特許第6808417号(P6808417)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6808417塩味増強剤、塩味増強・味質改善剤、塩味増強方法及び塩味増強・味質改善方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6808417
(24)【登録日】2020年12月11日
(45)【発行日】2021年1月6日
(54)【発明の名称】塩味増強剤、塩味増強・味質改善剤、塩味増強方法及び塩味増強・味質改善方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 27/00 20160101AFI20201221BHJP
   A23L 23/00 20160101ALN20201221BHJP
【FI】
   A23L27/00 Z
   A23L27/00 D
   !A23L23/00
【請求項の数】12
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-186130(P2016-186130)
(22)【出願日】2016年9月23日
(65)【公開番号】特開2017-118867(P2017-118867A)
(43)【公開日】2017年7月6日
【審査請求日】2019年9月19日
(31)【優先権主張番号】特願2015-253118(P2015-253118)
(32)【優先日】2015年12月25日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000231453
【氏名又は名称】日本食品化工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100086689
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100157772
【弁理士】
【氏名又は名称】宮尾 武孝
(72)【発明者】
【氏名】大野 英理子
(72)【発明者】
【氏名】三輪 加納
(72)【発明者】
【氏名】早川 忠良
【審査官】 飯室 里美
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−262642(JP,A)
【文献】 特開平11−299453(JP,A)
【文献】 特開2015−008687(JP,A)
【文献】 特開平03−083557(JP,A)
【文献】 特開2011−206030(JP,A)
【文献】 特開2003−289837(JP,A)
【文献】 特開2014−233262(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 27/00
A23L 23/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/FSTA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩化ナトリウムを0.01〜99.9質量%含有する飲食品に適用される塩味増強剤であって、ゲンチオビオースを有効成分として含有することを特徴とする塩味増強剤。
【請求項2】
塩化ナトリウム1質量部に対して、ゲンチオビオースが0.002〜0.3質量部添加されるように用いられる請求項1記載の塩味増強剤。
【請求項3】
つゆ類、調味料、スープ類又は米飯類に適用される請求項1又は2記載の塩味増強剤。
【請求項4】
塩化ナトリウムと塩化カリウムとを含有し、両者の含有量が合計で0.01〜99.9質量%である飲食品に適用される塩味増強・味質改善剤であって、ゲンチオビオースを有効成分として含有することを特徴とする、塩味を増強し、塩化カリウムのエグミを改善するための塩味増強・味質改善剤。
【請求項5】
前記飲食品が、塩化ナトリウムと塩化カリウムとを、質量比で1:0.01〜50の割合で含有するものである請求項4記載の塩味増強・味質改善剤。
【請求項6】
塩化ナトリウム及び塩化カリウムの合計1質量部に対して、ゲンチオビオースが0.002〜0.2質量部添加されるように用いられる請求項4又は5記載の塩味増強剤。
【請求項7】
つゆ類、調味料、スープ類又は米飯類に適用される請求項4〜6のいずれか1つに記載の塩味増強・味質改善剤。
【請求項8】
塩化ナトリウムを0.01〜99.9質量%含有する飲食品に対して、塩化ナトリウム1質量部に対してゲンチオビオースを0.002〜0.3質量部添加することを特徴とする塩味増強方法。
【請求項9】
つゆ類、調味料、スープ類又は米飯類に適用される請求項8記載の塩味増強方法。
【請求項10】
塩化ナトリウムと塩化カリウムとを含有し、両者の含有量が合計で0.01〜99.9質量%である飲食品に対して、塩化ナトリウム及び塩化カリウムの合計1質量部に対してゲンチオビオースを0.002〜0.2質量部添加することを特徴とする、塩味を増強し、塩化カリウムのエグミを改善するための塩味増強・味質改善方法。
【請求項11】
前記飲食品が、塩化ナトリウムと塩化カリウムとを、質量比で1:0.01〜50の割合で含有するものである請求項10記載の塩味増強・味質改善方法。
【請求項12】
つゆ類、調味料、スープ類又は米飯類に適用される請求項10又は11記載の塩味増強・味質改善方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塩化ナトリウムを含有する飲食品に対する塩味増強剤及び塩味増強方法、並びに、塩化ナトリウム及び塩化カリウムを含有する飲食品に対する塩味増強・味質改善剤及び塩味増強・味質改善方法に関する。
【背景技術】
【0002】
塩味は5つの基本味の1つであり、塩化ナトリウムは飲食品の味を大きく左右する食品には欠くことのできないものである。また、嗜好性の面だけでなく、「敵に塩を送る」という故事も知られる通り塩化ナトリウムは生理的にも人間に必須なものである。一方で、近年では塩分の取り過ぎが問題視されており、塩化ナトリウムの過剰摂取は、高血圧症、腎臓疾患、心疾患等の疾病を引き起こすと言われている。
【0003】
そこで、塩化ナトリウム量を削減した様々な減塩食品が開発されているが、塩化ナトリウムの削減に伴い塩味が薄れ飲食品の味がバランスを失ったりぼけたりしてしまうため、そのままでは消費者に受け入れられ難い。このため、塩化ナトリウムの代替となる代替塩や、少ない塩分でも十分に塩味を感じられるよう塩味を増強する素材が開発されている。
【0004】
塩味増強剤として、特定の蛋白分解物やアミノ酸、有機酸が報告されており、特定の糖質においても当該効果が報告されている。例えば、特許文献1にはトレハロースによる塩味増強効果が記載されている。特許文献2には2糖類以上の糖類を75%以上含有し特定粘度を有する糖組成物による塩味増強効果が記載されている。特許文献3には水溶性食物繊維による塩味増強効果が記載されている。特許文献4にはD-プシコースによる塩味増強効果が記載されている。特許文献5には単糖類が30〜70重量%、二糖類が30〜70重量%、三糖類以上が25重量%以下である高糖化還元水飴による塩味増強効果が記載されている。
【0005】
また、塩化ナトリウムの一部を塩化カリウムで代替する減塩方法も存在するが、塩化カリウムは特有のえぐみを有しており、味へ悪影響が出ることが知られている。
【0006】
一方、下記特許文献6には、ゲンチオオリゴ糖高含有シラップの製造方法が開示されており、得られるゲンチオオリゴ糖高含有シラップは、ダイエット甘味料として、味覚改善用糖質として、物性改良剤として、幅広い用途に利用することができることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−066540号公報
【特許文献2】特開2006−314235号公報
【特許文献3】国際公開第2012/017710号公報
【特許文献4】国際公開第2014/168015号公報
【特許文献5】特開2008−99624号公報
【特許文献6】特許第2721968号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のように、各種の糖質からなる塩味増強剤が提案されているが、その効果は、未だ充分とは言えなかった。
【0009】
また、塩化ナトリウムの一部を塩化カリウムで代替する減塩方法においては、塩味を増強しつつ、塩化カリウム特有のえぐみを軽減することが求められていた。
【0010】
本発明の目的は、新たな塩味増強剤、塩味増強・味質改善剤、塩味増強方法及び塩味増強・味質改善方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決するために、鋭意研究を重ねた結果、ゲンチオビオースが、塩味増強効果、並びに塩化カリウムの味質改善効果を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明の1つは、塩化ナトリウムを0.01〜99.9質量%含有する飲食品に適用される塩味増強剤であって、ゲンチオビオースを有効成分として含有することを特徴とする塩味増強剤を提供する。
【0013】
上記塩味増強剤は、塩化ナトリウム1質量部に対して、ゲンチオビオースが0.002〜0.3質量部添加されるように用いられることが好ましい。
【0014】
上記塩味増強剤は、つゆ類、調味料、スープ類又は米飯類に適用されることが好ましい。
【0015】
本発明のもう1つは、塩化ナトリウム及び塩化カリウムを合計で0.01〜99.9質量%含有する飲食品に適用される塩味増強・味質改善剤であって、ゲンチオビオースを有効成分として含有することを特徴とする塩味増強・味質改善剤を提供する。
【0016】
上記塩味増強・味質改善剤において、前記飲食品は、塩化ナトリウムと塩化カリウムとを、質量比で1:0.01〜50の割合で含有するものであることが好ましい。
【0017】
また、上記塩味増強・味質改善剤は、塩化ナトリウム及び塩化カリウムの合計1質量部に対して、ゲンチオビオースが0.002〜0.2質量部添加されるように用いられることが好ましい。
【0018】
更に、上記塩味増強・味質改善剤は、つゆ類、調味料、スープ類又は米飯類に適用されることが好ましい。
【0019】
本発明の更にもう1つは、塩化ナトリウムを0.01〜99.9質量%含有する飲食品に対して、塩化ナトリウム1質量部に対してゲンチオビオースを0.002〜0.3質量部添加することを特徴とする塩味増強方法を提供する。
【0020】
上記塩味増強方法は、つゆ類、調味料、スープ類又は米飯類に適用されることが好ましい。
【0021】
本発明の更にもう1つは、塩化ナトリウム及び塩化カリウムを合計で0.01〜99.9質量%含有する飲食品に対して、塩化ナトリウム及び塩化カリウムの合計1質量部に対してゲンチオビオースを0.002〜0.2質量部添加することを特徴とする塩味増強・味質改善方法を提供する。
【0022】
上記塩味増強・味質改善方法においては、前記飲食品が、塩化ナトリウムと塩化カリウムとを、質量比で1:0.01〜50の割合で含有するものであることが好ましい。
【0023】
上記塩味増強・味質改善方法は、つゆ類、調味料、スープ類又は米飯類に適用されることが好ましい。
【発明の効果】
【0024】
本発明の塩味増強剤及び塩味増強方法によれば、塩化ナトリウム(食塩)を所定量含有する飲食品に、本発明の塩味増強剤を添加することにより、飲食品の塩味を増強することができる。より詳しくは、飲食品等に含まれる塩化ナトリウム由来の塩味を増し、より強く塩味を感じるようにすることができる。ひいては塩化ナトリウムの使用量を低減することができる。
【0025】
また、本発明の塩味増強・味質改善剤及び塩味増強・味質改善方法によれば、塩化ナトリウム及び塩化カリウムを所定量含有する飲食品に、本発明の塩味増強・味質改善剤を添加することにより、飲食品の塩味を増強することができると共に、塩化カリウムに由来するえぐみを軽減して味質を改善することができる。それによって、塩化ナトリウムの使用量を更に低減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の塩味増強剤及び塩味増強・味質改善剤は、ゲンチオビオースを有効成分として含有するものである。
【0027】
ゲンチオビオースは、2個のグルコースがβ−1,6−グルコシド結合したβ−グルコオリゴ糖である。
【0028】
本発明では、ゲンチオビオースの精製品を用いることもできるが、原料コストの観点から、ゲンチオビオースを含有するゲンチオオリゴ糖組成物を用いることが好ましい。ゲンチオオリゴ糖組成物は、グルコースがβ−1,6−グルコシド結合したβ−グルコオリゴ糖のうち、重合度2のゲンチオビオース、重合度3のゲンチオトリオース、重合度4のゲンチオテトラオース等、複数のゲンチオオリゴ糖を含有する組成物である。
【0029】
ゲンチオビオースに限らず、他のゲンチオオリゴ糖も塩味増強効果及び味質改善効果を有しているが、ゲンチオオリゴ糖の中でもゲンチオビオースが、特に優れた塩味増強効果及び味質改善効果を有している。
【0030】
ゲンチオオリゴ糖は、便通改善やカルシウム吸収促進等の生理機能を有している事が知られており、また特有の苦味を有しており果汁感増強効果、高甘味度甘味料の味質改善効果、乳類の後味のキレ改善効果等を有している事が知られている。更に、カラメルやカラメル色素の酸味を抑制する効果を有している。しかしながら、ゲンチオオリゴ糖が塩味増強効果を有することに関しては、報告例がない。
【0031】
ゲンチオビオース、又はゲンチオビオースを含むゲンチオオリゴ糖組成物の製造方法には特に制限は無く、例えば、ゲンチアノースの酸分解、プスツランやラミナラン等の加水分解物からの調製が挙げられるが、製造効率・コストの観点から高濃度グルコース溶液に微生物起源のβ−グルコシダーゼを作用させることで製造するのが好ましい(特許第2750374号公報参照)。
【0032】
本発明で用いるゲンチオビオースを含有するゲンチオオリゴ糖組成物は、ゲンチオオリゴ糖だけの純品でもよいが、その他の糖質との混合物であってもよい。ゲンチオビオースを含有するゲンチオオリゴ糖組成物として、市販品を使用してもよく、例えば、ゲンチオオリゴ糖含有糖質であるグルコオリゴ糖シラップとして「日食ゲントース#45」(商品名)が日本食品化工株式会社より販売されており、本発明に好適に使用できる。なお、当該製品は、グルコースを固形分濃度で30質量%以上含有している。
【0033】
本発明の塩味増強剤、並びに塩味増強・呈味改善剤は、本発明の効果を損なわない範囲で、ゲンチオビオースを含むゲンチオオリゴ糖以外の成分を含んでもよい。その成分としては、例えば、トレハロース、食物繊維、糖アルコール、塩化カリウム等の塩味増強作用を有する他の物質や、その他一般的に飲食品に添加されるもの、例えば油脂類、糖質、乳化剤、酵素類、蛋白質、ポリペプチド、アミノ酸、有機酸類、甘味料、香辛料、増粘多糖類、無機塩類(塩化ナトリウムを除く)、酸化剤、還元剤、保存料、着色料、香料等が挙げられる。その他の成分として、その適度な甘味のためグルコースを含有することが好ましく、グルコースを固形分濃度で30%以上含有していることがより好ましい。
【0034】
本発明の塩味増強剤は、塩化ナトリウムを0.01〜99.9質量%含有する飲食品に好適に使用される。塩化ナトリウムを0.1〜80質量%含有する飲食品に更に好適であり、塩化ナトリウムを0.1〜50質量%含有する飲食品に特に好適であり、塩化ナトリウムを0.1〜20質量%含有する飲食品に最も好適である。塩化ナトリウムの含有量が0.01質量%よりも少ない飲食品には、本発明の塩味増強剤を添加しても塩味を十分に付与しにくくなり、塩化ナトリウムの含有量が99.9質量%よりも多い飲食品の場合には、それ自体で十分な塩味が付与されるので、本発明の塩味増強剤を添加する必要性が少なくなる。本発明の塩味増強剤を添加することにより、飲食品の塩分を低減しつつ味を維持することができるため、減塩飲食品に好適である。
【0035】
また、本発明の塩味増強・味質改善剤は、塩化ナトリウム及び塩化カリウムを合計で0.01〜99.9質量%含有する飲食品に好適に使用される。塩化ナトリウム及び塩化カリウムを合計で0.1〜95質量%含有する飲食品に更に好適であり、塩化ナトリウム及び塩化カリウムを合計で0.1〜90質量%含有する飲食品に特に好適であり、塩化ナトリウム及び塩化カリウムを合計で0.1〜70質量%含有する飲食品に最も好適である。塩化ナトリウム及び塩化カリウムの含有量が0.01質量%よりも少ない飲食品には、本発明の塩味増強剤を添加しても塩味を十分に付与しにくくなり、塩化ナトリウム及び塩化カリウムの含有量が99.9質量%よりも多い飲食品の場合には、それ自体で十分な塩味が付与されるので、本発明の塩味増強剤を添加する必要性が少なくなる。
【0036】
また、前記飲食品は、塩化ナトリウムと塩化カリウムとを、質量比で1:0.01〜50の割合で含有するものであることが好ましく、塩化ナトリウムと塩化カリウムとを、質量比で1:0.05〜10の割合で含有するものであることがより好ましく、塩化ナトリウムと塩化カリウムとを、質量比で1:0.1〜5の割合で含有するものであることが特に好ましい。塩化ナトリウムと塩化カリウムとを上記割合で含有することにより、塩化カリウムの塩味増強効果が効果的に得られると共に、塩化カリウムに起因する不快なえぐみ等をできるだけ抑制することができる。なお、塩化カリウムと同様にリン酸カリウムやクエン酸カリウム等のカリウム塩が塩化ナトリウムと併用される場合もあるが、それらの有するカリウム由来の不快なえぐみ等についても、同様に本発明によりその味質を改善することができる。
本発明の塩味増強・味質改善剤は、塩化ナトリウム及び塩化カリウムを含有する飲食品に添加することにより、飲食品の塩味を増強することができると共に、塩化カリウムに由来するえぐみを軽減して味質を改善することができるので、塩化ナトリウムの使用量を更に低減することができる。
【0037】
本発明の塩味増強剤及び塩味増強・味質改善剤は、塩化ナトリウム、あるいは塩化ナトリウム及び塩化カリウムを含有する種々の食品に添加することができ、その具体的用途に特に制限はないが、後述の実施例から明らかなように、つゆ類、調味料、スープ類、米飯類において特に顕著な効果を発揮できることから、特につゆ類、調味料、スープ類、米飯類用に用いるのが好ましい。
【0038】
本発明において、つゆ類とは、比較的低粘度の調味液であり、食品(具材)を浸したり食品(具材)を煮たりする調味液を意味する。つゆ類としては、牛丼のつゆ、すき焼きのつゆ、煮物のつゆ、出汁つゆ、天つゆ、めんつゆ、そばつゆ、うどんのつゆ、中華麺のつゆ、冷し中華のつゆ等が例示される。
【0039】
本発明において、調味料とは、食品にそのままかけたり、調理の味付けに用いられたりするものを意味する。調味料としては、醤油、味噌、テーブルソルト、ふりかけ、だしの素、ウスターソース、ステーキソース、焼きそばソース、お好み焼きソース、たこ焼きソース、ケチャップ、マヨネーズ、ドレッシング、チーズソース、ディップソース、焼肉のたれ、焼き鳥のたれ、蒲焼のたれ、照り焼きのたれ、中華調味料、惣菜用調味料、漬け物用調味料等が例示される。
本発明において、スープ類とは、そのまま食する低粘度の液状食品を意味する。スープ類としては、味噌汁、澄まし汁、お吸い物、中華スープ、ラーメンスープ、コンソメスープ、コーンスープ、鍋用スープ、お茶漬け等が例示される。
つゆ類、調味料、スープ類は、日々の食事において摂食頻度が高く、塩味が求められる場合が多いため、特に本発明の効果を有利に発揮することができる。
【0040】
飲食品へのゲンチオビオースの添加量は、特に制限はないが、塩化ナトリウムを含有する飲食品に対する塩味増強効果や、塩化ナトリウム及び塩化カリウムを含有する飲食品に対する塩味増強・味質改善効果を考慮すると、飲食品に対して、ゲンチオビオースの添加量を0.001〜4.0質量%とすることが好ましく、0.001〜3.0質量%とすることがより好ましく、0.01〜2.0質量%とすることが特に好ましい。ゲンチオビオースの含有量を0.001質量%以上とすることで、塩味増強効果並びに塩味増強・味質改善効果をより顕著に得ることができる。また、ゲンチオビオースの含有量を4.0質量%以下とすることで、ゲンチオビオース由来の苦味の悪影響を最小限に抑え、より顕著に塩味増強効果及び塩味増強・味質改善効果を得る事ができる。
【0041】
また、本発明の塩味増強剤の添加量は、飲食品中に含まれる塩化ナトリウム1質量部に対して、ゲンチオビオースが0.002〜0.3質量部添加されるようにすることが好ましく、ゲンチオビオースが0.005〜0.12質量部添加されるようにすることがより好ましく、ゲンチオビオースが0.006〜0.1質量部添加されるようにすることが特に好ましい。塩化ナトリウム1質量部に対するゲンチオビオースの添加量を0.002質量部以上とすることにより、塩味増強効果を効果的に得ることができる。塩化ナトリウム1質量部に対するゲンチオビオースの添加量を0.3質量部以下とすることにより、ゲンチオビオースの苦み等が生じるのを抑制できる。
【0042】
更に、本発明の塩味増強・味質改善剤の添加量は、飲食品中に含まれる塩化ナトリウム及び塩化カリウムの合計量1質量部に対して、ゲンチオビオースが0.002〜0.2質量部添加されるようにすることが好ましく、ゲンチオビオースが0.003〜0.15質量部添加されるようにすることがより好ましく、ゲンチオビオースが0.003〜0.03質量部添加されるようにすることが特に好ましい。塩化ナトリウム及び塩化カリウムの合計1質量部に対するゲンチオビオースの添加量を0.002質量部以上とすることにより、塩味増強効果及び味質改善効果を効果的に得ることができる。塩化ナトリウム及び塩化カリウムの合計1質量部に対するゲンチオビオースの添加量を0.2質量部以下とすることにより、ゲンチオビオースの苦み等が生じるのを抑制できる。
【実施例】
【0043】
以下に実施例を挙げて本発明の詳細を説明するが、本発明の技術的範囲は以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例において単に%と記載した場合は、質量%を意味する。
【0044】
[実施例1]
<各種糖質の塩味増強効果1>
食塩1.5%及びゲンチオビオース0.02%となるよう、水に食塩及びゲンチオオリゴ糖含有糖質(商品名「日食ゲントース#45」、日本食品化工社製)を添加しゲンチオオリゴ糖含有食塩水を調製した。
【0045】
また、ゲンチオオリゴ糖以外の糖質を、上記ゲンチオオリゴ糖含有糖質と同じ固形分量となるように添加して、各種糖質を含有する1.5%食塩水をそれぞれ調製した。なお、各種糖質は、トレハロース(林原社製)、グラニュー糖(フジ日本精糖社製)、難消化性デキストリン(商品名「ファイバーソルII」、松谷化学工業社製)、難消化性グルカン(商品名「フィットファイバー#80」、日本食品化工社製)を用いた。
【0046】
コントロールは、糖質を添加しない1.5%食塩水(未添加区)とした。
【0047】
得られた各種食塩水について、11名のパネラーにて塩味の官能検査を実施した。具体的には、塩味の強さについて未添加区を5点として1〜15点で評価し、平均点を算出した。その結果を表1に示した。
【0048】
【表1】
【0049】
表1の通り、ゲンチオオリゴ糖(ゲンチオビオース)を添加した食塩水は、評価点が8点を超えており、評価点が6点代であった他の糖質を添加した食塩水に比べ特に顕著な塩味増強効果を有している事が明らかとなった。
【0050】
[実施例2]
<各種糖質の塩味増強効果2>
食塩1.0%及びゲンチオビオース0.02%となるよう、水に食塩及びゲンチオオリゴ糖含有糖質(商品名「日食ゲントース#45」、日本食品化工社製)を添加しゲンチオオリゴ糖含有食塩水を調製した。
【0051】
また、ゲンチオオリゴ糖の代わりに、糖アルコール(商品名「アマミール」、三菱商事フードテック社製)を同様に添加した糖アルコール含有1.0%食塩水を調製した。糖アルコールは、添加する固形分量がゲンチオオリゴ糖添加区と一致するように添加した。なお、上記糖アルコールは、単糖類、二糖及び三糖類以上をそれぞれ40〜50%、30〜55%及び20%以下含有する、特許文献5に記載の高糖化還元水飴である。
【0052】
コントロールは、糖質を添加しない1.0%食塩水(未添加区)とした。
【0053】
得られた各種食塩水について、10名のパネラーにて塩味の官能検査を実施した。具体的には、塩味の強さについて1〜15点で評価し、平均点を算出した。その結果を表2に示した。
【0054】
【表2】
【0055】
表2の通り、ゲンチオオリゴ糖を添加した食塩水は、評価点が10.2点と10点を超えており、評価点が8.3点であった未添加区と比べ顕著に塩味が増強されていた。一方、糖アルコールを添加した試験区は、評価点が7.5点と未添加区(食塩水)に比べ低い値を示していた。
【0056】
[実施例3]
<各種糖質の塩化カリウムの味質改善効果>
食塩0.75%、塩化カリウム0.75%及びゲンチオビオース0.02%となるよう、水に食塩、塩化カリウム及びゲンチオオリゴ糖含有糖質(商品名「日食ゲントース#45」、日本食品化工社製)を添加しゲンチオオリゴ糖含有溶液を調製した。また、ゲンチオオリゴ糖の代わりに難消化性デキストリン(商品名「ファイバーソル2」、松谷化学工業社製)を同様に添加した難消化性デキストリン含有溶液を調製した。難消化性デキストリンは、添加する固形分量がゲンチオオリゴ糖添加区と一致するように添加した。コントロールは、糖質を添加しない食塩・塩化ナトリウム溶液(未添加区)とした。
【0057】
得られた各種溶液について、11名のパネラーにて塩味及び塩化ナトリウムのえぐみの官能検査を実施した。具体的には、塩味の強さ及び塩化ナトリウムのえぐみの強さについて未添加区を0点として下記基準を用いて−2〜2点で0.5点単位にて評価し、平均点を算出した。その結果を表3に示した。
−2点:著しく低減している、−1点:やや低減している、0点:同等、1点:やや増強している、2点:著しく増強している
【0058】
【表3】
【0059】
表3の通り、ゲンチオオリゴ糖を添加した溶液は、塩味の評価点が0.4点と未添加区に比べ塩味が増強されており、また塩化ナトリウムのえぐみの評価点が−0.3点と未添加区に比べえぐみが低減し味質が改善されていた。一方で、水溶性食物繊維である難消化性デキストリンを添加した溶液は、塩味の評価点が−0.2点と未添加区に比べ塩味が低減しており、また塩化ナトリウムのえぐみの評価点が0.6点と未添加区に比べえぐみが増強し味質が損なわれていた。
【0060】
[実施例4]
<塩化ナトリウムとゲンチオビオースの質量比>
塩化ナトリウム及びゲンチオビオース含量が表4の濃度となるように、塩化ナトリウム及びゲンチオオリゴ糖含有糖質(商品名「日食ゲントース#45」、日本食品化工社製)を添加し、水溶液を調製した。得られた各溶液を、4名のパネラーにて塩味の強さ及び味質(苦味の影響)について官能検査を実施した。
【0061】
具体的には、塩味の強さについては、未添加区を7点として1〜15点で評価(塩味が強い程評価点は高い)し、平均点を算出した。 味質については、下記基準を用いてパネラー全員の評価を総合し評価した。
×:ゲンチオビオース由来の苦味を強く感じる
△:ゲンチオビオース由来の苦味をわずかに感じる
○:苦味を感じない
また、得られた溶液の塩味の強さ及び味質について、総合的に下記基準を用いて評価した。
×:未添加区と塩味が同等
△:塩味が僅かに増強している、又は塩味は増強しているがその味質に問題が有る
○:塩味が強く増強されており、味質に大きな問題無し
◎:塩味が特に強く増強されており、味質に問題無し
その結果を表4に示した。
【0062】
【表4】
【0063】
表4の通り、ゲンチオビオースを添加した全ての溶液において未添加区に比べ塩味増強効果が確認された。特に、塩化ナトリウム1質量部に対してゲンチオビオースを0.003質量部以上添加した溶液において強い塩味増強効果が確認され、ゲンチオビオースを0.0075〜0.075質量部添加した溶液において顕著に強い塩味増強効果が確認された。なお、塩化ナトリウム1質量部に対してゲンチオビオースを0.375〜1.5質量部添加した溶液は、塩味増強効果は十分発揮されたが、ゲンチオビオース由来の苦味が強くなってしまったためその味質に問題が有った。
【0064】
[実施例5]
<塩化ナトリウム及び塩化カリウムとゲンチオビオースの質量比>
塩化ナトリウム、塩化カリウム及びゲンチオビオース含量が表5の濃度となるよう、塩化ナトリウム、塩化カリウム及びゲンチオオリゴ糖含有糖質(商品名「日食ゲントース#45」、日本食品化工社製)を添加し、水溶液を調製した。得られた各溶液を、4名のパネラーにて塩味の強さ及び味質(塩化カリウムのえぐみの強さ、苦味の影響)について官能検査を実施した。
【0065】
具体的には、塩味の強さについて未添加区を7点として1〜15点で評価(塩味が強い程評価点は高い)し、平均点を算出した。
えぐみの強さについて未添加区を7点として1〜15点で評価(えぐみが強い程評価点は高い)し、平均点を算出した。
苦味の影響について下記基準を用いてパネラー全員の評価を総合し評価した。
×:ゲンチオビオース由来の苦味を強く感じる
△:ゲンチオビオース由来の苦味をわずかに感じる
○:苦味を感じない
また、得られた溶液の塩味の強さ及び味質について総合的に下記基準を用いて評価した。
×:未添加区と塩味・えぐみが同等
△:塩味が僅かに増強しえぐみが僅かに低減されている、又は塩味は増強しえぐみも低減しているがその味質(苦味)に問題が有る
○:塩味が強く増強されえぐみも十分に低減しており、味質(苦味)に大きな問題無し
◎:塩味が特に強く増強されえぐみも十分に低減しており、味質(苦味)に問題無し
その結果を表5に示した。
【0066】
【表5】
【0067】
表5の通り、ゲンチオビオースを添加した全ての溶液において、未添加区に比べ塩味増強効果及びえぐみの低減効果が確認された。特に、塩化ナトリウム及び塩化カリウムの合計1質量部に対してゲンチオビオースを0.005質量部以上添加した溶液において強い塩味増強効果が確認されえぐみ低減効果も十分に確認された。なお、塩化ナトリウム及び塩化カリウムの合計1質量部に対してゲンチオビオースを0.25〜1質量部添加した溶液は、塩味増強効果及びえぐみ低減効果は十分発揮されたが、ゲンチオビオース由来の苦味が強くなってしまったためその味質に問題が有った。
なお、実施例1〜5で調製した水溶液をそのまま調味料(塩味調味液)として用いることもでき、また粉末化することで、テーブルソルト等の粉末調味料を得ることもできる。
【0068】
[実施例6]
<牛丼のつゆ>
市販のレトルト牛丼にゲンチオビオースが0.04%となるようゲンチオオリゴ糖含有糖質(商品名「日食ゲントース#45」、日本食品化工社製)を添加し、ゲンチオオリゴ糖を含有する、レトルトパックに入った牛丼のつゆ(具材等を含む、塩化ナトリウム含有量1.6質量%)を調製した。
【0069】
また、ゲンチオオリゴ糖の代わりに、マルトオリゴ糖(商品名「フジオリゴ#450」、日本食品化工社製)又はニゲロオリゴ糖(商品名「テイストオリゴ」、日本食品化工社製)を添加した牛丼のつゆもそれぞれ調製した。なお、マルトオリゴ糖又はニゲロオリゴ糖は、ゲンチオオリゴ糖含有糖質と同固形分量となるように添加した。その後、加熱してご飯にかけて牛丼とし、官能評価を実施した。
【0070】
得られたゲンチオオリゴ糖含有牛丼は、ゲンチオオリゴ糖未添加のもの(市販の牛丼)に比べそのつゆの塩味が増強されており塩味を強く感じるものであった。また、ゲンチオオリゴ糖の添加により牛丼のつゆのコクが増していた。一方で、マルトオリゴ糖やニゲロオリゴ糖を添加した牛丼のつゆは、未添加のつゆに比べ甘味やコクは増しているが、ゲンチオオリゴ糖を添加したつゆに比べ、塩味は増強されていなかった。
【0071】
[実施例7]
<冷やし中華のつゆ>
市販の冷やし中華のつゆ(塩化ナトリウム含有量5.1質量%)にゲンチオビオースが0.04%、0.06%となるようそれぞれゲンチオオリゴ糖含有糖質(商品名「日食ゲントース#45」、日本食品化工社製)を添加し、ゲンチオオリゴ糖含有冷やし中華のつゆを調製した。
【0072】
官能評価の結果、ゲンチオオリゴ糖を添加した冷やし中華のつゆは、いずれも未添加のつゆに比べその塩味が増強されており塩味を強く感じるものであった。また、ゲンチオオリゴ糖の添加により冷やし中華のつゆの味が濃くなり、コクが増していた。
【0073】
[実施例8]
<めんつゆ>
市販のめんつゆ(塩化ナトリウム含有量9.8質量%)にゲンチオビオースが0.02%となるようそれぞれゲンチオオリゴ糖含有糖質(商品名「日食ゲントース#45」、日本食品化工社製)を添加し、ゲンチオオリゴ糖含有めんつゆを調製した。また、ゲンチオオリゴ糖の代わりに、糖アルコール(商品名「アマミール」、三菱商事フードテック社製)を添加しためんつゆも調製した。なお、糖アルコールは、ゲンチオオリゴ糖含有糖質と同固形分量となるように添加した。
【0074】
官能評価の結果、ゲンチオオリゴ糖を添加しためんつゆは、未添加の麺つゆに比べトップの味が立ち後味が切れることで味がシャープになっており、塩味を強く感じるものであった。一方で、糖アルコールを添加しためんつゆは、甘味が強く味がまろやかになるが、塩味は増強されていなかった。
【0075】
[実施例9]
<焼きそばソース>
市販のインスタントソース焼きそばのソース(塩化ナトリウム含有量12.4質量%)にゲンチオビオースが0.21%、0.41%、0.82%となるようそれぞれゲンチオオリゴ糖含有糖質(商品名「日食ゲントース#45」、日本食品化工社製)を添加し、ゲンチオオリゴ糖含有焼きそばのソースを調製した。その後、常法により調理したインスタント焼きそばの麺にソースを絡めて官能評価を実施した。
【0076】
官能評価の結果、ゲンチオオリゴ糖を添加して得られた焼きそばは、いずれも未添加の焼きそばに比べソースの塩味が増強されており塩味を強く感じるものであった。また、ゲンチオオリゴ糖の添加により焼きそばのソースの味が濃くなり、コクが増し、さらに味のトップの厚みが増していた。特に、ゲンチオビオースを0.41%含有するソースが強い塩味増強効果を発揮していた。
【0077】
[実施例10]
<チーズソース>
市販のチーズソース(塩化ナトリウム含有量1.3質量%)にゲンチオビオースが0.02%、0.04%となるようそれぞれゲンチオオリゴ糖含有糖質(商品名「日食ゲントース#45」、日本食品化工社製)を添加し、ゲンチオオリゴ糖含有チーズソースを調製した。
【0078】
官能評価の結果、ゲンチオオリゴ糖を添加して得られたチーズソースは、いずれも未添加のチーズソースに比べ、その塩味が増強されていた。また、ゲンチオオリゴ糖の添加により、トップの味の厚みが増し、チーズ感が向上した。
【0079】
[実施例11]
<コンソメスープ>
市販の粉末コンソメスープの素をお湯に溶かし、ゲンチオビオースが0.02%となるようゲンチオオリゴ糖含有糖質(商品名「日食ゲントース#45」、日本食品化工社製)を添加し、ゲンチオオリゴ糖含有コンソメスープ(塩化ナトリウム含有量0.8質量%)を調製した。また、ゲンチオオリゴ糖の代わりに、0.1%となるよう食塩を添加したコンソメスープと、糖アルコール(商品名「アマミール」、三菱商事フードテック社製)を添加したコンソメスープも調製した。なお、糖アルコールは、ゲンチオオリゴ糖含有糖質と同固形分量となるように添加した。
【0080】
70〜75℃程度に湯煎で温めたコンソメスープを官能評価した。その結果、ゲンチオオリゴ糖あるいは食塩を添加したコンソメスープは、未添加のコンソメスープに比べその塩味が増強されており塩味を強く感じるものであった。また、ゲンチオオリゴ糖あるいは食塩の添加によりコンソメスープの味が全体的に濃くなった。一方で、糖アルコールを添加したコンソメスープは、味がまろやかになるが、塩味は増強されていなかった。
【0081】
[実施例12]
<中華スープ>
市販の粉末中華スープの素をお湯に溶かし、ゲンチオビオースが0.02%となるようゲンチオオリゴ糖含有糖質(商品名「日食ゲントース#45」、日本食品化工社製)を添加し、ゲンチオオリゴ糖含有中華スープ(塩化ナトリウム含有量0.9質量%)を調製した。また、ゲンチオオリゴ糖の代わりに、糖アルコール(商品名「アマミール」、三菱商事フードテック社製)を添加した中華スープも調製した。なお、糖アルコールは、ゲンチオオリゴ糖含有糖質と同固形分量となるように添加した。加えて、特許文献5の実施例2において最も塩味増強効果が発揮されている1.0%の添加量で糖アルコールを添加した中華スープも調製した。
【0082】
得られた中華スープを官能評価した。その結果、ゲンチオオリゴ糖を添加した中華スープは、未添加の中華スープに比べその塩味が増強されており塩味を強く感じるものであった。また、ゲンチオオリゴ糖の添加により中華スープの後味がすっきりした。一方で、糖アルコールを添加した中華スープは、甘味が上がり厚みは向上するが塩味は増強されず、その傾向は糖アルコールを1.0%添加した中華スープで特に強かった。
【0083】
[実施例13]
<お吸い物>
市販の粉末スープの素をお湯に溶かし、ゲンチオビオースが0.02%となるようゲンチオオリゴ糖含有糖質(商品名「日食ゲントース#45」、日本食品化工社製)を添加し、ゲンチオオリゴ糖含有お吸い物(塩化ナトリウム含有量0.9質量%)を調製した。また、ゲンチオオリゴ糖の代わりに、糖アルコール(商品名「アマミール」、三菱商事フードテック社製)を添加したお吸い物も調製した。なお、糖アルコールは、固形分として1.0%となるように添加した。
【0084】
得られたお吸い物を官能評価した。その結果、ゲンチオオリゴ糖を添加したお吸い物は、未添加のお吸い物に比べその塩味が増強されており塩味を強く感じるものであった。また、ゲンチオオリゴ糖の添加によりお吸い物の味がまろやかになった。一方で、糖アルコールを添加したお吸い物は、味がまろやかになるが、塩味は増強されていなかった。
【0085】
[実施例14]
<米飯>
炊飯した米飯に、表6に示した含量となるように、塩化ナトリウム、塩化カリウム及びゲンチオオリゴ糖含有糖質(商品名「日食ゲントース#45」、日本食品化工社製)を添加し、よく混ぜた。その後、−30℃で急速冷凍・保存した後レンジアップし、得られた米飯の官能評価を実施した。
【0086】
【表6】
【0087】
その結果、米飯1〜3は、塩化ナトリウム濃度が0.6%である米飯5に近い塩味を有しており、塩味増強効果が確認された。さらに、米飯1〜3は塩化カリウムのえぐみも軽減されていた。一方で、米飯4は、えぐみが強く塩味増強効果も米飯1〜3に劣るものであった。
【0088】
[実施例15]
<ハヤシソース>
市販のレトルトハヤシソース(塩化ナトリウム含有量1.1質量%)にゲンチオビオースが0.02%、0.04%となるようそれぞれゲンチオオリゴ糖含有糖質(商品名「日食ゲントース#45」、日本食品化工社製)を添加し、ゲンチオオリゴ糖含有ハヤシソースを調製した。
【0089】
官能評価の結果、ゲンチオオリゴ糖を添加したハヤシソースは、いずれも未添加のソースに比べその塩味が増強されていた。また、ゲンチオオリゴ糖の添加によりハヤシソースの味のトップの厚みが増していた。なお、上記実施例に用いた市販のハヤシソースは、オニオンソテー(玉ねぎをスライス又はみじん切りにし飴色になるまでソテーしたもの)を含有するものであった。一方、オニオンソテーを含有しない別の市販ハヤシソースに同量のゲンチオオリゴ糖を添加した結果、塩味増強効果は得られなかった。同様に、オニオンソテーを含有するパスタ用トマトソースやビーフシチューソースにおいてはゲンチオオリゴ糖の塩味増強効果は認められたが、オニオンソテーを含有しないクリームシチューソースにおいてはゲンチオオリゴ糖を添加しても塩味増強効果は認められなかった。よって、上記ハヤシソースにおける塩味増強効果は、他の実施例とは異なりゲンチオオリゴ糖がオニオンソテーの風味を増強することで生じた効果と考えられる。