【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の特定の実施形態の概要
本発明の第1の態様によると、対象から得た組織試料におけるAmbra-1及びロリクリンの発現が低下又は喪失していると同定されている対象における黒色腫の治療において用いるための治療剤が提供される。
【0011】
Ambra-1(ベクリン1調節型自食作用タンパク質1における活性化分子)は、WD40含有タンパク質である。研究によると、Ambra-1は自食作用の制御に関与し、この制御において、Ambra-1は、タンパク質-タンパク質相互作用プラットフォームとして機能すると考えられている。自食作用の間のAmbra-1の主な役割は、自食作用の核形成相の間のPI3Kに富んだ膜の形成に関与するベクリン-1/VPS34複合体のメンバーであることと考えられる。研究によると、Ambra-1はまた、自食作用活性の上流調節因子として直接的に作用することも示唆されている。Ambra-1のアミノ酸配列を図に示す。
【0012】
Ambra-1は、更に、細胞分化において役割を有することが示されている。マウスモデルにおけるAmbra-1の機能不活化は、自食作用の障害及び不安定な細胞増殖に関連する重篤な神経管異常を伴う、子宮内での致死をもたらす。逆に、Ambra-1の過剰発現は神経組織における細胞増殖速度を低下させ、そうして上皮増殖における中心的存在としてのその役割をサポートすることが示されている。
【0013】
ロリクリンはグリシン-セリン-システインに富んだタンパク質であり、これは、ヒトにおいて、LOR遺伝子によってコードされている。LOR遺伝子は、表皮分化複合体と呼ばれる、1番染色体上の遺伝子のクラスターの一部である。これらの遺伝子は、皮膚の外層(表皮)、特にその堅い外表面(角質層)の形成及び維持に関与する。角化として知られているプロセスにおいて形成される角質層は、身体とその環境との間の頑丈なバリアを提供する。角質細胞と呼ばれる、角質層の各細胞は、角化外膜(CE)と呼ばれるタンパク質殻に囲まれている。ロリクリンは角化外膜の主要なタンパク質である。ロリクリンと外膜の他の成分との間の連結は、角質細胞同士をまとめ、角質層に強度が与えられるのを助ける。ロリクリンのアミノ酸配列を図に示す。
【0014】
本発明の第2の態様によると、転移リスクが増大していると同定されている対象における黒色腫の治療において用いるための治療剤であって、リスクの増大の同定が、
(i)対象から得た、原発性黒色腫を覆う組織を含む組織試料におけるAmbra-1及びロリクリンの発現を判定する工程、並びに
(ii)(i)で得られた発現と、参照組織又はそれから得られたレベルとを比較する工程、
によって判定され、
組織試料におけるAmbra-1及びロリクリンの発現が参照組織若しくはレベルと比較して低下しているか、又は、組織試料におけるAmbra-1及びロリクリンの発現が喪失していることが、対象における転移リスクの増大の指標である、
治療剤が提供される。
【0015】
一部の実施形態において、組織試料と参照とにおけるAmbra-1及びロリクリンの発現の比較が不要でよいことが理解され、それは例えば、発現が喪失していると判定される場合である。したがって、特定の実施形態において、Ambra-1及びロリクリンの発現の低下又は喪失は、発現を参照組織と比較することなく明らかである。
【0016】
本発明の第3の態様によると、黒色腫に罹患し、転移に進行するリスクが増大していると同定されている対象における、転移への進行を予防又はその可能性を低減するために用いるための治療剤であって、前記同定が、その対象の、対象の原発性黒色腫を覆うケラチン生成細胞におけるAmbra-1及びロリクリンの発現が低下又は喪失していることを判定することを含む、治療剤が提供される。
【0017】
本発明の第4の態様によると、黒色腫を有する対象の転移リスクが増大しているかどうかを判定するためのインビトロ方法であって、
(i)対象から得た、原発性黒色腫を覆う組織を含む組織試料におけるAmbra-1及びロリクリンの発現を判定する工程、並びに
(ii)(i)で得られた発現と、参照組織又はそれから得られたレベルとを比較する工程、
を含み、
組織試料におけるAmbra-1及びロリクリンの発現が参照組織若しくはレベルと比較して低下しているか、又は、組織試料におけるAmbra-1及びロリクリンの発現が喪失していることが、転移リスクの増大の指標である
方法が提供される。
【0018】
本発明の第5の態様によると、黒色腫に罹患している対象のための治療レジメを決定する方法であって、
a)原発性黒色腫を覆う組織を含む組織試料を対象から得る工程、
b)組織試料におけるAmbra-1及びロリクリンの発現を判定する工程、
c)(b)で得られた発現と、参照組織又はそれから得られたレベルとを比較する工程、並びに
d)(i)Ambra-1及びロリクリンの発現が正常であるか若しくは増大していれば、標準的な認識されているケアパスウェイに従う、又は
(ii)Ambra-1及びロリクリンの発現が低下若しくは喪失していれば、対象を全身的抗癌治療レジメで治療する工程
を含む方法が提供される。
【0019】
本発明の第6の態様によると、黒色腫に罹患している対象を治療する方法であって、対象から得た組織試料におけるAmbra-1及びロリクリンの発現が低下又は喪失していると同定されている対象に治療剤を投与する工程を含む方法が提供される。
【0020】
本発明の第7の態様によると、黒色腫に罹患している対象を治療する方法であって、
(i)対象から得た、原発性黒色腫を覆う組織を含む組織試料におけるAmbra-1及びロリクリンの発現を判定する工程、
(ii)(i)で得られた発現と、参照組織又はそれから得られたレベルとを比較する工程、並びに
組織試料におけるAmbra-1及びロリクリンの発現が参照組織若しくはレベルと比較して低下しているか、又は、組織試料におけるAmbra-1及びロリクリンの発現が喪失していれば、治療剤を対象に投与する工程を含む方法が提供される。
【0021】
本発明の第8の態様によると、黒色腫に罹患している対象の転移リスクの増大を予測するためのインビトロアッセイであって、
(i)対象から得た組織試料と、Ambra-1に特異的な第1のリガンドとを接触させる工程であって、Ambra-1が存在するとAmbra-1-リガンド複合体が生じる工程、
(ii)組織試料と、ロリクリンに特異的な第2のリガンドとを接触させる工程であって、ロリクリンが存在するとロリクリン-リガンド複合体が生じる工程、並びに
(iii)Ambra-1-リガンド複合体及びロリクリン-リガンド複合体を検出及び/又は定量する工程
を含む、インビトロアッセイが提供される。
【0022】
対象は、黒色腫に罹患しているヒト又は動物であり得る。一部の実施形態において、対象はヒト患者である。一部の実施形態において、対象は、黒色腫を有すると既に診断されている。
【0023】
一部の実施形態において、対象は、AJCCステージ1、ステージ2、ステージ3、又はステージ4の黒色腫に罹患している。一部の実施形態において、対象は、AJCCステージ1a、ステージ1b、ステージ2a、ステージ2b、又はステージ2cの黒色腫に罹患している。一部の実施形態において、対象は、AJCCステージ1a又はステージ1bの黒色腫に罹患している。一部の実施形態において、本明細書において記載される方法は、対象から得た組織試料内に存在する原発性腫瘍を、AJCCステージングに従ってステージングすることを更に含む。
【0024】
早期黒色腫の治療は、典型的には、腫瘍を切除するための外科手術を伴う。治療法は、通常、その時点では予後が典型的に不良である疾患後期における転移の広がりを制御するために用いられる。早期疾患であるが転移リスクが高いか又は増大しているそれらの対象の同定によって、有利には、治療を適宜適合させることができる。例えば、治療法は、通常投与されるよりも早くこれらの対象に投与され得、それによって、これらの対象の転移を阻害し、予防し、又は遅延させ、及び予後を向上させることができる。
【0025】
したがって、一部の実施形態において、同定前の対象は、治療剤による治療に不適格である。特定の実施形態において、対象は、AJCCステージ3若しくは4の黒色腫に罹患しているか又はAJCCステージ2若しくは3の黒色腫の後に疾患が再発している場合に患者が治療剤で治療されるのみである、黒色腫を治療する先行技術方法と比較して、より早期で又はあまり進行していないステージで治療レジメを提案され得る。
【0026】
一部の実施形態において、対象は、潰瘍性黒色腫を有する。
【0027】
予想外に、本発明者らは、黒色腫を有する対象におけるAmbra-1及びロリクリン両方の発現レベルと転移の可能性との間の相関を同定した。特に、Ambra-1及びロリクリン両方の発現レベルの低下又は発現の喪失が、その対象の転移リスクが増大していることを示すと考えられる。
【0028】
本明細書において用いられる場合、Ambra-1及びロリクリンの発現の低下又は喪失とは、Ambra-1及びロリクリン両方の発現レベルがそれぞれの参照レベルの約75%未満であることを意味することが理解されよう。
【0029】
一部の実施形態において、Ambra-1及びロリクリンの発現の低下とは、Ambra-1及びロリクリン両方の発現レベルがそれぞれの参照レベルの約25から約75%であることを意味することが理解されよう。一部の実施形態において、Ambra-1及びロリクリンの発現の喪失とは、Ambra-1及びロリクリン両方の発現レベルが関連タンパク質の参照レベルの約25%未満であることを意味することが理解されよう。正常な発現とは、Ambra-1及びロリクリン両方の発現がそれぞれの参照レベルの約75%超であることを意味すると理解される。
【0030】
したがって、一部の実施形態において、組織試料におけるAmbra-1の発現レベルは、参照レベルの約25%から約75%である。一部の実施形態において、Ambra-1の発現レベルは、参照レベルの75%以下、70%以下、60%以下、50%以下、40%以下、又は30%以下である。
【0031】
一部の実施形態において、組織試料におけるロリクリンの発現レベルは、参照レベルの約25%から約75%である。一部の実施形態において、ロリクリンの発現レベルは、参照レベルの75%以下、70%以下、60%以下、50%以下、40%以下、又は30%以下である。
【0032】
一部の実施形態において、組織試料におけるAmbra-1及び/又はロリクリンの発現は実質的に喪失している。特定の実施形態において、Ambra-1及び/又はロリクリンの発現は、25%未満である。
【0033】
一部の実施形態において、転移リスクの増大は、7年無転移(「無病」としても知られている)生存率が50%未満、例えば40%未満、例えば30%未満、例えば20%未満、例えば10%未満、又は例えば5%未満であることを意味する。
【0034】
したがって、Ambra-1及びロリクリンは、黒色腫の転移への疾患進行についてのバイオマーカーであると考えられ得る。したがって、本発明の実施形態は、対象における黒色腫の転移への進行を予測するための方法を提供することであると考えられ得る。一部の実施形態において、本発明は更に、原発性黒色腫を覆う組織を含む組織試料における、黒色腫の転移への疾患進行についての予後バイオマーカーとしてのAmbra-1及びロリクリンの使用を提供する。適切には、Ambra-1及びロリクリンは、黒色腫を有する対象を、転移を発症する可能性がより高い対象及び転移を発症する可能性があまり高くない対象に層別化するためのバイオマーカーであると考えられ得る。有利には、本発明の特定の実施形態の方法は、黒色腫を有するどの対象が治療剤での治療の効果を最も得やすいかを同定することを助ける。適切には、本発明の特定の実施形態は、さもなければ治療剤での治療に適していないであろう患者の治療剤での治療を可能にし得る。
【0035】
腫瘍自体におけるバイオマーカーの発現レベルを決定することよりもむしろ、本発明の特定の実施形態の方法は、原発性黒色腫を覆う組織におけるAmbra-1及びロリクリンの発現レベルを決定することを含む。理論に束縛されることなく、これらのタンパク質の発現の低下又は喪失は、腫瘍を覆う表皮、及び、腫瘍の下部にある血管又はリンパ管の内膜を形成している内皮組織の破壊を示し得ると考えられ、このことは、癌細胞が原発性腫瘍から移動し得るか、又は既に移動している可能性があることを示唆している。このような移動は、転移をもたらし得る。
【0036】
一部の実施形態において、組織試料は、原発性黒色腫を覆う組織を含む。一部の実施形態において、組織試料は、原発性黒色腫を覆う腫瘍周辺表皮の少なくとも一部を含む。一部の実施形態において、組織試料は更に、原発性黒色腫に隣接する正常組織の一部を含む。一部の実施形態において、正常組織の一部は参照となる。適切には、参照は、参照組織であり、且つ/又はAmbra-1及びロリクリンの参照レベルを提供する。
【0037】
一部の実施形態において、本方法は、表皮におけるAmbra-1及びロリクリンの発現レベルを決定することを含む。ケラチン生成細胞は、表皮の約90%を占める細胞である。したがって、一部の実施形態において、組織試料は、原発性黒色腫を覆うケラチン生成細胞を含む。適切には、対象は、転移リスクが増大していると同定され得、ここで、前記同定は、対象の原発性黒色腫を覆うケラチン生成細胞におけるAmbra-1及びロリクリンの発現が低下又は喪失している対象を決定することを含む。
【0038】
一部の実施形態において、組織試料は対象から事前に得られており、そのため、試料採取自体は本発明の方法の一部を形成しない。試料は、本方法の直前、又は本方法の何時間も前、何日も前、若しくは何週間も前に得てよい。他の実施形態において、本発明の方法は、対象から組織試料を得る工程を更に含み得る。
【0039】
適切には、組織試料におけるAmbra-1及びロリクリンの発現は、1つ又は複数の参照と比較される。適切には、参照は、組織、又は組織から得られた発現のレベルである。
【0040】
一部の実施形態において、参照は、正常組織に特徴的なAmbra-1及びロリクリンの発現レベルを含む。適切には、ロリクリン及びAmbra-1の参照レベルは、参照組織におけるロリクリン及びAmbra-1の発現を判定することによって得られ得る。一部の実施形態において、参照組織におけるロリクリン及びAmbra-1の発現レベルは、視覚的評価又は自動評価によって決定される。
【0041】
一部の実施形態において、正常組織に特徴的なAmbra-1及びロリクリンの発現の参照レベルは、1人又は複数人の(例えばコホート)健康な対象から得られた組織試料における発現レベルを決定することによって得られる。
【0042】
一部の実施形態において、参照組織は正常組織を含む。一部の実施形態において、正常組織は、原発性黒色腫を含まない部位から得られた表皮を含む。一部の実施形態において、参照組織(又はそれから得られたレベル)は、内部参照(すなわち、対象から得られたもの)である。一部の実施形態において、参照組織は、原発性黒色腫に隣接する部位から得られた正常組織である。他の実施形態において、参照組織は、対象の、原発性黒色腫から遠く離れた部位から得られる。したがって、一部の実施形態において、参照レベルは、正常組織におけるロリクリン及び/又はAmbra-1の発現レベルである。参照組織は、適切には、正常な表皮から採取され、参照レベルは、正常な表皮のケラチン生成細胞における発現レベルである。例えば参照レベルを得るための、参照組織におけるAmbra-1及び/又はロリクリンの発現は、本明細書において記載される方法を用いて判定され得る。
【0043】
適切には、組織試料は、対象から得られた生検又はその切片であり得る。生検等の組織試料は、パンチ生検、薄片生検、広範囲局所切除、及び他の手段を含む、当業者に知られている様々な試料採取方法を介して得ることができる。適切には、腫瘍試料は、原発性黒色腫が対象から切除された手術部位から採取される。
【0044】
適切には、組織試料は、凍結されてもよく、新鮮であってもよく、固定(例えばホルマリン固定)、遠心分離、及び/又は包埋(例えばパラフィン包埋)等をされてもよい。組織試料は、試料におけるAmbra-1及びロリクリンの量を評価する前に、様々な周知の回収後の分取及び保存技術(例えば、核酸及び/又はタンパク質抽出、固定、保存、凍結、限外濾過、濃縮、蒸発、遠心分離等)をされても、又はされていてもよい。同様に、生検もまた、回収後の分取及び保存技術、例えば固定をされてもよい。組織試料又はその切片は、スライド等の固体担体上に載せることができる。
【0045】
一部の実施形態において、組織試料におけるAmbra-1及びロリクリンの発現の判定は、組織試料内に存在する各タンパク質のレベルを測定することを含む。これは、当業者に知られている方法によって行うことができる。このような方法には、免疫アッセイ、例えば、免疫組織化学、ELISA、ウェスタンブロット、免疫沈降とその後のSDS-PAGE、及び免疫細胞化学等が含まれる。
【0046】
したがって、一部の実施形態において、Ambra-1及びロリクリンの発現レベルの決定は、アッセイを行うことを含む。一部の実施形態において、アッセイはインビトロアッセイである。
【0047】
一部の実施形態において、対象は、
組織試料と、Ambra-1に特異的な第1のリガンドとを接触させる工程であって、Ambra-1が存在するとAmbra-1-リガンド複合体が生じる工程、
組織試料と、ロリクリンに特異的な第2のリガンドとを接触させる工程であって、ロリクリンが存在するとロリクリン-リガンド複合体が生じる工程、並びに
Ambra-1-リガンド複合体及びロリクリン-リガンド複合体を検出及び/又は定量する工程
を含む方法で組織試料におけるAmbra-1及びロリクリンの発現を判定することによって、転移リスクが増大していると同定される。
【0048】
一部の実施形態において、第1のリガンドは、抗Ambra-1抗体又はアプタマーを含む。一部の実施形態において、抗Ambra-1抗体又はアプタマーは、配列番号1で示される配列を有するタンパク質に特異的に結合する。
【0049】
一部の実施形態において、第2のリガンドは、抗ロリクリン抗体又はアプタマーを含む。一部の実施形態において、抗ロリクリン抗体又はアプタマーは、配列番号2で示される配列を有するタンパク質に特異的に結合する。
【0050】
ヒトAmbra-1及びロリクリンのアミノ酸配列は、本明細書において例として提供されるが、これらの配列の変異体が知られ得るか又は同定され得ることが理解されよう。一部の実施形態において、対象は、非ヒト哺乳動物である。したがって、Ambra-1(又は配列番号1)及びロリクリン(又は配列番号2)に対する本明細書における参照に、その非ヒトホモログの配列が含まれることも理解すべきである。
【0051】
一部の実施形態において、第1の及び/又は第2のリガンドは、検出部分(例えば蛍光標識)を含む。検出部分は、形成された複合体の直接的又は間接的な検出及び/又は定量を可能にする。
【0052】
一部の実施形態において、第1のリガンドは第1の検出部分を含み、第2のリガンドは第2の検出部分を含む。第1の検出部分は、第2の検出部分と同一であってもよいし、又は異なっていてもよい。
【0053】
一部の実施形態において、本方法は、組織試料の第1の部分又は切片と第1のリガンドとを接触させる工程、及び組織試料の第2の部分又は切片と第2のリガンドとを接触させることを含む。これは特に、第1の検出部分が第2の検出部分と同一である実施形態に適している。一部の代替的な実施形態において、本方法は、組織試料又はその部分若しくは切片と第1のリガンドとを接触させる工程、及び同一の組織試料又はその部分若しくは切片と第2のリガンドとを接触させる工程を含む。特に第1の及び第2の検出部分が異なる場合、Ambra-1-リガンド複合体及びロリクリン-リガンド複合体の両方を同一の試料又はその部分若しくは切片において検出及び/又は定量することが可能であり得る。
【0054】
適切には、第1の及び/又は第2のリガンドを、1つ又は複数の捕捉剤と組み合わせて用いることができる。したがって、一部の実施形態において、Ambra-1-リガンド複合体及びロリクリン-リガンド複合体を検出及び/又は定量する工程は、組織試料(又はその切片若しくは部分)と少なくとも1つの捕捉剤とを接触させる工程を含む。適切には、第1のリガンドに特異的に結合する第1の捕捉剤は、Ambra-1-リガンド複合体を検出及び/又は定量するために用いることができ、一方、第2のリガンドに特異的に結合する第2の捕捉剤は、ロリクリン-リガンド複合体を検出及び/又は定量するために用いることができる。或いは、第1のリガンド及び第2のリガンドの両方に特異的に結合し得る単一の捕捉剤を用いることができる。
【0055】
一部の実施形態において、捕捉剤は、結合部分及び検出部分を含む。
【0056】
一部の実施形態において、結合部分は、第1の及び/又は第2のリガンドに特異的に結合する二次抗体である。例えば、結合部分は、第1の及び第2のリガンドとして用いられる一次抗体に結合し得るユニバーサル抗IgG抗体であり得る。
【0057】
一部の実施形態において、本方法は更に、未結合の第1の及び第2のリガンド、及び場合によって未結合の捕捉剤を除去するための、1つ又は複数の洗浄工程を含む。
【0058】
一部の特別な実施形態において、黒色腫に罹患している対象における転移リスクの増大を予測するためのインビトロアッセイであって、
対象から得た組織試料の第1の部分と、Ambra-1に特異的な第1のリガンドとを接触させる工程であって、Ambra-1が存在するとAmbra-1-リガンド複合体が生じる工程、
組織試料の第2の部分と、ロリクリンに特異的な第2のリガンドとを接触させる工程であって、ロリクリンが存在するとロリクリン-リガンド複合体が生じる工程、
組織試料の第1の及び第2の部分を洗浄して、未結合のリガンドを除去する工程、
組織試料の第1の及び第2の部分と、第1の及び第2のリガンドに特異的な検出部分及び結合部分を含む捕捉剤とを接触させる工程、
組織試料の第1の及び第2の部分を洗浄して、未結合の捕捉剤を除去する工程、並びに
組織試料の第1の及び第2の部分内に存在する捕捉剤を検出及び/又は定量する工程
を含む、インビトロアッセイが提供される。
【0059】
適切には、適切な検出部分は、蛍光部分、発光部分、生物発光部分、放射性物質、比色分析部分、適切な検出可能な特性を有するナノ粒子、色素生成性部分、ビオチン、又は酵素から選択される。
【0060】
適切な蛍光部分には、蛍光タンパク質(フィコエリトリン(PE)、ペリジニン-クロロフィル-タンパク質複合体(PerCP)、及びアロフィコシアニン(APC)等)、蛍光染料(フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、ローダミン(Rs)、及びシアニン(Cys)等)、蛍光タンデム複合体(アロフィコシアニン-シアニン7(APC-Cy7)、ペリジニン-クロロフィル-タンパク質複合体-シアニン5(PerCP-cy5)、及びフィコエリトリン-テキサスレッド(PE-TexasRed)等)、及びナノ結晶(QDot 525、QDot 545、及びQDot625等)が含まれる。Ambra-1-リガンド複合体及びロリクリン-リガンド複合体の存在は、蛍光リガンド、又は蛍光検出部分を含む捕捉剤の使用を介する、蛍光顕微鏡法を用いて検出され得る。
【0061】
検出部分が酵素を含む実施形態において、Ambra-1-リガンド複合体及びロリクリン-リガンド複合体の存在は、酵素によって触媒される基質の反応の反応生成物を検出及び/又は定量することによって検出及び/又は定量され得る。これらの実施形態において、本方法は更に、酵素の基質を添加する工程、並びに、酵素によって基質に対して行われる反応の生成物を検出及び/又は定量する工程を含む。例えば、反応は着色沈殿物を生じさせ得、この沈殿物は、光学顕微鏡法を用いて検出される。適切な酵素には、例えば、アルカリホスファターゼ及びホースラディッシュペルオキシダーゼが含まれる。アルカリホスファターゼの色素生成性基質は、PNPP(p-ニトロフェニルリン酸塩、ジナトリウム塩)である。PNPPは、405nmの光を吸収する黄色の水溶性反応生成物を生じさせる。ホースラディッシュペルオキシダーゼの色素生成性基質には、緑色の反応生成物を生じさせるABTS(2,2'-アジノビス[3-エチルベンゾチアゾリン-6-スルホン酸]-ジアンモニウム塩)、黄色-オレンジ色の反応生成物を生じさせるOPD(o-フェニレンジアミンジヒドロクロリド)が含まれ、また、TMB(3,3',5,5'-テトラメチルベンジジン)可溶性基質は、HRPを検出すると青色を生じさせる。他の適切な酵素-基質の組合せ、Ambra-1-リガンド複合体及びロリクリン-リガンド複合体を検出する方法、並びに適切な検出部分は、当業者には分かるであろう。
【0062】
一部の実施形態において、第1の及び/又は第2のリガンド又は捕捉剤は、固相表面、例えば、マイクロアレイ、スライド、ウェル、又はビーズに固定されている。
【0063】
一部の実施形態において、Ambra-1及びロリクリンの発現は、視覚的評価、例えば顕微鏡法によって検出及び/又は定量される。他の実施形態において、Ambra-1及びロリクリンの発現は、自動スライドスキャナーによって検出及び/又は定量される。
【0064】
本発明の第9の態様によると、黒色腫に罹患している対象の転移発症リスクの増大を予測するためのキットであって、
Ambra-1に特異的な第1のリガンド、及び
ロリクリンに特異的な第2のリガンド
を含むキットが提供される。
【0065】
一部の実施形態において、キットは更に、黒色腫に罹患している対象における転移リスクを予測するためにキットを用いるための指示を含む。
【0066】
一部の実施形態において、キットは更に、少なくとも1つの捕捉剤を含む。適切には、捕捉剤は、第1の及び/又は第2のリガンドに特異的な検出部分及び結合部分を含み得る。
【0067】
一部の実施形態において、第1の及び/又は第2のリガンド及び/又は捕捉剤は、酵素を検出部分として含み、キットは更に、酵素の基質を含む。
【0068】
適切には、キットは更に、インビトロアッセイを行うために必要な試薬及び/又は器具等の1つ又は複数の更なる成分、例えば、緩衝液、固定剤、洗浄溶液、ブロック試薬、希釈剤、色原体、酵素、基質、試験管、プレート、ピペット等を含み得る。
【0069】
本発明の特定の実施形態のキットは、有利には、本発明の特定の実施形態の方法を行うために用られ得、様々な適用において、例えば、診断分野において、又はリサーチツールとして採用され得る。キットの部分は、バイアル内に個別に、又は容器内に若しくは複数の容器からなる単位内に組み合わせて、包装することができることが理解されよう。適切には、キットの製造は、当業者に知られている標準的な手順に従う。
【0070】
一部の実施形態において、治療剤は、組織試料におけるAmbra-1及びロリクリンの発現が低下又は喪失していると対象が同定された後、12週間以内、10週間以内、6週間以内、4週間以内、2週間以内、又は1週間以内に対象に投与される。
【0071】
一部の実施形態において、治療剤は化学療法剤である。あらゆる利用可能な適切な化学療法剤を対象に投与することができる。本明細書において用いられる場合、「化学療法剤」とは、癌の治療に有用なあらゆる治療剤を意味し、低分子や生物学的薬剤、例えば抗体を包含する。一部の実施形態において、化学療法剤は、ダカルバジン(DTIC)、テモゾロミド、Nab-パクリタキセル、パクリタキセル、カルムスチン(BCNU)、シスプラチン、カルボプラチン、ビンブラスチン、インターロイキン2、インターフェロンアルファ、抗体(例えば、イピリムマブ、抗PD1抗体)、及びB-Raf阻害剤(例えば、ベムラフェニブ、ダブラフェニブ)から選択される。
【0072】
治療剤の非限定的な投与経路には、経口、静脈内、腹腔内、皮下、筋肉内、局部的、皮内、鼻腔内、又は気管支内投与(例えば、吸入によって行われるもの)が含まれる。一部の実施形態において、治療剤は、非経口投与、例えば静脈内投与される。治療剤が投与され得る一般的な投与態様には、例えば、ボーラス用量としての投与、又は一定期間にわたる注入としての投与が含まれる。
【0073】
治療剤は、転移の発症を予防する、阻害する、又は遅延させるために有効な量で投与され得る。
【0074】
所与の対象及び治療剤のための適切な用量及び投与量レジメは、体表面積若しくは体重等の様々な異なる方法を用いて、又は専門家の文献及び/若しくは個別の病院のプロトコルに従って、決定され得る。用量は更に、対象の好中球数、腎臓及び肝臓の機能、並びに治療剤に対するあらゆる過去の副作用の既往歴を考慮して調整され得る。用量はまた、治療剤が単独で用いられるか又は組み合わせて用いられるかに応じても異なり得る。
【0075】
当業者には、更なる投与態様、治療剤の投与量、及び治療レジメンが、当技術分野において知られている方法に従って治療医によって決定され得ることが認識されよう。
【0076】
本発明の特定の実施形態は、黒色腫に罹患している対象のための治療レジメを決定する方法であって、
a)原発性黒色腫を覆う組織を含む組織試料を対象から得る工程、
b)組織試料におけるAmbra-1及びロリクリンの発現を判定する工程、
c)(b)で得られた発現と、参照組織又はそれから得られたレベルとを比較する工程、並びに
d)(i)Ambra-1及びロリクリンの発現が正常であるか若しくは増大していれば、標準的な認識されているケアパスウェイに従う、又は
(ii)Ambra-1及びロリクリンの発現が低下若しくは喪失していれば、対象を全身的抗癌治療レジメで治療する工程
を含む方法が提供される。
【0077】
「標準的な認識されているケアパスウェイ」は、当業者には分かるであろうが、原発性黒色腫の切除によって残った瘢痕のより広い切除を対象に対して行うことを意味することが理解されよう。より広い切除のサイズは、原発性黒色腫のブレスロー深さに基づいて、臨床医又は執刀医によって決定される。標準的な認識されているケアパスウェイは、最大5年にわたる対象の通常の(例えば3〜12ヶ月ごとの)臨床的評価を更に含み得る。一部の実施形態において、原発性黒色腫がステージ2b又は2cである場合、標準的な認識されているケアパスウェイは、診断時に頭から骨盤までのステージングCTスキャンを対象に対して行うことを更に含み得る。一部の治療センターは、ステージ2a、2b、及び2cの腫瘍全てのステージングセンチネルリンパ節生検を行う。したがって、一部の実施形態において、標準的な認識されているケアパスウェイは、センチネルリンパ節生検を行うことを更に含み得る。
【0078】
一部の実施形態において、全身的抗癌治療レジメは、治療剤を対象に投与する工程を含む。
【0079】
本発明の特定の実施形態は、黒色腫に罹患している対象を治療するための方法を提供する。
【0080】
理想的には、転移リスクが増大していると同定された対象は、転移の発症の機会を最小にするためになるべく早く治療される。したがって、一部の実施形態において、方法又は治療レジメは、対象における転移を予防する、阻害する、若しくは遅延させる、又は転移リスクを低下させるためのものである。
【0081】
一部の実施形態において、対象は、転移リスクが増大していると同定された直後又は少し後に治療される。
【0082】
一部の実施形態において、治療剤での治療は、原発性黒色腫を切除するための外科手術の後に行われる。
【0083】
一部の実施形態において、治療方法又は治療レジメは、対象の増感画像化(例えば、CTスキャン、PET、MRI、X線)、センチネルリンパ節生検の議論及び/若しくは提案、又は実行、部分的な又は完全なリンパ節切除、対象を臨床試験に含めること、並びに放射線照射療法の1つ又は複数を更に含み得る。
【0084】
特定の実施形態の詳細な説明
本発明の実施形態を以下に例としてのみ、添付の図面を参照しながら、記載する。