特許第6808567号(P6808567)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6808567
(24)【登録日】2020年12月11日
(45)【発行日】2021年1月6日
(54)【発明の名称】ハイブリッドシステム
(51)【国際特許分類】
   B60K 6/40 20071001AFI20201221BHJP
   B60K 6/485 20071001ALI20201221BHJP
   B60K 6/405 20071001ALI20201221BHJP
   B60K 6/26 20071001ALI20201221BHJP
   F16D 1/06 20060101ALI20201221BHJP
【FI】
   B60K6/40ZHV
   B60K6/485
   B60K6/405
   B60K6/26
   F16D1/06 200
【請求項の数】8
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2017-78298(P2017-78298)
(22)【出願日】2017年4月11日
(65)【公開番号】特開2018-176953(P2018-176953A)
(43)【公開日】2018年11月15日
【審査請求日】2019年6月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】100120341
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 幹雄
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 一人
(72)【発明者】
【氏名】柳生 壽美夫
【審査官】 佐々木 淳
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2006/121045(WO,A1)
【文献】 特開2001−233071(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/194419(WO,A1)
【文献】 特開2011−213230(JP,A)
【文献】 特開2008−290594(JP,A)
【文献】 特開2001−078373(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 6/20−6/547
B60W 10/00−20/50
B60L 1/00−58/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関と、
前記内燃機関のクランク軸に連結されていて前記内燃機関の動力が伝達されて回転軸心の回りに回転するフライホイールと、
前記回転軸心の回りに回転可能なモータロータと、前記モータロータを駆動するモータコイルとを有するモータと、
外周側に前記モータロータが一体回転可能に設けられるホロー型のロータボスであって、前記フライホイールと一体回転可能なロータボスと、
入力軸を有すると共に前記ロータボスの前記フライホイールとは反対側に配置された被動機と、
前記ロータボスの内周側に配置されていて前記入力軸に連結される出力軸と、
前記ロータボスに一体成形されたカップリングであって、前記出力軸が連結されて前記ロータボスの動力を前記出力軸に伝達するカップリングと、
を備え
前記ロータボスは、前記モータロータの内周側に同心状に配置された筒部と、前記筒部のフライホイール側に設けられていて前記フライホイールに固定されたフランジ部とを有して構成され、
前記内燃機関から前記フライホイールに伝達される動力は、前記フライホイールから前記ロータボスを介さずに前記出力軸に伝達されることはなく、前記フライホイールから前記ロータボスへ伝達されると共に前記ロータボスから前記カップリングを介して前記出力軸に伝達されるハイブリッドシステム。
【請求項2】
前記出力軸は、前記ロータボスの内周の前記回転軸心の方向の一端から他端の間に配置されている請求項1に記載のハイブリッドシステム。
【請求項3】
前記出力軸は、小径部であって該小径部の外周面と前記ロータボスの内周面との間に隙間が設けられて配置される小径部と、前記小径部よりも前記フライホイール側に位置し且つ当該出力軸の前記フライホイール側の端部側に設けられていて前記カップリングに連結される大径部とを有し、
前記カップリングは、前記ロータボスの内周の前記フライホイール側に形成されている請求項1または2に記載のハイブリッドシステム。
【請求項4】
前記出力軸は、小径部であって該小径部の外周面と前記ロータボスの内周面との間に隙間が設けられて配置される小径部と、前記小径部よりも前記フライホイール側に位置し且つ当該出力軸の前記フライホイール側の端部側に設けられていて前記カップリングに連結される大径部とを有し、
前記カップリングは、前記ロータボスの内周の前記被動機側に形成されている請求項1または2に記載のハイブリッドシステム。
【請求項5】
前記カップリングは、可撓性材によって形成されて、前記ロータボスの内周に一体成形されている請求項1〜4のいずれか1項に記載のハイブリッドシステム。
【請求項6】
前記ロータボスは、前記フライホイールに一体成形されている請求項1〜5のいずれか1項に記載のハイブリッドシステム。
【請求項7】
前記内燃機関に固定されるケーシングであって、前記モータの外周を覆うモータケースと、前記フライホイールの外周を覆うと共に前記モータケースに一体成形されたフライホイールハウジングとを有するケーシングと、
前記モータロータの回転角度を検出する角度センサであって、前記モータケース側に固定されたセンサステータと、前記ロータボスに一体回転自在に設けられたセンサロータとを有する角度センサと、
を備えている請求項1〜6のいずれか1項に記載のハイブリッドシステム。
【請求項8】
前記内燃機関に固定されるケーシングであって、前記モータの外周を覆うモータケースと、前記フライホイールの外周を覆うと共に前記モータケースに一体成形されたフライホイールハウジングとを有するケーシングを備え、
前記モータは、前記モータコイルが設けられたモータステータを有し、
前記モータステータは、前記モータケース側に回り止め固定されている請求項1〜のいずれか1項に記載のハイブリッドシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関及び/又はモータの動力を被動機に伝達するハイブリッドシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に開示されたハイブリッドシステムが知られている。
特許文献1に開示されたハイブリッドシステムは、内燃機関と、フライホイールと、モータと、ロータボスと、被動機と、出力軸とを備えている。内燃機関の動力はフライホイールに伝達され、該フライホイールが回転軸心の回りに回転する。モータは、回転軸心の回りに回転可能なモータロータと、モータロータを駆動するモータコイルとを有する。ロータボスは、ホロー型であり、外周側に、モータロータが一体回転可能に設けられている。また、ロータボスは、フライホイールと一体回転可能である。被動機は、ロータボスのフライホイールとは反対側に配置されている。また、被動機は入力軸を有し、該入力軸は出力軸に連結されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−290594号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
出力軸をロータボスの内周側に配置したハイブリッドシステムがある。このハイブリッドシステムでは、出力軸の軸心方向一方に被動機の入力軸を連結し且つ出力軸の軸心方向他方にカップリングを連結し、該カップリングをフライホイールに取り付けている。カップリングをフライホイールに取り付けると、出力軸を長くする必要がある。出力軸が長いと、出力軸とカップリングとの芯ずれによるカップリングの摩耗が増大し、カップリングの短寿命化に繋がる。また、出力軸とカップリングとの芯ずれによって、被動機の入力軸に対して、回転方向以外の負荷が増大し、被動機の短寿命化に繋がる。
【0005】
そこで、本発明は、前記問題点に鑑み、出力軸とカップリングとの芯ずれを小さくすることができるハイブリッドシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係るハイブリッドシステムは、内燃機関と、前記内燃機関のクランク軸に連結されていて前記内燃機関の動力が伝達されて回転軸心の回りに回転するフライホイールと、前記回転軸心の回りに回転可能なモータロータと、前記モータロータを駆動するモータコイルとを有するモータと、外周側に前記モータロータが一体回転可能に設けられるホロー型のロータボスであって、前記フライホイールと一体回転可能なロータボスと、入力軸を有すると共に前記ロータボスの前記フライホイールとは反対側に配置された被動機と、前記ロータボスの内周側に配置されていて前記入力軸に連結される出力軸と、前記ロータボスに一体成形されたカップリングであって、前記出力軸が連結されて前記ロータボスの動力を前記出力軸に伝達するカップリングと、を備え、前記ロータボスは、前記モータロータの内周側に同心状に配置された筒部と、前記筒部のフライホイール側に設けられていて前記フライホイールに固定されたフランジ部とを有して構成され、前記内燃機関から前記フライホイールに伝達される動力は、前記フライホイールから前記ロータボスを介さずに前記出力軸に伝達されることはなく、前記フライホイールから前記ロータボスへ伝達されると共に前記ロータボスから前記カップリングを介して前記出力軸に伝達される
また、前記出力軸は、前記ロータボスの内周の前記回転軸心の方向の一端から他端の間に配置されている。
また、前記出力軸は、小径部であって該小径部の外周面と前記ロータボスの内周面との間に隙間が設けられて配置される小径部と、前記小径部よりも前記フライホイール側に位置し且つ当該出力軸の前記フライホイール側の端部側に設けられていて前記カップリングに連結される大径部とを有し、前記カップリングは、前記ロータボスの内周の前記フライホイール側に形成されている。
また、前記出力軸は、小径部であって該小径部の外周面と前記ロータボスの内周面との間に隙間が設けられて配置される小径部と、前記小径部よりも前記フライホイール側に位置し且つ当該出力軸の前記フライホイール側の端部側に設けられていて前記カップリングに連結される大径部とを有し、前記カップリングは、前記ロータボスの内周の前記被動機側に形成されている。
また、前記カップリングは、可撓性材によって形成されて、前記ロータボスの内周に一体成形されている。
【0007】
また、前記ロータボスは、前記フライホイールに一体成形されていてもよい。
また、ハイブリッドシステムは、前記内燃機関に固定されるケーシングであって、前記モータの外周を覆うモータケースと、前記フライホイールの外周を覆うと共に前記モータケースに一体成形されたフライホイールハウジングとを有するケーシングと、前記モータロータの回転角度を検出する角度センサであって、前記モータケース側に固定されたセンサステータと、前記ロータボスに一体回転自在に設けられたセンサロータとを有する角度センサと、を備えている。
【0008】
また、ハイブリッドシステムは、前記内燃機関に固定されるケーシングであって、前記モータの外周を覆うモータケースと、前記フライホイールの外周を覆うと共に前記モータケースに一体成形されたフライホイールハウジングとを有するケーシングを備え、前記モータは、前記モータコイルが設けられたモータステータを有し、前記モータステータは、前記モータケース側に回り止め固定されている。
【発明の効果】
【0009】
上記の構成によれば、フライホイールと一体回転するロータボスにカップリングを一体成形して、フライホイールの動力をロータボスからカップリングを介して出力軸に伝達している。これにより、カップリングをフライホイールに連結する場合に比べて、出力軸を短くすることができる。出力軸を短くすることにより、出力軸とカップリングとの芯ずれを小さくすることができ、カップリングの摩耗を減少させることができる。延いては、カップリングの寿命を長くすることができる。また、被動機の入力軸に対して、回転方向以外の負荷を減少させることができ、被動機の寿命を長くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】ハイブリッドシステム(駆動装置)の実施形態の一例を示す断面図である。
図2】ハイブリッドシステム(駆動装置)の一部を示す拡大断面図である。
図3】ハイブリッドシステム(駆動装置)の他の一部を示す拡大断面図である。
図4】角度センサ及び仕切部材を一方側からみた図である。
図5】角度センサ、仕切部材及びモータの分解斜視図である。
図6】ハイブリッドシステム(駆動装置)の第1変形例を示す断面図である。
図7】ハイブリッドシステム(駆動装置)の第2変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態について、図面を適宜参照しつつ説明する。
図1は、本実施形態に係るハイブリッドシステム1の一例を示す断面図である。本実施形態のハイブリッドシステム1は、パラレル式のハイブリッドシステムである。ハイブリッドシステム1は、自動車や、農業機械、建設機械、UV(ユーティリティビークル)、ポンプ等の産業機械に適用される。
【0012】
図1に示すように、ハイブリッドシステム1は、駆動装置21と、該駆動装置21によって駆動される被動機5とを有する。駆動装置21は、内燃機関2とモータ4とを有し、内燃機関2の動力とモータ4の動力とを択一的に又は組み合わせて被動機5に伝達する。
また、駆動装置21は、内燃機関2及び/又はモータ4からの動力を被動機5に伝達する伝動機構22と、モータ4の回転角度を検出する角度センサ14と、モータ4を冷却する冷却ジャケット(冷却機構)11と、モータ4、伝動機構22及び冷却ジャケット11を収容するケーシング23とを有する。
【0013】
以下の説明において、内燃機関2から被動機5に向かう方向(図1の矢印A1方向)を一方と称し、被動機5から内燃機関2に向かう方向(図1の矢印A2方向)を他方と称する。
内燃機関2は、例えば、ディーゼルエンジンである。なお、内燃機関2は、ガソリンエンジン、LPGエンジン等であってもよい。被動機5は、例えば、油圧ポンプであり、具体的には静油圧式トランスミッションの油圧ポンプを例示することができる。また、内燃機関2は、ケーシング23の他方側(図1の右側)に配置され、被動機5は、ケーシング23の一方側(図1の左側)に配置されている。
【0014】
図1に示すように、内燃機関2は、クランク軸2aを有し、該クランク軸2aは、被動機5側(一方側)に向けて延びている。クランク軸2aは、一方及び他方に沿う方向に延伸する回転軸心X1の回り(以下単に、回転軸心回りという)に回転する。クランク軸2aの先端側(一方端側)は、ケーシング23の内部に挿入されている。ケーシング23の内部の他方側には、フライホイール3が設けられている。
【0015】
フライホイール3は、略円板状であって、質量が大きい材料(例えば鋳鉄等の金属)から形成されている。フライホイール3の中心部には、クランク軸2aの先端側が連結されている。したがって、フライホイール3は、内燃機関2の動力が伝達されて回転軸心回りに回転する。フライホイール3の一方側にモータ4が配置され、モータ4の一方側に角度センサ14が配置されている。
【0016】
被動機5は、入力軸5aを有する。該入力軸5aは、内燃機関2側(他方側)に向けて延びている。入力軸5aは、クランク軸2aと同心状とされている。また、入力軸5aは、回転軸心回りに回転可能である。
ケーシング23は、ケーシング本体25と、ケースカバー26とを有する。ケーシング本体25は、モータ4及び角度センサ14の外周を覆うモータケース27と、フライホイール3の外周及び他方側を覆うと共にモータケース27に一体成形されたフライホイールハウジング9とを有する。
【0017】
一体成形とは、二次接着や機械的接合を用いないで、部材の接合と同時に製品を一体で成形することである。ケーシング本体25は、例えば、切削加工(削り出し)によって一体成形される。また、ケーシング本体25(ケースカバー26、フライホイールハウジング9)は、鋳造や、樹脂の一体成型(成形型によってケーシング本体25を一体成形する方法)によって一体成形されていてもよい。
【0018】
モータケース27は、一方及び他方が開口状の筒状に形成されている。モータケース27の一方の開口部は、ケースカバー26によって塞がれている。ケースカバー26は、モータ4及び角度センサ14の回転軸心X1の方向(以下単に、回転軸心方向という)の一方を覆っている。ケースカバー26は、複数のボルトによってモータケース27に着脱自在に固定されている。モータケース27の他方の開口部は、フライホイールハウジング9の内部に連通している。モータケース27とケースカバー26とで、モータ4及び角度センサ14を収容するモータハウジング10が構成されている。
【0019】
なお、図1に仮想線で示すように、モータケース27にマウント機構(防振機構)28を設け、モータケース27をマウント機構28によって支持することで防振するようにしてもよい。
ケースカバー26には、被動機5(油圧ポンプのハウジング)がボルト等によって着脱自在に固定されている。被動機5の入力軸5aは、モータハウジング10(ケーシング23)内に挿入されている。
【0020】
フライホイールハウジング9は、筒状の外周部9aと、外周部9aの他方端から中心側に向けて延びる側壁9bとを有している。外周部9aは、フライホイール3の径外側に設けられている。側壁9bは、外周部9aのエンジン2側の端部に設けられている。フライホイール3は、外周部9aと側壁9bとにより囲まれた内部空間に配置されている。また、側壁9bは、内燃機関2に固定されている。即ち、ケーシング23は、内燃機関2に固定されている。フライホイール3は、モータケース27の一方の開口部からフライホイールハウジング9内に挿入されて、クランク軸2aに組み付けられる。
【0021】
モータ4は、被動機5を駆動する電動機として機能、又は内燃機関2の動力によって発電する発電機(ジェネレータ)として機能するモータ・ジェネレータである。モータ4は、永久磁石埋込式の三相交流同期モータ4が好適に使用されるが、他の種類の同期モータであってもよい。また、モータ4は、交流モータでも直流モータでもよい。
モータ4は、回転軸心回りに回転可能なモータロータ7(回転子)と、モータロータ7を回転させるための力を発生させるモータステータ8(固定子)とを有している。
【0022】
モータロータ7は、回転軸心X1を軸心とする筒状に形成されている。モータロータ7は、例えば、薄いけい素鋼板を複数枚積層して形成された円筒状のロータ鉄心の外周に永久磁石を埋設して構成される。
モータステータ8は、回転軸心X1を軸心とする筒状に形成され、モータロータ7の外周側に配置されている。このモータステータ8は、モータケース27側に回り止め固定されている。また、モータステータ8には、モータロータ7を駆動するモータコイル29が設けられている。具体的には、モータステータ8は、例えば、薄い電極鋼板を複数枚積層して形成された筒状のステータ鉄心30と、このステータ鉄心30のティースに巻線を所定の巻数で直接巻き付けて集中巻にしたモータコイル29とを有する。モータコイル29に通電することにより、モータロータ7を回転させるための力が発生する。即ち、モータコイル29は、モータロータ7を駆動する。
【0023】
モータロータ7は、ロータボス24に設けられている。ロータボス24は、全体として回転軸心X1を軸心とするホロー型(筒型)である。このロータボス24は、フライホイール3の一方側に配置されている。ロータボス24のフライホイール3とは反対側に被動機5が配置されている。ロータボス24は、ロータボス24のフライホイール3側(他方側)に設けられたフランジ部31と、フランジ部31の径内側から被動機5側(一方側)に突出する筒部32とを有している。
【0024】
フランジ部31は、筒部32より径外方向に延びていて、径外部分は、フライホイール3に溶接又はボルト等によって固定されている。したがって、ロータボス24は、フライホイール3と一体回転可能である。
筒部32は、回転軸心X1を軸心とする筒状であり、モータロータ7の内周側に同心状に配置されている。
【0025】
図2図3に示すように、筒部32は、モータロータ7を挿通する第1筒部32aと、第1筒部32aから一方側に突出する第2筒部32bと、第2筒部32bから一方側に突出する第3筒部32cとを有する。第2筒部32bは、第1筒部32aより径小に形成され、第3筒部32cは、第2筒部32bより径小に形成されている。
図2に示すように、第1筒部32aの外周面には、回転軸心X1に平行な方向に延伸する係合溝33(第1係合溝という)が設けられている。第1係合溝33は、第1筒部32aの一方側の端部から他方側に向けて形成されている。第3筒部32cの外周面には、回転軸心X1に平行な方向に延伸する係合溝34(第2係合溝という)が設けられている。第2係合溝34は、第3筒部32cの一方側の端部から他方側に向けて形成されている。
【0026】
図2図3に示すように、第1筒部32aの他方端には、フランジ部31の一方側の端部で形成された段部35(第1段部という)が設けられている。第3筒部32cの他方端には、第2筒部32bの一方側の端部で形成された段部36(第2段部という)が設けられている。第2筒部32bの他方端には、第1筒部32aの一方側の端部で形成された段部37(第3段部という)が設けられている。
【0027】
モータロータ7は、第1筒部32a(筒部32)の外周に一方側から嵌められている。モータロータ7の他方への位置決めは、第1段部35によって行われる。モータロータ7の一方への抜止めは、当接部材76等を介してケースカバー26によって行われる。
図2に示すように、モータロータ7の内周面には、第1係合溝33に嵌る係合突部38(第1係合突部という)が設けられている。第1係合突部38が第1係合溝33に嵌ることによって、モータロータ7がロータボス24に対して回転軸心回りに回り止めされる。即ち、ロータボス24(筒部32)の外周側にモータロータ7が回転軸心回りに一体回転可能に設けられている。
【0028】
モータ4が発電機として機能する場合、モータロータ7は、ロータボス24を介してフライホイール3の回転動力を受ける。一方、モータ4が電動機として機能する場合、モータロータ7は、ロータボス24に回転動力を与える。即ち、モータロータ7は、ロータボス24と回転動力を授受する。
図1に示すように、ロータボス24の内周側には、出力軸12が配置されている。出力軸12は、回転軸心X1を軸心とする円柱状に形成されている。したがって、出力軸12は、ロータボス24と同心状である。また、出力軸12に、入力軸5aが連結されている。詳しくは、出力軸12の一方端側に、入力軸5aの他方端側が、スプライン結合、キー結合等によって回転軸心回りに一体回転可能に連結されている。出力軸12は、金属等の剛性材から形成されている。
【0029】
図2図3に示すように、出力軸12は、小径部12aと大径部12bとを有する。小径部12aの外周面とロータボス24の内周面との間には、隙間が設けられている。大径部12bの外周面には、回転軸心方向に平行な方向に延伸する歯(外歯という)が周方向にわたって形成されている。
ロータボス24の内周側には、ロータボス24に一体成形されたカップリング6が設けられている。カップリング6の内周面には、回転軸心方向平行な方向に延伸する歯(内歯という)が周方向にわたって形成されている。この内歯は、出力軸12の外歯と噛み合わされる。これにより、カップリング6が、出力軸12に連結(スプライン結合)される。言い換えると、ロータボス24がカップリング6を介して出力軸12に連結される。したがって、カップリング6は、ロータボス24の動力を出力軸12に伝達する。なお、出力軸12は、ロータボス24に対して回転軸心方向の位置決めがされる。
【0030】
フライホイール3、ロータボス24及び出力軸12によって伝動機構22が構成されている。
カップリング6は、例えば、切削加工(削り出し)によってロータボス24に一体成形される。また、ロータボス24とカップリング6とを鋳造や樹脂の一体成型によって成型することにより、カップリング6がロータボス24に一体成形されていてもよい。また、カップリング6は、ゴムによって形成されて加硫接着によってロータボス24に一体成形されてもよい(図2図3に仮想線で示す部位を参照)。また、金属製のロータボス24に樹脂製のカップリング6を溶融固着(成形型内で一体成形)することにより、ロータボス24にカップリング6を一体成形してもよい。また、カップリング6は、本実施形態のようなギヤカップリング6でもよいし、ゴムカップリング6であってもよい。
【0031】
カップリング6は、樹脂やゴム等の可撓性材から形成されるのがよい。樹脂としては、プラスチック(合成樹脂)が好適であり、特にカーボンファイバー強化ポリアミド等の繊維強化プラスチックが好適に使用される。また、ナイロン、ポリエステル、ポリウレタン等を使用することもできる。樹脂等の可撓性材から形成されカップリング6は潤滑作用を発揮する。そのため、カップリング6とモータロータ7との当接部分の摩耗を抑制できると共に、当接部分に潤滑油の供給を必要としないため、メンテナンスの手間を省くことができる。また、カップリング6は、可撓性材から形成されることで、出力軸12からフライホイール3側へ伝播されるトルク変動に起因する衝撃やねじり振動等を緩衝もしくは吸収することができる。
【0032】
また、図例では、カップリング6は、ロータボス24の他方端側に設けられているが、カップリング6を設ける位置は限定されない。即ち、カップリング6は、ロータボス24の回転軸心方向の中途部に設けられていてもよいし、ロータボス24の一方端側に設けられていてもよい。出力軸12の大径部12bは、カップリング6を設ける位置に対応する位置に設けられる。
【0033】
図1に示すように、モータケース27とモータ4(モータステータ8)の間には、筒状の冷却ジャケット11が設けられている。冷却ジャケット11は、回転軸心X1を軸心とする円筒状のジャケット本体39と、ジャケット本体39の一方側の端部にボルト等によって固定されたリング状の第1蓋40と、ジャケット本体39の他方の端部にボルト等によって固定されたリング状の第2蓋41とを有する。
【0034】
ジャケット本体39は、モータステータ8の外周側で且つモータケース27の内周側に設けられている。ジャケット本体39は、モータケース27側に回り止め固定(位置決め)されている。図2に示すように、モータケース27の内周面には、回転軸心X1に平行な方向に延伸するキー溝42が形成されている。ジャケット本体39の外周側には、キー溝42に嵌るキー43が設けられている。これによって、ジャケット本体39が、モータケース27に対して回転軸心回りの回り止めがされている。また、冷却ジャケット11は、モータケース27の一方側の開口部からモータケース27内に挿入される。冷却ジャケット11の他方への位置決めは、モータケース27の内周面の他方側に設けられた当接部44によって行われる。冷却ジャケット11の一方への抜止めは、ケースカバー26によって行われる。
【0035】
モータステータ8は、ジャケット本体39の内周側に一方側から挿入される。図2図3に示すように、モータステータ8の他方側への位置決めは、ジャケット本体39の内周面の他方側に形成された環状突部45によって行われる。モータステータ8の一方側への抜止めはケースカバー26によって行われる。
図3に示すように、ジャケット本体39には、径方向に貫通するピン46が設けられている。このピン46は、モータステータ8(固定子)の外周面に形成された溝部47に係合されている。ピン46が溝部47に係合することによって、モータステータ8がジャケット本体39に対して回り止めされている。以上のように、本実施形態では、冷却ジャケット11を介して、モータステータ8がモータケース27側に回り止め固定される。
【0036】
ジャケット本体39には、冷媒(例えば、水)を流通させる流通路が複数形成されている。流通路は、ジャケット本体39の軸方向一端から他端にわたって貫通状に形成されている。この流通路は、周方向に間隔をおいて且つ周方向にわたって設けられている。第1蓋40及び第2蓋41には、隣接する流通路を接続して一つの冷媒通路を形成する接続路が形成されている。
【0037】
図4に示すように、第1蓋40の一方側には、冷媒通路の一端に連通する第1端部管48と、冷媒通路の他端に連通する第2端部管49とが設けられている。図1に示すように、ケースカバー26には、第1端部管48に連通する第1外部管50と、第2端部管49に連通する第2外部管51とが設けられている。第1外部管50又は第2外部管51の一方から冷媒が供給される。供給された冷媒は、冷媒通路を流通して、第1外部管50又は第2外部管51の他方から排出される。
【0038】
図3に示すように、冷却ジャケット11の内周側で且つ一方側(ジャケット本体39の内周面の一方側及び第1蓋40の内周面)には、回転軸心X1に平行な方向に延伸する係合溝52(第3係合溝という)が設けられている。
図1に示すように、角度センサ14は、モータ4の一方側(ケースカバー26側)に設けられている。言い換えると、角度センサ14は、ケースカバー26と、モータロータ7との間に配置されている。即ち、モータ4と角度センサ14とは、回転軸心方向に位置ずれして設けられている。また、角度センサ14は、モータステータ8(モータコイル29)の内周面より内周側に位置している。
【0039】
角度センサ14は、モータロータ7の回転角度を検出する(モータロータ7の回転位相を検出する)回転検出器である。言い換えると、角度センサ14は、モータロータ7とモータステータ8との相対的な位置関係を検出する。角度センサ14としては、レゾルバやエンコーダ等が使用される。産業機械(農業機械、建設機械等)用のハイブリッドシステム1においては、耐環境性に優れており且つ角度検出精度が良好なレゾルバが好適に使用される。本実施形態では、角度センサ14は、レゾルバである。
【0040】
図2図3に示すように、角度センサ14は、モータロータ7と回転軸心回りに一体回転するセンサロータ53と、センサロータ53の回転角度に応じて検出信号を発生するセンサステータ54とを有する。
センサロータ53は、磁性体によって回転軸心X1を軸心とする筒状に形成されている。センサロータ53は、第3筒部32c(ロータボス24)の外周に一方側から嵌められている。センサロータ53は、第2段部36によって他方への位置決めがされている。センサロータ53には、径内側に突出する係合突部55(第2係合突部という)が設けられている。この第2係合突部55は、第3筒部32cに形成された第2係合溝34に嵌っている(図4参照)。第2係合突部55が第2係合溝34に嵌ることによりロータボス24に対してセンサロータ53が回転軸心回りに回り止めされる。即ち、センサロータ53は、ロータボス24(筒部32)の外周側に回転軸心回りに一体回転可能に設けられている。
【0041】
図4図5に示すように、センサステータ54は、環状に形成されていてセンサロータ53の外周側に同心状に設けられている。即ち、センサステータ54は、回転軸心X1を軸心とする環状である。また、センサステータ54は、モータケース27側に回り止め固定されている。センサステータ54は、リング状の取付部56と、筒状のコア部57とを有する。
【0042】
図2図3に示すように、取付部56は、コア部57の外周側に設けられている。また、取付部56は、コア部57の回転軸心方向の中途部から径外側に突出している。図4図5に示すように、この取付部56には、複数の取付穴58a〜58fが周方向に間隔をあけて形成されている。取付穴58a〜58fは、回転軸心X1を中心とする円弧状の長穴である。
【0043】
図2図3に示すように、コア部57は、取付部56よりも回転軸心方向に長い筒状であり、取付部56から回転軸心方向の両側に突出している。コア部57には、励磁コイル57aと検出コイル57bとが設けられている。励磁コイル57aは、励磁信号により磁束を発生する。検出コイル57bは、センサロータ53の回転角度に応じて検出信号を発生する。なお、励磁コイル57aは、センサロータ53側に設けられていてもよい。センサステータ54は、少なくとも検出コイル57bを有する。
【0044】
励磁コイル57aに高周波信号を付与すると、センサロータ53の回転位置によって検出コイル57bに流れる信号(検出信号)の位相が変化する。この検出信号と基準信号とを比較することにより、センサロータ53(モータロータ7)の回転角度を検出することができる。
図4図5に示すように、取付部56には、端子接続部59が設けられている。端子接続部59には、複数のリード線を束ねて構成されたハーネス60(センサハーネスという)の一端側が接続されている。複数のリード線は、励磁コイル57aに高周波信号を伝達するリード線や、検出コイル57bからの検出信号を伝達するリード線等である。センサハーネス60の他端側には、コネクタ61が接続されている。
【0045】
図1に示すように、駆動装置21は、モータハウジング10内に設けられていて、モータコイル29と角度センサ14とを仕切る仕切部材62を有する。仕切部材62は、モータコイル29から発生するノイズをシールド可能な材料によって形成されている。仕切部材62は、例えば、金属製の板材によって形成されている。また、仕切部材62は、アルミニウムやステンレス鋼などの非磁性金属によって形成するのがよい。
【0046】
仕切部材62は、回転軸心方向におけるモータ4と角度センサ14との間に位置していて、角度センサ14に対してモータコイル29からのノイズの伝播を低減する(遮る)。仕切部材62によって、モータコイル29からのノイズが角度センサ14(センサステータ54)とセンサハーネス60に影響する度合いを低減することができる。延いては、モータ4の制御の安定性を向上させることができる。
【0047】
本実施形態では、仕切部材62は、モータコイル29と角度センサ14とを仕切る部材であると共に、角度センサ14(センサステータ54)を取り付けるセンサ取付部材でもある。
図4図5に示すように、仕切部材62は、回転軸心X1を中心とする円板状を呈している。仕切部材62の外径は、ジャケット本体39の内径と略同じ径に形成されている。仕切部材62は、冷却ジャケット11の内周側で且つ一方側に配置されている。図5に示すように、仕切部材62の中心側には、開穴部63が設けられている。開穴部63は、回転軸心X1を中心とする円弧状の縁部によって形成されている。図2図3に示すように、この開穴部63は、センサロータ53より径大に形成され、且つセンサステータ54の内周と略同径に形成されている。開穴部63には、ロータボス24の第3筒部32c及び第2筒部32bが挿通されている。開穴部63の内側にセンサロータ53が位置している。
【0048】
仕切部材62は、第3段部37によって回転軸心方向の他方側への位置決めがされる。仕切部材62の一方側への抜止めは、ケースカバー26によって行われる。仕切部材62の外周面には、第3係合溝52に嵌る係合突部64(第3係合突部という)が設けられている(図3図4参照)。第3係合突部64が第3係合溝52に嵌ることにより、冷却ジャケット11に対して仕切部材62が回転軸心回りに回り止めされる。冷却ジャケット11は、モータケース27に対して回り止めされているので、仕切部材62は、冷却ジャケット11を介してモータケース27に対して回転軸心回りに回り止めされている。即ち、仕切部材62は、モータケース27側に回り止め固定されている。
【0049】
仕切部材62は、モータケース27に直接的に回転軸心回りに回り止め(固定)されていてもよい。また、仕切部材62のモータケース27に対する回転軸心回りの位置決め固定は、インロー結合やキー結合によって行ってもよい。
図2図3及び図5に示すように、仕切部材62は、センサステータ54が固定されるセンサ固定部65と、コア部57(検出コイル57b及び励磁コイル57a)のモータ4側を覆う第1覆い部66と、モータコイル29の角度センサ14側を覆う第2覆い部67と、切欠き68とを有する。
【0050】
切欠き68は、仕切部材62の径方向にわたって該仕切部材62を切り欠いて形成されている。詳しくは、切欠き68は、開穴部63の縁部から仕切部材67の外周端にわたって形成されている。センサ固定部65、第1覆い部66及び第2覆い部67は、回転軸心X1を中心とする円弧状とされている。センサ固定部65は、仕切部材62の径方向の中途部に設けられている。第1覆い部66は、センサ固定部65の径内側に設けられている。第2覆い部67は、センサ固定部65の径外側に設けられている。
【0051】
図3に示すように、センサ固定部65の一方側に取付部56が配置されている。該センサ固定部65の一方側が取付部56(センサステータ54)が取り付けられる取付け面65aとされている。センサ固定部65(取付け面65a)は、取付部56を挿入すべく一方側から他方側に向けて凹設されている。図5に示すように、センサ固定部65(取付け面65a)には、回転軸心X1を中心とする円周上に複数のネジ穴77a〜77eが形成されている。ネジ穴77a〜77eは、センサ固定部65に貫通状又は有底状に形成された円柱状の内周面に雌ネジを切ることで形成されている。
【0052】
図3に示すように、取付部56は、取付け面65aに重ね合わされている。また、取付穴58a〜58eは、ネジ穴77a〜77eに対応する位置に位置合わせされている。取付穴58a〜58eに、取付ボルトを一方側から挿通すると共に該取付ボルトをネジ穴77a〜77eにねじ込むことにより、取付部56(センサステータ54)がセンサ固定部65(仕切部材62)に取り付けられる。取付部56がセンサ固定部65に取り付けられた状態で、取付部56は、センサ固定部65の一方側の凹部65b内に没入状とされる。また、取付部56がセンサ固定部65に取り付けられた状態で、端子接続部59は、切欠き68から仕切部材62の周方向に位置ずれしている。
【0053】
センサ固定部65にネジ穴77a〜77eを設けることにより、ナットが不要になり、部品点数の削減ができる。また、取付穴58a〜58eが長穴であるので、モータステータ8及びセンサロータ53に対して、センサステータ54の回転軸心回りの位置を機械的に調整可能である。これによって、センサステータ54の位置を均一にすることができる。
【0054】
なお、仕切部材62に対してセンサステータ54を回り止め固定するのに、仕切部材62又はセンサステータ54の一方に切欠き68等によって形成される係合部を設け、仕切部材62又はセンサステータ54の他方に係合部に係合する突起を設けるようにしてもよい。
図3に示すように、第1覆い部66は、コア部57を挿入すべくセンサ固定部65(取付け面65a)よりもさらに他方側に向けて凹設されている。センサ固定部65にセンサステータ54を取り付けた状態で、コア部57のモータ4側(他方側)が第1覆い部66の一方側の凹部66a内に没入する。第1覆い部66は、コア部57(励磁コイル57a及び検出コイル57b)の他方側に回転軸心方向において対向する。即ち、第1覆い部66は、コア部57(励磁コイル57a及び検出コイル57b)のモータ4側を覆っている。
【0055】
取付部56がセンサ固定部65の一方側の凹部65b内に挿入(没入)され且つコア部57のモータ4側が第1覆い部66の一方側の凹部66a内に挿入(没入)されることで、仕切部材62とセンサステータ54とは、回転軸心方向(仕切部材62の厚さ方向)でオーバーラップしている。また、センサロータ53が開穴部63の内周側に位置していることにより、仕切部材62とセンサロータ53とは、回転軸心方向(仕切部材62の厚さ方向)でオーバーラップしている。以上のようにして、仕切部材62は、角度センサ14と回転軸心方向でオーバーラップしている。
【0056】
図3に示すように、第2覆い部67は、モータコイル29の角度センサ14側(一方側)に回転軸心方向において対向する。即ち、第2覆い部67は、モータコイル29の角度センサ14側を覆っている。また、第2覆い部67は、モータコイル29とセンサハーネス60の間に位置している。即ち、仕切部材62は、センサハーネス60とモータコイル29との間に設けられている。
【0057】
なお、仕切部材62の他方側の面(センサ固定部65、第1覆い部66及び第2覆い部67の他方側の面)は面一状とされている。したがって、第1覆い部66は、センサ固定部65よりも板厚が薄く、第2覆い部67はセンサ固定部65よりも板厚が厚い。
図5に示すように、切欠き68は、第1縁部68aと、第2縁部68bとで形成されている。第1縁部68aは、開穴部63を構成する縁部から仕切部材62の外周端にわたって仕切部材62の径方向に形成されている。第2縁部68bは、開穴部63を構成する縁部から仕切部材62の外周端にわたって仕切部材62の径方向に形成された縁部であって、第1縁部68aに対して仕切部材62の周方向に離間して形成されている。
【0058】
切欠き68は、モータステータ8側に設けられたハーネス69(モータハーネスという)を角度センサ14側に引き出すための切欠き68である(図4参照)。モータハーネス69は、例えば、モータコイル29の温度を検出する温度センサの検出信号を伝達する通信線である。図1に示すように、モータハーネス69は、切欠き68を介して角度センサ14側に引き出されて、センサハーネス60が接続されたコネクタ61に接続されている。センサハーネス60、モータハーネス及びコネクタ61は、ケースカバー26に設けられた端子カバー部70の内部に収容されている。
【0059】
端子カバー部70内には、モータステータ8側に設けられた第1端子71a〜71cが切欠き68を通して突出している。端子カバー部70には、第2端子72a〜72cが設けられている。第1端子71a〜71cは、端子カバー部70内において、第2端子72a〜72cに接続されている。第1端子71a〜71c及び第2端子72a〜72cは、インバータからモータステータ8に三相交流電力を供給するための端子である。第1端子71a〜71c及び第2端子72a〜72cは、それぞれ3個ずつ設けられている。
【0060】
端子カバー部70には、第1端子71a〜71cと第2端子72a〜72cとの接続や、コネクタ61の取り付けや、メンテナンス等を行うための開口部73が形成されている。開口部73は、カバー蓋74で開閉可能に塞がれている。
ハイブリッドシステム1は、コントローラ15を備えている。コントローラ15は、モータ4をベクトル制御するインバータを備えている。コントローラ15には、コネクタ61(角度センサ14及び温度センサ)、第2端子72a〜72c(モータ4)、内燃機関2及び被動機5等が接続されている。コントローラ15は、内燃機関2、モータ4及び被動機5等の駆動、停止及び回転数を制御する。
【0061】
以上のハイブリッドシステム1では、内燃機関2を駆動すると、内燃機関2の回転動力がクランク軸2aを介してフライホイール3に伝達され、フライホイール3を回転させる。フライホイール3の回転動力は、ロータボス24及びカップリング6から出力軸12に伝達された後、出力軸12から被動機5の入力軸5a5aに伝達される。
また、被動機5の駆動と同時に、フライホイール3の回転動力は、ロータボス24を介してモータロータ7に伝達され、モータ4をジェネレータとして作動させる。
【0062】
一方、内燃機関2の駆動に加えてモータ4を駆動すると、モータロータ7が回転する。モータロータ7の回転動力は、カップリング6を介して出力軸12に伝達された後、出力軸12から被動機5の入力軸5a5aに伝達される。このモータ4の駆動に伴って生じる回転動力により、内燃機関2から被動機5に伝達される動力がアシストされる。
図6は、ハイブリッドシステム(駆動装置21)の第1変形例を示している。
【0063】
この第1変形例では、仕切部材62は、冷却ジャケット11の一方側に設けられている。また、仕切部材62の外径は、冷却ジャケット11の外径と略同じ外径に形成されていて、仕切部材62の外周端は、モータケース27の内周に近接している。モータケース27の内周には、回転軸心X1に平行な方向に延伸する係合溝75(第4係合溝という)が一方側端部から他方側に向けて設けられている。この第4係合溝75に、仕切部材62の第3係合突部64が嵌っている。これによって、仕切部材62は、モータケース27に直接的に回転軸心回りに回り止め固定されている。
【0064】
また、ロータボス24は、フライホイール3に一体成形されている。即ち、ロータボス24とカップリング6とフライホイール3とが一体成形されている。
この場合においても、ロータボス24とカップリング6とフライホイール3とは、切削加工によって一体成形されていてもよいし、鋳造や、樹脂の一体成型によって一体成形されていてもよい。その他の構成は、図1図5に示す実施形態と同様に構成される。
【0065】
図7は、ハイブリッドシステム(駆動装置21)の第2変形例を示している。
この第2変形例では、仕切部材62の外周側に冷却ジャケット11の第1蓋76が一体成形されている。即ち、第2変形例では、仕切部材62が、冷却ジャケット11の第1蓋76を兼用している点が第1変形例と異なる。ロータボス24とカップリング6とフライホイール3とを一体成形している点は、第1変形例と同様である。その他の構成は、図1図5に示す実施形態と同様に構成される。
【0066】
次に、本実施形態の効果について説明する。
本実施形態のハイブリッドシステム1は、内燃機関2と、内燃機関2の動力が伝達されて回転軸心X1の回りに回転するフライホイール3と、回転軸心X1の回りに回転可能なモータロータ7と、モータロータ7を駆動するモータコイル29とを有するモータ4と、外周側にモータロータ7が一体回転可能に設けられるホロー型のロータボス24であって、フライホイール3と一体回転可能なロータボス24と、入力軸5aを有すると共にロータボス24のフライホイール3とは反対側に配置された被動機5と、ロータボス24の内周側に配置されていて入力軸5aに連結される出力軸12と、ロータボス24に一体成形されたカップリング6であって、出力軸12が連結されてロータボス24の動力を出力軸12に伝達するカップリング6と、を備えている。
【0067】
この構成によれば、フライホイール3と一体回転するロータボス24にカップリング6を一体成形して、フライホイール3の動力をロータボス24からカップリング6を介して出力軸12に伝達している。これにより、カップリング6をフライホイール3に連結する場合に比べて、出力軸12を短くすることができる。出力軸12を短くすることにより、出力軸12とカップリング6との芯ずれを小さくすることができ、カップリング6の摩耗を減少させることができる。延いては、カップリング6の寿命を長くすることができる。また、被動機5の入力軸5aに対して、回転方向以外の負荷を減少させることができ、被動機5の寿命を長くすることができる。
【0068】
また、カップリング6を、ロータボス24とは別体で形成して該ロータボス24にネジで固定することも考えられるが、この場合、カップリング6をロータボス24に固定するためのネジを設ける必要があるため、ロータボス24が大きくなる。これに対して、本実施形態のハイブリッドシステムでは、カップリング6をロータボス24に一体成形しているので、カップリング6をロータボス24側に設けるに際して、ロータボス24が大形化するのを防止することができる。また、カップリング6をロータボス24に一体成形することで、カップリング6の組付け公差をなくすことができる。
【0069】
ロータボス24は、フライホイール3に一体成形されている。
この構成によれば、ロータボス24とフライホイール3とをネジ等を用いて組み立てる必要がなく、フライホイール3に対するロータボス24の組み付け公差をなくすことができる。延いては、モータロータ7の機械公差を小さくすることができる。
また、内燃機関2に固定されるケーシング23であって、モータ4の外周を覆うモータケース27と、フライホイール3の外周を覆うと共にモータケース27に一体成形されたフライホイールハウジング9とを有するケーシング23と、モータロータ7の回転角度を検出する角度センサ14であって、モータケース27側に固定されたセンサステータ54と、ロータボス24に一体回転自在に設けられたセンサロータ53とを有する角度センサ14と、を備えている。
【0070】
この構成によれば、モータケース27とフライホイールハウジング9とをネジ等を用いて組み立てる必要がなく、フライホイールハウジング9に対するモータケース27の組み付け公差をなくすことができる。延いては、モータケース27側に固定されるセンサステータ54の機械公差を小さくすることができる。
また、センサロータ53を、フライホイール3に一体成形されているロータボス24に設けた場合、フライホイール3に対するロータボス24の組み付け公差がなくなることから、センサロータ53の機械公差が小さくなる。
【0071】
そして、センサステータ54とセンサロータ53の機械公差を小さくすることにより、センサステータ54とセンサロータ53との芯ずれを小さくすることができる。また、センサステータ54とセンサロータ53の相対的な位置関係を正確にすることにより、角度センサ14の精度を向上させることができ、モータロータ7の回転角度が正確に検出される。延いては、モータ4の駆動制御を高精度に行うことができる。
【0072】
また、内燃機関2に固定されるケーシング23であって、モータ4の外周を覆うモータケース27と、フライホイール3の外周を覆うと共にモータケース27に一体成形されたフライホイールハウジング9とを有するケーシングを備え、モータ4は、モータコイル29が設けられたモータステータ8を有し、モータステータ8は、モータケース27側に回り止め固定されている。
【0073】
この構成によれば、モータステータ8は、フライホイールハウジング9と一体成形されたモータケース27側に固定されているので、モータケース27とフライホイールハウジング9との組み付け公差をなくすことにより、モータステータ8の機械公差を小さくすることができる。
また、モータステータ8の機械公差を小さくすること、及び、ロータボス24とフライホイール3との組み付け公差をなくして、モータロータ7の機械公差を小さくすることにより、モータステータ8とモータロータ7との芯ずれを小さくすることができる。これにより、モータ4の性能を向上させることができる。
【0074】
また、ロータボス24にカップリング6を一体成形すること、ロータボス24をフライホイール3に一体成形すること、及びモータケース27にフライホイールハウジング9を一体成形することにより、ハイブリッドシステムの小型化を図ることができる。
本実施形態の駆動装置21は、回転軸心X1の回りに回転可能なモータロータ7と、モータロータ7を駆動するモータコイル29とを有するモータ4と、モータロータ7の回転角度を検出する角度センサ14と、モータ4及び角度センサ14が収容されるモータハウジング10と、モータハウジング10内に設けられていて、モータコイル29と角度センサ14との間を仕切る仕切部材62と、を備えている。
【0075】
この構成によれば、モータコイル29と角度センサ14との間を仕切る仕切部材62によって、モータコイル29から発生するノイズが角度センサ14に影響するのを低減することができる。これによって、モータ4の制御の安定性の向上を図ることができる。
また、モータ4と角度センサ14とは、回転軸心X1の方向に位置ずれして設けられ、仕切部材62は、回転軸心X1の方向におけるモータ4と角度センサ14との間に設けられている。
【0076】
この構成によれば、仕切部材62をモータ4と角度センサ14との間に容易に配置することができる。言い換えれば、モータコイル29と角度センサ14との間を容易に仕切ることができる。
また、仕切部材62は、角度センサ14と回転軸心X1の方向でオーバーラップしている。
【0077】
この構成によれば、駆動装置21をコンパクトに形成することができる。
また、モータハウジング10は、モータ4及び角度センサ14の外周を覆うモータケース27と、モータ4及び角度センサ14の回転軸心X1の方向の一方を覆うケースカバー26とを有し、モータ4は、モータコイル29が設けられたモータステータ8であって、モータケース27側に回り止め固定されたモータステータ8を有し、角度センサ14は、モータロータ7と一体回転するセンサロータ53と、センサロータ53の回転角度に応じて検出信号を発生する検出コイル57bが設けられたセンサステータ54とを有し、仕切部材62は、センサステータ54が固定されるセンサ固定部65を有し、モータケース27側に回り止め固定されている。
【0078】
この構成によれば、モータステータ8が回り止め固定されるモータケース27側に仕切部材62を介してセンサステータ54を回り止め固定することにより、センサステータ54をケースカバー26側に固定する場合に比べて、モータロータ7とセンサステータ54との位置合わせを精度良く行えると共に、センサステータ54とセンサロータ53の原点合わせ時のズレを少なくすることができる。延いては、モータ4の性能の向上を図ることができる。
【0079】
また、従来、センサステータ54がケースカバー26側に固定される場合がある。この場合、ケースカバー26をモータケース27側に固定した後に、センサハーネス60に接続されたコネクタ61にモータハーネス69を接続する作業を、狭い端子カバー部70内で行わなければならず、この接続作業が煩雑で面倒である。これに対し本実施形態では、ケースカバー26をモータケース27に取り付ける前に、コネクタ61にモータハーネス69を接続することができ、センサハーネス60とモータハーネス69とを共通のコネクタ61に容易に接続することができる。
【0080】
また、仕切部材62は、回転軸心X1を中心とする円板状を呈し、且つ、センサ固定部65の径内側に設けられていて検出コイル57bのモータ4側を覆う第1覆い部66と、センサ固定部65の径外側に設けられていてモータコイル29の角度センサ14側を覆う第2覆い部67とを有する。
この構成によれば、モータコイル29と検出コイル57bとを容易に仕切ることができ、モータ4の制御の安定性の向上を図ることができる。
【0081】
また、角度センサ14は、センサステータ54に接続されたセンサハーネス60を有し、仕切部材62は、センサハーネス60とモータコイル29との間に設けられている。
この構成によれば、モータコイル29から発生するノイズがセンサハーネス60に影響するのを低減することができる。これによって、モータ4の制御の安定性の向上を図ることができる。
【0082】
なお、従来のノイズ対策として、モータコイルのノイズがセンサハーネスに乗るのを防止するのに、センサハーネスをツイスト処理するという方法がある。センサハーネスをツイスト処理する作業は面倒である。本実施形態では、センサハーネスをツイスト処理する必要はない。
また、センサステータ54は、センサ固定部65に取り付けられる取付部56と、検出コイル57bが設けられたコア部57とを有し、センサ固定部65は、取付部56を挿入すべく凹設され、第1覆い部66は、コア部57を挿入すべく取付部56よりもさらに凹設されている。
【0083】
この構成によれば、仕切部材62とセンサステータ54とを、仕切部材62の厚さ方向でオーバーラップさせることができる。これにより、センサステータ54を仕切部材62にコンパクトに取り付けることができ、延いては、駆動装置21をコンパクトに構成することができる。
また、モータ4は、モータステータ8側に設けられたモータハーネス69を有し、仕切部材62は、モータハーネス69を角度センサ14側に引き出すための切欠き68を有する。
【0084】
この構成によれば、モータハーネス69を角度センサ14側に容易に引き出すことができ、センサハーネス60とモータハーネス69とを1つのコネクタ61に容易にまとめることができる。
また、仕切部材62は、非磁性金属によって形成されている。
仕切部材62の材料に、アルミニウムやステンレス鋼などの非磁性金属を用いると、仕切部材62に発生する渦電流に起因する発熱を減少させることができる。
【0085】
以上、本発明について説明したが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0086】
2 内燃機関
3 フライホイール
4 モータ
5 被動機
5a 入力軸
6 カップリング
7 モータロータ
8 モータステータ
9 フライホイールハウジング
12 出力軸
14 角度センサ
24 ロータボス
27 モータケース
29 モータコイル
53 センサロータ
54 センサステータ
X1 回転軸心
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7