより精製を行った。得られた結晶はトルエンで再結晶を行い、表題化合物120mg(30%)を得た。
APCI TOF MS m/z=622
【0203】
2,6−ビス(4−(2,8−ジフルオロフェノキサホスフィノイル)フェニル)−4−(4−フェニルフェニル)ピリジン((DFPOPO−p−Ph)2BP−Py)(VIII)の合成
【0204】
【化53】
【0205】
2,6−(4−ヨードフェニル)−4−ビフェニルピリジン230mg(0.362mmol)、DFPOPO274mg(1.1mmol)、酢酸パラジウム8.13mg(0.036mmol)、dppp22.4mg(0.054mmol)、DIEA1.2mLをDMSO2.3mLに加え、100℃で48時間撹拌した。得られた反応混合物は水に注ぎ、ジクロロメタンで抽出した。有機層は硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下で濃縮した。得られた残渣はカラムクロマトグラフィーにより精製を行った。得られた結晶は2−プロパノールで再結晶を行い、表題化合物102mg(32%)を得た。
APCI TOF MS m/z=884
【0206】
2,6−ビス(3−(2,8−ジフルオロフェノキサホスフィノイル)フェニル)−4−(4−フェニルフェニル)ピリジン((DFPOPO−m−Ph)2BP−Py)(IX)の合成
【0207】
【化54】
【0208】
2,6−(3−ヨードフェニル)−4−ビフェニルピリジン950g(1.5mmol)、DFPOPO1.14g(4.5mmol)、酢酸パラジウム34.7mg(0.15mmol)、dppp92.8mg(0.23mmol)、DIEA4.8mLをDMSO9.6mL加え、100℃で48時間撹拌した。得られた反応混合物は水に注ぎ、ジクロロメタンで抽出した。有機層は硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下で濃縮した。得られた残渣はカラムクロマトグラフィーにより精製を行った。得られた固体はIPAで再結晶を行い、表題化合物410mg(31%)を得た。
APCI TOF MS m/z=883,884
【0209】
2,6−ビス(3−(2,8−ジフルオロフェノキサホスフィノイル)フェニル)−4−フェニルピリジン((DFPOPO−m−Ph)2Ph−Py)(X)の合成
【0210】
【化55】
【0211】
2,6−(3−ヨードフェニル)−4−フェニルピリジン369mg(0.66mmol)と、DFPOPO0.502g(2.0mmol)、酢酸パラジウム14.8mg(0.066mmol)、dppp40.5mg(0.098mmol)、DIEA2.1mLをDMSO4.2mLに加え、100℃で48時間撹拌した。得られた反応混合物は水に注ぎ、ジクロロメタンで抽出した。有機層は硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下で濃縮した。得られた残渣はカラムクロマトグラフィーにより精製を行った。得られた固体はトルエンで再結晶を行い、表題化合物255mg(48%)を得た。
APCI TOF MS m/z=807
【0212】
2,4−ビス(4−(2,8−ジフルオロフェノキサホスフィノイル)フェニル)−4−フェニルピリジン((DFPOPO−p−Ph)2Ph−TAZ)(XI)の合成
【0213】
【化56】
【0214】
2,4−ビス(4−ブロモフェニル)−6−フェニル−1,3,5−トリアジン989mg(2.12mmol)、2,8−ジフルオロ−フェノキサホスフィンオキシド1.60g(6.35mmol)、酢酸パラジウム48mg(0.212mmol)、dppp131mg(0.317mmol)、DIEA7.3mLをDMSO14.1mLに加え、100℃で60時間撹拌した。得られた反応混合物は水に注ぎ、ジクロロメタンで抽出した。有機層は硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下で濃縮した。得られた残渣はカラムクロマトグラフィーにより精製を行った。得られた固体はトルエンで再結晶を行い、表題化合物104mg(12%)を得た。
APCI TOF MS m/z=808
1H NMR(CDCl3) δ 7.20−7.99,8.64−8.88(m,25H,ArH)
【0215】
2,7−ビス(2.8−ジフルオロフェノキサホスフィノイル)−9,9−ジメチルフルオレン((DFPOPO)2DMFlu)(XII)の合成
【0216】
【化57】
【0217】
2,8−ジフルオロフェノキサホスフィン−10−オキシド920mg(3.65mmol)、2,7−ジブロモ−9,9−ジメチルフルオレン430mg(1.22mmol)、酢酸パラジウム27mg(0.122mmol)、dppp76mg(0.183mmol)、DIEA11.5mLをDMSO23.9mLに加え、100℃で60時間撹拌した。得られた反応混合物は水に注ぎ、ジクロロメタンで抽出した。有機層は硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下で濃縮した。得られた残渣はカラムクロマトグラフィーにより精製を行った。得られた固体はトルエンで再結晶を行い、表題化合物170mg(20%)を得た。
APCI TOF MS m/z=694
1H NMR(CDCl3) δ 1.53(s,6H,CH3),7.37−8.10(m,18H,ArH)
【0218】
3,5−ビス(4−(2,8−ジフルオロフェノキサホスフィノイル)フェニル)ベンゼン(3,5−(DFPOPO−p−Ph)2BP)(XIII)の合成
【0219】
【化58】
【0220】
1,3,5−トリス(4−ヨードフェニル)ベンゼン410mg(0.600mmol)、DFPOPO908mg(3.60mmol)、酢酸パラジウム74.2mg(0.180mmol)、dppp20.2mg(0.090mmol)、DIEA1.0mLをDMSO3.0mLに加え、100℃で48時間撹拌した。得られた反応混合物は水に注ぎ、ジクロロメタンで抽出した。有機層は硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下で濃縮した。得られた残渣はカラムクロマトグラフィーにより精製を行った。得られた固体はトルエンで再結晶を行い、表題化合物155mg(32%)を得た。
【0221】
2,2’−ビス(2,8−ジフルオロフェノキサホスフィノイル)−9,9−スピロビフルオレン(2,2'−(DFPOPO)2SPF)(XIV)の合成
【0222】
【化59】
【0223】
2,2'−ジヨード−9,9'−スピロビフルオレン568mg(1.00mmol)、DFPOPO1.01g(4.00mmol)、酢酸パラジウム22.5mg(0.100mmol)、dppp82.5mg(0.200mmol)、DIEA2.0mLをDMSO4.0mL、に加え、100℃で48時間撹拌した。得られた反応混合物は水に注ぎ、ジクロロメタンで抽出した。有機層は硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下で濃縮した。得られた残渣はジクロロメタン5.0mLに溶解し、30%過酸化水素水110mg(1.00mmol)を滴下し、室温で一晩撹拌した。反応終了後、水に注ぎ、ジクロロメタンで抽出した。有機層は飽和亜硫酸水素ナトリウム水溶液で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下で濃縮した。得られた残渣はカラムクロマトグラフィーにより精製を行った。得られた固体はトルエンで再結晶を行い、表題化合物302mg(37%)を得た。
APCI TOF MS m/z=884
【0224】
1,3−ビス(2,8−ジフルオロフェノキサホスフィノイル)−5−(カルバゾール−9−イル)ベンゼン(XV)の合成
【0225】
【化60】
【0226】
1,3−ジヨード−5−(カルバゾール−9−イル)−ベンゼン[5]550mg(1.1mmol)、2,8−ジフルオロフェノキサホスフィンオキシド1.11g(4.4mmol)、酢酸パラジウム25mg(0.11mmol)、dppp90mg(0.22mmol)、DIEA280mg(2.2mmol)を、DMSO4.4mLに加え、100℃で1時間加熱した。反応終了後、水に注ぎ、ジクロロメタンで抽出した。得られた有機層は硫酸マグネシウムで乾燥し減圧下で濃縮した。得られた残渣はカラムクロマトグラフィーで精製し、得られた固体はジクロロメタン/メタノールより再結晶を行い、表題化合物300mg(37%)を得た。
APCI TOF MS m/z=743
【0227】
1,3−ビス(2,8−ジフルオロフェノキサホスフィノイル)−5−((3,6−ジ−tert−ブチル)カルバゾール−9−イル)ベンゼン(XVI)の合成
【0228】
【化61】
【0229】
1,3−ジヨード−5−(3,6−ジ−tert−ブチルカルバゾール−9−イル)−ベンゼン300mg(0.5mmol)、2,8−ジフルオロフェノキサホスフィンオキシド450mg(1.8mmol)、酢酸パラジウム10mg(0.05mmol)、dppp40mg(0.1mmol)、DIEA130mg(1mmol)をDMSO2mLに加え、100℃で1時間撹拌した。反応終了後、水に注ぎ、ジクロロメタンで抽出した。有機層は硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下で濃縮した。得られた残渣はカラムクロマトグラフィーで精製し、得られた固体はジクロロメタン/メタノールより再結晶を行った。得られた結晶はさらに昇華精製で精製を行い、表題化合物250mg(57%)を得た。
APCI TOF MS m/z=845
【0230】
5−(3,6−ジ−tert−ブチルカルバゾール−9−イル)−3,5−ビス(4−(2,8−ジフルオロフェノキサホスフィノイル)フェニル)ベンゼン(XVII)の合成
【0231】
【化62】
【0232】
1−ブロモ−4−(2,8−ジフルオロフェノキサホスフィノイル)ベンゼン400mg(0.99mmol)、3,6−ジ−tert−ブチル−9−(3,5−ビス(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)フェニル)カルバゾール200mg(0.33mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)20mg(0.01mmol)、2M炭酸カリウム水溶液0.83mL、エタノール0.74mLをトルエン1.1mL加え、80℃で3時間撹拌した。反応終了後、水に注ぎ、トルエンで抽出した。有機層は硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下で濃縮した。得られた残渣はカラムクロマトグラフィーで精製した。得られた固体はジクロロメタン/メタノールより再結晶を行い、表題化合物230mg(69%)を得た。
APCI TOF MS m/z=1007
【0233】
2,7−ビス(フェノチアホスフィノイル)−9,9−ジメチルフルオレン(DPTPO−DMFlu)(XVIII)の合成
【0234】
【化63】
【0235】
2,7−ジヨード−9,9−ジメチルフルオレン363mg(0.814mmol)、PTPO460mg(1.98mmol)、酢酸パラジウム18mg(0.081mmol)、dppp50mg(0.122mmol)、DIEA2.6mLをDMSO5.4mLに加え100℃で48時間撹拌した。得られた反応混合物は水に注ぎジクロロメタンで抽出した。有機層は硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下で濃縮した。得られた残渣はカラムクロマトグラフィーにより精製を行った。得られた固体はシクロヘキサン/トルエンで再結晶を行い、表題化合物107mg(20%)を得た。
APCI TOF MS m/z=654
【0236】
2,2’,7,7’−テトラキス(フェノチアホスフィノイル)−9,9−スピロビフルオレン((PTPO)4SPF)(XIX)の合成
【0237】
【化64】
【0238】
2,2’,7,7’−テトラブロモ−9,9’−スピロビフルオレン210mg(0.340mmol)、PTPO0.650g(2.80mmol)、酢酸パラジウム29.6mg(0.132mmol)、dppp81.7mg(0.198mmol)、DIEA2.2mLをDMSO11.3mLに加え、100℃で60時間撹拌した。得られた反応混合物は水に注ぎ、ジクロロメタンで抽出した。有機層は硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下で濃縮した。得られた残渣はカラムクロマトグラフィーにより精製を行った。得られた固体はメタノール/トルエンで再結晶を行い、表題化合物249mg(59%)を得た。
APCI TOF MS m/z=1237
【0239】
2,7−ビス(5,5−ジオキソフェノチアホスフィノイル)−9,9−ジメチルフルオレン(BPTPTO−DMFlu)(XX)の合成
【0240】
【化65】
【0241】
BPTPT−DMFlu100mg(0.153mmol)をクロロホルム2.4mLに溶解し、0℃に冷却した。続いてmCPBA137mg(0.612mmol)を加え、室温で6時間撹拌した。反応混合物は水に注ぎ、ジクロロメタンで抽出した。有機層は飽和亜硫酸水素ナトリウム水溶液で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下で濃縮した。得られた残渣はカラムクロマトグラフィーにより精製を行った。得られた固体はトルエンで再結晶を行い、表題化合物100mg(91%)を得た。
APCI TOF MS m/z=718,719
1H NMR(CDCl3) δ1.35(s,6H),7.37−8.64(m,22H)
【0242】
2,7−ビス(5−オキソフェノチアホスフィノイル)−9,9−ジメチルフルオレン(BPTPDO−DMFlu)(XXI)の合成
【0243】
【化66】
【0244】
BPTPT−DMFlu400mg(0.61mmol)をクロロホルム9.6mLに溶解し、0℃に冷却した。続いてmCPBA274mg(1.22mmol)を加え、室温で3時間撹拌した。反応混合物は水に注ぎ、ジクロロメタンで抽出した。有機層は飽和亜硫酸水素ナトリウム水溶液で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下で濃縮した。得られた残渣はカラムクロマトグラフィーにより精製を行った。得られた固体はメタノール/トルエンで再結晶を行い、表題化合物66mg(16%)を得た。
APCI TOF MS m/z=686,687
【0245】
2,4−ビス(4−(9,9−ジメチルアクリドホスフィノイル)フェニル)−4−フェニル−1,3,5−トリアジン((DMAPO-p-Ph)2Ph-TAZ)(XXII)の合成
【0246】
【化67】
【0247】
10,10−ジメチルアクリドホスフィン−5−オキシド472mg(1.95mmol)、テトラブロモスピロビフルオレン304mg(0.65mmol)、酢酸パラジウム29mg(0.13mmol)、dppp107mg(0.26mmL)、ジイソプロピルエチルアミン0.9mLをDMSO2.6mLに加え、100℃で20時間撹拌した。反応終了後、飽和塩化アンモニウム水溶液に注ぎ、ジクロロメタンで抽出した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下で濃縮した。得られた残差はカラムクロマトグラフィーで精製し白色個体200mgを得た。得られた白色個体はトルエンより再結晶を行い表題化合物153mg(30%)を得た。
APCI TOF MS m/z=790
【0248】
実施例3:積層型有機EL素子(有機電界発光素子)の作製及び評価
【0249】
1.積層型有機EL素子(有機電界発光素子)の作製
150nmのITOガラス(□50mm ジオマテック製)上に0.023cmの積層型有機EL素子(赤色リン光素子又は緑色蛍光素子)を作製した。基板はアルカリ洗剤(関東化学製)、超純水、アセトン(和光純薬製)にて超音波洗浄(各5分)、2−プロパノール(和光純薬製)にて煮沸洗浄(5分)、次いでUV/O洗浄(15分)を行った。
【0250】
(1)赤色リン光素子
正孔注入層の有機膜は、スピンコート法、正孔輸送層、発光層、正孔ブロック層、電子輸送層の有機膜は、真空蒸着法にて、陽極であるITOガラス上に成膜した。各層の材料、成膜条件は以下の通りである。ドーピングを行っている発光層及のホスト材料とゲスト材料の比は、水晶振動子膜厚計でモニターし蒸着速度を調整することにより調整した。
【0251】
・正孔注入層:PEDOT−PSS(AI4083(Heraeus製))(40nm)
スピンコート2700rpm×45sec(大気雰囲気)
ベーク200℃ 60min(大気雰囲気)
・正孔輸送層:α−NPD(N,N’−ジ(ナフタレン−1−イル)−N,N’−ジフェニル−ベンジジン:下式参照)(40nm)
蒸着速度 1Å/秒、チャンバー圧<1×10−4Pa
・発光層(30nm)
ホスト材料:実施例2において合成した有機電子輸送材料
発光材料(ゲスト材料):Ir(piq)(下式参照)、6重量%
蒸着速度 1Å/秒、チャンバー圧<1×10−4Pa
・正孔ブロック層:BCP(2,9−ジメチル−4,7−ジフェニルフェナントロリン:下式参照)(10nm)
蒸着速度 1Å/秒、チャンバー圧<1×10−4Pa
・電子輸送層:Alq(トリス(8−キノリノラート)アルミニウム:下式参照)(30nm)
蒸着速度 1Å/秒、チャンバー圧<1×10−4Pa
【0252】
(2)緑色蛍光素子
正孔輸送層、発光層、電子輸送層の有機膜は、真空蒸着法にて、陽極であるITOガラス上に成膜した。各層の材料、成膜条件は以下の通りである。ドーピングを行っている電子輸送層のホスト材料とゲスト材料の比は、水晶振動子膜厚計でモニターし蒸着速度を調整することにより調整した。
【0253】
・正孔輸送層:α−NPD(40nm)
蒸着速度 1Å/秒、チャンバー圧<1×10−4Pa
・発光層:Alq(20nm)
蒸着速度 1Å/秒、チャンバー圧<1×10−4Pa
・電子輸送層:実施例2において合成した有機電子輸送材料(30nm)
【0254】
【化68】
【0255】
【化69】
【0256】
【化70】
【0257】
【化71】
【0258】
【化72】
【0259】
【化73】
【0260】
陰極(LiF/Al)の蒸着には、チャンバー圧<1×10−4Paの高真空蒸着装置を用いた。蒸着速度は、LiFについては0.1Å/s、Alについては5Å/sとした。全ての素子においてN雰囲気下で封止を行った。陰極の成膜が完了後、素子を窒素置換したグローブボックス(vac製、水分濃度1ppm以下、酸素濃度1ppm以下)内に直ちに移動し、乾燥シート剤(ダイニック製)を貼ったガラスキャップ(クライミング製)で素子を封止した。
【0261】
2.積層型有機EL素子の寿命の測定
積層型有機EL素子を25℃一定の恒温槽内に設置し、定電流連続駆動に伴う輝度、電圧の変化を、寿命評価測定装置(九州計測器製)を用いて測定した。
【0262】
3.結果
上記測定結果を表2及び表3に示す。表2は、赤色リン光素子における有機電子輸送材料(I)〜(XXIII)の評価結果を示す。表3は、緑色蛍光素子における有機電子輸送材料(I)〜(XXIII)の評価結果を示す。また、DPPO2DMFluを有機電子輸送材料として用いた比較例の結果も合わせて示す。下記の表から分かるように、有機電子輸送材料(I)〜(XXIII)では、高い寿命を有し、耐久性に優れる。
【0263】
【表2】
【0264】
【表3】
【0265】
なお、本発明は、本発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施形態及び変形が可能とされるものである。また、上述した実施形態は、本発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。つまり、本発明の範囲は、実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。そして、特許請求の範囲内及びそれと同等の発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、本発明の範囲内とみなされる。
【符号の説明】
【0266】
1 有機EL素子
2 透明基板
3 陽極
4 正孔輸送層
5 発光層
6 電子輸送層
7 陰極
8 封止部材
図1