【文献】
CHERUKUVADA S.et al.,Eutectics as improved pharmaceutical materials:design,properties and characterization,Chem.Commun.,2014年,Vol.50,p.906-923,906ページ左欄8行−右欄5行
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
リドカインと他の局所麻酔薬の混合物を5重量%以上20重量%未満で含有する粘着層から形成された貼付剤であって、前記粘着層中に少なくともゴム系粘着剤および流動パラフィンを含有し、流動パラフィンがゴム系粘着剤に対して0.5重量倍以上2.6重量倍以下であり、且つ前記粘着層中の粘着付与剤の含量が10重量%以下であり、前記他の局所麻酔薬が、芳香環、アルキル鎖、アミノ基からなる基本骨格を有し、且つ芳香環とアルキル鎖がエステル結合もしくはアミド結合にて結ばれた構造を有し、前記ゴム系粘着剤がスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体とスチレン−イソプレンブロック共重合体の混合物である、貼付剤。
スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体とスチレン−イソプレンブロック共重合体の混合物中のスチレン−イソプレン−スチレン共重合体の含量が15重量%以上60重量%以下である請求項1から3の何れか一項に記載の貼付剤。
スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体とスチレン−イソプレンブロック共重合体の混合物中のスチレン−イソプレン−スチレン共重合体の含量が20重量%以上50重量%以下である請求項1から3の何れか一項に記載の貼付剤。
ゴム系粘着剤がスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体とスチレン−イソプレンブロック共重合体の混合物であり、ゴム系粘着剤の重量に対する流動パラフィンの重量をy、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体とスチレン−イソプレンブロック共重合体の混合物中のスチレン−イソプレン−スチレン共重合体の重量%をx、自然対数の底をeとした時、0.48e0.022x−0.4≦y≦e0.021x+0.4(ただし、0.5≦y≦2.6)の指数関数で表される請求項1に記載の貼付剤。
ゴム系粘着剤がスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体とスチレン−イソプレンブロック共重合体の混合物であり、ゴム系粘着剤の重量に対する流動パラフィンの重量をy、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体とスチレン−イソプレンブロック共重合体の混合物中のスチレン−イソプレン−スチレン共重合体の重量%をx、自然対数の底をeとした時、0.48e0.022x−0.2≦y≦e0.021x+0.2(ただし、0.5≦y≦2.6)の指数関数で表される請求項1に記載の貼付剤。
ゴム系粘着剤がスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体とスチレン−イソプレンブロック共重合体の混合物であり、ゴム系粘着剤の重量に対する流動パラフィンの重量をy、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体とスチレン−イソプレンブロック共重合体の混合物中のスチレン−イソプレン−スチレン共重合体の重量%をx、自然対数の底をeとした時、0.48e0.022x≦y≦e0.021x(ただし、0.5≦y≦2.6)の指数関数で表される請求項1に記載の貼付剤。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、医薬品として実用的な粘着力、凝集力を有し、且つ速効性の麻酔作用を示す貼付剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、粘着付与剤が10重量%以下のゴム系の粘着層に「リドカインと他の局所麻酔薬」を薬物として含有させることで、薬物の皮膚透過性の極めて優れる貼付剤が実現できることを明らかにした。通常、ゴム系粘着剤を用いた場合、粘着付与剤の含有量が少ないと、医薬品として十分な粘着力を有する製剤を実現するのは困難である。しかしながら驚くべきことに、本発明者らは「リドカインと他の局所麻酔薬の混合物」が粘着力の維持、向上に寄与することを見出し、これにより製剤の粘着力、凝集力が十分に高い、速効性の局所麻酔製剤を完成させるに至った。即ち、発明の要旨は以下である。
【0011】
(1) リドカインと他の局所麻酔薬の混合物を5重量%以上20重量%未満で含有する粘着層から形成された貼付剤であって、前記粘着層中に少なくともゴム系粘着剤および流動パラフィンを含有し、且つ前記粘着層中の粘着付与剤の含量が10重量%以下である貼付剤。
(2) 流動パラフィンがゴム系粘着剤に対して0.5重量倍以上2.6重量倍以下である(1)に記載の貼付剤。
(3) 流動パラフィンがゴム系粘着剤に対して0.6重量倍以上2.0重量倍以下である(1)に記載の貼付剤。
(4) 流動パラフィンがゴム系粘着剤に対して0.7重量倍以上1.5重量倍以下である(1)に記載の貼付剤。
(5) ゴム系粘着剤が、スチレン系ブロック共重合体である(1)〜(4)のいずれか一に記載の貼付剤。
(6) ゴム系粘着剤がスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体とスチレン−イソプレンブロック共重合体の混合物である(5)に記載の貼付剤。
(7) スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体とスチレン−イソプレンブロック共重合体の混合物中のスチレン−イソプレン−スチレン共重合体の含量が15重量%以上60重量%以下である(6)に記載の貼付剤。
(8) スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体とスチレン−イソプレンブロック共重合体の混合物中のスチレン−イソプレン−スチレン共重合体の含量が20重量%以上50重量%以下である(6)に記載の貼付剤。
【0012】
(9) 流動パラフィンがゴム系粘着剤に対して2.0重量倍以上6.0重量倍以下である(1)に記載の貼付剤。
(10) 流動パラフィンがゴム系粘着剤に対して2.3重量倍以上5.5重量倍以下である(1)に記載の貼付剤。
(11) 流動パラフィンがゴム系粘着剤に対して2.6重量倍以上5.0重量倍以下である(1)に記載の貼付剤。
(12) ゴム系粘着剤が、スチレン系ブロック共重合体である(9)〜(11)の何れか一に記載の貼付剤。
(13) ゴム系粘着剤がスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体とスチレン−イソプレンブロック共重合体の混合物である(12)に記載の貼付剤。
(14) スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体とスチレン−イソプレンブロック共重合体の混合物中のスチレン−イソプレン−スチレン共重合体の含量が60重量%以上95重量%以下である(13)に記載の貼付剤。
(15) スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体とスチレン−イソプレンブロック共重合体の混合物中のスチレン−イソプレン−スチレン共重合体の含量が70重量%以上90重量%以下である(13)に記載の貼付剤。
【0013】
(16) ゴム系粘着剤がスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体とスチレン−イソプレンブロック共重合体の混合物であり、ゴム系粘着剤の重量に対する流動パラフィンの重量をy、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体とスチレン−イソプレンブロック共重合体の混合物中のスチレン−イソプレン−スチレン共重合体の重量%をx、自然対数の底をeとした時、0.48e
0.022x−0.4≦y≦e
0.021x+0.4の指数関数で表される(1)に記載の貼付剤。
(17) ゴム系粘着剤がスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体とスチレン−イソプレンブロック共重合体の混合物であり、ゴム系粘着剤の重量に対する流動パラフィンの重量をy、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体とスチレン−イソプレンブロック共重合体の混合物中のスチレン−イソプレン−スチレン共重合体の重量%をx、自然対数の底をeとした時、0.48e
0.022x−0.2≦y≦e
0.021x+0.2の指数関数で表される(1)に記載の貼付剤。
(18) ゴム系粘着剤がスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体とスチレン−イソプレンブロック共重合体の混合物であり、ゴム系粘着剤の重量に対する流動パラフィンの重量をy、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体とスチレン−イソプレンブロック共重合体の混合物中のスチレン−イソプレン−スチレン共重合体の重量%をx、自然対数の底をeとした時、0.48e
0.022x≦y≦e
0.021xの指数関数で表される(1)に記載の貼付剤。
【0014】
(19) 他の局所麻酔薬がプリロカイン、テトラカインまたはベンゾカインである、(1)〜(18)の何れか一に記載の貼付剤。
(20) リドカインと他の局所麻酔薬の混合物中のリドカイン含量が30重量%以上70重量%以下である(19)記載の貼付剤。
(21) リドカインと他の局所麻酔薬の混合物中のリドカイン含量が40重量%以上60重量%以下である(19)記載の貼付剤。
(22) リドカインと他の局所麻酔薬の混合物中のリドカイン含量が45重量%以上55重量%以下である(19)記載の貼付剤。
(23) リドカインと他の局所麻酔薬の混合物の重量比が50/50である(19)に記載の貼付剤。
(24) リドカインと他の局所麻酔薬の混合物の含有量が、粘着剤成分全量に対して5重量%以上15%重量未満である(19)〜(23)のいずれか一に記載の貼付剤。
(25) 粘着層中に粘着付与剤を含まない(1)〜(24)のいずれか一に記載の貼付剤。
【0015】
(26) 局所麻酔剤として使用する、(1)〜(25)のいずれか一に記載の貼付剤。
(27) 鎮痛剤又は疼痛治療剤として使用する、(1)〜(26)のいずれか一に記載の貼付剤。
(28) 神経障害性疼痛治療剤として使用する、(27)に記載の貼付剤。
(29) 帯状疱疹後神経痛治療剤として使用する、(27)に記載の貼付剤。
【0016】
(30) (1)〜(29)のいずれか一に記載の貼付剤を、局所麻酔を必要とする患者の患部に貼り付ける工程を含む、局所麻酔方法。
(31) (1)〜(29)のいずれか一に記載の貼付剤を、鎮痛又は疼痛治療を必要とする患者の患部に貼り付ける工程を含む、鎮痛又は疼痛治療のための方法。
(32) 疼痛が、神経障害性疼痛である、(31)に記載の方法。
(33) 疼痛が、帯状疱疹後神経痛である、(31)に記載の方法。
【0017】
(34) 局所麻酔剤の製造のための、(1)〜(29)のいずれか一に記載の貼付剤の使用。
(35) 鎮痛剤又は疼痛治療剤の製造のための、(1)〜(29)のいずれか一に記載の貼付剤の使用。
(36) 疼痛治療剤が、神経障害性疼痛治療剤である、(35)に記載の使用。
(37) 疼痛治療剤が、帯状疱疹後神経痛治療剤である、(35)に記載の使用。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、麻酔効果の速効性を実現できる局所麻酔のための貼付剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明について詳細に記載する。本発明の貼付剤は、好ましくは、支持体と該支持体上に設けられた少なくとも1層の粘着剤層を有している。
【0021】
本発明における粘着剤層は、(a)薬物として、リドカインと他の局所麻酔薬の混合物を含み、少なくともさらに(b)ゴム系粘着剤および(c)流動パラフィンを含有している。
【0022】
(a)リドカインと他の局所麻酔薬の混合物
本発明に用いることのできるリドカインは、フリー体のリドカインであっても、薬学的に許容されるリドカインの塩であってもよい。薬学的に許容される塩は特に限定されず、無機塩であっても有機塩であってもよい。リドカインの無機塩としては、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩などが挙げられ、有機酸塩としては、ギ酸塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、プロピオン酸塩、乳酸塩、酒石酸塩、シュウ酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、クエン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩等が挙げられる。入手のしやすさの観点から、フリー体のリドカイン又はリドカイン塩酸塩を用いるのが好ましく、粘着剤への分散性の観点から、フリー体のリドカインを用いることが特に好ましい。
【0023】
本発明に用いることのできる他の局所麻酔薬は、芳香環、アルキル鎖、アミノ基からなる基本骨格を有し、且つ芳香環とアルキル鎖がエステル結合もしくはアミド結合にて結ばれた構造のものであれば特に限定されない。このような他の局所麻酔薬としては例えば、プリロカイン、テトラカイン、ベンゾカイン、ブピバカイン、メピバカイン等が挙げられる。前記した他の局所麻酔薬は、室温では固体で存在するが、同じく固体のリドカインと混合することで融点が低下し、常温にて液状化する局所麻酔薬を好ましくは用いることができる。
【0024】
リドカインと他の局所麻酔薬の混合物として好ましくは、リドカイン−プリロカインの混合物、リドカイン−テトラカインの混合物、リドカイン−ベンゾカインの混合物であり、より好ましくはリドカイン−プリロカインの混合物、リドカイン−テトラカインの混合物である。
【0025】
リドカインと他の局所麻酔薬の混合物中のリドカイン含量としては、30重量%以上70重量%以下が好ましく、40重量%以上60重量%以下がより好ましく、45重量%以上55重量%以下がさらに好ましく、リドカインと他の局所麻酔薬の混合物の重量比が50/50であることが最も好ましい。
【0026】
リドカイン−プリロカインの混合物中のリドカイン含量としては、30重量%以上70重量%以下が好ましく、40重量%以上60重量%以下がより好ましく、45重量%以上55重量%以下がさらに好ましい。特に等重量比で混合することで融点低下が最大となることから、最も好ましくはリドカイン/プリロカイン=50/50(重量比)の混合物である。
【0027】
リドカイン−テトラカインの混合物中のリドカイン含量としては、30重量%以上70重量%以下が好ましく、40重量%以上60重量%以下がより好ましく、45重量%以上55重量%以下がさらに好ましい。最も好ましくはリドカイン/テトラカイン=50/50(重量比)の混合物である。
【0028】
リドカイン−ベンゾカインの混合物中のリドカイン含量としては、20重量%以上70重量%以下が好ましく、30重量%以上70重量%以下がより好ましく、40重量%以上60重量%以下でもよく、45重量%以上55重量%以下でもよい。最も好ましくはリドカイン/ベンゾカイン=30/70(重量比)の混合物である。
【0029】
本発明に用いることのできるプリロカインは、フリー体のプリロカインであっても、薬学的に許容されるプリロカインの塩であってもよい。薬学的に許容される塩は特に限定されず、前記リドカインで記載した塩が挙げられる。入手し易さの観点から、フリー体のプリロカイン又はプリロカイン塩酸塩を用いることが好ましく、粘着剤への分散性の観点からフリー体のプリロカインを用いることが特に好ましい。
【0030】
本発明に用いることのできるテトラカインは、フリー体のテトラカインであっても、薬学的に許容されるテトラカインの塩であってもよい。薬学的に許容される塩は特に限定されず、前記リドカインで記載した塩が挙げられる。入手し易さの観点から、フリー体のテトラカイン又はテトラカイン塩酸塩を用いることが好ましく、粘着剤への分散性の観点からフリー体のテトラカインを用いることが特に好ましい。
【0031】
本発明に用いることのできるベンゾカインは、フリー体のベンゾカインであっても、薬学的に許容されるベンゾカインの塩であってもよい。薬学的に許容される塩は特に限定されず、前記リドカインで記載した塩が挙げられる。入手し易さの観点から、フリー体のベンゾカイン又はベンゾカイン塩酸塩を用いることが好ましく、粘着剤への分散性の観点からフリー体のベンゾカインを用いることが特に好ましい。
【0032】
リドカインと他の局所麻酔薬の混合物をゴム系粘着剤に配合させることで、粘着付与剤の含量が少なくとも医薬品として十分な粘着性が得られる。
【0033】
リドカインと他の局所麻酔薬の混合物の配合量は、十分な薬効を得るため、粘着剤成分全量に対して5重量%以上が好ましい。さらに好ましくは7重量%以上である。一方、凝集力を確保するための観点から、上限として20重量%未満が好ましい。より好ましくは15重量%未満であり、さらに好ましくは12重量%未満であり、最も好ましくは10重量%以下である。尚、本明細書中の「粘着剤成分」とは、粘着剤層を構成する成分を意味する。粘着剤成分全量とは、製剤全体から支持体とライナーを除いたものを言う。
【0034】
リドカインと他の局所麻酔薬の混合物の配合量は、上記の中でも、好ましくは、5重量%以上20重量%未満であり、さらに好ましくは5重量%以上15重量%未満であり、特に好ましくは5重量%以上12重量%未満であり、最も好ましくは7重量%以上12重量%未満である。
【0035】
(b)ゴム系粘着剤
本発明の貼付剤に用いることができるゴム系粘着剤は特に限定されないが、例えば、スチレン系ブロック共重合体、ポリイソブチレン、天然ゴム、ブチルゴム、ポリイソプレン及びポリブテン等が挙げられる。
【0036】
特に、本発明の目的である十分な薬物放出性、凝集性および粘着性を満足させる観点から、特に、スチレン系ブロック共重合体が好ましい。スチレン系ブロック共重合体としては、具体的にはスチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソプレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−エチレン/ブチレンブロック共重合体、スチレン−エチレン/ブチレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−エチレン/プロピレンブロック共重合体、スチレン−エチレン/プロピレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソブチレンブロック共重合体、スチレン−イソブチレン−スチレンブロック共重合体などが挙げられる。なお、前記において、「エチレン/ブチレン」はエチレンおよびブチレンの共重合体ブロックを示し、「エチレン/プロピレン」はエチレンおよびプロピレンの共重合体ブロックを示す。これらスチレン系ブロック共重合体は、1種のみを用いても、2種以上を組合せて用いてもよい。
【0037】
上記スチレン系ブロック共重合体のうち、入手性の観点から、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体およびスチレン−イソプレンブロック共重合体からなる群より選択される1種または2種が好ましく用いられる。特に好ましくは、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体とスチレン−イソプレンブロック共重合体の混合物である。
【0038】
本発明のある例においては、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体に対するスチレン−イソプレンブロック共重合体の混合比率が低いと皮膚粘着性が低下する傾向となり、高いと粘着剤層の形状維持性が低下する傾向となるなどの不具合が生じる場合がある。
【0039】
本発明の一例においては、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体とスチレン−イソプレンブロック共重合体の混合物において、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の上限としては95重量%以下が好ましく、90重量%以下でもよく、80重量%以下でもよく、60重量%以下でもよく、50重量%以下でもよい。下限として好ましくは10重量%以上であり、15重量%以上でもよく、20重量%以上でもよく、50重量%以上でもよく、60重量%以上でもよく、70重量%以上でもよい。
【0040】
本発明の一例においては、好ましくは、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体とスチレン−イソプレン共重合体の混合物中のスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体含量が10重量%以上90重量%以下であり、さらに好ましくは15重量%以上60重量%以下であり、最も好ましくは20重量%以上50重量%以下である。
【0041】
本発明の別の例においては、好ましくは、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体とスチレン−イソプレン共重合体の混合物中のスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体含量が50重量%以上95重量%以下であり、さらに好ましくは60重量%以上95重量%以下であり、最も好ましくは70重量%以上90重量%以下である。
【0042】
スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体およびスチレン−イソプレン共重合体中のスチレン含有量は特に限定されないが、スチレン含量の下限として、5重量%以上が好ましく、特に好ましくは10重量%以上である。スチレン含量の上限として好ましくは50重量%以下であり、さらに好ましくは30重量%以下であり、最も好ましくは20重量%以下である。
【0043】
スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体およびスチレン−イソプレン共重合体中のスチレン含有量は、上記の中でも好ましくは、5重量%以上50重量%以下であり、さらに好ましくは10重量%以上30重量%以下であり、最も好ましくは10重量%以上20重量%以下である。
【0044】
スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体およびスチレン−イソプレンブロック共重合体は、それぞれ、公知の方法により製造した共重合体を用いることができるし、上記の特性を満たす市販の製品を使用することがきる。また、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体とスチレン−イソプレンブロック共重合体の混合物も市販されており、例えば、KRATON POLYMERS社製の「KRATON D1161」、「KRATON D1163」、「KRATON D1113」、「KRATON D1119」、JSR社製の「JSR 5229」、「JSR 5403」、「JSR 5505」、日本ゼオン社製の「Quinac 3620」「Quintac 3421」「Quintac3520」等が挙げられる。
【0045】
ゴム系粘着剤の含有量は、本発明の目的である十分な薬物放出性と凝集性および粘着性を損なわない範囲であれば特に限定されない。本発明の一例においては、ゴム系粘着剤の下限として好ましくは、粘着剤成分全量に対し15重量%以上であり、さらに好ましくは25重量%以上であり、特に好ましくは30重量%以上であり、最も好ましくは35重量%以上である。また、ゴム系粘着剤の上限として好ましくは、粘着剤成分全量に対して60重量%以下であり、さらに好ましくは55重量%以下であり、最も好ましくは50重量%以下である。
【0046】
本発明の一例においては、ゴム系粘着剤の含有量は、上記の中でも、30重量%以上55重量%以下の範囲が好ましく、さらに好ましくは35重量%以上50重量%以下である。
【0047】
(c)流動パラフィン
本発明で用いることのできる流動パラフィンは、特に限定されないが、市販のものを好適に用いることができる。
【0048】
本発明において用いる流動パラフィン含有量は、粘着剤の粘着性や薬物放出性など本発明の効果を損なわない範囲であれば特に限定されないが、流動パラフィンの下限としては、ゴム系粘着剤に対して0.5重量倍以上であることが好ましく、0.6重量倍以上でもよく、0.7重量倍以上でもよく、0.8重量倍以上でもよく、0.9重量倍以上でもよく、1.0重量倍以上でもよく、1.5重量倍以上でもよく、2.0重量倍以上でもよく、2.3重量倍以上でもよく、2.6重量倍以上でもよい。また流動パラフィンの上限としては、ゴム系粘着剤に対して、7.0重量倍以下であることが好ましく、6.0重量倍以下でもよく、5.5重量倍以下でもよく、5.0重量倍以下でもよく、3.0重量倍以下でもよく、2.6重量倍以下でもよく、2.0重量倍以下でもよく、1.7重量倍以下でもよく、1.6重量倍以下でもよく、1.5重量倍以下でもよい。
【0049】
一例においては、流動パラフィン含有量は、ゴム系粘着剤に対して、好ましくは、0.5重量倍以上2.6重量倍以下であり、より好ましくは0.6重量倍以上2.0重量倍以下であり、さらに好ましくは0.7重量倍以上1.7重量倍以下であり、特に好ましくは0.7重量倍以上1.6重量倍以下であり、最も好ましくは0.7重量倍以上1.5重量倍以下である。
【0050】
別の例においては、流動パラフィン含有量は、ゴム系粘着剤に対して、好ましくは、2.0重量倍以上6.0重量倍以下であり、より好ましくは2.3重量倍以上5.5重量倍以下であり、さらに好ましくは2.6重量倍以上5.0重量倍以下である。
【0051】
本発明の一例においては、粘着剤成分全量に対する流動パラフィン含量の下限としては、粘着剤成分全量に対して30重量%以上であることが好ましく、さらに好ましくは35重量%以上であり、最も好ましくは40重量%以上である。また、粘着剤成分全量に対する流動パラフィン含量の上限としては、粘着剤成分全量に対して70重量%以下であることが好ましく、さらに好ましくは65重量%以下であり、特に好ましくは60重量%以下であり、最も好ましくは55重量%以下である。
【0052】
本発明の一例においては、粘着剤成分全量に対する流動パラフィン含量は、上記の中でも、30重量%以上65重量%以下が好ましく、さらに好ましくは35重量%以上60重量%以下であり、最も好ましくは40重量%以上55重量%以下である。
【0053】
また、ゴム系粘着剤がスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体とスチレン−イソプレンブロック共重合体の混合物である場合、ゴム系粘着剤の重量に対する流動パラフィンの重量をy、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体とスチレン−イソプレンブロック共重合体の混合物中のスチレン−イソプレン−スチレン共重合体の重量%をx、自然対数の底をeとした時、0.48e
0.022x−0.4≦y≦e
0.021x+0.4の指数関数で表されることが好ましく、0.48e
0.022x−0.2≦y≦e
0.021x+0.2の指数関数で表されることがより好ましく、0.48e
0.022x≦y≦e
0.021xの指数関数で表されることがさらに好ましい。
なお、後記する実施例1〜17の貼付剤は、0.48e
0.022x≦y≦e
0.021xの指数関数を充足する。
【0054】
(d)粘着付与剤
上記粘着剤層中には粘着付与剤を添加しても良い。「粘着付与剤」とは、通常貼付剤の分野で汎用される粘着付与剤であり、例えばロジン系樹脂、ポリテルペン系樹脂、クマロン−インデン樹脂、石油系樹脂、テルペン−フェノール樹脂、脂環族飽和炭化水素樹脂等が挙げられる。粘着付与剤を大量に添加すると薬物の放出性が低下することから、粘着付与剤の含量は粘着剤成分全量に対し10重量%以下が好ましく、5重量%以下がさらに好ましく、粘着付与剤を全く含まないのが最も好ましい。
【0055】
(e)その他成分
本発明の貼付剤には、必要に応じて、(e1)界面活性剤、(e2)エステル類、(e3)アルコール類、(e4)抗酸化剤、(e5)充填剤等を含有させることが出きる。
【0056】
(e1)界面活性剤
界面活性剤としては、非イオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤を挙げることができる。
【0057】
非イオン系界面活性剤としては、例えば、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンセスキオレート、グリセロールモノオレエート、グリセロールモノステアレート、デカグリセリルモノラウレート、ヘキサグリセリンポリリシノレート、ポリオキシエチレン(9)ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン(2)ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン(4,2)ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン(5)ノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン(7,5)ノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン(10)ノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン(3)オクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン(10)オレイルアミン、ポリオキシ(5)オレイルアミン、ポリオキシ(5)オレイン酸アミド、ポリオキシエチレン(2)モノラウレート、ステアリン酸モノグリセリド、ポリオキシエチレンヒマシ油(硬化ヒマシ油)等が挙げられる。
【0058】
アニオン系界面活性剤としては、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸カリウム、ラウリル硫酸トリエタノールアミン、セチル硫酸ナトリウム、ラウロイルサルコシンナトリウム、ジ−2−エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム、ポリオキシエチレン(10)ラウリルエーテルリン酸ナトリウム、ポリオキシエチレン(4)ラウリルエーテルリン酸ナトリウム、ポリオキシエチレン(5)セチルエーテルリン酸ナトリウム、ポリオキシエチレン(6)オイレルエーテルリン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0059】
カチオン系界面活性剤としては、例えば、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ステアリルジメチルベンジルアンモニウム等が挙げられる。
【0060】
両性界面活性剤としては、例えば、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン等が挙げられる。上記以外のものとして、ラウロイルジエタノールアミドも使用可能である。中でも好ましくは非イオン系界面活性剤であり、さらに好ましくはソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンセスキオレート、グリセロールモノオレエート、グリセロールモノステアレートである。
【0061】
界面活性剤は、単独でも2種以上混合して使用してもよい。
【0062】
界面活性剤の含有量は特に限定されず、高い皮膚透過性および貼付剤として十分な凝集力、粘着力が維持できる範囲で含有させることができる。好ましくは粘着剤成分全量に対し、5重量%以下であり、さらに好ましくは3重量%以下である。
【0063】
界面活性剤を使用する場合、粘着剤層を構成するゴム系粘着剤及び/もしくは流動パラフィンに置換えて含有させることもできる。
【0064】
(e2)エステル類
エステル類としては、例えば、イソステアリン酸イソプロピル、ステアリン酸メチル、ステアリン酸ブチル、ミリスチン酸ブチル、リノール酸エチル、リノール酸イソプロピル、オリーブオレイン酸エチル、ミリスチン酸ミリスチル、イソクタン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、アジピン酸ジイソプロピル、パルミチン酸セチル、パルミチン酸レチノール、ラウリン酸メチル、ミリスチン酸メチル、カプロン酸メチル、パルミチン酸メチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、セバシン酸ジエチル、アジピン酸ジエチル等の脂肪酸一価アルコールエステル、例えば、モノオレイン酸グリセリン、モノカプリン酸グリセリン、ジオレイン酸グリセリン、モノステアリン酸プロピレングリコール、デカオレイン酸デカグリセリン等の脂肪酸多価アルコールエステル、例えば、モノステアリン酸ソルビタン、モノラウリン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、パルミチン酸アスコルビル等の脂肪酸環状多価アルコールエステル、例えば、乳酸セチル、乳酸ミリスチル等の乳酸エステル、例えば、炭酸プロピレン等の炭酸エステル、例えばN−メチル−2−ピロリドン等のピロリドン誘導体である。
【0065】
エステル類は、単独でも2種以上混合して使用してもよい。
エステル類の含有量は特に限定されず、高い皮膚透過性および貼付剤として十分な凝集力、粘着力が維持できる範囲で含有させることができる。中でも好ましくは粘着剤成分全量に対し55重量%以下であり、より好ましくは45重量%以下であり、さらに好ましくは35重量%以下であり、特に好ましくは25重量%以下であり、最も好ましくは15重量%以下である。
【0066】
エステル類を使用する場合、粘着剤層を構成するゴム系粘着剤及び/もしくは流動パラフィンに置換えて含有させることもできる。製剤の凝集性を確保する点から、流動パラフィンと置換えるのが好ましい。流動パラフィンのすべてをエステル類に置換えても良いし、一部を置換えても良い。
【0067】
(e3)アルコール類
アルコール類としては、例えばエタノール、イソプロパノール、ラウリルアルコール、2−オクチルドデカノール、2−ヘキシルデカノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、グリセリン等の脂肪族アルコール、例えばサリチル酸グリコール、ベンジルアルコール等の芳香族アルコールを挙げることができる。好ましいものとしては、脂肪族アルコールであり、さらに好ましくは、ラウリルアルコール、2−オクチルドデカノール、2−ヘキシルデカノール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール等を挙げることができる。アルコール類は、単独でも2種以上混合して使用してもよい。
【0068】
アルコール類の含有量は特に限定されず、高い皮膚透過性および貼付剤として十分な凝集力、粘着力が維持できる範囲で含有させることができる。中でも好ましくは粘着剤成分全量に対し55重量%以下であり、より好ましくは45重量%以下であり、さらに好ましくは35重量%以下であり、特に好ましくは25重量%以下であり、最も好ましくは15重量%以下である。
【0069】
アルコール類を使用する場合、粘着剤層を構成するゴム系粘着剤及び/もしくは流動パラフィンに置換えて含有させることもできる。製剤の凝集性を確保する点から、流動パラフィンと置換えるのが好ましい。流動パラフィンのすべてをアルコール類に置換えても良いし、一部を置換えても良い。
【0070】
(e4)抗酸化剤
抗酸化剤としては、例えばジブチルヒドロキシルトルエン、4−ジオキシフェノール、EDTA−2Na等が挙げることができる。中でも好ましくはジブチルヒドロキシルトルエンである。抗酸化剤は、単独でも2種以上混合して使用してもよい。
【0071】
抗酸化剤の含有量は特に限定されず、高い皮膚透過性および貼付剤として十分な凝集力、粘着力が維持できる範囲で含有させることができる。中でも好ましくは、粘着剤成分全量に対し、10重量%以下であり、さらに好ましくは5重量%以下であり、最も好ましくは2重量%以下である。
【0072】
抗酸化剤を使用する場合、粘着剤層を構成するゴム系粘着剤及び/もしくは流動パラフィンに置換えて含有させることもできる。
【0073】
(e5)充填剤
粘着剤層の柔軟性を制御するために充填剤を含有させることができる。
充填剤としては、例えば、カオリン、酸化チタン、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、珪酸塩、珪酸、アルミニウム水和物、硫酸バリウム、硫酸カルシウム等が挙げられる。充填剤は、単独でも2種以上混合して使用してもよい。
【0074】
充填剤の含有量は特に限定されず、高い皮膚透過性および貼付剤として十分な凝集力、粘着力が維持できる範囲で含有させることができる。中でも好ましくは、粘着剤成分全量に対して10重量%以下であり、さらに好ましくは5重量%以下であり、最も好ましくは2重量%以下である。
【0075】
充填剤を使用する場合、粘着剤層を構成するゴム系粘着剤及び/もしくは流動パラフィンに置換えて含有させることもできる。
【0076】
〔支持体〕
本発明で用いる支持体とは、特に限定されるものではなく一般的に用いられるものが使用できる。例えば、ポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリウレタンフィルム及びセロハンフィルムなどのプラスチックフィルム、発泡体、ポリエステル繊維、ポリエチレン繊維及びポリプロピレン繊維などからなる不織布、織布及び編布などの布基剤、これらの積層体などが挙げられる。これらの中でもポリエステルからなる材質の支持体が好ましく、伸縮性の点では不織布、織布及び編布が、使用性の面では透明性を有するフィルムが好ましい。
【0077】
〔貼付剤の製造に使用する粘着剤組成物の調製方法〕
本発明の貼付剤は、下記に説明する粘着剤組成物を用いて調製することができる。粘着剤組成物は、粘着剤の成分を混合撹拌することにより調製することができる。即ち、(a)リドカイン及び他の局所麻酔薬、(b)ゴム系粘着剤、(c)流動パラフィンを混合撹拌することにより粘着剤組成物を得ることができる。混合する順序は、例えば前記(a)〜前記(c)を逐次投入してもよいし、前記(b)と前記(c)をあらかじめ混合した後、前記(a)を混合してもよい。
【0078】
混合撹拌時は、均一に混合させやすい点で、加熱することが好ましい。加熱温度として好ましくは、50℃以上であり、さらに好ましくは70℃以上であり、最も好ましくは90℃以上である。粘着剤組成物の成分の変質や揮発を防ぐため、温度の上限として好ましくは170℃以下であり、さらに好ましくは150℃以下である。
【0079】
加熱温度は、上記の中でも好ましくは40℃以上170℃以下であり、さらに好ましくは70℃以上170℃以下であり、特に好ましくは70℃以上150℃以下であり、最も好ましくは90℃以上150℃以下である。
【0080】
また、粘着剤成分にさらに溶剤を添加して粘着剤溶液を調製し、貼付剤の作製に供することもできる。
【0081】
本発明に用いることのできる溶剤としては、粘着剤成分を溶解することのできる溶媒であれば特に限定されないが、トルエン、ヘキサン、ヘプタン、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸n−プロピルおよびN−メチル−2−ピロリドン等などの有機溶媒を好ましく用いることができる。溶解性や乾燥させやすい点でトルエン、ヘキサン、ヘプタン、酢酸エチル、酢酸イソプロピルを好ましく用いることができ、特に好ましくはトルエンである。
【0082】
混合攪拌時に溶剤を用いた場合、特に加熱することなく均一混合できるが、均一に早く混合させるため加熱しても良い。加熱温度として好ましくは30℃以上であり、さらに好ましくは40℃以上である。温度が高すぎると溶剤が揮発し易くなるため、好ましくは120℃以下であり、さらに好ましくは100℃以下であり、最も好ましくは90℃以下である。
【0083】
加熱温度は、上記の中でも好ましくは30℃以上120℃以下であり、さらに好ましくは40℃以上100℃以下であり、最も好ましくは40℃以上90℃以下である。
【0084】
〔貼付剤の作製方法〕
本発明の貼付剤の作製方法は、粘着剤層を支持体上に塗工する方法を好適に用いることができる。
【0085】
本発明の貼付剤を作製する方法としては、粘着テープと同様な方法が採用可能であり、例えば、粘着剤組成物を加熱溶融し支持体上に塗工するホットメルト塗工法や、粘着剤組成物を有機溶媒に溶解させた粘着剤溶液を、支持体上に塗工して乾燥する溶剤塗工法等が挙げられる。
【0086】
また、本発明の貼付剤の作製方法として、粘着剤組成物を一旦剥離紙上に塗工した後、剥離紙から剥離して支持体に転写密着させる方法、あるいは、剥離せず塗工面を支持体に転写密着させる方法も使用可能である。
【0087】
剥離紙は粘着剤層の保護を目的として使用され、粘着剤層からの容易な剥離性、通気性、通水性ならびに柔軟性などを考慮して、目的に応じて適宜選択することができる。好ましくはポリエチレン、ポリプロピレン及びポリエステル等の高分子材料からなるフィルムが使用され、剥離性を高めるためにフィルム表面をシリコン処理、又はフルオロカーボン処理して用いることもできる。
【0088】
本発明の貼付剤において、粘着剤層は、1層であっても2層以上の多層であってもよく、多層の場合は、少なくとも1層がリドカイン及び他の局所麻酔薬の混合物を含んでいればよい。
【0089】
本発明の貼付剤において、粘着剤層の厚みは、20μm以上2000μm以下が好ましく、更に好ましくは50μm以上1500μm以下であり、特に好ましくは100μm以上1000μm以下であり、最も好ましくは120μm以上600μm以下である。
【0090】
〔貼付剤の用途〕
本発明の貼付剤は、経皮吸収製剤として使用することができる。
本発明の貼付剤は、リドカインと他の局所麻酔薬を含有することから、局所麻酔剤として使用することができる。
また本発明の貼付剤は、リドカインと他の局所麻酔薬を含有することから、鎮痛剤又は疼痛治療剤として使用することもでき、好ましくは神経障害性疼痛治療剤として使用することができ、例えば、帯状疱疹後神経痛治療剤として使用することができる。
【実施例】
【0091】
以下に、本発明を実施例および試験例により更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、表1から表9における各成分の数値は質量部を示す。
【0092】
(評価方法)皮膚透過性の評価
除毛した雄性Wister系ラット(5週齢)の腹部抽出皮膚を縦型フランツ拡散セル(ビードレックス社製、型番:TP−8s)に装着し、実施例および比較例で作製した貼付剤を直径1.3cmの円形に打ち抜き、フランツ拡散セルのラット皮膚上に貼付した。バッファーとして5%エタノール含有0.01mol/Lリン酸緩衝生理食塩水(pH 7.2〜7.4)を用い、バッファー温度32℃で試験を行った。試験開始後、1時間後にバッファーの一部を抜き取り、バッファー中のラット皮膚を透過してきたリドカイン量およびプリロカイン量をHPLCにより定量した。リドカインとプリロカインの透過量の和を薬物透過量とし、既存のリドカイン貼付剤(祐徳薬品工業株式会社製、品名:ユーパッチ(R)テープ)を用いた場合の薬物透過量に対し、何倍の透過量であるかを評価した。
【0093】
(評価方法)凝集力
以下の視点で、貼付剤の凝集力を評価した。
○:糊残りは認められなかった。
△:やや凝集力が不足しているが、問題のない範囲であった。
×:糊残り、型崩れ等が認められ、凝集力不足が顕著であった。
【0094】
(評価方法)粘着性
以下の視点で、貼付剤の粘着性を評価した。
○:既存の局所麻酔貼付剤(リドカインテープ剤)と比較して高い粘着性を示した。
△:既存の局所麻酔貼付剤(リドカインテープ剤)よりやや低い粘着性であった。
×:剥がれが顕著であった。
【0095】
(実施例1)
5.40gのスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体とスチレン−イソプレン共重合体の混合物(スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体/スチレン−イソプレン共重合体の重量混合比=50/50)と、8.10gの流動パラフィンに9.45gのトルエンを投入し混合した後、内温50℃で120分間加熱撹拌して完全に溶解させて、20〜30℃に冷却した。次に、0.75gのリドカインと0.75gのプリロカインを順次添加し、同温で15時間以上混合攪拌し、均一な粘着剤溶液を得た。粘着剤溶液を、表面をシリコン処理された80μm厚のポリエチレンテレフタラート(PET)フィルムにアプリケーターを用いて塗工し、トルエンを熱風オーブンで60℃で120分以上乾燥除去し、乾燥後厚みが350〜450μm厚の粘着剤層を形成した後、粘着剤層の表面に、60μm厚のPETフィルムをラミネートし、目的の貼付剤(経皮吸収製剤)を作製した。粘着剤の成分とその重量比(%)を表1に示した。
【0096】
(実施例2及び3)
リドカイン、プリロカイン、SIS共重合体、流動パラフィンを、表1に示した比率で混合した以外は、実施例1と同様の方法で貼付剤を作製した。
【0097】
(実施例4)
1.60gのスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体/スチレン−イソプレン共重合体の重量混合比=50/50)と、1.60gの流動パラフィンに2.24gのトルエンを投入し混合した後、内温50℃で120分間加熱撹拌して完全に溶解させて、20〜30℃に冷却した。次に、0.40gの粘着付与剤、0.20gのリドカインと0.20gのプリロカインを順次添加し、同温で15時間以上混合攪拌し、均一な粘着剤溶液を得た。粘着剤溶液を、表面をシリコン処理された80μm厚のポリエチレンテレフタラート(PET)フィルムにアプリケーターを用いて塗工し、トルエンを熱風オーブンで60℃で120分以上乾燥除去し、乾燥後厚みが350〜450μm厚の粘着剤層を形成した後、粘着剤層の表面に、60μm厚のPETフィルムをラミネートし、目的の貼付剤を作製した。粘着剤の成分とその重量比(%)を表1に示した。
【0098】
(SIS)
SIS−A:スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体/スチレン−イソプレン共重合体の重量混合比=80/20
SIS−B:スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体/スチレン−イソプレン共重合体の重量混合比=50/50
SIS−C:スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体/スチレン−イソプレン共重合体の重量混合比=22/78
SIS−D:スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体/スチレン−イソプレン共重合体の重量混合比=88/12
SIS−E:スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体/スチレン−イソプレン共重合体の重量混合比=74/26
【0099】
【表1】
【0100】
実施例1〜4の貼付剤はいずれも、良好な凝集力及び粘着性を示した。また、実施例1〜4の貼付剤の皮膚透過性は、既存のリドカインテープ剤の皮膚透過性の3.4〜8.6倍と極めて高い結果であった。
【0101】
(比較例1〜6)
リドカイン、SIS共重合体、流動パラフィンを、表2に示した比率で混合した以外は、実施例1と同様の方法で貼付剤を作製した。
【0102】
【表2】
【0103】
リドカイン単独、プリロカイン単独を薬物として製剤化した場合、比較例1〜6の貼付剤は、粘着性が低く、医薬品として実用レベルではなかった。
【0104】
(比較例7及び8)
リドカイン、プリロカイン、SIS共重合体、流動パラフィンを、表3に示した比率で混合した以外は、実施例4と同様の方法で貼付剤を作製した。
【0105】
【表3】
【0106】
比較例7及び8の貼付剤は、粘着付与剤の添加により粘着力、凝集力は極めて良好であったものの、実施例1〜4と比較して薬物の皮膚透過性が不十分であった。
【0107】
(比較例9)
7.76gの架橋型アクリル系共重合体(Durotak87−901A、44wt%溶液)に対して、0.20gのリドカインと0.20gのプリロカインを順次添加し、室温にて15時間混合攪拌し、均一な粘着剤溶液を得た。粘着剤溶液を、表面をシリコン処理された80μm厚のポリエチレンテレフタラート(PET)フィルムにアプリケーターを用いて塗工し、トルエンを熱風オーブンで60℃で120分以上乾燥除去し、乾燥後厚みが350〜450μm厚の粘着剤層を形成した後、粘着剤層の表面に、60μm厚のPETフィルムをラミネートし、目的の貼付剤を作製した。粘着剤の成分とその重量比(%)を表4に示した。
【0108】
【表4】
【0109】
アクリル系粘着基剤を用いた比較例9の貼付剤については、凝集力及び粘着力は良好であったものの、実施例1〜4と比較して皮膚透過性が大幅に低下した。
【0110】
(実施例5及び6)
リドカイン、プリロカイン、SIS共重合体、流動パラフィンを、表5に示した種類及び比率で混合した以外は、実施例1と同様の方法で貼付剤を作製した。
【0111】
【表5】
【0112】
薬物の濃度を変更した実施例5及び6の貼付剤は、実用上問題ない凝集力及び粘着性を示し、皮膚透過性も十分に高かった。
【0113】
(実施例7〜17)
リドカイン、プリロカイン、SIS共重合体、流動パラフィンを、表6に示した種類及び比率で混合した以外は、実施例1と同様の方法で貼付剤を作製した。
【0114】
【表6】
【0115】
流動パラフィンとSIS共重合体の比率、SIS共重合体の種類を変更した実施例7〜17の貼付剤は、実用上問題ない凝集力及び粘着性を示し、皮膚透過性も十分に高かった。
【0116】
(実施例18及び19)
リドカイン、プリロカイン、SIS共重合体、流動パラフィンを、表7に示した種類及び比率で混合した以外は、実施例1と同様の方法で貼付剤を作製した。
【0117】
【表7】
【0118】
流動パラフィンとSIS共重合体の比率、SIS共重合体の種類を変更した実施例18及び19の貼付剤は、実用上問題ない凝集力及び粘着性を示し、皮膚透過性も十分に高かった。
【0119】
(実施例20及び21)
原薬、SIS共重合体、流動パラフィンを、表8に示した種類及び比率で混合した以外は、実施例1と同様の方法で貼付剤を作製した。
【0120】
【表8】
【0121】
原薬の種類を変更した実施例20及び21の貼付剤は、実用上問題ない凝集力及び粘着性を示し、皮膚透過性も十分に高かった。
【0122】
(実施例22及び23)
原薬、SIS共重合体、流動パラフィンを、表9に示した種類及び比率で混合した以外は、実施例1と同様の方法で貼付剤を作製した。
【0123】
【表9】
【0124】
原薬の混合比率を変更した実施例22及び23の貼付剤は、良好な凝集力及び粘着性を示し、皮膚透過性も十分に高かった。
【0125】
[鎮痛又は疼痛治療の効果について]
(試験例1)in vitroラット皮膚透過性の評価
実施例2で作製した貼付剤および既存のリドカイン貼付剤であるLidoderm(帝國製薬株式会社製)を直径1.3cmの円形に打ち抜き、HWY/Slc系雄性ヘアレスラット(5週齢)の腹部抽出皮膚上に貼付した。その皮膚を垂直型拡散セルにセットし、経皮吸収試験自動サンプリング装置(コスメディ社製)にて試験を開始した。バッファーとして0.01mol/Lリン酸緩衝生理食塩水(pH 7.2〜7.4)を用い、バッファー温度32℃とした。試験開始後、3、6、9、12、18、24時間後にバッファーの一部を抜き取り、バッファー中のラット皮膚を透過してきたリドカイン量およびプリロカイン量をHPLCにより定量した。リドカインとプリロカインの透過量の和を薬物透過量とし、Lidodermを用いた場合の薬物透過量に対し、何倍の透過量であるかを評価した。累積薬物皮膚透過量の測定結果を
図1に示し、薬物皮膚透過速度の測定結果を
図2に示す。
【0126】
(試験例2)ラットChungモデルにおける鎮痛作用の評価
神経障害性疼痛モデルであるChungモデルを用いて、鎮痛作用の評価を行った。ラットChungモデルは、Kim及びChungの方法(Pain 50(3),355−363(1992))に準じて作製した。具体的には、6週齢のCrl:CD(SD)系雄性ラット(1群8匹)を用い、イソフルラン麻酔下にてL5及びL6脊髄神経を露出させ、その中枢側を絹糸(5−0)で強く結紮した。傷口を縫合して1週間飼育した後、対照製剤として既存のリドカイン貼付剤であるLidoderm、被験物質として実施例2の貼付剤の疼痛閾値をダイナミックプランター・エステシオメーター(ウゴバジル社製)を用いて測定した。貼付剤は左肢足裏に12時間貼付し、測定時間は製剤剥離直後(0時間)及び2時間後とした。疼痛閾値は各群平均値±標準誤差で表し、試験結果を表10に示す。なお、有意差の検定はLidoderm投与群と実施例2製剤投与群との多群間比較においてDunnettの多重比較検定を用いて行い、P<0.05で有意差ありとした(表10中の*はP<0.05)。
【0127】
【表10】
【0128】
鎮痛作用の評価を実施したところ、実施例2の貼付剤適用群の疼痛閾値は、貼付剤を12時間貼付剥離直後および剥離2時間後において、Lidoderm投与群と比較して有意に高い値を示し、さらに鎮痛作用がLidodermよりも長時間持続することが明らかになった。すなわち、帯状疱疹後神経痛の治療において、本発明の貼付剤はLidodermよりも有意に高い治療効果を有し、ひいては、表在性で限局した神経障害性疼痛を治療するための製剤として有用であることが分かった。