特許第6808711号(P6808711)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6808711水銀放出制御のための、湿式スクラバーを供給する配管への吸着剤の注入
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  • 特許6808711-水銀放出制御のための、湿式スクラバーを供給する配管への吸着剤の注入 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6808711
(24)【登録日】2020年12月11日
(45)【発行日】2021年1月6日
(54)【発明の名称】水銀放出制御のための、湿式スクラバーを供給する配管への吸着剤の注入
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/64 20060101AFI20201221BHJP
   B01D 53/50 20060101ALI20201221BHJP
   B01D 53/83 20060101ALI20201221BHJP
   B01J 20/20 20060101ALI20201221BHJP
   B01J 20/28 20060101ALI20201221BHJP
   B01D 53/78 20060101ALI20201221BHJP
   F23J 15/00 20060101ALI20201221BHJP
【FI】
   B01D53/64 100
   B01D53/50 245
   B01D53/83ZAB
   B01J20/20 D
   B01J20/28 Z
   B01D53/78
   F23J15/00 J
【請求項の数】6
【外国語出願】
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-247165(P2018-247165)
(22)【出願日】2018年12月28日
(62)【分割の表示】特願2016-502678(P2016-502678)の分割
【原出願日】2014年3月14日
(65)【公開番号】特開2019-72714(P2019-72714A)
(43)【公開日】2019年5月16日
【審査請求日】2019年1月10日
(31)【優先権主張番号】61/787,771
(32)【優先日】2013年3月15日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】594066006
【氏名又は名称】アルベマール・コーポレーシヨン
(74)【代理人】
【識別番号】110000741
【氏名又は名称】特許業務法人小田島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ランドレス,ロナルド・アール
(72)【発明者】
【氏名】ミラー,ジヨン・イー
(72)【発明者】
【氏名】ピクレル,ウイリアム・エス
(72)【発明者】
【氏名】ゴリシ,セイド・ビー
(72)【発明者】
【氏名】フロスト,テイモシー・エイ
(72)【発明者】
【氏名】ロイヤー,デイビツド・イー
(72)【発明者】
【氏名】カーミカル,ジヤツク
【審査官】 佐々木 典子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−061450(JP,A)
【文献】 特表2005−524769(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0250111(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0297413(US,A1)
【文献】 特開2009−166011(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/34−53/85
B01J 20/00−20/28、
20/30−20/34
F23J 13/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
煙道ガスから水銀及び/または水銀含有成分を捕捉する方法であって、
・ 煙道ガス流に吸着物質を注入し、それによって、湿式スクラバー組成物へ直接的に流動している前記煙道ガス流中で、前記吸着物質の分散体を形成する、ただし前記吸着物質は臭素含有粉末活性炭を含み、前記臭素含有粉末活性炭が元素状臭素から形成されたものである、ことと、
・ 前記吸着物質が前記湿式スクラバー組成物に移行するより前に、前記煙道ガス流中の前記吸着物質の前記分散体に滞留時間を提供して、(i)少なくとも一部の前記吸着物質と前記煙道ガス流の前記水銀及び/または水銀含有成分との接触を可能にすること、並びに(ii)少なくとも一部の前記水銀及び/または水銀含有成分を前記吸着物質によって前記煙道ガスから捕捉することと、
・ 前記煙道ガス流中の前記吸着物質の前記分散体を、前記湿式スクラバー組成物中を直接的に通過させて、前記煙道ガス流からの水銀の放出を最小限にすることと
を含み、ただし前記煙道ガスは燃焼室で形成されたものであり、そして燃焼室に臭素化合物を導入することをさらに含み、ただし前記臭素化合物がアルカリ金属臭化物である、前記方法。
【請求項2】
前記吸着物質の注入は、配管内の煙道ガス流内への注入であり、該煙道ガス流は前記湿式スクラバー組成物を含むスクラバーハウジングへ直接的に流れ、
及び
前記煙道ガス流中の前記吸着物質の前記分散体の滞留時間の提供は、前記吸着物質が前記スクラバーハウジングに移行するより前の前記配管での提供である、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記煙道ガスが、前記吸着物質の前記注入より前に微粒子収集装置を通り抜ける、請求項1〜2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
前記湿式スクラバー組成物が20±5重量%の量で石膏を含む懸濁液を含む、請求項1〜2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
記臭素含有粉末活性炭がその重量に基づいて0.1〜20重量%の臭素を有するものである、請求項1〜2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
元素状臭素から形成される臭素含有粉末活性炭が、60℃〜140℃の範囲内の1以上の温度で形成され;
臭素化合物が、燃焼室中の物質に対して重量ベースで50ppm〜700ppmの臭素原子を提供する量で加えられ;及び/又は、
吸着剤が、0.5〜20lb/MMact(8×10−6〜320×10−6kg/m)の比率で注入される、
請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、煙道ガスを洗浄するための改善された方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
水銀制御に関する技術は、最近最終決定された新しい規制で、近年発展し始めた。時間がたつにつれて、さらに追加的な規制が今後あることが予測される。したがって、さらにより効率的且つ経済的な水銀制御方法は、当技術分野にとって歓迎すべき寄与であると思われる。
【0003】
煙道ガスから水銀を除去するための多くの従来の方法及びシステムは、操作可能であるが、こうしたシステムの全体を通して複数の操作を用い、様々な材料を再利用するので、所望されるよりも複雑な傾向があった。経済的観点から言えば、炉の煙道ガスから水銀などの重金属を捕捉するための方法及びシステムにおいてより効果的に湿式スクラバーを利用する方法を開発することができれば、望ましいであろう。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、炉の煙道ガスから水銀などの重金属を捕捉するための方法及びシステムにおいて、より効果的に湿式スクラバーを利用することができると考えられる。
【0005】
本発明は、特に、煙道ガスから水銀種を捕捉するための方法及びシステムを提供する。本発明の方法では、吸着物質を煙道ガス中に注入し、(吸着物質を含有する)煙道ガスは、湿式スクラバー中を通過する。煙道ガスが湿式スクラバーを通過する前に、吸着物質は、煙道ガスから水銀種を捕捉する。吸着物質から湿式スクラバー組成物中に水銀が遊離されないことが好都合である。本発明によって提供される別の利点は、吸着物質が湿式スクラバー組成物中に存在する水銀も捕捉することもできることである。吸着物質が臭素化された炭素吸着剤である場合は、湿式スクラバー組成物中に遊離される臭化物の量は、もしあるとしても、湿式スクラバーから排出される水をさらに処理する必要がないほど少ない。
【0006】
本発明の一実施形態は、煙道ガスから水銀及び/または水銀含有成分を捕捉する(除去する)方法であって、
・ 煙道ガス流に吸着物質を注入し、それによって、湿式スクラバー組成物へ直接的に流動している煙道ガス流中で吸着物質の分散体を形成することと、
・ 吸着物質が湿式スクラバー組成物に進入するより前に、煙道ガス中の吸着物質の分散体に滞留時間を提供して、(i)吸着物質が湿式スクラバー組成物に進入するより前に、少なくとも一部の吸着物質、好ましくは大部分の吸着物質と煙道ガスの水銀及び/または水銀含有成分との接触を可能すること、並びに(ii)少なくとも一部の前記水銀及び/または水銀含有成分を前記吸着物質によって前記煙道ガスから捕捉することと、
・ 煙道ガス中の吸着物質の分散体を、湿式スクラバー組成物中を直接的に通過させて、煙道ガスからの水銀の放出を最小限にすること
を含む方法である。
【0007】
本発明の別の実施形態は、煙道ガスから水銀及び/または水銀含有成分を効果的に捕捉する(除去する)方法であって、
・ 吸着物質、好ましくは微粉砕されたまたは粉状の吸着物質を、スクラバーハウジングへ直接的に流動している、配管中の煙道ガス流に注入し、それによって、煙道ガス中に吸着物質の分散体が形成されることと、
・ 吸着物質がスクラバーハウジングに進入するより前に、前記配管内の煙道ガス流中の吸着物質の分散体に滞留時間を提供して、(i)少なくとも一部の吸着物質、好ましくは大部分の吸着物質と煙道ガス流の水銀含有成分との密接な接触を可能にすること、及び(ii)前記配管中を流動している間に、少なくとも一部の前記水銀含有成分を前記吸着物質によって煙道ガス流から効率的に捕捉するのに十分な時間を提供することと、
・ 煙道ガス流中の吸着物質の分散体を、スクラバーハウジング及び湿式スクラバー組成物中を直接的に通過させて、湿式スクラバー内での可溶性酸化水銀の元素状水銀への還元及び再放出を最小限にすること、並びに煙道ガスからの水銀の放出を最小限にすることを含む方法である。
【0008】
湿式スクラバー組成物中に進入するより前に、前記配管中を流動している間に、前記水銀及び/または水銀含有成分(及び/または他の重金属成分)を前記吸着物質によって前記煙道ガスから効率的に捕捉するのに十分な時間は、当然ながら、設備の大きさ、生成される煙道ガスの容量、生成される煙道ガス中の重金属含量、及び、もしあるとするならば、処理後の残留水銀の目標値などの因子によって変わる。一般的に言えば、流動している煙道ガス中の水銀含有成分(及び/または重金属成分)と流動している吸着物質分散体の間では、数秒の滞留(接触)時間で十分である。したがって、少なくとも約1〜2秒の滞留時間が提供されるようにシステムを適合させる必要がある。一般的には、約1または約2〜約5秒の時間で十分であるが、極端な場合では、さらに長い滞留時間が有用であると分かる場合がある。当然ながら至適滞留時間は、提案されている営業操作に相当するように適切にスケーリング及び操作されたシステムを使用して少しの実験試験を行う簡単な便法によって、容易に決定することができる。
【0009】
特許請求の範囲を含めて、本明細書で使用する場合、「捕捉」、「捕捉すること」及び「捕捉された」の各用語は、除去を意味するか指す。
【0010】
好ましくは、生成した水銀含有吸着物質は、湿式スクラバーから収集され、水銀値は、以下に記載されるような適切な技法によって、水銀含有吸着剤から回収される。
【0011】
その別の実施形態では、本発明は、煙道ガスから水銀及び/または水銀含有成分を効果的に捕捉する(除去する)システムであって、(i)煙道ガスの供給源、(ii)煙道ガスを輸送するための配管、(iii)前記配管の下流にあり、前記配管につながった少なくとも1つのスクラバーハウジングであって、煙道ガスを(配管から)直接的に受け取る、撹拌された湿式スクラバー組成物を含むスクラバーハウジング、並びに(iv)前記配管中へ吸着物質を注入して分散体を形成するための吸着物質供給機であって、スクラバーハウジングの上流にあり、吸着物質がスクラバーハウジングに進入するより前に、少なくとも一部の吸着物質と煙道ガスの水銀及び/または水銀含有成分との接触を可能にし、且つ前記配管中を流動している間に、少なくとも一部の前記水銀及び/または水銀含有成分を前記吸着物質によって前記煙道ガスから捕捉するのに十分な時間を前記湿式スクラバー組成物に与える滞留時間が提供されるように設置された吸着物質供給機を備えるシステムを提供する。好ましくは、スクラバーハウジングに進入するための前記吸着物質の注入率及び吸着物質供給機からの移動距離は、滞留時間に適合させるように調整される。
【0012】
本発明のさらに別の実施形態は、煙道ガスから水銀及び/または水銀含有成分を捕捉する(除去する)ためのシステムであって、
(i)水銀及び任意選択で他の重金属成分を含む煙道ガスを輸送するための配管、
(ii)(i)の前記配管に吸着物質を注入するための、配管につながった吸着物質供給機であって、これによって吸着物質が煙道ガス中に分散体を形成し、一般的には、前記吸着物質が微粉砕された活性炭吸着物質(好ましくは、微粉砕された臭素含有活性炭吸着物質)であり、該吸着物質が広範囲に分散しており、煙道ガスの流動に同伴され、煙道ガス
の流動によって運ばれる、吸着物質供給機、
(iii)吸着物質供給機と配管の下流のスクラバーハウジングであって、配管につながっており、(a)主に水と1つまたは複数の分散した固相スクラバー生成物を含む撹拌された固形物の懸濁液を含む湿式スクラバー組成物、(b)ハウジング内の水から分離された固形物を(ハウジングから)除去することができる固形物吐出し管、及び(c)環境に排出するために、前記ハウジングからの煙道ガスの遊離を可能にする、前記スクラバーハウジングの一部と流体連通したガス吐出し管
を含むスクラバーハウジングを備えるシステムである。通常、ガス吐出し管は、スクラバーハウジングにつながる小さな開口部を有する。
本システムでは、吸着物質供給機は、好ましくは、吸着物質がスクラバーハウジングに進入するより前に、少なくとも一部の吸着物質と煙道ガスの水銀及び/または水銀含有成分との接触を可能にし、且つ前記配管中を流動している間に、少なくとも一部の前記水銀及び/または水銀含有成分を前記吸着物質によって前記煙道ガスから捕捉するのに十分な時間をスクラバーハウジングに与える滞留時間が提供されるように設置される。好ましくは、スクラバーハウジングに進入するための前記吸着物質の注入率及び吸着物質供給機からの移動距離は、滞留時間に適合させるように調整される。
【0013】
上記の実施形態は、それぞれ、重金属(水銀)捕捉セクションを含む、重金属、特に水銀を煙道ガスから捕捉する(除去する)ための方法またはシステムとして表すこともできる。重金属(水銀)捕捉セクションは、上記の方法及びシステムを備える。
【0014】
本発明の実施において使用される湿式スクラバー組成物は、当技術分野において、湿式煙道ガス脱硫(WFGD)システムとも呼ばれる。一般的には、スクラバー材料の平均粒径は、約100ミクロンまでの範囲であるが、適切に分散するならば、より大きな粒子を使用することができる。使用中に、スクラバー組成物は、水銀成分などの重金属成分を吸着または吸収することができる。しばしば、湿式スクラバー組成物の懸濁液は、約20±5重量%の量で石膏を含む。好ましくは、湿式スクラバー組成物は、分散した微粉化石膏を含み、より好ましくは、湿式スクラバー組成物は、約20±5重量%の範囲で石膏を含む懸濁液を形成する量で、主に水と分散した微粉化石膏を含む。
【0015】
煙道ガス及びスクラバー組成物中の水銀(及び存在し得る他の重金属)を捕獲するために、1つまたは複数の湿式スクラバーへ直接的に通じている配管に吸着剤を注入することによって、水銀及び他の重金属を煙道ガスから非常に効果的に捕捉(除去)することを達成できるだけでなく、さらに、一連の本発明で利用される操作は、湿式スクラバー内での可溶性酸化水銀の元素状水銀への還元及び再放出を防止することができる。
【0016】
本発明のシステムが水銀及び/または他の重金属を捕獲するための2つ以上の湿式スクラバーハウジングまたはモジュールを含む場合、一般的な方法は、スクラバーハウジングを並列に配置することである。
【0017】
上記及び他の実施形態は、さらに、後に続く説明、添付の特許請求の範囲及び図面の図からより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】煙道ガスから水銀を洗浄するための好ましいシステムを模式的に説明する流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本明細書全体を通して、「煙道ガス」と「流動している煙道ガス」というフレーズは、互換的に使用される。煙道ガスはある方向に移動しており、通常、煙道ガスの供給源であ
る1つまたは複数の燃焼プロセスによって形成される。煙道ガスは、水銀種及び/または他の混入物、例えば他の重金属を含むことが多い。本明細書全体を通して使用される、「ガスの流れ」という用語は、ある方向に移動しているある量のガスを指す。これに関連して、「煙道ガス流」で使用される「流」という用語は、ある方向に移動している煙道ある量のガスを指す。
【0020】
本明細書全体を通して使用される、「下流」は、煙道ガス(の流れ)の移動の方向を意味し、「上流」は、煙道ガス(の流れ)の移動の方向と逆(反対)を意味する。
【0021】
湿式スクラバー組成物を指すために本明細書全体を通して使用される「主に水」というフレーズは、約75±10重量%の水を意味する。
【0022】
本発明の特に好ましい実施形態では、上記の方法及びシステムは、さらなる特徴を利用する。すなわち、配管に注入されて配管中に広範囲に分散した水銀吸着物質によって煙道ガスを処理する前に、流動している水銀含有煙道ガスの供給源から運ばれる微粒子状物質を除去するための、吸着物質供給機から上流の配管にある電気集じん装置(ESP)またはバッグハウス(BH)などの微粒子収集装置の存在を利用する。換言すれば、水銀含有煙道ガスは微粒子収集装置(例えばESPまたはBH)を通り抜け、次いで配管中を移動するにしたがって、好ましくは介在操作を行わないで、水銀含有煙道ガスは水銀吸着物質の注入された分散体と接触する。この順序で操作を行うことによって、水銀吸着物質による捕捉中に存在する固形物のレベルが低減し、それによって、さらにより効率的な、吸着物質と煙道ガス中に分散した水銀含有成分との接触が可能になる。そのような特に好ましいシステムを図1に模式的に示す。
【0023】
図1の模式的な流れ図から分かるように、本発明のこの特に好ましいシステムは、ボイラーまたは燃焼炉からの煙道ガスの供給源10を含む。この煙道ガスは、適切な配管12及び送風器などの推進手段(非表示)を介して、微粒子収集装置(固形物除去装置)14、例えば電気集じん装置(ESP)またはバッグハウス(BH)(後者は繊維質フィルターとしても知られる)に輸送される。微粒子収集装置14によって捕獲された飛散灰は、道管16によって示されるように、廃棄または有効利用するために送られる。微粒子収集装置14からの煙道ガス(ガス状排出物)は、配管18中を通して下流に輸送される。本発明によれば、吸着物質の貯蔵所または他の供給源(非表示)と連通している吸着物質供給機(インジェクター)20を介して供給される吸着物質、好ましくは粉末活性炭(PAC)が、吸着物質供給機20から配管18に注入され、その結果、煙道ガスが、注入部位から(一般的には数々の個々の入口を介して)下流に流動するにしたがって、その吸着物質は、配管18内で煙道ガス中に広範囲に分散(分散体を形成)し、その中の煙道ガスの流動によって、スクラバーハウジング22の湿式スクラバー組成物中へ直接的に運ばれる。湿式スクラバー組成物は、主に水と1つまたは複数の分散した固相スクラバー生成物を含む。湿式スクラバー組成物は、一般的には、広範囲に分散した状態で粒子を維持するために撹拌される。配管18内を移動している(ガス状流動によって運ばれる)間に、広範囲に分散した吸着物質と水銀含有煙道ガスが密接に接触することにより、システム全体によって提供される配管18の滞留時間中に、水銀不純物が吸着物質の表面に吸着する。洗浄工程の間または後に、固相スクラバー生成物は、PACとともにまたはPACから分離されて、固形物吐出し管24を介して除去される。残りの煙道ガスは、ガス吐出し管26を介してスクラバーハウジング22を出て、例えば排気筒28によって大気に排出される。特に望ましい固相スクラバーは、石膏の固相生成物をともなうカルシウム系スクラバーである。
【0024】
図1は、本発明を限定するものとして解釈されることを意図しない。図1は本明細書に記載の他の方法及びシステムも示すことが理解されよう。例えば、図1に示すシステムか
ら微粒子収集装置(固形物除去装置)14(例えばESPまたはBH)を除去することによって、次いでシステムは、上記の簡潔な発明の概要に記載されている本発明の他の方法及びシステムを模式的な形態で示す。
【0025】
一般的には、煙道ガスの温度は、約260〜約400°F(約126.7〜約204.4℃)の範囲であり、時々(非常にまれに)煙道ガスの温度は、650°F(約343.3℃)ほどになり得る。本発明の特徴は、好ましい臭素含有粉末活性炭の水銀吸着物質(Albemarle CorporationからB−PACとして市販されている)が、こうした幅広い温度範囲において、良く機能すると考えられることである。
【0026】
本発明の方法では、吸着物質は、水銀及び/または存在し得る他の重金属に対する吸着試薬として働き、煙道ガス流の中に注入され、分散体(広範囲に分散した粒子)を形成する。好ましい注入率は、吸着剤との水銀種の反応の動態、吸着剤の水銀収容力、適切な水銀放出限度及び特定のシステム構成によって変わることが理解されるが、吸着剤は、一般的には、約0.5〜約20lb/MMacf(8×10-6〜320×10-6kg/m3)の比率で注入される。好ましい注入率は、約3〜約17lb/MMacf(48×10-6〜272×10-6kg/m3)であり、約5〜約15lb/MMacf(80×10-6
240×10-6kg/m3)の注入率がより好ましい。本発明の方法が燃室への臭素化合物の導入も含む場合は、臭素化合物が燃室に導入されない場合の注入率と比較して、低い吸着物質注入率を用いることができる。
【0027】
湿式スクラバーに通じている配管での煙道ガスの流動期間中、水銀及び他の重金属は、吸着物質によって、これらの間の接触に基づいて吸着される。図1の上記の好ましいシステムにおいて、湿式スクラバーへ直接的に通じる配管から上流にESPまたはBHが存在することによって、配管を通って湿式スクラバーまでの流動内のこの接触がより効率的になる。ESPまたはBHは、煙道ガス中に存在する固形の微粒子状物質を除去し、これによって、次に湿式スクラバーに通じている配管内での吸着物質とガスのより効率的な接触が可能になる。微粒子収集装置による、煙道ガスからの微粒子状物質の除去のおかげで、この配置は捕捉操作もより効率的にする。この配置のさらなる利点は、煙道ガス中に存在する他の微粒子、例えば飛散灰が、吸着物質から別々に収集されることである。
【0028】
吸着物質が注入される時から吸着物質が湿式スクラバーに進入するまでの、配管での煙道ガスの流動期間は、配管での吸着物質についての滞留時間である。滞留時間は、配管内の移動距離、吸着物質の注入率及び煙道ガス(の流れ)の速度などの因子によって決定される。捕捉される水銀及び/または他の重金属の量は、滞留時間並びに注入吸着物質がいかに良く分散するか及び微粒子収集装置が吸着物質の注入点(複数可)の上流で作動しているかどうかを含めた、他の因子に依存する。
【0029】
煙道ガスと吸着物質の分散体の、湿式スクラバーへの配管からの進入については、「直接的に」という用語は、注入点(複数可)とスクラバーハウジングの間に介在機器がないことを意味し、これが好ましい。
【0030】
様々な異なる既知の水銀吸着物質を使用することができ、例えば、シリカゲル、ベントナイト、石英、炭素、特に活性炭及び臭素含有炭素、好ましくは臭素含有活性炭、より好ましくは臭素含有粉末活性炭である。臭素化されていない炭素、活性炭及び粉末活性炭は、それぞれ、非臭素含有炭素、非臭素含有活性炭及び非臭素含有粉末活性炭と本明細書で言及することもある。
【0031】
いくらかの有効性の違いが予想されるが、本発明は、すべてではないが、一般的には様々な供給原料から生成されるほとんどの炭素系吸着物質に適用可能であると考えられる。
適切な炭素系吸着物質としては、活性炭、活性木炭、活性コークス、カーボンブラック、木炭、燃焼プロセス由来の燃焼されていないまたは部分的に燃焼された炭素などが挙げられる。炭素質基材の混合物を用いることができる。好ましい炭素質基材は活性炭であり、より好ましくは粉末活性炭(PAC)である。ココナッツの殻、木材、褐炭、亜炭、無煙炭、亜歴青炭及び/または歴青炭から粉末活性炭が生成されることが好ましいこともある。PACのためのさらに他の供給源が、有用であることが分かる可能性がある。本明細書では、粉末活性炭(PAC)は、ASTM規格に従って、すなわち80メッシュシーブ(0.177mm)以下に相当する粒径を有するように使用される。
【0032】
本発明で使用するための好ましい吸着物質は、微粉砕または粉状の臭素添着炭である。好ましい実施形態では、活性炭吸着剤は、好ましくは臭素含有活性炭吸着剤、より好ましくは臭素含有粉末活性炭である。好ましい臭素含有粉末活性炭は、Albemarle CorporationからB−PACとして市販されている。
【0033】
臭素含有活性炭吸着剤は、活性炭が水銀及び水銀含有化合物を吸着する能力を増大させるのに十分な時間にわたって、吸着剤を有効量の臭素含有物質で処理する(と接触させる)ことによって形成される。こうした臭素化された炭素吸着物質の形成では、微粉砕または粉末活性炭が好ましくは用いられる。炭素または活性炭と臭素含有物質のそうした接触は、吸着剤が水銀及び水銀含有化合物を吸着するための能力を著しく増大する。臭素含有物質(複数可)での炭素または活性炭の処理は、好ましくは、臭素含有炭素吸着物質の重量に基づいて、吸着物質が約0.1〜約20重量%の臭素を有するように行われる。好ましくは、臭素含有炭素吸着物質は、臭素含有炭素吸着物質の重量に基づいて、約0.5重量%〜約15重量%の臭素、より好ましくは、約3重量%〜約10重量%の臭素を有する。必要に応じて、20重量%を越える臭素量を吸着物質中に組み込むことができる。しかし、吸着物質中の臭素量が増大するにつれて、ある種の状況下で、一部の臭素が吸着物質から放出され得る可能性が高くなる。臭素含有化合物からのすべての臭素は、通常、吸着物質に組み込まれる。
【0034】
炭素または活性炭の臭素化は、一般的には、バッチ法及びインフライト法の両方によって高温で行われる気相式臭素化である。臭素含有化合物は、通常は元素状臭素(Br2)及び/または臭化水素(HBr)であり、これらは、通常、ガス形態または液体形態で使用される。元素状臭素及び/または臭化水素は、通常は及び好ましくは、ガス形態で使用される。元素状臭素は、好ましい臭素含有化合物である。一般的には、特にガス形態で使用される場合、元素状臭素は、本発明の様々な実施形態の実施において使用するための好ましい臭素供給源である。元素状臭素をそのガス形態で利用するために、臭素を、約60℃より高く加熱及び維持する必要がある。ガス状元素状臭素を用いる、炭素または活性炭の気相式臭素化での使用については、約60℃〜約140℃までの範囲の温度が一般的である。臭素は、ガス状態では、炭素または活性炭により均一に接触し、水銀含有ガス流での使用において、水銀含有ガス流に通常存在する水銀不純物と容易に相互作用するので、ガス状臭素での処理は有利である。液状の臭素を臭素含有ガスに変換する好ましい方法は、加熱したランスを使用することである。液状の臭素は計量してそうした加熱したランスシステムの一端に入れられ、他端で、ガスとして基材材料へ分布させられ得る。これに関連して、気相式臭素化のさらなる詳細な説明について、U.S.特許第6,953,494号を参照されたい。U.S.特許第6,953,494号が言及するように、ガス状臭化水素を使用することができる。同様に、ガス状臭素とガス状臭化水素の混合物を使用することができる。
【0035】
好ましい臭素含有粉末活性炭は、Albemarle CorporationからB−PACとして市販されている。特に好ましい臭素含有活性炭吸着剤並びにその製造及び使用は、2013年3月15日に出願された、共有に係るU.S.特許仮出願第61/7
94,650号、及びU.S.特許仮出願第61/794,650号の優先権を主張する、国際出願第PCT/US2014/______号に開示されている。
【0036】
本発明の方法の任意選択のさらなる工程は、臭素化合物及び/または臭素化合物の混合物を燃室(例えば炉または窯炉)に導入することである。高温プロセスの条件下での、燃室への1つまたは複数の臭素化合物のそうした導入によって、煙道ガスから捕捉される水銀の量を増大させる。臭素化合物(複数可)は、燃室中の物質または燃室のエアスペースへ直接的に導入される。代替の導入方法は、臭素化合物(複数可)が燃室に進入する前駆ユニット(例えば給炭機)に臭素化合物(複数可)を導入することである。燃室のエアスペースに供給される場合、臭素化合物は、好ましくは微細分散体として供給される。臭素化合物は、個々にまたは混合物として供給することができ、固体形態でまたは水溶液として供給することができる。燃室への化合物の導入についてのさらなる考察は、U.S.6,878,358を参照されたい。
【0037】
室へ導入される臭素化合物は、通常はアルカリ金属臭化物、好ましくは臭化ナトリウムであり、またはアルカリ土類臭化物、好ましくは臭化カルシウム、臭化水素の水溶液、アルカリ金属臭化物の水溶液、もしくはアルカリ土類金属臭化物の水溶液が使用される。適切な臭素化合物としては、臭化水素、臭化リチウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム、臭化マグネシウム、臭化カルシウムなどを含めたアルカリ金属臭化物が挙げられる。燃室へ導入するための好ましい臭素化合物としては、臭化ナトリウム及び臭化カルシウムが挙げられ、臭化カルシウムがより好ましい。臭素化合物は、好ましくは、燃室中の物質に対して、重量ベースで約50ppm〜約700ppmの臭素原子、より好ましくは約100ppm〜約500ppmの臭素原子を提供する量で加えられる。
【0038】
図1に関連して前に述べたように、固相スクラバー生成物は、洗浄工程の間または後に、PACとともにまたはPACから分離されて、固形物吐出し管を介して除去される。固相スクラバー生成物は吸着物質との混合物で除去され得、または固相スクラバー生成物と吸着物質は、排出より前に互いに分離され得る。
【0039】
特に、回収された吸着剤が、回収を価値のあるものにするのに十分な吸着水銀含量を含む場合に、煙道ガスから水銀を除去するためにスクラバーで使用された回収された吸着剤から水銀を分離及び回収することができる。回収された吸着剤から水銀を回収する方法の一例は、U.S.特許第7,727,307号に記載されている。
【0040】
特許請求の範囲を含めて、本明細書の任意の場所での使用において、「大部分」は、50パーセントを越えることを意味する。
【0041】
本明細書または特許請求の範囲の任意の場所で、化学名または化学式によって言及される成分は、単数で言及されようと複数で言及されようと、化学名または化学型(例えば別の成分、溶媒など)によって言及される別の物質に接触するより前にそれらが存在する通りに認識される。もしあるとしても、どの化学的変化、変換及び/または反応が、生成した混合物または溶液中で起こるかは問題ではなく、これは、そうした変化、変換及び/または反応は、本開示に従って要求される条件下で特定の成分を一緒にした当然の結果であるからである。
【0042】
本発明は、本明細書に記載される材料及び/または手順を含む、それらからなる、または本質的にそれらからなり得る。
【0043】
明確にそうでないと示され得る場合を除いて、特許請求の範囲を含めた本明細書で使用する場合の冠詞「1つ(a)」または「1つ(an)」は、言及または特許請求の範囲を
、その冠詞が言及する単一の要素に制限することを意図するものではなく、且つ制限するものと解釈されるべきでない。むしろ、本明細書で使用する場合の冠詞「1つ(a)」または「1つ(an)」は、本文が明確にそうでないと示さない限り、1つまたは複数のそのような要素を包含することが意図される。
【0044】
本発明は、その実施においてかなりの変形が可能である。したがって、前述の説明は、制限することを意図するものではなく、本発明を、上で示した特定の例示のみに制限するものとして解釈されるべきでない。
図1