特許第6808514号(P6808514)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6808514ガス検知器検査システム及びガス検知器検査方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6808514
(24)【登録日】2020年12月11日
(45)【発行日】2021年1月6日
(54)【発明の名称】ガス検知器検査システム及びガス検知器検査方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/00 20060101AFI20201221BHJP
【FI】
   G01N1/00 E
   G01N1/00 101T
   G01N1/00 102D
【請求項の数】11
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-16847(P2017-16847)
(22)【出願日】2017年2月1日
(65)【公開番号】特開2018-124180(P2018-124180A)
(43)【公開日】2018年8月9日
【審査請求日】2020年1月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000190301
【氏名又は名称】新コスモス電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100154726
【弁理士】
【氏名又は名称】宮地 正浩
(72)【発明者】
【氏名】中畑 壽夫
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 達也
【審査官】 瓦井 秀憲
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−078434(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0082864(US,A1)
【文献】 特開平06−265451(JP,A)
【文献】 特開平11−166851(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/00− 1/44
F17C 13/12
F27D 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス検知器に通じる検査用ガス供給部に検査用ガスを供給して、当該ガス検知器を検査するガス検知器検査システムであって、
前記検査用ガスと共に不燃性の液体を内部に貯留する密封式のガス貯留容器と、前記ガス貯留容器内の気層部と前記検査用ガス供給部とを接続するガス供給管と、を備えると共に、
前記ガス貯留容器内の液面レベルに上昇力を作用させて、当該ガス貯留容器内の気層部に圧力を印加する圧力印加手段を備えたガス検知器検査システム。
【請求項2】
前記検査用ガスが補給される検査用ガス補給部と前記ガス貯留容器内の液層部とを接続する検査用ガス補給管を備えた請求項1に記載のガス検知器検査システム。
【請求項3】
前記液体を内部に貯留し、前記ガス貯留容器に対して液層部同士が接続された液体貯留容器を備えると共に、
前記圧力印加手段が、前記液体貯留容器から前記ガス貯留容器へ前記液体を圧送して、前記ガス貯留容器内の液面レベルに上昇力を作用させる請求項1又は2に記載のガス検知器検査システム。
【請求項4】
前記液体貯留容器内の液層部と前記ガス貯留容器内の液層部とを接続する液層接続管を備えると共に、
前記圧力印加手段が、前記液体貯留容器の液面レベルを前記ガス貯留容器の液面レベルよりも高位に位置させて前記ガス貯留容器内の液面に対して液圧を作用させ、前記液体貯留容器から前記液層接続管を通じて前記ガス貯留容器へ前記液体を圧送する請求項3に記載のガス検知器検査システム。
【請求項5】
前記ガス貯留容器及び前記液体貯留容器が、内部の液体貯留空間の水平断面積が鉛直方向において一定に構成されている請求項4に記載のガス検知器検査システム。
【請求項6】
前記ガス貯留容器が、配管の挿通部を底面側に配置して構成されている請求項1〜5の何れか1項に記載のガス検知器検査システム。
【請求項7】
前記液体が、前記検査用ガスに対して難溶解性を示す液体である請求項1〜6の何れか1項に記載のガス検知器検査システム。
【請求項8】
前記ガス検知器が、燃焼炉内に通じる排気路の可燃性ガスに感応するガス検知器である請求項1〜7の何れか1項に記載のガス検知器検査システム。
【請求項9】
ガス検知器に通じる検査用ガス供給部に検査用ガスを供給して、当該ガス検知器を検査するガス検知器検査方法であって、
前記検査用ガスと共に不燃性の液体を内部に貯留する密封式のガス貯留容器と、前記ガス貯留容器内の気層部と前記検査用ガス供給部とを接続するガス供給管と、を設け、
前記ガス貯留容器内の液面レベルに上昇力を作用させて、当該ガス貯留容器内の気層部に圧力を印加する圧力印加処理と、
前記ガス貯留容器内の液面レベルの上昇を伴って、前記ガス貯留容器から前記ガス供給管を通じて前記検査用ガス供給部に前記検査用ガスを供給する検査処理と、を実行するガス検知器検査方法。
【請求項10】
前記検査用ガスが補給される検査用ガス補給部と前記ガス貯留容器内の液層部とを接続する検査用ガス補給管と、前記液体を内部に貯留する液体貯留容器と、前記液体貯留容器内の液層部と前記ガス貯留容器内の液層部とを接続する液層接続管と、を設け、
前記圧力印加処理が、前記液体貯留容器から前記液層接続管を通じて前記ガス貯留容器へ前記液体を圧送して、前記ガス貯留容器内の液面レベルに上昇力を作用させる処理であり、
前記ガス貯留容器内の液面レベルの降下を伴って、前記検査用ガス補給部から前記検査用ガス補給管を通じて前記ガス貯留容器に前記検査用ガスを補給する補給処理を実行した後に、前記検査処理を実行する請求項9に記載のガス検知器検査方法。
【請求項11】
前記検査処理を複数回実行する毎に、前記補給処理を実行する請求項10に記載のガス検知器検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス検知器に通じる検査用ガス供給部に検査用ガスを供給して、当該ガス検知器を検査するガス検知器検査システム、及び、そのガス検知器検査システムを利用して、前記ガス検知器を検査するガス検知器検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
塗装乾燥炉やボイラー等のような燃料ガスを燃焼させる燃焼炉から排ガスが排出される排気路では、可燃性ガスの有無やその濃度等の状態を監視して安全性を確保する目的で、可燃性ガスに感応するガス検知器が設置されている。例えば、燃焼炉の操業を開始する際には、排気路に滞留している可燃性ガスによる爆発等を未然に防止するために、ガス検知器により排気路に100%LEL(爆発下限界)より高い濃度の可燃性ガスが存在しないことを予め確認した上で燃焼炉内にて燃料ガスの燃焼を開始することが望ましい。
【0003】
この種のガス検知器は、定期的に正常に作動するか否かを検査して、適切な校正やメンテナンス等を実施する必要がある。そして、ガス検知器の検査を行うためのガス検知器検査システムとしては、ガス検知器に通じる検査用ガス供給部に検査用ガスを供給可能なシステムが知られている(例えば、特許文献1及び2を参照。)。
即ち、上記特許文献1に記載のシステムは、検査用ガス(標準ガス)を高圧で貯留する高圧ボンベ(7)を設置し、その高圧ボンベ(7)から取り出した検査用ガスをガス検知器(5)側に供給するように構成されている。
一方、上記特許文献2に記載のシステムは、検査用ガスである可燃性ガス(燃焼性ガス)を発生するエチルアルコールなどの液状炭化水素を含浸用充填材に含浸させてなるガス源(53)を容器(52)内に配置したガス発生器(51)を設置して、当該ガス発生器(51)で気化させた可燃性ガスをガス検知器(21)側に供給するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭57−192457号公報
【特許文献2】特開2006−78434号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献1に記載のガス検知器検査システムでは、検査用ガスを高圧で貯留する高圧ボンベの設置場所が、可燃性ガスに感応するガス検知器が設置される燃焼炉付近のように比較的高温となる場所である場合には、高圧ボンベを常に低温(例えば40℃以下)に保って安全性を確保するために、屋根、障壁、散水装置を設けるなどのように、煩雑で多くの経費がかかる措置を講じる必要がある。
一方、上述した特許文献2に記載のガス検知器検査システムでは、液状炭化水素を気化させて得た可燃性ガスを検査用ガスとして利用するので、かかる液状炭化水素の準備と安全な取扱いに多くの経費と労力が必要となる。
また、これら従来のガス検知器検査システムにおいて、特に可燃性ガスを検査用ガスとして利用する場合には、比較的長期に渡って安全に検査用ガスを保管するために、当該可燃性ガスの漏洩を確実に防止する必要がある。
【0006】
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、ガス検知器に通じる検査用ガス供給部に検査用ガスを供給して、当該ガス検知器を検査するにあたり、高い安全性とシステム構成の合理化を実現する技術を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1特徴構成は、ガス検知器に通じる検査用ガス供給部に検査用ガスを供給して、当該ガス検知器を検査するガス検知器検査システムであって、
前記検査用ガスと共に不燃性の液体を内部に貯留する密封式のガス貯留容器と、前記ガス貯留容器内の気層部と前記検査用ガス供給部とを接続するガス供給管と、を備えると共に、
前記ガス貯留容器内の液面レベルに上昇力を作用させて、当該ガス貯留容器内の気層部に圧力を印加する圧力印加手段を備えた点にある。
【0008】
本構成によれば、圧力印加手段により、ガス貯留容器内の液面レベルに上昇力を作用させるという合理的な形態で、ガス貯留容器内の気層部に対して、同気層部に貯留されている検査用ガスをガス検知器側の検査用ガス供給部に適切に供給するための圧力(以下、「供給圧」と呼ぶ場合がある。)を印加することができる。このことで、ガス検知器の検査を行うにあたり、ガス貯留容器内の液面レベルの上昇を伴って、ガス貯留容器からガス供給管を通じて検査用ガス供給部に検査用ガスを供給することができる。
【0009】
また、ガス貯留容器において、圧力印加手段は、気層部に直接接触することなく、液層部の液面レベルに上昇力を作用させて、気層部に圧力を印加するものであるので、気層部と圧力印加手段の接触部との間には安全性の高い不燃性の液体が常に介在された所謂液封構造が実現されることになる。このことで、気層部に貯留されている検査用ガスが圧力印加手段を通じて外部へ漏洩することを防止して、比較的長期に渡って安全に検査用ガスを保管することができる。
従って、本発明により、ガス検知器に通じる検査用ガス供給部に検査用ガスを供給して、当該ガス検知器を検査するにあたり、高い安全性とシステム構成の合理化を実現するガス検知器検査システムを提供することができる。
【0010】
本発明の第2特徴構成は、前記検査用ガスが補給される検査用ガス補給部と前記ガス貯留容器内の液層部とを接続する検査用ガス補給管を備えた点にある。
【0011】
本構成によれば、例えば高圧ボンベなどにより補給用の検査用ガスをシステム内に常備する必要がなく、外部から補給用の検査用ガスを検査用ガス補給部に注入する形態で、ガス貯留容器内の液面レベルの降下を伴って、検査用ガス補給部から検査用ガス補給管を通じてガス貯留容器に検査用ガスを安全に補給することができる。また、ガス貯留容器内での検査用ガスの貯留量を制限すればシステム構成のコンパクト化を図ることができる。
【0012】
本発明の第3特徴構成は、前記液体を内部に貯留し、前記ガス貯留容器に対して液層部同士が接続された液体貯留容器を備えると共に、
前記圧力印加手段が、前記液体貯留容器から前記ガス貯留容器へ前記液体を圧送して、前記ガス貯留容器内の液面レベルに上昇力を作用させる点にある。
【0013】
本構成によれば、圧力印加手段により、液体貯留容器からガス貯留容器へ液体を圧送するという合理的な形態で、ガス貯留容器内の液面レベルに上昇力を作用させることができる。これにより、ガス貯留容器内の気層部に対して適切に供給圧を印加して、ガス貯留容器からガス供給管を通じて検査用ガス供給部に検査用ガスを安定して供給することができる。
【0014】
本発明の第4特徴構成は、前記液体貯留容器内の液層部と前記ガス貯留容器内の液層部とを接続する液層接続管を備えると共に、
前記圧力印加手段が、前記液体貯留容器の液面レベルを前記ガス貯留容器の液面レベルよりも高位に位置させて前記ガス貯留容器内の液面に対して液圧を作用させ、前記液体貯留容器から前記液層接続管を通じて前記ガス貯留容器へ前記液体を圧送する点にある。
【0015】
本構成によれば、液体貯留容器からガス貯留容器へ機械的に液体を圧送するポンプ等の機構を採用する必要がなく、圧力印加手段により、液体貯留容器内の液面レベルをガス貯留容器内の液面レベルよりも高位に位置させるという合理的な形態で、サイフォン又は逆サイフォンの原理を利用して、液体貯留容器から液層接続管を通じてガス貯留容器へ液体を圧送することができる。これにより、ガス貯留容器内の液面に対して、液体貯留容器内の液面レベルに対するガス貯留容器内の液面レベルの高低差に略比例する液圧を上昇力として作用させることができ、結果、液体貯留容器内の液面レベルの降下並びにガス貯留容器内の液面レベルの上昇を伴って、ガス貯留容器からガス供給管を通じて検査用ガス供給部に検査用ガスを安定して供給することができる。
【0016】
また、ガス貯留容器内の液面レベルの上昇力として作用する液圧は、上記高低差に略比例することから安定したものとなっており、液体貯留容器から液層接続管を通じてガス貯留容器に圧送される液体の流量が安定して、ガス貯留容器内の液面レベルの急激な変動が抑制されるので、結果、ガス検知器側の検査用ガス供給部に対して一層安定して検査用ガスを供給することができる。
【0017】
本発明の第5特徴構成は、前記ガス貯留容器及び前記液体貯留容器が、内部の液体貯留空間の水平断面積が鉛直方向において一定に構成されている点にある。
【0018】
本構成によれば、ガス貯留容器及び液体貯留容器が、内部の液体貯留空間の水平断面積が鉛直方向において一定に、換言すれば内部に貯留された液面レベルの変化に伴う液面面積の変化が生じないように構成されている。このことで、ガス検知器の検査を行うにあたり、一定量の検査用ガスをガス貯留容器からガス検知器側の検査用ガス供給部へ供給する場合には、これら容器内の夫々の液面レベルに関係なく、当該夫々の液面レベルの変化幅は一定のものとなる。従って、ガス貯留容器内の液面レベルの上昇力として作用する液圧は常に同じ状態で変化するものとなり、結果、ガス検知器側の検査用ガス供給部に対して一層安定して検査用ガスを供給することができる。
【0019】
本発明の第6特徴構成は、前記ガス貯留容器が、配管の挿通部を底面側に配置して構成されている点にある。
【0020】
本構成によれば、検査用ガスを貯留するガス貯留容器が、例えばガス供給部に検査用ガスを供給するためのガス供給管等の配管の挿通部を底面側に配置しているので、当該配管の挿通部には、ガス貯留容器に貯留される検査用ガスに直接接触することなく安全性の高い不燃性の液体を常に介在させた状態で所謂液封構造が実現されることになり、検査用ガスの外部への漏洩を確実に防止して、一層長期に渡って安全に検査用ガスを保管することができる。
【0021】
本発明の第7特徴構成は、前記液体が、前記検査用ガスに対して難溶解性を示す液体である点にある。
【0022】
本構成によれば、ガス貯留容器内において、検査用ガスが同じくガス貯留容器に貯留されている液体に溶解されることを抑制して、検査用ガスの貯留量が無用に減少することを防止できる。このことで、比較的長期に渡ってガス貯留容器に検査用ガスを貯留し、その検査用ガスをガス検知器側に供給して当該ガス検知器の検査を実施することができる。
【0023】
本発明の第8特徴構成は、前記ガス検知器が、燃焼炉内に通じる排気路の可燃性ガスに感応するガス検知器である点にある。
【0024】
本構成によれば、燃焼炉に通じる排気路の可燃性ガスに感応するガス検知器を検査対象とし、可燃性ガスを検査用ガスとして利用する場合であっても、当該可燃性ガスを燃焼炉付近に設置されるガス貯留容器内に安全に貯留し、その可燃性ガスを合理的な構成でガス検知器側に供給して、当該ガス検知器の検査を実施することができる。
【0025】
本発明の第9特徴構成は、ガス検知器に通じる検査用ガス供給部に検査用ガスを供給して、当該ガス検知器を検査するガス検知器検査方法であって、
前記検査用ガスと共に不燃性の液体を内部に貯留する密封式のガス貯留容器と、前記ガス貯留容器内の気層部と前記検査用ガス供給部とを接続するガス供給管と、を設け、
前記ガス貯留容器内の液面レベルに上昇力を作用させて、当該ガス貯留容器内の気層部に圧力を印加する圧力印加処理と、
前記ガス貯留容器内の液面レベルの上昇を伴って、前記ガス貯留容器から前記ガス供給管を通じて前記検査用ガス供給部に前記検査用ガスを供給する検査処理と、を実行する点にある。
【0026】
本構成によれば、上述した第1特徴構成と同様の作用効果を奏し、ガス検知器に通じる検査用ガス供給部に対して検査用ガスを安全且つ合理的に供給することができる。
【0027】
本発明の第10特徴構成は、前記検査用ガスが補給される検査用ガス補給部と前記ガス貯留容器内の液層部とを接続する検査用ガス補給管と、前記液体を内部に貯留する液体貯留容器と、前記液体貯留容器内の液層部と前記ガス貯留容器内の液層部とを接続する液層接続管と、を設け、
前記圧力印加処理が、前記液体貯留容器から前記液層接続管を通じて前記ガス貯留容器へ前記液体を圧送して、前記ガス貯留容器内の液面レベルに上昇力を作用させる処理であり、
前記ガス貯留容器内の液面レベルの降下を伴って、前記検査用ガス補給部から前記検査用ガス補給管を通じて前記ガス貯留容器に前記検査用ガスを補給する補給処理を実行した後に、前記検査処理を実行する点にある。
【0028】
本構成によれば、補給処理を実行することにより、例えば外部から補給用の検査用ガスを検査用ガス補給部に注入する形態で、ガス貯留容器内の液面レベルの降下を伴って、検査用ガス補給部から検査用ガス補給管を通じてガス貯留容器に検査用ガスを安全に補給することができる。そして、補給処理の実行後に検査処理を実行することにより、ガス貯留容器内の液面レベルの上昇を伴って、合理的に、ガス貯留容器からガス供給管を通じて検査用ガス供給部に検査用ガスを供給することができる。
【0029】
本発明の第11特徴構成は、前記検査処理を複数回実行する毎に、前記補給処理を実行する点にある。
【0030】
本構成によれば、検査処理を定期的に実行するにあたり、当該検査処理を複数回実行する毎に、補給処理を実行して、ガス貯留容器内に検査用ガスを補給することができる。これにより、検査用ガスを補給する補給処理の実行回数をできるだけ少なくして、作業性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】ガス検知器検査システムの概略構成及び検査処理時の状態を示す図
図2】ガス検知器検査システムの概略構成及び補給処理時の状態を示す図
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明の実施形態について、図1及び図2に基づいて説明する。
尚、図1及び図2に示すガス検知器検査システム(以下「本システム」と呼ぶ。)50内において、流体が通流している状態の管路は太実線で示しており、流体が通流してない管路は細実線で示している。
【0033】
本実施形態において、本システム50は、特定成分に感応するガス検知器Sに通じる検査用ガス供給部70a近傍に設置され、当該検査用ガス供給部70aに検査用ガスGを供給して、当該ガス検知器Sを自動的に検査するシステムとして構成されている。
また、ガス検知器Sは、特定成分としてメタンなどの可燃性ガスに感応するものとして構成されており、塗装乾燥炉やボイラー等のような燃料ガスを燃焼させる燃焼炉60と排気ダクト64とを接続する排気路61に設置されている。
【0034】
排気路61におけるガス検知器Sの下流側には、ポンプ63、及び流量計62等の各種補機が設置されており、一方、排気路61におけるガス検知器Sの上流側には、当該排気路61に対して大気や不活性ガスなどの希釈用ガスを導入するための希釈用ガス供給路70が接続されている。また、希釈用ガス供給路70には、ポンプ71、開閉弁72、及び流量計73等の各種補機が設けられている。そして、排気路61においてポンプ63の出力を流量計62で計測される流量に基づいて制御すると共に、希釈用ガス供給路70において開閉弁72を開弁した状態でポンプ71の出力を流量計73で計測される流量に基づいて制御することで、燃焼炉60から排気路61に一定の流量の排ガスを誘引すると共に、排気路61におけるガス検知器Sの上流側に対して一定の流量の希釈用ガスを供給するように構成されている。
【0035】
このような希釈用ガス供給路70が設けられていることにより、排気路61及びその下流側に接続される排気ダクト64には、燃焼炉60から排出された排ガスが、希釈用ガスで希釈されて露点温度が低下した状態で通流することになるので、結露が防止されることになる。そして、排気路61を通流する希釈後の排ガスに一定濃度以上の可燃性ガスが含まれている場合には、当該排気路61に設置されたガス検知器Sが作動して所定の警報を発することで、その状態が把握されることになる。
【0036】
本システム50は、図1に示すように、ガス検知器Sに通じる希釈用ガス供給路70の検査用ガス供給部70aに接続されたガス供給管40を通じて、当該検査用ガス供給部70aに対して所定の検査用ガスGを供給可能に構成されている。
ここで、検査用ガスGとしては、ガス検知器Sが感応する特定成分を含むものを利用することができるが、本実施形態では、燃焼炉60において燃料として利用される燃料ガスを検査用ガスGとして利用している。このように燃料ガスをそのまま検査用ガスGとして利用した場合であっても、本システム50では、検査用ガス供給部70aに供給された検査用ガスGが希釈用ガスにより希釈されて、可燃性ガスの濃度が100%LEL(爆発下限界)以下に低下された上で、ガス検知器Sが設置された排気路61並びに排気ダクト64に供給されることになる。
そして、本システム50では、燃焼炉60において燃料を着火し操業を開始する直前などの所定の検査タイミングにおいて、検査用ガスGを検査用ガス供給部70aに供給して、ガス検知器Sが正常に作動するか否かを検査することができる。
【0037】
次に、本システム50の具体的構成について説明する。
本システム50には、密封式のガス貯留容器Va及び液体貯留容器Vbが設けられている。
ガス貯留容器Vaは、蓋部材Caで密封される開口部を有し、検査用ガスGと共に液体Lを内部に貯留する密封容器として構成されている。更に、このガス貯留容器Vaは、後述する各配管10,30,40が挿通される挿通部を底面側に配置して構成され、具体的には当該挿通部が設けられた蓋部材Caで密封された開口部を底面側とした逆向き姿勢で設置されている。これにより、蓋部材Caの装着部や蓋部材Caへの各配管10,30,40の挿通部には、ガス貯留容器Vaに貯留される検査用ガスGに直接接触することなく安全性の高い不燃性の液体Lを常に介在させた状態で所謂液封構造(液体Lとして水を利用する場合には水封構造と呼ぶ場合がある。)が実現されており、この液封構造により、検査用ガスGの外部への漏洩が確実に防止されている。
【0038】
液体貯留容器Vbは、液体Lを内部に貯留し、ガス貯留容器Vaに対して液層接続管30を通じて液層部(液面よりも下方側の液体Lが貯留されている部分)同士が接続された密封容器として構成されている。この液体貯留容器Vbは、後述する通気管20が挿通される挿通部を上面側に有するように構成され、具体的には当該挿通部が設けられた蓋部材Cbで密封された開口部を上面側とした姿勢で設置されており、更に、その底面部には、後述する液層接続管30が接続されている。
【0039】
これらガス貯留容器Va及び液体貯留容器Vbの内部に貯留されている液体Lとしては、漏洩時の安全性確保の点から不燃性のものが利用されている。更に、ガス貯留容器Va内において、検査用ガスGが液体Lに溶解されることを抑制するために、液体Lが検査用ガスGに対して難溶解性を示すものが利用されている。そして、このような液体Lとしては水等を好適に利用することができる。
【0040】
本システム50には、ガス貯留容器Va及び液体貯留容器Vbに接続される配管として、検査用ガス補給管10、通気管20、液層接続管30、及び、ガス供給管40が設けられている。
検査用ガス補給管10は、シリンジやガスバッグなどで検査用ガスGが補給される検査用ガス補給部45とガス貯留容器Va内の液層部(液面よりも下方側の液体Lが貯留されている部分)とを接続する配管として構成されている。即ち、この検査用ガス補給管10の一端側は、検査用ガス補給部45に接続されており、一方他端側は、ガス貯留容器Va内において液体Lの液面よりも下方側に開口端部10aを位置させる状態で蓋部材Caに挿通されている。また、この検査用ガス補給管10には、検査用ガスGの通流を遮断可能な開閉弁11が設けられており、更に、ガス貯留容器Vaの内圧を計測可能な圧力計12等の各種補機が必要に応じて適宜設けられている。
【0041】
通気管20は、排気ダクト64と液体貯留容器Vbの気層部(液面よりも上方側のガスAが貯留されている部分)とを接続する配管として構成されている。即ち、この通気管20の一端側は、ガスAが通流する排気ダクト64に接続されており、一方他端側は、液体貯留容器Vbにおいて液体Lの液面よりも上方側に開口端部20bを位置させる状態で液体貯留容器Vbの蓋部材Cbに挿通されている。また、この通気管20には、ガスAの通流を遮断可能な開閉弁21が設けられており、更に、液体貯留容器Vbの内圧を計測可能な圧力計22等の各種補機が必要に応じて適宜設けられている。
【0042】
液層接続管30は、液体貯留容器Vb内の液層部(液面よりも下方側の液体Lが貯留されている部分)とガス貯留容器Va内の液層部(液面よりも下方側の液体Lが貯留されている部分)とを接続する配管として構成されている。即ち、この液層接続管30の一端側は、液体貯留容器Vbにおいて液体Lの液面よりも下方側に開口端部30bを位置させる状態で同液体貯留容器Vbの底部に接続されており、一方他端側は、ガス貯留容器Vaにおいて液体Lの液面よりも下方側に開口端部30aを位置させる状態でガス貯留容器Vaの蓋部材Caに挿通されている。また、この液層接続管30には、液体貯留容器Vbからガス貯留容器Vaへ供給される液体Lの流量を調整可能な流量制御弁31が設けられている。
【0043】
ガス供給管40は、ガス貯留容器Va内の気層部(液面よりも上方側の検査用ガスGが貯留されている部分)と検査用ガス供給部70aとを接続する配管として構成されている。即ち、このガス供給管40の一端側は、検査用ガス供給部70aに接続されており、一方他端側は、ガス貯留容器Va内において液体Lの液面よりも上方側に開口端部40aを位置させる状態でガス貯留容器Vaの蓋部材Caに挿通されている。また、このガス供給管40には、検査用ガスGの通流を断続可能且つガス貯留容器Vaから検査用ガス供給部70aへ供給される検査用ガスGの流量を調整可能な流量制御弁41が設けられており、更に、検査用ガスGの乾燥処理を行うドライヤや不純物の除去処理を行うフィルタなどを有するガス処理部42や、検査用ガスGの流量を計測可能な流量計44等の各種補機が必要に応じて適宜設けられている。また、図示は省略するが、ガス供給管40には、キャピラリーなどのような検査用ガスGの通流量を安定させるための構成を追加しても構わない。また、ガス供給管40以外の各配管10,20,30についても、図示は省略するがフィルタやドライヤ等を有するガス処理部を設けても構わない。また、それ以外に、各配管10,20,30,40に、オートドレンやストップバルブなどの他の機器を適宜設置しても構わない。
【0044】
以上のように各配管10,20,30,40が設けられていることで、ガス貯留容器Va及び液体貯留容器Vbの内部では、各配管10,20,30,40の開口端部10a,20b,30a,30b,40a並びに液体Lの液面は以下のように配置されることになる。
即ち、ガス貯留容器Va内では、検査用ガス補給管10の開口端部10a及び液層接続管30の開口端部30aが下方側に配置され、ガス供給管40の開口端部40aが上方側に配置されている。そして、ガス貯留容器Va内では、これら下方側に配置された開口端部10a,30aと上方側に配置された開口端部40aとの間の範囲内に、液体Lの液面レベルHaが維持されている。
【0045】
一方、液体貯留容器Vb内では、液層接続管30の開口端部30bが下方側に配置され、通気管20の開口端部20bが上方側に配置されている。そして、液体貯留容器Vbでは、これら下方側に配置された開口端部30bと上方側に配置された開口端部20bとの間の範囲内に、液体Lの液面レベルHbが維持されている。
【0046】
本システム50では、ガス貯留容器Va内の液面レベルHaに上昇力を作用させて、当該ガス貯留容器Va内の気層部に対して、当該気層部の検査用ガスGを検査用ガス供給部70aに供給するための供給圧を印加する圧力印加手段Xが設けられている。
このような圧力印加手段Xが設けられていることにより、本システム50を用いたガス検知器検査方法では、図1に示すように、流量制御弁31を開弁して液体貯留容器Vb内の液層部とガス貯留容器Va内の液層部とを連通させると共に、流量制御弁41を開弁して検査用ガス供給部70aに対してガス供給管40を所定時間開放する。すると、ガス貯留容器Va内の液面レベルHaの上昇を伴って、ガス貯留容器Vaからガス供給管40を通じて検査用ガス供給部70aに検査用ガスGを供給する検査処理が実行されることになる。
【0047】
以下、圧力印加手段X及びその圧力印加手段Xを利用した検査処理の詳細構成について、図1を参照して説明する。
圧力印加手段Xは、流量制御弁31を開弁した状態において、液体貯留容器Vbからガス貯留容器Vaへ液体Lを圧送して、ガス貯留容器Va内の液面レベルHaに上昇力を作用させる形態で圧力印加処理を実行するように構成されている。具体的に、液体貯留容器Vb内の液面レベルHb(内部に貯留されている液体Lの液面の高さ)をガス貯留容器Va内の液面レベルHaよりも高位に位置させるように、これら液体貯留容器Vbとガス貯留容器Vaとが上下方向に並べて配置されている。すると、サイフォン又は逆サイフォンの原理により、液体貯留容器Vbから液層接続管30を通じてガス貯留容器Vaへ液体Lが圧送されることになり、これにより、ガス貯留容器Va内の液面レベルHaに対して上昇力が作用されることになる。
【0048】
尚、液体貯留容器Vb内の液面レベルHbに対するガス貯留容器Va内の液面レベルHaの高低差Δhは適宜設定することができ、例えば本実施形態では、当該高低差Δhが数十cm(例えば30cm程度)に設定されている。そして、この高低差Δhに略比例する液圧(液体Lとして水を利用する場合には水頭圧に相当する。)が、ガス貯留容器Va内の液面レベルHaの上昇力として作用することになる。
即ち、このような液面レベルHa,Hbの高低差Δhを適切に設定することで、ガス貯留容器Va内の液面レベルHaに対して作用させる上昇力を適切なものに設定することができる。このことで、ガス貯留容器Va内の気層部へ印加される供給圧の過剰な上昇が抑制されることになり、比較的低圧で検査用ガスGがガス貯留容器Va内に貯留されることで、安全性が向上されている。
【0049】
そして、上記検査処理では、圧力印加手段Xにより圧力印加処理が実行されてガス貯留容器Vb内の気層部に圧力が印加された状態で、流量制御弁31,41を開弁することで、液層接続管30を通じて液体貯留容器Vbからガス貯留容器Vaに液圧が付加されて液体Lが圧送される。すると、液体貯留容器Vb内の液面レベルHbが降下すると共にガス貯留容器Vaの液面レベルHaが上昇して、ガス貯留容器Vaの気層部に貯留されている検査用ガスGがガス供給管40を通じて検査用ガス供給部70aに押し出されることになる。
【0050】
上記検査処理において、ガス貯留容器Va内の液面レベルHaの上昇力として作用する液圧は、液体貯留容器Vb内の液面レベルHbに対するガス貯留容器Va内の液面レベルHaの高低差Δhに略比例することから、急激な変動が無く安定したものとなっている。このことから、ガス貯留容器Vaから検査用ガス供給部70aへの検査用ガスGの供給に伴うガス貯留容器Va内の液面レベルHaの上昇状態は、急激に変動するものではなく安定したものとなり、結果、検査用ガス供給部70aへの安定した検査用ガスGの供給が実現されている。
【0051】
流量制御弁41の開度を調整してガス貯留容器Vaからガス供給管40への検査用ガスGの流出量を制御することによって、検査用ガス供給部70aへの検査用ガスGの供給量を所望の供給量に設定することができる。一方、液層接続管30からガス貯留容器Vaへの液体Lの流入量に略相当する量の検査用ガスGが、ガス貯留容器Vaからガス供給管40に流出することから、流量制御弁31の開度を調整して液層接続管30からガス貯留容器Vaへの液体Lの流入量を制御することによっても、検査用ガス供給部70aへの検査用ガスGの供給量を所望の供給量に設定することができる。この場合、ガス供給配管40に負圧が掛かった場合にガス貯留容器Va内がそれに伴って減圧することを防止するために、流量制御弁41を作動させることができる。また、前者の流量制御弁41の開度調整による検査用ガスGの流出量制御と後者の流量制御弁31の開度調整による液体Lの流入量制御との両方を組み合わせることでも、検査用ガス供給部70aへの検査用ガスGの供給量を所望の供給量に設定することができる。
そして、前者の流量制御弁41の開度調整による検査用ガスGの流出量制御では、圧縮性の気体である検査用ガスGの流量が制御対象となることから、検査用ガスGの供給量について誤差が生じやすいのに対して、後者の流量制御弁31の開度調整による液体Lの流入量制御では、非圧縮性の液体Lが制御対象となることから、検査用ガスGの供給量について誤差が生じにくい。よって、検査用ガス供給部70aへの検査用ガスGの供給量を高精度に設定するためには、後者の流量制御弁31の開度調整による液体Lの流入量制御を含む方法を採用することが望ましい。
また、検査処理の終了時点から次の検査処理の開始時点までの間に、例えば流量制御弁31を閉弁した状態でガス貯留容器Vaの内圧を一時的に大気圧に開放して、当該ガス貯留容器Vaの内圧を一定の外圧(大気圧)に設定しておくことが好ましい。このことにより、ガス貯留容器Vaの内圧を一定にした状態で次の検査処理を開始することができ、検査処理の精度を向上することができる。
【0052】
ガス貯留容器Va及び液体貯留容器Vbは、内部の液体貯留空間の水平断面積が鉛直方向において一定の容器、具体的には鉛直方向に沿った筒軸心を有する円筒状又は角筒状の容器として構成されている。これにより、上記検査処理において、内部に貯留された液体Lの液面レベルHa,Hbが変化した場合であっても、その液面面積の変化が生じないものとなっている。すると、ガス貯留容器Va及び液体貯留容器Vbでは、上記検査処理において、一定量の検査用ガスGをガス貯留容器Vaからガス検知器S側の検査用ガス供給部70aへ供給する場合には、これらの容器Va,Vb内の夫々の液面レベルHa,Hbに関係なく、当該夫々の液面レベルHa,Hbの変化量は一定のものとなり、それら液面レベルHa,Hbの高低差Δhの変化量も一定となる。従って、その高低差Δhに略比例してガス貯留容器Va内の液面レベルHaの上昇力として作用する液圧は、常に同じ状態で変化することになり、結果、ガス検知器S側の検査用ガス供給部70aに対して一層安定した検査用ガスGの供給が実現される。
【0053】
以上のような検査処理を複数回連続して実行する場合には、1回の検査処理毎に液体貯留容器Vb内の液面レベルHbが降下すると共にガス貯留容器Vaの液面レベルHaが上昇するので、液体貯留容器Vb内の液面レベルHbに対するガス貯留容器Va内の液面レベルHaの高低差Δhが段階的に小さくなる。すると、ガス貯留容器Va内の液面レベルHaに作用する上昇力も段階的に小さくなり、一定時間経過するまでの間に流量制御弁41を開弁させた際の検査用ガス供給部70aへの検査用ガスGの供給量についても段階的に低下する。そして、この低下幅が大きい場合には、安定した検査が行えなくなるという問題が懸念される。
【0054】
そこで、本システム50では、このようなガス貯留容器Va内の液面レベルHaに作用する上昇力の低下を抑制するために、ガス貯留容器Va及び液体貯留容器Vbの内部の液体貯留空間の水平断面積をできるだけ大きいものとし、1回の検査処理における液面レベルHa,Hbの変化幅を数mm〜数cm程度と小さく抑えるように構成されている。すると、液体貯留容器Vb内の液面レベルHbに対するガス貯留容器Va内の液面レベルHaの高低差Δhの変化が少なくなり、複数回の検査処理を連続して実行する場合において、ガス貯留容器Va内の液面レベルHaに作用する上昇力の低下幅を小さくして、結果、当該上昇力の低下に伴う検査用ガス供給部70aへの検査用ガスGの供給量の低下を抑制することができる。
【0055】
本システム50を用いたガス検知器検査方法では、上述した検査処理の実行に先立って、ガス貯留容器Vaに検査用ガスGを補給する補給処理が実行される。
以下、この補給処理の詳細構成について、図2を参照して説明する。
上記補給処理では、流量制御弁41を閉弁し、流量制御弁31、開閉弁11及び21を開弁した状態で、シリンジやガスバッグなどで検査用ガスGを補給される検査用ガス補給部45から検査用ガス補給管10を通じてガス貯留容器Vaの液層部に補給する。すると、ガス貯留容器Va内の気層部における検査用ガスGの貯留量が増加し、それに伴って当該ガス貯留容器Va内の液面レベルHaが降下し、それに伴ってガス貯留容器Va内の液体Lが液層接続管30を通じて液体貯留容器Vb側に押し出され、それに伴って液体貯留容器Vb内の液面レベルHbが上昇する。更に、液体貯留容器Vb内では、液面レベルHbの上昇に伴って気層部のガスAが通気管20を通じて排気ダクト64に排出されることになる。尚、液層接続管30に設けられた流量制御弁31が、液体貯留容器Vbからガス貯留容器Vaへの液体Lの通流のみを許容し逆流を防止するものである場合には、この補給処理において、流量制御弁31をバイパスさせた状態でガス貯留容器Vaから液体貯留容器Vbへの液体Lの供給を行うためのバイパス管及びバイパス弁等を設けても構わない。
【0056】
このような補給処理を実行することで、補給用の検査用ガスGを高圧ボンベなどで常備する必要がなく、検査用ガス補給部45から検査用ガス補給管10を通じてガス貯留容器Vaに検査用ガスGを安全に補給することができる。また、ガス貯留容器Va内での検査用ガスGの貯留量が複数回の検査処理に対応する量に制限されているので、システム構成のコンパクト化が図られている。
【0057】
更に、この補給処理(図2参照)は、その実行頻度をできるだけ少なくするために、上述した検査処理(図1参照)を複数回実行する毎に実行される。
例えば、検査処理を燃焼炉60の操業開始直前のタイミングで1日に1回の頻度で実行する場合には、補給処理を数ヶ月又は1年に1回の頻度で実行することができる。即ち、補給処理では、次の補給処理までに実行される複数回の検査処理で必要な分の検査用ガスGがガス貯留容器Vaに補給されることになる。そして、補給処理を介さずに連続して実行される複数回の検査処理では、ガス貯留容器Vaから検査用ガス供給部70aへの検査用ガスGの供給毎にガス貯留容器Vaの液面レベルHaが所定幅間隔で段階的に上昇し、それに伴って液体貯留容器Vbの液面レベルHbは所定幅間隔で段階的に降下することになる。
【0058】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態では、圧力印加手段Xを、液体貯留容器Vbの液面レベルHbをガス貯留容器Vaの液面レベルHaよりも高位に位置させて、液体貯留容器Vbから液層接続管30を通じてガス貯留容器Vaへ液体Lを圧送するように構成したが、本発明はこの構成に限定されるものではなく、圧力印加手段Xは、ガス貯留容器Va内の液面レベルHaに上昇力を作用させて、当該ガス貯留容器Va内の気層部に供給圧を印加するものであれば良い。
例えば、上記実施形態と同様のガス貯留容器Va及び液体貯留容器Vbを夫々の液面レベルHa,Hbの高低差を設けることなく設置し、液体貯留容器Vbの気層部の圧力を圧縮空気の供給等により上昇させることで、液体貯留容器Vbから液層接続管30を通じてガス貯留容器Vaへ液体Lを圧送するように圧力印加手段Xを構成することができる。
また、ガス貯留容器Vaにおいて、底面部を上下摺動可能に構成して当該底面部を機械的に上昇させたり、ポンプ等により内部に液体Lを注入するなどの方法で、ガス貯留容器Va内の液面レベルHaに上昇力を作用させて、当該ガス貯留容器Va内の気層部に供給圧を印加するように圧力印加手段Xを構成することもできる。
【0059】
(2)上記実施形態では、検査用ガス補給部45とガス貯留容器Va内の液層部とを接続する検査用ガス補給管10を設け、ガス貯留容器Va内の液面レベルHaの降下を伴って、検査用ガス補給部45から検査用ガス補給管10を通じてガス貯留容器Vaに検査用ガスGを補給する補給処理を実行するように構成したが、本発明はこの構成に限定されるものではなく、例えば、検査用ガス補給管10を省略し、ガス貯留容器Vaを検査用ガスGが十分に補給された新規のものと置き換えるなどして、検査用ガスGの補給を行っても構わない。
【0060】
(3)上記実施形態では、ガス貯留容器Vaから検査用ガス供給部70aへ検査用ガスGを供給するにあたり、ガス貯留容器Va内の液面レベルHaの上昇に伴って液体貯留容器Vb内の液面レベルHbが降下し、これら液面レベルHa,Hbの高低差Δhが縮小するように構成したが、例えば、ガス貯留容器Va内の液面レベルHaの上昇に応じて、液体貯留容器Vb内に液体Lを補給して、液体貯留容器Vb内の液面レベルHbを上昇させて、液面レベルHa,Hbの高低差Δhを一定に維持するように構成しても構わない。
【0061】
(4)上記実施形態では、ガス貯留容器Va及び液体貯留容器Vbを、内部の液体貯留空間の水平断面積が鉛直方向において一定の容器で構成したが、本発明はこの構成に限定されるものではなく、これら容器Va、Vbの形状は適宜改変することができる。例えば、円筒状又は角筒状の容器を水平方向に筒軸心を沿わせた姿勢で利用しても構わない。また、ガス貯留容器Vaにおける液体貯留空間の水平断面積と、液体貯留容器Vbにおける液体貯留空間の水平断面積は、特に同じである必要はなく、適宜設定可能である。例えば、液体貯留容器Vbにおける液体貯留空間の水平断面積を、ガス貯留容器Vaよりも大きくして、検査用ガス供給部70aへの検査用ガスGの供給時において、液体貯留容器Vb内の液面レベルHbの降下幅が、ガス貯留容器Va内の液面レベルHaの上昇幅よりも小さくなるように構成しても構わない。
【0062】
(5)上記実施形態では、ガス貯留容器Vaや液体貯留容器Vbを、蓋部材Ca,Cbで開口部が密封される密封容器で構成したが、本発明はこの構成に限定されるものではなく、これら容器を、蓋部材を有さない箱状体等の密封容器で構成しても構わない。
また、ガス貯留容器を、蓋部材を有さない密封容器で構成する場合には、当該容器の底面に孔を穿設し、その孔に配管を挿通させる形態で、配管の挿通部を底面側に配置することができる。
【0063】
(6)上記実施形態では、ガス貯留容器Va内において開口端部10aを液体Lの液面よりも下方側に位置させた状態で検査用ガス補給管10を蓋部材Caに挿通したが、本発明はこの構成に限定されるものではなく、ガス貯留容器Va内において開口端部10aを液体Lの液面よりも上方側に位置させる状態で検査用ガス補給管10を蓋部材Caに挿通してもよい。
【符号の説明】
【0064】
10 検査用ガス補給管
30 液層接続管
40 ガス供給管
45 検査用ガス補給部
60 燃焼炉
61 排気路
70a 検査用ガス供給部
A ガス
Ca 蓋部材
Cb 蓋部材
G 検査用ガス
Ha,Hb 液面レベル
L 液体
S ガス検知器
Va ガス貯留容器
Vb 液体貯留容器
X 圧力印加手段
図1
図2