特許第6808738号(P6808738)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6808738ペロブスカイト光電素子、その製造方法及びペロブスカイト材料
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6808738
(24)【登録日】2020年12月11日
(45)【発行日】2021年1月6日
(54)【発明の名称】ペロブスカイト光電素子、その製造方法及びペロブスカイト材料
(51)【国際特許分類】
   H05B 33/14 20060101AFI20201221BHJP
   H01L 51/44 20060101ALI20201221BHJP
   H05B 33/10 20060101ALI20201221BHJP
【FI】
   H05B33/14 Z
   H01L31/04 112Z
   H05B33/10
【請求項の数】21
【全頁数】34
(21)【出願番号】特願2018-536752(P2018-536752)
(86)(22)【出願日】2017年1月17日
(65)【公表番号】特表2019-504454(P2019-504454A)
(43)【公表日】2019年2月14日
(86)【国際出願番号】CN2017071351
(87)【国際公開番号】WO2017128987
(87)【国際公開日】20170803
【審査請求日】2018年7月12日
(31)【優先権主張番号】201610051400.4
(32)【優先日】2016年1月26日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】510033929
【氏名又は名称】南京工▲業▼大学
【氏名又は名称原語表記】NANJING UNIVERSITY OF TECHNOLOGY
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【弁理士】
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【弁理士】
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】王 建浦
(72)【発明者】
【氏名】王 娜娜
(72)【発明者】
【氏名】葛 睿
(72)【発明者】
【氏名】黄 維
【審査官】 倉本 勝利
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−060497(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第104681731(CN,A)
【文献】 中国特許出願公開第105061309(CN,A)
【文献】 特開平06−021508(JP,A)
【文献】 2D Homologous Perovskites as Light-Absorbing Materials for Solar Cell Applications,Journal of the American Chemical Society,2015年 5月28日,7843-7846
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L27/32;H05B33/00−33/28;
H01L51/50
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、電極層と、機能層とを含み、
前記電極層は基板表面に配置され、前記機能層は電極層の間に配置され、前記機能層は少なくともペロブスカイト層を含み、
前記ペロブスカイト層は自己集積化多重量子井戸構造を有するペロブスカイト材料であり、多重量子井戸間の効果的なエネルギー移動を実現でき、
前記自己集積化多重量子井戸構造は複数のエネルギーギャップ量子井戸構造を含み、エネルギーギャップ幅が狭から広へ、広から狭へ、あるいはランダム分布で、禁制帯幅が0.1eV〜5eVであり、前記ペロブスカイト層の無機成分は量子井戸のポテンシャル井戸として使用され、前記ペロブスカイト層の発光中心であり、有機成分は、量子井戸のポテンシャル障壁として使用され、発光しないことを特徴とするペロブスカイト光電素子。
【請求項2】
前記ペロブスカイト材料はAX:BX:MXのモル比1〜100:1〜100:1〜100で製造され、
AはR−Y+であり、Rは1〜50個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素基、5〜100個の炭素原子を有する脂環式炭化水素基、6〜100個の炭素原子を有する任意に置換できるアリール基又は3〜100個の炭素原子を有する任意に置換できるヘテロ環基であり、Y+はアミン系、ピリジン系またはイミダゾール系の有機カチオンのいずれか1つであり、
BはR−NH+、フォルムアミジンイオン又はアルカリ金属イオンであり、Rは1個の炭素原子を有する官能基であり、
Mは金属元素であり、
、XとXはそれぞれ独立なハロゲン元素であり、
Aは、可視光範囲で発光しない有機成分であることを特徴とする請求項1に記載のペロブスカイト光電素子。
【請求項3】
前記AはR−Y+であり、Rが1〜20個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素基、5〜50個の炭素原子を有する脂環式炭化水素基、6〜50個の炭素原子を有する任意に置換できるアリール基又は3〜50個の炭素原子を有する任意に置換できるヘテロ環基で、Y+はアミン系、ピリジン系またはイミダゾール系の有機カチオンのうちのいずれか1つであることを特徴とする請求項2に記載のペロブスカイト光電素子。
【請求項4】
前記Aは以下の有機基のうちのいずれか1つであるかまたはこれらの任意の組み合わせであることを特徴とする請求項3に記載のペロブスカイト光電素子。
【化1】
【請求項5】
前記AはR−(Y+)であり、Rは1〜20個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素基、5〜50個の炭素原子を有する脂環式炭化水素基、6〜50個の炭素原子を有する任意に置換できるアリール基、3〜50個の炭素原子を有する任意に置換できるヘテロ環基で、Y+はアミン系、ピリジン系またはイミダゾール系の有機カチオンのうちのいずれか1つ又はこれらの任意の組み合わせであることを特徴とする請求項2に記載のペロブスカイト光電素子。
【請求項6】
基板と、電極層と、機能層とを含み、
前記電極層は基板表面に配置され、前記機能層は電極層の間に配置され、前記機能層は少なくともペロブスカイト層を含み、
前記ペロブスカイト層は自己集積化多重量子井戸構造を有するペロブスカイト材料であり、多重量子井戸間の効果的なエネルギー移動を実現でき、
前記ペロブスカイト材料はAX:BX:MXのモル比1〜100:1〜100:1〜100で製造され、
AはR−Y+であり、Rは1〜50個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素基、5〜100個の炭素原子を有する脂環式炭化水素基、6〜100個の炭素原子を有する任意に置換できるアリール基又は3〜100個の炭素原子を有する任意に置換できるヘテロ環基であり、Y+はアミン系、ピリジン系またはイミダゾール系の有機カチオンのいずれか1つであり、
BはR−NH+、フォルムアミジンイオン又はアルカリ金属イオンであり、Rは1個の炭素原子を有する官能基であり、
Mは金属元素であり、
、XとXはそれぞれ独立なハロゲン元素であり、
前記AはR−(Y+)であり、Rは1〜20個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素基、5〜50個の炭素原子を有する脂環式炭化水素基、6〜50個の炭素原子を有する任意に置換できるアリール基、3〜50個の炭素原子を有する任意に置換できるヘテロ環基で、Y+はアミン系、ピリジン系またはイミダゾール系の有機カチオンのうちのいずれか1つ又はこれらの任意の組み合わせであり、
前記Aは以下の有機基のうちのいずれか1つ又はいくつかであることを特徴とするペロブスカイト光電素子。
【化2】
【請求項7】
前記Bは有機アミン基であるメチルアミノ、フォルムアミジン、K+、Rb+とCs+のうちのいずれか1つ又はこれらの任意の組み合わせであることを特徴とする請求項2に記載のペロブスカイト光電素子。
【請求項8】
前記金属元素Mは、第4A族金属のPb2+、Ge2+、Sn2+のうちのいずれか1つ、または遷移金属のCu2+、Ni2+、Co2+、Fe2+、Mn2+、Cr2+、Pd2+、Cd2+、Eu2+、Yb2+のうちのいずれか1つ、または前記金属元素のうちの任意の組み合わせであることを特徴とする請求項2に記載のペロブスカイト光電素子。
【請求項9】
前記X、XとXはそれぞれCl、Br及びIからなる群から選出されたいずれか1つ又はこれらの任意の組み合わせであることを特徴とする請求項2に記載のペロブスカイト光電素子。
【請求項10】
前記ペロブスカイト材料は、AX、BXとMXから配合された前駆体溶液を基板上にスピンコートし、蒸着法を用いて前駆体材料を蒸着するか、又は蒸着法と溶液法との組み合わせによって製造され、自己集積化多重量子井戸構造を有し、多重量子井戸の間にエネルギー移動を実現できることを特徴とする請求項2に記載のペロブスカイト光電素子。
【請求項11】
請求項1に記載のペロブスカイト光電素子の製造方法であって、
前記方法は、
基板を、順次にアセトン溶液、エタノール溶液及び脱イオン水で超音波洗浄を行い、洗浄した後に乾燥させるステップ(1)と、
基板を真空室に転送し、真空室内で電極層を製造するステップ(2)と、
電極層を製造した基板を真空室に移し、酸素等のイオン前処理を行うステップ(3)と、
処理後の基板を素子構造に従って溶液法で順次に機能層薄膜の製造を行うステップ(4)と、
機能層薄膜の製造が終了後、真空蒸着室において他の電極層の製造を行うステップ(5)と、
製造した素子をグローブボックス内でパッケージングし、グローブボックスは不活性ガス雰囲気であるステップ(6)と、を備え、
前記機能層は少なくともペロブスカイト層を含み、また、電子及び/又は正孔輸送層、電子および/または正孔ブロック層のうちのいずれか1つ又はいくつかを選択的に含むことを特徴とするペロブスカイト光電素子の製造方法。
【請求項12】
前記ステップ(4)において、処理済の基板を真空蒸着室において蒸着法で機能層を製造し、素子構造に従って機能層を順次に蒸着するか、または処理後の基板を高真空室において蒸着法と溶液法の組み合わせ方法で素子構造層に従って順次に機能層を製造することを特徴とする請求項11に記載のペロブスカイト光電素子の製造方法。
【請求項13】
AX:BX:MXのモル比1〜100:1〜100:1〜100で製造され、
AはR−Y+であり、Rは1〜50個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素基、5〜100個の炭素原子を有する脂環式炭化水素基、6〜100個の炭素原子を有する任意に置換できるアリール基又は3〜100個の炭素原子を有する任意に置換できるヘテロ環基であり、Y+はアミン系、ピリジン系またはイミダゾール系の有機カチオンのいずれか1つであり、
BはR−NH+、フォルムアミジンイオン又はアルカリ金属イオンであり、Rは1個の炭素原子を有する官能基であり、
Mは金属元素であり、
、XとXはそれぞれ独立なハロゲン元素であり、
Aは、可視光範囲で発光しない有機成分であることを特徴とするペロブスカイト材料。
【請求項14】
前記AはR−Y+であり、Rは1〜20個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素基、5〜50個の炭素原子を有する脂環式炭化水素基、6〜50個の炭素原子を有する任意に置換できるアリール基又は3〜50個の炭素原子を有する任意に置換できるヘテロ環基であり、Y+はアミン系、ピリジン系またはイミダゾール系の有機カチオンのうちのいずれか1つであることを特徴とする請求項13に記載のペロブスカイト材料。
【請求項15】
前記Aは以下の有機基のうちのいずれか1つ、またはいくつかの組み合わせであることを特徴とする請求項14に記載のペロブスカイト材料。
【化3】
【請求項16】
前記AはR−(Y+)であり、Rは1〜20個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素基、5〜50個の炭素原子を有する脂環式炭化水素基、6〜50個の炭素原子を有する任意に置換できるアリール基、3〜50個の炭素原子を有する任意に置換できるヘテロ環基であり、Y+はアミン系、ピリジン系またはイミダゾール系の有機カチオンのうちのいずれか1つ又はこれらの任意の組み合わせであることを特徴とする請求項13に記載のペロブスカイト材料。
【請求項17】
AX:BX:MXのモル比1〜100:1〜100:1〜100で製造され、
AはR−Y+であり、Rは1〜50個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素基、5〜100個の炭素原子を有する脂環式炭化水素基、6〜100個の炭素原子を有する任意に置換できるアリール基又は3〜100個の炭素原子を有する任意に置換できるヘテロ環基であり、Y+はアミン系、ピリジン系またはイミダゾール系の有機カチオンのいずれか1つであり、
BはR−NH+、フォルムアミジンイオン又はアルカリ金属イオンであり、Rは1個の炭素原子を有する官能基であり、
Mは金属元素であり、
、XとXはそれぞれ独立なハロゲン元素であり、
前記AはR−(Y+)であり、Rは1〜20個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素基、5〜50個の炭素原子を有する脂環式炭化水素基、6〜50個の炭素原子を有する任意に置換できるアリール基、3〜50個の炭素原子を有する任意に置換できるヘテロ環基であり、Y+はアミン系、ピリジン系またはイミダゾール系の有機カチオンのうちのいずれか1つ又はこれらの任意の組み合わせであり、
前記Aは以下の有機基のうちのいずれか1つ又はいくつかであることを特徴とするペロブスカイト材料。
【化4】
【請求項18】
前記Bは有機アミン基であるメチルアミノ、フォルムアミジン、K+、Rb+とCs+のうちのいずれか1つ又はこれらの任意の組み合わせであることを特徴とする請求項13に記載のペロブスカイト材料。
【請求項19】
前記金属元素Mは、第4A族金属のPb2+、Ge2+、Sn2+のうちのいずれか1つ、または遷移金属のCu2+、Ni2+、Co2+、Fe2+、Mn2+、Cr2+、Pd2+、Cd2+、Eu2+、Yb2+のうちのいずれか1つ、または前記金属元素のうちの任意の組み合わせであることを特徴とする請求項13に記載のペロブスカイト材料。
【請求項20】
前記X、XとXはそれぞれCl、BrおよびIからなる群から選出されたいずれか1つ又はこれらの任意の組み合わせであることを特徴とする請求項13に記載のペロブスカイト材料。
【請求項21】
前記ペロブスカイト材料はAX、BXとMXから配合された前駆体溶液を基板表面にスピンコート後、蒸着法を用いて前駆体材料を蒸着するか、又は蒸着法と溶液法との組み合わせによって製造され、自己集積化多重量子井戸構造を有し、多重量子井戸の間にエネルギー移動を実現できることを特徴とする請求項13に記載のペロブスカイト材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自己集積化多重量子井戸構造を有するペロブスカイト材料の素子、その製造方法及び自己集積化多重量子井戸構造を有するペロブスカイト材料に関する。
【背景技術】
【0002】
21世紀に入ってから、社会の進歩や生活水準の向上に伴い、エネルギーと環境問題が深刻化しており、低消費電力、環境に配慮した新しい素子の開発が急務となっている。近年、原料が安価で、低温溶液プロセスで低コスト、大面積に光電素子を製作する有機−無機ハイブリッドペロブスカイト材料が注目されている。ペロブスカイト薄膜は、数少ない電荷輸送性に優れた結晶薄膜であり、同時に低欠陥密度の直接バンドギャップ半導体材料としても、優れた発光特性を有し、そのフォトルミネッセンス量子効率が70%にも達し、また発光波長をバンドエンジニアリングにより調整することができる。
【0003】
しかし、現在三次元ペロブスカイト材料成膜の品質と安定性が悪いという問題が発光素子および光起電力素子の性能を制限する上で重要な因子となっている。二次元層状ペロブスカイト薄膜が好適な成膜性と安定性を有するが、薄膜の発光量子効率が低く、素子を発光させるには低温条件下で実現する必要がある。したがって、さらにペロブスカイト材料および素子構成を最適化することを通して素子の性能および安定性を向上させることが必要となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の技術に存在する課題を解決するために、本発明は、発光効率の高い自己集積化多重量子井戸構造を有するペロブスカイト材料及びその光電素子を提供する。
また、本発明が解決しようとする課題は、前記ペロブスカイト材料の応用及びその応用方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るペロブスカイト光電素子は、基板と、電極層と、機能層とを含み、前記電極層は基板表面に配置され、機能層は電極層の間に配置され、機能層は少なくともペロブスカイト層を含み、前記ペロブスカイト層は自己集積化多重量子井戸構造を有するペロブスカイト材料であり、多重量子井戸の間においてエネルギー移動を実現できる。
【0006】
さらに、前記自己集積化多重量子井戸構造は多エネルギーギャップの量子井戸構造を含み、そのエネルギーギャップの幅が狭から広へ、広から狭へ、あるいはランダム分布で、禁制帯幅が0.1eV〜5eVである。
【0007】
さらに、前記ペロブスカイト材料はAX:BX:MXのモル比1〜100:1〜100:1〜100で製造され、
AはR−Y+であり、Rは1〜50個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素基、5〜100個の炭素原子を有する脂環式炭化水素基、6〜100個の炭素原子を有する任意に置換できるアリール基又は3〜100個の炭素原子を有する任意に置換できるヘテロ環基であり、Y+はアミン系、ピリジン系またはイミダゾール系の有機カチオンのうちのいずれか1つであり、
BはR−NH+、フォルムアミジンイオン又はアルカリ金属イオンでありあり、Rは1個の炭素原子を有する官能基であり、
Mは金属元素であり、
、XとXはそれぞれ独立なハロゲン元素である。
【0008】
さらに、前記AはR−Y+であり、Rは1〜20個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素基、5〜50個の炭素原子を有する脂環式炭化水素基、6〜50個の炭素原子を有する任意に置換できるアリール基又は3〜50個の炭素原子を有する任意に置換できるヘテロ環基であり、Y+はアミン系、ピリジン系またはイミダゾール系の有機カチオンのうちのいずれか1つである。
【0009】
さらに、前記Aは以下の有機基のうちのいずれか1つであるかまたはこれらの任意の組み合わせである。
【化1】
【0010】
さらに、前記AはR−(Y+)であり、Rは1〜20個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素基、5〜50個の炭素原子を有する脂環式炭化水素基、6〜50個の炭素原子を有する任意に置換できるアリール基、3〜50個の炭素原子を有する任意に置換できるヘテロ環基であり、Y+はアミン系、ピリジン系またはイミダゾール系の有機カチオンのうちのいずれか1つ又はこれらの任意の組み合わせである。
【0011】
さらに、前記Aは以下の有機基のうちのいずれか1つ又はいくつかである。
【化2】
【0012】
さらに、前記Bは有機アミン基であるメチルアミノ、フォルムアミジン、K+、Rb+とCs+のうちのいずれか1つ又はこれらの任意の組み合わせである。
【0013】
さらに、前記金属元素Mは、第4A族金属のPb2+、Ge2+、Sn2+のいずれか1つ、または遷移金属のCu2+、Ni2+、Co2+、Fe2+、Mn2+、Cr2+、Pd2+、Cd2+、Eu2+、Yb2+のうちのいずれか1つ、または前記金属元素のうちの任意の組み合わせである。
【0014】
さらに、前記X、X及びXがそれぞれCl、BrおよびIからなる群から選出されたいずれか1つ又はこれらの任意の組み合わせである。
【0015】
さらに、前記ペロブスカイト材料は、AX、BXとMXから配合された前駆体溶液を基板表面にスピンコート後、蒸着法を用いて前記前駆体材料を蒸着するか、又は蒸着法と溶液法との組み合わた方法によって製造され、自己集積化多重量子井戸構造を有し、多重量子井戸の間にエネルギー移動を実現することができる。
【0016】
本発明に記載のペロブスカイト光電素子の製造方法は、以下のステップを含む。
基板を、順次にアセトン溶液、エタノール溶液及び脱イオン水で超音波洗浄を行い、洗浄した後に乾燥させるステップ(1)と、
基板を真空室に転送し、真空室内で電極層を製造するステップ(2)と、
電極層を製造した基板を真空室に移し、酸素等のイオン前処理を行うステップ(3)と、
処理後の基板を素子構造に従って溶液法で順次に機能層薄膜の製造を行う。前記機能層は少なくともペロブスカイト層を含み、また、電子及び/又は正孔輸送層、電子および/または正孔ブロック層のうちのいずれか1つ又はいくつかを選択的に含むステップ(4)と、
機能層薄膜の製造が終了後、真空蒸着室において他の電極層の製造を行うステップ(5)と、
製造した素子をグローブボックス内でパッケージ化し、グローブボックスは不活性ガス環境であるステップ(6)と、を備える。
【0017】
さらに、前記ステップ(4)において、処理済の基板を真空蒸着室において蒸着法で機能層を製造し、素子構造に従って機能層を順次に蒸着するか、または処理後の基板を高真空室において蒸着法と溶液法の組み合わせ方法で素子構造層に従って順次に機能層を製造する。
【0018】
本発明に係るペロブスカイト材料は、AX:BX:MXのモル比1〜100:1〜100:1〜100で製造され、
AはR−Y+であり、Rは1〜50個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素基、5〜100個の炭素原子を有する脂環式炭化水素基、6〜100個の炭素原子を有する任意に置換できるアリール基又は3〜100個の炭素原子を有する任意に置換できるヘテロ環基であり、Y+はアミン系、ピリジン系またはイミダゾール系の有機カチオンのうちのいずれか1つであり、
BはR−NH+、フォルムアミジンイオン又はアルカリ金属イオンであり、Rは1個の炭素原子を有する官能基であり、
Mは金属元素であり、
、XとXはそれぞれ独立なハロゲン元素である。
【0019】
さらに、前記AはR−Y+であり、Rは1〜20個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素基、5〜50個の炭素原子を有する脂環式炭化水素基、6〜50個の炭素原子を有する任意に置換できるアリール基又は3〜50個の炭素原子を有する任意に置換できるヘテロ環基であり、Y+はアミン系、ピリジン系またはイミダゾール系の有機カチオンのうちのいずれか1つである。
【0020】
さらに、前記Aが以下の有機基のうちのいずれか1つ、またはいくつかの組み合わせである。
【化3】
【0021】
さらに、前記AはR−(Y+)であり、Rは1〜20個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素基、5〜50個の炭素原子を有する脂環式炭化水素基、6〜50個の炭素原子を有する任意に置換できるアリール基、3〜50個の炭素原子を有する任意に置換できるヘテロ環基であり、Y+はアミン系、ピリジン系またはイミダゾール系の有機カチオンのうちのいずれか1つ又はこれらの任意の組み合わせである。
【0022】
さらに、前記Aは以下の有機基のうちのいずれか1つ又はいくつかである。
【化4】
【0023】
さらに、前記Bは有機アミン基であるメチルアミノ、フォルムアミジン、K+、Rb+とCs+のうちのいずれか1つ又はこれらの任意の組み合わせである。
【0024】
さらに、前記金属元素Mは、第4A族金属のPb2+、Ge2+、Sn2+のいずれか1つ、または遷移金属のCu2+、Ni2+、Co2+、Fe2+、Mn2+、Cr2+、Pd2+、Cd2+、Eu2+、Yb2+のうちのいずれか1つ、または前記金属元素のうちの任意の組み合わせである。
【0025】
さらに、前記X、XとXがそれぞれCl、BrおよびIからなる群から選出されたいずれか1つ又はこれらの任意の組み合わせである。
【0026】
さらに、前記のペロブスカイト材料は、AX、BXとMXから配合された前駆体溶液を基板表面にスピンコート後、蒸着法を用いて前記前駆体材料を蒸着するか、又は蒸着法と溶液法との組み合わせによって製造され、自己集積化多重量子井戸構造を有し、多重量子井戸の間にエネルギー移動を実現することができる。
【発明の効果】
【0027】
従来の技術に比べて、本発明が開示したペロブスカイト光電素子は、基板と、電極層と、機能層とを含み、前記電極層は基板表面に配置され、機能層は電極層の間に配置され、機能層は少なくともペロブスカイト層を含む。そのうちのペロブスカイト層は自己集積化多重量子井戸構造を有するペロブスカイト材料であり、材料組成を調整することにより、多重量子井戸の幅と薄膜バンドギャップを制御することができ、多重量子井戸間の効果的なエネルギー移動を実現することができる。薄膜発光色が近紫外、可視光および近赤外光であり、既存のペロブスカイト材料膜の不連続性および不十分な安定性の問題を効果的に解決することができる。
【0028】
当該材料は発光材料として好ましく、素子の発光効率や寿命を大きく向上させることができる。また、光増感層として光装置へ適用し、素子の開放電圧と光電変換効率を効果的に向上させることできる。同時に該当材料はキャリア輸送層としても、装置性能を効果的に向上させることができる。本発明が製造した層状ペロブスカイト材料は溶液法又は真空蒸着法を用いて製造し、プロセスが簡単で低コスト、大面積、フレキシブル基板、高性能素子の工業化生産に極めて好適である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明のペロブスカイト型素子の構造図である。
図2】本発明のペロブスカイト材料の構造図である。
図3】本発明の実施例2に係るペロブスカイト材料の吸収とフォトルミネッセンスのスペクトル図である。
図4】本発明の実施例2に係るペロブスカイト膜の光励起スペクトルである。
図5】本発明の実施例2に係るペロブスカイト膜のエネルギー移動プロセス図である。
図6】本発明の実施例2に係るペロブスカイト膜のAFM像である。
図7】本発明の実施例2に係るペロブスカイト膜の時間分解能の過渡PL減衰図である。
図8】本発明の実施例3に係るペロブスカイト材料の吸収とフォトルミネッセンスのスペクトル図である。
図9】本発明の実施例3に係るペロブスカイト膜のAFM像である。
図10】本発明の実施例3に係るペロブスカイト膜の時間分解能の過渡PL減衰図である。
図11】本発明の実施例4に係るペロブスカイト材料の吸収とフォトルミネッセンスのスペクトル図である。
図12】本発明の実施例4に係るペロブスカイト膜のAFM像である。
図13】本発明の実施例5に係るペロブスカイト材料の吸収とフォトルミネッセンスのスペクトル図である。
図14】本発明の実施例5に係るペロブスカイト膜のAFM像である。
図15】本発明の実施例6に係るペロブスカイト材料のフォトルミネッセンスのスペクトル図である。
図16】本発明の実施例7に係るMQW LED素子の構造図である。
図17】本発明の実施例7に係るMQW LED素子のエネルギー準位設計図である。
図18】本発明の実施例7に係るMQW LED素子におけるペロブスカイト層の元素分布図である。
図19】本発明の実施例7に係るMQW LED素子におけるペロブスカイト層のHRTEMおよびFFT図である。
図20】本発明の実施例7に係るMQW LED素子の発光スペクトルとMQW LED素子の写真である。
図21】本発明の実施例7に係るMQW LED素子の電流密度−放射強度−電圧関係を示すグラフである。
図22】本発明の実施例7に係るMQW LED素子の外部量子効率−電気光変換効率−電流密度関係を示すグラフである。
図23】本発明の実施例7に係るMQW LED素子の性能統計図である。
図24】本発明の実施例8に係るMQW LED素子の発光スペクトル及び広範囲MQW LED素子の写真である。
図25】本発明の実施例8に係るMQW LED素子の電流密度−放射強度−電圧関係を示すグラフである。
図26】本発明の実施例8に係るMQW LED素子の外部量子効率−電気光変換効率−電流密度関係を示すグラフである。
図27】本発明の実施例8に係るMQW LED素子の性能統計図である。
図28】本発明の実施例8に係るMQW LED素子の安定性である。
図29】本発明の実施例9に係るMQW LED素子の発光スペクトル図である。
図30】本発明の実施例10に係るMQW LED素子の発光スペクトル図である。
図31】本発明の実施例10に係るMQW LED素子の電流密度−電圧関係を示すグラフである。
図32】本発明の実施例10に係るMQW LED素子の外部量子効率−電流密度関係を示すグラフである。
図33】本発明の実施例11に係るMQW LED素子の発光スペクトル図である。
図34】本発明の実施例11に係るMQW LED素子の電流密度−電圧関係を示すグラフである。
図35】本発明の実施例11に係るMQW LED素子の外部量子効率−電流密度関係を示すグラフである。
図36】本発明の実施例12に係るMQW LED素子の発光スペクトル図である。
図37】本発明の実施例12に係るMQW LED素子の電流密度−電圧関係を示すグラフである。
図38】本発明の実施例12に係るMQW LED素子の外部量子効率−電流密度関係を示すグラフである。
図39】本発明の実施例13に係るMQW LED素子の発光スペクトル図である。
図40】本発明の実施例13に係るMQW LED素子の電流密度−電圧関係を示すグラフである。
図41】本発明の実施例13に係るMQW LED素子の外部量子効率−電流密度関係を示すグラフである。
図42】本発明の実施例14に係るMQW LED素子の発光スペクトルである。
図43】本発明の実施例14に係るMQW LED素子の電流密度−電圧関係を示すグラフである。
図44】本発明の実施例14に係るMQW LED素子の外部量子効率−電流密度関係を示すグラフである。
図45】本発明の実施例15に係るMQW LED素子の発光スペクトルである。
図46】本発明の実施例15に係るMQW LED素子の電流密度−電圧関係を示すグラフである。
図47】本発明の実施例15に係るMQW LED素子の外部量子効率−電流密度関係を示すグラフである。
図48】本発明の実施例16に係るMQW LED素子の発光スペクトルである。
図49】本発明の実施例16に係るMQW LED素子の電流密度−電圧関係を示すグラフである。
図50】本発明の実施例16に係るMQW LED素子の外部量子効率−電流密度関係を示すグラフである。
図51】本発明の実施例17に係るMQW LED素子の発光スペクトルである。
図52】本発明の実施例17に係るMQW LED素子の電流密度−電圧関係を示すグラフである。
図53】本発明の実施例17に係るMQW LED素子の外部量子効率−電流密度関係を示すグラフである。
図54】本発明の実施例18に係るペロブスカイト光起電力素子の電圧−電流密度関係を示すグラフである。
図55】本発明の実施例19に係るペロブスカイト光起電力素子の電圧−電流密度関係を示すグラフである。
図56】本発明の実施例20に係るMQW LED素子の発光スペクトルである。
図57】本発明の実施例20に係るMQW LED素子の外部量子効率−電流密度関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の上記の目的、特徴および利点をより明瞭に理解しやすくするために、以下に本発明の具体的な実施例について、詳細に説明する。
【0031】
本発明の技術案は、ペロブスカイト光電素子を提供する。図1に示すように、素子は、下から上へ透明基板1、陰極層2、電子輸送層3、発光層4、正孔輸送層5と陽極層6の順であり、透明基板1の表面に陰極層2が位置し、素子が外部電源7によって駆動される。ここで、ペロブスカイト層は自己集積化多重量子井戸構造を有するペロブスカイト材料であり、図2に示すように、該当材料の一般構造式が層状ペロブスカイト材料であり、AX、BXとMXのモル比a:b:cで製造した。
【0032】
a:b:c=(1〜100):(1〜100):(1〜100)であり、AはR−Y+であり、Rは1〜50個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素基、5〜100個の炭素原子を有する脂環式炭化水素基、6〜100個の炭素原子を有する任意に置換できるアリール基又は3〜100個の炭素原子を有する任意に置換できるヘテロ環基であり、Y+はアミン系、ピリジン系またはイミダゾール系の有機カチオンのうちのいずれか1つである。
【0033】
BはR−NH+、フォルムアミジンイオン又はアルカリ金属イオンであり、Rは1個の炭素原子を有する官能基である。
Mは金属元素である。
、XとXはそれぞれ独立なハロゲン元素である。
、XとXをまとめてXとするとき、その構造式は、ペロブスカイト材料の無機骨格の層数をNとすると、AN-13N+1で表すことができる。
AX、BXとMXの組成を調整することにより、異なる組成の自己集積化多重量子井戸構造を有する層状ペロブスカイト材料を実現することができる。
使用した代表的な材料AXはC10CHNHI、C10CHNHBr、CCHNHI、C(CH)NHI、C(CH)NHIで、BXはCHNHI、NHCH=NHI、NHCH=NHBr、NHCH=NHCl、CsI、CsBr、CsClで、MXはPbI、PbBr、PbClであるが、これに限定されない。
【0034】
以上が本発明の核心思想であり、以下に本発明に係る実施例における添付図と結合して本発明に係る実施例における技術解決方法の詳細を明確に、完全に説明する。当然、記載の実施例は本発明に係る実施例の一部に過ぎず、全ての実施例ではない。本発明における実施例にもとづき、当業者は、創造性作業を行わないことを前提として、取得したその他の実施例は、本発明の保護範囲に属する。
【0035】
(実施例1)AXの製造
AXはAをテトラヒドロフランに溶解した後、ヨウ化水素酸を60分間添加して反応液のpHを4にする。溶媒を回転蒸発によって除去した後、固体粉末を得た。得られた粉末をジエチルエーテルで3回吸引濾過した。C10CHNHIを例にとると、まず、芳香族アミンC10CHNHをテトラヒドロフランに溶解させた後、ヨウ化水素酸を60分間添加して反応溶液のpHを4にする。回転蒸発によって溶媒を除去した後、固体粉末が得られる。得られた粉末をジエチルエーテルで3回吸引洗浄し、C10CHNHIの白色粉末を得た。 この方法によって、それぞれC10CHNHBr、C10CHNHCl、CCHNHI、C(CH)NHI、C(CH)NHIを合成する。
【0036】
(実施例2)層状ペロブスカイト材料の製造
10CHNHI、NHCH=NHI及びPbIのモル比2:1:2で前駆体溶液を製造し、この前駆体溶液を基板上にスピンコートし、アニール後に多重量子井戸構造を有する層状ペロブスカイト膜を得た(略称NFPI)。
【0037】
図3に示すように、NFPI膜は、569nmに顕著な励起子吸収ピークを有し、このペロブスカイト材料に存在する主材料はN=2((C10CHNH)(NHCH=NH)[Pb])であることを示し、同時に、NFPI膜はN=1((C10CHNH)PbI)及びN=4((C10CHNH)(NHCH=NH)[Pb13])を含むことが分かる(X. Hong et al., Dielectric Confinement Effect on Excitons in PbI−Based Layered Semiconductors. Phys. ReV. B. 45, 6961−6964 (1992);K. Tanaka et al., Bandgap and exciton binding energies in lead−iodide−based natural quantum−well crystals. Sci. Technol. Adv. Mater. 4, 599−604 (2003).)。
【0038】
図3は、膜のフォトルミネッセンスピークが主として765nmに位置し、3次元ペロブスカイト材料の発光ピーク位置に近く、N=1、N=2、およびN=4のペロブスカイト材料の発光も膜中に存在することを示す。薄膜の吸収スペクトルと発光スペクトルから、より大きな励起子エネルギー量子井戸からより小さな励起子エネルギー量子井戸へのエネルギー移動がNFPI薄膜に存在することが分かる。
【0039】
図4は、NFPI膜の励起スペクトルを示しており、発光ピークの位置が異なっても励起ピークはすべて569nmであり、NFPI膜にはN=2量子井戸から低エネルギールミネッセンスへのエネルギー移動が存在することがさらに確認される。
【0040】
図5は、多重量子井戸構造を有するNFPI膜中に存在する段階的エネルギー移動の概略図である。
【0041】
図6は、NFPI膜の表面モフォロジー(AFM)を示しており、NFPI膜は良好な膜形成を有し、表面の二乗平均粗さはわずか2.6nmであることを示している。
【0042】
図7は、時間相関単一光子計数(TCSPC)によって測定されたNFPI膜の過渡光ルミネッセンス(PL)減衰図であり、短波長発光では寿命が短く、765nmでPLが長い(10ns)ことがわかる。NFPI膜中のN個のより大きい量子井戸材料が非常に低い欠陥密度を有することを示している。
【0043】
(実施例3)層状ペロブスカイト材料の製造
10CHNHI、NHCH=NHBrおよびPbIによって2:1:2のモル比で前駆体溶液を配合して、当該前駆体溶液を基板上にスピンコートし、アニール後に自己集積化多重量子井戸構造を有する層状ペロブスカイト膜を得た(略称NFPIB)。
【0044】
図8に示すように、NFPIB膜は、557nmに顕著な励起子吸収ピークを有し、フォトルミネッセンスピークは、実施例2のNFPI膜と同様に、主に750nmに位置する。図9は、NFPIB膜の表面モフォロジーを示しており、NFPIB膜が良好な膜形成を有し、表面の二乗平均粗さがわずか2.6nmであることを示している。
【0045】
図10は、NFPIB膜のTCSPC測定結果を示し、膜のPL寿命は、750nmに30nsでより長いことが分かる。
【0046】
(実施例4)層状ペロブスカイト材料の製造
10CHNHI、CsI及びPbIのモル比2:1:2で前駆体溶液を配合、上記前駆体溶液を基板上にスピンコートして、自己集積化多重量子井戸構造を有する層状ペロブスカイト膜を得た(略称NCsPI)。
【0047】
図11に示すように、NCsPI膜は509nmと554nmに明確な吸収ピークを持ち、フォトルミネッセンスピークは主に681nmに位置しており、実施例2のNFPI膜と類似である。
【0048】
図12は、NCsPI膜の表面モフォロジーであり、NFPI膜が良好な膜形成を有し、表面二乗平均粗さがわずか2.1nmであることを示す。
【0049】
(実施例5)層状ペロブスカイト材料の製造
10CHNHI、CsCl及びPbIのモル比2:1:2で前駆体溶液を配合、上記前駆体溶液を基板上にスピンコートし、アニール後に自己集積化多重量子井戸構造を有する層状ペロブスカイト膜を得た(略称NCsPIC)。
【0050】
図13に示すように、NCsPIC膜は506nmと551nmに明確な吸収ピークを持ち、フォトルミネッセンスピークは主に692nmに位置しており、実施例2のNFPI膜と類似である。
【0051】
図14は、NCsPIC薄膜の表面モフォロジーを示しており、NCsPIC薄膜は良好な膜形成特性を有し、表面の二乗平均粗さはわずか2.2nmであることを示している。
【0052】
(実施例6)層状ペロブスカイト材料の製造
10CHNHI、NHCH=NHIおよびPbIのモル比6:2:5、10:4:9、2:1:2、2:2:3、2:3:4、2:4:5、2:5:6、2:6:7、2:7:8で前駆体溶液を配合し、前記前駆体溶液を基板上にスピンコートして、自己集積化多重量子井戸構造を有する層状ペロブスカイト膜を得た。
【0053】
図15に示すように、NHCH=NHIの含有量が増加すると、ペロブスカイト膜の発光ピークが730nmから789nmに徐々にシフトする。
【0054】
(実施例7)層状ペロブスカイト材料系発光素子(MQW LED)
図16および図17に示すように、基板はガラス−ITOの組み合わせであり、電子輸送−正孔ブロック層はZnO/PEIEであり、発光層はNFPIであり、正孔輸送−電子ブロック層はTFBであり、上部電極はMoOx/Auである。素子構造全体は、ガラス基板/ITO/ZnO−PEIE(20nm)/NFPI(30nm)/TFB(40nm)/MoOx(7nm)/Au(100nm)と記載される。
【0055】
(製造方法)
製造方法は以下の通りである。
(1)透明導電性基板ITOガラスの超音波洗浄は、アセトン溶液、エタノール溶液および脱イオン水を用いて行い、洗浄後、乾燥窒素で乾燥させた。ガラス基板上のITO膜を素子の陽極層として用い、ITO膜のシート抵抗は15Ω/□である。
(2)乾燥した基板を真空室内に移動させ、ITOガラスを酸素圧環境下で10分間紫外線オゾン前処理を行った。
(3)処理した基板上にZnOとPEIEをスピンコートし、アニールした後、窒素グローブボックスに移す。基板上にC10CHNHI、NHCH=NHI、PbIを2:1:2のモルで調整した前駆体溶液をピンコートし、アニールした後、多重量子井戸構造を有するペロブスカイト膜NFPIを得た。このTFB溶液を正孔輸送層として発光層上にスピンコートした。
(4)各機能層を製造した後、MoOx/Au複合電極を製造し、ガス圧を6×10-7Torr、蒸着速度を0.1nm/sとし、蒸発速度および厚さは、膜厚計によって監視される。
(5)製造した素子を、99.9%窒素雰囲気のグローブボックス中でパッケージングした。
(6)素子の電流−電圧−放射強度を測定し、同時に素子の発光スペクトルパラメータを測定する。
【0056】
図16の素子のSTEM画像から、NFPI膜にNFPI/TFB界面により明るい部分があることが分かる。これはより大きなN値のペロブスカイト材料がNFPI膜の表面上に蓄積するためで、図18のSTEM元素分布図に一致する。
【0057】
また、高分解能透過電子顕微鏡(HRTEM)および高速フーリエ変換(FFT)分析により、NFPI/TFBの界面におけるペロブスカイト材料は、図19に示すように、非常に大きなN値の3次元ペロブスカイト材料を有する立方体構造であることが示された。
【0058】
図20は、素子のエレクトロルミネッセンススペクトルおよび素子画像を示す。近赤外発光素子の発光ピークは786nmである。図21は素子の電流密度−電圧−放射強度を示す。
【0059】
近赤外発光のペロブスカイト型LEDは、1−5Vの低いターンオン電圧を達成することができる。この素子は、3.6Vの駆動電圧で55W/(sr・m)の最大放射強度を達成することができる。最も高い外部量子効率は9.6%であり、素子の外部量子効率−電気光変換効率−電流密度の関係は図22を参照されたい。
【0060】
素子性能は良好な均一性を持っている。図23の素子性能図を参照されたい。
【0061】
(実施例8)層状ペロブスカイト材料系発光素子
素子は、実施例7と同じ素子構造を採用する。発光層はNFPIBであり、素子構造全体は、ガラス基板/ITO/ZnO−PEIE(20nm)/NFPIB(30nm)/TFB(40nm)/MoOx(7nm)/Au(100nm)である。
【0062】
製造方法は実施例7と同様であり、基板上に、C10CHNHI、NHCH=NHBr、PbI=2:1:2のモル比を有する前駆体溶液をスピンコートし、アニール後にペロブスカイト構造を有するNFPIB膜を得た。
【0063】
図24は、素子のエレクトロルミネッセンススペクトルと素子の写真を示しており、近赤外発光素子のピークは763nmであり、同時に8mm×8mmの大面積を得ることができる。
【0064】
この素子の電流密度−電圧−放射強度関係を図25に示す。
近赤外発光ペロブスカイト型LEDは、1.3Vの低いターンオン電圧を達成することができ、3.6Vの駆動電圧で最大放射強度82W/(sr・m2)を達成する。
【0065】
外部量子効率の最大値は11.7%であり、内部量子効率は52%であり、電流密度が100mA/cmの場合、対応する電気光変換効率は5.5%に達する。図26素子外部量子効率−電気光変換効率−電流密度関係グラフを参照されたい。
【0066】
素子性能は良好な均一性を持つ。図27素子性能図を参照されたい。同時に、素子の安定性は良好で、図28の10mA/cmで駆動される素子の外部量子効率対時間のグラフを参照されたい。
【0067】
(実施例9)層状ペロブスカイト材料系発光素子
素子は、実施例7と同じ素子構造を採用する。発光層は、NFPI,NFPI,NFPI,NFPI,NFPBであり、全体の構造は、ガラス基板/ITO/ZnO−PEIE(20nm)/発光層(30nm)/TFB(40nm)/MoOx(8nm)/Au(100nm)である。
【0068】
製造方法は、実施例7と同様であり、基板上にモル比2:1:2の前駆体溶液C10CHNHBr、NHCH=NHIおよびPbI、C10CHNHBr、NHCH=NHBrおよびPbI、C10CHNHI、NHCH=NHIおよびPbBr、C10CHNHBr、NHCH=NHBrおよびPbBrをスピンコートし、そしてモル比2:1:1:1のC10CHNHBr、NHCH=NHBr、PbBrおよびPbIの前駆体溶液をスピンコートする。アニール後に、自己集積化量子井戸構造を有するNFPI、NFPI3、NFPI4、NFPB及びNFPIのペロブスカイト膜を得た。
【0069】
図29は、素子のエレクトロルミネッセンススペクトルを示す。
【0070】
ペロブスカイト材料のX成分を調整することにより、786nm、763nm、736nm、685nm、664nm、611nm、518nmで発光する発光素子を実現できることが分かる。
【0071】
(実施例10)層状ペロブスカイト材料系発光素子
素子は、実施例7と同じ素子構造を採用する。発光層は、NFPICであり、素子構造全体は、ガラス基板/ITO/ZnO−PEIE(20nm)/NFPIC(30nm)/TFB(40nm)/MoOx(7nm)/Au(100nm)である。
【0072】
製造方法は、実施例7と同様であり、基板上に2:1:2のモル比である前駆体溶液C10CHNHI、NHCH=NHClおよびPbIをスピンコートする。アニール後、ペロブスカイト構造を有するNFPIC膜を得た。
【0073】
図30は素子のエレクトロルミネッセンススペクトルを示し、近赤外発光素子の発光ピークは786nmである。素子の電流密度−電圧特性グラフについて、図31を参照されたい。
【0074】
近赤外発光ペロブスカイト型LEDは、1.3Vの低いターンオン電圧、5.6%の最大外部量子効率を達成することができ、図32の素子の外部量子効率−電流密度グラフを参照されたい。
【0075】
(実施例11)層状ペロブスカイト材料系発光素子
素子は、実施例7と同じ素子構造を採用する。発光層はNMPIであり、素子構造全体は、ガラス基板/ITO/ZnO−PEIE(20nm)/NMPI(30nm)/TFB(40nm)/MoOx(7nm)/Au(100nm)である。
【0076】
製造方法は実施例7の方法と同様であり、基板上にC10CHNHI、CHNHIとPbIのモル比2:1:2の前駆体溶液をスピンコートし、アニール後にペロブスカイト構造を有するNMPI膜を得た。
【0077】
図33は、素子のエレクトロルミネセンススペクトルを示す。近赤外発光素子の発光ピークは、784nmである。素子の電流密度−電圧特性グラフについては、図34を参照されたい。
【0078】
近赤外発光ペロブスカイト型LEDは、1.4Vの低いターンオン電圧、4.1%の最大外部量子効率を達成することができる。図35素子の外部量子効率−電流密度グラフを参照されたい。
【0079】
(実施例12)層状ペロブスカイト材料系発光素子
素子は、実施例7と同じ素子構造を採用する。発光層はPFPIBであり、素子構造全体は、ガラス基板/ITO/ZnO−PEIE(20nm)/PFPIB(30nm)/TFB(40nm)/MoOx(7nm)/Au(100nm)である。
【0080】
製造方法は実施例7の方法と同様であり、基板上にCCHNHI、NHCH=NHBrとPbIのモル比2:1:2の前駆体溶液をスピンコートし、アニール後にペロブスカイト構造を有するPFPIB膜を得た。
【0081】
図36は素子のエレクトロルミネッセンススペクトルを示す。近赤外発光素子の発光ピークは785nmである。素子の電流密度−電圧特性グラフについては、図37を参照されたい。
【0082】
近赤外発光ペロブスカイト型LEDは、1.5Vの低いターンオン電圧、2.0%の最大外部量子効率を達成することができる。図38の素子外部量子効率−電流密度グラフを参照されたい。
【0083】
(実施例13)層状ペロブスカイト材料系発光素子
素子は、実施例7と同じ素子構造を採用する。発光層はPEAFPIBであり、素子構造全体は、ガラス基板/ITO/ZnO−PEIE(20nm)/PEAFPIB(30nm)/TFB(40nm)/MoOx(7nm)/Au(100nm)である。
【0084】
製造方法は実施例7の方法と同様であり、基板上にモル比2:1:2のC(CH)NHI、NHCH=NHBrとPbIの前駆体溶液をスピンコートし、アニール後にペロブスカイト構造を有するPEAFPIB膜を得た。
【0085】
図39は素子のエレクトロルミネッセンススペクトルを示し、近赤外発光素子の発光ピークは785nmである。素子の電流密度−電圧特性グラフについては、図40を参照されたい。
【0086】
近赤外発光ペロブスカイトLEDは、1.5Vの低いターンオン電圧、2.9%の最大外部量子効率を達成することができる。図41の素子外部量子効率−電流密度グラフを参照されたい。
【0087】
(実施例14)層状ペロブスカイト材料系発光素子
素子は、実施例7と同じ素子構造を採用する。発光層はPBAFPIBであり、素子構造全体は、ガラス基板/ITO/ZnO−PEIE(20nm)/PBAFPIB(30nm)/TFB(40nm)/MoOx(7nm)/Au(100nm)である。
【0088】
製造方法は実施例7の方法と同様であり、基板上にモル比2:1:2のC(CH)NHI、NHCH=NHBrとPbIの前駆体溶液をスピンコートし、アニール後にペロブスカイト構造を有するPBAFPIB膜を得た。
【0089】
図42は、素子のエレクトロルミネッセンススペクトルを示す。近赤外発光素子の発光ピークは、777nmである。
【0090】
素子の電流密度−電圧特性については、図43を参照されたい。近赤外発光ペロブスカイト型LEDは、1.7Vの低いターンオン電圧、最大外部量子効率0.6%を達成することができる。図44素子外部量子効率−電流密度グラフを参照されたい。
【0091】
(実施例15)層状ペロブスカイト材料系発光素子
素子は、実施例7と同じ素子構造を採用する。発光層材料は、実施例4のNCsPIを採用し、素子構造全体は、ガラス基板/ITO/ZnO−PEIE(20nm)/NCsPI(30nm)/TFB(40nm)/MoOx(7nm)/Au(100nm)である。
【0092】
製造方法は実施例7の方法と同様である。
【0093】
図45は、素子のエレクトロルミネセンススペクトルを示す。赤色発光素子の発光ピークは、686nmである。
【0094】
素子の電流密度−電圧特性については、図46を参照されたい。赤色発光ペロブスカイトLEDは、1.8Vの低いターンオン電圧、2.0%の最大外部量子効率を達成することができる。図47素子外部量子効率−電流密度グラフを参照されたい。
【0095】
(実施例16)層状ペロブスカイト材料系発光素子
素子は、実施例7と同じ素子構造を採用する。発光層材料は、実施例5のNCsPICを採用し、素子構造全体は、ガラス基板/ITO/ZnO−PEIE(20nm)/NCsPIC(30nm)/TFB(40nm)/MoOx(7nm)/Au(100nm)である。
【0096】
製造方法は実施例7の方法と同様である。
【0097】
図48は、素子のエレクトロルミネッセンススペクトルを示す。赤色発光素子の発光ピークは、686nmである。
【0098】
素子の電流密度−電圧特性については、図49を参照されたい。赤色発光ペロブスカイトLEDは、1.8Vの低いターンオン電圧、2.7%の最大外部量子効率を達成することができる。図50素子外部量子効率−電流密度グラフを参照されたい。
【0099】
(実施例17)層状ペロブスカイト材料系発光素子
素子は、実施例7と同じ素子構造を採用する。発光層はNFCsPIBであり、素子構造全体は、ガラス基板/ITO/ZnO−PEIE(20nm)/NFCsPIB(30nm)/TFB(40nm)/MoOx(7nm)/Au(100nm)である。
【0100】
製造方法は実施例7と同様であり、基板上にモル比2:0.9:0.1:2のC10CHNHI、NHCH=NHBr、CsBrとPbIの前駆体溶液をスピンコートし、アニールした後、ペロブスカイト構造を有するNFCsPIB膜を得た。
【0101】
図51は、素子のエレクトロルミネッセンススペクトルを示す。素子の発光ピークは、738nmである。素子の電流密度−電圧特性については、図52を参照されたい。
【0102】
近赤外発光のペロブスカイト型LEDは、1.7Vの低いターンオン電圧、5.4%の最大外部量子効率を達成することができる。図53素子の外部量子効率−電流密度グラフを参照されたい。
【0103】
(実施例18)層状ペロブスカイト材料系光起電力素子
素子は、NFPIを感光層として使用し、素子構造全体は、ガラス基板/ITO/PEDOT:PSS(40nm)/NFPI(100nm)/PCBM(40nm)/Al(100nm)である。
【0104】
図54は、上記ペロブスカイト型光起電力素子の光照射条件下における電流−電圧グラフであり、素子の開回路電圧Voc=1.2V、短絡電流密度JSC=3.7mA/cm、フィルファクタFF=0.46、効率2%である。
【0105】
(実施例19)層状ペロブスカイト材料系光起電力素子
素子は、NFPIを感光層として使用し、素子構造全体は、ガラス基板/ITO/c−TiOx(40nm)/m−TiOx(100nm)/NFPI(100nm)/Spiro−OMeTAD(110nm)/Al(100nm)である。
【0106】
図55は、上記ペロブスカイト型光起電力素子の光照射条件下における電流−電圧グラフであり、素子の開回路電圧VOC=0.5V、短絡電流密度JSC=1.7mA/cm、フィルファクタFF=0.33、効率0.3%ある。
【0107】
(実施例20)層状ペロブスカイト材料系発光素子
実施例7と同じ素子構造を採用する。発光層はBmzFPBであり、素子構造全体はガラス基板/ITO/ZnO−PEIE/BmzFPB/TFB/MoOx/Alである。
【0108】
製造方法は実施例7と同様であり、基板上に0.34:1.0:0.92モル比のベンズイミダゾールブロミド(CBr)、NHCH=NHBrとPbBrの前駆体溶液をスピンコーし、アニール後にペロブスカイト構造を有するBmzFPB膜を得た。
【0109】
図56は、素子のエレクトロルミネッセンススペクトルを示す。素子の発光ピークは530nmである。
【0110】
緑色発光ペロブスカイトLEDは、2.1Vの低いターンオン電圧、1.5%の最大外部量子効率を達成することがでる。図57の素子外部量子効率−電流密度グラフを参照されたい。
【0111】
上述した自己集積化多重量子井戸構造を有する層状ペロブスカイト材料は、製造プロセスが簡単で、成膜品質が高く、安定した性能を有し、低コスト、大面積、フレキシブル基板装置の工業的製造に非常に適している。本発明の材料から製造されたデバイスは、太陽電池、フラットパネルディスプレイデバイス、完全透明ディスプレイデバイス、フレキシブルディスプレイデバイス、内部または外部照明/信号光源、レーザプリンタ、モバイル電話、車両などの広範囲の製品に組み込むことができる。
【0112】
本明細書中の各実施形態は漸進的に記載されており、各実施形態は他の実施形態との相違点に着目しており、各実施形態の中で同様または類似の部分を相互に参照されたい。
【0113】
開示された実施形態の上記説明は、当業者が本出願を実施または使用することを可能にする。これらの実施形態への様々な変形形態は、当業者にとっては明らかであろう、本明細書で定義された一般的な原理は、本発明の設計思想と類似するレーザ装置を含み、本願の精神から逸脱しない範囲内で、他の実施形態において、実施され得る。
【0114】
本明細書に開示された原理および特徴に基づいて、同等の変換または等価代替によって形成される任意の技術的方法は、すべて本発明の保護範囲内に属するものと解される。
【0115】
(付記)
(付記1)
基板と、電極層と、機能層とを含み、
前記電極層は基板表面に配置され、前記機能層は電極層の間に配置され、前記機能層は少なくともペロブスカイト層を含み、
前記ペロブスカイト層は自己集積化多重量子井戸構造を有するペロブスカイト材料であり、多重量子井戸間の効果的なエネルギー移動を実現できることを特徴とするペロブスカイト光電素子。
【0116】
(付記2)
前記自己集積化多重量子井戸構造は複数のエネルギーギャップ量子井戸構造を含み、エネルギーギャップ幅が狭から広へ、広から狭へ、あるいはランダム分布で、禁制帯幅が0.1eV〜5eVであることを特徴とする付記1に記載のペロブスカイト光電素子。
【0117】
(付記3)
前記ペロブスカイト材料はAX:BX:MXのモル比1〜100:1〜100:1〜100で製造され、
AはR−Y+であり、Rは1〜50個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素基、5〜100個の炭素原子を有する脂環式炭化水素基、6〜100個の炭素原子を有する任意に置換できるアリール基又は3〜100個の炭素原子を有する任意に置換できるヘテロ環基であり、Y+はアミン系、ピリジン系またはイミダゾール系の有機カチオンのいずれか1つであり、
BはR−NH+、フォルムアミジンイオン又はアルカリ金属イオンであり、Rは1個の炭素原子を有する官能基であり、
Mは金属元素であり、
、XとXはそれぞれ独立なハロゲン元素であることを特徴とする付記1に記載のペロブスカイト光電素子。
【0118】
(付記4)
前記AはR−Y+であり、Rが1〜20個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素基、5〜50個の炭素原子を有する脂環式炭化水素基、6〜50個の炭素原子を有する任意に置換できるアリール基又は3〜50個の炭素原子を有する任意に置換できるヘテロ環基で、Y+はアミン系、ピリジン系またはイミダゾール系の有機カチオンのうちのいずれか1つであることを特徴とする付記3に記載のペロブスカイト光電素子。
【0119】
(付記5)
前記Aは以下の有機基のうちのいずれか1つであるかまたはこれらの任意の組み合わせであることを特徴とする付記4に記載のペロブスカイト光電素子。
【化5】
【0120】
(付記6)
前記AはR−(Y+)であり、Rは1〜20個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素基、5〜50個の炭素原子を有する脂環式炭化水素基、6〜50個の炭素原子を有する任意に置換できるアリール基、3〜50個の炭素原子を有する任意に置換できるヘテロ環基で、Y+はアミン系、ピリジン系またはイミダゾール系の有機カチオンのうちのいずれか1つ又はこれらの任意の組み合わせであることを特徴とする付記3に記載のペロブスカイト光電素子。
【0121】
(付記7)
前記Aは以下の有機基のうちのいずれか1つ又はいくつかであることを特徴とする付記6に記載のペロブスカイト光電素子。
【化6】
【0122】
(付記8)
前記Bは有機アミン基であるメチルアミノ、フォルムアミジン、K+、Rb+とCs+のうちのいずれか1つ又はこれらの任意の組み合わせであることを特徴とする付記3に記載のペロブスカイト光電素子。
【0123】
(付記9)
前記金属元素Mは、第4A族金属のPb2+、Ge2+、Sn2+のうちのいずれか1つ、または遷移金属のCu2+、Ni2+、Co2+、Fe2+、Mn2+、Cr2+、Pd2+、Cd2+、Eu2+、Yb2+のうちのいずれか1つ、または前記金属元素のうちの任意の組み合わせであることを特徴とする付記3に記載のペロブスカイト光電素子。
【0124】
(付記10)
前記X、XとXはそれぞれCl、Br及びIからなる群から選出されたいずれか1つ又はこれらの任意の組み合わせであることを特徴とする付記3に記載のペロブスカイト光電素子。
【0125】
(付記11)
前記ペロブスカイト材料は、AX、BXとMXから配合された前駆体溶液を基板上にスピンコートし、蒸着法を用いて前記前駆体材料を蒸着するか、又は蒸着法と溶液法との組み合わせによって製造され、自己集積化多重量子井戸構造を有し、多重量子井戸の間にエネルギー移動を実現できることを特徴とする付記3に記載のペロブスカイト光電素子。
【0126】
(付記12)
付記1に記載のペロブスカイト光電素子の製造方法であって、
前記方法は、
基板を、順次にアセトン溶液、エタノール溶液及び脱イオン水で超音波洗浄を行い、洗浄した後に乾燥させるステップ(1)と、
基板を真空室に転送し、真空室内で電極層を製造するステップ(2)と、
電極層を製造した基板を真空室に移し、酸素等のイオン前処理を行うステップ(3)と、
処理後の基板を素子構造に従って溶液法で順次に機能層薄膜の製造を行うステップ(4)と、
機能層薄膜の製造が終了後、真空蒸着室において他の電極層の製造を行うステップ(5)と、
製造した素子をグローブボックス内でパッケージングし、グローブボックスは不活性ガス雰囲気であるステップ(6)と、を備え、
前記機能層は少なくともペロブスカイト層を含み、また、電子及び/又は正孔輸送層、電子および/または正孔ブロック層のうちのいずれか1つ又はいくつかを選択的に含むことを特徴とするペロブスカイト光電素子の製造方法。
【0127】
(付記13)
前記ステップ(4)において、処理済の基板を真空蒸着室において蒸着法で機能層を製造し、素子構造に従って機能層を順次に蒸着するか、または処理後の基板を高真空室において蒸着法と溶液法の組み合わせ方法で素子構造層に従って順次に機能層を製造することを特徴とする付記12に記載のペロブスカイト光電素子の製造方法。
【0128】
(付記14)
AX:BX:MXのモル比1〜100:1〜100:1〜100で製造され、
AはR−Y+であり、Rは1〜50個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素基、5〜100個の炭素原子を有する脂環式炭化水素基、6〜100個の炭素原子を有する任意に置換できるアリール基又は3〜100個の炭素原子を有する任意に置換できるヘテロ環基であり、Y+はアミン系、ピリジン系またはイミダゾール系の有機カチオンのいずれか1つであり、
BはR−NH+、フォルムアミジンイオン又はアルカリ金属イオンであり、Rは1個の炭素原子を有する官能基であり、
Mは金属元素であり、
、XとXはそれぞれ独立なハロゲン元素であることを特徴とするペロブスカイト材料。
【0129】
(付記15)
前記AはR−Y+であり、Rは1〜20個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素基、5〜50個の炭素原子を有する脂環式炭化水素基、6〜50個の炭素原子を有する任意に置換できるアリール基又は3〜50個の炭素原子を有する任意に置換できるヘテロ環基であり、Y+はアミン系、ピリジン系またはイミダゾール系の有機カチオンのうちのいずれか1つであることを特徴とする付記14に記載のペロブスカイト材料。
【0130】
(付記16)
前記Aは以下の有機基のうちのいずれか1つ、またはいくつかの組み合わせであることを特徴とする付記15に記載のペロブスカイト材料。
【化7】
【0131】
(付記17)
前記AはR−(Y+)であり、Rは1〜20個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素基、5〜50個の炭素原子を有する脂環式炭化水素基、6〜50個の炭素原子を有する任意に置換できるアリール基、3〜50個の炭素原子を有する任意に置換できるヘテロ環基であり、Y+はアミン系、ピリジン系またはイミダゾール系の有機カチオンのうちのいずれか1つ又はこれらの任意の組み合わせであることを特徴とする付記14に記載のペロブスカイト材料。
【0132】
(付記18)
前記Aは以下の有機基のうちのいずれか1つ又はいくつかであることを特徴とする付記17に記載のペロブスカイト材料。
【化8】
【0133】
(付記19)
前記Bは有機アミン基であるメチルアミノ、フォルムアミジン、K+、Rb+とCs+のうちのいずれか1つ又はこれらの任意の組み合わせであることを特徴とする付記14に記載のペロブスカイト材料。
【0134】
(付記20)
前記金属元素Mは、第4A族金属のPb2+、Ge2+、Sn2+のうちのいずれか1つ、または遷移金属のCu2+、Ni2+、Co2+、Fe2+、Mn2+、Cr2+、Pd2+、Cd2+、Eu2+、Yb2+のうちのいずれか1つ、または前記金属元素のうちの任意の組み合わせであることを特徴とする付記14に記載のペロブスカイト材料。
【0135】
(付記21)
前記X、XとXはそれぞれCl、BrおよびIからなる群から選出されたいずれか1つ又はこれらの任意の組み合わせであることを特徴とする付記14に記載のペロブスカイト材料。
【0136】
(付記22)
前記ペロブスカイト材料はAX、BXとMXから配合された前駆体溶液を基板表面にスピンコート後、蒸着法を用いて前記前駆体材料を蒸着するか、又は蒸着法と溶液法との組み合わせによって製造され、自己集積化多重量子井戸構造を有し、多重量子井戸の間にエネルギー移動を実現できることを特徴とする付記14に記載のペロブスカイト材料。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
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図32
図33
図34
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図44
図45
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図55
図56
図57