(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
<作業機>
図24は、作業機(作業車両)1の一実施形態を示す側面図である。本実施形態の場合、作業機1はトラクタである。但し、作業機1は、トラクタに限定されず、コンバインや移植機等の農業機械(農業車両)であってもよいし、ローダ作業機等の建設機械(建設車両)等であってもよい。
【0011】
以下、トラクタ(作業機)1の運転席8に着座した運転者の前側(
図24の左側)を前方、運転者の後側(
図24の右側)を後方、運転者の左側(
図24の手前側)を左方、運転者の右側(
図24の奥側)を右方として説明する。また、作業機1の前後方向に直交する方向である水平方向(
図24の奥行方向)を車体幅方向として説明する。
トラクタ1は、車体2と走行装置3とを備えている。
【0012】
車体2は、車体フレーム5、クラッチハウジング6等を有している。車体フレーム5は、車体2の前後方向に延びている。車体フレーム5には、エンジンE1が搭載されている。エンジンE1は、本実施形態の場合は、ディーゼルエンジンである。エンジンE1は、車体フレーム5に搭載されて車体2の前部に配置されている。クラッチハウジング6は、エンジンE1の後部に連設されており、クラッチを収容している。クラッチハウジング6の後部には、後述するミッションケース7が連結されている。
【0013】
走行装置3は、車体2の前部に設けられた前輪3Fと、車体2の後部に設けられた後輪3Rとを有している。前輪3Fは、車体フレーム5に支持されている。後輪3Rは、後輪差動装置の出力軸に支持されている。
トラクタ1は、連結装置4を備えている。
連結装置4は、圃場(農地)等に対して作業を行う作業装置(耕耘機、散布機等)をトラクタ1の後部に連結するための装置である。連結装置4は、リフトアーム4aと、ロアーリンク4bと、リフトロッド4cと、を有している。
【0014】
トラクタ1は、当該トラクタ1を駆動するエンジンE1からの回転動力を出力する出力軸11を備えている。出力軸11は、例えば、エンジンE1からの回転動力を、作業装置等に伝達するためのPTO軸である。出力軸11はPTO軸には限定されないが、本実施形態の場合、出力軸11はPTO軸である。
【0015】
<変速装置>
トラクタ(作業機)1は、エンジンE1からの回転動力を変速してPTO軸(出力軸)11に伝達可能な変速装置10を備えている。
図1、
図2に示すように、変速装置10は、ミッションケース(ケース)7、変速機構9、操作レバー12、切換機構30を有している。
ミッションケース7の前部には、後輪3Rに接続される後輪差動装置等(図示せず)が収容されている。
図2に示すように、ミッションケース7の後部には、変速機構9が収容されている。
【0016】
ミッションケース7の後上部には、リフトアーム4aを揺動させるリフトシリンダを収容するシリンダ収容部71aが設けられている。シリンダ収容部71aの後上部には、リフトアーム4aの基端部が枢支される第1枢支部71bが設けられている。ミッションケース7の後下部には、ロアーリンク4bの基端部が枢支される第2枢支部71cが設けられている。
【0017】
図1、
図2に示すように、ミッションケース7は、第1支持体71と第2支持体72とを有している。第1支持体71、第2支持体72は、後述する軸受37,38を支持している。第1支持体71は、第2支持体72の後方に位置している。第1支持体71と第2支持体72とは、挿入孔72aに挿入されるボルト(図示略)によって連結される。
図2に示すように、ミッションケース7の後壁部7aからは、PTO軸11が後方に向けて突出している。
【0018】
<変速機構>
図2に示すように、変速機構9は、ミッションケース7に収容されている。変速機構9は、エンジンE1からの回転動力を変速してPTO軸11に伝達する。
変速機構9は、PTO軸11の回転を複数の回転モードに変速(切り換え)可能である。本実施形態の場合、変速機構9は、PTO軸11の回転を、第1回転モードと第2回転モードと第3回転モードとに変速(切り換え)可能とされている。
本実施形態の場合、第1回転モードは、エンジンE1の回転数を定格回転数(例えば、2400rpm)に維持した状態で、PTO軸11の回転数を定格回転数よりも低い第1回転数(例えば、540rpm)とするモードである。第2回転モードは、エンジンE1の回転数を定格回転数よりも低い回転数(例えば、1800rpm)とした状態で、PTO軸11の回転数を第1回転数とするモード(エコモード)である。第3回転モードは、エンジンE1の回転数を定格回転数に維持した状態で、PTO軸11の回転数を定格回転数よりも低く且つ第1回転数よりも高い第2回転数(例えば、1000rpm)とするモードである。
【0019】
本実施形態の場合、第1回転モードと第2回転モードにおいてPTO軸11が同じ回転数となるように構成しているが、第1回転モード、第2回転モード、第3回転モードにおいてPTO軸11が夫々異なる回転数となるように構成してもよい。また、変速機構9は、PTO軸11の回転数を4種類以上の異なる回転数に切り換えることが可能なものであってもよい。
【0020】
図2に示すように、変速機構9は、入力軸13、第1伝動歯車14、第2伝動歯車15、第3伝動歯車16、第1変速歯車17、第2変速歯車18、第3変速歯車19、第1シフタ20、第2シフタ21を有している。
入力軸13は、前後方向に延びており、クラッチハウジング6に収容されたクラッチ等を介してエンジンE1のクランク軸と接続されている。入力軸13は、ミッションケース7内に配置された軸受37により回転可能に支持されている。軸受37は、第1支持体71内と第2支持体72内にそれぞれ配置されている。尚、
図1では、入力軸13を仮想線(二点鎖線)で示し、入力軸13の周囲に設けられる歯車や軸受37等は省略している。
【0021】
入力軸13には、第1伝動歯車14、第2伝動歯車15、第3伝動歯車16が軸方向に並んで固定されている。第1伝動歯車14は、入力軸13の後部に設けられている。第2伝動歯車15は、入力軸13の軸方向において、第1伝動歯車14の前方に配置されている。第2伝動歯車15の歯数は、第1伝動歯車14の歯数よりも多い。第3伝動歯車16は、入力軸13の軸方向において、第2伝動歯車15の前方に配置されている。第3伝動歯車16の歯数は、第2伝動歯車15の歯数よりも多い。
【0022】
入力軸13と平行にPTO軸11が配置されている。PTO軸11は、入力軸13の下方に配置されている。PTO軸11は、ミッションケース7内に配置された軸受38により回転可能に支持されている。軸受38は、第1支持体71内と第2支持体72内にそれぞれ配置されている。
第1変速歯車17、第2変速歯車18、第3変速歯車19は、PTO軸11の軸方向に並んで配置されている。第1変速歯車17、第2変速歯車18、第3変速歯車19は、PTO軸11に対して空転可能に設けられている。後述するように、第1変速歯車17、第2変速歯車18、第3変速歯車19は、第1シフタ20と第2シフタ21により、選択的にPTO軸11に接続可能である。
【0023】
第1変速歯車17は、PTO軸11の後部寄りの位置に設けられている。第2変速歯車18は、PTO軸11の軸方向において、第1変速歯車17の前方に配置されている。第2変速歯車18の歯数は、第1変速歯車17の歯数よりも少ない。第3変速歯車19は、PTO軸11の軸方向において、第2変速歯車18の前方に配置されている。第3変速歯車19の歯数は、第2変速歯車18の歯数よりも少ない。
【0024】
第1変速歯車17は、第1伝動歯車14と噛み合っている。第2変速歯車18は、第2伝動歯車15と噛み合っている。第3変速歯車19は、第3伝動歯車16と噛み合っている。第1変速歯車17の歯数は、第1伝動歯車14の歯数よりも多い。第2変速歯車18の歯数は、第2伝動歯車15の歯数よりも多い。第3変速歯車19の歯数は、第3伝動歯車16の歯数よりも多い。これにより、PTO軸11の回転数は、入力軸13の回転数よりも少なくなる。つまり、変速機構9は、入力軸13の回転を減速してPTO軸11から取り出すことができる。本実施形態の場合、減速の度合い(減速比)を3段階で設定(変更)することができる。減速比の設定は、第1シフタ20及び第2シフタ21により行われる。
【0025】
第1シフタ20は、第1変速歯車17と第2変速歯車18とを、PTO軸11に対して選択的に接続する。第1シフタ20は、後述する第1シフトフォーク22、第1操作機構24、切換機構30を介して操作レバー12と接続されている。第1シフタ20は、操作レバー12の操作によってPTO軸11に沿って移動する。具体的には、第1シフタ20は、第1変速歯車17と第2変速歯車18との間に配置されており、操作レバー12の揺動操作によって、PTO軸11に沿う前後方向の3つの位置(第1位置、第2位置、第3位置)に移動する。
図2において、第1位置(後方位置)及び第2位置(前方位置)にある第1シフタ20を仮想線で示し、第3位置(中間位置)にある第1シフタ20を実線で示している。
【0026】
第1シフタ20が第1位置(後方位置)にあるとき、第1変速歯車17がPTO軸11に接続される。これにより、第1伝動歯車14の回転(回転動力)が第1変速歯車17を介してPTO軸11に伝達される。その結果、PTO軸11は、エンジンE1の回転数と、第1伝動歯車14と第1変速歯車17との歯数比に基づき、第1回転モードで回転する。第1回転モードの場合、例えば、エンジンE1の回転数が2400rpm、PTO軸11の回転数が540rpmとなる。
【0027】
第1シフタ20が第2位置(前方位置)にあるとき、第2変速歯車18がPTO軸11に接続される。これにより、第2伝動歯車15の回転(回転動力)が第2変速歯車18を介してPTO軸11に伝達される。その結果、PTO軸11は、エンジンE1の回転数と、第2伝動歯車15と第2変速歯車18との歯数比に基づき、第2回転モードで回転する。第2回転モードの場合、例えば、エンジンE1の回転数が1800rpm、PTO軸11の回転数が540rpmとなる。
【0028】
第1シフタ20が第3位置(中間位置)にあるとき、第1変速歯車17と第2変速歯車18のいずれもPTO軸11に接続されていない状態(以下、「第1中立状態」という)となる。このとき、第1変速歯車17及び第2変速歯車18はいずれも空転し、エンジンE1の回転(入力軸13の回転)はPTO軸11に伝達されない。つまり、エンジンE1の回転数に関わらず、PTO軸11の回転数は0となる。
【0029】
第2シフタ21は、第3変速歯車19を、PTO軸11に対して接続状態又は非接続状態とする。第2シフタ21は、後述する第2シフトフォーク23、第2操作機構25、切換機構30を介して操作レバー12と接続されている。第2シフタ21は、操作レバー12の操作によってPTO軸11に沿って移動する。具体的には、シフタ18は、第2変速歯車18と第3変速歯車19との間に配置されており、操作レバー12の揺動操作によって、PTO軸11に沿う前後方向の2つの位置(第4位置、第5位置)に移動する。
図2において、第4位置(前方位置)にある第2シフタ21を仮想線で示し、第5位置(後方位置)にある第2シフタ21を実線で示している。
【0030】
第2シフタ21が第4位置(前方位置)にあるとき、第3変速歯車19がPTO軸11に接続される。これにより、第3伝動歯車16の回転が第3変速歯車19を介してPTO軸11に伝達される。その結果、PTO軸11は、エンジンE1の回転数と、第3伝動歯車16と第3変速歯車19との歯数比に基づき、第3回転モードで回転する。第3回転モードの場合、例えば、エンジンE1の回転数が1800rpm、PTO軸11の回転数が1000rpmとなる。
【0031】
第2シフタ21が第5位置(後方位置)にあるとき、第3変速歯車19はPTO軸11に接続されていない状態(以下、「第2中立状態」という)となる。このとき、第3変速歯車19は空転し、エンジンE1の回転(入力軸13の回転)はPTO軸11に伝達されない。つまり、エンジンE1の回転数に関わらず、PTO軸11の回転数は0となる。
上述の通り、変速機構9によれば、操作レバー12を操作することによって、PTO軸11を、第1回転モード、第2回転モード、第3回転モード、第1中立状態、第2中立状態のいずれかに選択的に切り換えることができる。より詳しくは、変速機構9は、第1シフタ20によって、第1回転モード、第2回転モード、第1中立状態のいずれかに選択的に切り換えられる。また、第2シフタ21によって、第3回転モード、第2中立状態のいずれかに選択的に切り換えられる。
【0032】
以下の説明において、変速機構9が第1回転モード、第2回転モード、第1中立状態のいずれかに選択的に切り換えられる(変速される)状態を「第1変速状態」と称し、変速機構9が第3回転モード、第2中立状態のいずれかに選択的に切り換えられる(変速される)状態を「第2変速状態」と称する。別の言い方をすれば、操作レバー12が第1シフタ20に接続されている状態が「第1変速状態」であり、操作レバー12が第2シフタ21に接続されている状態が「第2変速状態」である。
【0033】
<操作レバー>
図1等に示すように、操作レバー12は、ミッションケース7の外部に設けられている。本実施形態の場合、操作レバー12は、後部ケース72ミッションケース7の後部の上方且つ左方(車体幅方向の一方)に設けられている。操作レバー12は、例えば、運転席8の近傍(運転席8の側方等)に配置される。
図3に示すように、操作レバー12は、車体幅方向(矢印Y方向)及び前後方向(車体幅方向と直交する方向)(矢印X方向)に揺動可能である。以下、操作レバー12を車体幅Y方向に揺動する操作を「第1揺動操作」と称し、前後方向Xに揺動する操作を「第2揺動操作」と称する。
【0034】
操作レバー12は、第1揺動操作によって、第1シフタ20又は第2シフタ21に選択的に接続される。つまり、変速機構9は、操作レバー12の第1揺動操作によって、第1変速状態と第2変速状態とに切り換わる。
操作レバー12は、第1変速状態において、後述する第1シフトフォーク22、第1操作機構24、切換機構30を介して第1シフタ20と接続される。操作レバー12は、第2変速状態において、後述する第2シフトフォーク23、第2操作機構25、切換機構30を介して第2シフタ21と接続される。第1変速状態と第2変速状態との切り換えは、切換機構30を介して行われる。つまり、切換機構30は、操作レバー12の第1揺動操作によって、第1変速状態と第2変速状態とを切り換える。切換機構30の構成については、後ほど詳しく説明する。
【0035】
操作レバー12は、第1変速状態に切り換えられた後の第2揺動操作によって、第1回転モード、第2回転モード、第1中立状態を選択的に切り換える。また、操作レバー12は、第2変速状態に切り換えられた後の第2揺動操作によって、第3回転モードと第2中立状態とを選択的に切り換える。
図3.
図4において、操作レバー12が、第1中立状態にあるときの位置を符号12Aで示し、第1回転モードにあるときの位置を符号12Bで示し、第2回転モードにあるときの位置を符号12Cで示し、第2中立状態にあるときの位置を符号12Dで示し、第3回転モードにあるときの位置を符号12Eで示している。
【0036】
操作レバー12を第1変速状態から第2変速状態、又は、第2変速状態から第1変速状態に切り換える際には、必ず中立状態(第1中立状態及び第2中立状態)を経由する。例えば、第1回転モードから第3回転モードに切り換えるときには、操作レバー12を(12B)→(12A)→(12D)→(12E)と移動させる。第3回転モードから第2回転モードに切り換えるときには、操作レバー12を(12E)→(12D)→(12A)→(12C)と移動させる。
【0037】
<シフトフォーク、操作機構、切換機構>
以下、操作レバー12と第1シフタ20又は第2シフタ21とを選択的に接続する機構である、第1シフトフォーク22、第2シフトフォーク23、第1操作機構24、第2操作機構25、切換機構30について説明する。
【0038】
<第1シフトフォーク>
第1シフトフォーク22は、変速機構9を第1変速状態に切り換える。言い換えれば、変速機構9は、第1シフトフォーク22の作動によって、第1回転モード、第2回転モード、第1中立状態のいずれかに選択的に切り換えられる。
図2、
図5、
図6に示すように、第1シフトフォーク22は、第1シフタ20に装着されている。尚、
図5,
図6では、変速歯車(第1変速歯車17、第2変速歯車18、第3変速歯車19)の図示を省略している。
【0039】
図6に示すように、第1シフトフォーク22は、第1嵌合部22aと基部22eとを有している。第1嵌合部22aは、二股に分かれた円弧状に形成されており、第1シフタ20の外周に沿って形成された溝に嵌まっている。基部22eは、第1嵌合部22aの上部に一体的に接続されて設けられている。基部22eは、第1支持部22bと第1係合部22cを有している。第1支持部22bは、前後方向に延びており、フォークロッド26に支持されている。具体的には、第1支持部22bは前後方向に延びる貫通穴を含み、当該貫通穴にフォークロッド26が挿通されている。これにより、第1シフトフォーク22は、フォークロッド26の軸方向(前後方向)に沿って移動することができる。言い換えれば、フォークロッド26は、第1シフトフォーク22を軸方向に移動可能に支持している。フォークロッド26は、PTO軸11の上方に配置されており、PTO軸11と平行に前後方向に延びている。
【0040】
図6、
図7に示すように、第1係合部22cは、第1支持部22bから上方に突出する2つの突出部22d,22dを有している。2つの突出部22d、22eは、フォークロッド26と平行方向(前後方向)に間隔をあけて設けられている。2つの突出部22d、22eの間に、後述する第1操作体31の第1アーム33が係合されている。
【0041】
<第2シフトフォーク>
第2シフトフォーク23は、変速機構9を第2変速状態に切り換える。言い換えれば、変速機構9は、第2シフトフォーク23の作動によって、第3回転モードと第2中立状態のいずれかに選択的に切り換えられる。
図2、
図5、
図6に示すように、第2シフトフォーク23は、第2シフタ21に装着されている。
図5に示すように、第2シフトフォーク23は、第2嵌合部23aと基部23eとを有している。第2嵌合部23aは、二股に分かれた円弧状に形成されており、第2シフタ21の外周に沿って形成された溝に嵌まっている。基部23eは、第2嵌合部23aの上部に一体的に接続されて設けられている。基部23eは、第2支持部23bと第2係合部23cを有している。第2支持部23bは、前後方向に延びており、フォークロッド26に支持されている。具体的には、第2支持部23bは前後方向に延びる貫通穴を含み、当該貫通穴にフォークロッド26が挿通されている。これにより、第2シフトフォーク23は、フォークロッド26の軸方向(前後方向)に沿って移動することができる。言い換えれば、フォークロッド26は、第2シフトフォーク23を軸方向に移動可能に支持している。
【0042】
図5、
図7に示すように、第2係合部23cは、第2支持部23bから上方に突出する2つの突出部23d、23dを有している。2つの突出部23d、23dは、フォークロッド26と平な方向(前後方向)に間隔をあけて設けられている。2つの突出部23d、23dの間に、後述する第2操作体34の第2アーム36が係合されている。第2係合部23cの下方には、凹み部23gが設けられている。凹み部23gは、第2係合部23cの下方において、下方から上方に向けて且つ後方から前方に向けて凹んでいる。言い換えれば、凹み部23gは、第2係合部23cの下方において、基部23eの後下部を凹ませて(切り欠いて)形成されている。
【0043】
<第1シフトフォークと第2シフトフォークの配置>
図6〜
図9に示すように、第1シフトフォーク22の第1支持部22bと第2シフトフォーク23の第2支持部23bとは、フォークロッド26の軸方向(前後方向)Xに並んで配置されている。第2支持部23bは、第1支持部22bの後方に配置されている。また、
図9に示すように、第1係合部22cと第2係合部23cとは、フォークロッド26の軸方向Xと交差する方向Y(本実施形態の場合、軸方向Xと直交する方向(車体幅方向))にずれた位置に配置されている。そのため、第1係合部22cと第2係合部23cとは、フォークロッド26の軸方向Xにオーバーラップ可能となっている。
図8に示すように、第1係合部22cと第2係合部23cとがフォークロッド26の軸方向Xにオーバーラップした状態では、第1係合部22cの前端部22fが第2係合部23cの後端部23fよりも前方に位置するが、第1係合部22cと第2係合部23cとは方向Yにずれるため互いに干渉しない。これにより、第1係合部22cと第2係合部23cとの干渉を回避しながら、第1シフトフォーク22と第2シフトフォーク23とをフォークロッド26の軸方向に接近して配置することができる。
【0044】
また、
図7に示すように、第2シフトフォーク23が凹み部23gを有することにより、第2シフトフォーク23が第1シフトフォーク22に接近する方向(後方)に移動したとき(
図11参照)に、第1シフトフォーク22と干渉することが回避される。また、第1シフトフォーク22が第2シフトフォーク23に接近する方向(前方)に移動したとき(
図10参照)に、第2シフトフォーク23と干渉することが回避される。そのため、第1シフトフォーク22と第2シフトフォーク23とを接近させて小さいスペースで配置することができる。
【0045】
また、
図5〜
図8に示すように、1本のフォークロッド26により2つのシフトフォーク(第1シフトフォーク22、第2シフトフォーク23)を支持しているため、2つのシフトフォークをそれぞれ別のフォークロッドで支持する場合に比べて、小さいスペースでの配置が可能となる。尚、フォークロッド26は、本実施形態の場合、単一の部材(ロッド)から構成されているが、中心軸が同一軸線上に配置された複数の部材(ロッド)を連結して1本に構成してもよい。
【0046】
上述のように、本実施形態の上記変速装置10によれば、1本のフォークロッド26により2本のシフトフォーク(第1シフトフォーク22、第2シフトフォーク23)を軸方向に移動可能に支持しつつ、2つのシフトフォークを互いの干渉を回避して接近させて配置することができる。そのため、ミッションケース7の内部においてフォークロッドを配置するためのスペースを小さくすることができる。そのため、ミッションケース7を小型化することが可能となる。
【0047】
<第1操作機構>
第1操作機構24は、第1シフトフォーク22を操作する機構であって、第1操作体31を含んでいる。
図7、
図8に示すように、第1操作体31は、第1操作軸32と第1アーム33とを有している。
【0048】
図5〜
図9に示すように、第1操作軸32は、フォークロッド26の上方に配置されており、フォークロッド26と交差する方向(本実施形態の場合、直交する方向)に延びている。
図9に示すように、第1操作軸32は、一端側(左端側)32Lがミッションケース7の外部に位置し、他端側(右端側)32Rがミッションケース7の内部に位置している。言い換えれば、第1操作軸32は、ミッションケース7の左壁部7bを貫通している。
図10の矢印c及び矢印dに示すように、第1操作軸32は、中心軸回りの正方向(時計回り方向)又は逆方向(反時計回り方向)に回転可能である。
図7〜
図9に示すように、第1操作軸32は、第1突出部32aと第1取付部32bとを有している。
図1、
図9に示すように、第1突出部32aは、第1操作軸32の一端側(左端側)に設けられており、ミッションケース7の外部に突出している。第1取付部32bは、第1操作軸32の他端側(右端側)に設けられており、ミッションケース7の内部に配置されている。
【0049】
図7、
図8に示すように、第1アーム33は、先端部33aと基端部33bとを有している。先端部33aは、第1係合部22cに係合されている。基端部33bは、第1取付部32bに取り付けられている。
図10に示すように、第1アーム33は、第1操作軸32の正方向(矢印c方向)又は逆方向(矢印d方向)の回転に伴って、先端部33aがフォークロッド26の軸方向(前後方向)に揺動する。
図10に二点鎖線で示すように、先端部33aが前方に揺動すると、第1係合部22cが前方に押されて第1シフトフォーク22が前方に移動する。
図10に一点鎖線で示すように、先端部33aが後方に揺動すると、第1係合部22cが後方に押されて第1シフトフォーク22が後方に移動する。言い換えれば、第1操作軸32は、中心軸回りに回転することによって、第1アーム33を揺動させて第1シフトフォーク22をフォークロッド26に沿って移動させる。第1シフトフォーク22の移動に伴って第1シフタ20が移動するため、変速機構9は、第1回転モード、第2回転モード、第1中立状態のいずれかに選択的に切り換えられる。
【0050】
<第2操作機構>
第2操作機構25は、第2シフトフォーク23を操作する機構であって、第2操作体34を含んでいる。
図7、
図8に示すように、第2操作体34は、第2操作軸35と第2アーム36を有している。
図5〜
図9に示すように、第2操作軸35は、フォークロッド26の上方に配置されており、フォークロッド26と交差する方向(本実施形態の場合、直交する方向)に延びている。第2操作軸35は、第1操作軸32の前方において、第1操作軸32と平行に延びている。
図9に示すように、第2操作軸35は、一端側(左端側)35Lがミッションケース7の外部に位置し、他端側(右端側)がミッションケース7の内部に位置している。言い換えれば、第2操作軸35は、ミッションケース7の左壁部7bを貫通している。
図11の矢印e及び矢印fに示すように、第2操作軸35は、中心軸回りの正方向(時計回り方向)又は逆方向(反時計回り方向)に回転可能である。
図8、
図9に示すように、第2操作軸35は、第2突出部35aと第2取付部35bとを有している。
図1、
図9に示すように、第2突出部35aは、第2操作軸35の一端側(左端側)に設けられており、ミッションケース7の外部に突出している。第2取付部35bは、第2操作軸35の他端側(右端側)に設けられており、ミッションケース7の内部に位置している。
【0051】
図8に示すように、第2アーム36は、先端部36aと基端部36bとを有している。先端部36aは、第2係合部23cに係合されている。基端部36bは、第2取付部35bに取り付けられている。
図11に示すように、第2アーム36は、第2操作軸35の正方向(矢印e方向)又は逆方向(矢印f方向)の回転に伴って、先端部36aがフォークロッド26の軸方向(前後方向)に揺動する。
図11に二点鎖線で示すように、先端部36aが前方に揺動すると、第2係合部23cが前方に押されて第2シフトフォーク23が前方に移動する。
図11に実線で示すように、先端部36aが後方に揺動すると、第2係合部23cが後方に押されて第2シフトフォーク23が後方に移動する。言い換えれば、第2操作軸35は、中心軸回りに回転することによって、第2アーム36を揺動させて第2シフトフォーク25をフォークロッド26に沿って移動させる。第2シフトフォーク23の移動に伴って第2シフタ21が移動するため、変速機構9は、第3回転モードと第2中立状態のいずれかに選択的に切り換えられる。
【0052】
<第1操作機構と第2操作機構の配置等>
図9に示すように、第1操作軸32の第1取付部32bと、第2操作軸35の第2取付部35bとは、フォークロッド26の軸方向Xと交差する方向Y(本実施形態の場合、直交する方向)にずれた位置に配置されている。これにより、第1アーム33と第2アーム36とが、フォークロッド26の軸方向Xと交差する方向Yにずれた位置に配置されている。そのため、第1アーム33と第2アーム36とをフォークロッド26の軸方向Xに接近させて配置した場合でも、第1アーム33と第2アーム36が揺動によって互いに干渉することが回避される。
【0053】
第1アーム33が揺動したとき、第1アーム33と第1係合部22cとの係合は、解除されることなく維持される。第2アーム36が揺動したとき、第2アーム36と第2係合部23cとの係合は、解除されることなく維持される。言い換えれば、第1シフトフォーク22と第2シフトフォーク23のいずれを操作(移動)した場合においても、第1アーム33と第1係合部22cとの係合と、第2アーム36と第2係合部23cとの係合は、解除されることなく維持される。これにより、第1アーム33から第1シフトフォーク22への力の伝達、第2アーム36から第2シフトフォーク23への力の伝達を確実に行うことができる。その結果、シフトフォーク(第1シフトフォーク22、第2シフトフォーク23)の操作(移動)を確実に行うことができる。
【0054】
<切換機構>
図12〜
図14等に示すように、切換機構30は、支軸(第1支軸41、第2支軸42)、支持部材50、第1連動部43、第2連動部44、移動部材45を有している。以下、各構成要素について順次説明する。
【0055】
<支軸>
支軸(第1支軸41、第2支軸42)は、操作レバー12の揺動支点となる。
第1支軸41は、車体幅方向と直交する方向に延びている。第1支軸41は、後述する支持部材50に支持されている。第2支軸42は、車体幅方向(第1支軸41と直交する方向)に延びている。第2支軸42は、ミッションケース7に固定されたブラケット27に回動可能に支持されている。
図1に示すように、ブラケット27は、ミッションケース7の左壁部7bの上部に固定されている。ブラケット27の上部はミッションケース7の上壁部7cよりも上方に突出しており、この突出部分に第2支軸42が支持されている。
【0056】
操作レバー12は、第1支軸41の軸心L1回りの方向(以下、「第1方向」という)に揺動可能である。言い換えれば、第1支軸41は、操作レバー12を軸心L1回りに揺動する操作(第1揺動操作)の揺動支点(第1方向への揺動操作の支点)となる。また、操作レバー12は、第2支軸42の軸心L2回りの方向(以下、「第2方向」という)に揺動可能である。言い換えれば、第2支軸42は、操作レバー12を軸心L2回りに揺動する操作(第2揺動操作)の揺動支点(第2方向への揺動操作の支点)となる。
【0057】
<支持部材>
支持部材50は、操作レバー12を支軸の軸心回り(第1支軸41の軸心回り及び第2支軸42の軸心回り)に揺動可能に支持する。
図12、
図13に示すように、支持部材50は、第1部分501と、第2部分502と、第3部分503とを有している。
第1部分501は、全体として略逆U字状に形成されている。
図13に示すように、第1部分501は、前板部501aと、後板部501bと、上板部501cとから構成されている。上板部501cは、前板部501aの上端と後板部501bの上端とを連結している。上板部501cの上部には、操作レバー12の下端部が接続されている。
【0058】
第2部分502は、前板部501aの下端と後板部501bの下端とを連結している。第2部分502の下部には、後述する移動部材45の取付部45cが取り付けられている。
第3部分503は、第1部分501と第2部分502とに囲まれる空間に配置されている。第3部分503は、第1支軸41が貫通する第1貫通部503aと、第2支軸42が貫通する第2貫通部503bとを有している。第1支軸41は、第1部分501の前板部501a及び後板部501bと、第3部分503の第1貫通部503aとを貫通している。
【0059】
図14に示すように、第1部分501及び第2部分502は、第3部分503に対して第1支軸41の軸心L1回りの一方向(矢印A方向)又は他方向(矢印B方向)に回動可能である。これにより、操作レバー12を軸心L1回りに揺動する操作(第1揺動操作)が可能となる。
図15〜
図17に示すように、第3部分503は、第2支軸42の軸心L2回りの一方向(矢印C方向)又は他方向(矢印D方向)に回動可能である。これにより、操作レバー12を軸心L2回りに揺動する操作(第2揺動操作)が可能となる。尚、
図15、
図16は、後述する第1接続状態にあるときの動作を示し、
図17は、後述する第2接続状態にあるときの動作を示している。
【0060】
<第1連動部、第2連動部>
第1連動部43は、操作レバー12の第2揺動操作を第1操作軸32の動作に連動させる。第2連動部44は、操作レバー12の第2揺動操作を第2操作軸35の動作に連動させる。操作レバー12の第2揺動操作が、第1連動部43の動作に連動する状態(第1変速状態)と、第2連動部44の動作に連動する状態(第2変速状態)とは、操作レバー12の第1揺動操作によって切り換えられる。
図7、
図12、
図13に示すように、第1連動部43は、第1回転部46と第1突起47とを有している。
【0061】
第1回転部46は、第1筒体46aと第1回転板46bとを有している。第1筒体46aは、第1操作軸32の一端側(左端側)に設けられた第1突出部32aの外周に嵌められて固定されている。第1筒体46aとミッションケース7の左壁部7bとの間には、第1スペーサ28の下部が介在している。
図13に示すように、第1スペーサ28の上部は、ボルトB2によりミッションケース7の左壁部7b及びブラケット27に固定されている。第1回転板46bは、第1筒体46aの外周面から上方(第1操作軸32の中心軸から離れる方向)に突出して設けられている。第1連動部43(第1回転部46、第1突起47)は、第1操作軸32の回転に伴って連動して回転する。
【0062】
第1突起47は、第1回転部46に設けられている。具体的には、第1突起47は、円柱状であって、第1回転部46の第1回転板46bから突出している。第1突起47の突出方向は、第1操作軸32と平行方向(車体幅方向)であって、ミッションケース7から離れる方向(左方)である。第1突起47は、第1回転板46bの回転に伴って第1操作軸32の中心軸回りに回転する。
【0063】
図7、
図12、
図13に示すように、第2連動部44は、第2回転部48と第2突起49とを有している。
第2回転部48は、第2筒体48aと第2回転板48bとを有している。第2筒体48aは、第2操作軸35の一端側(左端側)に設けられた第2突出部35aの外周に嵌められて固定されている。第2筒体48aとミッションケース7の左壁部7bとの間には、第2スペーサ29の下部が介在している。
図13に示すように、第2スペーサ29の上部は、ボルトB3によりミッションケース7の左壁部7b及びブラケット27に固定されている。第2回転板48bは、第2筒体48aの一端部(左端部)に固定され、上方(第2操作軸35の中心軸から離れる方向)に延びている。第2連動部44(第2回転部48、第2突起49)は、第2操作軸35の回転に伴って連動して回転する。
【0064】
第2突起49は、第2回転部48に設けられている。具体的には、第2突起49は、円柱状であって、第2回転部48の第2回転板48bから突出している。第2突起49の突出方向は、第2操作軸35と平行方向(車体幅方向)であって、ミッションケース7に近づく方向(右方)である。第2突起49は、第1突起47の前方に配置されている。第2突起49は、第2回転板48bの回転に伴って第2操作軸35の中心軸回りに回転する。
【0065】
図14に示すように、第1回転板46bと第2回転板48bとは、車体幅方向にずれた位置に配置されている。具体的には、第1回転板46bはミッションケース7の左壁部7bに近い側(右側)に配置され、第1回転板46bはミッションケース7の左壁部7bから遠い側(左側)に配置されている。これにより、第1回転板46bと第2回転板48bとが互いに干渉することが回避される。
【0066】
図18に示すように、第1突起47の先端(突出端)47aと第2突起49の先端(突出端)49aとは、車体幅方向にずれた位置に配置されている。具体的には、第1突起47の先端47aは、第2突起49の先端49aよりも右方(ミッションケース7に近い側)に位置している。
【0067】
<移動部材>
図12〜
図14、
図18等に示すように、移動部材45は、板状の部材であって、車体幅方向において第1回転板46bと第2回転板48bとの間に配置されている。
図13に示すように、移動部材45は、第1挿入部45aと、第2挿入部45bと、取付部45cとを有している。
第1挿入部45aは、略上下方向に長い長穴を形成する略楕円環状の縁部である。第1挿入部45aには、ミッションケース7側(右側)から第1突起47が挿入可能となっている。第1突起47は、第1挿入部45aに挿入された状態において、第1挿入部45a内で移動可能である。
【0068】
第2挿入部45bは、略上下方向に長い長穴を形成する略楕円環状の縁部である。第2挿入部45bは、第1挿入部45aの前方に、第1挿入部45aと間隔をあけて配置されている。第2挿入部45bは、下方に向かうにつれて第1挿入部45aとの間隔が広くなるように、第1挿入部45aに対して傾斜している。第2挿入部4baには、ミッションケース7と反対側(左側)から第2突起49が挿入可能となっている。第2突起49は、第2挿入部45bに挿入された状態において、第2挿入部45b内で移動可能である。
【0069】
図13に示すように、取付部45cは、移動部材45の上部に設けられている。具体的には、移動部材45を構成する板材の上面が取付部45cを構成している。取付部45cには、操作レバー12を支持する支持部材50の下部(第2部分502の下面)が接続されている。これにより、移動部材45は、操作レバー12の揺動操作に基づき、支持部材50と共に第1方向(第1支軸41の軸心L1回りの方向)又は第2方向(第2支軸42の軸心L2回りの方向)に選択的に移動する。具体的には、移動部材45は、操作レバー12の第1方向への揺動操作に基づいて第1方向に移動し、操作レバー12の第2方向への揺動操作に基づいて第2方向に移動する。
【0070】
<切換機構の配置>
上述した切換機構30の構成要素は、ミッションケース7の外部に設けられている。具体的には、支軸(第1支軸41、第2支軸42)、支持部材50、第1連動部43、第2連動部44、移動部材45は、ミッションケース7の外部に設けられている。これにより、切換機構30を配置するためのスペースをミッションケース7の内部に必要としない。そのため、ミッションケース7の内部空間を小さくすることができ、ミッションケース7を小型化することが可能となる。
【0071】
<切換機構の動作(操作レバーの第1揺動操作)>
以下、切換機構30の動作(作用)について説明する。切換機構30は、操作レバー12の第1揺動操作によって動作する。
図14の矢印Aに示すように、操作レバー12を第1支軸41の軸心L1回りの一方(左方)に揺動させると、操作レバー12は仮想線位置から実線位置に移動する。この操作レバー12の移動に伴って、支持部材50の第1部分501及び第2部分502が、第3部分503に対して軸心L1回りに回動し、仮想線位置から実線位置に移動する。この支持部材50の第1部分501及び第2部分502の移動に伴って、移動部材45が仮想線位置から実線位置(以下、「第1接続位置」という)に移動する。つまり、移動部材45は、軸心L1を支点とする回動によって、操作レバー12の移動方向(左方)と逆方向(右方)に移動する。
【0072】
図19に示すように、移動部材45が第1接続位置に移動すると、移動部材45の第1挿入部45aに第1連動部43の第1突起47が挿入されると共に、第2挿入部45bから第2連動部44の第2突起49が離脱する。これにより、移動部材45と第1連動部43とが接続状態となり、移動部材45と第2連動部44とは非接続状態となる。ここで、第1連動部43を構成する第1回転部46の第1筒体46aは、第1操作軸32の第1突出部32aに固定されている。そのため、操作レバー12は、第1連動部43を介して、第1操作軸32の第1突出部32aに接続された状態(以下、「第1接続状態」という)となる。第1操作軸32は、この第1接続状態において、操作レバー12により操作される。
【0073】
図14の矢印Bに示すように、操作レバー12を第1支軸41の軸心L1回りの他方(右方)に揺動させると、操作レバー12は実線位置から仮想線位置に移動する。この操作レバー12の移動に伴って、支持部材50の第1部分501及び第2部分502が、第3部分503に対して軸心L1回りに回動し、実線位置から仮想線位置に移動する。この支持部材50の第1部分501及び第2部分502の移動に伴って、移動部材45が実線位置から仮想線位置(以下、「第2接続位置」という)に移動する。つまり、移動部材45は、軸心L1を支点とする回動によって、操作レバー12の移動方向(左右)と逆方向(左方)に移動する。
【0074】
図18に示すように、移動部材45が第2接続位置に移動すると、移動部材45の第1挿入部45aから第1連動部43の第1突起47が離脱すると共に、第2挿入部45bに第2連動部44の第2突起49が挿入される。これにより、移動部材45と第2連動部44とが接続状態となり、移動部材45と第1連動部43とは非接続状態となる。ここで、第2連動部44を構成する第2回転部48の第2筒体48aは、第2操作軸35の第2突出部35aに固定されている。そのため、操作レバー12は、第2連動部44を介して、第2操作軸35の第2突出部35aに接続された状態(以下、「第2接続状態」という)となる。第2操作軸35は、この第2接続状態において、操作レバー12により操作される。
【0075】
上述したように、切換機構30は、操作レバー12の第1揺動操作によって、第1接続状態と第2接続状態とに切り換わる。操作レバー12が第1接続状態になると、操作レバー12の第2揺動操作が第1連動部43の動作に連動する状態(第1変速状態)となる。操作レバー12が第2接続状態になると、操作レバー12の第2揺動操作が第2連動部44の動作に連動する状態(第2変速状態)となる。
【0076】
<操作レバーの第2揺動操作>
以下、操作レバー12の第2揺動操作について説明する。
<操作レバーが第1接続状態にあるときの第2揺動操作>
先ず、操作レバー12が第1接続状態にあるときに第2揺動操作を行った場合について説明する。上述の通り、操作レバー12が第1接続状態にあるとき、変速機構9は第1変速状態となる。そのため、第2揺動操作を行うと、変速機構9は第1回転モード、第2回転モード、第1中立状態のいずれかに選択的に切り換えられる(変速される)。
【0077】
図15、
図16、
図10は、第2揺動操作によって変速機構9が切り換えられたときの動作を示している。主として、
図15、
図16はミッションケース7の外部における動作を示し、
図10はミッションケース7の内部における動作を示している。
図15は、変速機構9を第1中立状態(実線参照)から第1回転モード(二点鎖線参照)に切り換えている様子を示している。
図16は、変速機構9を第1中立状態(実線参照)から第2回転モード(二点鎖線参照)に切り換えている様子を示している。
図10は、変速機構9を第1中立状態(実線参照)から第1回転モード(二点鎖線参照)又は第2回転モード(一点鎖線参照)に切り換えている様子を示している。
以下、第1中立状態から第1回転モードへの切り換え、第1回転モードから第1中立状態への切り換え、第1中立状態から第2回転モード、第2回転モードから第1中立状態への切り換えについて、順に説明する。
【0078】
<第1中立状態→第1回転モード>
図15に示すように、変速機構9を第1中立状態から第1回転モードに切り換える場合、操作レバー12を第1接続状態において第2支軸42の軸心L2回りの前方(矢印C方向)に揺動させる。すると、支持部材50が軸心L2回りに回動し、実線位置から仮想線位置に移動する。この支持部材50の移動に伴って、移動部材45が実線位置から仮想線位置に移動する。ここで、操作レバー12は第1接続状態にあることから、移動部材45の第1挿入部45aに第1連動部43の第1突起47が挿入されている。そのため、移動部材45の移動に伴って、第1突起47が第1挿入部45aに押されて後方に移動し、第1回転部46(第1筒体46a、第1回転板46b)が回転して実線位置から仮想線位置に移動する。この第1回転部46の回転に伴って、第1操作軸32が矢印c方向に回転する。
【0079】
図10に示すように、第1操作軸32が矢印c方向に回転すると、第1アーム33の先端部33aが実線位置(以下、「第1中立位置」という)から前方に揺動して二点鎖線位置(以下、「第1回転モード位置」という)に移動し、第1シフトフォーク22をフォークロッド26に沿って前方に移動させる。これにより、変速機構9は第1中立状態から第1回転モードに切り換わる。
【0080】
<第1回転モード→第1中立状態>
変速機構9を第1回転モードから第1中立状態に切り換える場合、操作レバー12を第1接続状態において第2支軸42の軸心L2回りの後方(
図15の矢印D方向)に揺動させる。すると、支持部材50が軸心L2回りに回動し、仮想線位置から実線位置に移動する。この支持部材50の移動に伴って、移動部材45が仮想線位置から実線位置に移動する。ここで、操作レバー12は第1接続状態にあることから、移動部材45の第1挿入部45aに第1連動部43の第1突起47が挿入されている。そのため、移動部材45の移動に伴って、第1突起47が第1挿入部45aに押されて前方に移動し、第1回転部46(第1筒体46a、第1回転板46b)が回転して仮想線位置から実線位置に移動する。この第1回転部46の回転に伴って、第1操作軸32が矢印d方向に回転する。
【0081】
図10に示すように、第1操作軸32が矢印d方向に回転すると、第1アーム33の先端部33aが二点鎖線位置(第1回転モード位置)から後方に揺動して実線位置(第1中立位置)からに移動し、第1シフトフォーク22をフォークロッド26に沿って後方に移動させる。これにより、変速機構9は第1回転モードから第1中立状態からに切り換わる。
【0082】
<第1中立状態→第2回転モード>
図16に示すように、変速機構9を第1中立状態から第2回転モードに切り換える場合、操作レバー12を第1接続状態において第2支軸42の軸心L2回りの後方(矢印D方向)に揺動させる。すると、支持部材50が軸心L2回りに回動し、実線位置から仮想線位置に移動する。この支持部材50の移動に伴って、移動部材45が実線位置から仮想線位置に移動する。ここで、操作レバー12は第1接続状態にあることから、移動部材45の第1挿入部45aに第1連動部43の第1突起47が挿入されている。そのため、移動部材45の移動に伴って、第1突起47が第1挿入部45aに押されて前方に移動し、第1回転部46(第1筒体46a、第1回転板46b)が回転して実線位置から仮想線位置に移動する。この第1回転部46の回転に伴って、第1操作軸32が矢印d方向に回転する。
【0083】
図10に示すように、第1操作軸32が矢印d方向に回転すると、第1アーム33の先端部33aが実線位置(第1中立位置)から後方に揺動して一点鎖線位置(以下、「第2回転モード位置」という)に移動し、第1シフトフォーク22をフォークロッド26に沿って後方に移動させる。これにより、変速機構9は第1中立状態から第2回転モードに切り換わる。
【0084】
<第2回転モード→第1中立状態>
変速機構9を第2回転モードから第1中立状態に切り換える場合、操作レバー12を第1接続状態において第2支軸42の軸心L2回りの前方(
図16の矢印C方向)に揺動させる。すると、支持部材50が軸心L2回りに回動し、仮想線位置から実線位置からに移動する。この支持部材50の移動に伴って、移動部材45が仮想線位置から実線位置に移動する。ここで、操作レバー12は第1接続状態にあることから、移動部材45の第1挿入部45aに第1連動部43の第1突起47が挿入されている。そのため、移動部材45の移動に伴って、第1突起47が第1挿入部45aに押されて後方に移動し、第1回転部46(第1筒体46a、第1回転板46b)が回転して仮想線位置から実線位置に移動する。この第1回転部46の回転に伴って、第1操作軸32が矢印c方向に回転する。
【0085】
図10に示すように、第1操作軸32が矢印c方向に回転すると、第1アーム33の先端部33aが一点鎖線位置(第2回転モード位置)から前方に揺動して実線位置(第1中立位置)に移動し、第1シフトフォーク22をフォークロッド26に沿って前方に移動させる。これにより、変速機構9は第2回転モードから第1中立状態に切り換わる。
【0086】
<操作レバーが第2接続状態にあるときの第2揺動操作>
次に、操作レバー12が第2接続状態にあるときに第2揺動操作を行った場合について説明する。上述の通り、操作レバー12が第2接続状態にあるとき、変速機構9は第2変速状態となる。そのため、第2揺動操作を行うと、変速機構9は第3回転モード又は第2中立状態に選択的に切り換えられる(変速される)。
図17、
図11は、第2揺動操作によって、変速機構9を第2中立状態(実線参照)から第3回転モード(仮想線参照)に切り換えている様子を示している。
以下、第2中立状態から第3回転モードへの切り換え、第3回転モードから第2中立状態への切り換えについて、順に説明する。
【0087】
<第2中立状態→第3回転モード>
図17に示すように、変速機構9を第2中立状態から第3回転モードに切り換える場合、操作レバー12を第2接続状態において第2支軸42の軸心L2回りの前方(矢印C方向)に揺動させる。すると、支持部材50が軸心L2回りに回動し、実線位置から仮想線位置に移動する。この支持部材50の移動に伴って、移動部材45が実線位置から仮想線位置に移動する。ここで、操作レバー12は第2接続状態にあることから、移動部材45の第2挿入部45bに第2連動部44の第2突起49が挿入されている。そのため、移動部材45の移動に伴って、第2突起49が第2挿入部45bに押されて後方に移動し、第2回転部48(第2筒体48a、第2回転板48b)が回転して実線位置から仮想線位置に移動する。この第2回転部48の回転に伴って、第2操作軸35が矢印e方向に回転する。
【0088】
図11に示すように、第2操作軸35が矢印e方向に回転すると、第2アーム36の先端部36aが実線位置(以下、「第2中立位置」という)から前方に揺動して仮想線位置(以下、「第3回転モード位置」という)に移動し、第2シフトフォーク23をフォークロッド26に沿って前方に移動させる。これにより、変速機構9は第2中立状態から第3回転モードに切り換わる。
【0089】
<第3回転モード→第2中立状態>
変速機構9を第3回転モードから第2中立状態に切り換える場合、操作レバー12を第2接続状態において第2支軸42の軸心L2回りの後方(
図17の矢印D方向)に揺動させる。すると、支持部材50が軸心L2回りに回動し、仮想線位置から実線位置に移動する。この支持部材50の移動に伴って、移動部材45が仮想線位置から実線位置に移動する。ここで、操作レバー12は第2接続状態にあることから、移動部材45の第2挿入部45bに第2連動部44の第2突起49が挿入されている。そのため、移動部材45の移動に伴って、第2突起49が第2挿入部45bに押されて前方に移動し、第2回転部48(第2筒体48a、第2回転板48b)が回転して仮想線位置から実線位置に移動する。この第2回転部48の回転に伴って、第2操作軸35が矢印f方向に回転する。
【0090】
図11に示すように、第2操作軸35が矢印f方向に回転すると、第2アーム36の先端部36aが仮想線位置(第3回転モード位置)から後方に揺動して実線位置(「第2中立位置)に移動し、第2シフトフォーク23をフォークロッド26に沿って後方に移動させる。これにより、変速機構9は第3回転モードから第2中立状態に切り換わる。
【0091】
<インターロック機構>
図8、
図9、
図20〜
図23に示すように、変速装置10は、インターロック機構60を備えている。
インターロック機構60は、第1操作体31と第2操作体34の同時操作を防止することにより、第1シフトフォーク22と第2シフトフォーク23とが同時に切り換え操作されることを防止する。
インターロック機構60は、第1操作体31に設けられた第1凹部31aと、第2操作体34に設けられた第2凹部34aと、球体61と、を含んでいる。
【0092】
第1凹部31aは、第1操作体31の第1操作軸32の外周面に設けられており、当該外周面から第1操作軸32の中心軸に向けて略円錐状に凹んでいる。第1凹部31aは、第1操作軸32の回動に伴って、第1操作軸32の中心軸回りに移動する。
第2凹部34aは、第2操作体34の第2操作軸35の外周面に設けられており、当該外周面から第2操作軸35の中心軸に向けて略円錐状に凹んでいる。第2凹部34aは、第2操作軸35の回動に伴って、第2操作軸35の中心軸回りに移動する。
【0093】
球体61は、第1操作軸32と第2操作軸35の間に配置されている。球体61は、ミッションケース7の左壁部7b内の上部に形成された空間(図示略)に収容されている。球体61は、第1操作軸32の中心軸回りの回動に伴って、第1凹部31aに嵌まり込み又は第1凹部31aから離脱することができる。球体61は、第2操作軸35の中心軸回りの回動に伴って、第2凹部34aに嵌まり込み又は第2凹部34aから離脱することができる。
【0094】
図20〜
図23に示すように、第1操作軸32及び第2操作軸35がそれぞれ回動することによって、第1凹部31aと第2凹部34aとの位置関係が変化する。これによって、球体61が、第1凹部31aと第2凹部34aの両方又はいずれか一方に嵌まり込む。
第1アーム33の先端部33aが第1中立位置(
図10の実線位置)にあり、第2アーム36の先端部36aが第2中立位置(
図10の実線位置)にあるとき、第1凹部31aと第2凹部34aとは互いに対向する位置にある(
図20参照)。このとき、球体61が、第1凹部31aと第2凹部34aの両方に嵌まり込む。この状態では、第1操作軸32及び第2操作軸35と球体61との間に僅かな隙間が形成され、第1操作軸32と第2操作軸35のいずれか一方の回動のみが許容される。
【0095】
図21は、
図20の状態から操作レバー12を操作して第1操作軸32を一方向に回動することにより、第1アーム33の先端部33aを第1回転モード位置(
図10の二点鎖線位置)に移動させた状態を示している。この状態では、球体61は、第1凹部31aから離脱し、第2凹部34aに密接して嵌まり込む。そのため、第1操作軸32の回動が許容され且つ第2操作軸35の回動が阻止される。
【0096】
図22は、
図20の状態から操作レバー12を操作して第1操作軸32を他方向に回動することにより、第1アーム33の先端部33aを第2回転モード位置(
図10の一点鎖線位置)に移動させた状態を示している。この状態でも、球体61は、第1凹部31aから離脱し、第2凹部34aに密接して嵌まり込む。そのため、第1操作軸32の回動が許容され且つ第2操作軸35の回動が阻止される。
【0097】
図23は、
図20の状態から操作レバー12を操作して第2操作軸35を回動することにより、第2アーム36の先端部36aを第3回転モード位置(
図11の一点鎖線位置)に移動させた状態を示している。この状態では、球体61は、第2凹部34aから離脱し、第1凹部31aに密接して嵌まり込む。そのため、第2操作軸35の回動が許容され且つ第1操作軸32の回動が阻止される。
【0098】
上述したように、インターロック機構60によれば、第1操作軸32と第2操作軸35とが同時に回動することが阻止される。そのため、第1シフトフォーク22と第2シフトフォーク23とが同時に切り換え操作されることが防止される。
インターロック機構60は、フォークロッド26やシフトフォーク(第1シフトフォーク22、第2シフトフォーク23)ではなく、第1操作軸32及び第2操作軸35の動作を規制するように構成されている。これにより、インターロック機構60の配置がフォークロッド26やシフトフォークの近傍に制限されることがない。例えば、インターロック機構60を、ミッションケース7の内部にて、フォークロッド26から離間した壁部の近傍に配置することが可能となる。そのため、ミッションケース7の内部に他の構成要素(操作軸やアーム等)を配置するためのスぺースを確保し易くなり、ミッションケース7の内部空間を有効に利用することができる。
【0099】
<第1保持機構、第2保持機構>
図8、
図9、
図20〜
図23に示すように、変速装置10は、第1保持機構62及び第2保持機構63を備えている。
第1保持機構62は、第1操作軸32の軸回りの回動位置を所定位置に保持する。
第1保持機構62は、第1操作体31に設けられた第1窪み部31bと、第1付勢体64と、第1球体65と、を含んでいる。
第1窪み部31bは、第1操作体31の第1操作軸32の外周面に設けられており、当該外周面から第1操作軸32の中心軸に向けて略円錐状に窪んでいる。第1窪み部31bは、第1凹み部31aと同一円周上の異なる位置に設けられている。第1窪み部31bは、第1操作軸32の回動に伴って、第1操作軸32の中心軸回りに移動する。
【0100】
第1付勢体64は、第1収容体64aと第1ピン64bとを有している。第1収容体64aは、ミッションケース7の上壁部7cの左部に固定されている。第1収容体64aの内部には、スプリング(図示略)が収容されている。第1ピン64bは、第1収容体64aから下方に向けて突出している。第1ピン64bは、スプリングによって下方に向けて付勢されており、スプリングの伸縮によって第1収容体64aからの突出量が変化する。第1球体65は、ミッションケース7の左壁部7b内の上部に形成された空間(図示略)に収容されている。第1球体65は、第1ピン64bの先端面に当接しており、第1ピン64bによって下方に付勢されている。これにより、第1球体65は、第1操作軸32の外周面に押し付けられた状態で当接している。
【0101】
図21に示すように、第1球体65は、第1アーム33の先端部33aが第1回転モード位置(
図10の二点鎖線位置)にあるとき、第1窪み部31bに嵌まり込む。そのため、第1操作軸32の軸回りの回動位置が保持される(位置決めされる)。これにより、変速機構9による変速状態が第1回転モードに保持される。
また、図示していないが、第1操作軸32の外周面に、第1窪み部31bとは別の窪み部を設けることができる。この別の窪み部は、第1窪み部31bと同一円周上の異なる位置であって、第1アーム33の先端部33aが第2回転モード位置(
図10の一点鎖線位置)にあるときに第1球体65が嵌まり込む位置に設けられる。これにより、変速機構9による変速状態を第2回転モードに保持することができる。
【0102】
第2保持機構63は、第2操作軸35の軸回りの回動位置を所定位置に保持する。
第2保持機構63は、第2操作体34に設けられた第2窪み部34bと、第2付勢体66と、第2球体67と、を含んでいる。
第2窪み部34bは、第2操作体34の第2操作軸35の外周面に設けられており、当該外周面から第2操作軸35の中心軸に向けて略円錐状に窪んでいる。第2窪み部34bは、第2凹み部34aと同一円周上の異なる位置に設けられている。第2窪み部34bは、第2操作軸35の回動に伴って、第2操作軸35の中心軸回りに移動する。
【0103】
図3に示すように、第2付勢体66は、第1付勢体64の前方に配置されている。
図20〜
図23に示すように、第2付勢体66は、第2収容体66aと第2ピン66bとを有している。第2収容体66aは、ミッションケース7の上壁部7cの左部に固定されている。第2収容体66aの内部には、スプリング(図示略)が収容されている。第2ピン66bは、第2収容体66aから下方に向けて突出している。第2ピン66bは、スプリングによって下方に向けて付勢されており、スプリングの伸縮によって第2収容体66aからの突出量が変化する。第2球体67は、ミッションケース7の左壁部7b内の上部に形成された空間(図示略)に収容されている。第2球体67は、第2ピン66bの先端面に当接しており、第2ピン66bによって下方に付勢されている。これにより、第2球体67は、第2操作軸35の外周面に押し付けられた状態で当接している。
【0104】
図23に示すように、第2球体67は、第2アーム36の先端部36aが第3回転モード位置(
図11の二点鎖線位置)にあるとき、第2窪み部34bに嵌まり込む。そのため、第2操作軸35の軸回りの回動位置が保持される(位置決めされる)。これにより、変速機構9による変速状態が第3回転モードに保持される。
上述したように、第1保持機構62及び第2保持機構63によって、第1操作軸32及び第2操作軸35の軸回りの回動位置を所定位置に保持することができる。また、第1保持機構62及び第2保持機構63が操作軸(第1操作軸32、第2操作軸35)を保持するように構成されているため、第1保持機構62及び第2保持機構63をシフトフォーク26から離間した位置(例えば、ミッションケース7の壁部の近傍)に配置することができ、ミッションケース7の内部空間を有効に利用することが可能となる。また、第1保持機構62及び第2保持機構63をインターロック機構60の近傍に配置できるため、変速機構7の小スペース化が可能となる。
【0105】
<効果>
以下、本実施形態に係る変速装置の効果について説明する。
<主に切換機構30に関する効果>
変速装置10は、エンジンE1からの回転動力を変速して出力軸に伝達する変速機構9と、変速機構を内部に収容するケース(ミッションケース)7と、ケース7の外部に設けられた操作レバー12と、変速機構9を第1変速状態に切り換える第1シフトフォーク22と、変速機構9を第2変速状態に切り換える第2シフトフォーク23と、ケース7の外部に突出する第1突出部32aを有し且つ第1シフトフォーク22を操作する第1操作機構24と、ケース7の外部に突出する第2突出部35aを有し且つ第2シフトフォーク23を操作する第2操作機構25と、操作レバー12を、第1突出部32aに接続される第1接続状態と、第2突出部35aに接続される第2接続状態とに切り換え可能であって且つケース8の外部に設けられた切換機構30と、を備えている。
【0106】
この構成によれば、操作レバー12の操作に基づいて変速機構9を切り換える切換機構30を、ケース7の外部に突出する操作機構(第1操作機構24、第2操作機構25)の突出部(第1突出部32a、第2突出部35a)と接続することによって、ケース7の外部に設けている。これにより、切換機構30を配置するためのスペースをケース7の内部に必要としない。そのため、ケース7の内部空間を小さくすることができ、ケース7を小型化することが可能となる。
【0107】
また、第1シフトフォーク22及び第2シフトフォーク23を軸方向に移動可能に支持するフォークロッド26を備え、第1操作機構24は、第1突出部32aを有し且つ第1接続状態において操作レバー12により操作される第1操作軸32と、第1操作軸32の操作に伴って第1シフトフォーク22をフォークロッド26に沿って移動させる第1アーム33と、を有し、第2操作機構25は、第2突出部35aを有し且つ第2接続状態において操作レバー12により操作される第2操作軸35と、第2操作軸35の操作に伴って第2シフトフォーク23をフォークロッド26に沿って移動させる第2アーム36と、を有している。
この構成によれば、1本のフォークロッド26により2つのシフトフォーク(第1シフトフォーク22、第2シフトフォーク23)を移動可能に支持するため、2つのシフトフォークをそれぞれ別のフォークロッドで支持する場合に比べて、小さいスペースでの配置が可能となる。
【0108】
また、切換機構30は、第1操作軸32と連動する第1連動部43と、第2操作軸35と連動する第2連動部44と、操作レバー12の操作に伴って、第1連動部43と接続される第1接続位置と、第2連動部44と接続される第2接続位置とに移動する移動部材45と、を有している。
この構成によれば、操作レバー12と切換機構30による切り換え操作を、簡易な構造で確実に実行することができる。
【0109】
また、第1連動部43は、第1操作軸32に接続されて第1操作軸32と共に回転する第1回転部46と、第1回転部46に設けられた第1突起47と、を有し、第2連動部44は、第2操作軸35に接続されて第2操作軸35と共に回転する第2回転部48と、第2回転部48に設けられた第2突起49と、を有し、移動部材45は、第1接続位置において第1突起47が挿入される第1挿入部45aと、第2接続位置において第2突起49が挿入される第2挿入部45bと、を有している。
【0110】
この構成によれば、第1連動部43及び第2連動部44の動きと移動部材45の動きとを、容易に且つ確実に連動させることができる。
切換機構30は、操作レバー12の第1方向への揺動操作の支点となる第1支軸41と、操作レバー12の第2方向への揺動操作の支点となる第2支軸42と、操作レバー12を第1支軸41の軸心回り及び第2支軸42の軸心回りに揺動可能に支持する支持部材50と、を有し、移動部材45は、支持部材50に接続されて支持部材50と共に第1方向又は第2方向に選択的に移動可能である。
【0111】
この構成によれば、操作レバー12の第1方向又は第2方向への揺動操作を、支持部材50を介して移動部材45に伝達し、移動部材45を第1方向又は第2方向へと選択的に移動させることができる。
また、出力軸11がPTO軸であり、変速機構9は、エンジンE1からの回転動力を変速してPTO軸に伝達する。
この構成によれば、エンジンE1からの回転動力を変速してPTO軸に伝達するPTO軸の変速装置において、ケース7の内部空間を小さくすることができ、ケース7を小型化することが可能となる。
【0112】
<主に第1シフトフォーク22、第2シフトフォーク23に関する効果>
変速装置10は、エンジンE1からの回転動力を変速して出力軸11に伝達する変速機構9と、変速機構9を第1変速状態に切り換える第1シフトフォーク22と、変速機構9を第2変速状態に切り換える第2シフトフォーク23と、第1シフトフォーク22及び第2シフトフォーク23を軸方向に移動可能に支持するフォークロッド26と、第1シフトフォーク22を操作する第1操作体31と、第2シフトフォーク23を操作する第2操作体34と、を備え、第1シフトフォーク22は、フォークロッド26に支持される第1支持部22bと、第1操作体31と係合される第1係合部22cと、を有し、第2シフトフォーク23は、フォークロッド27に支持される第2支持部23bと、第2操作体34と係合される第2係合部23cと、を有し、第1支持部22bと第2支持部23bは前記軸方向に並んで配置され、第1係合部22cと第2係合部23cは前記軸方向と交差する方向にずれた位置に配置されて前記軸方向にオーバーラップ可能である。
【0113】
この構成によれば、1本のフォークロッド26により第1シフトフォーク22及び第2シフトフォーク23を軸方向に移動可能に支持しつつ、2つのシフトフォーク(第1シフトフォーク22、第2シフトフォーク23)を互いの干渉を回避して接近させて配置することができる。そのため、フォークロッド26を配置するためのスペースを小さくすることができる。
【0114】
また、第1操作体31は、第1係合部22cと係合する第1アーム33と、軸回りに回転することによって第1アーム33を揺動させて第1シフトフォーク22をフォークロッド26に沿って移動させる第1操作軸32と、を有し、第2操作体34は、第2係合部23cと係合する第2アーム36と、軸回りに回転することによって第2アーム36を揺動させて第2シフトフォーク23をフォークロッド26に沿って移動させる第2操作軸35と、を有している。
【0115】
この構成によれば、第1操作体31及び第2操作体34の操作によって、第1シフトフォーク22及び第2シフトフォーク23をフォークロッド26に沿って確実に移動させることができる。
また、第1操作軸32は、第1アーム33が取り付けられる第1取付部32bを有し、第2操作軸35は、第2アーム36が取り付けられる第2取付部35bを有し、第1取付部32bと第2取付部35bとはフォークロッド26の軸方向Xと交差する方向においてずれた位置に配置されている。
【0116】
この構成によれば、第1アーム33と第2アーム36とをフォークロッド26の軸方向Xに接近させて配置した場合でも、第1アーム33と第2アーム36とが揺動によって互いに干渉することが回避される。
また、第1操作体31と第1係合部22cとの係合と、第2操作体34と第2係合部23cとの係合とが、第1シフトフォーク22と第2シフトフォーク23のいずれを操作した場合においても解除されずに維持される。
【0117】
この構成によれば、第1操作体31及び第2操作体34によって、シフトフォーク(第1シフトフォーク22、第2シフトフォーク23)の操作(移動)を確実に行わせることができる。
また、第2シフトフォーク23は、第1シフトフォーク22に接近する方向に移動したときに第1シフトフォーク22との干渉を回避するための凹み部23gを有している。
【0118】
この構成によれば、第2シフトフォーク23が第1シフトフォーク22に接近する方向に移動したときに、第1シフトフォーク22と干渉することが回避されるため、第1シフトフォーク22と第2シフトフォーク23とを接近させて小さいスペースで配置することができる。
また、出力軸11がPTO軸であり、変速機構9は、エンジンE1からの回転動力を変速してPTO軸に伝達する。
この構成によれば、エンジンE1からの回転動力を変速してPTO軸に伝達するPTO軸の変速装置において、フォークロッド26を配置するためのスペースを小さくすることができる。
【0119】
<主にインターロック機構60に関する効果>
変速装置10は、エンジンからの回転動力を変速して出力軸に伝達する変速機構9と、変速機構9を第1変速状態に切り換える第1シフトフォーク22と、変速機構9を第2変速状態に切り換える第2シフトフォーク23と、第1シフトフォーク22及び第2シフトフォーク23を軸方向に移動可能に支持するフォークロッド26と、第1シフトフォーク22をフォークロッド26に沿って移動操作する第1操作体31と、第2シフトフォーク23をフォークロッド26に沿って移動操作する第2操作体34と、第1操作体31及び第2操作体34の同時操作を防止することにより、第1シフトフォーク22と第2シフトフォーク23が同時に切り換え操作されることを防止するインターロック機構60と、を備えている。
この構成によれば、インターロック機構60が第1操作軸32及び第2操作軸35の動作を規制するように構成されているため、インターロック機構60の配置がフォークロッド26やシフトフォーク(第1シフトフォーク22、第2シフトフォーク23)の近傍に制限されることがない。そのため、インターロック機構の配置の自由度を大きくすることができる。
【0120】
また、変速機構9を内部に収容するケース7と、ケース7の外部に設けられた操作レバー12と、を備え、第1シフトフォーク22は、第1操作体31と係合される第1係合部22cを有し、第2シフトフォーク23は、第2操作体34と係合される第2係合部23cを有し、第1操作体31は、第1係合部22cと係合する第1アーム33と、軸回りに回転することによって第1アーム33をフォークロッド26に沿って移動させる第1操作軸32と、を有し、第2操作体34は、第2係合部23cと係合する第2アーム36と、軸回りに回転することによって第2アーム36をフォークロッド26に沿って移動させる第2操作軸35と、を有し、第1操作軸32及び第2操作軸35は、ケース7の外部に突出して操作レバー12と接続され、且つ操作レバー12の揺動操作によって軸回りに回動し、インターロック機構60は、第1操作軸32及び第2操作軸35の同時回動を防止する。
【0121】
この構成によれば、インターロック機構60が、ケース7の外部に突出して操作レバー12と接続される操作軸(第1操作軸32、第2操作軸35)の同時回動を防止することから、インターロック機構60をケース7の内部空間において外部寄りの位置に配置することができる。そのため、インターロック機構60とは別の構成要素をケース7の内部空間に配置し易くなり、ケース7の内部空間を有効利用することができる。
【0122】
また、第1操作軸32の軸回りの回動位置を所定位置に保持する第1保持機構62と、第2操作軸35の軸回りの回動位置を所定位置に保持する第2保持機構63と、を備え、第1保持機構62は第1操作軸32に当接し、第2保持機構63は第2操作軸36に当接する。
この構成によれば、第1保持機構62及び第2保持機構63によって、第1操作軸32及び第2操作軸35の軸回りの回動位置を所定位置に保持することができる。また、第1保持機構62及び第2保持機構63をインターロック機構60の近傍に配置できるため、変速機構7の小スペース化が可能となる。
【0123】
また、出力軸11がPTO軸であり、変速機構9は、エンジンE1からの回転動力を変速してPTO軸に伝達する。
この構成によれば、エンジンE1からの回転動力を変速してPTO軸に伝達するPTO軸の変速装置において、インターロック機構60の配置がフォークロッド26やシフトフォーク(第1シフトフォーク22、第2シフトフォーク23)の近傍に制限されることがない。
【0124】
以上、本発明について説明したが、今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。