(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。
【0010】
図1は、本実施の形態に係る電磁継電器の本体部の分解斜視図である。
図2は、電磁継電器の本体部の平面図である。
図3は、ベースの平面図である。以下の説明では、便宜上、
図1に示すように上下前後左右方向を定義する。
【0011】
本実施形態の電磁継電器の本体部1は、永久磁石95が組み込まれた有極電磁継電器であり、バスバー端子60及び70間を導通させたり又は遮断する。特に、バスバー端子60及び70間には、車載用バッテリーの供給電流が流され、本体部1は、緊急時に電流の供給を遮断する。バスバー端子60は可動端子として機能し、バスバー端子70は固定端子として機能する。
【0012】
本体部1は、上方に向かって開口した箱状のベース10を有している。ベース10は、樹脂モールド製であり、中央の矩形部分と、後側の外壁13に沿った左側の延長部11及び右側の延長部12を備える平面形状を有している。中央の矩形部分と左側の延長部11と隣接するように、拡張部110が形成されており(
図3参照)、拡張部110にはカラー111が埋め込まれている。
【0013】
ベース10の上方の開口部は、樹脂モールド製の板状のカバー120によって覆われる。カバー120は、ベース10の中央の矩形部分と左側の延長部11を覆う概ねL字状の形状を有している。カバー120の右側の延長部12側には、バスバー端子60及び70の板部61及び71の上縁をそれぞれ抑えるように下方に突出した突起121及び122が形成されている。
【0014】
バスバー端子60は、ベース10の後側の外壁13の内面に沿って延びる板部61を有している。ベース10の右側の延長部12には、バスバー端子60の板部61よりも少し狭い幅の溝12aが形成されており、バスバー端子60は、溝12a内に押し込まれる。つまり、バスバー端子60は、溝12aに圧入され、ベース10に固定される。バスバー端子60の板部61の左側の端部は、ベース10の左側の延長部11の端部まで延びている。
図3に示すように、ベース10の左側の延長部11では、後述するアクチュエータ80を取り付けるための穴18aを形成する内壁部18と外壁13との間に隙間が形成されている。この隙間に、バスバー端子60の板部61が挟まれて保持される。
【0015】
また、ベース10の右側の延長部12の底面に凸部12cが形成されている。バスバー端子60の板部61には、凸部12cに対応する位置に切り欠き61aが形成されている。切り欠き61aの鉛直方向に延びる両縁部が、溝12aの、凸部12cに沿った鉛直面と、外壁14の内面とに当接することによって、バスバー端子60は左右方向に位置決めされている。
【0016】
バスバー端子70の板部71は、ベース10の延長部12の溝12b内に圧入されている。バスバー端子70の板部71にも切り欠き71aが形成されており、切り欠き71aが、溝12bの凸部12cに沿った鉛直面と、外壁14の内面とに当接して、バスバー端子70を左右方向に位置決めしている。
【0017】
バスバー端子60及び70の右側の端部には、板部61及び71から屈曲されて水平に延びる接続部62及び72がそれぞれ形成されている。接続部62及び72は、車載用バッテリーからの給電線と接続するのに好適な構造を有する。図に示す例では、接続部62及び72には円形の開口部62a及び72aが形成され、バスバー端子60及び70をボルトによって給電線(不図示)に連結できる。
【0018】
ベース10内には、外壁14からベース10の内部に延びる内壁19が形成されている。内壁19の端部には、鉛直方向に延びる溝19aが形成されている。バスバー端子70の左側端部は、ベース10の中央付近まで延びている。バスバー端子70は、内壁19に沿って配置され、バスバー端子70の左側端部は、溝19aに圧入される。
【0019】
バスバー端子60の板部61の左側端部には、上下に並んで配置された2つの円形の開口部61c及び61dが形成されている。平編線63の左側端部にも、上下に並んで配置された2つの円形の開口部63a及び63bが形成されている。さらに、可動ばね64の左側端部にも、上下に並んで配置された2つの円形の開口部64a及び64bが形成されている。平編線63及び可動ばね64は、開口部61c,63a及び64aを通るリベット67aと、開口部61d,63b及び64bを通るリベット67bとによって、バスバー端子60に取り付けられている。
【0020】
平編線63の右側端部には、上下に並んで配置された円形の2つの開口部63d及び63eが形成されている。可動ばね64の右側端部には、上下に並んで配置された円形の2つの開口部64d及び64eが形成されている。開口部63d及び64dを通るリベット状の可動接点69aと、開口部63e及び64eを通るリベット状の可動接点69bとによって、平編線63及び可動ばね64は、右端側でも連結されている。
【0021】
バスバー端子70の板部71の左側端部には、上下に並んで配置された円形の2つの開口部71b及び71cが形成されている。開口部71b及び71cには、リベット状の固定接点73a及び73bがそれぞれ取り付けられている。平編線63及び可動ばね64が取り付けられたバスバー端子60と、バスバー端子70とがベース10に圧入されると、固定接点73a及び73bは可動接点69a及び69bとそれぞれ対向する。可動ばね64の可動接点69a及び69bと、バスバー端子70の固定接点73a及び73bとは、バスバー端子60及び70間を導通状態と非導通状態とに切り替えるための接点として機能する。
【0022】
バスバー端子60及び70は純銅で構成され、可動ばね64はばね性を有する銅合金で構成されている。バスバー端子60及び70は、可動ばね64よりも厚みがあり、熱容量も大きい。
【0023】
ベース10の前側には、鉛直にベース10の中間高さまで延びる壁16が形成されている。また、壁16を境界として、ベース10には浅底部17が設けられている(
図3参照)。壁16と内壁19との間に、樹脂モールド製のボビン20、鉄心40およびヨーク50が組み合わされた電磁石部30が圧入される。
【0024】
ボビン20は、フランジ22及び23と、フランジ22及び23を連結する筒部(不図示)とを有している。筒部上には、コイル31が巻かれている。フランジ22及び23は前面視で矩形であり、それらの下辺がベース10の底面に当接し、ボビン20は所定の姿勢でベース10に取り付けられる。
【0025】
ボビン20には、筒部並びにフランジ22及び23を通る貫通孔24が形成されており、この貫通孔24内に、鉄心40の棒部41が通されている。貫通孔24と棒部41は、互いに対応する矩形の断面形状を有している。これによって、鉄心40はボビン20に対して所定の姿勢となるように保持されている。
【0026】
鉄心40の棒部41の一端には、フランジ23と平行に配置される板部42が結合されている。板部42は、フランジ23よりも
図1の左方向に延びている。板部42の左下端には、ベース10の底面に形成された凹部10a(
図3)に嵌合する突起43が形成されている。
【0027】
ヨーク50は、ボビン20のフランジ22と平行に配置される基端板部51を有している。基端板部51には貫通孔54が形成されている。鉄心40の棒部41の一端に形成された突起44が、ボビン20の貫通孔24を介して貫通孔54に嵌合する。貫通孔54及び突起44は、互いに対応する矩形の断面形状を有している。これによって、ヨーク50は、鉄心40に対して所定の姿勢となるように保持される。
【0028】
ヨーク50の基端板部51の左端は、後側に折れ曲がって、鉄心40の棒部41と平行に延びる中間板部52に続いている。中間板部52は、再び左側に折れ曲がって、フランジ22,23と平行に延びる先端板部53に続いている。ヨーク50の先端板部53は、鉄心40の板部42の左端部分と対向している。コイル31に電流が流れると、鉄心40の板部42とヨーク50の先端板部53との間に磁界が発生する。
【0029】
ヨーク50の基端板部51の下縁には、ベース10の底面に形成された凹部10b及び10c(
図3参照)にそれぞれ嵌合する突起55及び56が形成されている。中間板部52の上縁には、カバー120の下面に形成された凹部(不図示)に嵌合する突起57が形成されている。また、中間板部52には貫通孔58が形成されている。ベース10の底面から鉛直に延びる嵌合片(不図示)が、中間板部52の貫通孔58内に嵌合する。
【0030】
コイル31には、4つのコイル端子35が接続されている。コイル31は、2つのコイル端子35に電流を流すと一方向に磁界を発生し、他の2つのコイル端子35に電流を流すと反対方向に磁界を発生する。
【0031】
ボビン20には、コイル端子35が取り付けられる端子保持部25が一体に形成されている。端子保持部25は、フランジ22の上縁から前側に突出しており、フランジ22よりも左側に延長されている。端子保持部25の左端側には、各コイル端子35の一端がそれぞれ挿入される4つの穴25aが一列に形成されている。
【0032】
各コイル端子35は、穴25a内に挿入されている基端板部35aと、基端板部35aの前端から下方に向かって折れ曲がって先端板部35bとを備えている。先端板部35bは、ベース10の浅底部17の底面に形成された各貫通孔17a(
図3参照)を通ってベース10の外部に突出している。
【0033】
コイル端子35の基端板部35aには、上方向に延びる棒部35cが形成されている。棒部35cは、コイル端子35を穴25a内に挿入する際のストッパとして機能する。また、図示していないが、棒部35cには、コイル31の一端が接続されている。
【0034】
ベース10の浅底部17には、先端板部35bが挿入される4つの貫通孔17aが形成されており、さらに2つの貫通孔17b及び17cが形成されている(
図3参照)。貫通孔17b及び17cには、バスバー端子60及び70にそれぞれ接続された信号端子65及び75が挿入される。信号端子65及び75は、不図示のリレー制御回路が接点状態を確認する際に利用される。
【0035】
信号端子65は、水平に延びる基端板部65aと、基端板部65aから折れ曲がって下方に延び、ベース10の貫通孔17bに挿入される先端板部65bとを有している。基端板部65aの一端には、突起65cが形成されている。バスバー端子60の板部61の上縁には、凹部を有する信号端子嵌合部61eが形成されている。基端板部65aの突起65cは、信号端子嵌合部61eに嵌合する。信号端子75は、水平に延びる基端板部75aと、基端板部75aから折れ曲がって下方に延び、ベース10の貫通孔17cに挿入される先端板部75bとを有している。基端板部75aの一端には、突起75cが形成されている。バスバー端子70の板部71の上縁には、凹部を有する信号端子嵌合部71eが形成されている。基端板部75aの突起75cは、信号端子嵌合部71eに嵌合する。
【0036】
本体部1は、電磁石部30によって発生する磁力によって、バスバー端子60及び70の導通状態と非導通状態とを切り替えるアクチュエータ80をさらに有している。アクチュエータ80は、樹脂モールド製であり、L字状の平面形状を有し、駆動部として機能する。アクチュエータ80の左端には下方に延びるシャフト81が形成されている。シャフト81がベース10の穴18aに挿入されて、アクチュエータ80はシャフト81を中心として回動可能になっている。
【0037】
アクチュエータ80の端部82には、アマチュア90が取り付けられている。アマチュア90は、2つの鉄板部材91及び92を有する。2つの鉄板部材91及び92が、アクチュエータ80の端部82に形成された穴83及び84に嵌合されることによって、互いに平行に、かつ鉛直に延びるように配置されている。鉄板部材91及び92は、端部82の左側から挿入される。鉄板部材91及び92は、端部82の右側から突出する平坦部91a及び92aと、平坦部91a及び92aから上方に延出する拡大部91b及び92bとを備えている。拡大部91b及び92bが、アクチュエータ80の穴83,84に嵌合することによって、鉄板部材91及び92がアクチュエータ80に固定される。
【0038】
永久磁石95は、鉄板部材91及び92の拡大部91b及び92bの間に挟み込まれ、また、アクチュエータ80の端部82の左面に形成された溝(不図示)に保持されている。鉄板部材91及び92は永久磁石95の各極に接続されている。したがって、磁束経路を形成する鉄板部材91の平坦部91a及び鉄板部材92の平坦部92a間には、一定の磁界が常に形成されている。
【0039】
図4(A),(B)は、アマチュア90と鉄心40及びヨーク50との位置関係を説明する図である。
図4(A),(B)では、アクチュエータ80やコイル31などの図示を省略している。また、
図4(A),(B)では、アマチュア90が平行移動しているように図示しているが、アクチュエータ80は回転するので、アマチュア90も厳密には矢印で示すように少し回転する。
【0040】
図4(A)に示すように、鉄板部材91の平坦部91aが、鉄心40の板部42とヨーク50の先端板部53との間に配置されている。したがって、永久磁石95によって平坦部91a及び92aの間に発生する磁界と、コイル31によって鉄心40の板部42とヨーク50の先端板部53との間に発生する磁界との相互作用によって、アマチュア90に力が加わる。それによって、アマチュア90を介してアクチュエータ80に力が加わり、アクチュエータ80が回転する。アマチュア90に加わる力の向きは、永久磁石95によってアマチュア90側に発生する磁界の向きに対して、コイル31によって発生する磁界の向きをコイル31への通電電流の向きを変化させることによって、
図4(A)の上下のいずれかとすることができる。
【0041】
図4(A)に示すように、アマチュア90に下方に力を加えることによって、平坦部91aがヨーク50の先端板部53に当接し、平坦部92aが鉄心40の板部42に当接する。つまり、アマチュア90が
図4(A)に示す位置になるようにアクチュエータ80が回転させられる。アマチュア90が
図4(A)に示すように配置されると、平坦部91a及び92aが板部42及び先端板部53に吸着される磁力が永久磁石95によって働く。従って、アマチュア90が、コイル31の通電によって
図4(A)に示すように配置され、その後コイル31の通電を終了すると、永久磁石95の発生する磁力によって
図4(A)の位置に保持される。
【0042】
図4(B)に示すように、アマチュア90に上方に力を加えることによって、平坦部91aが鉄心40の板部42に当接するように移動する。つまり、アマチュア90が
図4(B)に示す位置になるようにアクチュエータ80が回転させられる。アマチュア90が、コイル31の通電によって
図4(B)に示すように配置され、その後コイル31の通電を終了すると、永久磁石95の発生する磁力によって
図4(B)の位置に保持される。
【0043】
図1に戻り、アクチュエータ80は、端部82から右側に突出する突出部85を有している。突出部85は、カード100を取り付けるための凹部86〜88を備えている。カード100は、アクチュエータ80の回転動作を可動接点69a及び69bに伝達する。また、カード100は、非磁性体で構成されており、可動接点69a及び69bと固定接点73a及び73bとの間に発生するアークの熱を吸収する。非磁性体は、銅、アルミニウム、ステンレス及び銀などの金属、又はアルミナ等のセラミックである。
【0044】
カード100は、上端を水平に延びる上縁部105と、上縁部105の両端に形成されたアクチュエータ80の凹部87及び88に嵌合する突起102,103とを備えている。上縁部105から2つの鉛直片106及び107が下方に延びており、鉛直片106の下端に、アクチュエータ80の凹部86に嵌合する突起101が形成されている。鉛直片106,107の互いに対面する面には、凸部108が形成されており、鉛直片106の凸部108と鉛直片107の凸部108との間に可動ばね64が挟み込まれている。
【0045】
このように、アクチュエータ80に取り付けられたカード100によって可動ばね64が挟み込まれているので、アクチュエータ80の回転に応じて、可動ばね64並びに可動ばね64に取り付けられた可動接点69a及び69bが移動させられる。その結果、アマチュア90が、
図4(A)に示す位置にある時には、可動接点69a及び69bが固定接点73a及び73bに当接し、バスバー端子60及び70が導通状態になる。一方、アマチュア90が、
図4(B)に示す位置にある時には、可動接点69a及び69bが固定接点73a及び73bから離れ、バスバー端子60及び70が非導通状態になる。
【0046】
図5は、本実施の形態に係る電磁継電器の分解斜視図である。
図6は、電磁継電器の斜視図である。
図7(A)は第1カバーの斜視図であり、
図7(B)は第2カバーの斜視図である。尚、
図5及び
図6の本体部1は、
図1の本体部1の上下方向及び左右方向を反転させた状態を示している。以下の説明では、便宜上、
図5〜7に示すように上下前後左右方向を定義する。
【0047】
本実施の形態に係る電磁継電器200は、本体部1と、第1カバー201と、第2カバー202と、第1ヨーク203と、第2ヨーク204と、永久磁石205とを備えている。永久磁石205の第1ヨーク側がN極であり、永久磁石205の第2ヨーク側がS極である。第1ヨーク203は、鉄製でL字形状であり、永久磁石205の上部に接着される平坦部203aと、平坦部203aから前方に延出する延出部203bとを備えている。第2ヨーク204も、鉄製でL字形状であり、永久磁石205の下部に接着される平坦部204aと、平坦部204aから前方に延出する延出部204bとを備えている。第1ヨーク203及び第2ヨーク204は磁性部材として機能する。
【0048】
延出部203b及び204bは、固定接点73a及び73b並びに可動接点69a及び69bと対向し、固定接点73a及び73b並びに可動接点69a及び69bを挟み込んでいる。第1ヨーク203及び第2ヨーク204は永久磁石205を挟むので、延出部203bから延出部204bに向けて磁束が発生し、固定接点73a及び73b並びに可動接点69a及び69bに向けて磁束を集中的に印加することができる。従って、第1ヨーク203及び第2ヨーク204により、消弧能力を向上させることができ、永久磁石205の小型化が可能である。
【0049】
第1カバー201は、平坦部221と、平坦部の前端から下方に伸びる垂下部222と、平坦部221と垂下部222との境界に形成された貫通孔223と、平坦部221の後方左右端部に形成された切り込み部224と、切り込み部224内に形成された、切り込み箇所を連結する連結部225(
図7(A)参照)とを備えている。
図6に示すように、平坦部221の後端と、第2カバー202の背面235との間には、空隙226が形成されている。垂下部222は、
図5の本体部1の上部前端210と接触し、第1カバー201の前後方向を位置決めする。
【0050】
第2カバー202は、底面231と、底面231の前端から上方に突出する突出部232と、底面231の後端から上方に伸びる背面235と、底面231及び背面235に沿ってL字状に形成された左右の側面234とを備えている。永久磁石205は、左右の側面234の背面235に沿った部分の間に配置される。
【0051】
また、各側面234の上部には、2つの突起236が形成されている。2つの突起236は、第1カバー201の切り込み部224に入り、第1カバー201の連結部225を挟みこむ。これにより、第1カバー201が第2カバー202に固定される。尚、後述する接着剤の充填を妨げないようにするため、突起236は、第1カバー201の上面からはみ出ない高さである。
【0052】
突出部232の後端は、本体部1の下部前端211と接触し、本体部1の前後方向を位置決めする。
図7(B)に示すように、突出部232の後端には、凹部233が形成されている。従って、凹部233は、上面視で第1カバー201及び本体部1と重ならないように第1カバー201及び本体部1の前方に形成されている。
【0053】
貫通孔223、切り込み部224、空隙226及び凹部233には、熱硬化系の接着剤が充填され、本体部1は第1カバー201及び第2カバー202の間に固定される。貫通孔223、切り込み部224、空隙226及び凹部233は上面視で互いに重ならないように配置されているので、熱硬化系の接着剤を上方(即ち1方向)から充填でき、一度に本体部1を第1カバー201及び第2カバー202に固定することができる。
【0054】
図8は、バスバー端子60,70、平編線63、可動ばね64及びアクチュエータ80の位置関係を示す図である。
【0055】
本実施の形態では、バスバー端子60が陽極(+)に接続され、バスバー端子70が陰極(−)に接続され、電流は
図8の矢印A方向に流れる。永久磁石205からの磁束の方向は、
図8を貫く鉛直上方向である。可動接点69a及び69bと固定接点73a及び73bとの間に発生するアークは、フレミングの左手の法則により、矢印B方向に引き延ばされる。
【0056】
矢印B方向に引き延ばされたアークは非磁性体のカード100に接触し、カード100がアークの熱エネルギーを吸収するので、アークを容易に消弧することができる。また、カード100は、合成樹脂製のカードに比べて熱に強いため、アークの熱による故障を防ぐことができる。このように、カード100は、可動ばね64を押圧する機能に加えて、アークを冷却し消弧する機能及びアークの熱からアクチュエータ80を保護する機能を有する。
【0057】
また、カード100の材質が鉄などの磁性体である場合には、永久磁石205からの磁束をカード100が吸収してしまい、アークを引き延ばす能力が低下するおそれがある。このため、本実施の形態では、カード100は非磁性体で構成されている。
【0058】
さらに、本実施の形態では、固定接点73a及び73bが取り付けられているバスバー端子70が可動接点69a及び69bが取り付けられている可動ばね64よりも熱容量が大きく、電流は可動接点69a及び69bから固定接点73a及び73bに流れている。つまり、可動接点69a及び69bが陽極側であり、固定接点73a及び73bが陰極側である。
【0059】
磁束によってアークが引き延ばされる場合、アークのふるまいは陽極側と陰極側とで異なっている。陽極側のアーク端部は、アークが引き延ばされる方向に移動するが、陰極側のアーク端部は、こう着する。
【0060】
可動接点69a及び69bは、バスバー端子70よりも熱容量の小さい可動ばね64に固定されており、アークにより生じた熱が逃げづらいため、固定接点73a及び73bに比べて消耗が激しくなりやすい。このため、可動接点69a及び69bをアーク端部が移動しやすい陽極側にしている。アークが引き延ばされる際に、アーク端部が可動接点69a及び69bから可動ばね64に移動するので、可動接点69a及び69bの消耗を減らすことができる。
【0061】
図9(A)は、バスバー端子60,70、平編線63及び可動ばね64の位置関係を示す図である。
図9(B)は、バスバー端子60,70及び可動ばね64の位置関係を示す図である。
【0062】
図9(A)に示すように、可動ばね64は、可動接点69a及び69bが取り付けられる平坦部641と、リベット67a及び67bが取り付けられる平坦部643と、平坦部641と平坦部643とを接続する傾斜部642とを備えている。平編線63は、可動接点69a及び69bが取り付けられる平坦部631と、リベット67a及び67bが取り付けられる平坦部633と、平坦部641と平坦部643とを接続し、クランク状の複数の段差を有するクランク部632とを備えている。クランク部632は、平坦部641及び傾斜部642から空間を介して離れている。
【0063】
可動ばね64と平編線63とは、空間を介して並んで配置されており、電流は、可動ばね64及び平編線63の両方に流れる。
【0064】
アークを引き延ばすための空間Pにおいて、永久磁石205からの磁束の方向は、
図9(A),(B)を貫く鉛直上方向であり、可動ばね64に流れる電流によって生じる磁束の方向は、
図9(A),(B)を貫く鉛直下方向である。従って、電流によって生じる磁束が永久磁石205からの磁束を打ち消す現象が生じる。
【0065】
特に、
図9(B)では、アークを引き延ばすための空間Pと電流経路(つまり、可動ばね64)との距離が短いので、アークを引き延ばすための空間Pにおいて、可動ばね64に流れる電流による磁束密度が高くなり、永久磁石205からの磁束を打ち消す作用が強くなる。
【0066】
これに対して、
図9(A)では、電流経路は可動ばね64を通る経路と、平編線63を通る経路とに分かれる。そして平編線63を通る経路ではアークを引き延ばすための空間Pと電流経路(平編線63)との距離を長くできるので、平編線63に流れる電流によるアークを引き延ばすための空間Pにおける磁束密度を低くすることができる。また、可動ばね64を通る経路では空間Pと電流経路(可動ばね64)との距離は
図9(B)と同じであるが、可動ばね64に流れる電流は
図9(B)の場合よりも小さいため、可動ばね64に流れる電流によるアークを引き延ばすための空間Pにおける磁束密度を低くすることができる。従って、電流によって生じる磁束が永久磁石205からの磁束を打ち消すことを抑えることができる。
【0067】
尚、
図9(A)では、電流は可動ばね64及び平編線63の両方に流れるので、平編線63は可動ばね64よりも高い導電率を有することが好ましい。これにより、平編線63に流れる電流が可動ばね64に流れる電流よりも増えるので、永久磁石205からの磁束を打ち消す作用をより効果的に減らすことができる。
【0068】
図10は、可動ばね64の変形例を示す図である。
図10に示すように、可動ばね64は、アークの引き延ばし方向に沿った可動接点69a及び69bの近傍に切り起こし部644a及び644bを備えていてもよい。これにより、アーク端部が可動接点69a及び69bから可動ばね64に移動しやすくなり、可動接点69a及び69bの消耗を軽減することができる。
【0069】
以上説明したように、本実施の形態では、可動接点69a及び69bと固定接点73a及び73bとの間に発生するアークが、第1ヨーク203及び第2ヨーク204を介した永久磁石205からの磁束により非磁性体のカード100に向けて引き延ばされ、非磁性体のカード100がアークの熱を吸収し消弧するので、アークの熱による故障を回避し、消弧能力を向上させることができる。
【0070】
尚、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々変形して実施することが可能である。