特許第6808727号(P6808727)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6808727線形周波数変調を有する任意マイクロ波信号の光生成のためのデバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6808727
(24)【登録日】2020年12月11日
(45)【発行日】2021年1月6日
(54)【発明の名称】線形周波数変調を有する任意マイクロ波信号の光生成のためのデバイス
(51)【国際特許分類】
   G02F 2/02 20060101AFI20201221BHJP
   G02F 1/35 20060101ALI20201221BHJP
【FI】
   G02F2/02
   G02F1/35
【請求項の数】11
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-515940(P2018-515940)
(86)(22)【出願日】2016年10月20日
(65)【公表番号】特表2018-532154(P2018-532154A)
(43)【公表日】2018年11月1日
(86)【国際出願番号】EP2016075249
(87)【国際公開番号】WO2017072025
(87)【国際公開日】20170504
【審査請求日】2019年10月2日
(31)【優先権主張番号】1560294
(32)【優先日】2015年10月28日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】311016455
【氏名又は名称】サントル ナシオナル ドゥ ラ ルシェルシェ シアンティフィク
【氏名又は名称原語表記】CENTRE NATIONAL DE LA RECHERCHE SCIENTIFIQUE
(73)【特許権者】
【識別番号】501354026
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ グルノーブル アルペス
(73)【特許権者】
【識別番号】513197839
【氏名又は名称】アンスティチュ ナショナル ド ラ ルシェルシュ シアンティフィーク
【氏名又は名称原語表記】Institut national de la recherche scientifique
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ギレ・ドゥ・シャテラス,ユーグ
(72)【発明者】
【氏名】アザナ,ジョゼ
【審査官】 林 祥恵
(56)【参考文献】
【文献】 特表2014−520289(JP,A)
【文献】 特開2000−089264(JP,A)
【文献】 特開2001−228053(JP,A)
【文献】 特開2013−171285(JP,A)
【文献】 米国特許第06856723(US,B1)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0215918(US,A1)
【文献】 国際公開第2009/107632(WO,A2)
【文献】 米国特許第05101291(US,A)
【文献】 中国特許出願公開第102255224(CN,A)
【文献】 GUILLET DE CHATELLUS, H., et al.,"The hypothesis of the moving comb in frequency shifted feedback lasers",OPTICS COMMUNICATIONS,NL,2011年 7月 5日,Vol.284, No.20,Page.4965-4970,doi:10.1016/j.optcom.2011.06.042
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/00−1/125
G02F 1/21−7/00
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
線形周波数変調された任意マイクロ波信号を生成する光デバイスであって、第1の光周波数で連続波信号を放出するレーザー(1)と、前記連続波信号をスペクトル的及び時間的に形成する組立体(2)と、受光器(3)であって、その通過帯域がマイクロ波周波数の領域にある、受光器(3)とをこの順序で含む光デバイスにおいて、前記スペクトル的及び時間的に形成する組立体は、少なくとも、
− 前記レーザーの出口に配置されている第1のY接合ビーム分割器(20)と、
− 前記第1のY接合ビーム分割器の第1の枝部の出口(22)に配置されている第1の光チャンネルであって、周波数シフトループであり、前記周波数シフトループは、X接合ビーム分割器(50)と、前記X接合ビーム分割器の2つの枝部間に配置されている第1の光増幅器(60)と、第1の光フィルタ(75)と、光アイソレータ(70)と、音響光学周波数シフタ(80)とを含む、第1の光チャンネルと、
− 前記第1のY接合ビーム分割器の第2の枝部の出口(23)に配置されている第2の光チャンネルであって、電気光学周波数シフタ(30)を含む第2の光チャンネルと、
− 第2のY接合ビーム分割器(40)であって、その第1の枝部(42)は、前記第1の光チャンネルの出口に配置され、及びその第2の枝部(43)は、前記第2の光チャンネルの出口に配置されている、第2のY接合ビーム分割器(40)と、
− 前記第2のY接合ビーム分割器の共通出口(41)に配置されている第2の光増幅器(90)と、
− 前記第2の光増幅器の出口と前記受光器との間に配置されている第2の光フィルタ(100)と
を含み、
少なくとも音響光学周波数シフト、電気光学周波数シフト、及び前記第1の光増幅器の増幅利得は、調整可能であることを特徴とする、光デバイス。
【請求項2】
前記デバイスの全部又は一部は、ファイバーベースであり、前記レーザーは、ファイバーベースであり、前記第1のY接合ビーム分割器は、第1のY接合光結合器であり、前記第2のY接合ビーム分割器は、第2のY接合光結合器であり、及び前記X接合ビーム分割器は、X接合光結合器であることを特徴とする、請求項1に記載の任意マイクロ波信号を生成する光デバイス。
【請求項3】
前記デバイスの全部又は一部は、集積光学技術で製造されることを特徴とする、請求項1に記載の任意マイクロ波信号を生成する光デバイス。
【請求項4】
前記デバイスの全部又は一部は、個別の光学部品によって製造され、前記第1のY接合ビーム分割器は、半透鏡を含む第1のキューブ分割器であり、前記第2のY接合ビーム分割器は、半透鏡を含む第2のキューブ分割器であり、及び前記X接合ビーム分割器は、半透鏡を含むキューブ分割器であることを特徴とする、請求項1に記載の任意マイクロ波信号を生成する光デバイス。
【請求項5】
前記第1の光フィルタ(75)は、光学通過帯域タイプであることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の任意マイクロ波信号を生成する光デバイス。
【請求項6】
前記第2の光フィルタ(100)は、光学通過帯域タイプのスペクトルフィルタ又は強度変調フィルタのいずれかであることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の任意マイクロ波信号を生成する光デバイス。
【請求項7】
光が前記周波数シフトループを通過するのにかかる時間を前記音響光学周波数シフトに乗じた積は、整数又は小数と実質的に等しいことを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の任意マイクロ波信号を生成する光デバイス。
【請求項8】
前記音響光学周波数シフトは、1〜300MHzに含まれることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の任意マイクロ波信号を生成する光デバイス。
【請求項9】
前記電気光学周波数シフタは、単側波帯変調器であることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の任意マイクロ波信号を生成する光デバイス。
【請求項10】
前記電気光学周波数シフトは、−40GHz〜+40GHzに含まれることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載の任意マイクロ波信号を生成する光デバイス。
【請求項11】
前記第1の増幅器の前記利得は、前記X接合ビーム分割器、前記光アイソレータ及び前記音響光学周波数シフタの光学的損失を補償するのに少なくとも十分であることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載の任意マイクロ波信号を生成する光デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野は、マイクロ波信号、より詳細には、「LFM」信号とも呼ばれる、線形周波数変調されるマイクロ波信号の光生成の分野である。これらのLFM信号は、「任意」信号とも呼ばれる。本文の他の部分では、LFMという用語は、信号の時間的な形態を示す。このような信号は、「チャープ」とも呼ばれる。これらの信号は、信号の搬送周波数と呼ばれることもある、信号の中心又は平均周波数及び信号の通過帯域を特徴とする。通過帯域は、従来、信号の最高周波数と最低周波数との間の差と定義される。この場合、搬送周波数は、1GHz〜100GHzに含まれ、通過帯域は、0〜200GHzに含まれる。
【背景技術】
【0002】
この種のマイクロ波信号の応用分野は、多数且つ多様である。一例として、レーダーの分野、生物医学撮像の分野、健康分野、分光法の分野、最後に無線周波数成分の特性評価の分野について言及する。
【0003】
パルス圧縮レーダーは、得られるパルス持続時間に対応する長さよりも短い非常に優れた空間分解能を可能にする。従って、短く且つ強力なパルスの生成、増幅及び放出に関する欠点が回避される。これらのパルス圧縮レーダーによって放出される信号は、線形周波数変調マイクロ波信号である。同じことが、「周波数変調連続波」を意味する頭字語「FMCW」によって知られているレーダーに当てはまる。この種のレーダーは、特に、健康分野において心調律などの生理的パラメータを接触せずに監視するのに使用されることがある。
【0004】
生物医学撮像では、線形周波数変調マイクロ波信号により、生物組織の特性をその誘電体の誘電率によって判定することができる。更に、低エネルギーの信号で作業することができる。
【0005】
更に、これらの信号は、アミノ酸又はペプチド鎖など、気体状態における高分子の分光法に特によく適している。
【0006】
最後に、これらの信号を、全種類の無線周波数成分を特性評価するために使用することができる。現在、この種の特性評価を実行する、「スカラーネットワーク分析器」を意味する頭字語「SNA」、又は「ベクトルネットワーク分析器」を意味する頭字語「VNA」の機器は、一般的に重く且つ高価な機器である。
【0007】
従来、任意波形発生器(AWGs)を用いて任意信号が生成される。しかし、それらの通過帯域は、アナログ・デジタル変換器によって40〜100GHzに制限される。更に、AWGsの使用は、コスト、信号の放出時間の変動、即ち「時間的ジッター」及びこれらの装置の大量の消費電力によって制限される。
【0008】
より詳細には、入力電圧に比例する周波数信号を生成する「電圧制御発振器」を意味する単純な頭字語「VCO」を用いて任意信号が生成される。この技法の主な欠点は、得られる通過帯域が数GHzに制限されることである。更に、この種の発生器に対して、他のマイクロ波源が寄生信号を引き起こすことがある。
【0009】
アナログ・デジタル変換器の速度のために、電子システムの通過帯域に関する本質的制限を克服することを目的として、マイクロ波フォトニクスと呼ばれる新しい研究分野が過去約10年間にわたって開発されている。読者は、この技法に関する更なる情報のために、“Microwave photonics”,J.Lightwave Tech.(2009)という名称のJ.Yaoによる論文を参照されたい。原理は、10THzよりも大きいことがある、ファイバーベースの光学系の非常に大きい通過帯域を使用して、この通過帯域をマイクロ波周波数領域に変換することである。単純な例を挙げる。受光器に2つのファイバーレーザーを打つと、2つのレーザーの光周波数の差と周波数が等しいマイクロ波信号が生成される。従って、GHz〜THzの範囲で信号が得られる。更に、光学技法は、電磁干渉の影響を受けにくく、低い消費電力及び小さい容量を有する。最後に、レーザー空洞の機械的安定性と一般的に関連がある光パルス列のスペクトル純度は、得られる電子的方法の時間的ジッター量よりも小さい時間的ジッター量を可能にする。
【0010】
1GHzよりも高い周波数でLFM信号を生成するために、複数のフォトニクス解決策が提案されている。
【0011】
第1の解決策は、分散線において、「周波数対時間マッピング」を意味する頭字語「FTTM」と呼ばれる技法を使用することである。モード同期フェムト秒又はピコ秒レーザーは、短い広範囲光スペクトルパルスを生成する。周波数フィルタは、信号のスペクトルにチャープ変調を刻む。図1の左側部分は、時間t及び周波数fに応じたこのパルスの振幅Aを示す。このパルスを、GVD(GVDは「群速度分散」の頭字語である)分散線と呼ばれるものに通過させる。図1の右側部分で分かるように、分散線の出口において、パルスの時間的形態がパルスのスペクトル形態を再生する。従って、LFM信号又はチャープが生成される。変型例として、インコヒーレント源を用いてこの種の光信号を生成することができる。この解決策は、ある程度の複雑さを免れない。
【0012】
この第1の技術的解決策の変型例は、余弦関数を用いてスペクトルを変調してから、分散が非線形である媒質を通って伝搬させることである。この媒質は、非線形「チャープ」であるブラッグ格子であってもよい。この技法には、複数の制限がある。広い通過帯域を得ることも、信号の持続時間を容易に修正することも、時間と共に増大する周波数の変動を生成することもできない。
【0013】
第2の変型例は、分散干渉計で光スペクトルを変調することである。事前に伸張されたレーザーパルスを、2つのアームが異なる群速度分散を有する干渉計に注入する。抜け出ると、スペクトルは、間隔が直線的に変化する山及び谷を含み、これは、時間領域においてパルスの光強度の線形周波数変調をもたらす。この技法は、上述の解決策よりもある程度の利点を有する。しかし、システムは、モード同期レーザーを依然として必要とし、LFMの持続時間を容易に調整できない。
【0014】
第3の変型例では、レーザーによって生成されるパルスは、振幅だけでなく位相も変調される。この技法により、大きい通過帯域を得ることができるが、依然としてかなりの欠点がある。繰り返し率は、制限されたままであり、持続時間及び周波数変動の方向は調整できない。実現手段、特にフェムト秒レーザー及び変調器は、複雑で高価なままである。
【0015】
LFMマイクロ波信号を生成する第2の技術的解決策は、2つのレーザーを使用することである。第1の構成において、第1のレーザーは、単一周波数連続波信号を放出し、第2のレーザーのパルスは、線形周波数変調を受ける。これらの2つのレーザーを受光器に打つと、マイクロ波領域において光線形周波数変調が再生される。この技法の利点は、相対的な単純化と、信号の持続時間、信号の通過帯域及び信号の中心周波数の変動の範囲を調整する能力とである。一方、レーザーの線形周波数変調の線形性は、大きい通過帯域にとって問題がある。
【0016】
この第2の技術的解決策の1つの変型例は、パルスに含まれる周波数を分散させるように分散媒質を通って第1のレーザーによって放出された短いパルスを伝搬させることである。次に、分散パルスを第2のレーザーで再結合する。この技法は、より高い技術的複雑さ、高いコスト、及び低い柔軟性の代償として魅力的な性能レベルを実現する。この技法の1つの変型例は、2つの異なる分散伝搬、従って2つの異なる光チャープを受けている2つのレーザーを打つことである。
【0017】
しかし、それらの柔軟性にもかかわらず、可能な周波数及び2つのレーザー間の更に強い位相安定性がないため、2つのレーザーを用いた技法は、信号の高い再現性が必要な用途、特にパルス間のコヒーレンスが必要なレーダー用途に対して受け入れることができない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0018】
【非特許文献1】“Microwave photonics”,J.Lightwave Tech.(2009)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0019】
より正確には、本発明の主題は、線形周波数変調された任意マイクロ波信号を生成する光デバイスであって、第1の光周波数で連続波信号を放出するレーザーと、前記連続波信号をスペクトル的及び時間的に形成する組立体と、受光器であって、その通過帯域がマイクロ波周波数の領域にある、受光器とをこの順序で含む、光デバイスにおいて、スペクトル的及び時間的に形成する組立体は、少なくとも、
− レーザーの出口に配置されている第1のY接合ビーム分割器と、
− 第1のY接合ビーム分割器の第1の枝部の出口に配置されている第1の光チャンネルであって、周波数シフトループであり、前記周波数シフトループは、X接合ビーム分割器と、X接合ビーム分割器の2つの枝部間に配置されている第1の光増幅器と、第1の光フィルタと、光アイソレータと、音響光学周波数シフタとを含む、第1の光チャンネルと、
− 第1のY接合ビーム分割器の第2の枝部の出口に配置されている第2の光チャンネルであって、電気光学周波数シフタを含む第2の光チャンネルと、
− 第2のY接合ビーム分割器であって、その第1の枝部は、第1の光チャンネルの出口に配置され、及びその第2の枝部は、第2の光チャンネルの出口に配置されている、第2のY接合ビーム分割器と、
− 第2のY接合ビーム分割器の共通出口に配置されている第2の光増幅器と、
− 第2の光増幅器の出口と受光器との間に配置されている第2の光フィルタと
を含み、
少なくとも音響光学周波数シフト、電気光学周波数シフト、及び第1の光増幅器の増幅利得は、調整可能であることを特徴とする、光デバイスである。
【0020】
有利には、デバイスの全部又は一部は、ファイバーベースであり、レーザーは、ファイバーベースであり、第1のY接合ビーム分割器は、第1のY接合光結合器であり、第2のY接合ビーム分割器は、第2のY接合光結合器であり、及びX接合ビーム分割器は、X接合光結合器である。
【0021】
有利には、デバイスの全部又は一部は、集積光学技術で製造される。
【0022】
有利には、デバイスの全部又は一部は、個別の光学部品によって製造され、第1のY接合ビーム分割器は、半透鏡を含む第1のキューブ分割器であり、第2のY接合ビーム分割器は、半透鏡を含む第2のキューブ分割器であり、及びX接合ビーム分割器は、半透鏡を含むキューブ分割器である。
【0023】
有利には、第1の光フィルタは、光学通過帯域タイプである。
【0024】
有利には、第2の光フィルタは、光学通過帯域タイプのスペクトルフィルタ又は強度変調フィルタである。
【0025】
有利には、光が周波数シフトループを通過するのにかかる時間を音響光学周波数シフトに乗じた積は、整数又は小数と実質的に等しい。
【0026】
有利には、音響光学周波数シフトは、1〜300MHzに含まれる。
【0027】
有利には、電気光学周波数シフタは、単側波帯変調器である。
【0028】
有利には、電気光学周波数シフトは、−40GHz〜+40GHzに含まれる。
【0029】
有利には、第1の増幅器の利得は、X接合ビーム分割器、光アイソレータ、音響光学周波数シフタ及びスペクトル光フィルタの光学的損失を補償するのに少なくとも十分である。
【0030】
添付図面により、下記の限定しない説明を読むことで本発明を更によく理解でき、他の利点が明白になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】分散線で線形周波数変調マイクロ波信号を生成する「周波数対時間マッピング」を意味する頭字語「FTTM」と呼ばれる先行技術の例示である(既述されている)。
図2】周波数シフトループを含む、本発明による線形周波数変調された任意マイクロ波信号を生成する光デバイスの全体図を示す。
図3】本発明によるデバイスにおける周波数に応じた初期信号を示す。
図4】本発明によるデバイスにおける周波数シフトループの出口での周波数に応じた第1の信号を示す。
図5】本発明によるデバイスにおける周波数シフトループの出口での周波数に応じた第2の信号を示す。
図6】本発明によるデバイスにおける電気光学周波数シフタから出力された周波数に応じた信号を示す。
図7】本発明によるデバイスにおける周波数に応じた第1の光フィルタの伝送曲線を示す。
図8】比f/fが整数の比に近い場合、本発明によるデバイスにおける受光器から出力された時間に応じた周期信号を示す。
図9】本発明によるデバイスにおける時間及び周波数シフトに応じた信号を示す。
図10】本発明によるデバイスにおける時間及び周波数シフトに応じた信号を示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
周波数シフトループが光ファイバー又は光導波路からなる「ファイバーベース」又は「集積光学」構成において、又は周波数シフトループが正しく整列されたミラーを用いて生成される、個別光学部品を有する「自由空間」構成において、本発明によるマイクロ波信号を生成する光デバイスを生成してもよい。「自由空間構成」という表現は、光ビームが自由空間を全体的に又は部分的に伝搬する構成を意味するものとする。
【0033】
図2は、本発明による線形周波数変調された任意マイクロ波信号を生成する光デバイスの「ファイバーベース」型の図を示す。この型を詳細に後述する。しかし、示すたびにファイバーベース型と自由空間型との間に著しい差がある。
【0034】
図2の光生成デバイスは、以下をこの順序で含む。
− fで示す第1の光周波数で連続波信号Sを放出するレーザー。この周波数は、数百THzの領域にある。このレーザーは、有利には、「電気通信」周波数範囲(即ち、約1550nm)で放出するファイバーレーザーであってもよい。レーザーは、約数kHzの小さい線幅を有し、数mWの電力を放出する必要がある。特に780nm又は1μmの近傍で他の波長が可能である。しかし、これらの波長に対するファイバーベースの部品は、より高価である。図3は、周波数fに応じたこの信号Sの振幅Aを示す。パルス間のコヒーレンスを自動的に保証する限り、単一レーザーの使用により先行技術に対して大きい利点がある;
− 前記連続波信号をスペクトル的及び時間的に形成する組立体2;及び
− 受光器3であって、その通過帯域がマイクロ波周波数領域にある、受光器3。
【0035】
スペクトル的及び時間的に形成する組立体2は、少なくとも以下を含む。
− 第1のY接合ビーム分割デバイス20。図2の場合、この分割器は、光結合器である。自由空間の実施形態において、この結合器は、プレート分割器又はキューブ分割器である。この分割器は、入口21と、2つの出口枝部22及び23とを含む。入口21はレーザー1に結合され、出口22は第1の光チャンネルに結合され、出口23は第2の光チャンネルに結合されている;及び
− 第1の結合器20の第1の枝部22の出口に配置されている第1の光チャンネル。この第1の光チャンネルは、周波数シフトループである。周波数シフトループは、X接合ビーム分割デバイス50と、第1の光増幅器60と、光アイソレータ70と、第1の光スペクトルフィルタ75と、音響光学周波数シフタ80とを含む。
○X接合ビーム分割器50は、半透鏡によって製造される4チャンネル光ファイバー光結合器又はビーム分割器であってもよい。X接合結合器50は、2つの入口チャンネル51及び52と、2つの出口チャンネル53及び54とを含む。入口51は、Y接合結合器の出口22に結合されている。
○増幅器60、アイソレータ70、スペクトルフィルタ75及び音響光学シフタ80は、X接合結合器の出口54と入口52との間で直列に取り付けられている。増幅器60は、Gで示す利得を有し、様々な光結合による第1のチャンネルの総光学的損失、及びアイソレータ及び音響光学シフタ80の損失をPで示す。
○光アイソレータ70の役割は、レーザーによって生成された光が単一方向に強制的に伝搬するようにすることである。これにより、寄生波が反対方向に循環してシステムの動作を乱すのを防止する。
○第1の光スペクトルフィルタ75の主な目的は、拡大自然放出によるノイズを制限することであり、二次的な目的は、ループの通過帯域を選択して、周波数変調信号のスペクトル幅を制御し得ることである。このプログラマブル光フィルタは、光ファイバーに光内接しているブラッグ格子、又は実際には光のスペクトルがデバイスのフーリエ面でアクセスされることを可能にする回折素子又は光学格子に基づく。このフーリエ面に配置されたプログラマブル振幅フィルタ、従来、液晶マトリックスにより、光の様々な周波数を選択的に減衰させて、そのスペクトルを変調することができる。格子の2番目の通過により、そのスペクトルの変調後に光を再視準することができ、自由空間ループ、又はファイバーベース構成の場合に光を光ファイバーに再注入することができる。
○音響光学シフタ80は、透明固体における進行音波によって光波の回折を使用する。音響光学周波数シフトfは、1〜300MHzに含まれる。この周波数範囲は、このタイプのデバイスにとって全く普通である。
○周波数シフトループを通る通過時間の逆数は、fと呼ばれる。ファイバーベース構成の場合、周波数シフトループの長さが10メートルであると、このループの周波数fは、30MHzに等しい。この周波数は、ループの長さが30メートルの場合、10MHzである。この周波数の振幅のオーダーは、音響光学周波数シフトfの振幅のオーダーと等しい。ループ長の振幅のこれらのオーダーは、当然ながら、エルビウムドープファイバー増幅器60を用いて得られるオーダーである。自由空間構成の場合、ループの長さは、大幅に一層短く、数十センチメートル〜数メートルであり得る。fの値は、一層高く、100MHz〜1GHzで変わる。
− 第2の光チャンネルは、第1のY接合分割デバイスの第2の枝部23の出口に配置されている。この第2の光チャンネルは、電気光学周波数シフタ30を含む。この周波数シフタは、単側波帯変調器であることが好ましい。このシフタは、従来、1つの電気光学変調器をそれぞれ含む2つのマッハ・ツェンダー干渉計を使用する。2つの側波帯の1つ及び搬送波の両方に破壊的に干渉させるように電気光学変調器の電圧を正確に調整することによって単側波帯を出力として得る。従って、このデバイスは、周波数シフタとして動作する。電気光学周波数シフトfは、ファイバーベース構成において−40GHz〜+40GHzに含まれる。この周波数範囲は、このタイプのデバイスにとって全く普通である。
− 第2のY接合ビーム分割デバイス40。この分割器は、2つの入口枝部42及び43と、1つの出口41とを含む。再度、この分割器は、ファイバーベース光結合器又は半透鏡であってもよい。第1の入口枝部42は、第1のチャンネルのX接合結合器の出口53に結合され、第2の入口出口枝部43は、電気光学周波数シフタ30の出口に結合されている。
− 第2のY接合ビーム分割器の共通出口41に配置されている第2の光増幅器90。
− 第2の光増幅器90の出口と受光器3との間に配置されている第2の光フィルタ100。このフィルタは、スペクトルフィルタ75と同じ原理で動作するプログラマブルフィルタであってもよい。当然のことながら、光フィルタのフィルタリング帯域は、光周波数fと互換性がある必要がある。代わりに、線形周波数変調信号の場合、時間と瞬時周波数との間に直線関係があるため、このフィルタは、ループの出口で時間に応じて光信号の強度を制御できる強度変調器であってもよい。一般的に、この強度変調器は、音響光学変調器又は電気光学変調に基づく。電気光学タイプの変調は、それ自体、ポッケルス効果を用いた偏光回転又はマッハ・ツェンダー干渉計における干渉効果に基づいてもよい。
【0036】
少なくとも音響光学周波数シフトf、電気光学周波数シフトf、及び第1の光増幅器の増幅利得Gは、調整可能である。周波数fは、例えば、無線周波数発生器によって調整される。
【0037】
光生成デバイスの動作について詳細に後述する。
【0038】
周波数fで放出されるビームの第1の部分を周波数シフトループに導入する。その動作は次の通りである。ビームがループを完全に通過してX接合結合器の入口52に戻るたびに、ビームの一部をX接合結合器によってループに再注入し、ビームの第2の部分は、ループから出て光増幅器90に移動する。X接合結合器の出口53において、ループを特定の回数kだけ通過している一連の光信号S1kからなる光信号Sを得る。
【0039】
各信号S1kは、信号の振幅、周波数及び位相を特徴とする。図4及び図5は、周波数に応じた一連の信号S1kの振幅を示す。信号S1kの振幅は、光増幅器60の利得、第1の光フィルタ75、及びループの損失に左右される。利得がちょうど損失を補償する場合、図4で分かるように、全ての信号S1kは同じ振幅を有する。利得が損失よりも低い場合、図5で分かるように、信号S1kの振幅は急激に減少する。
【0040】
光が音響光学周波数シフタ80を通過するたびに、その周波数が量fだけ増大される。従って、信号S1kは、図4及び図5で分かるように、f+k.fと等しい周波数を有する。
【0041】
ループの反復効果のために、様々な周波数は、それらの周波数の位相に対して二次依存性を有することを実証してもよい。より正確には、周波数f+k.fの信号S1kの位相φ1kは、下記の関係に従う。
φ1k=π.k.(k+1).f/f
【0042】
読者は、この計算に関する更なる情報のために、“Generation of ultrahigh and tunable repetition rates in CW injection seeded frequency shifted feedback lasers”,Opt.Exp.21、15065(2013)、及び“Theory of Talbot lasers”,Phys.Rev A 88,033828(2013)という名称のH.Guillet de Chatellus et al.による論文を参照されたい。
【0043】
従って、光信号Sは、二次スペクトル位相に対応する特定の群速度分散を受けている光周波数コムと等しい。
【0044】
時間領域において、この光信号は、周期1/fの同じ光パルスの列からなる。各パルスは、光周波数領域において線形周波数変調を有し、最小周波数及び最大周波数は、f及びf+K.fであり、ここで、Kは、光がループで行う最大往復数又は均等にループの出口で光周波数コムに存在する周波数の数である。
【0045】
更に、等価分散は、位相の放物線の曲率、即ちf/fに比例する。位相のパラメータは、音響光学周波数シフトfを調整することによって容易に制御可能である。位相φ1kの式から分かるように、整数値又は2つの整数の比p/q(但し、qはKよりも小さい)に極めて近い比f/fを選択することが有利である。
【0046】
この比が整数値と全く等しい場合、等価分散はゼロである。全てのスペクトル成分は、同相であり、ループは、短いパルスを放出し、時間的制限が周波数コムのフーリエ変換によって与えられる。この比が整数の比p/q(但し、q<Kである)と等しい場合、ループは、q*fと等しい1秒当たりのパルス数又は繰り返し率で、整数比の場合のように同じ持続時間の短いパルスを放出する。この効果の記述及び説明が上述の2つの論文に示されている。
【0047】
一方、この比が整数又は小数値から逸れる場合、光パルスは、時間領域で広がり、その線形周波数変調の変動の方向は変化する。詳細には、スペクトル領域における位相シフトは、時間領域における時間シフトに対応することが分かる。従って、スペクトル領域における位相の高い多様性は、時間領域で得られるパルスの広がりに対応する。
【0048】
周波数fで放出されるビームの第2の部分を電気光学周波数シフタ30に導入する。周波数シフタ30の出口において、周波数がf+fと等しい光信号Sを得る。図6は、周波数に応じたこの信号Sの振幅を示す。これらの2つの入口42及び43において、Y接合結合器40は、それぞれ周波数シフトループ及び電気光学シフタによって信号S及びSの出力を受信し、それらの信号を再結合する。従って、この再結合信号は、f+fに中心がある光周波数と、fからf+K.fに及ぶ光周波数コムとを含む。
【0049】
再結合信号は、光増幅器90によって増幅され、フィルタ100によってフィルタリングされ、受光器3によって受信される。増幅され、フィルタリングされた光信号をSで示す。図7は、プログラマブルフィルタ100の通過帯域BPを示す。この通過帯域を、使用される解決策に応じて、スペクトルフィルタリングにより又はループからの信号出力の時間変調により引き起こす。更に、スペクトルフィルタ100を強度変調器と交換することができる。詳細には、周波数と時間との間に直線関係があるため、パルス列と同期されたパルスの強度の時間変調は、フィルタ100を用いたスペクトルフィルタリングと均等である。変調信号とパルス列との非常に正確な同期が必要である限り、実施することが一層複雑であっても、強度の時間変調は、克服されるべき「波形整形器」タイプの市販デバイスに対して10GHzよりも高いスペクトルフィルタの制限、即ち、その分解能を可能にする。
【0050】
受光器3の出口における電気信号Sは、信号SEiの周期列からなる。その信号の時間周期は、比f/fが整数又は1/(qf)であり、この比がp/q(但し、p及びqは整数であり、qはKよりも小さい)と等しい場合、1/fと等しい。整数比の場合、この列を図8に示す。この場合、信号SEiは同じである。各信号は、図8で分かるように、時間と共に変化する瞬時周波数を有する。この図及び次の2つの図において、明確にするために、信号は小さい周期を含むことに留意されたい。実際の信号は、一般的にはるかにより大きい周期を有する。
【0051】
信号の通過帯域を光信号Sのスペクトル幅によって与える。この光信号Sは、フィルタ100の通過帯域及び周波数シフトループで循環する信号Sのスペクトル幅によって制限される。上述のように、通過帯域は、光増幅器60の利得、光スペクトルフィルタ75、及びループの損失に左右される。中心周波数は、信号Sの光周波数f+fと関連がある。従って、100GHzのオーダーのマイクロ波周波数を実現することができる。
【0052】
周波数fを修正することにより、線形周波数変調の変動の方向を修正することもできる。整数又は整数の比から移動するように比f/fを変更すると、線形周波数変調の変動の方向は変化することが分かる。図9及び図10は、この特性を例示する。図9及び図10は、時間に応じた基本信号SEiの振幅Aを示す。
【0053】
aが整数又は整数の比p/q(但し、q<Nである)である場合、aの値と最も近い整数又は整数比との間の差はεと呼ばれる。
【0054】
εがゼロである場合、出力信号は、フーリエ変換制限信号からなり、もはや線形周波数変調されていない。
【0055】
εがゼロでない場合、LFM信号の持続時間は、約ε*K/f(但し、Kは、ループから出力された周波数コムにおける周波数の総数である)であることを示すことができる。従って、ε=±1/Kの場合、LFM信号の持続時間は1/fである。従って、関心のあるεの変動の範囲は−1/K〜+1/Kである。
【0056】
比f/fがaよりも僅かに小さい場合、即ち、εが負である場合、時間領域において、基本信号SEiの線形周波数変調は低周波数から始まり、高周波数で終了する。比f/fがaよりも僅かに大きい場合、即ち、εが正である場合、時間領域において、基本信号SEiの線形周波数変調は高周波数から始まり、低周波数で終了する。
【0057】
一例として、0〜30GHzに含まれる範囲の周波数を含む、12nsの周期の信号SEiの場合、僅か80kHzの周波数変動fは、変調の方向を修正するのに十分である。
図1
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図10