(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般的な光走査装置では、光偏向器は、パッケージに封入されて、基板に固定される。そして、光源からの光がパッケージ内の光偏向器のミラー部に入射し、ミラー部で反射された反射光が走査光としてパッケージから出射される。
【0006】
光走査装置では、基板に対する所定方向を基準出射方向として設定し、アクチュエータによるミラー部の非駆動時では、ミラー部からの反射光が基準出射方向になることが望ましい。なぜならば、光偏向器のアクチュエータの駆動電圧は、光を出射しようとする出射方向と基準出射方向との相違に基づいて決めるからである。
【0007】
しかしながら、現実の光走査装置では、アクチュエータの非駆動時の光の出射方向は、光走査装置ごとにばらつきがあり、基準出射方向からずれている。このため、光走査装置からの光の出射方向を基準出射方向に合わせる較正が必要になる。なお、ばらつきの原因として、具体的には、(a)光偏向器のミアンダパターン配列の複数のカンチレバーから成るアクチュエータの製造ばらつき、(b)パッケージ内での光偏向器の固着角度のばらつき、及び(c)基板におけるパッケージの実装角度のばらつき等が挙げられる。
【0008】
特許文献1の光走査装置は、可動部の初期位置を水平に設定するときに可動部の自重による傾きを防止するだけであり、製造ばらつきに対処して基準出射方向を確立するものではない。
【0009】
本発明の目的は、基準出射方向を確立して、ミラー部の往復回動制御を的確化することができる光走査装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の光走査装置は、
光源と、
ミラー部、支持部及びアクチュエータを有し、前記アクチュエータは、前記ミラー部と前記支持部との間に介在するとともに、その圧電膜に印加される電圧に応じて変形して、前記ミラー部を所定の軸線の周りに往復回動させ、前記ミラー部は前記光源からの入射光を前記軸線の周りの回動角に応じた方向に反射光として出射する光偏向器と、
前記圧電膜に電圧を印加して前記軸線の周りの前記ミラー部の回動角を制御する制御部と備える光走査装置であって、
前記アクチュエータは、ミアンダパターンで結合し個々に前記圧電膜をもつ複数のカンチレバーを有し、
前記複数のカンチレバーに前記支持部から前記ミラー部の方への配置順に番号を付けたとき、
奇数番号となるカンチレバーを較正用奇数番号カンチレバーと往復回動用奇数番号カンチレバーとに区分けし、
偶数番号となるカンチレバーを較正用偶数番号カンチレバーと往復回動用偶数番号カンチレバーとに区分けし、
前記制御部は、
前記較正用奇数番号カンチレバー及び前記較正用偶数番号カンチレバーの前記圧電膜に、前記往復回動用奇数番号カンチレバー及び前記往復回動用偶数番号カンチレバーの非駆動時の前記反射光の出射方向が基準出射方向になる較正用電圧を印加し
前記往復回動用奇数番号カンチレバー及び前記往復回動用偶数番号カンチレバーの前記圧電膜に、前記ミラー部を前記軸線の周りに往復回動させる周期変動電圧を印加することを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、奇数番号カンチレバー及び偶数番号カンチレバーが、それぞれ基準出射方向の較正用カンチレバーと軸線の周りにミラー部を往復回動させる往復回動用カンチレバーとに区分けされる。これにより、基準出射方向の較正は、較正用奇数番号カンチレバー及び較正用偶数番号カンチレバーとにより行われて、基準出射方向を確立することができる。また、較正用奇数番号カンチレバー及び較正用偶数番号カンチレバーは、ミラー部の回動中、振動することなく静止状態に保持されるので、基準出射方向を安定化することができる。
【0012】
そして、基準出射方向を確立した上で、往復回動用奇数番号カンチレバー及び往復回動用偶数番号カンチレバーにより軸線の周りのミラー部の往復回動を制御するので、往復回動用奇数番号カンチレバー及び往復回動用偶数番号カンチレバーの制御を個々の光走査装置に依らず汎用化して、的確化することができる。
【0013】
本発明の光走査装置において、好ましくは、前記制御部は、前記較正用奇数番号カンチレバー及び前記較正用偶数番号カンチレバーの前記圧電膜に、前記較正用電圧に加えて、前記軸線の周りの前記ミラー部の往復回動範囲の中心回動角を変更するバイアス電圧を印加する。
【0014】
この構成によれば、較正用奇数番号カンチレバー及び較正用偶数番号カンチレバーにより基準出射方向の較正と走査領域のシフトを同時に行う。これにより、往復回動用奇数番号カンチレバー及び往復回動用偶数番号カンチレバーにより大きな往復回動角範囲を確保しつつ、走査領域のシフトが可能になる。
【0015】
本発明の光走査装置において、好ましくは、前記較正用奇数番号カンチレバー及び前記較正用偶数番号カンチレバーは、それぞれ番号が1番及び2番のカンチレバーである。
【0016】
この構成によれば、較正用奇数番号カンチレバー及び較正用偶数番号カンチレバーは、往復回動用奇数番号カンチレバー及び往復回動用偶数番号カンチレバーとミラー部との間に介在しない。したがって、往復回動用奇数番号カンチレバー及び往復回動用偶数番号カンチレバーとミラー部との間で伝わる振動が較正用奇数番号カンチレバー及び較正用偶数番号カンチレバーを通らないので、較正用奇数番号カンチレバー及び較正用偶数番号カンチレバーによる基準出射方向の支持を安定化することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は光走査装置20の構成図である。光走査装置20は、光偏向器1、レーザ光源21及び制御部22を備える。光偏向器1は、頂面に光の透過窓を有するパッケージ23内に封入される。制御部22及びパッケージ23は、基板24(
図4A及び
図4B)に実装される。レーザ光源21は、基板24に実装されることもあるし、基板24とは別の所定の箇所に、基板24上の光偏向器1にレーザ光の出射先を向けて配設されることもある。
【0019】
最初に光偏向器1について説明する。光偏向器1は、MEMSの一種である。光偏向器1は、中心に回動自在に配置される円形のミラー部2、ミラー部2を外側から包囲する円形環状の可動枠3、及び可動枠3を外側から包囲する矩形の固定枠4を備えている。
【0020】
構造の説明の便宜上、X軸、Y軸及びZ軸から成る3軸座標系を定義する。3軸座標系の原点としての中心Oは、ミラー面2a上の円形のミラー部2の中心に設定する。X軸、Y軸及びZ軸は、中心Oにおいて相互に直交する。X軸及びY軸は、それぞれ矩形の固定枠4の長辺及び短辺に平行に設定する。Z軸は固定枠4の厚み方向に平行に設定する。
【0021】
さらに、説明の便宜上、Z軸方向にミラー部2のミラー面2aが見える側を光偏向器1の正面側と定義し、その反対側を背面側と定義する。さらに、X軸方向及びY軸方向を光偏向器1の正面視の縦方向及び横方向と定義する。
【0022】
ミラー面2aの法線25(
図4A及び
図4B)は、中心Oを通り、ミラー面2aに対して直角となる。ミラー部2は、後述の第1軸線及び第2軸線の周りに往復回動可能になっている。ミラー面2aの法線25は、ミラー部2の往復回動に伴い、変動する。ただし、ミラー部2の中心である中心Oは、ミラー部2の往復回動中も、不動を維持する。
図1のミラー部2は、ミラー面2aの法線25がZ軸に一致したときの状態で図示されている。
【0023】
1対のトーションバー5a,5bは、円形のミラー部2において正面視でY軸方向の直径に沿ってミラー部2の両側から突出し、突出端において半円環状の内側アクチュエータ6a,6bの両端に結合している。なお、トーションバー5a,5bは、可動枠3の内周まで延長させて、該内周に結合することも可能である。
【0024】
内側アクチュエータ6a,6bは、正面視でミラー部2の左右に配設され、正面視で個々には半円周形状、全体では円周形状となるように、形成されている。トーションバー5a,5bの軸線は、ミラー部2が往復回動する第1軸線に一致する。ミラー面2aの法線25がZ軸に一致するとき、第1軸線はY軸に重なる。第1軸線の周りのミラー部2の往復回動に伴い、ミラー部2は、正面視で左右に首振りする。
【0025】
内側アクチュエータ6a,6bは、外側から円環状の可動枠3により包囲されている。柄部12a,12bは、X軸に沿って延び、両端において内側アクチュエータ6a,6bの外側の半円周の中点と円環状の可動枠3の円形孔の内周円とを結合している。
【0026】
内側アクチュエータ6a,6bは、1つのカンチレバーから構成され、該カンチレバーは、後述の外側アクチュエータ7a,7bの各カンチレバー15と同様に、基板層(図示せず)の片面側に形成された圧電膜と該圧電膜をZ軸方向の上側及び下側(基板層側を下側と定義している)から挟む上部電極及び下部電極を有している。内側アクチュエータ6a,6bは、圧電膜に供給されるユニポーラの駆動電圧で湾曲変形するユニモルフ構造の圧電アクチュエータである。
【0027】
柄部12a,12bの軸線は、第2軸線27(
図4)そのものではないが、第2軸線27を規定する。第2軸線27は、そのY軸方向位置が柄部12a,12bのY軸方向位置に維持しつつ、第1軸線の周りのミラー部2の往復回動に伴い、Y軸の周りに往復回動する。
【0028】
外側アクチュエータ7a,7bは、固定枠4の内側において正面視で可動枠3の左右に配設され、基端側結合部18及び先端側結合部19において固定枠4の内周縁と可動枠3の外周縁とに結合している。外側アクチュエータ7a,7bを構成する後述の各カンチレバー15は、基板層の片面側に形成された圧電膜を有し、該圧電膜に供給されるユニポーラの駆動電圧で湾曲変形するユニモルフ構造の圧電アクチュエータである。
【0029】
外側アクチュエータ7a,7bは、可動枠3をX軸の周りに往復回動させる。可動枠3がX軸の周りに往復回動することにより、ミラー部2は第2軸線27の周りに往復回動する。第2軸線27の周りのミラー部2の往復回動に伴い、ミラー部2は、正面視で上下に首振りする。
【0030】
第1軸線及び第2軸線27は、共にミラー面2aを含む平面上に設定され、中心Oにおいて直交する。第2軸線27は、ミラー面2aの法線25がZ軸に一致したとき、X軸に一致する。中心Oにおける第2軸線27とX軸との交角は、第1軸線の周りのミラー部2の往復回動に伴い、変化する。第1軸線と可動枠3とは、X軸の周りに一体で往復回動する。
【0031】
以下、トーションバー5a,5bを、特に区別しないときは、「トーションバー5」と総称する。内側アクチュエータ6a,6bを、特に区別しないときは、「内側アクチュエータ6」と総称する。外側アクチュエータ7a,7bを、特に区別しないときは、「外側アクチュエータ7」と総称する。柄部12a,12bを、特に区別しないときは、「柄部12」と総称する。
【0032】
外側アクチュエータ7は、ミアンダパターンを形成するように折返し部16により結合された複数のカンチレバーとして、較正用カンチレバー15CR(1),15CR(2)及び往復回動用カンチレバー15CC(3),15CC(4),15CC(5)を備える。較正用カンチレバー15CR(1),15CR(2)及び往復回動用カンチレバー15CC(3),15CC(4),15CC(5)の詳細については後述する。較正用カンチレバー15CR(1),15CR(2)及び往復回動用カンチレバー15CC(3),15CC(4),15CC(5)を個々に区別する必要のないときは、「カンチレバー15」と総称する。
【0033】
外側アクチュエータ7は、両端部において基端側結合部18及び先端側結合部19を介して固定枠4の内周及び可動枠3の外周にそれぞれ結合している。複数のカンチレバー15は、長手方向をY軸方向に揃えてX軸方向に1列に配列されている。
【0034】
基端側結合部18は、X軸からY軸方向+側に離れ、ほぼ固定枠4の長辺部の内周側に近い位置にあり、先端側結合部19は、X軸上に存在する。すなわち、カンチレバー15のうち、X軸方向に可動枠3に最も近いカンチレバーは、他のカンチレバー15の長さの半分の長さになっている。
【0035】
較正用カンチレバー15CR(1),15CR(2)及び往復回動用カンチレバー15CC(3),15CC(4),15CC(5)について説明する。カンチレバー15について、基端側結合部18側から先端側結合部19側への並び順に番号No.1〜No.5(1番〜5番)を付ける。No.1〜No.4のカンチレバー15の長手方向寸法は等長であり、No.5のカンチレバー15の長手方向寸法は、No.1〜No.4のカンチレバー15の長手方向寸法の約1/2となっている。
【0036】
各カンチレバー15は、その圧電膜に電圧を印加されると、いずれも背面側に凸に湾曲する。各カンチレバー15は、印加電圧の増大に連れて、湾曲量を増大する。
【0037】
No.1,No.2のカンチレバー15は、後述の基準出射方向Ro(
図4A等)の較正に使用されるので、それぞれ較正用カンチレバー15CR(1),15CR(2)で指示する。較正用カンチレバー15CR(1)は本発明の「較正用奇数番号カンチレバー」に相当し、較正用カンチレバー15CR(2)は本発明の「較正用偶数番号カンチレバー」に相当する。なお、較正用カンチレバー15CR(1),15CR(2)を個々に区別する必要のないときは、「較正用カンチレバー15CR」と総称する。
【0038】
No.3−No.5のカンチレバー15は、第2軸線の周りのミラー部2の往復回動に使用されるので、それぞれ往復回動用カンチレバー15CC(3),15CC(4),15CC(5)で指示する。往復回動用カンチレバー15CC(3),15CC(5)は、本発明の「往復回動用奇数番号カンチレバー」に相当し、往復回動用カンチレバー15CC(4)は、本発明の「往復回動用偶数番号カンチレバー」に相当する。なお、往復回動用カンチレバー15CC(3),15CC(4),15CC(5)を個々に区別する必要のないときは、「往復回動用カンチレバー15CC」と総称する。
【0039】
光偏向器1の正面視で、左側の電極パッド8a1〜8a6は、固定枠4の左の短辺部に配設され、ミラー部2に対して左側半部に存在する対応素子に光偏向器1内の埋設配線又は埋設金属層を介して接続されている。光偏向器1の正面視で、右側の電極パッド8b1〜8b6は、固定枠4の右の短辺部に配設され、ミラー部2に対して右側半部に存在する対応素子に光偏向器1内の埋設配線又は埋設金属層を介して接続されている。以下、電極パッド8a1〜8a6,8b1〜8b6を、特に区別しないときは、「電極パッド8」と総称する。
【0040】
図2は、制御部22内の各要素と光偏向器1の電極パッド8との接続関係を示している。可変直流電源101,102は出力電圧を可変とされている。可変直流電源101は電極パッド8a1,8b1に接続される。可変直流電源102は電極パッド8a2,8b2に接続される。可変直流電源101,102が電極パッド8a1,8b1に印加する電圧は、ミラー部2の往復回動中、一定に維持される。
【0041】
往復回動用電圧生成部103,104は、第2軸線の周りにミラー部2を往復回動させる往復回動用電圧Vcを生成する。往復回動用電圧Vcの具体例は、のこぎり波や(
図6)、三角波や、正弦波形のような周期変動電圧である。往復回動用電圧生成部103が出力する往復回動用電圧Vcと往復回動用電圧生成部104が出力する往復回動用電圧Vcとは、正相及び逆相の関係になっている。バイアス電圧生成部105は、バイアス電圧Vb(ユニポーラ駆動を行うために、Vcの最小値を0Vより上にバイアスさせる電圧)を発生する。加算器106は、往復回動用電圧生成部103及びバイアス電圧生成部105の出力電圧を加算して、電極パッド8a3,8b3に出力する。加算器107は、往復回動用電圧生成部104及びバイアス電圧生成部105の出力電圧を加算して、電極パッド8a4,8b4に出力する。
【0042】
正弦波生成器110,111は、振幅及び周波数の等しい正弦波電圧Vsを生成する。正弦波生成器110が出力する正弦波電圧Vsと正弦波生成器111が出力する正弦波電圧Vsとは、正相及び逆相の関係になっており、それぞれ電極パッド8a5,8b5に出力される。第1軸線の周りのミラー部2の往復回動は、第1軸線の周りのミラー部2の共振が利用されるので、該正弦波電圧Vsの周波数は、該共振周波数に等しく設定されている。アース112は、電極パッド8a6,8b6に接続されている。
【0043】
図3は、光偏向器1の右半部の配線図である。光偏向器1の左半部の配線は、図示していないが、対応素子間では左半部の対応素子間と同一接続関係の配線を有している。
【0044】
図3において表面端子31d1〜31d5は、それぞれ較正用カンチレバー15CR(1),15CR(2)及び往復回動用カンチレバー15CC(3)−15CC(5)の上面に形成され、各カンチレバー15において上部電極(圧電膜を両側から挟んでいる電極のうち、表面側の電極)に接続されている。配線31b1は、電極パッド8b1と表面端子31d1とを接続する。配線32b1は、電極パッド8b2と表面端子31d2とを接続する。配線33b1は、電極パッド8b3と表面端子31d3,31d5とを接続する。配線34b1は、電極パッド8b4と表面端子31d4とを接続する。
【0045】
なお、電極パッド8b5は、図示しない配線により内側アクチュエータ6bの上部電極に接続される。電極パッド8b6は、光偏向器1の右半部の埋設金属層としての共通のアース電極層(図示せず)に接続されている。アース電極層は、内側アクチュエータ6b及び外側アクチュエータ7bにおいて下部電極を構成する。
【0046】
光偏向器1は、パッケージ23内に封入され、パッケージ23の各端子と電極パッド8a,8bの各々とはボンディングワイヤ(図示せず)により接続される。光偏向器1は、前述したように、制御部22と共に基板24(
図4A及び
図4B)に実装される。レーザ光源21は、光偏向器1のミラー部2のミラー面2aの中心Oに向かって、パッケージ23の外から光偏向器1の入射光Laを出射する。なお、パッケージ23には、光の入射及び出射を許容する透過窓が形成されている。
【0047】
ミラー部2は、中心Oに入射して来た入射光Laを第1軸線及び第2軸線27の周りの回動角に応じた向きで反射し、走査光Lb(入射光Laの反射光でもある)として所定の照射領域に出射する。
図1では、入射光Laはレーザ光源21からミラー部2に直接入射し、照射領域へ直接向かっている。実際の製品では、パッケージ23の外側において光学系が配設され、光路を変更している。
【0048】
図4Aは、製造ばらつき無しのときの光走査装置20における初期出射方向Ri及び基準出射方向Roの関係を示している。
図4Bは、製造ばらつき有りのときの光走査装置20における初期出射方向Ri及び基準出射方向Roの関係を示している。
図4A及び
図4Bの製造ばらつきとは、(a)光偏向器1のミアンダパターン配列の複数のカンチレバー15から成る外側アクチュエータ7の製造ばらつき、(b)パッケージ23内での光偏向器1の固着角度のばらつき、及び(c)基板24におけるパッケージ23の実装角度のばらつきを合計したばらつきである。したがって、
図4A及び
図4Bで図示しているミラー部2の傾きや走査光Lbの方向等は、光偏向器1が封入されているパッケージ23が基板24に実装された状態で示されている。
【0049】
図4A及び
図4Bにおいて、補助線H1及び補助線Q1は、説明の便宜上、示したものである。補助線H1は、法線25の根元の中心Oを通りかつ基板24の面に対して平行に引かれている。補助線Q1は、法線25の根元の中心Oを通りかつ基板24の面に対して垂直に引かれている。製造ばらつき無しの光走査装置20では、ミラー部2の法線25は補助線Q1に一致する。説明の便宜上、この光走査装置20では、法線25は補助線Q1に一致するときの第2軸線27の周りのミラー部2の回動角θを0°と定義する。
【0050】
基準出射方向Roは、基板24の上面の平面又は該平面に立てた所定の法線に対する所定方向として定義される。基準出射方向Roは、制御部22が第2軸線27の周りのミラー部2の回動角θを制御するときの該回動角θに対応する外側アクチュエータ7の圧電膜の印加電圧を算出又は決定する基礎にされる。例えば、制御部22が光走査装置20からの光の出射方向をRu(図示せず)に制御するとき、制御部22は、基準出射方向Ro及び出射方向Ruに対応する第2軸線27の周りのミラー部2の回動角θo,θu(θuは図示せず)の差分θu−θoに基づいて外側アクチュエータ7の各圧電膜の印加電圧を算出して、カンチレバー15の上部電極に印加する。初期出射方向Riは、内側アクチュエータ6及び外側アクチュエータ7の非駆動時に、光走査装置20からの反射光Lbの出射方向と定義される。
【0051】
図4Aの光走査装置20は、製造ばらつき無しであるので、初期出射方向Riは基準出射方向Roに一致する。説明の便宜上、初期出射方向Riを、ミラー部2の回動角θで表わすと、θiであるとする。
図4Aでは、θo=θiである。このときは、基準出射方向Roを確立するための光走査装置20からの光の出射方向の較正は省略できる。
【0052】
図4Bでは、法線25は補助線Q1からずれるので、初期出射方向Riが
図4Aの初期出射方向Riの方向からずれる。この結果、θo≠θiとなり、基準出射方向Roを確立するための光走査装置20からの光の出射方向の較正が行われる。較正の詳細は、
図7で説明する。概略だけ述べるとθo−θiに対応する較正用電圧が、電極パッド8a1,8b1,8a2,8b2に供給されて、較正用カンチレバー15CRの圧電膜に印加される。
【0053】
光偏向器1の特徴的な作用を説明する前に、一般的な作用について概略的に説明する。光偏向器1において、ミラー部2は、内側アクチュエータ6の作動によりトーションバー5の軸線(第1軸線)の周りに往復回動する。ミラー部2は、また、外側アクチュエータ7の作動により、ミラー部2のミラー面2aに含まれかつミラー面2aの中心Oにおいて第1軸線と直交する柄部12a,12bの軸線として第2軸線27の周りに往復回動する。
【0054】
典型的な光走査装置20では、第1軸線の周りのミラー部2の往復回動により走査光Lbは照射領域を横方向に走査する。また、第2軸線27の周りのミラー部2の往復回動により走査光Lbは照射領域を縦方向に走査する。横方向及び縦方向は、光走査装置20が例えばプロジェクタ等の画像生成装置に装備される場合には、典型的には、それぞれ水平方向及び鉛直方向に揃えられる。
【0055】
例えば、第1軸線の周りのミラー部2の往復回動の周波数は18kHzであり、第2軸線27の周りのミラー部2の往復回動の周波数は60Hzである。第1軸線の周りのミラー部2の往復回動には、共振が利用される。第2軸線27の周りのミラー部2の往復回動には、共振は利用されず、外側アクチュエータ7の作用力のみが利用される。第2軸線27の周りのミラー部2の往復回動の周波数は往復回動用電圧Vcの周波数に一致する。
【0056】
次に、光走査装置20を特徴付ける作用について説明する。
図5は制御部22が外側アクチュエータ7の往復回動用カンチレバー15CCの圧電膜に印加する往復回動用電圧Vcと第2軸線27の周りのミラー部2の回動角θとの関係を示すグラフである。
図5において、往復回動用電圧Vcoは、往復回動用カンチレバー15CC(3),15CC(5)の圧電膜に印加される。往復回動用電圧Vceは、往復回動用カンチレバー15CC(4)の圧電膜に印加される。
【0057】
なお、
図5の回動角θは、較正用カンチレバー15CRにより基準出射方向Roが確立された後の回動角を意味し、法線25と補助線Q1とは重なっている。
図5によれば、回動角θが0°であるとき、往復回動用電圧Vco,Vceは共にV1とされる。回動角θが例えばβ1であるとき、往復回動用電圧Vcoは値Vco1とされ、往復回動用電圧Vceは値Vce1とされる。
【0058】
往復回動用電圧Vco,Vceは、各回動角θにおいて相互に逆相の関係になっている。一方、各カンチレバー15が有する圧電膜について耐電圧Vwが存在する。したがって、往復回動用電圧Vco,Vceの最大値Vmaxは、Vmax≦Vwとされる。
【0059】
往復回動用カンチレバー15CC(3),15CC(5)と往復回動用カンチレバー15CC(4)とは、すなわち奇数番号の往復回動用カンチレバーと偶数番号の往復回動用カンチレバーとは、相互に逆相の往復回動用電圧Vco,Vceを印加されて、ミラー部2を第2軸線27の周りに−β〜βの範囲で往復回動させる。往復回動用電圧Vco,Vceの大小関係は、θ=0°を境に逆転する。
【0060】
図6は制御部22が外側アクチュエータ7に印加する往復回動用電圧の時間変化を示す図である。往復回動用電圧Vcoは外側アクチュエータ7の往復回動用カンチレバー15CC(3),15CC(5)に供給される。往復回動用電圧Vceは外側アクチュエータ7の往復回動用カンチレバー15CC(4)に供給される。往復回動用電圧Vco,Vceは、周期変動電圧の波形としてこぎり波で変化し、相互に逆相の関係になっている。
【0061】
次に、光走査装置20の製造ばらつきに因る基準回動角θoの較正の仕方について説明する。
図7は、較正角(=θo−θi)と較正用電圧Vrとの関係を示すグラフである。
図7のVw及びVmaxは、
図5のそれらと一致する。較正用電圧Vroは較正用カンチレバー15CR(1)の圧電膜に印加される。較正用電圧Vreは較正用カンチレバー15CR(2)の圧電膜に印加される。
【0062】
光走査装置20は、基準出射方向Roを、第2軸線27の周りのミラー部2の回動角が−γ〜γの範囲で較正可能にしている。
図7によれば、較正角が0°であるとき、較正用電圧Vro,Vreは共にV2とされる。較正角が例えばγ1であるとき、較正用電圧Vroは値Vro1とされ、較正用電圧Vreは値Vre1とされる。往復回動用カンチレバー15CC(5)が存在せず、往復回動用カンチレバー15CC(4)が可動枠3に結合している場合は、γ=βとなり、V2=V1となる。
【0063】
例えば、較正角(=θo−θi)=γ1であるとき、較正用電圧Vro=Vro1及び較正用電圧Vre=Vre1とし、較正用カンチレバー15CR(1)のカンチレバー15の圧電膜には、Vro1を印加し、較正用カンチレバー15CR(2)の圧電膜には、Vre1を印加し、較正用カンチレバー15CR(1)の湾曲量>較正用カンチレバー15CR(2)のカンチレバー15の湾曲量とする。これにより、ミラー部2の回動角θが増大し、光の出射方向が、基板24の上面の方へ接近して、基準出射方向Roとすることができる(
図4B参照)。
【0064】
一方、較正用カンチレバー15CRの駆動電圧は較正用電圧Vro(又はVre)+バイアス電圧Vb(≦Vmax)とされる。このバイアス電圧Vbには、較正用カンチレバー15CRのユニポーラ駆動を行う電圧分に、所定の増分を付加することができる。バイアス電圧Vbの調整により、第2軸線27の周りのミラー部2の往復回動範囲の中心回動角が変化し、光走査装置20から出射される走査光が走査される走査領域が、第2軸線27の周りの回動方向に対応する方向へ変位する。この結果、往復回動用カンチレバー15CCによる往復回動角範囲を大きく維持したまま、走査領域のシフトが可能になる。
【0065】
(変形例)
実施形態の光偏向器1は、直交2軸回動の光偏向器1である。本発明の光偏向器は、実施形態の光偏向器1において、ミラー部2を第1軸線の周りに回動させる機構部分(可動枠3、トーションバー5及び内側アクチュエータ6等)を省略して、外側アクチュエータの先端側結合部19をミラー部2の周縁に直接結合させて、ミラー部2を第2軸線27の周りのみ(この場合、第2軸線27はX軸に一致する)往復回転するように構成変更した1軸回動の光偏向器であってもよい。
【0066】
実施形態では、支持部としての固定枠4は、ミラー部2及びアクチュエータとしての外側アクチュエータ7を包囲している。本発明の支持部は、ミラー部を包囲することなく、ミラー部に対して一方の側のみに配設されているものであってもよい。
【0067】
実施形態のレーザ光源21は本発明の光源に相当する。本発明の光源は、ビーム状の光を出射するものであれば、レーザ光源21に限定されない。
【0068】
実施形態では、較正用カンチレバー15CR(1),15CR(2)がそれぞれ本発明の較正用奇数番号カンチレバー及び較正用偶数番号カンチレバーに相当し、往復回動用カンチレバー15CC(3),15CC(5)が本発明の「往復回動用奇数番号カンチレバー」に相当し、往復回動用カンチレバー15CC(4)が本発明の「往復回動用偶数番号カンチレバー」に相当する。本発明では、較正用奇数番号カンチレバー、較正用偶数番号カンチレバー、往復回動用奇数番号カンチレバー及び往復回動用偶数番号カンチレバーがそれぞれ少なくとも1以上確保されて奇数番号及び偶数番号が維持されるのであれば、ミアンダパターンの結合における較正用奇数番号カンチレバー、較正用偶数番号カンチレバー、往復回動用奇数番号カンチレバー及び往復回動用偶数番号カンチレバーの配置順は任意であってよい。
【0069】
ただし、本発明の較正用奇数番号カンチレバー及び較正用偶数番号カンチレバーとして最も基端側結合部18側の奇数番号カンチレバー及び偶数番号カンチレバーを選択したときは、較正用カンチレバー15CRが往復回動用カンチレバー15CCとミラー部2との間に介在しないことになる。この結果、較正用カンチレバー15CRが、往復回動用カンチレバー15CC及びミラー部2の振動により振動することが抑制されて、軸線の周りのミラー部2の回動制御を安定化することができる。
【0070】
実施形態の光偏向器1では、ミラー部2は円形となっているが、ミラー部2は円形でなくてもよい。例えば正方形や矩形とすることもできる。