【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1特徴構成は、ガス検知器に通じる検査用ガス供給部に検査用ガスを供給して、当該ガス検知器を検査するガス検知器検査システムであって、
前記検査用ガスと共に不燃性の液体を内部に貯留する密封式のガス貯留容器と、前記ガス貯留容器内の気層部と前記検査用ガス供給部とを接続するガス供給管と、を備えると共に、
前記ガス貯留容器内の液面レベルに上昇力を作用させて、当該ガス貯留容器内の気層部に圧力を印加する圧力印加手段を備えた点にある。
【0008】
本構成によれば、圧力印加手段により、ガス貯留容器内の液面レベルに上昇力を作用させるという合理的な形態で、ガス貯留容器内の気層部に対して、同気層部に貯留されている検査用ガスをガス検知器側の検査用ガス供給部に適切に供給するための圧力(以下、「供給圧」と呼ぶ場合がある。)を印加することができる。このことで、ガス検知器の検査を行うにあたり、ガス貯留容器内の液面レベルの上昇を伴って、ガス貯留容器からガス供給管を通じて検査用ガス供給部に検査用ガスを供給することができる。
【0009】
また、ガス貯留容器において、圧力印加手段は、気層部に直接接触することなく、液層部の液面レベルに上昇力を作用させて、気層部に圧力を印加するものであるので、気層部と圧力印加手段の接触部との間には安全性の高い不燃性の液体が常に介在された所謂液封構造が実現されることになる。このことで、気層部に貯留されている検査用ガスが圧力印加手段を通じて外部へ漏洩することを防止して、比較的長期に渡って安全に検査用ガスを保管することができる。
従って、本発明により、ガス検知器に通じる検査用ガス供給部に検査用ガスを供給して、当該ガス検知器を検査するにあたり、高い安全性とシステム構成の合理化を実現するガス検知器検査システムを提供することができる。
【0010】
本発明の第2特徴構成は、前記検査用ガスが補給される検査用ガス補給部と前記ガス貯留容器内の液層部とを接続する検査用ガス補給管を備えた点にある。
【0011】
本構成によれば、例えば高圧ボンベなどにより補給用の検査用ガスをシステム内に常備する必要がなく、外部から補給用の検査用ガスを検査用ガス補給部に注入する形態で、ガス貯留容器内の液面レベルの降下を伴って、検査用ガス補給部から検査用ガス補給管を通じてガス貯留容器に検査用ガスを安全に補給することができる。また、ガス貯留容器内での検査用ガスの貯留量を制限すればシステム構成のコンパクト化を図ることができる。
【0012】
本発明の第3特徴構成は、前記液体を内部に貯留し、前記ガス貯留容器に対して液層部同士が接続された液体貯留容器を備えると共に、
前記圧力印加手段が、前記液体貯留容器から前記ガス貯留容器へ前記液体を圧送して、前記ガス貯留容器内の液面レベルに上昇力を作用させる点にある。
【0013】
本構成によれば、圧力印加手段により、液体貯留容器からガス貯留容器へ液体を圧送するという合理的な形態で、ガス貯留容器内の液面レベルに上昇力を作用させることができる。これにより、ガス貯留容器内の気層部に対して適切に供給圧を印加して、ガス貯留容器からガス供給管を通じて検査用ガス供給部に検査用ガスを安定して供給することができる。
【0014】
本発明の第4特徴構成は、前記液体貯留容器内の液層部と前記ガス貯留容器内の液層部とを接続する液層接続管を備えると共に、
前記圧力印加手段が、前記液体貯留容器の液面レベルを前記ガス貯留容器の液面レベルよりも高位に位置させて前記ガス貯留容器内の液面に対して液圧を作用させ、前記液体貯留容器から前記液層接続管を通じて前記ガス貯留容器へ前記液体を圧送する点にある。
【0015】
本構成によれば、液体貯留容器からガス貯留容器へ機械的に液体を圧送するポンプ等の機構を採用する必要がなく、圧力印加手段により、液体貯留容器内の液面レベルをガス貯留容器内の液面レベルよりも高位に位置させるという合理的な形態で、サイフォン又は逆サイフォンの原理を利用して、液体貯留容器から液層接続管を通じてガス貯留容器へ液体を圧送することができる。これにより、ガス貯留容器内の液面に対して、液体貯留容器内の液面レベルに対するガス貯留容器内の液面レベルの高低差に略比例する液圧を上昇力として作用させることができ、結果、液体貯留容器内の液面レベルの降下並びにガス貯留容器内の液面レベルの上昇を伴って、ガス貯留容器からガス供給管を通じて検査用ガス供給部に検査用ガスを安定して供給することができる。
【0016】
また、ガス貯留容器内の液面レベルの上昇力として作用する液圧は、上記高低差に略比例することから安定したものとなっており、液体貯留容器から液層接続管を通じてガス貯留容器に圧送される液体の流量が安定して、ガス貯留容器内の液面レベルの急激な変動が抑制されるので、結果、ガス検知器側の検査用ガス供給部に対して一層安定して検査用ガスを供給することができる。
【0017】
本発明の第5特徴構成は、前記ガス貯留容器及び前記液体貯留容器が、内部の液体貯留空間の水平断面積が鉛直方向において一定に構成されている点にある。
【0018】
本構成によれば、ガス貯留容器及び液体貯留容器が、内部の液体貯留空間の水平断面積が鉛直方向において一定に、換言すれば内部に貯留された液面レベルの変化に伴う液面面積の変化が生じないように構成されている。このことで、ガス検知器の検査を行うにあたり、一定量の検査用ガスをガス貯留容器からガス検知器側の検査用ガス供給部へ供給する場合には、これら容器内の夫々の液面レベルに関係なく、当該夫々の液面レベルの変化幅は一定のものとなる。従って、ガス貯留容器内の液面レベルの上昇力として作用する液圧は常に同じ状態で変化するものとなり、結果、ガス検知器側の検査用ガス供給部に対して一層安定して検査用ガスを供給することができる。
【0019】
本発明の第6特徴構成は、前記ガス貯留容器が、配管の挿通部を底面側に配置して構成されている点にある。
【0020】
本構成によれば、検査用ガスを貯留するガス貯留容器が、例えばガス供給部に検査用ガスを供給するためのガス供給管等の配管の挿通部を底面側に配置しているので、当該配管の挿通部には、ガス貯留容器に貯留される検査用ガスに直接接触することなく安全性の高い不燃性の液体を常に介在させた状態で所謂液封構造が実現されることになり、検査用ガスの外部への漏洩を確実に防止して、一層長期に渡って安全に検査用ガスを保管することができる。
【0021】
本発明の第7特徴構成は、前記液体が、前記検査用ガスに対して難溶解性を示す液体である点にある。
【0022】
本構成によれば、ガス貯留容器内において、検査用ガスが同じくガス貯留容器に貯留されている液体に溶解されることを抑制して、検査用ガスの貯留量が無用に減少することを防止できる。このことで、比較的長期に渡ってガス貯留容器に検査用ガスを貯留し、その検査用ガスをガス検知器側に供給して当該ガス検知器の検査を実施することができる。
【0023】
本発明の第8特徴構成は、前記ガス検知器が、燃焼炉内に通じる排気路の可燃性ガスに感応するガス検知器である点にある。
【0024】
本構成によれば、燃焼炉に通じる排気路の可燃性ガスに感応するガス検知器を検査対象とし、可燃性ガスを検査用ガスとして利用する場合であっても、当該可燃性ガスを燃焼炉付近に設置されるガス貯留容器内に安全に貯留し、その可燃性ガスを合理的な構成でガス検知器側に供給して、当該ガス検知器の検査を実施することができる。
【0025】
本発明の第9特徴構成は、ガス検知器に通じる検査用ガス供給部に検査用ガスを供給して、当該ガス検知器を検査するガス検知器検査方法であって、
前記検査用ガスと共に不燃性の液体を内部に貯留する密封式のガス貯留容器と、前記ガス貯留容器内の気層部と前記検査用ガス供給部とを接続するガス供給管と、を設け、
前記ガス貯留容器内の液面レベルに上昇力を作用させて、当該ガス貯留容器内の気層部に圧力を印加する圧力印加処理と、
前記ガス貯留容器内の液面レベルの上昇を伴って、前記ガス貯留容器から前記ガス供給管を通じて前記検査用ガス供給部に前記検査用ガスを供給する検査処理と、を実行する点にある。
【0026】
本構成によれば、上述した第1特徴構成と同様の作用効果を奏し、ガス検知器に通じる検査用ガス供給部に対して検査用ガスを安全且つ合理的に供給することができる。
【0027】
本発明の第10特徴構成は、前記検査用ガスが補給される検査用ガス補給部と前記ガス貯留容器内の液層部とを接続する検査用ガス補給管と、前記液体を内部に貯留する液体貯留容器と、前記液体貯留容器内の液層部と前記ガス貯留容器内の液層部とを接続する液層接続管と、を設け、
前記圧力印加処理が、前記液体貯留容器から前記液層接続管を通じて前記ガス貯留容器へ前記液体を圧送して、前記ガス貯留容器内の液面レベルに上昇力を作用させる処理であり、
前記ガス貯留容器内の液面レベルの降下を伴って、前記検査用ガス補給部から前記検査用ガス補給管を通じて前記ガス貯留容器に前記検査用ガスを補給する補給処理を実行した後に、前記検査処理を実行する点にある。
【0028】
本構成によれば、補給処理を実行することにより、例えば外部から補給用の検査用ガスを検査用ガス補給部に注入する形態で、ガス貯留容器内の液面レベルの降下を伴って、検査用ガス補給部から検査用ガス補給管を通じてガス貯留容器に検査用ガスを安全に補給することができる。そして、補給処理の実行後に検査処理を実行することにより、ガス貯留容器内の液面レベルの上昇を伴って、合理的に、ガス貯留容器からガス供給管を通じて検査用ガス供給部に検査用ガスを供給することができる。
【0029】
本発明の第11特徴構成は、前記検査処理を複数回実行する毎に、前記補給処理を実行する点にある。
【0030】
本構成によれば、検査処理を定期的に実行するにあたり、当該検査処理を複数回実行する毎に、補給処理を実行して、ガス貯留容器内に検査用ガスを補給することができる。これにより、検査用ガスを補給する補給処理の実行回数をできるだけ少なくして、作業性を向上することができる。