(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記無機ナノ粒子は、粒径が1nm〜10nm未満の無機ナノ粒子、粒径が10nm〜30nm未満の無機ナノ粒子、及び粒径が30nm〜100nmの無機ナノ粒子を含むことを特徴とする請求項2に記載の方向性電磁鋼板用絶縁被膜組成物。
前記方向性電磁鋼板は、重量%で、Si:2.0〜4.0%、C:0.002%以下(但し0%を含まない)及びSb:0.01〜0.06%を含み、残部はFe及びその他不可避不純物からなることを特徴とする請求項6に記載の方向性電磁鋼板の絶縁被膜形成方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、方向性電磁鋼板用絶縁被膜組成物、これを利用した方向性電磁鋼板の絶縁被膜形成方法、及び方向性電磁鋼板を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態による方向性電磁鋼板用絶縁被膜組成物は、金属シリケート又は有機シリケート10〜50重量部、無機ナノ粒子20〜70重量部及び水酸化コバルト0.1〜20重量部を含む。
金属シリケートは、ナトリウムシリケート、カリウムシリケート、カルシウムシリケート、マグネシウムシリケート、マンガンシリケート及びストロンチウムシリケートの中から選択される1種以上であり、有機シリケートは、テトラアルキルオルソシリケートでありうる。
【0008】
無機ナノ粒子は、アルミナ(Al
2O
3)、シリカ(SiO
2)、チタニア(TiO
2)、ジルコニア(ZrO
2)、酸化イットリウム(Y
2O
3)及び酸化マグネシウム(MgO)の中から選択される1種以上であってもよい。
無機ナノ粒子は、平均粒径が1〜100nmであってもよい。
無機ナノ粒子は、粒径が1nm〜10nm未満の無機ナノ粒子及び粒径が10nm〜100nmの無機ナノ粒子を含んでもよい。
【0009】
無機ナノ粒子は粒径が1nm〜10nm未満の無機ナノ粒子、粒径が10nm〜30nm未満の無機ナノ粒子、及び粒径が30nm〜100nmの無機ナノ粒子を含んでもよい。
溶媒を10〜25重量部更に含んでもよい。
金属リン酸塩を10〜50重量部更に含んでもよい。
【0010】
本発明の一実施形態による方向性電磁鋼板の絶縁被膜形成方法は、方向性電磁鋼板及び方向性電磁鋼板用絶縁被膜組成物をそれぞれ準備する段階と、方向性電磁鋼板用絶縁被膜組成物を前記方向性電磁鋼板の表面に塗布する段階と、方向性電磁鋼板用絶縁被膜組成物が塗布された方向性電磁鋼板を熱処理する段階と、表面に絶縁被膜が形成された方向性電磁鋼板を収得する段階とを含み、方向性電磁鋼板用絶縁被膜組成物は、金属シリケート又は有機シリケート10〜50重量部、無機ナノ粒子20〜70重量部及び水酸化コバルト0.1〜20重量部を含む。
【0011】
方向性電磁鋼板は、重量%で、Si:2.0〜4.0%、C:0.002%以下(但し0%を含まない)及びSb:0.01〜0.06%を含み、残部はFe及びその他不可避不純物からなることができる。
【0012】
方向性電磁鋼板は、重量%で、Si:2.0%〜4.0%、C:0.1%〜0.4%及びSb:0.01%〜0.06%を含み、残部はFe及びその他不可避不純物からなるスラブを提供する段階と、スラブを再加熱する段階と、スラブを熱間圧延して熱延鋼板を製造する段階と、熱延鋼板を熱延板焼鈍する段階と、熱延板焼鈍された熱延鋼板を冷間圧延する段階と、冷間圧延された鋼板を脱炭焼鈍する段階と、脱炭焼鈍が完了した鋼板を冷間圧延する段階と、冷間圧延が完了した鋼板を最終焼鈍する段階とを含んで製造されることができる。
【0013】
脱炭焼鈍は、850℃〜1000℃の温度及び50℃〜70℃の露点温度で実施すればよい。
最終焼鈍段階は、900℃〜1000℃の温度及び露点温度55℃〜65℃で焼鈍を実施する第1段階と、1000℃〜1200℃の温度及びH
2 75体積%以上の雰囲気で実施する第2段階とを含むことができる。
【0014】
方向性電磁鋼板用絶縁被膜組成物を前記方向性電磁鋼板の表面に0.5〜7g/m
2塗布することができる。
方向性電磁鋼板用絶縁被膜組成物が塗布された方向性電磁鋼板を250〜950℃で熱処理することができる。
【0015】
本発明の一実施形態による方向性電磁鋼板は、方向性電磁鋼板と、方向性電磁鋼板の表面に形成された絶縁被膜とを含み、絶縁被膜は、金属シリケート又は有機シリケート10〜50重量部、無機ナノ粒子20〜70重量部及び水酸化コバルト0.1〜20重量部を含む。
【0016】
方向性電磁鋼板は、{110}<001>方位から15度以内の方位を有する結晶粒の体積分率が90%以上であってもよい。
{110}<001>方位から15度以内の方位を有する結晶粒のうち、大きさが30〜1000μmの結晶粒の比率が80%以上であってもよい。
【0017】
本発明の一実施形態による方向性電磁鋼板用絶縁被膜組成物は、金属リン酸塩10〜50重量部、粒径が1nm〜10nm未満の無機ナノ粒子5〜30重量部、粒径が10nm〜100nmの無機ナノ粒子10〜40重量部及びクロム酸化物0.1〜20重量部を含む。
【0018】
金属リン酸塩は、Mg、Al、Ca、Fe、Mn、Sr、Zr及びBaの中から選択される1種以上の金属を含んでもよい。
粒径が10nm〜100nmの無機ナノ粒子は、粒径が10nm〜30nm未満の無機ナノ粒子5〜20重量部及び粒径が30nm〜100nmの無機ナノ粒子5〜20重量部を含んでもよい。
【0019】
無機ナノ粒子は、アルミナ(Al
2O
3)、シリカ(SiO
2)、チタニア(TiO
2)、ジルコニア(ZrO
2)、酸化イットリウム(Y
2O
3)及び酸化マグネシウム(MgO)の中から選択される1種以上であってもよい。
クロム酸化物は、三酸化クロム、酸化第二クロム、及び酸化第一クロムの中から選択される1種以上であってもよい。
溶媒を10〜25重量部更に含んでもよい。
【0020】
本発明の一実施形態による方向性電磁鋼板の絶縁被膜形成方法は、方向性電磁鋼板及び方向性電磁鋼板用絶縁被膜組成物をそれぞれ準備する段階と、方向性電磁鋼板用絶縁被膜組成物を前記方向性電磁鋼板の表面に塗布する段階と、方向性電磁鋼板用絶縁被膜組成物が塗布された方向性電磁鋼板を熱処理する段階と、表面に絶縁被膜が形成された方向性電磁鋼板を収得する段階とを含み、方向性電磁鋼板用絶縁被膜組成物は、金属リン酸塩10〜50重量部、粒径が1nm〜10nm未満の無機ナノ粒子5〜30重量部、粒径が10nm〜100nmの無機ナノ粒子10〜40重量部、及びクロム酸化物0.1〜20重量部を含む。
【0021】
方向性電磁鋼板は、重量%で、Si:2.0〜4.0%、C:0.002%以下(但し0%を含まない)、及びSb:0.01〜0.06%を含み、残部はFe及びその他不可避不純物からなることができる。
【0022】
方向性電磁鋼板は、重量%で、Si:2.0%〜4.0%、C:0.1%〜0.4%及びSb:0.01%〜0.06%を含み、残部はFe及びその他不可避不純物からなるスラブを提供する段階と、スラブを再加熱する段階と、スラブを熱間圧延して熱延鋼板を製造する段階と、熱延鋼板を熱延板焼鈍する段階と、熱延板焼鈍された熱延鋼板を冷間圧延する段階と、冷間圧延された鋼板を脱炭焼鈍する段階と、脱炭焼鈍が完了した鋼板を冷間圧延する段階と、冷間圧延が完了した鋼板を最終焼鈍する段階とを含んで製造されることができる。
【0023】
脱炭焼鈍は、850℃〜1000℃の温度及び50℃〜70℃の露点温度で実施すればよい。
最終焼鈍段階は、900℃〜1000℃の温度及び露点温度55℃〜65℃で焼鈍を実施する第1段階と、1000℃〜1200℃の温度及びH
2 75体積%以上の雰囲気で実施する第2段階とを含むことができる。
【0024】
方向性電磁鋼板用絶縁被膜組成物を前記方向性電磁鋼板の表面に0.5〜7g/m
2塗布することができる。
方向性電磁鋼板用絶縁被膜組成物が塗布された方向性電磁鋼板を250〜950℃で熱処理することができる。
【0025】
本発明の一実施形態による方向性電磁鋼板は、方向性電磁鋼板と、方向性電磁鋼板の表面に形成された絶縁被膜とを含み、絶縁被膜は、金属リン酸塩10〜50重量部、粒径が1nm〜10nm未満の無機ナノ粒子5〜30重量部、粒径が10nm〜100nmの無機ナノ粒子10〜40重量部及びクロム酸化物0.1〜20重量部を含む。
【0026】
方向性電磁鋼板は、{110}<001>方位から15度以内の方位を有する結晶粒の体積分率が90%以上であってもよい。
{110}<001>方位から15度以内の方位を有する結晶粒のうち、大きさが30〜1000μmの結晶粒の比率が80%以上であってもよい。
【発明の効果】
【0027】
本発明の一実施形態によれば、最終焼鈍時、コイル状態でバッチ(Batch)形態の焼鈍を実施せずに連続的な焼鈍を実施可能な方向性電磁鋼板の製造方法を提供することができる。すなわち、短時間の焼鈍だけでも方向性電磁鋼板を生産することができ、冷延鋼板を巻き取る工程を省略することができる。
【0028】
また、本発明の他の一実施形態によれば、結晶粒成長抑制剤を使用せずに方向性電磁鋼板を製造することができる。従って、浸窒焼鈍を省略することができる。
また、本発明の他の一実施形態によれば、方向性電磁鋼板の表面に密着性に優れた絶縁被膜を形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
第1、第2、及び第3などの用語は、多様な部分、成分、領域、層及び/又はセクションを説明するために使用されるが、これらに限定されない。これらの用語は、ある部分、成分、領域、層又はセクションを、他の部分、成分、領域、層又はセクションと区別するために使用される。従って、以下に述べる第1部分、成分、領域、層又はセクションは、本発明の範囲を逸脱しない範囲内で第2部分、成分、領域、層又はセクションと言及される。
【0030】
ここで使用される専門用語は、単に特定の実施形態を言及するためのものであり、本発明を限定することを意図しない。ここで使用される単数形態は、文章がこれと明らかに反対の意味を表さない限り、複数形態も含む。明細書で使用される「含む」の意味は、特定の特性、領域、整数、段階、動作、要素及び/又は成分を具体化し、他の特性、領域、整数、段階、動作、要素及び/又は成分の存在や付加を除外するものではない。
【0031】
別に定義しないものの、ここに使用される技術用語及び科学用語を含むすべての用語は、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が一般的に理解する意味と同じ意味を有する。普通使用される辞書に定義された用語は、関連する技術文献や現在開示された内容に符合する意味を有すると追加解釈され、定義されない限り、理想的又は非常に公式的な意味で解釈されない。
【0032】
また、特に言及しない限り、%は重量%(wt%)を意味する。
以下、本発明の実施形態について、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるように詳しく説明する。しかし、本発明は様々な異なる形態で実現可能であり、ここで説明する実施形態に限定されない。
【0033】
本発明の一実施形態による方向性電磁鋼板用絶縁被膜組成物は、金属シリケート又は有機シリケート10〜50重量部、無機ナノ粒子20〜70重量部及び水酸化コバルト0.1〜20重量部を含む。
金属シリケート又は有機シリケートは、素地鉄との密着性を画期的に改善し、高い引張応力を付与するために添加される。具体的には、金属シリケートは、ナトリウムシリケート(Sodium silicate)、カリウムシリケート(Potassium silicate)、カルシウムシリケート(Calcium silicate)、マグネシウムシリケート、マンガンシリケート、及びストロンチウムシリケートの中から選択される1種以上であってもよく、また、有機シリケートはテトラアルキルオルソシリケートであってもよく、より具体的には、テトラエチルオルソシリケート(Tetraethyl orthosilicate)及びテトラメチルオルソシリケート(Tetramethyl orthosilicate)の中から選択される1種以上であってもよい。
【0034】
金属シリケート又は有機シリケートは、10〜50重量部含まれることができる。金属シリケート又は有機シリケートが非常に少ししか含まれていなければ、素地鉄との密着性が低くなるという問題が発生することがある。金属シリケート又は有機シリケートを非常に多く含むときは、耐食性が低くなるという問題が発生することがある。従って、上述した範囲で金属シリケート又は有機シリケートの添加量を調節することができる。金属シリケート及び有機シリケートを同時に含む場合には、合計量で10〜50重量部含むことができる。
【0035】
無機ナノ粒子は、絶縁被膜の熱処理時に熱膨張係数が低いセラミック層を形成して素材に引張応力を付与する作用をする。具体的には、無機ナノ粒子はアルミナ(Al
2O
3)、シリカ(SiO
2)、チタニア(TiO
2)、ジルコニア(ZrO
2)、酸化イットリウム(Y
2O
3)及び酸化マグネシウム(MgO)の中から選択される1種以上であることができる。
【0036】
無機ナノ粒子は20〜70重量部含まれることができる。無機ナノ粒子が非常に少ししか含まれていなければ、セラミック層が形成できなくなり、素材に十分な引張応力を付与できない問題が発生することができる。無機ナノ粒子を非常に多く含むときは、固形分比が高くなって、方向性電磁鋼板表面の品質が低下するという問題が発生することある。従って、上述した範囲で無機ナノ粒子の添加量を調節することができる。
【0037】
無機ナノ粒子は平均粒径1〜100nmであってもよい。無機ナノ粒子の平均粒径が小さすぎると、比表面積が増加することにより、溶液のゲル化が急速に進行して初期溶液の特性を維持し難いという問題が発生することがある。無機ナノ粒子の平均粒径が大きすぎると、比表面積が小さくなって、縮合反応速度が遅くなるという問題が発生することがある。従って、上述した範囲で無機ナノ粒子の平均粒径を調節することが好ましい。
【0038】
無機ナノ粒子の粒径が互いに異なる2種類以上の無機ナノ粒子を混合して用いることもできる。粒径が互いに異なる2種類以上の無機ナノ粒子を混合すると、互いに異なる粒径の無機ナノ粒子の上昇作用で溶液特性が向上することができる。すなわち、粒径が相対的に大きい無機ナノ粒子によって溶液の安定性を長時間維持することができ、粒径が大きい無機ナノ粒子の間に粒径が相対的に小さい無機ナノ粒子が充満されて表面充填性が向上し絶縁特性も優れる。具体的には、粒径が1nm〜10nm未満の無機ナノ粒子と、粒径が10nm〜100nmの無機ナノ粒子と、の二種類の無機ナノ粒子を含むことができる。より具体的には、粒径が1nm〜10nm未満の無機ナノ粒子と、粒径が10nm〜30nm未満の無機ナノ粒子と、粒径が30nm〜100nmの無機ナノ粒子と、の三種類の無機ナノ粒子を含むことができる。
【0039】
水酸化コバルト(Co(OH)
2)は、金属シリケート又は有機シリケートと、無機ナノ粒子と、の混合によるゲル化を防止して安定性を維持する役割を果たす。水酸化コバルトは0.1〜20重量部含まれることができる。水酸化コバルトの添加量が少なすぎると、安定性の維持が不足となる問題が発生することがある。水酸化コバルトの添加量が多すぎると、被膜特性に悪影響を及ぼすことがある。従って、上述した範囲で水酸化コバルトの添加量を調節することが好ましい。
【0040】
絶縁被膜組成物は、溶媒を更に含んでもよい。溶媒は、絶縁被膜組成物の安定性、拡散性及び作業性を向上させる役割を果たす。具体的には、溶媒は、水、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、又はブタノールであってもよい。溶媒は、10〜25重量部含まれることができる。上述した範囲で、安定性、拡散性、及び作業性が向上する。
【0041】
絶縁被膜組成物は、金属リン酸塩を更に含んでもよい。金属リン酸塩の金属は、Mg、Al、Ca、Fe、Mn、Sr、Zr、及びBaの中から選択される1種以上であってもよい。具体的には、金属リン酸塩は、第1リン酸アルミニウム、第1リン酸マグネシウム、及び第1リン酸カルシウムの中から選択される1種以上であってもよい。
【0042】
具体的には、金属リン酸塩は、金属水酸化物とリン酸(H
3PO
4)との化学的な反応による化合物であってもよく、金属水酸化物の金属は、Mg、Al、Ca、Fe、Mn、Sr、Zr及びBaの中から選択される1種以上であってもよい。
具体的には、金属リン酸塩は、金属水酸化物の金属原子がリン酸のリンと置換反応して単結合、二重結合、又は三重結合を形成してなるものであり、未反応の遊離リン酸(H
3PO
4)の量が35%以下の化合物からなる。
【0043】
金属リン酸塩は、金属水酸化物及びリン酸(H
3PO
4)の化学的な反応による化合物からなり、リン酸に対する金属水酸化物の重量比率は、1:100〜70:100であってもよい。
もし、金属水酸化物が70:100の重量比率を超えて含まれる場合には、化学的な反応が完結しなくて沈殿物が生じるという問題が発生することがあり、金属水酸化物が1:100の重量比率未満で含まれる場合には、耐食性が劣るという問題が発生することがあるので、上述した範囲に限定する。
金属リン酸塩は10〜50重量部含まれることができる。
【0044】
本発明の他の一実施形態による方向性電磁鋼板の絶縁被膜形成方法は、方向性電磁鋼板及び方向性電磁鋼板用絶縁被膜組成物をそれぞれ準備する段階(S10)と、方向性電磁鋼板用絶縁被膜組成物を方向性電磁鋼板の表面に塗布する段階(S20)と、方向性電磁鋼板用絶縁被膜組成物が塗布された方向性電磁鋼板を熱処理する段階(S30)と、表面に絶縁被膜が形成された方向性電磁鋼板を収得する段階(S40)とを含む。この時、方向性電磁鋼板用絶縁被膜組成物は、金属シリケート又は有機シリケート10〜50重量部、無機ナノ粒子20〜70重量部、及び水酸化コバルト0.1〜20重量部を含む。
これは、上述した特性を有する方向性電磁鋼板用絶縁被膜組成物を使用して方向性電磁鋼板の表面に絶縁被膜を形成する方法に該当する。以下、方向性電磁鋼板の絶縁被膜形成方法の各段階についてより詳しく説明する。
【0045】
まず、段階(S10)は、方向性電磁鋼板及び方向性電磁鋼板用絶縁被膜組成物をそれぞれ準備する。
方向性電磁鋼板用絶縁被膜組成物に関する説明は前述の通りであるので、説明を繰り返すのは省略する。
【0046】
方向性電磁鋼板は、重量%で、Si:2.0〜4.0%、C:0.002%以下(0%を含まない)及びSb0.01〜0.06%を含み、残部はFe及びその他不可避不純物からなる。
【0047】
具体的には、方向性電磁鋼板の製造方法は、重量%で、Si:2.0%〜4.0%、C:0.1%〜0.4%及びSb:0.01%〜0.06%を含み、残部はFe及びその他不可避不純物からなるスラブを提供する段階と、スラブを再加熱する段階と、スラブを熱間圧延して熱延鋼板を製造する段階と、熱延鋼板を熱延板焼鈍する段階と、熱延板焼鈍された熱延鋼板を冷間圧延する段階と、冷間圧延された鋼板を脱炭焼鈍する段階と、脱炭焼鈍が完了した鋼板を冷間圧延する段階と、冷間圧延が完了した鋼板を最終焼鈍する段階とを含む。
【0048】
まず、重量%で、Si:2.0%〜4.0%、C:0.1%〜0.4%、及びSb:0.01%〜0.06%を含み、残部はFe及びその他不可避不純物からなるスラブを提供する。組成を限定した理由は、下記の通りである。
【0049】
ケイ素(Si)は、電磁鋼板の磁気異方性を低くし、比抵抗を増加させて、鉄損を改善する。Si含有量が2.0重量%未満の場合には、鉄損が劣り、4.0重量%を超過した場合には、脆性が増加する。従って、スラブ及び最終焼鈍段階以降、方向性電磁鋼板におけるSiの含有量は、2.0〜4.0重量%であってもよい。
【0050】
炭素(C)は、中間脱炭焼鈍及び最終焼鈍中に表層部のGoss結晶粒が中心部に拡散するために、中心部のCが表層部に抜け出る過程が必要であるため、スラブ中のCの含有量は、0.1〜0.4重量%であってもよい。また、最終焼鈍段階以降に方向性電磁鋼板における炭素量は、0.0020重量%以下(但し0重量%を含まない)であってもよい。
【0051】
アンチモン(Sb)は、中間脱炭焼鈍及び最終焼鈍中の再結晶集合組織で{110}<001>方位を有する結晶粒の分率を増加させる効果がある。また、Sbは、脱炭焼鈍時の酸化反応を抑制する効果が得られるため、脱炭焼鈍時、温度をより上昇させることができ、結晶粒界に析出して結晶粒成長を抑制できるため、再結晶粒径を小さくすることができる長所を得ることができる。従って、再結晶粒微細化による磁区の微細化効果を得ることもできる。Sb含有量が0.01重量%未満の場合には、鉄損が劣り、0.06重量%を超過する場合は、結晶粒の大きさの制御が難しい。従って、スラブ及び最終焼鈍段階以降、方向性電磁鋼板におけるSbの含有量は0.01〜0.06重量%であってもよい。
【0052】
次いで、上述した組成のスラブを再加熱する。スラブの再加熱温度は1100℃〜1350℃であってもよい。本発明の一実施形態による方向性電磁鋼板の製造方法は、スラブ内の炭素の含有量が従来のスラブより多いので、スラブの再加熱温度が高くても熱延組織が粗大化せず、通常の場合より高い温度で再加熱することによって、熱間圧延時に有利である。
【0053】
次いで、再加熱が完了したスラブを熱間圧延して熱延鋼板を製造する。この時、熱延鋼板の厚さは2mm〜5mmであってもよい。
次いで、熱延鋼板を熱延板焼鈍する。この時、熱延板焼鈍は850℃〜1000℃の温度で実施すればよい。また、この時、露点温度は50〜70℃で実施すればよい。上述した範囲の温度及び露点温度で脱炭焼鈍が容易で表層部のGoss結晶粒が中心部に拡散する効果がある。
【0054】
次いで、熱延板焼鈍された熱延鋼板を冷間圧延する。冷間圧延は50〜70%の圧下率で実施すればよい。上述した範囲の圧下率で冷間圧延を実施した場合、Goss集合組織が表層部で複数形成可能である。より具体的には、冷間圧延時、圧下率は55%〜65%であってもよい。
【0055】
次いで、冷間圧延された鋼板を脱炭焼鈍する。脱炭焼鈍は、オーステナイト単相領域、又はフェライト及びオーステナイトの複合相が存在する領域で、露点温度40℃〜60℃で実施すればよい。この時、温度範囲は750℃〜950℃であってもよい。また、雰囲気は、水素及び窒素の混合ガス雰囲気であってもよい。更に、脱炭焼鈍時の脱炭量は、0.0300wt%〜0.0600wt%であってもよい。
【0056】
このような脱炭焼鈍過程で、電磁鋼板の表面の結晶粒の大きさは粗大に成長するが、電磁鋼板の内部の結晶粒は微細な組織として残る。このような脱炭焼鈍以降の表面フェライト結晶粒の大きさは、150μm〜250μmであってもよい。
本発明の一実施形態では、結晶粒成長抑制剤を使用せずに方向性電磁鋼板を製造することができ、脱炭過程を通してGossを成長させるため、別途のインヒビターを形成する浸窒焼鈍を省略することができる。
【0057】
次に、脱炭焼鈍が完了した鋼板を冷間圧延する。
通常、冷間圧延は、90%に近い高圧下率で1回実施することが効果的と知られている。これは1次再結晶粒中のGoss結晶粒のみが粒子成長するのに有利な環境を作るからである。これに対し本発明の一実施形態による方向性電磁鋼板の製造方法は、Goss方位の結晶粒の異常な粒子成長を利用するのはなく、脱炭焼鈍及び冷間圧延によって発生した表層部のGoss結晶粒を内部拡散させるものであるため、表層部でGoss方位の結晶粒を多数分布するように形成することが有利である。従って、50%〜70%圧下率で2回以上冷間圧延する。脱炭焼鈍及び冷間圧延は、2回以上繰り返して実施すればよい。
【0058】
次に、冷間圧延が完了した鋼板を最終焼鈍する。
本発明の一実施形態による方向性電磁鋼板の製造方法では、従来のバッチ(Batch)方式とは異なり、冷間圧延に続いて、連続で最終焼鈍を実施すればよい。すなわち、最終焼鈍を迅速に実施すればよい。具体的には、最終焼鈍を1〜30分間実施すればよい。このように最終焼鈍を連続的に実施可能な理由は、従来の異常粒成長技術とは異なり、Goss単結晶を形成して正常粒成長を誘導するためである。
【0059】
最終焼鈍段階は、900℃〜1000℃の温度及び露点温度55℃〜65℃で焼鈍を実施する第1段階と、1000℃〜1200℃の温度及びH
2 75体積%以上の雰囲気で実施する第2段階と、に分けて実施すればよい。このように、2段階に分けて最終焼鈍を実施することによって、Gossの集積度を向上させて磁束密度を改善するという長所がある。
【0060】
このような方法で製造された方向性電磁鋼板は、{110}<001>方位から15度以内の方位を有する結晶粒の体積分率が90%以上となることができる。{110}<001>方位から15度以内の方位を有する結晶粒の体積分率が高いため、磁性特性に優れた方向性電磁鋼板を得ることができる。
【0061】
また、{110}<001>方位から15度以内の方位を有する結晶粒中、大きさが30〜1000μmの結晶粒の比率が80%以上となることができる。このように、{110}<001>方位から15度以内の方位を有する結晶粒中の大きさを特定範囲に制限することによって、磁性特性の優れた方向性電磁鋼板を得ることができる。
【0062】
再び、方向性電磁鋼板の絶縁被膜形成方法に戻れば、段階(S20)では、方向性電磁鋼板の表面に方向性電磁鋼板用絶縁被膜組成物を塗布する。方向性電磁鋼板の一側表面当たり0.5〜7g/m
2の範囲で方向性電磁鋼板用絶縁被膜組成物を塗布することができる。方向性電磁鋼板用絶縁被膜組成物を非常に多く塗布すると、占積率が低下して、最終的に得られた方向性電磁鋼板を変圧器などの製品を製造した場合に製品特性が劣るという問題が発生することがある。方向性電磁鋼板用絶縁被膜組成物を非常に少ししか塗布していないと、絶縁被膜によって発現する絶縁特性が劣るという問題がある。従って、方向性電磁鋼板用絶縁被膜組成物を上述した範囲の量で塗布することができる。
【0063】
段階(S30)は、方向性電磁鋼板用絶縁被膜組成物が塗布された方向性電磁鋼板を熱処理する。この時、熱処理は250〜950℃の温度範囲で実施すればよい。熱処理温度が低すぎると、方向性電磁鋼板用絶縁被膜組成物の乾燥が不充分に行われて、絶縁被膜の特性を確保し難いという問題が発生することがある。熱処理温度が高すぎると、絶縁被膜に斑模様の欠陥が発生することがある。従って、上述した範囲で熱処理温度を調節することができる。
【0064】
本発明の他の一実施形態による方向性電磁鋼板は、方向性電磁鋼板と方向性電磁鋼板の表面に形成された絶縁被膜とを含む。この時、絶縁被膜は、金属シリケート又は有機シリケート10〜50重量部、無機ナノ粒子20〜70重量部、及び水酸化コバルト0.1〜20重量部を含む。
方向性電磁鋼板用絶縁被膜組成物及び方向性電磁鋼板に関する説明は前述の通りであるから、説明を繰り返すのを省略する。
【0065】
本発明の一実施形態による方向性電磁鋼板用絶縁被膜組成物は、金属リン酸塩10〜50重量部、粒径が1nm〜10nm未満の無機ナノ粒子5〜30重量部、粒径が10nm〜100nmの無機ナノ粒子10〜40重量部及びクロム酸化物0.1〜20重量部を含む。
【0066】
金属リン酸塩は素地鉄との密着性を画期的に改善し、高い引張応力を付与するために添加される。具体的には、金属リン酸塩は、Mg、Al、Ca、Fe、Mn、Sr、Zr及びBaの中から選択される1種以上の金属を含んでもよい。
具体的には、金属リン酸塩は第1リン酸アルミニウム、第1リン酸マグネシウム及び第1リン酸カルシウムの中から選択される1種以上であってもよい。
【0067】
具体的には、金属リン酸塩は、金属水酸化物及びリン酸(H
3PO
4)の化学的な反応による化合物であってもよく、金属水酸化物の金属はMg、Al、Ca、Fe、Mn、Sr、Zr及びBaの中から選択される1種以上であってもよい。
具体的には、金属リン酸塩は、金属水酸化物の金属原子がリン酸のリンと置換反応して単結合、二重結合、又は三重結合を形成してなるものであり、未反応の遊離リン酸(H
3PO
4)の量が35%以下の化合物からなる。
【0068】
金属リン酸塩は、金属水酸化物及びリン酸(H
3PO
4)の化学的な反応による化合物からなるものであり、リン酸に対する金属水酸化物の重量比率は、1:100〜70:100であってもよい。
【0069】
もし、70:100の重量比率を超えて金属水酸化物が含まれる場合には、化学的な反応が完結しなくて沈殿物が生じる問題が発生することが
あり、1:100の重量比率未満の金属水酸化物含む場合には、耐食性が劣るという問題が発生することがあので、上述した範囲に限定する。
【0070】
金属リン酸塩は、10〜50重量部含まれることができる。金属リン酸塩が非常に少ししか含まれていなければ、コーティング剤の接着力が低下して被膜張力及び密着性が低下するという問題が発生することがある。金属リン酸塩を非常に多く含む時は、絶縁特性が低下することがある。従って、上述した範囲で金属リン酸塩の添加量を調節することができる。
【0071】
無機ナノ粒子は、絶縁被膜の熱処理時に熱膨張係数が低いセラミック層を形成して素材に引張応力を付与する作用をする。具体的には、無機ナノ粒子は、アルミナ(Al
2O
3)、シリカ(SiO
2)、チタニア(TiO
2)、ジルコニア(ZrO
2)、酸化イットリウム(Y
2O
3)、及び酸化マグネシウム(MgO)の中から選択される1種以上であってもよい。
【0072】
無機ナノ粒子は、粒径が互いに異なる2種類以上の無機ナノ粒子を混合して使用する。粒径が互いに異なる2種類以上の無機ナノ粒子を混合すると、互いに異なる粒径の無機ナノ粒子の上昇作用で溶液特性を向上させることができる。すなわち、粒径が相対的に大きい無機ナノ粒子によって溶液の安定性が長時間維持され、粒径が大きい無機ナノ粒子の間に粒径が相対的に小さい無機ナノ粒子で充満されて表面充填性が向上し、絶縁特性も優れる。具体的には、粒径が1nm〜10nm未満の無機ナノ粒子と、粒径が10nm〜100nmの無機ナノ粒子と、の二種類の無機ナノ粒子を含むことができる。
【0073】
この時、粒径が10nm〜100nmの無機ナノ粒子を5〜30重量部と、粒径が10nm〜100nmの無機ナノ粒子10〜40重量部と、を含むことができる。上述した範囲で溶液の安定性が長時間維持され、表面充填性が向上し、また絶縁特性も優れている。
より具体的には、粒径が互いに異なる2種類以上の無機ナノ粒子を混合でき、粒径が10nm〜100nmの無機ナノ粒子が、粒径が10nm〜30nm未満の無機ナノ粒子5〜20重量部及び粒径が30nm〜100nmの無機ナノ粒子5〜20重量部を含んでもよい。上述した範囲で溶液の安定性が長時間維持され、表面充填性が向上し絶縁特性も優れている。
【0074】
クロム酸化物は、金属リン酸塩と無機ナノ粒子の混合によるゲル化を防止して安定性を維持する役割を果たす。クロム酸化物は0.1〜20重量部含まれることができる。クロム酸化物の添加量が少なすぎると、安定性保持が不足となる問題が発生することがある。クロム酸化物の添加量が多すぎると、被膜特性に悪影響を及ぼすことがある。従って、上述した範囲でクロム酸化物の添加量を調節することができる。クロム酸化物は、具体的には、三酸化クロム、酸化第二クロム、及び酸化第一クロムの中から選択される1種以上であってもよい。
【0075】
絶縁被膜組成物は、溶媒を更に含んでもよい。溶媒は、絶縁被膜組成物の安定性、拡散性、及び作業性を向上させる役割を果たす。具体的には、溶媒は、水、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、又はブタノールであってもよい。溶媒は10〜25重量部含まれることができる。上述した範囲で安定性、拡散性及び作業性が向上する。
【0076】
本発明の他の一実施形態による方向性電磁鋼板の絶縁被膜形成方法は、方向性電磁鋼板及び方向性電磁鋼板用絶縁被膜組成物をそれぞれ準備する段階(S10)と、方向性電磁鋼板用絶縁被膜組成物を方向性電磁鋼板の表面に塗布する段階(S20)と、方向性電磁鋼板用絶縁被膜組成物が塗布された方向性電磁鋼板を熱処理する段階(S30)と、表面に絶縁被膜が形成された方向性電磁鋼板を収得する段階(S40)とを含む。この時、方向性電磁鋼板用絶縁被膜組成物は、金属リン酸塩10〜50重量部、粒径が1nm〜10nm未満の無機ナノ粒子5〜30重量部、粒径が10nm〜100nmの無機ナノ粒子10〜40重量部及びクロム酸化物0.1〜20重量部を含む。
【0077】
これは、前述した特性を有する方向性電磁鋼板用絶縁被膜組成物を使用して、方向性電磁鋼板の表面に絶縁被膜を形成する方法に該当する。以下、方向性電磁鋼板の絶縁被膜形成方法の各段階について、より詳しく説明する。
まず、段階(S10)は、方向性電磁鋼板及び方向性電磁鋼板用絶縁被膜組成物をそれぞれ準備する。
【0078】
方向性電磁鋼板用絶縁被膜組成物に関する説明は前述の通りであるので、説明を繰り返すのを省略する。
方向性電磁鋼板は、重量%で、Si:2.0〜4.0%、C:0.002%以下(但し0%を含まない)及びSb0.01〜0.06%を含み、残部はFe及びその他不可避不純物からなる。
【0079】
具体的には、方向性電磁鋼板の製造方法は、重量%で、Si:2.0%〜4.0%、C:0.1%〜0.4%及びSb:0.01%〜0.06%を含み、残部はFe及びその他不可避不純物からなるスラブを提供する段階と、スラブを再加熱する段階と、スラブを熱間圧延して熱延鋼板を製造する段階と、熱延鋼板を熱延板焼鈍する段階と、熱延板焼鈍された熱延鋼板を冷間圧延する段階と、冷間圧延された鋼板を脱炭焼鈍する段階と、脱炭焼鈍が完了した鋼板を冷間圧延する段階と、冷間圧延が完了した鋼板を最終焼鈍する段階と、を含む。
【0080】
まず、重量%で、Si:2.0%〜4.0%、C:0.1%〜0.4%及びSb:0.01%〜0.06%を含み、残部はFe及びその他不可避不純物からなるスラブを提供する。組成を限定した理由は、下記の通りである。
【0081】
ケイ素(Si)は、電磁鋼板の磁気異方性を低くし、比抵抗を増加させて鉄損を改善する。Si含有量が2.0重量%未満の場合には、鉄損が劣り、4.0重量%を超過した場合は、脆性が増加する。従って、スラブ及び最終焼鈍段階以降、方向性電磁鋼板におけるSiの含有量は2.0〜4.0重量%であってもよい。
【0082】
炭素(C)は、中間脱炭焼鈍及び最終焼鈍中に表層部のGoss結晶粒が中心部に拡散するために、中心部のCが表層部に抜け出る過程が必要であるため、スラブ中のCの含有量は0.1〜0.4重量%であってもよい。また、最終焼鈍段階以降、方向性電磁鋼板における炭素量は、0.0020重量%以下(但し0重量%を含まない)であってもよい。
【0083】
アンチモン(Sb)は、中間脱炭焼鈍及び最終焼鈍中、再結晶集合組織で{110}<001>方位を有する結晶粒の分率を増加させる効果がある。また、Sbは、脱炭焼鈍時の酸化反応を抑制する効果が得られるため、脱炭焼鈍時、温度をより上昇させることができ、結晶粒界に析出して結晶粒成長を抑制できるので、再結晶粒径を小さくすることができるという長所を得ることができる。従って、再結晶粒微細化による磁区の微細化効果を得ることもできる。Sb含有量が0.01重量%未満の場合は、鉄損が劣り、0.06重量%を超過した場合には、結晶粒の大きさ制御が難しい。従って、スラブ及び最終焼鈍段階以降は、方向性電磁鋼板におけるSbの含有量が0.01〜0.06重量%であってもよい。
【0084】
次いで、上述した組成のスラブを再加熱する。スラブの再加熱温度は1100℃〜1350℃であってもよい。本発明の一実施形態による方向性電磁鋼板の製造方法は、スラブ内の炭素の含有量が従来のスラブより多く、スラブの再加熱温度が高くても熱延組織が粗大化しないので、通常の場合より高い温度で再加熱することによって、熱間圧延に有利である。
【0085】
次いで、再加熱が完了したスラブを熱間圧延して熱延鋼板を製造する。この時、熱延鋼板の厚さは2mm〜5mmであってもよい。
次いで、熱延鋼板を熱延板焼鈍する。この時、熱延板焼鈍は850℃〜1000℃の温度で実施すればよい。また、この時、露点温度は50〜70℃で実施すればよい。上述した範囲の温度及び露点温度で脱炭焼鈍が容易で表層部のGoss結晶粒が中心部に拡散する効果がある。
【0086】
次いで、熱延板焼鈍された熱延鋼板を冷間圧延する。冷間圧延は50〜70%の圧下率で実施すればよい。上述した範囲の圧下率で冷間圧延を実施する場合、Goss集合組織が表層部で複数形成可能である。より具体的には、冷間圧延時、圧下率は55%〜65%であってもよい。
【0087】
次いで、冷間圧延された鋼板を脱炭焼鈍する。脱炭焼鈍は、オーステナイト単相領域、又はフェライト及びオーステナイトの複合相が存在する領域で、露点温度40℃〜60℃で実施すればよい。この時、温度範囲は750℃〜950℃であってもよい。また、雰囲気は、水素及び窒素の混合ガス雰囲気であってもよい。更に、脱炭焼鈍時の脱炭量は、0.0300wt%〜0.0600wt%であってもよい。
【0088】
このような脱炭焼鈍過程で、電磁鋼板の表面の結晶粒の大きさは粗大に成長するが、電磁鋼板の内部の結晶粒は微細な組織として残る。このような脱炭焼鈍以降の表面フェライト結晶粒の大きさは、150μm〜250μmであってもよい。
本発明の一実施形態では、結晶粒成長抑制剤を使用せずに方向性電磁鋼板を製造でき、脱炭過程を通してGossを成長させるため、別途のインヒビターを形成する浸窒焼鈍を省略することができる。
【0089】
次に、脱炭焼鈍が完了した鋼板を冷間圧延する。
通常、冷間圧延は、90%に近い高圧下率で1回実施することが効果的であると知られている。これは、1次再結晶粒中のGoss結晶粒のみが粒子成長するのに有利な環境を作るからである。
これに対し、本発明の一実施形態による方向性電磁鋼板の製造方法は、Goss方位の結晶粒の異常な粒子成長を利用するのはなく、脱炭焼鈍及び冷間圧延によって発生した表層部のGoss結晶粒を内部拡散させるものであるため、表層部でGoss方位の結晶粒が多数分布するように形成することが有利である。従って、50%〜70%圧下率で2回以上冷間圧延する。脱炭焼鈍及び冷間圧延は、2回以上繰り返して実施すればよい。
【0090】
次に、冷間圧延が完了した鋼板を最終焼鈍する。
本発明の一実施形態による方向性電磁鋼板の製造方法では、従来のバッチ(Batch)方式とは異なり、冷間圧延に続いて、連続して最終焼鈍を実施すればよい。すなわち、最終焼鈍を迅速に実施すればよい。具体的には、最終焼鈍を1〜30分間実施すればよい。このように最終焼鈍を連続的に実施可能な理由は、既存の異常粒成長技術とは異なり、Goss単結晶を形成して正常粒成長を誘導するためである。
【0091】
最終焼鈍段階は、900℃〜1000℃の温度及び露点温度55℃〜65℃で焼鈍を実施する第1段階と、1000℃〜1200℃の温度及びH
2 75体積%以上の雰囲気で実施する第2段階と、に分けて実施すればよい。このように、2段階に分けて最終焼鈍を実施することによって、Gossの集積度を向上させて磁束密度が改善できるという長所がある。
【0092】
このような方法で製造された方向性電磁鋼板は、{110}<001>方位から15度以内の方位を有する結晶粒の体積分率が90%以上となることができる。{110}<001>方位から15度以内の方位を有する結晶粒の体積分率が高いため、磁性特性に優れた方向性電磁鋼板を得ることができる。
【0093】
また、{110}<001>方位から15度以内の方位を有する結晶粒のうち、大きさが30〜1000μmの結晶粒の比率が80%以上となることができる。このように、{110}<001>方位から15度以内の方位を有する結晶粒中の大きさを特定範囲に制限することによって、磁性特性に優れた方向性電磁鋼板を得ることができる。
【0094】
再び、方向性電磁鋼板の絶縁被膜形成方法に戻れば、段階(S20)は、方向性電磁鋼板用絶縁被膜組成物を方向性電磁鋼板の表面に塗布する。方向性電磁鋼板の一側表面当たり0.5〜7g/m
2の範囲で方向性電磁鋼板用絶縁被膜組成物を塗布することができる。方向性電磁鋼板用絶縁被膜組成物を非常に多く塗布すると、占積率が低下して、最終的に得られた方向性電磁鋼板を変圧器などの製品に製造したときに、製品の特性が劣るという問題が発生することがある。方向性電磁鋼板用絶縁被膜組成物が非常に少ししか塗布されていなければ、絶縁被膜によって発現する絶縁特性が劣るという問題がある。従って、方向性電磁鋼板用絶縁被膜組成物を上述した範囲の量で塗布することができる。
【0095】
段階(S30)は、方向性電磁鋼板用絶縁被膜組成物が塗布された方向性電磁鋼板を熱処理する。この時、熱処理は250〜950℃の温度範囲で実施すればよい。熱処理温度が低すぎると、方向性電磁鋼板用絶縁被膜組成物の乾燥が不充分になって、絶縁被膜の特性を確保し難いという問題が発生することがある。熱処理温度が高すぎると、絶縁被膜に斑模様の欠陥が発生することがある。従って、上述した範囲で熱処理温度を調節することができる。
【0096】
本発明の他の一実施形態による方向性電磁鋼板は、方向性電磁鋼板と方向性電磁鋼板の表面に形成された絶縁被膜とを含む。この時、絶縁被膜は、金属リン酸塩10〜50重量部、粒径が1nm〜10nm未満の無機ナノ粒子5〜30重量部、粒径が10nm〜100nmの無機ナノ粒子10〜40重量部及びクロム酸化物0.1〜20重量部を含む。
方向性電磁鋼板用絶縁被膜組成物及び方向性電磁鋼板に関する説明は前述の通りであるので、説明を繰り返すのを省略する。
【0097】
以下、本発明の望ましい実施例及び比較例を記載する。しかし、下記の実施例は本発明の望ましい一実施形態に過ぎず、本発明が下記の実施例に限定されるものではない。
実施例1
重量%で、Si:2.0%、C:0.20%及びSb:0.05%を含有し、残部Fe及び不可避不純物からなるスラブを1150℃の温度で220分間加熱した後、3mm厚さに熱間圧延し、次に、焼鈍温度900℃、露点温度60℃で150秒間熱延板焼鈍を実施して冷却した後、酸洗を実施し、60%の圧下率で冷間圧延した。
【0098】
冷間圧延された板は、再び900℃の温度で水素、窒素の湿潤(露点温度60℃)混合ガス雰囲気で、100秒間脱炭焼鈍を実施した。以降、60%の圧下率で2次冷間圧延して、同一条件で45秒間2次脱炭焼鈍を実施した。再び60%の圧下率で3次冷間圧延して、950℃の温度で水素、窒素の湿潤(露点温度60℃)混合ガス雰囲気で45秒間1次最終焼鈍を実施した後、1080℃の水素雰囲気で2分間2次最終焼鈍を実施した。この時、最終焼鈍中、700℃までの昇温区間の昇温率を150℃/secで実施した。製造された方向性電磁鋼板の厚さは0.27mmであり、300×60mmに試験片を準備した。
【0099】
製造された方向性電磁鋼板の結晶粒を分析した結果、{110}<001>方位から15度以内の方位を有する結晶粒の体積分率は94%であり、{110}<001>方位から15度以内の方位を有する結晶粒中、大きさが30um以上1000um以下である比率は83%であった。
絶縁被膜組成物は、平均粒径7nmのアルミナナノ粒子35重量部、ナトリウムシリケート40重量部、水酸化コバルト5重量部、及び水20重量部を十分に混合して製造した。
最終焼鈍が完了した方向性電磁鋼板の表面に、4.2g/m
2の量で絶縁被膜組成物を塗布し、850℃で30秒間熱処理を実施して、絶縁被膜が形成された方向性電磁鋼板を得た。絶縁被膜の厚さは2μmであった。
【0100】
実施例1で製造した絶縁被膜が形成された方向性電磁鋼板の磁束密度、鉄損、絶縁性、被膜張力及び耐食性を下記の方法で評価して、下記表1に整理した。
実施例2
実施例1と同一の方式で絶縁被膜が形成された方向性電磁鋼板を製造するが、ナトリウムシリケートの代わりにマグネシウムシリケートを使用した。
実施例2で製造した絶縁被膜が形成された方向性電磁鋼板の磁束密度、鉄損、絶縁性、被膜張力及び耐食性を下記の方法で評価して、下記表1に整理した。
【0101】
実施例3
実施例1と同一の方式で絶縁被膜が形成された方向性電磁鋼板を製造するが、ナトリウムシリケートの代わりにカルシウムシリケートを使用した。
実施例3で製造した絶縁被膜が形成された方向性電磁鋼板の磁束密度、鉄損、絶縁性、被膜張力及び耐食性を下記の方法で評価して、下記表1に整理した。
【0102】
実施例4
実施例1と同一の方式で絶縁被膜が形成された方向性電磁鋼板を製造するが、ナトリウムシリケートの代わりにマンガンシリケートを使用した。
実施例4で製造した絶縁被膜が形成された方向性電磁鋼板の磁束密度、鉄損、絶縁性、被膜張力及び耐食性を下記の方法で評価して、下記表1に整理した。
【0103】
実施例5
実施例1と同一の方式で絶縁被膜が形成された方向性電磁鋼板を製造するが、ナトリウムシリケートの代わりにストロンチウムシリケートを使用した。
実施例5で製造した絶縁被膜が形成された方向性電磁鋼板の磁束密度、鉄損、絶縁性、被膜張力及び耐食性を下記の方法で評価して、下記表1に整理した。
【0104】
試験例1:鉄損の測定方法
周波数50Hzの磁場を1.7Teslaまで交流で磁化した時に示す電力損失を測定した。
【0105】
試験例2:磁束密度の測定方法
電磁鋼板の周囲を巻き取った捲線に800A/mの大きさの電流量を流した時、電磁鋼板に流れる磁束密度値を測定した。
【0106】
試験例3:絶縁性の測定方法
ASTM A717国際規格により、Franklin測定器を活用して300PSI圧力下で電圧0.5V、電流1.0Aを通過した時の収納電流値を測定した。
【0107】
試験例4:被膜張力の測定方法
表面に形成された絶縁被膜による引張応力付与で一方向に歪むようになり、このような歪みの程度を測定して絶縁被膜による被膜張力を評価した。
試験例5:耐食性の測定方法
5重量%、35℃、NaCl溶液に8時間、試験片のサビ発生の有無を評価するものであり、本試験では、サビ発生面積が5%以下の場合は優秀、20%以下の場合は良好、20〜50%の場合はやや不良、50%以上の場合は不良と表示した。
【0109】
表1から分かるように、本発明の一実施形態による絶縁被膜が形成された方向性電磁鋼板は、電気的特性に優れており、絶縁性、被膜張力及び耐食性にも優れていることが確認できる。
【0110】
実施例6
実施例1と同一の方式で絶縁被膜が形成された方向性電磁鋼板を製造するが、アルミナナノ粒子の代わりに平均粒径5nmのシリカナノ粒子を使用した。
実施例6で製造した絶縁被膜が形成された方向性電磁鋼板の磁束密度、鉄損、絶縁性、被膜張力及び耐食性を上述した方法で評価して、下記表2に整理した。
【0111】
実施例7
実施例1と同一の方式で絶縁被膜が形成された方向性電磁鋼板を製造するが、アルミナナノ粒子の代わりに平均粒径12nmのシリカナノ粒子を使用した。
実施例7で製造した絶縁被膜が形成された方向性電磁鋼板の磁束密度、鉄損、絶縁性、被膜張力及び耐食性を上述した方法で評価して、下記表2に整理した。
【0112】
実施例8
実施例1と同一の方式で絶縁被膜が形成された方向性電磁鋼板を製造するが、アルミナナノ粒子の代わりに平均粒径50nmのシリカナノ粒子を使用した。
実施例8で製造した絶縁被膜が形成された方向性電磁鋼板の磁束密度、鉄損、絶縁性、被膜張力及び耐食性を上述した方法で評価して、下記表2に整理した。
【0113】
実施例9
実施例1と同一の方式で絶縁被膜が形成された方向性電磁鋼板を製造するが、アルミナナノ粒子の代わりに平均粒径5nmのシリカナノ粒子15重量部及び平均粒径15nmのシリカナノ粒子20重量部を使用した。
実施例9で製造した絶縁被膜が形成された方向性電磁鋼板の磁束密度、鉄損、絶縁性、被膜張力及び耐食性を上述した方法で評価して、下記表2に整理した。
【0114】
実施例10
実施例1と同一の方式で絶縁被膜が形成された方向性電磁鋼板を製造するが、アルミナナノ粒子の代わりに平均粒径5nmのシリカナノ粒子10重量部、平均粒径25nmのシリカナノ粒子10重量部及び平均粒径40nmのシリカナノ粒子15重量部を使用した。
実施例10で製造した絶縁被膜が形成された方向性電磁鋼板の磁束密度、鉄損、絶縁性、被膜張力及び耐食性を上述した方法で評価して、下記表2に整理した。
【0116】
表2から分かるように、互いに異なる粒径からなる2種類以上のシリカナノ粒子を混合して用いた実施例9及び実施例10は、被膜張力及び絶縁性が特に優れており、耐食性も改善されたことが観察された。
【0117】
実施例11
重量%で、Si:2.0%、C:0.20%及びSb:0.05%を含有し、残部Fe及び不可避不純物からなるスラブを1150℃の温度で220分間加熱した後、3mm厚さに熱間圧延し、次に、焼鈍温度900℃、露点温度60℃で150秒間熱延板焼鈍を実施して冷却した後、酸洗を実施し、60%の圧下率で冷間圧延した。
【0118】
冷間圧延された板は、再び900℃の温度で水素、窒素の湿潤(露点温度60℃)混合ガス雰囲気で、100秒間脱炭焼鈍を実施した。以降、60%の圧下率で2次冷間圧延して、同一条件で45秒間2次脱炭焼鈍を実施した。再び60%の圧下率で3次冷間圧延して、950℃の温度で水素、窒素の湿潤(露点温度60℃)混合ガス雰囲気で45秒間1次最終焼鈍を実施した後、1080℃の水素雰囲気で2分間2次最終焼鈍を実施した。この時、最終焼鈍中、700℃までの昇温区間の昇温率を150℃/Secで実施した。製造された方向性電磁鋼板の厚さは0.27mmであり、300×60mmに試験片を準備した。
【0119】
製造された方向性電磁鋼板の結晶粒を分析した結果、{110}<001>方位から15度以内の方位を有する結晶粒の体積分率は94%であり、{110}<001>方位から15度以内の方位を有する結晶粒中、大きさが30um以上1000um以下である比率は83%であった。
【0120】
絶縁被膜組成物は、平均粒径5nmのシリカナノ粒子15重量部、平均粒径15nmのシリカナノ粒子20重量部、リン酸アルミニウム40重量部、三酸化クロム5重量部及び水20重量部を十分に混合して製造した。
最終焼鈍が完了した方向性電磁鋼板の表面に、4.2g/m
2の量で絶縁被膜組成物を塗布し、850℃で30秒間熱処理を実施して、絶縁被膜が形成された方向性電磁鋼板を得た。絶縁被膜の厚さは2μmであった。
実施例11で製造した絶縁被膜が形成された方向性電磁鋼板の磁束密度、鉄損、絶縁性、被膜張力及び耐食性を上述した方法で評価して、下記表3に整理した。
【0121】
実施例12
実施例11と同一の方式で絶縁被膜が形成された方向性電磁鋼板を製造するが、シリカナノ粒子を平均粒径5nmのシリカナノ粒子10重量部、平均粒径25nmのシリカナノ粒子10重量部及び平均粒径40nmのシリカナノ粒子15重量部を使用した。
実施例12で製造した絶縁被膜が形成された方向性電磁鋼板の磁束密度、鉄損、絶縁性、被膜張力及び耐食性を上述した方法で評価して、下記表3に整理した。
【0122】
実施例13
実施例11と同一の方式で絶縁被膜が形成された方向性電磁鋼板を製造するが、シリカナノ粒子を平均粒径5nmのシリカナノ粒子5重量部、平均粒径12nmのシリカナノ粒子10重量部及び平均粒径25nmのシリカナノ粒子10重量部を使用した。
実施例13で製造した絶縁被膜が形成された方向性電磁鋼板の磁束密度、鉄損、絶縁性、被膜張力及び耐食性を上述した方法で評価して、下記表3に整理した。
【0123】
比較例1
実施例11と同一の方式で絶縁被膜が形成された方向性電磁鋼板を製造するが、シリカナノ粒子は平均粒径が5nmのシリカナノ粒子35重量部を使用した。
比較例1で製造した絶縁被膜が形成された方向性電磁鋼板の磁束密度、鉄損、絶縁性、被膜張力及び耐食性を上述した方法で評価して、下記表3に整理した。
【0124】
比較例2
実施例11と同一の方式で絶縁被膜が形成された方向性電磁鋼板を製造するが、シリカナノ粒子は平均粒径が12nmのシリカナノ粒子35重量部を使用した。
比較例2で製造した絶縁被膜が形成された方向性電磁鋼板の磁束密度、鉄損、絶縁性、被膜張力及び耐食性を上述した方法で評価して、下記表3に整理した。
【0125】
比較例3
実施例11と同一の方式で絶縁被膜が形成された方向性電磁鋼板を製造するが、シリカナノ粒子は平均粒径が50nmのシリカナノ粒子35重量部を使用した。
比較例3で製造した絶縁被膜が形成された方向性電磁鋼板の磁束密度、鉄損、絶縁性、被膜張力及び耐食性を上述した方法で評価して、下記表3に整理した。
【0127】
表3から分かるように、本発明の一実施形態による絶縁被膜が形成された方向性電磁鋼板は、2種類以上の粒径大きさを有する無機ナノ粒子を使用することによって、被膜張力と絶縁性が特に優れており、耐食性も改善されたことが観察された。
【0128】
実施例14
実施例11と同一の方式で絶縁被膜が形成された方向性電磁鋼板を製造するが、リン酸アルミニウムの代わりにリン酸マグネシウムを使用した。
実施例14で製造した絶縁被膜が形成された方向性電磁鋼板の磁束密度、鉄損、絶縁性、被膜張力及び耐食性を上述した方法で評価して、下記表4に整理した。
【0129】
実施例15
実施例11と同一の方式で絶縁被膜が形成された方向性電磁鋼板を製造するが、リン酸アルミニウムの代わりにリン酸カルシウムを使用した。
実施例15で製造した絶縁被膜が形成された方向性電磁鋼板の磁束密度、鉄損、絶縁性、被膜張力及び耐食性を上述した方法で評価して、下記表4に整理した。
【0130】
実施例16
実施例11と同一の方式で絶縁被膜が形成された方向性電磁鋼板を製造するが、リン酸アルミニウムの代わりにリン酸マンガンを使用した。
実施例16で製造した絶縁被膜が形成された方向性電磁鋼板の磁束密度、鉄損、絶縁性、被膜張力及び耐食性を上述した方法で評価して、下記表4に整理した。
【0131】
実施例17
実施例11と同一の方式で絶縁被膜が形成された方向性電磁鋼板を製造するが、リン酸アルミニウムの代わりにリン酸ストロンチウムを使用した。
実施例17で製造した絶縁被膜が形成された方向性電磁鋼板の磁束密度、鉄損、絶縁性、被膜張力及び耐食性を上述した方法で評価して、下記表4に整理した。
【0133】
表4から分かるように、本発明の一実施形態による絶縁被膜が形成された方向性電磁鋼板は、電気的特性に優れており、絶縁性、被膜張力及び耐食性にも優れていることが確認できる。
【0134】
本発明は前記実施例に限定されず、互いに異なる多様な形態で製造されることができ、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者は本発明の技術的な思想や必須の特徴を変更せずに他の具体的な形態で実施され得ることを理解することができる。従って、上記実施例はすべての面で例示的なものであり、限定的なものではないと理解しなければならない。