(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0020】
[実施形態]
図1は、本実施形態に係るインクジェット装置を表す概略構成図である。
図2は、本実施形態に係るインクジェット装置のフィード量補正ユニットを表す概略構成図である。
図3は、変位検出センサを示す模式図である。
図4は、フィード量補正ユニットの動作を表す概略構成図である。
図5は、変位センサユニットの原点検出タイミングに係る制御動作の一例に関するフローチャートである。
図6は、変位センサユニットの原点検出に係る制御動作の一例に関するフローチャートである。
図7は、フィード制御前の準備動作の一例に関するフローチャートである。
図8は、フィード制御動作の一例に関するフローチャートである。
【0021】
本実施形態に係るインクジェット装置(印刷装置)1は、インクジェットヘッド33の複数のノズルからインク液滴を吐出して、紙、樹脂シート、樹脂板又は布帛等の記録媒体Mに文字及び図形等の画像を印刷する、いわゆるインクジェット方式のプリンタである。このインクジェット装置1は、記録媒体Mを所定のフィード量の分だけ搬送方向に搬送し、搬送後の記録媒体Mに印刷を行い、この後、記録媒体Mの搬送と印刷とを繰り返し行うことで、記録媒体Mに画像の形成を行っている。
【0022】
図1を参照して、インクジェット装置1について説明する。
図1に示すように、インクジェット装置1は、搬送ユニット(搬送部)11と、インクジェットユニット(印刷部)12と、フィード量補正ユニット(フィード量補正部)13と、制御部14と、を備える。ここで、
図1では、X方向を、搬送方向(副走査方向)とし、X方向に直交するY方向を主走査方向としている。そして、X方向及びY方向を含む面を水平面とし、X方向及びY方向に直交するZ方向を鉛直方向としている。
【0023】
搬送ユニット11は、複数の搬送ローラ21と、搬送ベルト22とを備えている。複数の搬送ローラ21は、少なくとも2本の搬送ローラ21の回転軸が、水平面内において平行に設けられている。2本の搬送ローラ21は、1本の搬送ローラ21が回転駆動する駆動ローラ21aとなっており、他の1本の搬送ローラ21が従動ローラ21bとなっている。駆動ローラ21aは、搬送方向の前方側に設けられ、従動ローラ21bは、搬送方向の後方側に設けられている。駆動ローラ21aには、動力伝達機構25を介して電動モータ26が接続されている。そして、電動モータ26は、制御部14と電気的に接続され、制御部14によって回転制御されている。
【0024】
搬送ベルト22は、複数の搬送ローラ21に巻回される無端ベルトとなっている。搬送ベルト22は、巻回された複数の搬送ローラ21を周回可能に移動し、駆動ローラ21aと従動ローラ21bとの間において、搬送方向に向かって移動する。この搬送ベルト22は、駆動ローラ21aと従動ローラ21bとの間が水平面となっており、記録媒体Mが載置される。そして、搬送ベルト22は、駆動ローラ21aと従動ローラ21bとの間において、記録媒体Mを搬送方向に搬送する。
【0025】
この搬送ユニット11は、制御部14により電動モータ26が回転制御されることで、搬送ベルト22による搬送が制御される。具体的に、搬送ユニット11は、記録媒体Mをパス毎に所定のフィード量の分だけ移動させたり、所定の搬送速度及び所定の搬送加速度で記録媒体Mを搬送したりする。
【0026】
次に、インクジェットユニット12について説明する。インクジェットユニット12は、Yバー31と、キャリッジ32と、インクジェットヘッド33と、図示しないキャリッジ駆動部とを備える。
【0027】
Yバー31は、搬送ベルト22の鉛直方向の上側に所定の間隔をあけて設けられる。Yバー31は、水平方向(Y方向)と平行な主走査方向に沿って直線状に設けられる。Yバー31は、主走査方向に沿って往復移動するキャリッジ32をガイドする。
【0028】
キャリッジ32は、Yバー31に保持され、Yバー31に沿って主走査方向(Y方向)に往復移動可能である。キャリッジ32は、主走査方向に移動制御される。また、キャリッジ32は、鉛直方向において搬送ベルト22と対向する面に、インクジェットヘッド33の吐出面を保持している。
【0029】
インクジェットヘッド33は、例えば、布帛を捺染する捺染用のインクを、搬送ベルト22上に載置された記録媒体Mに向かって吐出している。インクジェットヘッド33は、キャリッジ32に搭載され、キャリッジ32の主走査方向に沿う移動に伴って、主走査方向に往復移動可能となっている。インクジェットヘッド33は、例えば、各種インク流路、レギュレータ、ポンプ等を介して、キャリッジ32に搭載される不図示のインクタンクに接続されている。インクジェットヘッド33は、記録媒体Mへの印刷に用いるインクの種類に応じて、複数設けられている。このインクジェットヘッド33は、インクタンク内のインクを、搬送ベルト22上の記録媒体Mに向けてインクジェット方式で吐出する。
【0030】
ここで、インクの種類としては、例えば、紫外線によって硬化する紫外線硬化型インク(UVインク)、水性昇華転写インク等の水性インク、または、ソルベントインク等の溶剤系インクといった種々のインクを用いることができる。また、インクの種類としては、印刷する画像の色彩に応じて、白色インク、シアン(C)、マゼンダ(M)、イエロー(Y)及び黒色(K)等の着色インク、透明インク等を適宜用いることができる。インクジェットヘッド33は、制御部14と電気的に接続され、制御部14によってその駆動が制御される。
【0031】
キャリッジ駆動部は、Yバー31に対してキャリッジ32を、すなわちインクジェットヘッド33を、主走査方向に相対的に往復移動させる(走査する)駆動装置となっている。キャリッジ駆動部は、例えば、キャリッジ32に連結された搬送ベルト等の伝達機構、搬送ベルトを駆動する電動機等の駆動源を含んで構成され、駆動源が発生させた動力を、伝達機構を介してキャリッジ32を主走査方向に沿って移動させる動力に変換し、当該キャリッジ32を主走査方向に沿って往復移動させる。キャリッジ駆動部は、制御部14と電気的に接続され、制御部14によってその駆動が制御される。
【0032】
次に、
図1及び
図2を参照して、フィード量補正ユニット13について説明する。フィード量補正ユニット13は、駆動ローラ21aと従動ローラ21bとの間において、搬送ベルト22の搬送方向に直交する幅方向の両側に設けられている。フィード量補正ユニット13は、搬送ベルト22(記録媒体M)の搬送方向におけるフィード量を検出する。なお、以下の説明では、両側のフィード量補正ユニット13がほぼ同様の構成であるため、一方側のフィード量補正ユニット13について説明すると共に、他方側のフィード量補正ユニット13については説明を省く。
【0033】
フィード量補正ユニット13は、変位センサユニット(変位検出部)41と、移動ユニット(移動部)42とを備えている。また、フィード量補正ユニット13は、変位センサユニット41の原点位置を検出する変位原点センサ(変位原点検出部)43と、移動ユニット42の原点位置を検出する移動原点センサ44とを備えている。
【0034】
変位センサユニット41は、移動ユニット42の搬送方向における変位量を検出すると共に、搬送方向における位置が所定の位置となるように移動する。変位センサユニット41は、ユニット駆動部51と、変位センサ52と、これらが一体に取り付けられるセンサユニットフレーム53とを有している。ユニット駆動部51は、例えば、動力源として、ステッピングモータが用いられ、ステッピングモータの回転により、変位センサユニット41を搬送方向に移動させている。ユニット駆動部51は、制御部14と電気的に接続され、制御部14によってその駆動が制御される。
【0035】
図3に示すように、変位センサ52は、被検出部としての移動ユニット42の搬送方向における変位量を検出するものである。変位センサ52は、センサ本体55と、回動軸56と、爪部57とを有している。センサ本体55は、センサユニットフレーム53に取り付けられており、その内部に爪部57の回転量を検出するエンコーダが設けられている。回動軸56は、センサ本体55の移動ユニット42側に設けられており、この回動軸56を中心に爪部57が回動する。爪部57は、その基部が回動軸56に軸着され、その先端部が湾曲する自由端となっている。
【0036】
変位センサ52は、制御部14と電気的に接続され、制御部14によって移動ユニット42の搬送方向における変位量が検出される。具体的に、変位センサ52は、移動ユニット42が爪部57に接触すると、爪部57が回動軸56を中心に回動することで、センサ本体55に設けられるエンコーダにより回転量が検出される。検出された回転量は、制御部14に入力され、制御部14は、爪部57の回転量から、搬送方向における変位量に換算することで、移動ユニット42の搬送方向における変位量を検出する。
【0037】
ここで、変位センサ52に接触する移動ユニット42は、変位センサ52の搬送方向において検出可能な最大変位量の中心値P1において停止するように、制御部14により搬送ユニット11が制御されている。つまり、変位センサ52は、変位量が0となる最小値P0と、変位量が最大となる最大値P2と、最小値P0と最大値P2との間の中央の変位量となる中心値P1と、を検出可能となっている。
【0038】
このように構成される変位センサユニット41は、変位センサ52の中心値P1が、後述する変位原点センサ43により検出される原点位置Pa0となるように移動する。また、変位センサユニット41は、初期設定時に設定される初期位置Pa1となるように移動する。さらに、変位センサユニット41は、フィード量の補正に基づいて初期位置Pa1から微小移動する。
【0039】
移動ユニット(移動部)42は、搬送ベルト22を把持して搬送ベルト22の移動と共に移動するものである。移動ユニット42は、変位センサユニット41の搬送方向の上流側に設けられ、変位センサユニット41へ向かって移動する。移動ユニット42は、把持部61と、移動ユニットフレーム62と、原点規制ストッパ63と、復帰ばね64とを有している。
【0040】
把持部61は、搬送ベルト22の幅方向の端部を把持したり、把持を解除したりするものである。把持部61は、上グリップ61aと下グリップ61bとを有しており、上グリップ61aと下グリップ61bとの間に搬送ベルト22が位置するように設けられている。把持部61は、上グリップ61a及び下グリップ61bを鉛直方向に沿って相対的に密着させることで、搬送ベルト22を把持する。一方で、把持部61は、上グリップ61a及び下グリップ61bを鉛直方向に沿って相対的に離すことで、搬送ベルト22の把持を解除する。把持部61は、制御部14と電気的に接続され、制御部14によって把持部61による搬送ベルト22の把持及び把持解除に関する動作が制御される。
【0041】
移動ユニットフレーム62は、把持部61が取り付けられており、搬送方向において、把持部61と一体に移動する。移動ユニットフレーム62は、搬送方向の前方側の一部が、変位センサ52に接触する被検出部62aとなっている。
【0042】
原点規制ストッパ63は、フィード量補正ユニット13の骨組みとなるフレーム45に取り付けられており、例えば、硬質ゴム等を用いて構成されている。原点規制ストッパ63は、搬送方向の逆方向に復帰する移動ユニット42の位置を、原点位置Pbに規制している。ここで、移動ユニット42の原点位置Pbは、初期設定時において設定される初期位置と同じ位置となっている。
【0043】
復帰ばね64は、引張コイルばねであり、その一端がフレーム45に取り付けられ、その他端が移動ユニット42の移動ユニットフレーム62に接続されている。復帰ばね64は、その弾性力により、移動ユニット42を原点位置Pbに移動させている。
【0044】
変位原点センサ43は、原点規制ストッパ63と同様に、フレーム45に取り付けられている。変位原点センサ43は、例えば、フォトインタラプタが用いられ、変位センサユニット41の原点位置Pa0を検出する。具体的に、変位原点センサ43は、センサユニットフレーム53が、原点位置Pa0にあるか否かを検出する。変位原点センサ43は、制御部14と電気的に接続され、変位センサユニット41の搬送方向における位置が原点位置Pa0にあるか否かを検出し、この検出結果を制御部14へ向かって出力する。
【0045】
移動原点センサ44は、原点規制ストッパ63及び変位原点センサ43と同様に、フレーム45に取り付けられている。移動原点センサ44は、移動ユニット42の原点位置Pbを検出する。具体的に、移動原点センサ44は、移動ユニットフレーム62の被検出部62aの位置が、原点位置Pbであるか否かを検出する。移動原点センサ44は、制御部14と電気的に接続され、移動ユニット42の搬送方向における位置が原点位置Pbにあるか否かを検出し、この検出結果を制御部14へ向かって出力する。
【0046】
ここで、
図4を参照し、フィード量補正ユニット13の基本的な動作について説明する。搬送ユニット11による搬送ベルト22の搬送前において、変位センサユニット41及び移動ユニット42の被検出部62aは、それぞれ初期位置Pa1,Pbに位置している。この状態から、制御部14は、移動ユニット42の把持部61に把持動作を行わせることで、把持部61により搬送ベルト22を把持させる(ステップS1)。この後、制御部14は、搬送ベルト22を搬送させて、移動ユニット42(把持部61及び移動ユニットフレーム62)を、変位センサユニット41へ向けて移動させる。移動ユニット42が、変位センサユニット41の変位センサ52によって搬送方向における変位量が検出されると、制御部14は、検出した変位量が中心値P1となるように、搬送ユニット11の搬送ベルト22の移動を制御する(ステップS2)。制御部14は、移動ユニット42を変位センサ41の中心値P1において停止させると、把持部61による搬送ベルト22の把持を解除する(ステップS3)。すると、移動ユニット42は、復帰ばね64の弾性力により搬送方向の反対方向に移動し、移動ユニット42の被検出部62aが初期位置(原点位置)Pbに復帰する(ステップS4)。このように、初期位置Pbから初期位置Pa1までの間の距離が、記録媒体Mのフィード量となっている。
【0047】
次に、制御部14について説明する。制御部14は、搬送ユニット11、インクジェットユニット12及びフィード量補正ユニット13を含む各部を制御する。制御部14は、演算装置、メモリ等のハードウェア及びこれらの所定の機能を実現させるプログラムから構成される。制御部14は、インクジェットヘッド33を制御し、インクの吐出量、吐出タイミング、吐出期間等を制御する。制御部14は、キャリッジ駆動部を制御し、キャリッジ32の主走査方向に沿った相対移動を制御する。制御部14は、変位センサ52及び移動原点センサ44の検出結果に基づいて、搬送ユニット11の電動モータ26を制御し、搬送ベルト22の搬送方向に沿った移動を制御する。制御部14は、変位原点センサ43の検出結果に基づいて、変位センサユニット41のユニット駆動部51を制御し、搬送方向に沿った移動を制御する。
【0048】
次に、
図5から
図8を参照して、上記のインクジェット装置1の搬送ユニット11によるフィード量の制御に関する動作について説明する。
【0049】
先ず、
図5を参照して、変位センサユニット41の原点位置Pa0を検出するタイミングについて説明する。制御部14は、変位センサユニット41の原点位置Pa0を検出(原点検出)するタイミング(原点検出タイミング)であるか否かを判定する(ステップS11)。ここで、原点検出タイミングは、例えば、インクジェット装置1の電源投入時、インクジェット装置1のスリープ状態からの復帰時、インクジェット装置1のメンテナンス後の復帰時である。なお、原点検出タイミングは、変位センサユニット41の原点位置Pa0が未検出時のときで、印刷不良とならない適切なタイミングであれば、上記のタイミングに特に限定されない。
【0050】
制御部14は、ステップS11において、原点検出タイミングであると判定する(ステップS11:Yes)と、変位センサユニット41の原点検出が済んでいるか否かを判定する(ステップS12)。一方で、制御部14は、ステップS11において、原点検出タイミングでないと判定する(ステップS11:No)と、原点検出タイミングとなるまで、ステップS11を繰り返し実行する。
【0051】
制御部14は、ステップS12において、原点検出が済んでいると判定する(ステップS12:Yes)と、変位センサユニット41の原点検出を行わずに、
図5の動作を終了する。一方で、制御部14は、ステップS12において、原点検出が済んでいないと判定する(ステップS12:No)と、変位センサユニット41の原点検出を実行する(ステップS13)。そして、制御部14は、ステップS13の実行後、変位センサユニット41の原点検出が済んでいる状態として設定し、
図5の動作を終了する。
【0052】
次に、
図6を参照して、変位センサユニット41の原点位置Pa0を検出する動作について説明する。
図6に示す変位センサユニット41の原点検出に係る動作は、
図5のステップS13において実行される動作である。つまり、変位センサユニット41は、原点位置Pa0が未検出の状態となっている。
【0053】
制御部14は、変位センサユニット41の搬送方向における移動に関するパラメータを初期設定する(ステップS21)。ここで、パラメータとしては、例えば、変位センサユニット41の移動速度及び移動加速度を含んでいる。続いて、制御部14は、取得したパラメータに基づいて、ユニット駆動部51を制御して、変位センサユニット41を移動ユニット42側に移動させる(ステップS22)。つまり、制御部14は、変位センサユニット41を、変位原点センサ43から離れる搬送方向の逆方向に移動させる。
【0054】
制御部14は、ステップS22の実行後、変位原点センサ43による検出がオフになったか否かを判定する(ステップS23)。制御部14は、ステップS23において、変位原点センサ43による検出がオフになったと判定する(ステップS23:Yes)と、今度は、変位センサユニット41を変位原点センサ43側に移動させる(ステップS24)。つまり、制御部14は、変位センサユニット41を、変位原点センサ43に近づく搬送方向に移動させる。
【0055】
制御部14は、ステップS24の実行後、変位原点センサ43による検出がオンになったか否かを判定する(ステップS25)。制御部14は、ステップS25において、変位原点センサ43による検出がオンになったと判定する(ステップS25:Yes)と、検出がオンとなった変位センサユニット41の位置、すなわち、変位センサ52の中心値P1の位置を、原点位置Pa0として設定する(ステップS26)。この原点位置Pa0は、変位センサユニット41の位置がゼロとなる基準位置となる。そして、制御部14は、ステップS26の実行後、変位センサユニット41の原点検出に係る動作を終了する。
【0056】
ここで、制御部14は、ステップS23において、変位原点センサ43による検出がオフになっていないと判定する(ステップS23:No)と、再び、ユニット駆動部51を制御して、変位センサユニット41を移動ユニット42側に移動させる(ステップS27)。
【0057】
制御部14は、ステップS27の実行後、変位原点センサ43による検出がオフになったか否かを再び判定する(ステップS28)。制御部14は、ステップS28において、変位原点センサ43による検出がオフになったと判定する(ステップS28:Yes)と、ステップS24に進む。一方で、制御部14は、ステップS28において、変位原点センサ43による検出がオフになっていないと判定する(ステップS28:No)と、エラーであると判定して(ステップS31)、変位センサユニット41の原点検出に係る動作を終了する。
【0058】
また、制御部14は、ステップS25において、変位原点センサ43による検出がオンになっていないと判定する(ステップS25:No)と、再び、ユニット駆動部51を制御して、変位センサユニット41を変位原点センサ43側に移動させる(ステップS29)。
【0059】
制御部14は、ステップS29の実行後、変位原点センサ43による検出がオンになったか否かを再び判定する(ステップS30)。制御部14は、ステップS30において、変位原点センサ43による検出がオンになったと判定する(ステップS30:Yes)と、ステップS26に進む。一方で、制御部14は、ステップS30において、変位原点センサ43による検出がオンになっていないと判定する(ステップS30:No)と、エラーであると判定して(ステップS31)、変位センサユニット41の原点検出に係る動作を終了する。
【0060】
次に、
図7を参照して、搬送ユニット11による記録媒体Mのフィード量を制御するフィード制御前の準備動作について説明する。フィード制御前の準備動作は、例えば、印刷を準備するための印刷コマンドが入力された後で、印刷が開始される前に実行される。フィード制御前の準備動作は、いわゆる、フィード量を初期設定するための動作である。
【0061】
制御部14は、印刷を準備するための印刷コマンドが入力されると、変位センサユニット41の原点検出が済んでいるか否かを判定する(ステップS41)。制御部14は、ステップS41において、変位センサユニット41の原点検出が済んでいないと判定する(ステップS41:No)と、ステップS13に進み、変位センサユニット41の原点検出に係る動作を実行する。
【0062】
制御部14は、ステップS41において、変位センサユニット41の原点検出が済んでいると判定する(ステップS41:Yes)と、印刷コマンドに含まれるパス数に関する情報に基づいて、記録媒体Mのフィード量を初期設定するための移動量(差分移動量)Dyを、下記する算出式から算出する(ステップS42)。
【0063】
Dy=Da−L/パス数 ・・・・・・・・(1)
Dy:移動量
Da:原点規定距離
L:インクジェットヘッド33の仕様(例えば、ノズルの数)に基づいて設定される長さ
【0064】
ここで、移動量Dyは、変位センサユニット41が、原点位置Pa0から初期位置Pa1に移動するまでの距離である。原点規定距離Daは、変位センサユニット41の原点位置Pa0と、移動ユニット42の初期位置Pbとの間の距離である。長さLは、上記したとおり、インクジェットヘッド33の仕様に基づいて設定される長さであり、用いるインクジェットヘッド33の種類によって変化する。パス数は、記録媒体Mの印刷領域に対するインクジェットヘッド33による印刷回数である。
【0065】
制御部14は、ステップS42において、移動量Dyを算出すると、算出した移動量Dyの分だけ、変位センサユニット41を原点位置Pa0から移動ユニット42側に移動させる(ステップS43)。そして、
図2に示すように、原点規定距離Daから移動量Dyを引いた差分である距離が、初期設定される設定フィード量Dxとなる。つまり、インクジェットヘッド33の仕様とパス数に応じて算出される長さが、設定フィード量Dxとなる。
【0066】
なお、原点規定距離Daは、機械的設計値を用いればよいが、機械的な精度として個体差が発生する場合は次のように原点規定距離Daの値を調整することが好ましい。まず、変位センサユニット41を原点位置Pa0から移動ユニット42側に移動させ、変位センサ52が被検出部62aに接触し、変位センサ52の変位量が中心値P1となる場合の変位センサユニット41の実際の移動量を求める。次に、機械的設計値と実際の移動量の値との差分を求め、機械的設計値に対して当該差分を加算することで原点規定距離Daの値の調整を行う。これにより、装置間で発生する個体差値を吸収することができる。
【0067】
制御部14は、ステップS43の実行後、変位センサユニット41が原点位置Pa0から移動しているか否かを判定する(ステップS44)。制御部14は、ステップS44において、変位センサユニット41が原点位置Pa0から移動していると判定する(ステップS44:Yes)と、予め設定された上限の移動量となる移動距離上限を超えていないか否かを判定する(ステップS45)。
【0068】
制御部14は、ステップS45において、予め設定された上限の移動量となる移動距離上限を超えていないと判定する(ステップS45:Yes)と、移動後の変位センサユニット41の位置を初期位置Pa1として設定する(ステップS46)。そして、制御部14は、ステップS46の実行後、変位センサユニット41のフィード制御前の準備動作を終了する。
【0069】
一方で、制御部14は、ステップS44において、変位センサユニット41が原点位置Pa0から移動していないと判定したり(ステップS44:No)、ステップS45において、予め設定された上限の移動量となる移動距離上限を超えていると判定したり(ステップS45:No)すると、エラーであると判定し(ステップS47)、変位センサユニット41のフィード制御前の準備動作を終了する。
【0070】
次に、
図8を参照して、搬送ユニット11による記録媒体Mのフィード量を制御するフィード制御の動作について説明する。フィード制御動作は、例えば、印刷を実行するための印刷コマンドが入力されると実行される。つまり、フィード制御動作は、印刷時におけるフィード量を設定するための動作である。
図8に示すフィード制御動作は、パス毎に繰り返し実行される。
【0071】
制御部14は、印刷を実行するための印刷コマンドが入力されると、印刷コマンドに含まれるパス毎のフィード量を取得する(ステップS51)。印刷コマンドに含まれるパス毎のフィード量は、補正が行われたフィード量となっており、初期設定時(印刷準備時)において設定された設定フィード量と異なる場合がある。
【0072】
制御部14は、ステップS51において、フィード量を取得すると、取得したフィード量に基づいて、変位センサユニット41の初期位置Pa1を補正する(ステップS52)。具体的に、制御部14は、前回設定した設定フィード量と取得したフィード量との差分フィード量(差分)を算出する。この後、制御部14は、算出した差分フィード量に基づいて、変位センサユニット41のユニット駆動部51を制御して、変位センサユニット41を、現在の位置から搬送方向に沿って差分フィード量の分だけ微小移動させることで、変位センサユニット41の初期位置Pa1を補正する。そして、制御部14は、補正後の初期位置Pa1と原点位置Pb間の距離となるフィード量を、設定フィード量として設定する。
【0073】
制御部14は、ステップS52の実行後、移動ユニット42の把持部61により搬送ベルト22を把持しているか否かを判定する(ステップS53)。制御部14は、ステップS53において、把持部61により搬送ベルト22を把持していると判定する(ステップS53:Yes,
図4のステップS1)と、移動原点センサ44の検出結果に基づいて、移動ユニット42が初期位置Pbに位置しているか否かを判定する(ステップS54)。
【0074】
制御部14は、ステップS54において、移動ユニット42が初期位置Pbに位置していると判定する(ステップS54:Yes)と、フィード制御動作を実行する(ステップS55,
図4のステップS2)。ここで、制御部14は、補正後の設定フィード量に基づいて、搬送ユニット11により記録媒体Mを搬送させる場合、移動ユニット42の変位検出後の検出後搬送速度を、移動ユニット42の変位検出前の検出前搬送速度に比して減速させている。つまり、制御部14は、移動ユニット42が原点位置Pbから移動すると、高速となる検出前搬送速度で、搬送ユニット11による記録媒体Mの搬送を行い、この後、変位センサ52による変位検出後において、低速となる検出後搬送速度で、搬送ユニット11による記録媒体Mの搬送を行う。なお、制御部14は、検出前搬送速度から検出後搬送速度の切り換えを、変位センサ52による検出時または検出前のタイミングで行っている。
【0075】
制御部14は、ステップS55の実行後、変位センサ52の変位量が中心値P1に到達したか否かを判定する(ステップS56)。制御部14は、ステップS56において、変位センサ52の変位量が中心値P1に到達したと判定する(ステップS56:Yes)と、搬送ユニット11による記録媒体Mの搬送を停止し、移動ユニット42に把持部61による搬送ベルト22の把持を解除する(ステップS57、
図4のステップS3)。搬送ベルト22の把持が解除されると、移動ユニット42は、復帰ばね64により原点位置Pbへ移動する(
図4のステップS4)。
【0076】
制御部14は、ステップS57の実行後、予め設定された所定の時間が経過したか否かを判定する(ステップS58)。所定の時間は、移動ユニット42が、把持部61による把持が解除されてから、原点位置Pbに復帰するまでに十分な時間となっている。制御部14は、ステップS58において、所定の時間が経過したと判定する(ステップS58:Yes)と、次のフィード制御動作の待機状態とすべく、把持部61により搬送ベルト22を把持させる(ステップS59)。一方で、制御部14は、ステップS58において、所定の時間が経過していないと判定する(ステップS58:No)と、所定の時間が経過するまで、ステップS58を繰り返し実行する。そして、制御部14は、ステップS59の実行後、フィード量補正ユニット13のフィード制御動作を終了する。
【0077】
ここで、制御部14は、ステップS53において、把持部61により搬送ベルト22を把持していないと判定する(ステップS53:No)と、把持部61により搬送ベルト22を把持させる(ステップS60)。制御部14は、ステップS60の実行後、把持部61により搬送ベルト22が把持されるまで、ステップS53及びステップS60を繰り返し実行する。
【0078】
また、制御部14は、ステップS54において、移動ユニット42が初期位置Pbに位置していないと判定すると、変位センサユニット41の初期位置Pa1の補正をキャンセル(ステップS64)し、フィード量補正ユニット13のフィード制御動作を終了する。
【0079】
また、制御部14は、ステップS56において、変位センサ52の変位量が中心値P1に到達していないと判定する(ステップS56:No)と、変位センサ52による変位量の検出がないか否かを判定する(ステップS61)。制御部14は、ステップS61において、変位センサ52による変位量の検出がないと判定する(ステップS61:Yes)と、把持部61による搬送ベルト22の把持を解除し(ステップS62)、移動ユニット42がエラーであると判定して(ステップS63)、ステップS64に進む。移動ユニット42のエラーとしては、例えば、搬送ベルト22の把持部61におけるスリップ等がある。
【0080】
一方で、制御部14は、ステップS61において、変位センサ52による変位量の検出があると判定する(ステップS61:No)と、変位センサ52の変位限界をオーバーしたか否か、すなわち、変位センサ52の変位量の最大値P2を超えたか否かを判定する(ステップS65)。制御部14は、変位センサ52の変位限界をオーバーしたと判定する(ステップS65:Yes)と、把持部61による搬送ベルト22の把持を解除し(ステップS66)、搬送ユニット11がエラーであると判定して(ステップS67)、ステップS64に進む。搬送ユニット11のエラーとしては、例えば、動力伝達機構25または電動モータ26の不良による過剰搬送等がある。
【0081】
制御部14は、ステップS65において、変位センサ52の変位限界をオーバーしていないと判定する(ステップS65:No)と、搬送ユニット11によるフィード動作の実行中であるとして、ステップS55に進み、フィード動作を継続して実行する。
【0082】
以上のように、本実施形態によれば、
図8に示すように、印刷時において取得したフィード量となるように、変位センサユニット41の初期位置Pa1を位置補正することで、設定フィード量を補正することができる。そして、変位センサユニット41へ向けて移動ユニット42を移動させ、変位センサ52により検出された変位量に基づいて、記録媒体Mが設定フィード量となるように、記録媒体Mの搬送を制御することで、記録媒体Mを精度よく搬送することができる。このとき、移動ユニット42は、エンコーダ等の変位センサを設けて、移動中の距離を計測する必要がないため、構成を簡易なものとすることができ、簡易な構成にできる分、フィード量補正ユニット13のコスト削減を図ることができる。
【0083】
また、本実施形態によれば、初期設定時における設定フィード量を、印刷時におけるパス数に応じて設定することができるため、パス数に適した設定フィード量で、記録媒体Mを搬送することができる。
【0084】
また、本実施形態によれば、初期設定時において、原点規定距離Daから、インクジェットヘッド33の仕様とパス数に応じて算出される設定フィード量Dxを引いた移動量Dyで、変位センサユニット41を移動させることで、変位センサユニット41を設定フィード量Dxとなる初期位置Pa1に、適切に移動させることができる。
【0085】
また、本実施形態によれば、変位センサ52による検出時に移動ユニット42を、低速となる検出後搬送速度で移動させることができる。このため、変位センサ52による移動ユニット42の変位量の検出を安定的に行うことができる。また、移動ユニット42の移動が変位量の最大値P2を超過して、移動ユニット42が他の部位に物理的に接触することを抑制することができる。
【0086】
また、本実施形態によれば、変位センサ52において、移動ユニット42が爪部57に接触して、爪部57が回動軸56を中心に移動することで、搬送方向の移動量を変位量として検出することができる。
【0087】
また、本実施形態によれば、フィード量補正ユニット13により記録媒体Mのフィード量を補正して、搬送ユニット11により記録媒体Mを精度よく搬送することができる。このため、インクジェットユニット12により、搬送後の記録媒体Mに対して精度よく画像を印刷することができ、印刷スジ等の印刷不良の発生を抑制することができる。