特許第6808746号(P6808746)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6808746接着剤を製造する2段階の方法及び関連組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6808746
(24)【登録日】2020年12月11日
(45)【発行日】2021年1月6日
(54)【発明の名称】接着剤を製造する2段階の方法及び関連組成物
(51)【国際特許分類】
   C09J 4/02 20060101AFI20201221BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20201221BHJP
【FI】
   C09J4/02
   C09J201/00
【請求項の数】11
【全頁数】32
(21)【出願番号】特願2018-543624(P2018-543624)
(86)(22)【出願日】2017年2月20日
(65)【公表番号】特表2019-509375(P2019-509375A)
(43)【公表日】2019年4月4日
(86)【国際出願番号】US2017018568
(87)【国際公開番号】WO2017143316
(87)【国際公開日】20170824
【審査請求日】2018年10月12日
(31)【優先権主張番号】62/297,170
(32)【優先日】2016年2月19日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】514100751
【氏名又は名称】アベリー・デニソン・コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】AVERY DENNISON CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】バーソロミュー,エリック・エル
(72)【発明者】
【氏名】ボットーフ,ウィリアム・エル
(72)【発明者】
【氏名】ハイムバッハ,カイル・アール
(72)【発明者】
【氏名】ミラー,ブランドン・エス
(72)【発明者】
【氏名】ウォーターマン,マイケル・ティ
(72)【発明者】
【氏名】ザジャツコウスキ,マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ルオ,チアン
(72)【発明者】
【氏名】フル,アンドリュー・ピィ
(72)【発明者】
【氏名】ケーラー,クリストファー・イー
【審査官】 横山 敏志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−213572(JP,A)
【文献】 特表2014−517095(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第105131849(CN,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2013−0130927(KR,A)
【文献】 特開2014−152294(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0277341(US,A1)
【文献】 特開平10−147632(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0105488(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0250906(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J1/00−201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上のエチレン性不飽和結合を含む少なくと1つのモノマーと、
1活性波長で活性化される第1化学放射線開始剤と、
2活性波長で活性化され、前記第1活性波長で非光活性である第2化学放射線開始剤と、を含む、組成物であって、
前記第1化学放射線開始剤及び第2化学放射線開始剤の少なくとも1つは、1つ以上のエチレン性不飽和結合を含む少なくとも1つのモノマーと重合可能であり、
ここにおいて、前記第1化学放射線開始剤及び第2化学放射線開始剤の少なくとも1つが光開始剤部位を含む重合性モノマーであり、
ここにおいて、第1化学放射線開始剤の活性化の間、1つ以上のエチレン性不飽和結合を有する少なくとも1つのモノマーが重合してプレ接着剤を形成し、
ここにおいて、前記プレ接着剤は、110℃〜180℃の範囲内の温度で1,000cps〜80,000cpsの範囲内の粘度を示し、
ここにおいて、第2化学放射線開始剤の活性化の間、組成物は架橋して感圧接着剤を形成する、組成物。
【請求項2】
前記第1化学放射線開始剤が、UV放射線の露光によって活性化される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記第1化学放射線開始剤が、電子ビーム放射線の露光によって活性化される、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記第2化学放射線開始剤が、UV放射線の露光によって活性化される、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記第2化学放射線開始剤が、電子ビーム放射線の露光によって活性化される、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記プレ接着剤が、120℃〜140℃の範囲内の温度で30,000cps〜40,000cpsの範囲内の粘度を示す、請求項に記載の組成物。
【請求項7】
前記プレ接着剤が、120℃〜140℃の範囲内の温度で40,000cps〜50,000cpsの範囲内の粘度を示す、請求項に記載の組成物。
【請求項8】
前記プレ接着剤が、110℃〜130℃の範囲内の温度で1,000cps〜15,000cpsの範囲内の粘度を示す、請求項に記載の組成物。
【請求項9】
少なくとも1つのモノマーが、アクリレートモノマーである、請求項1〜のいずれかに記載の組成物。
【請求項10】
顔料、粘着付与剤、可塑剤、フィラー、希釈剤、阻害剤、及びそれらの組み合わせからなる群より選択される少なくとも1つの成分をさらに含む、請求項1〜のいずれかに記載の組成物。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載の組成物を含む、物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2016年2月19日付で出願された米国仮出願第62/297,170の利益を主張し、その全体の内容を本願に参考として組み込む。
【0002】
本発明は、接着剤を製造する方法に関し、特に、化学放射線の露光によって重合架橋される溶融加工性の接着剤に関する。多くの実施形態において、接着剤は、制御されたアーキテクチャポリマー(controlled architecture polymer)で製造される。また本発明は、接着剤及びプレ接着剤(pre−adhesive)組成物、前記接着剤を用いた物品、並びに前記の接着剤の製造システムに関する。
【背景技術】
【0003】
各種の接着剤及びコーティング剤などのUV硬化性ポリマー系は、公知である。通常、十分な持続時間及び強度のためのUV光の露光は、ポリマーの架橋及び任意のシステムにおいてはモノマー又は別の種を重合させる。硬化は、前記のシステムを強化又は固化させることがある。
【0004】
ポリマー系を硬化させるため各種の機器及び実験が知られているが、全てではないにしても、多くの柔軟性が制限され、及び/又は特定の硬化条件を有する特定のポリマー系に関してのみ使用され得る。従って、製造され、必要に応じて保存され、また選択的に塗工され、又はさらに処理され得る接着剤システム及び新規な接着剤組成物を硬化させるための更なる方法についての必要性が存在する。
【発明の概要】
【0005】
本発明において、従来の方法に関する困難及び欠点が以下のように解決される。
一態様において、本発明は、溶融加工性接着剤を形成する方法を提供する。前記方法は、1つ以上のエチレン性不飽和結合を有する少なくとも1つのモノマーと、第1化学放射線開始剤と、第2化学放射線開始剤とを含む組成物を提供することを含み、ここで、前記第2開始剤は、前記第1開始剤の活性波長において実質的に非光活性である。また、前記方法は、前記第1開始剤の活性波長に対応する波長を有する放射線に前記組成物を露光することによって前記組成物を少なくとも部分的に重合することを含む。さらにまた、前記方法は、前記第2開始剤の活性波長に対応する波長を有する放射線に前記組成物を露光することによって前記組成物を少なくとも部分的に架橋して接着剤を形成することを含む。この方法において、前記組成物は、溶剤を含まない。
【0006】
別の態様において、本発明は、化学放射線の露光を含む2つの段階によって接着剤を形成する方法を提供する。前記方法は、少なくとも1つのモノマーと、第1化学放射線開始剤と、第2化学放射線開始剤とを含む組成物を提供することを含み、ここで、前記第2開始剤は、前記第1開始剤の活性波長で実質的に非光活性である。また、前記方法は、前記第1開始剤の活性波長に対応する波長を有する放射線に前記組成物を露光することによって前記組成物を少なくとも部分的に重合することを含む。さらにまた、前記方法は、第2開始剤の活性波長に対応する波長を有する放射線に前記組成物を露光することによって前記組成物を少なくとも部分的に架橋して接着剤を形成することを含む。前記第1開始剤及び前記第2開始剤の少なくとも1つは、前記ポリマー主鎖に沿って光開始剤部位を有するポリマーである。
【0007】
さらに別の態様において、本発明は、1つ以上のエチレン性不飽和結合を有する少なくとも1つのモノマーを含む組成物を提供し、前記組成物は、接着剤を形成するのに容易に加工され得る。また、前記組成物は、プレ接着剤を形成するために少なくとも1つのモノマーを少なくとも部分的に重合する第1化学放射線開始剤を含み、前記第1開始剤は、第1活性波長で活性化される。前記組成物は、前記プレ接着剤を少なくとも部分的に架橋する第2化学放射線開始剤をさらに含み、前記第2開始剤は、第2活性波長で活性化され、第1活性波長では実質的に不活性である。
【0008】
さらに別の態様において、本発明は、少なくとも1つのアクリレートポリマーを含むアクリレート溶融加工性プレ接着剤組成物を提供する。また、前記組成物は、前記ポリマーを少なくとも部分的に架橋する化学放射線開始剤を含み、前記開始剤は、前記ポリマーの主鎖に沿う光開始剤部位である。前記プレ接着剤組成物は、前記開始剤の活性の前に110℃〜180℃の範囲の温度で1,000cps〜80,000cpsの範囲内の粘度を示す。
【0009】
さらに別の態様において、本発明は、接着剤又はプレ接着剤組成物を重合及び/又は架橋する装置を提供する。前記装置は、内部チャンバを規定し、前記内部チャンバへの接近を提供する少なくとも1つのつばを含む反応容器を含む。また、前記装置は、前記つばによって支持される少なくとも1つのプローブアセンブリを含む。前記プローブアセンブリは、(i)前記組成物を重合及び/又は架橋する光を発するエミッタと、(ii)前記エミッタから延び、前記反応容器の内部チャンバ内に少なくとも一部分が配置された光管(light tube)と、(iii)前記反応容器の内部チャンバ内の光管の位置を調整する調節式位置決め設備と、(iv)前記光管の遠位端に配置されたカバーとを含み、前記カバーは、前記エミッタから発せられた光を通過させるために、透明又は実質的に透明である。
【0010】
さらに別の態様において、本発明は、接着剤又はプレ接着剤組成物を重合及び/又は架橋する装置を提供する。前記装置は、内部チャンバと、前記容器の壁に組み込まれた少なくとも1つのサイトグラスとを規定し、前記内部チャンバへの視覚的アクセスを提供する反応容器を含む。また、前記装置は、前記サイトグラスに隣接する少なくとも1つのプローブアセンブリを含む。前記プローブアセンブリは、前記組成物を重合及び/又は架橋する光を発するエミッタを含む。前記プローブアセンブリは、前記エミッタから発せられた光が前記サイトグラスに向けて前記反応容器の内部チャンバに通過するように位置する。前記サイトグラスは、前記エミッタから発せられた光を通過させるために、透明又は実質的に透明である。
【0011】
別の態様において、本発明は、接着剤又はプレ接着剤組成物を重合及び/又は架橋する装置を提供する。前記装置は、内部チャンバを規定し、少なくとも1つのブレードを有する混合設備を含む反応容器を含む。また、前記装置は、前記反応容器の内部チャンバ内に配置された少なくとも1つのバッフルを含む。前記バッフルは、前記組成物を重合及び/又は架橋する光を発する少なくとも1つのエミッタを含む。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】各種反応性官能基を含む従来のポリマー、及び、UV放射線の露光の時、従来のランダムに架橋されたネットワークの形成を示す概略図である。
図2】本発明による制御されたアーキテクチャポリマー(CAP)、及び、UV放射線の露光の際に、向上した末端連結ネットワークの形成を示す概略図である。
図3】従来のランダムに架橋されたネットワーク、及び、接着剤に組み込む際に、前記ネットワークに関連する典型的な接着剤物性を示す概略図である。
図4】本発明による向上した末端連結ネットワーク、及び、接着剤に組み込む際に、前記接着剤のネットワークに関連する典型的な接着剤物性を示す概略図である。
図5】本発明により接着剤を製造する代表的な方法及びシステムを示す工程概略図である。
図6】本発明により接着剤を形成する方法の概略フローチャートである。
図7】本発明による接着剤を含むテープ物品の概略図である。
図8】本発明による別のテープ物品の概略断面図である。
図9】本発明による別のテープ物品の概略断面図である。
図10】本発明による別のテープ物品の概略断面図である。
図11】本発明による別のテープ物品の概略断面図である。
図12】本発明による接着剤の領域を含む封止又は閉鎖アセンブリの概略断面図である。
図13】本発明による接着剤を重合及び/又は架橋する装置の一実施形態の概略図である。
図14】本発明による接着剤を重合及び/又は架橋する装置の別の実施形態の概略図である。
図15】本発明による接着剤を重合及び/又は架橋する装置の別の実施形態の概略図である。
図16】本発明による接着剤を重合及び/又は架橋する装置の別の実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、接着剤、特に、化学放射線重合性、及び架橋性の溶融加工性接着剤を製造する方法に関する。本発明の多くの実施形態において、前記方法は、制御されたアーキテクチャポリマー(以下、「CAP」という。)で製造された接着剤を形成することに関する。また、本発明は、本明細書に記載の方法によって形成された接着剤及びプレ接着剤に関する。また、本発明は、本明細書に記載の方法によって製造された接着剤を含有する物品に関する。さらに、本発明は、前記接着剤及びプレ接着剤を製造及び/又は加工する機器及びシステムに関する。
【0014】
本発明の詳細な説明及びその多くの実施形態に注目する前に、本発明で用いられるいくつかの用語及びその定義を考察することが好ましい。用語「重合する」又は「重合」とは、化学反応においてモノマーを共に反応させ、ポリマーを形成する工程を意味する。また、用語「架橋する」又は「架橋」とは、1つのポリマー鎖と別のポリマー鎖を連結する結合を形成する工程を意味する。前記結合は、共有結合又はイオン結合であってもよい。用語「架橋する」とは、結合そのものを意味し得る。用語「硬化する」及び「硬化」とは、用語「架橋する」又は「架橋」を意味し、交互に使用される。
【0015】
本発明の多くの実施形態において、任意の組成物、特にCAPを含む重合及び架橋の際に得られた接着剤は、比較的高い剥離強度及びせん断強度などの向上した接着剤物性を示す。これらの向上した接着剤物性は、少なくとも部分的に、(i)ポリマー鎖の末端又は末端の近傍に位置するポリマーの官能基を含む多数の架橋、及び(ii)ポリマー鎖の内部領域内に位置する官能基を含む架橋の非存在又は少数であることから起因するものと考えられる。本発明に記載の前記方法から得られた架橋ネットワークは、「向上した末端連結ネットワーク」、又は ETLNという。以下、より詳細に記載する通り、ETLNの形成は、様々な長所及び利益の中でより小さい接着剤の塗布量、より低い粘度及びより良好な接着剤性能を可能にする。本発明及びその他の態様、CAP系の接着剤及びETLN、ならびに関連する物品が本明細書でより詳細に説明されている。
【0016】
多くの実施形態において、本発明の方法は、CAPを含む接着剤を使用するが、本発明が非CAP系接着剤を重合及び架橋する方法も含むことが理解されるであろう。本発明及びその他の態様、並びに前記方法によって重合架橋された非CAP系接着剤及び関連する物品は、本明細書により詳細に説明されている。
【0017】
また、本発明は、重合時に接着剤系ポリマーを形成する1つ以上のモノマーを含むプレ接着剤組成物を提供する。さらに、前記プレ接着剤組成物は、少なくとも2つの化学放射線開始剤を含む。多くの実施形態において、これらの開始剤の少なくとも1つがモノマーと重合したり、また特定の実施形態において、第1及び第2開始剤の両方がモノマーと重合して接着剤を形成する。本明細書では、他の態様が説明されている。
【0018】
また、本発明は、(AB)ジブロックコポリマー、(ABA)トリブロックコポリマー、−(AB)−マルチブロックコポリマー及びそれらの組み合わせの少なくとも1つを含むブロックコポリマー組成物を提供する。また、本発明は、(AB)ジブロックコポリマー、(ABA)トリブロックコポリマー、−(AB)−マルチブロックコポリマー及びそれらの組み合わせの少なくとも1つを含むブロックコポリマー組成物に由来する感圧接着剤を提供する。さらに、本発明は、(AB)ジブロックコポリマー、(ABA)トリブロックコポリマー、−(AB)−マルチブロックコポリマー及びそれらの組み合わせの少なくとも1つを含むブロックコポリマーを製造する方法(及び/又はブロックコポリマー組成物に由来する感圧接着剤を製造する方法)を提供する。また、本発明は、(AB)ジブロックコポリマー、(ABA)トリブロックコポリマー、−(AB)−マルチブロックコポリマー及びそれらの組み合わせの少なくとも1つを含むブロックコポリマー(及び/又はブロックコポリマーに由来する感圧接着剤)組成物の用途を提供する。本発明のブロックコポリマーは、アクリルブロックコポリマーであってもよい。他の実施形態において、本発明のブロックコポリマーは、アクリルブロックコポリマーであることが好ましい。
【0019】
接着剤
本発明の化学放射線重合性及び架橋性接着剤は、溶融接着剤又はプレ接着剤組成物、多くの活用において前記接着剤を重合するのに提供される第1化学放射線開始剤及び前記接着剤を架橋するのに有用な第2化学放射線開始剤を含む。多くの実施形態において、前記第2開始剤は、第1開始剤の活性波長で実質的に非光活性である。
【0020】
多くの実施形態において、前記化学放射線重合性及び架橋性溶融接着剤は、制御されたアーキテクチャポリマー又はCAPを含む。本発明の多くの実施形態において、前記CAPは、米国特許出願2011/0118372号、米国特許出願2013/0059971号、及び米国特許出願2014/0329958号を含む本出願人が所有する1つ以上の同時係属中の出願に記載されているものである。本明細書に特定の実施形態のポリマーの詳細が提供されている。しかし、本明細書は、本発明に記載されているポリマーのいずれかの使用を含むことが理解されるであろう。
【0021】
任意の実施形態において、前記第1開始剤を活性化してプレ接着剤を形成する時、前記プレ接着剤は、110℃〜180℃の範囲内の温度で1,000cps〜80,000cpsの範囲内の粘度を示す。特定の実施形態において、前記プレ接着剤は、120℃〜140℃の範囲内の温度で30,000cps〜40,000cpsの範囲内の粘度を示す。別の実施形態において、前記プレ接着剤は、120℃〜140℃の範囲内の温度で40,000cps〜50,000cpsの範囲内の粘度を示す。さらに、別の実施形態において、前記プレ接着剤は、110℃〜130℃の範囲内の温度で1,000cps〜15,000cpsの範囲内の粘度を示す。
【0022】
本発明は、このような特定の粘度を示す接着剤又はプレ接着剤に何ら制限されないことを理解されるであろう。また、本発明は、110℃未満の温度及び/又は180℃を超える温度でこれらの粘度を示す接着剤又はプレ接着剤を含み得ることが考えられる。さらにまた、本発明は、広範な温度で1,000cps未満及び/又は80,000cpsを超える粘度を示す接着剤又はプレ接着剤が提供されることが考えられる。
【0023】
本発明の接着剤及び/又はプレ接着剤組成物は、2以上の化学放射線開始剤を含み、特定の実施形態において、2つ以上のUV活性開始剤を含む。特定の理論にも拘束されるものではないが、本発明の多くの実施形態において、化学放射線、特に如何なるUV光による照射の際、1つ又は2つの開始剤が高エネルギー状態で励起され、ポリマー上の官能基から水素原子を引き抜くことで、ポリマー上の他のポリマー鎖又は官能基との架橋、例えば、フリーラジカルの添加のような他の反応に有用なフリーラジカルを生じる。しかし、本発明は、ほぼ全ての種類の開始剤の使用を含み、水素原子を引き抜くものに限定されないことが理解されるであろう。例えば、光、特にUV放射線を露光する際に、フリーラジカルに分解又は分裂される各種の開始剤が公知となっている。
【0024】
ベンゾフェノン、アセトフェノン、アシルホスフィン、チオキサントン、これらの化合物の誘導体及び類似化合物を含む多様な開始剤が公知であり、本発明の接着剤に潜在的に組み合わせることができる。それぞれの化合物は、電磁スペクトルのUV領域内でエネルギーを吸収することによって光開始剤として機能する。
【0025】
アシルホスフィンオキシド型光開始剤、赤方偏移ベンゾフェノン型光開始剤及びチオキサントン型光開始剤を含む、スペクトルの近UV領域で吸収する複数種の光開始剤が公知となっている。これらの多くは、本発明の組成物と共に使用するのに適する。
【0026】
市販のアシルホスフィンオキシド型光開始剤は、BASF社から販売されている「Lucirin TPO」(2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド)及び「Lucirin TPO−L」(液体)、並びにCiBA社から販売されている「BAPO」(ビス2,6−ジメトキシベンゾイル−2,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシド)を含む。
【0027】
いわゆる、「赤方偏移ベンゾフェノン型光開始剤」というのは、ベンゾフェノンのUV吸収スペクトルと比較して、分子のUV吸収スペクトルにおいて(より長い波長に向かって)赤方偏移を引き起こす官能基により1つ以上の水素原子が置換されるベンゾフェノン誘導体である。その例としては、「QUANTACURE BMS」(4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルスルフィド)である。
【0028】
市販のチオキサントン型光開始剤は、2−イソプロピル−及び4−イソプロピルチオキサントン異性体の混合物であると考えられる「Quantacure ITX」を含む。
【0029】
別の好ましい光開始剤は、当業者によって識別され、本発明に使用され得る。また、前記接着剤が顔料のない化合物である場合、未置換のアセトフェノン、ベンジル、ベンゾフェノン、キノン及びチオキサントンなどの、より安価で単純な光開始剤を含む、より短いUV波長で吸収する光開始剤が使用され得る。
【0030】
上記の光開始剤の任意の組み合わせが、前記第1開始剤、前記第2開始剤及び/又は両方の開始剤いずれにも潜在的に使用され得る。
【0031】
本発明の任意の実施形態において、重合性モノマーの形態である特定の開始剤が使用される。前記接着剤のポリマーの形成時に、前記接着剤ポリマーに前記第1開始剤及び/又は第2開始剤が組み込まれ、次いでUV照射によって活性化され得る。従って、前記第1開始剤及び第2開始剤の少なくとも1つは、前記接着剤を形成するモノマー及び/又はそのポリマーと重合可能である。これらの実施形態において、前記第1開始剤は、重合性光開始剤であり、前記接着剤と、を形成するモノマーの重合を開始させる。前記モノマーの重合は、増減、上昇剤又は共開始剤(co−initiator)のメカニズムを介して直接的又は間接的に開始し得る。重合性光開始剤の非限定的な例としては、アシルホスフィン、チオキサントン誘導体、カンファーキノン及び/又は関連誘導体、ならびにそれらの組み合わせが含まれる。アシルホスフィンの例には、TPO、TPO−L及びBAPOが含まれる。しかし、本発明は、UV放射線を吸収する他の製剤を含み、これは第1開始剤として用いるのに適していることが理解されるであろう。例えば、前記UV吸収物質は、系に添加されるか、ポリマー結合されるか、又は系内の物質若しくは製剤の会合によってin−Situ形成される別個の製剤の形態であり得ることが考えられる。本発明において、後者の方法は、「光開始剤を含まない」技術であることを意味し、電荷移動錯体又はドナー・アクセプター錯体などの錯体に基づき得る。
【0032】
前記実施形態において、前記第2開始剤は、光開始剤部位が付着又は結合した重合性モノマーの形態である。通常、前記重合性モノマーは、前記接着剤系のポリマーマトリックスを形成するのに好適な任意のモノマーであり得る。このようなモノマーの非限定的な例としては、アクリレート及びメタクリレートモノマーが含まれる。潜在的に好適なモノマーのさらなる例を以下に記載する。
【0033】
これらの形態の第2開始剤の光開始剤部位は、第1開始剤が活性化される波長で目に見えるほど光活性されてはならない。従って、通常、前記光開始剤部位は、前記第1開始剤の活性波長で不活性である。
【0034】
一般に、第2開始剤の重合性モノマーの形態の光開始剤部位は、水素引き抜き型開始剤である。例えば、前記部位は、ベンゾフェノンの誘導体を含み得る。しかし、本発明は、開裂型光開始剤を含む。また、本発明は、増感剤、共開始剤及び/又は上昇剤を介した活性を含む。第1重合性開始剤について上述したように、光開始剤部位を有する重合性モノマーの形態における第2開始剤は、系に添加されるか、ポリマーに結合されるか、又は物質若しくは製剤の会合によってin−Situ形成される別個の製剤、又は、例えば、電荷移動錯体又はドナー・アクセプター錯体などの錯体に基づいた光開始剤を含有しない技術における系内の製剤の形態であり得る。
【0035】
上述のように、多くの実施形態において、前記接着剤は、異なる波長で活性化される第1開始剤及び第2開始剤を使用する。これは、前記第2開始剤を活性化させることなく、第1開始剤の活性を可能にする。前記開始剤は、両者ともに化学放射線により活性化され、多くの実施形態において、UV放射線、すなわち約100nm〜約500nmの範囲の波長を有する電磁放射線によって活性化される。任意の実施形態において、第1開始剤は、200nm〜500nmの範囲内の波長、具体的に300nm〜500nmの範囲内の波長、より具体的に350nm〜500nmの範囲内の波長で活性化される。そして、前記第2開始剤は、100nm〜400nmの範囲内の波長、具体的に200nm〜400nmの範囲内の波長、より具体的に200nm〜375nmの範囲内の波長で活性化される。通常、第1開始剤が活性化される波長は、第2開始剤が活性化される波長と異なる。
【0036】
従って、本発明の多数の形態において、第1開始剤及び第2開始剤の一方又は両方は、ポリマーの主鎖に沿って光開始剤部位を有するポリマーの形態である。また、任意の実施形態において、前記第1開始剤及び第2開始剤の一方又は両方は、光開始剤部位を有する重合性モノマー及び/又はオリゴマーの形態である。
【0037】
また、第1開始剤及び/又は第2開始剤は、電子ビーム放射線による露光によって活性化され得る。また、一方の開始剤はUV放射線による露光によって活性化が可能であり、他方の開始剤は電子ビーム放射線による露光によって活性化可能であることが考えられる。
【0038】
前記接着剤を製造する際にポリマーに添加される開始剤の総量は、添加される顔料及び/又はその他の製剤の量、基板上の接着剤の塗布量(厚さ)、硬化の間のウェブ速度、並びに使用される開始剤の種類及びコストを含む種々の因子によって異なる。多くの実施形態において、前記開始剤は、接着剤において最も高価な成分である。従って、通常、得られた組成物の所望の最終特性を達成するのに十分な開始剤が含まれる限り、前記ポリマーに添加される開始剤の量を最少にすることが好ましい。
【0039】
本発明の任意の実施形態において、前記接着剤を不透明にするために、及び/又は前記接着剤に色を付与するために、一般に、架橋の前に顔料又は他の着色剤が前記組成物に添加される。例えば、通常、チタンオキシドなどの不透明な顔料が高い隠蔽力により塗装業によって正確に添加される。しかし、一般にこれらの存在は、前記接着剤ポリマーのUV開始架橋を妨害する。しかし、本発明において、スペクトルの近UV領域で吸収される開始剤は着色された(及び非着色された)調製物を使用することができ、前記接着剤のUV開始架橋との干渉を回避することができる。
【0040】
所定の調製物において、配合されたポリマーに加えられる顔料の量は、前記開始剤の量と同様に所望の不透明度、所望の硬化度、他の充填材が存在するか否か、存在する光開始剤の種類及び量、並びにコストの考慮を含む、多数の因子によって異なる。
【0041】
着色された接着剤組成物が使用される本発明に関して、UV開始架橋の結合が二酸化チタン(又は他の顔料)の量の減少及び/又は開始剤の量の増加によって容易になり得る。しかし、実用的な問題として、ポリマー100部当たり約15部の顔料(又はコポリマーが粘着する場合、100部のポリマー当たり15部の顔料+粘着付与剤)を超える顔料の投入は、低い顔料の投入よりも好ましくない。UV開始架橋された、高凝集力を有する感圧接着剤組成物は、本発明によって高い顔料の投入で製造され得るが、より高い(また、高価な)開始剤の濃度及び/又はより長い架橋の時間を要求する。
【0042】
別の実施形態において、前記接着剤組成物は、着色(非白色)顔料で調製される。
通常、黄色及び赤色顔料は、実質的に前記UV領域で吸収される光開始剤を干渉しない。従って、前記顔料と配合される接着剤は、UV活性の光開始剤を用いて高い凝集力でUV架橋され得る。青色顔料は、少なくとも一部の近UV領域で強く吸収される傾向にある。しかし、添加される青色顔料の量を最少限に抑えることにより、本発明に記載の方式でUV架橋された接着剤を製造することができる。
【0043】
前記顔料及び開始剤の他に、一部の実施形態において、前記ポリマーは、粘着付与剤とさらに配合される。任意の実施形態において、例えば、前記接着剤が感圧接着剤である場合、粘着付与剤が添加され、前記感圧接着剤の粘着性を改善することができる。
【0044】
本技術分野で公知の様々な粘着付与剤が、本発明の実施において潜在的に使用され得る。このような粘着付与剤の代表的且つ非限定的な例としては、炭化水素樹脂及びロジン樹脂が含まれる。このような粘着付与剤は、松の木のオレオレジンから自然に発生するロジン物質を含むロジン及びロジン誘導体、並びにロジンエステルを含むその誘導体、断片化、水素化、脱水素化及び重合されたロジンなどの修飾ロジン、修飾ロジンエステルなどが含まれるが、これらに限定されるものではない。一般に、100部のポリマー当たり最大約45部の粘着付与剤が添加される。しかし、本発明は、前記粘着付与剤をより少ない量及び/又はより多い量を用いるものが含まれることが理解されるであろう。
【0045】
多様な粘着付与剤は、市販のHercules,Inc.製のForal(登録商標)85(非常に安定したロジンのグリセロールエステル)、Foral 105(水素化ロジンのペンタエリスリトールエステル)、Stabilit ester 10、及びPentalyn(登録商標)H、市販のArizona Chemical Co.製のPE Estergumなど、並びに市販のSylvachem Corporation製のSylvatac(登録商標)40N、Sylvatac RX、Sylvatac 95などを含んで市販されているが、これらに限定されるものではない。
【0046】
また、植物のオレオレジン及び大半のエッセンシャルオイルから発生する式C10H16の炭化水素であるテルペン樹脂及びαピネン、βピネン、ジペンテン、リモネン、ミルセン、ボルニレン、カンフェンなどのフェノール変性テルペン樹脂を粘着付与剤として使用し得る。さらに、Exxon Chemical Co.製のEscorez(商標)1304のような各種脂肪族炭化水素樹脂及びC9、C5、ジシクロペンタジエン、クマロン、インデン、スチレン、置換スチレン、及びスチレン誘導体などを基礎とする芳香族炭化水素樹脂が使用され得る。
【0047】
また、本発明において、Hercules Corporation製の、例えば、Regalrez(商標)1018、Regalrez 1033、Regalrez 1078、Regalrez 1094、Regalrez 1126、Regalrez 3102、Regalrez 6108などの水素化及び一部分が水素化した樹脂が粘着付与剤として使用され得る。本発明において、市販のSchenectady Chemical Inc.製のSP560、市販のReichold Chemical Inc.製のNirez 1100、及び市販のHercules Corporation製のPiccolyte(登録商標)S−100タイプの各々テルペンフェノール樹脂が、特に有用な粘着付与剤である。また、市販のHercules Corporation製のHercotex AD 1100などの各々混合された脂肪族及び芳香族樹脂が粘着付与剤としても使用され得る。
【0048】
さらに、溶融加工性の、化学放射線重合性及び架橋性接着剤組成物は、1つ以上の阻害剤を含み得る。実用可能なフリーラジカル捕捉剤は、特にホットメルト接着剤組成物の場合、コーティング剤の調製又は保存において、早期ゲル化を防止するために存在してもよい。フェノール化合物を含む阻害剤は、本発明に使用される1種の物質であり、例えば、4−メトキシフェノール(MEHQ、ヒドロキノンのメチルエーテル)、ヒドロキノン、2−メチルヒドロキノン、2−t−ブチルヒドロキノン、t−ブチルカテコール、ブチル化ヒドロキシトルエン及びブチル化ヒドロキシアニソールなど、及びそれらの組合物を含む。使用されるその他の阻害剤は、ルイジアナの州バトンルージュのAlbemarle CorporationからのNPAL型阻害剤(トリス−(N−ニトロソ−N−フェニルヒドロキシルアミン)アルミニウム塩)などの嫌気性阻害剤及びフェノチアジンを含む。阻害剤の組み合わせが用いられてもよい。
【0049】
本発明の接着剤は、例えば、フィラー、可塑剤、希釈剤などの1つ以上の通常の補助剤をさらに含んでもよい。これらの化合物の1つ以上の組み合わせが顔料及び/又は粘着付与剤の組み合わせを含んで使用され得る。必要に応じて、粘着性及び凝集力の物性を変えるために、一部の粘着付与剤の代わりに、可塑剤などの希釈剤が添加されてもよい。
【0050】
通常、溶融加工性の、化学放射線重合性及び架橋性接着剤は、少なくとも95%の固形分、多くの実施形態において少なくとも98%の固形分、特定の実施形態において少なくとも99%の固形分、及び任意の特定の形態において少なくとも99.5%の固形分を含む。
【0051】
上述のように、本発明の多くの実施形態において、前記接着剤は、感圧接着剤の形態である。感圧接着剤の詳細及びその特性は、Encyclopedia of Polymer Science and Engineering,Vol.13.Wiley−Interscience Publishers(New York,1988)で確認される。感圧接着剤の更なる詳細及びその特性は、Encyclopedia of Polymer Science and Technology,Vol.1,Interscience Publishers(New York,1964)で確認される。
【0052】
制御されたアーキテクチャポリマー(CAP)
特定の実施形態において、本発明の溶融加工性の、化学放射線重合性及び架橋性接着剤は、制御されたアーキテクチャポリマーから製造される。多くの実施形態において、前記ポリマーは、アクリルポリマーである。
【0053】
本発明の多くの実施形態において、制御されたアーキテクチャポリマーを含む前記溶融加工性の、化学放射線重合性及び架橋性接着剤は、その領域内に定められた濃度にて、前記ポリマーの選択ブロック又は領域で組み込まれた1つ以上の反応性官能基を有する。上述のように、多くの実施形態において、前記ポリマーは、アクリルポリマーである。前記反応性官能基は、本発明に記載の1つ以上の重合性モノマーによってポリマーに組み込まれ得る。従って、本発明に記載の重合性モノマー及び/又はコモノマーは、1つ以上の反応性官能基を構成してもよい。また、本発明は、前記制御されたアーキテクチャポリマーを用いた接着剤を提供する。
【0054】
通常、前記CAPは、ポリマー主鎖又はポリマー鎖と共に、任意の位置に位置されるか、又はポリマー内の他の位置に位置する互いに異なる少なくとも2つのブロック若しくは領域を含む。従って、本発明に記載のCAPは、ポリマー内の任意の位置に1つ以上のAブロック、1つ以上のBブロック、及び1つ以上のCブロックを含有してもよい。好ましいポリマーは、Dブロック、Eブロック…等、他の形態のブロック又は領域を含んでもよい。好ましい態様において、反応性官能基の特定量は、便宜上、ブロックA及びBと呼ばれる少なくとも2つのブロックに関して提供される。そして、より好ましい態様において、反応性官能基の総量が特定の範囲の重量比内で2つのブロック、例えば、ブロックAとBとの間に分配されるように、前記ブロックA及びBにおいて、反応性官能基の量が制御される。通常、本明細書において、前記比は、「分配比」といい、ブロックBに関連する反応性官能基の重量比に対するブロックAに関連する反応性官能基の重量比の比として定義される。一般に、本発明の制御されたアーキテクチャポリマーについての有用な範囲の比、すなわち分配比は、約1.1:1〜約10,000:1である。多くの実施形態において、前記処理されたポリマーの分配比は、1.1:1〜1,000:1又は1.1:1〜100:1である。別の実施形態において、前記処理されたポリマーの分配比は、6:1〜10,000:1又は6:1〜1,000:1又は6:1〜100:1又は6:1〜80:1である。しかし、本発明は、これらの範囲よりも少ないか、又はより大きい分配比でポリマーのブロック間に分配された1つ以上の反応性官能基を有するポリマーを含むことが理解されるであろう。例えば、本発明は、約50,000:1、約75,000:1、及び約100,000:1のような10,000:1を超える分配比を有する本明細書に記載のポリマーを含む。
【0055】
前記CAPは、(i)アクリレート及び/又はメタクリレートのモノマー、及び(ii)1つ以上の反応性官能基を有する重合性アクリレートコモノマーから形成されることが好ましい。本発明で用いられる用語「モノマー」又は「コモノマー」とは、共に結合されてポリマーを形成し得る分子、開始単位又は化学種を意味する。また、前記用語は、ポリマー内に繰り返し単位を含む。上述のように、前記モノマー又はコモノマーは、本発明で、通常、「A」、「B」及び/又は「C」などのブロック又は領域という。前記アクリレートモノマーは、C1〜約C20のアルキル、アリール又は環状アクリレート、例えばメチルアクリレート、エチルアクリレート、フェニルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、イソボルニルアクリレートなど、及びこれらのアクリレートの機能的誘導体、例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−クロロエチルアクリレートなどが含まれる。通常、これらのモノマー又はコモノマーは、約3〜20個の炭素原子を含有し、一実施形態において、約3〜約8個の炭素原子を含有する。前記メタクリレートモノマーは、C1〜約C20のアルキル、アリール又は環状アクリレート、例えばメチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、フェニルメタクリレート、イソボルニルメタクリレートなど、及びこれらのメタクリレートの機能的誘導体、例えば、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−クロロエチルメタクリレートなどを含む。これらのモノマー又はコモノマーは、通常、約4〜約20個の炭素原子を含有し、一実施形態において、約4〜約8個の炭素原子を含有する。アクリレートとメタクリレートの組み合わせも使用され得る。
【0056】
多くの実施形態において、前記CAPは、(i)アクリレート及び/又はメタクリレートのモノマー、及び(ii)重合性アクリレートのコモノマー、すなわちブロックA及びBを含むことが好ましいが、本発明は、前記ポリマーにおいて、ブロックとして、さらなる及び/又は異なるモノマーの使用を含む。本明細書に記載の制御されたアーキテクチャポリマーにおいて、ほぼ全てのフリーラジカルの重合性モノマー又はモノマーの組み合わせは、ブロックA、B、C、D、Eなどとして使用され得る。従って、本発明は、アクリレート及び/又はメタクリレートブロックを含むCAPに何ら制限されないことが理解されるであろう。
【0057】
前記重合性モノマー及びコモノマーは、反応性官能基として、アクリロニトリル基、アクリルアミド基、メタクリルアミド基、ビニルエステル基、ビニルエーテル基、ビニルアミド基、ビニルケトン基、スチレン基、ハロゲン含有基、イオン性基、酸含有基、塩基含有基、オレフィン基、シラン基、エポキシ基、ヒドロキシル基、無水物基、及びこれらの2つ以上の基の組み合わせを含み得る。また、シリル基、カルボキシル基、カルボニル基、カーボネートエステル基、イソシアナト基、アミノ基、アミド基、イミド基、メルカプト基、及びアセトアセチル基の組み合わせ及び/又は上述の基の1つ以上の任意の基と組み合わせることを含むことが考えられる。
【0058】
前記アクリロニトリル基は、アクリロニトリル及びアルキル置換アクリロニトリルを含み得る。通常、前記アルキル基は、1〜約20個の炭素原子を含有し、一実施形態において1〜約10個の炭素原子を含有し、他の実施形態において1〜約5個の炭素原子を含有する。その例としては、メタクリロニトリル及びエタクリロニトリルを含む。
【0059】
前記アクリルアミド基は、アクリルアミド並びにそのN−置換アルキル及びアリール誘導体を含むその誘導体を含み得る。これらは、N−メチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、t−オクチルアクリルアミド、N−アミノエチルアクリレート、N−アミノエチルメタクリレートなどを含む。
【0060】
前記メタクリルアミド基は、メタクリルアミド並びにそのN−置換アルキル及びアリール誘導体を含むその誘導体を含み得る。
【0061】
前記ビニルエステル基は、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、吉草酸ビニル、バーサチック酸ビニル、イソ酪酸ビニルなどを含み得る。
【0062】
前記ビニルエーテル基は、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテルなどを含む1〜約8個の炭素原子を有するビニルエーテルを含み得る。
【0063】
前記ビニルアミド基は、ビニルピロリドンなどを含む1〜約8個の炭素原子を有するビニルアミドを含み得る。
【0064】
前記ビニルケトン基は、エチルビニルケトン、ブチルビニルケトンなどを含む1〜約8個の炭素原子を有するビニルケトンを含み得る。
【0065】
前記スチレン基は、スチレン、インデン、及び下記の式(I)で表される置換スチレンを含み得る。
【0066】
【化1】
【0067】
ここで、A、B、C、D、E及びFは、各々独立に水素、C1〜約C4のアルキル若しくはアルコキシ基(特に、メチル又はメトキシ基)、ハロ基(特に、クロロ)、チオ、シアノ、カルボン酸若しくはエステル、又は1〜約4個の炭素原子のフッ化アルキル基より選択される。その例としては、メチルスチレン(ビニルトルエンともいう)、α−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、クロロスチレン、クロロメチルスチレンなどを含む。
【0068】
前記ハロ含有基は、塩化ビニル、臭化ビニル、フッ化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニリデン、フッ化ビニリデン、ハロゲン置換プロピレンモノマーなどを含み得、臭化ビニル及び塩化ビニリデンが好ましい。
【0069】
前記イオン性基は、ビニルスルホン酸ナトリウム、スチレンスルホン酸ナトリウム、メタアリルスルホン酸ナトリウム、アクリル酸ナトリウム、メタクリル酸ナトリウムなどを含み得、ビニルスルホン酸ナトリウム、スチレンスルホン酸ナトリウム及びメタアリルスルホン酸ナトリウムが好ましい。
【0070】
前記酸含有基は、3〜約20個の炭素原子を含有する不飽和カルボン酸を含み得る。好ましい基は、アクリル酸、メタクリル酸、ビニルスルホン酸、イタコン酸、βカルボキシエチルアクリレート、モノ−2−アクリロイルオキシプロピルスクシネートなどを含む。
【0071】
前記塩基含有基は、ビニルピリジンなどを含む。
前記オレフィン基は、イソプレン、ブタジエン、C2〜約C8の直鎖及び分岐状のα−オレフィン、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン、ジイソブチレン、4−メチルペンテン−1,1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンなどが挙げられる。
【0072】
前記シラン基は、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリプロポキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルメチルジプロポキシシラン、γ−メタクリロキシプロプル−トリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロプルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピル−トリプロポキシシラン、γ−メタクリロキシジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピル−メチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリル−オキシプロピルメチルジプロポキシシラン、γ−メタクリロキシメチル−ジメトキシシラン、γ−メタクリロキシメチルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシメチル−トリエトキシシラン、(メタクリロキシメチル)メチルジメトキシシラン、(メタクリロキシメチル)メチルジエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリアセトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリル−オキシメチルジエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリプロポキシシラン、γ−アクリロキシプロピル−メチルジメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピル−メチルジプロポキシシランなどを含み得る。
【0073】
前記エポキシ基は、例えば、グリシジルメタクリレート及びグリシジルアクリレートを含み得る。
【0074】
前記ヒドロキシル基は、例えば、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシルエチルメタクリレート、ヒドロキシルイソプロピルアクリレート、ヒドロキシルイソプロピルメタクリレート、ヒドロキシルブチルアクリレート、ヒドロキシルブチルメタクリレートなどを含み得る。
【0075】
前記無水物基は、例えば、マレイン酸無水物、イタコン酸無水物、シトラコン酸無水物などを含み得る。
【0076】
官能基を有する前記モノマー以外に、前記反応性断片は、下記の式(II)を有する少なくとも1つのモノマーを含み得る。
【0077】
【化2】
【0078】
ここで、Rは、H又はCHであり、Rは、4〜14個の炭素原子を有する分岐状又は非分岐状の飽和アルキル基である。前記反応性断片は、下記の式(III)を有する少なくとも1つのモノマーを代わりに又はさらに含んでもよい。
【0079】
【化3】
【0080】
ここで、Rは、H又はCHであり、Xは、架橋可能な官能基を表すか、又は、含有する。
【0081】
本明細書に記載のポリマーに組み込まれる代表的な好ましい反応性の官能基は、アクリル酸、2−メタクリロキシエチルフタル酸(PAMA)及びそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されるものではない。多様な異なる反応性官能基がこれらの反応性官能基の任意のものに代えて、又はこれらと結合して使用されることが理解されるであろう。
【0082】
前記CAPは、前記ポリマー全体にわたって反応性官能基の特定の分配を示すことができる。ポリマーに組み込まれる反応性官能基の各形態の分配は、1つのブロック又は領域、すなわちブロックAにおける反応性官能基の重量パーセント量、及び別のブロック又は領域、すなわちブロックBにおける反応性官能基の重量パーセント量の重量比に関して示すことができる。上述のように、前記重量比は、本明細書で分配比という。多数の目的用途において、異なるブロック、すなわちBブロックの反応性官能基の量に比べて、ポリマーのAブロックの反応性官能基の量をさらに多くに組み込むことが好ましい。従って、特定の反応性官能基の任意の重量パーセントを有する特定のブロックをポリマー内に戦略的に位置させることにより、ポリマー内におけるでそれぞれの官能基の所望の投入及び配置を有する正確なポリマーアーキテクチャが製造され得る。前記戦略は、ポリマー内の所望の領域に位置する特定のブロックを有するポリマーの形成を可能にし、得られたポリマーは、所望の領域内の特定濃度の官能基を有する。例えば、A、B及びCのようなブロックの任意の組み合わせを有するポリマーを製造し、前記ポリマーについては、前記ポリマーの内部などの他の領域と比較して、前記ポリマーの末端領域又は他の位置内の比較的高濃度の官能基を示すことが好ましい。
【0083】
本発明は、多様なポリマーのサイズ及び重量に適用可能である。通常、本発明は、約10,000〜約300,000、好ましくは約50,000〜約200,000、最も好ましくは約100,000〜約150,000g/molの分子量を有するポリマーに適用可能である。しかし、本発明は、これらの分子量に何ら制限されないことが理解されるであろう。上述のポリマーに対するこれらの分子量は平均分子量であり、特に言及しない限り、重量平均分子量であることが理解されるであろう。
【0084】
任意の実施形態において、前記ポリマーは、比較的狭い範囲の分子量を示すため、比較的低い多分散度を有する。通常、好ましい実施形態のポリマーの多分散度(Pdi)は、4.0未満、好ましくは3.5未満、さらに好ましくは3.0未満、よりさらに好ましくは2.5未満、最も好ましくは2.0未満を示す。任意の実施形態において、好ましい実施形態のポリマーの多分散度は、1.5未満、約1.4程度を示す。
【0085】
また、上述したように、前記CAPは、2以上の異なる種類の反応性官能基を含んでもよいことが理解されるであろう。従って、異なる反応性官能基は、目的のポリマーの1つ以上の末端領域及び/又は1つ以上の内部領域に組み込まれ得る。そのため、本発明のポリマーは、1、2、3以上の異なる反応性官能基を含み得る。また、各々の基は、本明細書に記載の特定比で前記ポリマーと共に分配されるように定義され得る。例えば、CAPは、第1分配比でブロックAとBとの間に分配された第1反応性官能基と、前記第1分配比とは異なる第2分配比でブロックAとBとの間に分配された第2反応性官能基とを含み得る。さらに、前記第2反応性官能基又は第3反応性官能基が、ブロックA及びBの一方と、別のブロックであるブロックCとの間に分配されることが考えられる。また、前記第2又は第3反応性官能基は、ブロックC及びDのようなブロックA及びBとは異なる一連のブロック間に分配され得る。
【0086】
通常、制御されたアーキテクチャポリマーのガラス転移温度(Tg)の代表的かつ非限定的な例の範囲は、約−60℃〜約−35℃である。しかし、本発明のポリマーは、−60℃未満及び/又は−35℃超などの前記範囲を外れるTgを示し得ることが理解されるであろう。
【0087】
任意の実施形態において、本発明は、少なくとも1つのアクリルモノマーによって提供された反応性官能基を有する第1断片を有する架橋性アクリルコポリマーを製造するための2段階重合工程を用いる。第2断片は、第1断片に添加され、アクリルコポリマーを形成する。前記第2断片は、架橋性官能基を含有さず、第1断片と混和する。
【0088】
前記アクリルポリマーの反応性断片は、1つ以上の非反応性断片のモノマー及び少なくとも1つの架橋性の官能性を有する重合性コモノマーに由来するコポリマーであってもよい。一実施形態において、前記反応性断片は、下記の式を有する少なくとも1つのモノマーを含む。
【0089】
【化4】
【0090】
ここで、Rは、H又はCHであり、Xは、架橋可能な官能基を表すか又は含有する。前記アクリルポリマーの反応性断片の架橋性官能基は、特に限定されるものではないが、1つ以上の架橋性シリル、ヒドロキシル、カルボキシル、カルボニル、カーボネートエステル、イソシアナト、エポキシ、ビニル、アミノ、アミド、イミド、無水物、メルカプト、酸、アクリルアミド及びアセトアセチル基を含んでもよい。
【0091】
ヒドロキシ官能性モノマーは、例えば、ヒドロキシルエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシルイソプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシルブチル(メタ)アクリレートなどを含む。エポキシ官能性モノマーは、例えば、グリシジルメタクリレート及びグリシジルアクリレートを含む。
【0092】
モノマーを含有する酸は、3〜約20個の炭素原子を含有する不飽和カルボン酸を含む。前記不飽和カルボン酸は、特に、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、βカルボキシエチルアクリレート、モノ−2−アクリロイルオキシプロピルスクシネートなどを含む。モノマーを含有する無水物は、マレイン酸無水物、イタコン酸無水物、シトラコン酸無水物などを含む。
【0093】
前記アクリルアミド類は、アクリルアミド並びにそれらのN−置換アルキル及びアリール誘導体を含むその誘導体を含む。これらは、N−メチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、t−オクチルアクリルアミドなどを含む。前記メタクリルアミド類は、メタクリルアミド並びにそれらのN−置換アルキル及びアリール誘導体を含むその誘導体を含む。前記ビニルエステルは、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、吉草酸ビニル、バーサチック酸ビニル、イソ酪酸ビニルなどを含む。前記ビニルエーテルは、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテルなどを含む1〜8個の炭素原子を有するビニルエーテルを含む。前記ビニルアミドは、ビニルピロリドンなどを含む1〜約8個の炭素原子を有するビニルアミドを含む。前記ビニルケトンは、エチルビニルケトン、ブチルビニルケトンなどを含む1〜約8個の炭素原子を有するビニルケトンを含む。
【0094】
前記重合性シランは、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリプロポキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルメチルジプロポキシシラン、γ−メタクリロキシプロピル−トリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピル−トリプロポキシシラン、γ−メタクリロキシジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピル−メチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリル−オキシプロピルメチルジプロポキシシラン、γ−メタクリロキシメチル−ジメトキシシラン、γ−メタクリロキシメチルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシメチルトリエトキシシラン、(メタクリロキシメチル)メチルジメトキシシラン、(メタクリロキシメチル)メチルジエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリアセトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリル−オキシメチルジエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリプロポキシシラン、γ−アクリロキシプロピル−メチルジメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピル−メチルジプロポキシシランなどが含まれる。
【0095】
官能基を有するモノマー以外に、反応性断片は、下記の式を有する少なくとも1つのモノマーを含んでもよい。
【0096】
【化5】
【0097】
ここで、Rは、H又はCHであり、Rは、4〜14個の炭素原子を有する分岐状又は非分岐状の飽和アルキル基である。
【0098】
一実施形態において、前記反応性断片は、前記非反応性断片の1つ以上のモノマーの約40重量%〜約99重量%を含む。別の実施形態において、前記反応性断片は、前記非反応性断片の1つ以上のモノマーの約50重量%〜約99重量%を含む。別の実施形態において、前記反応性断片は、前記非反応性断片の1つ以上のモノマーの約60重量%〜約99重量%を含む。別の実施形態において、前記反応性断片は、前記非反応性断片の1つ以上のモノマーの約70重量%〜約99重量%を含む。別の実施形態において、前記反応性断片は、前記非反応性断片の1つ以上のモノマーの約80重量%〜約99重量%を含む。別の実施形態において、前記反応性断片は、前記非反応性断片の1つ以上のモノマーの約90重量%〜約99重量%を含む。別の形態において、前記反応性断片は、前記非反応性断片の1つ以上のモノマーの約40重量%未満を含む。別の実施形態において、前記反応性断片は、前記非反応性断片の1つ以上のモノマーの約99重量%を超えて含む。
【0099】
本明細書では、用語「分子混和性」とは、当業者によって観察及び/又は測定されることができ、単相挙動を示すバルク状態の物性を示す化合物又は化合物の混合物を意味する。用語「単相挙動」とは、均一若しくは実質的に均一な挙動又は物性を意味する。前記アクリルコポリマーに関して、単一Tgの観察は、ポリマー断片の混和性を示す。前記単一Tgは、構成ポリマー断片の中間であり、各断片の相対量の変化に応じてこれらの値の間で一定に変化する。分子混和性化合物又は化合物の混和物によって証明される単相挙動とは異なり、所定の温度で相分離した化合物は、存在する物質の別の相に起因する多数の独立した物性を表す。このような物性は、物質のT、溶解度パラメータ、屈折率、及び物理的状態/相が含まれるが、特に限定されるものではない。従って、用語「相分離」とは、極性、分子量、ポリマー断片の相対量、及びT(物質の相)によるが、これらに限定されない1つ以上の化学的及び/又は物理的特性に起因する分子的に分離される2つ以上の物質として定義される。
【0100】
ABAブロックコポリマーなどのブロックコポリマーのブロック/断片間の非混和性/非相溶性の証明は、動的機械分析(DMA)又は示差走査熱量計(DSC)などの流動学的測定及び顕微鏡で測定された微細構造を介して確認できる。混和性ポリマーは、微細構造において非均一性が無いことを示す(すなわち、単一相ポリマーである)。ポリマー混和物の混和性/相溶性は、DMA又はDSCのガラス転移温度を測定することによって簡単に測定できる。2つのTgの存在は、非混和性を示し、一方で1つのTgのみの存在は、混和性混合物を示す。互いに非相溶性のブロックを有するブロックコポリマーの場合、異なるブロックによって形成されるマイクロドメインが別々の/異なるTgを示し、非相溶性のブロックコポリマーである場合、また、前記DMA及び/又はDSCプロットにおいて、別個のTg値が観察される。例えば、典型的なスチレン及びアクリルABAブロックコポリマーの場合、硬質のAブロック及び軟質のBブロックは、非常に異なる溶解度パラメータを有し、互いに熱力学的に相溶しない。その結果、ブロックコポリマー系接着剤は、Aブロックは、Bブロックからなる軟質且つ連続的な相に埋め込まれた硬質相を形成する特有の微細相−分離の形態を有する。すなわち、ABAブロックコポリマーに存在する2種類のブロックのしばしば起こる非混和性/非相溶性の結果として、通常、ブロックコポリマーは、対応するホモポリマーの温度に非常に近い温度で2つの別個のガラス転移(DMA二項tanδ曲線)を示す。しかし、P(MMA/MAA)−PBA−P(MMA/MAA)などのブロックコポリマーにおける酸の存在は、末端ブロックのTgを上昇させ、また軟質アクリレートと硬質PMMAドメインとの間の相分離を向上させる。従って、ブロックコポリマーは、二相分離材料から単一相の均質な材料に至る形態を示すことができる。
【0101】
それらの合成を含む制御されたアーキテクチャポリマーの更なる詳細は、上述の共同所有の明細書米国特許出願2011/0118372号、米国特許出願2013/0059971号、及び米国特許出願2014/0329958号に記載されている。
【0102】
本発明の多くの実施形態において、前記接着剤に用いられる前記CAPは、ポリマー内の反応性官能基の特定の分配を示す。多くの実施形態において、少なくとも80%の反応性官能基は、前記ポリマーの末端ブロック又は端末内に位置する。本明細書の目的のために、ポリマーの「末端ブロック」又は「端末ブロック」という用語は、ポリマーの末端断片を指す。これらの末端ブロック又は端末の分子量は、50,000g/モル未満であり、特定の実施形態において、前記分子量は、30,000g/モル未満であってもよいが、さらなる特定の実施形態において、前記末端ブロックの分子量は、10,000g/モル未満であってもよい。
【0103】
前記反応性官能基の残部、すなわち20%以下は、前記ポリマーの1つ以上の内部領域内に位置する。特定の実施形態において、前記反応性官能基の少なくとも90%は前記末端ブロック又は端末内に位置し、残部、すなわち10%以下は前記ポリマーの1つ以上の内部領域内に位置する。他の実施形態において、前記反応性官能基の少なくとも95%は、前記ポリマーの末端ブロック又は端末内に位置する。前記反応性基の残部、すなわち5%以下は、前記ポリマーの1つ以上の内部領域内に位置する。また、特定の実施形態において、少なくとも99%の反応性官能基は末端ブロック又は端末内に位置し、残部、すなわち1%以下は前記ポリマーの1つ以上の内部領域内に位置する。
【0104】
上述のように、本発明の接着剤の架橋、及び向上した末端連結されたポリマーネットワークの形成の際に、得られる向上した接着剤は、少なくとも従来のランダムに架橋されたポリマーネットワークを用いた接着剤に相当し、多数の場合において、より優れた特定物性を表す。図1は、各種の反応性官能基を含む従来のポリマー、及び、UV放射線の露光の際に、従来のランダムに架橋されたネットワークの形成を示す概略図である。図1において、各種官能基は、水平線で表されるポリマー鎖又は主鎖に沿って位置する垂直線の断片により概略的に表されている。架橋の際、架橋結合は、多数の官能基が内部領域内に位置する結果として、前記ポリマーの内部領域を含む。図2は、制御されたアーキテクチャポリマー(CAP)、及び、UV放射線の露光の際に、本発明による向上した末端連結ネットワークの形成を示す概略図である。前記CAPは、主に前記ポリマーの端末又は端末の近くに位置する各種官能基を含む。従って、架橋の際、形成されるネットワークは、主に前記ポリマーの端末における架橋、及び前記ポリマーの内部領域を含む架橋の非存在、又は相対的にわずかな程度の架橋を特徴とする。
【0105】
多数の点において、得られたポリマーネットワークは、得られる接着剤の物性に影響を及ぼし決定する。図3は、従来のランダムに架橋されたネットワーク、及び接着剤に組み込む際に、前記ネットワークに関連する典型的な接着剤物性の概略図である。図4は、向上した末端連結ネットワーク及び接着剤に組み込む際に、本発明による接着剤において、このようなネットワークに関連する典型的な接着剤物性の概略図である。図3及び図4のグラフは、y軸上に値を含まないが、各グラフは、同じ縮尺で表示される。従って、制御されたアーキテクチャ重合を介して生成され、図4に示すネットワーク化したポリマーは、図3に示すランダムに架橋されたネットワークと比較すると、剥離強度(線形インチ当たりポンド)及びせん断強度(分)の両方で改善したことを示す。
【0106】
非CAP
任意の実施形態において、本発明の前記溶融加工性の、化学放射線重合性及び架橋性接着剤は、制御されてないアーキテクチャポリマー又は「非CAP」と呼ばれるポリマーから製造される。このような接着剤は、制御されたアーキテクチャポリマーを含有しない。
【0107】
非CAP系接着剤を含む多くの用途において、前記ポリマーは、アクリル又はアルキルアクリレートポリマーである。
【0108】
本発明で用いられるアルキルアクリレート及びアルキルメタクリレートは、直鎖状アルキル基、分岐鎖状アルキル基又は環状アルキル基を含み、多くの実施形態において、1〜約24個の炭素原子を含有する。特定の実施形態において、前記アルキル基は、1〜約12個の炭素原子を含有する。
【0109】
特定の実施形態において、前記アルキルアクリレート又はアルキルメタクリレートモノマーは、約4〜約8個の炭素原子を有する。通常、このようなモノマーは、汎用の化学製品として市販されており、長鎖アルキルアクリレート及びメタクリレートより安価である。また、これらは、粘着性及び剥離性のバランスが良好なコポリマーを生成する場合がある。
【0110】
本発明の実用に有用なアルキルアクリレート及びアルキルメタクリレートの代表例としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、n−アミルアクリレート、イソアミルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、イソヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、デシルアクリレート、ラウリルアクリレート、ステアリルアクリレート、イソボルニルアクリレート、及びこれらの混合物だけではなく、類似のメタクリレートモノマーが含まれるが、これらに限定されるものではない。しかし、通常、アルキルメタクリレートは、アルキルアクリレートの等価物よりも高いTgを有するコポリマーを生成することが理解されるであろう。従って、アルキルメタクリレートが用いられる場合、これらは、少量のみが使用される。経験則として、前記アルキルメタクリレートは、全モノマーの総重量の約15%以下を含む。
【0111】
前記非CAPポリマーは、前記CAPに関連して本発明に記載の1つ以上の反応性官能基を含む。しかし、1つ以上の反応性官能基は、非構造的又は任意に又は秩序のない方式で前記ポリマー鎖又は主鎖と共に組み込まれ得る。
【0112】
通常、代表的かつ非限定的な前記非CAPポリマーのガラス転移温度(Tg)の範囲例としては、約−60℃〜約−35℃である。しかし、本発明のポリマーは、−60℃未満及び/又は−35℃超など、前記範囲外のTgを示し得ることが理解されるであろう。
【0113】
また、本発明は、CAP及び非CAPの組み合わせ又は混合物を含み得ることが考えられる。
【0114】
方法
多くの実施形態において、本発明は、接着剤を形成する方法を提供する。前記方法は、1つ以上のエチレン性不飽和結合を有する少なくとも1つのモノマーと、第1化学放射線開始剤と、第2化学放射線開始剤とを含む組成物を提供することを含み、ここで、前記第2開始剤は、前記第1開始剤の活性波長で実質的に非光活性である。また、前記方法は、前記第1開始剤の活性波長に対応する波長を有する放射線に組成物を露光することによって前記組成物を少なくとも部分的に重合することを含む。前記方法は、第2開始剤の活性波長に対応する波長を有する放射線に前記組成物を露光することによって前記組成物を少なくとも部分的に架橋して接着剤を形成することをさらに含む。前記方法において、前記組成物は溶剤を含有しない。
【0115】
別の実施形態において、本発明は、接着剤を形成する他の方法を提供する。前記方法は、少なくとも1つのモノマーと、第1化学放射線開始剤と、第2化学放射線開始剤とを含む組成物を提供することを含み、ここで、前記第2開始剤は、前記第1開始剤の活性波長で実質的に非光活性である。また、前記方法は、前記第1開始剤の活性波長に対応する波長を有する放射線に前記組成物を露光することによって前記組成物を少なくとも部分的に重合することを含む。前記方法は、前記第2開始剤の活性波長に対応する波長を有する放射線に前記組成物を露光することによって前記組成物を少なくとも部分的に架橋して接着剤を形成することをさらに含む。前記第1開始剤及び第2開始剤の少なくとも1つは、前記ポリマー主鎖に沿って光開始剤部位を有するポリマーである。
【0116】
また、本発明は、溶融加工性の、化学放射線重合性及び架橋性接着剤を形成する方法を提供する。多くの実施形態において、前記方法は、少なくとも1つの反応性官能基を含む制御されたアーキテクチャポリマーを使用する。任意の実施形態において、前記反応性官能基の少なくとも80%は、前記ポリマーの端末内に位置する。また、前記方法は、本発明に記載のような2つ以上の開始剤を提供することを含む。前記方法は、述べられているように、制御されたアーキテクチャポリマーであってもよいポリマーを前記開始剤と混合してプレ接着剤組成物を形成することをさらに含む。
【0117】
また、本発明は、本発明に記載の非CAP系ポリマーを用いた化学放射線重合性及び架橋性溶融接着剤を形成する方法を提供する。前記実施形態において、前記方法は、1つ以上の反応性官能基を含む非構造ポリマーを提供することを含む。また、前記方法は、前記組成物を重合及び架橋可能な2つ以上の開始剤を提供することを含む。また、前記方法は、前記ポリマーと開始剤とを混合してプレ接着剤組成物を形成することを含む。前記方法は、前記組成物を少なくとも部分的に重合させるのに十分な第1段階での強度及び期間の間、前記組成物を化学放射線に露光することをさらに含む。また、前記方法は、前記組成物を架橋するのに十分な第2段階での強度及び期間の間、前記組成物を露光して接着剤を形成することを含む。
【0118】
本発明の接着剤又は組成物は、化学放射線、特に紫外(UV)放射線又は近UV放射線を露光することによって重合及び/又は架橋される。上述のように、電子ビーム放射線を使用することもできる。理解されるように、このような放射線の十分な露光は、ポリマー及び任意の実施形態において、CAPに組み込まれた各種官能基を含む重合及び/又は架橋を引き起こす。
【0119】
本明細書に記載の2段階の方法を用いることにより、化学放射線、及び、特にUV放射線の後続の又はさらなる露光によってさらに処理され得るプレ接着剤調製物の形成を可能にする。従って、最初のバッチ又は所望量のプレ接着剤は、バルクで重合された又は少なくとも部分的に重合された後、目的の基板に以降の適用又はコーティングのために保存又は保持され得る。
【0120】
前記接着剤は、所定の塗布量で基板に塗布された後、前記塗布された基板が、化学放射線、特にUV放射線で照射され、架橋接着剤を得て、多くの実施形態において、室温及び高温で高い凝集力を有する感圧接着剤を得る。多様な範囲の波長にわたって、発光する低圧、高圧及び中圧水銀ランプを含む各種UV光源が公知である。大半の着色接着剤及び無着色接着剤は、約240nm〜約410nmの範囲の発光バンドを有する中圧水銀ランプを用いて容易に硬化され得る。また、光源の発光スペクトルは、接着剤内で使用される開始剤の吸収スペクトルと重なる限り、必要に応じて、より狭い領域の波長にわたって発光するUV光源が使用され得る。前記接着剤が、二酸化チタン又は類似の顔料で着色される場合、好ましい開始剤は、近UV領域で吸収バンドを有し、少なくとも前記領域で発光するUV光源が使用される。
【0121】
上述のように、特定の実施形態において、本発明の方法は、重合性モノマーの形態である前記開始剤の一方又は両方を使用することを含む。前記方法は、前記接着剤を構成するポリマーへの前記第1開始剤及び/又は第2開始剤の組み合わせ及び/又は重合を含む。
【0122】
図5は、本発明により接着剤を製造し、前記接着剤を重合及び架橋する代表的な方法及びシステム10を示す工程概略図である。通常、前記システム10は、ブレンダー又はミキサー22でフィードライン14を介して1つ以上の接着剤、ポリマー及び/若しくはモノマーを導入するためのディスペンサー又はヒーター12を含む。また、前記ミキサー22への所望の量の第1開始剤、第2開始剤、及び補助成分又はその他添加剤を選択的に計量できる別のフィードライン16,18,20が提供される。第1開始剤及び/又は第2開始剤は、接着剤を形成するモノマーと共に又は別々に重合される重合性モノマーの形態で導入され得ることが理解されるであろう。
【0123】
前記接着剤、ポリマー及び/又はモノマー、光開始剤、並びに任意成分を適切に混合した後、得られたプレ接着剤は、ライン24を通ってチューブ反応器などの形態であり得る反応器26に向かう。前記反応器26は、各種の形態であり得るが、通常、接着剤又はプレ接着剤を収容するための内部領域を規定する。前記反応器26は、UV放射線などの化学放射線が、本明細書に記載の1つ以上の放射線光源から前記反応器の内部に入射されるように構成される。前記接着剤は、反応器26を通って伝達され、第1段階において、例えば開始剤の1つ、通常、第1開始剤の活性波長に対応する波長を有する光線29,31として表されるUV光又は放射線を発するUVエミッタ28,30からの化学放射線が露光される。流速、すなわち反応器26での接着剤の滞留時間、UV光の強度、及びその他の因子が調整され、ライン32を介して反応器26を抜け出す部分的に又は完全に重合された接着剤を生成する。モノマー間の重合は、主に反応器26で生じる。
【0124】
ライン32の接着剤は、ライン34を介して移動するウェブ42(通常は、回転ローラ40によって駆動する)上の1つ以上の支持体に直接堆積又は塗布されてもよく、或いは追加工程及び/又は後続工程のために、ライン36を介して保存ユニット44へ伝達される。
【0125】
領域46として図5に示す接着剤の蒸着時に、通常、移動するウェブ42上の接着剤は、前記領域46上にUV線51を照射して接着剤を架橋させる第2段階50において他のUVエミッタによって照射される。架橋された接着剤52が得られる。
【0126】
特定の実施形態において、約240nm〜約410nmのスペクトル発光及び約5〜10kWatts/mの光強度を有する2つ以上の従来の中圧水銀ランプが使用され得る。本発明の接着剤を製造するUV光強度の非限定的な例としては、約0.1〜約100kWatts/m、任意の実施形態において1〜50kWatts/m、特定の実施形態において1〜20kWatts/mの範囲であり得る。前記塗布された基板は、前記UV放射線光源の下方又は近傍を移動するウェブ上に運ばれ、前記ウェブの温度は、45℃〜125℃の範囲であり得る。前記塗布された接着剤フィルムによって受容されたUV放射線の照射量は、UVランプの強度及び/又はウェブ速度を調節することによって制御される。本発明の接着剤を製造する期間の非限定的な例としては、典型的に60分未満であり、より典型的には10分未満であり、多くの実施形態において1分未満、特定の実施形態において10秒未満である。
【0127】
前記条件で接着剤を露光する際、前記接着剤がCAPを含むと、その後前記接着剤はETLNを含む。上述のように、本発明のETLN接着剤は、特に、ランダムに架橋されたネットワークを製造する非アーキテクチャポリマーと比較する場合、多数の長所及び利益を示す。
【0128】
具体的に、図6に表すように、方法60は、(i)前記接着剤のバルク硬化のための第1UV光開始剤と、(ii)前記接着剤のウェブ上の架橋のための第2UV光開始剤とを有する溶融接着剤を提供することを含む。前記第2光開始剤は、実質的に前記第1光開始剤の活性波長で非光活性である。これは、図6において、1つ以上の動作65として示されている。また、前記方法は、前記第1光開始剤の活性波長に対応する波長を有するUV光で前記接着剤を照射することによって前記接着剤を少なくとも部分的に硬化することを含む。これは、図6における1つ以上の動作70として示されている。前記方法は、関心面に少なくとも部分的に硬化した接着剤を塗布することをさらに含む。そして、前記方法は、前記第2光開始剤の活性波長に対応する波長を有するUV光で前記接着剤を照射することによって動作75として示される前記接着剤を架橋して、80で前記接着剤を形成することを含む。本発明は、前記第1光開始剤及び第2UV光開始剤のいずれか一方又は両方の代わりに、又はそれに加えて、電子ビーム放射線の露光によって活性化される開始剤の使用を含むことを理解されるであろう。
【0129】
理解されるように、本発明の組成物をプレ接着剤から感圧接着剤へ変換する際、多くの実施形態において、組成物のモジュラスは変化するが、ガラス転移温度(Tg)は変化しないか、又は実質的に同様に保持する。
【0130】
光学フィルタ
本発明のさらに別の態様は、特定の期間又は工程段階で一方又は両方のUV光開始剤に所望の波長又は波長領域を有するUV放射線を選択的に露光することを含む。例えば、本発明の実施形態において、1つ以上の光学フィルタは、特定の波長のUV放射線を選択的にフィルタリングする又はブロックするのに使用され得る。これらの技術を使用すると、第1UV光開始剤は活性化させるが、第2光開始剤は活性化させないUV放射線光源を接着剤又はプレ接着剤に露光させることができる。本発明の形態において、1つ以上の光学フィルタが、第2光開始剤の活性波長に対応する波長を有するUV放射線を選択的にブロックするのに用いられる。また、本発明は、前記第1光開始剤の活性波長に対応する特定の放射線波長を選択的にフィルタリング及び/又はブロックするための光学フィルタの使用を含む。
【0131】
各種の材料及び機器が用いられ、上述の光学フィルタを提供し得る。前記光学フィルタは、UV放射線光源と、接着剤又はプレ接着剤との間に位置する。再び図5を参照すると、1つ以上の光学フィルタは、前記UVエミッタ28と反応器26との間に配置されるか、位置されて、UV放射線29が前記フィルタを通過することができる。同様に、1つ以上の光学フィルタが、領域46と第2段階50との間に位置してもよい。多くの実施形態において、前記光学フィルタは、特定の波長を通過させ、他の波長の通過はブロックするように製造された特定のポリマー層、レンズ、及び/又はフィルムを含む。このような材料の非限定的な例としては、LEXAN(登録商標)の名称で市販のポリカーボネート、特定のポリエチレンテレフタレート、特定のポリメチルメタクリレート(PMMA)及びそれらの組み合わせが含まれる。また、本明細書に記載の光学フィルタとして1つ以上のダイクロガラスを使用することも考えられる。本発明は、これらの特定の物質のいずれにも限定されないことが理解されるであろう。むしろ、本発明は、所望の波長を有する電磁放射線が、前記接着剤又はプレ接着剤を通過することを選択的にフィルタリング及び/又は可能にするための各種の材料及びアセンブリを含む。
【0132】
前記光学フィルタは、電磁放射線、及び特に特定の波長を有するUV放射線の通過を防止又は制御するように構成することができる。多くの実施形態において、前記光学フィルタは、第2光開始剤の活性波長に対応する波長を有するUV放射線の通過をブロックする。上述のように、本発明の特定の実施形態において、第2光開始剤の活性波長は、100nm〜500nm、特に200nm〜375nmの範囲内である。
【0133】
前記光学フィルタは、反応器などの接着剤又はプレ接着剤を含有する工程の構成要素又は接着剤、及び1つ以上の光源の間に選択的に位置するように構成することができる。また、前記光学フィルタは、フィルタを移動させて光の通過をフィルタリング又はブロッキングしない方式となるように構成することもできる。
【0134】
多数の光源が使用される場合、本発明は、前記光源の一部又は全部に関連する光学フィルタの使用を含む。本発明は、多様な工程構成要素及びシステム構成を含む。
【0135】
物品
本発明は、上記の組成物、プレ接着剤及び/又は接着剤を含む多様な物品を提供する。このような物品の例としては、両面及び片面テープを含む粘着テープと、ラベルストックと、ラベル構造体と、食品の包装、家庭用品及び産業用品の包装、特に再閉可能な包装を含む包装体並びにアセンブリと、その他物品とを含む。
【0136】
図7は、本発明の実施形態によるテープ物品100を示す。前記テープ物品100は、ロール状に示されているが、前記テープは、扁平状、シート状又はZ折り状であってもよいことが理解されるであろう。通常、前記テープ物品100は、第1面112及び対向する第2面114を規定した支持体110を含む。前記テープ100は、片面又は両面112,114上に配置された上記の接着剤層又は領域を含む。1つ以上の離型紙及び/又は低表面エネルギーコーティングが、本明細書の以下の詳細な記載のように使用され得る。
【0137】
図8は、第1面112及び対向する第2面114を規定した支持体110を含むテープ100Aの概略断面図である。また、前記テープ100Aは、例えば、面114などの一方の面上に配置された接着剤120の層又は領域を含む。1つ以上の低表面エネルギーコーティングは、前記支持体110の面112上に配置され得る。
【0138】
図9は、第1面112及び対向する第2面114を規定する支持体110を含むテープ100Bの概略断面図である。また、前記テープ100Bは、例えば、面114などの一方の面上に配置された接着剤120の層又は領域を含む。また、前記テープ110Bは、前記接着剤120を覆う離型紙130を含む。1つ以上の低表面エネルギーコーティングは、前記支持体110の面112上に配置され得る。
【0139】
図10は、第1面112及び対向する第2面114を規定する支持体110を含むテープ100Cの概略断面図である。また、前記テープ100Cは、例えば、面114などの一方の面上に配置された接着剤120の第1層又は領域を含む。また、前記テープ100Bは、前記支持体110の面112上に配置された接着剤125の第2層又は領域を含む。
【0140】
図11は、第1面112及び対向する第2面114を規定する支持体110を含むテープ100Dの概略断面図である。また、前記テープ100Dは、例えば、面114などの一方の面上に配置された接着剤120の第1層又は領域を含む。また、前記テープ100Dは、前記面112上の接着剤125の第2層又は領域を含む。また、前記テープ100Dは、前記接着剤120を覆う第1離型紙130を含む。また、前記テープ100Dは、前記接着剤125を覆う第2離型紙135をさらに含む。
【0141】
図12は、本発明による封止、閉鎖、又は再閉鎖アセンブリ200の概略断面図である。前記アセンブリは、第1支持体面212を規定する第1支持体210と、第2支持体面214を規定する第2支持体230と、接着面222を規定する接着剤220の1つ以上の層又は領域とを含む。前記接着剤220は、一方又は両方の支持体面212,214上に配置される。前記接着剤220は、前記接着面222と前記支持体面212との間を接着させる際に、前記支持体210,230を共に封止及び/又は接着させる役割を果たす。理解されるように、前記接着剤220は、本発明に記載の任意の接着剤である。前記アセンブリ200は、例えば、食品の包装、家庭用品、工業用品の包装、及び特に再閉可能な包装を含む各種の包装製品に関連して、及び/又は組み込まれて利用され得る。
【0142】
前記接着層は、特定の目的又は意図した用途に求められる厚さを有してもよい。一実施形態において、前記接着層は、約10〜約125ミクロン、又は約10〜約75ミクロン、又は約10〜約50ミクロンの厚さを有することができる。一実施形態において、前記接着剤の塗布量は、約10〜約50g/m(gsm)であり、一実施形態において、約20〜約35gsmの範囲であり得る。
【0143】
本発明に用いられる離型紙は、該当技術分野で公知となったもの又は後日発見されるものであってもよい。通常、適切な離型紙は、市販のシリコーン離型コーティングを用いたポリエチレンコーティング紙、市販のシリコーン離型コーティングを用いたポリエチレンコーティングポリエチレンテレフタレートフィルム、又はフィルムを製造する間、パターン又は複数のパターンでエンボスされ、次いで、市販のシリコーン離型コーティングで塗布され得るキャストポリプロピレンフィルムが含まれるが、これらに限定されるものではない。一例の離型紙としては、シリコーン離型コーティングを用いた表面に低密度ポリエチレンのコーティングを有し、裏面に高密度ポリエチレン又はポリプロピレンのコーティングを有するクラフト紙である。また、接着剤物品に用いるために選択される感圧接着剤に対する離型特性のために選択される限り、すなわち、前記接着剤は、離型紙よりフェースストックに対してさらに大きな親和力を有する限り、該当技術分野で公知であるその他の離型紙も好適である。
【0144】
上述のように、1つ以上の低表面エネルギーコーティングが本明細書に記載の接着剤を用いた物品に使用され得る。例えば、ロール状テープ製品の場合、前記接着剤に接触する支持体又はテープの構成要素の後面に沿って低表面エネルギー製剤のコーティングを提供することが好ましい。前記低表面エネルギーコーティングの非限定的な例としては、シリコーン剤、ポリプロピレン又は他のポリオレフィン、特定のフルオロカーボン、及び特定の脂肪酸エステルが含まれる。
【0145】
本発明における特定の接着剤の利益は、UV放射線を連続して露光する際の性能基準の維持を含む。例えば、多数の通常のUV硬化されたランダムに架橋された接着剤ネットワークの欠点は、さらなるUV露光はさらなる架橋が得られるということである。また、これは、接着剤及び/又はその性能の好ましくない変化をもたらす。具体的に、これは下流部分にUV印刷されたきれい且つ透明なラベルにとって好ましくないことがある。一方、本発明の接着剤の多くの実施形態は、更なるUV露光の際に性能変化を示さない。
【0146】
その他の態様
図13は、1つ以上の発光プローブを用いた化学放射線の露光により接着剤を重合又は架橋する装置を概略的に説明する。前記装置内に含有される接着剤又はプレ接着剤の上面に対して特定の角度及び高さで発せされた放射線の特定の波長が用いられ、多様なポリマー物性を達成する。図13は、4つの照射位置、すなわち表面、傾斜した表面、サブ表面、及び傾斜したサブ表面のうち、3つを示す。プローブは、反応容器の側面、上面、又は下面に取り付けられ、圧力が決められた封止及び係止つばを介してその場に保持される。また、これは、各プローブの侵入深さに柔軟性を提供する。各々のプローブの一般的な構成は、圧力が決められた光管と、LEDエミッタと、統合ヒートシンクのあるClass1/Divisionエンクロージャとを含む。前記光コントローラ/ドライバは離れて位置する。前記プローブは、光源からの放射線を反射し、反応容器内のプローブの先端を通って放射線を発光する、平滑且つ研磨済みの内壁から構成される。前記放射線波長を通過させる材料がプローブの先端で使用される。このような材料の非限定的な例としては、ガラス、石英、サファイア、及び類似の材料が含まれる。多くの実施形態において、最終的な装置は、選択された反応容器の圧力及び温度の評価を満足するか超えるかを証明する。LED以外に、他の光源が電源、冷却設備などの他の補助装置の構成要素と共に考慮され得る。
【0147】
具体的に、図13を参照して、前記接着剤又はプレ接着剤組成物を重合及び/又は架橋する装置300を示す。前記装置は、前記組成物に対する内部チャンバ322を規定する反応容器320を含む。通常、前記容器320は、攪拌又は混合設備340と、1つ以上のドレインポート350と、関連バルブ352とを含み、前記容器320への流量の流入及び流出を制御する。必要に応じて、加熱及び/又は冷却ジャケット370が前記容器320の外部領域に沿って提供され得る。また、前記装置300は、つば330を介して反応容器320と結合される1つ以上のプローブアセンブリ310を含む。前記つば330は、前記容器320の内部チャンバ322への接近を提供し、通常、前記容器320の上壁内に前記容器320の上部領域に沿って位置する。前記つば320は、プローブアセンブリ310を分離可能に結合させ、前記容器320に対して前記プローブアセンブリを支持するための設備を含む。前記プローブアセンブリ310は、エミッタ312と、前記エミッタから延びる光管314と、前記エミッタ312に関連する選択的ヒートシンク設備318と、調整式位置決め設備316とを含む。前記光管314は、前記エミッタ312に対向する遠位端315を規定する。多くの実施形態において、前記エミッタ312が前記容器320の上方に位置し、前記光管314が前記つば330を通って前記容器320の内部チャンバ322に延びるように、前記プローブアセンブリ310は、前記反応容器320と相対的に配置される。前記調整式位置決め設備316は、前記光管314と結合又は関連しており、前記チャンバ322内の光管314の所望の位置を調整及び/又は維持する役割を果たす。図13は、前記容器320、具体的には前記容器320内に含有される接着剤又はプレ接着剤組成物の上面302に相対的な光管314の多様な位置を示す。例えば、プローブアセンブリ310Aは、エミッタ312Aと、前記容器320の内部チャンバ320から延びる光管314Aと、調整式位置決め設備316Aとを含む。前記光管314Aが非垂直配向であり、前記光管314Aの遠位端315Aが前記容器320内に含有される組成物の上面302の下方である時、プローブアセンブリ310Aは、傾斜したサブ表面の位置であることが示されている。前記プローブアセンブリ310Bは、エミッタ312Bと、前記チャンバ内に延びる光管314Bと、及び調整式位置決め設備316Bとを含む。前記光管314Bが垂直配向であり、前記光管314Bの遠位端315Bが前記上面302の下方である時、プローブアセンブリ310Bは、サブ表面の位置であることが示されている。プローブアセンブリ310Cがエミッタ312Cと、前記チャンバ内に延びた光管314Cと、調整式位置決め設備316Cとを含む。前記光管314Cは、非垂直配向であり、前記光管314Cの遠位端315Cが上面302の上方にある時、プローブアセンブリ310Cが傾斜した表面の位置であることが示されている。理解されるように、プローブアセンブリに対する表面位置が垂直位置に配向し、前記上面の上方に位置する光管の遠位端を有する光管に対応する。
【0148】
前記装置300は、単一のプローブアセンブリ又は複数のプローブアセンブリを含み得る。また、前記プローブアセンブリは、図13に示すように、互いに近接して位置し得、又は前記プローブアセンブリは、上部領域に沿って位置する1つ又は2つ以上、及び前記容器の側面領域に位置する1つ又は2つ以上などの容器の異なる領域に沿って位置し得る。
【0149】
通常、前記プローブアセンブリ310のエミッタ312は、光源などの化学放射線の1つ以上のエミッタを含む。必要に応じて、前記エミッタ312は、前記エミッタ312の外部領域に沿って位置する統合されたヒートシンク318などの熱放散設備を含み得る。理解されるように、各エミッタは、信号及び/又は電力ユニット360と連結している。1つ以上の信号/電力通信362は、前記エミッタ312と信号/電力ユニット360との間に延びている。
【0150】
任意の実施形態において、光管314A,314B及び/又は314Cなどの光源の内壁が前記エミッタから発せられた光の反射を促進する、平滑且つ研磨済みの表面を提供する。また、多くの実施形態において、1つ以上の透明カバー317は、前記光管314の遠位端315に、又はそれに接近して提供される。上述のように、前記カバーは、前記エミッタから発せられ、前記光管の長さ又は長さ部に沿って反射した光を通過させるか、又は実質的に通過させる。本明細書に用いられる用語「実質的に通過させる」とは、エミッタ312から発せられ、前記光管に沿って反射した光の少なくとも90%が前記カバー317を通過することを可能にする光学特性を有するカバーを意味する。
【0151】
頂部(容器のヘッドともいう)のノズルにプローブを取り付ける利点は、容器の内容物を排出/放出することなくプローブを取り外すことができることである。前記上面302の上方にプローブを取り付ける別の利点は、容器の外側垂直壁及び下壁に、通常、このような壁がジャケット(すなわち、「溶接されたハーフパイプ」)で覆われて熱伝導を介して前記内容物を冷却又は加熱することを提供することである。例えば、発熱反応を冷却させるために、通常、冷水がハーフパイプジャケットを通って循環される。冷却のためのジャケットの存在は、利用可能な表面積の量を制限し、前記側壁及び下壁を通る前記プローブの設置を複雑にする。
【0152】
プローブを介して化学放射線を導入するまた別の方式は、前記容器の側壁又は下壁を介して液体の表面下方の容器に組み込まれたポート、つば又はノズルを通ることである(図14参照)。これは、前記容器の上壁につばが取り付けられている図13とは異なる。下壁に前記プローブを取り付ける利点は、任意の容器の充填において、前記プローブが常に浸漬していることである。前記プローブの先端と前記液体との間の距離は、バッチのサイズに関らず本質的にゼロである。
【0153】
具体的に、図14を参照して、図13に関して上述した装置300の別の形態が示されている。前記形態において、プローブアセンブリ310Dは前記反応容器320の側壁に沿って位置し、プローブアセンブリ310Eは前記容器320の下壁に沿って位置する。各プローブアセンブリ310D及び310Eは、対応するつば330D及び330Eによって前記容器320と結合される。図14に示す特定の形態において、前記光管314D及び314Eの遠位端315D及び315Eは、前記側壁の内面に同一平面又は実質的に同一平面にある。上述したように、通常、透明カバー317は、前記光管の遠位端に位置し、従って、カバー317D及び317Eに前記容器320の内壁と実質的に同一平面にある。
【0154】
さらに別の方式は、ノズルやポートを介してプローブを設ける代わりに、容器の側壁に内臓されたサイトグラスを使用して反応器の内容物を照射することである(図15参照)。通常、前記サイトグラスは、前記容器の側壁と同一平面にある。サイトグラスが容器の側壁と面一になる利点は、一部の容器は、容器の内壁を小さな間隔(公差又は距離に近い)で掃引する攪拌器の設計を有することである。掃引攪拌器のブレードは、粘性物質における熱伝達を促進するのに役に立つ。また、前記光がガラス製品の界面付近で反応を起こす場合、前記掃引攪拌器のブレードは、照射領域における粘性の反応生成物を照射領域外の低粘度物質と混合することを促進する。
【0155】
具体的に、図15は、装置300の別の形態を示す。前記図は、攪拌又は混合設備340の別の態様を示す。理解されるように、多数のこのような設備340は、前記容器320の内部チャンバ322に一般に延びるシャフトを回転させるための電力ユニットを含む。通常、前記設備340は、前記シャフトから延びた1つ以上のブレード又は混合要素を含む。前記形態において、前記反応容器は、前記容器の壁領域内に組み込まれた1つ以上のサイトグラス380を含む。前記サイトグラスは、前記容器の内部への視覚的な接近を提供する。例えば、図15の形態において、複数のサイトグラス380、すなわちサイトグラス380A,380B,及び380Cが提供される。エミッタ312Fなどの1つ以上のエミッタは、サイトグラス380Aなどのサイトグラスに隣接して位置し得る。前記エミッタ312Fからの発光は、前記サイトグラス380Aを通過して前記容器320の内容物を照射する。加えて又は代替的に、前記容器320のチャンバ322内への照射のために、エミッタ312Gなどの1つ以上のエミッタは、サイトグラス380Cなどのサイトグラスと隣接して位置し得、光管314Gなどの光管は、前記エミッタ312Gから前記サイトグラス380Cに光を向けて使用され得る。1つ以上の透明カバーが使用され得るが、これらが必要ではないこともある。理解されるように、多数の応用分野で、前記サイトグラスは、前記エミッタから発せられた光の通過のために透明又は実質的に透明であることが好ましい。
【0156】
放射線を導入するさらに別の方式は、図16に示すように、反応器壁に取り付けられたバッフル上にLED又は他の光源を装着することである。前記容器の種類において、前記容器の内容物が傾斜したブレードタービンによって攪拌される。前記バッフルの主な機能は、前記容器の壁から流体をそらすことも可能である。十分に強い場合、前記光源の筐体は、光源であることに加えて、バッフルとして機能することもできる。また、前記光源は、前記アジテータのブレードによる液体の回転に対して前記バッフルの正面に装着することができる。このような全ての方法において、光源の前で照射された物質は、反応した粘性物質が反応物の塊全体に完全に混合されるように絶えず補充され得る。
【0157】
具体的に、図16を参照して、前記装置300は、傾斜したブレードタービンの形態で攪拌又は混合設備340を有することが示されている。1つ以上のエミッタ312は、前記容器320の内部チャンバ322内に取り付けられた固定バッフル390に含まれる。前記容器壁に取り付けられた1つ以上の支持体392は、前記容器320内にバッフル390を取り付けるのに用いられる。また、前記バッフルは、壁のつばを通って延びる支持体から延びることが考えられる。本発明は、バップルからあらゆる方向に発せられるバッフル390が含まれるが、特定の形態において、一方向又は実質的に一方向である発光構成が用いられる。通常、このようなバッフルは、バッフルの単一面から発光する。すなわち、前記バッフル390から発せられた光が、前記ブレードの移動により得られた近接する組成物の流体に向かうように一方向の発光バッフル390が前記容器320の内部チャンバ322内に位置する。しかし、本発明は、バッフルが前記バッフルから離れて移動する組成物の流体に向けて光が発せられる形態を含むことを理解されるであろう。前記バッフルは、独立であり得、前記エミッタに給電するためのバッテリー及び電子装置を含み得、並びに/又は信号及び/若しくは電力を遠隔に受信し得る。特定の用途において、傾斜したブレードタービンが好ましいが、本発明は、攪拌/混合設備の他の形態を含む。
【0158】
サブ表面の照射の利点は、反応領域がプローブ先端で直ちに開始され、「侵入深さ」として規定される特定の距離を通過することである。前記「侵入深さ」の深さは、光学密度、適用された照射量、スペクトルの出力、並びに光開始剤及びその濃度によって材料の性質が異なる。前記光源が表面の上方に位置し、液体上方のヘッドスペースに微粒子が存在する場合、前記微粒子は、入射光と相互作用し得る。特に、反応物の塊からの液体が蒸気の空間に分散され、エアロゾルを形成すると、ポリマーは蒸気相で形成され得る。これは、反応がこれ以上均質でなく、さらに、反応器のヘッドスペースを汚し、光学界面を汚し、照射を減衰させるために好ましくない。また、作業者が汚れたサイトグラスで反応を見ることもできない。また、反応後の容器の掃除が困難である。
【0159】
本方法の今後の適用及び開発から多数のその他の利点が明らかになるであろう。
本明細書に言及されている全ての特許、出願、標準及び論文は、その全体が本明細書に参考として組み込まれる。
【0160】
本発明は、本明細書に記載の特徴及び態様の全ての操作可能な組み合わせを含む。従って、例えば、1つの特徴が一実施形態に関して説明され、別の特徴が別の実施形態に関して説明される場合、本発明は、これらの特徴の組み合わせを有する実施形態を含むことが理解されるであろう。
【0161】
上述したように、本発明は、従来の方法、システム及び/又は組成物に関する多数の問題点を解決する。しかし、本発明の本質を説明するために、本明細書に記載され説明された細部事項、材料、及び構成成分の配置における各種の変更が添加の特許請求の範囲に示すような請求された発明の原理及び範囲から逸脱することなく当業者によって行われることが理解されるであろう。
図1
図2
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図10
図11
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図16