特許第6808747号(P6808747)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6808747
(24)【登録日】2020年12月11日
(45)【発行日】2021年1月6日
(54)【発明の名称】回転角度センサ
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/20 20060101AFI20201221BHJP
【FI】
   G01D5/20 110E
【請求項の数】11
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2018-545323(P2018-545323)
(86)(22)【出願日】2017年2月28日
(65)【公表番号】特表2019-507348(P2019-507348A)
(43)【公表日】2019年3月14日
(86)【国際出願番号】EP2017054598
(87)【国際公開番号】WO2017148917
(87)【国際公開日】20170908
【審査請求日】2018年10月26日
(31)【優先権主張番号】102016203234.8
(32)【優先日】2016年2月29日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ファビアン ウーターメーレン
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス メアツ
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン ライディヒ
【審査官】 菅藤 政明
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−325964(JP,A)
【文献】 独国特許出願公開第102008012922(DE,A1)
【文献】 特表2007−532872(JP,A)
【文献】 特表2013−518247(JP,A)
【文献】 特表2010−540896(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/20−5/22
G01B 7/30−7/315
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータ送信コイル(20)及びステータ受信コイル(22)を有するステータエレメント(12)と、
ロータ受信コイル(28)及びロータ送信コイル(30)を有するロータエレメント(14)と、
を備えている回転角度センサ(10)であって、
前記ロータエレメント(14)は、前記ステータエレメント(12)に対して回転軸線(R)を中心にして回転可能に支持されており、前記ロータ受信コイル(28)と前記ロータ送信コイル(30)とは、相互に電気的に接続されており、
前記ロータ受信コイル(28)は、前記ステータ送信コイル(20)に誘導結合されており、これにより、前記ステータ送信コイル(20)によって生成された電磁場が、前記ロータ受信コイル(28)において電流を誘導し、前記電流が前記ロータ送信コイル(30)を通って流れることにより、前記ロータ送信コイル(30)が別の電磁場を生成するようになっており、
前記ステータ受信コイル(22)は、前記ロータ送信コイル(30)に誘導結合されており、これにより、前記誘導結合は、前記ステータエレメント(12)と前記ロータエレメント(14)との間の回転角度に依存していて、前記ロータ送信コイル(30)によって生成された前記別の電磁場は、前記ステータ受信コイル(22)において角度依存性の交番電圧を誘導する、
回転角度センサ(10)において、
前記ステータ送信コイル(20)は、円形の外側の部分巻線(34a)と、前記外側の部分巻線(34a)の内側に配置された円形の内側の部分巻線(34b)とを有し、前記内側の部分巻線(34b)は、電流の流れに関して前記外側の部分巻線(34a)とは逆向きに方向決めされるように前記外側の部分巻線(34a)に電気的に接続されており、
前記ロータ受信コイル(28)は、円形の外側の部分巻線(34a)と、前記外側の部分巻線(34a)の内側に配置された円形の内側の部分巻線(34b)とを有し、前記内側の部分巻線(34b)は、電流の流れに関して前記外側の部分巻線(34a)とは逆向きに方向決めされるように前記外側の部分巻線(34a)に電気的に接続されており、
前記ステータ送信コイル(20)の前記外側の部分巻線(34a)と、前記ロータ受信コイル(28)の前記外側の部分巻線(34a)とが相互に位置合わせされており、
前記ステータ送信コイル(20)の前記内側の部分巻線(34b)と、前記ロータ受信コイル(28)の前記内側の部分巻線(34b)とが相互に位置合わせされている、
ことを特徴とする回転角度センサ(10)。
【請求項2】
前記ステータ送信コイル(20)の前記外側の部分巻線(34a)及び前記内側の部分巻線(34b)は、同等の磁束を生成するように形成されており、
及び/又は、
前記ロータ受信コイル(28)の前記外側の部分巻線(34a)及び前記内側の部分巻線(34b)は、同等の磁束を生成するように形成されている、
請求項1に記載の回転角度センサ(10)。
【請求項3】
前記ステータ送信コイル(20)及び/又は前記ロータ受信コイル(28)の前記外側の部分巻線(34a)は、それぞれ前記ステータエレメント(12)又は前記ロータエレメント(14)を完全に取り囲んでいる複数の導体ループ(36)を有し、
及び/又は、
前記ステータ送信コイル(20)及び/又は前記ロータ受信コイル(28)の前記内側の部分巻線(34b)は、それぞれ前記ステータエレメント(12)又は前記ロータエレメント(14)を完全に取り囲んでいる複数の導体ループ(36)を有する、
請求項1又は2に記載の回転角度センサ(10)。
【請求項4】
前記ステータ送信コイル(20)の前記外側の部分巻線(34a)の導体ループ(36)によって形成される面積の合計に相当する、前記ステータ送信コイル(20)の前記外側の部分巻線(34a)の有効面積は、前記ステータ送信コイル(20)の前記内側の部分巻線(34b)の有効面積に相当し、
及び/又は、
前記ロータ受信コイル(28)の前記外側の部分巻線(34a)の導体ループによって形成される面積の合計に相当する、前記ロータ受信コイル(28)の前記外側の部分巻線(34a)の有効面積は、前記ロータ受信コイル(28)の前記内側の部分巻線(34b)の有効面積に相当する、
請求項3に記載の回転角度センサ(10)。
【請求項5】
前記ステータ送信コイル(20)及び/又は前記ロータ受信コイル(28)の前記外側の部分巻線(34a)は、前記ステータエレメント(12)の対称軸線(T)又は前記回転軸線(R)を中心にして見たときに螺旋を形成している複数の導体ループ(36)を有し、
及び/又は、
前記ステータ送信コイル(20)及び/又は前記ロータ受信コイル(28)の前記内側の部分巻線(34b)は、前記ステータエレメント(12)の前記対称軸線(T)又は前記回転軸線(R)を中心にして見たときに螺旋を形成している複数の導体ループ(36)を有する、
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の回転角度センサ(10)。
【請求項6】
前記ステータ送信コイル(20)及び/又は前記ロータ受信コイル(28)の前記外側の部分巻線(34a)及び前記内側の部分巻線(34b)は、前記ステータ送信コイル(20)の対称軸線(T)又は前記回転軸線(R)と同心に配置されている、
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の回転角度センサ(10)。
【請求項7】
前記ステータ送信コイル(20)及び/又は前記ロータ受信コイル(28)は、プリント基板(18,26)上に設けられた導体路の形態の平面コイルとして形成されている、
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の回転角度センサ(10)。
【請求項8】
前記ステータ受信コイル(22)は、半径方向外側が前記ステータ送信コイル(20)の前記外側の部分巻線(34a)によって画定されていて、かつ、半径方向内側が前記ステータ送信コイル(20)の前記内側の部分巻線(34b)によって画定されている、前記ステータエレメント(12)の環状領域(39)内に配置されており、
及び/又は、
前記ステータ受信コイルは、電流の流れに関して相互に逆向きに方向決めされた複数の部分巻線を有する、
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の回転角度センサ(10)。
【請求項9】
前記ロータ送信コイル(30)は、半径方向外側が前記外側の部分巻線(34a)によって画定されていて、かつ、半径方向内側が前記内側の部分巻線(34b)によって画定されている、前記ロータエレメント(14)の環状領域(39)内に配置されており、
前記ロータ送信コイル(30)は、電流の流れに関して相互に逆向きに方向決めされた複数の部分巻線(46a,46b)を有する、
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の回転角度センサ(10)。
【請求項10】
前記ステータ受信コイル(22)は、受信環状領域(39)を完全に覆っており、
前記ロータ送信コイル(30)は、前記受信環状領域(39)に対向する複数の三日月形の部分巻線(46a,46b)を有する、
請求項1乃至9のいずれか一項に記載の回転角度センサ(10)。
【請求項11】
ロータ送信コイル(30)と、ロータ受信コイル(28)とを備えている、回転角度センサ(10)のためのロータエレメント(14)において、
前記ロータ受信コイル(28)は、円形の外側の部分巻線(34a)と、前記外側の部分巻線(34a)の内側に配置された円形の内側の部分巻線(34b)とを有し、前記内側の部分巻線(34b)は、電流の流れに関して前記外側の部分巻線(34a)とは逆向きに方向決めされるように前記外側の部分巻線(34a)に電気的に接続されており、
前記外側の部分巻線(34a)及び前記内側の部分巻線(34b)は、同等の磁束を生成する、
ことを特徴とするロータエレメント(14)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、例えばシャフトと他の構成要素との間の回転角度を特定することができる回転角度センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術
回転角度を測定するために、例えば、対応する磁場センサによって磁石が回転させられる回転角度センサが公知である。この場合、磁場ベクトルを測定することによって回転角度を帰納的に推定することが可能となる。このようなセンサはまた、例えば、隣り合って配置された電流ケーブルの電流の流れによって引き起こされる外部磁場にも反応し、外乱に対して非常に敏感であり得る。
【0003】
別の形式の回転角度センサは、渦電流効果を利用する。この場合、例えば、金属ターゲットがセンサコイルによって動かされ、このセンサコイルには交番電圧が供給され、このセンサコイルがターゲットにおいて渦電流を誘導する。このことにより、センサコイルのインダクタンスが減少し、周波数の変化によって回転角度を推定することが可能となる。例えばコイルは、共振回路の構成部分であり、この共振回路の共振周波数は、インダクタンスが変化するとシフトする。しかしながら、この形式の回転角度センサは、設置誤差(特にターゲットの傾き)に対して高い交差感度を有し得る。また、一般的に、数10MHzの範囲の周波数において動作させられるので、生成される周波数が外部電磁場によって干渉され得る(インジェクションロッキング)。
【0004】
欧州特許第0909955号明細書(EP0909955B1)は、励磁コイルの交番電磁場と相互作用する、ターゲット上で短絡された平坦な導体ループを有する回転角度センサを示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】欧州特許第0909955号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
発明の開示
発明の利点
本発明の実施形態は、有利な方法により、特に、経済的に製造可能であって、かつ、容易に評価可能な測定信号を提供するような回転角度センサを提供することを可能にする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態に至る着想は、特に、以下に説明される思想及び認識に基づいていると見なすことができる。
【0008】
本発明は、特に、強力な干渉電磁場を有する環境において使用することができる回転角度センサに関する。例えば、スロットルバルブの位置、BLDCモータのロータ位置、アクセルペダルの位置、又は、カムシャフトの位置を特定するために、例えば、車両のエンジンルームの内部又は近傍において回転角度センサを使用することができる。以下に説明される回転角度センサは、低コストであり、わずかな構造スペースしか必要とせず、また、簡単な測定原理に基づいている。
【0009】
本発明の1つの実施形態によれば、前記回転角度センサは、ステータ送信コイル及びステータ受信コイルを有するステータエレメントと、ロータ受信コイル及びロータ送信コイルを有するロータエレメントとを備えており、前記ロータエレメントは、前記ステータエレメントに対して回転軸線を中心にして回転可能に支持されており、前記ロータ受信コイルと、前記ロータ送信コイルとは、相互に電気的に接続されており、前記ロータ受信コイルは、前記ステータ送信コイルに誘導結合されており、これにより、前記ステータ送信コイルによって生成された電磁場が、前記ロータ受信コイルにおいて電流を誘導し、前記電流が前記ロータ送信コイルを通って流れることにより、前記ロータ送信コイルが別の電磁場を生成するようになっており、前記ステータ受信コイルは、前記ロータ送信コイルに誘導結合されており、これにより、前記誘導結合は、前記ステータエレメントと前記ロータエレメントとの間の回転角度に依存していて、前記ロータ送信コイルによって生成された前記別の電磁場は、前記ステータ受信コイルにおいて角度依存性の交番電圧を誘導する。
【0010】
例えばステータ・プリント基板上に配置されたステータ送信コイルには、例えば、数MHz(好ましくは5MHz)の範囲の周波数を有する交番電圧を印加することができる。これによって交番電磁場が発生し、この交番電磁場がロータ受信コイルに結合し、そこで対応する交番電圧を誘導する。ロータ受信コイルに対して直列に、ロータ送信コイルが接続されており、ロータ送信コイルは、改めて交番電磁場を生成してステータエレメントに返送し、そこでこの交番電磁場が、例えば同様にステータ・プリント基板上に配置することができる1つ又は複数のステータ受信コイルにおいて、角度依存性の交番電圧を誘導する。全体として、ステータ送信コイルと1つ又は複数のステータ受信コイルとの間の結合は、回転角度に依存して影響を受ける。結合係数の典型的な値範囲は、−0.3乃至+0.3の間にある。1つ又は複数のステータ受信コイルにおいて誘導された信号を搬送波信号(ステータ送信コイルの信号)によって復調することにより、結合の絶対値及び位相を推定することができる。この絶対値は、回転角度と共に連続的に変化し得る。結合の位相位置は、理想的には0°又は180°とすることができる。
【0011】
ロータ送信コイル及びステータ受信コイルが、それぞれ実質的に正弦波形の信号を生成するように形成されている場合には、これらの信号から回転角度を特に簡単に特定することが可能である。測定範囲に対して90°の位相シフトを有する2つの受信コイルを使用する場合には、絶対値を位相の余弦によって乗算することによって、2つの測定信号を(理想的には)オフセットのない正弦/余弦システムに変換することができる。測定範囲に対して120°の位相シフトを有する3つの受信コイルを使用する場合には、3相の正弦波信号が発生し、この正弦波信号を、クラーク変換を使用することによって正弦/余弦システムに変換することができる。そうすると、双方のケースにおいて、正弦/余弦システムにおいて変換された信号にアークタンジェント関数を適用することによって、回転角度を推定することが可能である。
【0012】
さらに、前記ステータ送信コイルは、円形の外側の部分巻線と、前記外側の部分巻線の内側に配置された円形の内側の部分巻線とを有し、前記内側の部分巻線は、電流の流れに関して前記外側の部分巻線とは逆向きに方向決めされるように前記外側の部分巻線に電気的に接続されている。前記ロータ受信コイルは、円形の外側の部分巻線と、前記外側の部分巻線の内側に配置された円形の内側の部分巻線とを有し、前記内側の部分巻線は、電流の流れに関して前記外側の部分巻線とは逆向きに方向決めされるように前記外側の部分巻線に電気的に接続されている。換言すれば、ステータ送信コイル及びロータ受信コイルは、双方ともそれぞれ2つの部分巻線を有し、これらのそれぞれ2つの部分巻線は、相互に入れ子状に配置されており、相互に逆向きに方向決めされている。電流の流れに関して、相互に逆向きに方向決めされた部分巻線は、電流が対応するコイルを流れるときに電流がこれらの部分巻線をそれぞれ左回り又は右回りに流れるように設計することができる。コイルの部分巻線は、同等の又は実質的に同等の面積を取り囲んでいる、コイルの導体区分とすることができる。ステータ送信コイル及び/又はロータ受信コイルの2つの部分巻線を、直列に接続することができる。
【0013】
前記ステータ送信コイルの前記外側の部分巻線と、前記ロータ受信コイルの前記外側の部分巻線とが相互に位置合わせされており、前記ステータ送信コイルの前記内側の部分巻線と、前記ロータ受信コイルの前記内側の部分巻線とが相互に位置合わせされている。「相互に位置合わせされている」とは、それぞれの部分巻線が、回転軸線又はステータエレメントの対称軸線の方向において見たときに、実質的に重なり合っていることを意味し得る。
【0014】
相互に逆向きに方向決めされた部分巻線によって、実質的に均一な交番電磁場に対する回転角度センサの脆弱性を低減することができる。これらの磁場がステータ送信コイル及び/又はロータ受信コイルを通ると、部分巻線の各々において電圧が誘導されるが、これらの電圧は、相互に打ち消し合い、又は、少なくとも低減される。
【0015】
全体として、高価な磁石が必要とされないので、この簡単な測定原理に基づいて回転角度センサを低コストに実現することが可能となる。得られた測定信号は、(クラーク変換に基づく)簡単な逆変換によって評価することができる。さらに、回転角度センサは、誤差に対してロバストであり、即ち、設置時に比較的大きな機械的な誤差を許容することができ、外部干渉場に対して特に耐性を有する。
【0016】
本発明の1つの実施形態によれば、前記ステータ送信コイルの前記外側の部分巻線及び前記内側の部分巻線は、実質的に同等の磁束を生成するように形成されている。本発明の1つの実施形態によれば、前記ロータ受信コイルの前記外側の部分巻線及び前記内側の部分巻線は、実質的に同等の磁束を生成するように形成されている。ステータ送信コイル及び/又はロータ受信コイルを、電流がそれぞれの部分巻線を流れるときに(この電流は、同一のコイルの部分巻線においては、部分巻線同士が直列に接続されているので、同等の大きさである)それぞれの部分巻線が同等の磁束を生成するように、(例えば、それぞれの部分巻線の導体ループの数を選択することによって)形成することができる。部分巻線が相互に逆向きに方向決めされているので、1つのコイルにおいて外部磁場によって誘導される電圧同士は、実質的に完全に打ち消し合う。このことは、例えば、特にコイルの領域において均一な外部磁場の場合に当てはまる。
【0017】
以上及び以下における「実質的に」又は「約」は、5%又は1%の最大偏差を意味し得る。
【0018】
本発明の1つの実施形態によれば、前記ステータ送信コイル及び/又は前記ロータ受信コイルの前記外側の部分巻線は、それぞれ前記ステータエレメント又は前記ロータエレメントを完全に取り囲んでいる複数の導体ループを有する。本発明の1つの実施形態によれば、前記ステータ送信コイル及び/又は前記ロータ受信コイルの前記内側の部分巻線は、それぞれ前記ステータエレメント又は前記ロータエレメントを完全に取り囲んでいる複数の導体ループを有する。導体ループは、例えばステータ・プリント基板上に設けられた導体路に基づくことができる。これらの導体ループ又は導体路は、螺旋形に延在することができる。「完全に取り囲んでいる」とは、導体ループがロータエレメントの回転軸線又はステータエレメントの対称軸線の周りを約360°にわたって取り囲んでいることを意味し得る。接続部が取り付けられている導体ループも、接続線路同士が詰めて並んで位置している場合には、ステータエレメント又はロータエレメントを(本明細書での意味において)完全に取り囲むことができる。
【0019】
本発明の1つの実施形態によれば、前記ステータ送信コイルの前記外側の部分巻線の導体ループによって形成される面積の合計に相当する、前記ステータ送信コイルの前記外側の部分巻線の有効面積は、前記ステータ送信コイルの前記内側の部分巻線の有効面積に実質的に相当する。本発明の1つの実施形態によれば、前記ロータ受信コイルの前記外側の部分巻線の導体ループによって形成される面積の合計に相当する、前記ロータ受信コイルの前記外側の部分巻線の有効面積は、前記ロータ受信コイルの前記内側の部分巻線の有効面積に実質的に相当する。コイルの有効面積は、コイルを通る磁束を決定することができ、この磁束は、コイルの有効面積と電流強度との積とすることができる。それぞれの導体ループは、完全な取り囲みに基づいて各自の面積を形成することができ、この面積にはその後、次の導体ループのために、さらなる完全な取り囲みに基づいて追加的な取り囲まれた面積が追加される。
【0020】
本発明の1つの実施形態によれば、前記ステータ送信コイル及び/又は前記ロータ受信コイルの前記外側の部分巻線は、特に前記ステータエレメントの対称軸線又は前記回転軸線を中心にして見たときに螺旋を形成している複数の導体ループを有する。本発明の1つの実施形態によれば、前記ステータ送信コイル及び/又は前記ロータ受信コイルの前記内側の部分巻線は、特に前記ステータエレメントの対称軸線又は前記回転軸線を中心にして見たときに螺旋を形成している複数の導体ループを有する。螺旋は、回転軸線又は対称軸線までの距離が連続的に増加する曲線とすることができる。
【0021】
本発明の1つの実施形態によれば、前記ステータ送信コイル及び/又は前記ロータ受信コイルの前記外側の部分巻線及び前記内側の部分巻線は、前記ステータ送信コイルの対称軸線/前記対称軸線又は前記回転軸線と同心に配置されている。このようにすると、ステータエレメントの部分巻線とロータエレメントの部分巻線とが、回転角度に関係なく等しく重なり合い、又は、常に等しく相互に位置合わせされる。
【0022】
本発明の1つの実施形態によれば、前記ステータ送信コイル及び/又は前記ロータ受信コイルは、ステータ・プリント基板上又はロータ・プリント基板上に設けられた導体路の形態の平面コイルとして形成されている。部分巻線の導体路及び/又はコイルの導体路を、それぞれのプリント基板の複数の平面に配置することが可能である。部分巻線を、単一(の導体路)として、対応するプリント基板の1つの平面のみに実現することも可能である。
【0023】
本発明の1つの実施形態によれば、前記1つ又は複数のステータ受信コイルは、半径方向外側が前記ステータ送信コイルの前記外側の部分巻線によって画定されていて、かつ、半径方向内側が前記ステータ送信コイルの前記内側の部分巻線によって画定されている、前記ステータエレメントの送信環状領域内に配置されている。従って、1つ又は複数のステータ受信コイルを、ステータ送信コイル及び/又はロータ送信コイルの2つの部分巻線によって同時に生成された磁束のみが通ることとなる。また、前記ステータ受信コイル又は前記ステータ受信コイルの各々は、電流の流れに関して相互に逆向きに方向決めされた複数の部分巻線を有することができる。
【0024】
本発明の1つの実施形態によれば、前記ロータ送信コイルは、半径方向外側が前記外側の部分巻線によって画定されていて、かつ、半径方向内側が前記内側の部分巻線によって画定されている、前記ロータエレメントの環状領域内に配置されている。また、前記ロータ送信コイルは、電流の流れに関して相互に逆向きに方向決めされた複数の部分巻線を有することができる。
【0025】
本発明の1つの実施形態によれば、前記ステータ受信コイルは、(送信環状領域の内側にある)受信環状領域を完全に覆っており、前記ロータ送信コイルは、前記受信環状領域に対向する複数の三日月形の部分巻線を有する。これによって、ステータ受信コイルによって生成された測定信号(即ち、誘導された交番電圧の振幅)が、回転角度に実質的に正弦波的に依存することを達成することができ、これにより、1つ又は複数の測定信号を特に簡単に評価することが可能となる。
【0026】
本発明のさらなる態様は、前述及び後述のような回転角度センサのためのステータエレメント及び/又はロータエレメントに関する。
【0027】
本発明の1つの実施形態によれば、前記ステータエレメントは、ステータ送信コイルと、ステータ受信コイルとを含み、前記ステータ送信コイルは、円形の外側の部分巻線と、前記外側の部分巻線の内側に配置された円形の内側の部分巻線とを有し、前記内側の部分巻線は、電流の流れに関して前記外側の部分巻線とは逆向きに方向決めされるように前記外側の部分巻線に電気的に接続されており、前記外側の部分巻線及び前記内側の部分巻線は、特に実質的に同等の磁束を生成する。
【0028】
本発明の1つの実施形態によれば、前記ロータエレメントは、ロータ送信コイルと、ロータ受信コイルとを含み、前記ロータ受信コイルは、円形の外側の部分巻線と、前記外側の部分巻線の内側に配置された円形の内側の部分巻線とを有し、前記内側の部分巻線は、電流の流れに関して前記外側の部分巻線とは逆向きに方向決めされるように前記外側の部分巻線に電気的に接続されており、前記外側の部分巻線及び前記内側の部分巻線は、特に実質的に同等の磁束を生成する。
【0029】
図面の簡単な説明
以下、添付の図面を参照しながら本発明の実施形態について説明するが、図面も説明も本発明を限定するものとして解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の1つの実施形態による回転角度センサの概略横断面図である。
図2】本発明の1つの実施形態によるステータエレメントのためのステータ送信コイルの概略平面図である。
図3】本発明の1つの実施形態によるステータエレメントのステータ受信コイルの幾何学的形状の概略図である。
図4】本発明の1つの実施形態によるステータエレメントのためのコイルレイアウトを示す図である。
図5】本発明の1つの実施形態による回転角度センサのステータ受信コイルの幾何学的形状の概略図である。
図6】本発明の1つの実施形態によるステータエレメントのためのコイルレイアウトを示す図である。
図7】本発明の1つの実施形態によるロータエレメントのためのコイルレイアウトを示す図である。
図8】本発明の1つの実施形態によるロータエレメントのためのコイルレイアウトを示す図である。
【0031】
図面は、概略的なものに過ぎず、縮尺通りではない。同一の参照符号は、図面において、同一の、又は、同等の作用を有する特徴を表している。
【発明を実施するための形態】
【0032】
発明を実施するための形態
図1は、ステータエレメント12及びロータエレメント14からなる回転角度センサ10を示している。ロータエレメント14は、例えば、スロットルバルブ、モータ、カムシャフト、アクセルペダル等のような構成要素のシャフト16に固定することができ、又は、このシャフト16によって提供することができる。シャフト16は、回転軸線Rを中心にして回転可能であり、ステータエレメント12は、対応する軸線方向においてロータエレメント14に対向している。例えば、ステータエレメント12は、構成要素のハウジングに固定されている。ステータエレメント12がシャフト16に対して正確に位置合わせされている場合には、ステータエレメント12の対称軸線Tが回転軸線Rと一致する。
【0033】
ステータエレメント12は、ステータ・プリント基板18を含み、ステータ・プリント基板18上には、1つのステータ送信コイル20と1つ又は複数のステータ受信コイル22とが配置されている。コイル20,22の導体は、ステータ・プリント基板18の2つの平面のみに、例えばステータ・プリント基板18の両側のみに配置することができる。ステータ・プリント基板18上には、制御ユニット24のための別の構成要素が配置されてもよい。制御ユニット24は、ステータ送信コイル20に交番電圧(例えば1MHz乃至20MHzの間、例えば5MHzの周波数、及び/又は、0.5V乃至10Vの範囲、例えば1.5Vの電圧振幅を有する交番電圧)を供給することができ、それぞれのステータ受信コイル22において、誘導された交番電圧を特定することができる。これらの測定値に基づいて制御ユニット24は、ステータエレメント12とロータエレメント14との間の相対的な回転角度を特定することができる。
【0034】
ロータエレメント14は、ロータ・プリント基板26を含む。ロータ・プリント基板26上には、1つのロータ受信コイル28と1つのロータ送信コイル30とが配置されている。コイル28,30の導体は、ロータ・プリント基板26の2つの平面のみに、例えばロータ・プリント基板26の両側のみに配置することができる。
【0035】
全てのコイル20,22,28,30は、平面コイルとして形成されており、即ち、プリント基板18,26のうちの1つの上及び/又は中に設けられた導体路によって形成されたコイルとして形成されている。
【0036】
図2は、外側の部分巻線34aと内側の部分巻線34bとを含むステータ送信コイル20を示し、外側の部分巻線34aと内側の部分巻線34bとは、半径方向に延在する導体路35を介して直列に接続されている。ステータ送信コイル20の外側の部分巻線34aを、(図示されていない接続部を介して)制御部24に接続することができることを理解すべきである。外側の部分巻線34aと内側の部分巻線34bとは、電流の流れに関して相互に反対方向に方向決めされており、即ち、矢印で示すように、内側の部分巻線34bを電流が左回りに流れる場合には、外側の部分巻線34aを電流が右回りに流れる。
【0037】
外側の部分巻線34a及び内側の部分巻線34bは、双方とも環状であり、対称軸線Tを完全に取り囲んでいる複数のほぼ円形の導体ループ36から形成されている。導体ループ36は、それぞれ対称軸線Tを中心とした螺旋を形成している。
【0038】
外側の部分巻線34a及び内側の部分巻線34bは、同等の磁束を生成するように、又は、部分巻線34a,34bにおいて均一な磁場によって誘導される電圧同士が、部分巻線34a,34bの直列回路によって相互に打ち消し合うように、形成されている。
【0039】
このことは、部分巻線34aの有効面積と部分巻線34bの有効面積とが同等の大きさであることによって達成することができる。部分巻線34a,34bの有効面積は、導体ループ36によって形成される面積の合計である。
【0040】
導体ループの各々がほぼ円形であると仮定すると、それぞれの導体ループ36に1つの円形面積を対応付けることができる。その場合、内側の部分巻線34bの全てのこれらの円形面積の合計は、外側の部分巻線34aの全ての円形面積の合計に等しくなければならない。
【0041】
ここで、ra,j及びra,j+1が、外側の部分巻線34aの導体ループ36の(平均)半径であり、ra,k及びra,k+1が、内側の部分巻線34bの導体ループ36の(平均)半径であるとすると、
【数1】
が当てはまる。この場合、合計でn個の内側の導体ループ36と、m個の外側の導体ループ36とが設けられている。
【0042】
外側の部分巻線34aが所与であると仮定すると、内側の部分巻線34bの幾何学的形状は、以下のように決定することができる。内側の部分巻線34bの内側には、コイル巻線が設けられていない面積が存在する。この面積は、内径din,minによって定義される。この空いている面積を、例えば軸線を通過する孔部のために、又は、他の回路部品(構成要素、ビア等)のために設けることができる。1つ又は複数のステータ受信コイル22は、内側の部分巻線34aと外側の部分巻線34bとの間の環状領域39内に収容されるので、内側の部分巻線34bの最大外径din,maxも定義される。この場合、din,min=2rin,min及びdin,max=2rin,maxが当てはまる。
【0043】
図示されている外側の部分巻線34aは、2つの導体ループ36を有する。従って、補償されるべき有効面積は、
【数2】
となる。1つ、3つ若しくはそれ以上の導体ループ36の場合、又は、他の幾何学的形状の場合においても、補償されるべき相応の有効面積を選択することができることを理解すべきである。
【0044】
in,min及びdin,maxによって定められる領域には、最大で、
max=(din,max−din,min)/(2・(w+g)) (3)
個の巻線を配置することができる。なお、wは、導体路の幅を表し、gは、導体ループ36を形成する2つの導体路間の距離を表す。
【0045】
ここで、全体として形成されている面積が足し合わされる:
【数3】
ただし、di,i=din,min+w+2・(i−1)・(w+g) (5)
である。
【0046】
in≧Aoutである場合に、必要な条件を満たすことができる。導体ループ36の所要の数nは、
【数4】
のように、選択される。
【0047】
次いで、条件Ain=Aoutが正確に満たされることを保証するために、条件が満たされるまでの間、最大内径din,maxが段階的に縮小される。
【0048】
内側の部分巻線34b及び外側の部分巻線34aを、双方とも多層の平面コイルとして形成することができる。この場合、内側の部分巻線34bのために使用されるプリント基板の層の数を比較的多くすることが十分に可能である。このことにより、内側の部分巻線34bの所要面積が縮小され、可能な限り最大の面積を有するステータ受信コイル22を組み込むことが可能となる。これによって、大きな振幅を有する信号が生成され、このような大きな振幅を有する信号は、容易に特定することが可能である。
【0049】
外側の部分巻線34aの最大外径da,maxは、好ましくは10mm乃至40mmの間、好ましくは25mmである。
【0050】
ステータ送信コイル20には、数MHz(好ましくは5MHz)の範囲の周波数の場合に0.5V乃至10V(好ましくは1.5V)の範囲の振幅を有する交番電圧を印加することができる。
【0051】
図3は、ステータ受信コイル22の幾何学的形状を概略的に示し、その一方で、図4は、ステータ受信コイル22を有するステータエレメント12のコイルレイアウトを示している。図3は、ステータ受信コイル22の導体路の形状のみを示しているが詳細な延び具合は示しておらず、その一方で、図4においては、導体路の一部が重なり合っている。見やすくするために、図4においては、ステータ送信コイル20の半径方向の導体路35が省略されている。
【0052】
さらに、図4には、ただ1つのステータ受信コイル22のみが示されている。図4に示されたステータエレメント12は、相互に90°だけずらされた2つのステータ受信コイル22を含むこと、又は、周方向に相互に120°だけずらされた若しくは回転させられた3つのステータ受信コイル22を含むことが可能である。これらのステータ受信コイル22は、図示されたステータ受信コイル22と同様のレイアウトを有することができる。基本的に、ここでは、対応する機械的な回転を有する他のコイル数も可能である。
【0053】
図示されたステータ受信コイル22の場合、実線の領域内においては、2つの導体路が2つの平面において上下に重なり合っている。そうでない場合には、それぞれの線の種類が、ステータ・プリント基板18の平面/層を表している。塗りつぶされた円は、両方の平面を相互に接続するビアである。
【0054】
図3及び図4から見て取れるように、ステータ受信コイル22は、2つの相互に逆向きの、又は、電流の流れに関して相互に反対方向に方向決めされた部分巻線38a,38bを有する。
【0055】
概して、ステータ受信コイル22の各々は、偶数個2mの部分巻線38a,38bを有することができ、また、例えば360°の整数の約数とすることができる回転角度センサ10の測定範囲Perは、それぞれのステータ受信コイル22の部分巻線38a,38bの数2mに依存しており、m=360°/Perが当てはまる。
【0056】
例えば、m=1の場合には、図2及び図3のステータ受信コイル22は2つの部分巻線38a,38bを有し、このことによって、360°の周期性又は測定範囲がもたらされる。
【0057】
一方の方向に方向決めされた部分巻線38aと、他方の方向に方向決めされた部分巻線38bとが同数であることにより、ステータ送信コイル20によって誘導される複数の部分電圧が(ロータエレメント14がない場合)合計で補償され、全てのステータ受信コイル22において出力信号0Vとして出力されることとなる。このことを、自己診断のために使用することも可能であり、ロータエレメント14が欠落していること、又は、少なくとも1つの電気的な中断部を有することを認識することができる。さらに、電磁障害の影響に起因した干渉は、(ステータ送信コイル20の部分巻線34a,34bと同様に)それぞれの部分巻線38a,38bにおいてそれぞれ異なる符号の電圧を誘導し、これらの電圧は、(これらの部分巻線の領域における干渉が均一であると仮定した場合)部分巻線38a,38bの直列回路によって再び補償される。
【0058】
ステータエレメント12においては、3つのステータ受信コイル22が相互に角度ξだけ回転させられており、この角度ξは、ξ=Per/3に従って計算することができる(ここでは、例えばPer=360°であるので120°)。上記の回転の場合には、120°の電気的な位相シフトを有する3相の電気システムが得られる。
【0059】
図4から見て取れるように、部分巻線38a,38bの各々は、半径方向外側に位置する周方向導体40と、半径方向内側に位置する周方向導体42とによって画定されており、これらの周方向導体40,42は、それぞれ2つの半径方向導体44によって相互に接続される。図4においては、4つの半径方向導体44のうちの2つのみが見て取れる。なぜなら、それぞれ2つの半径方向導体44が、ステータ・プリント基板18の2つの平面において上下に重なり合って延在しているからである。
【0060】
第1の部分巻線38aの外側の周方向導体40は、点A(図3にも図示されている)のスルーホールコンタクト37から始まり、次いで、第1の平面において点Bの中心まで延在し、そこで、別のスルーホールコンタクトにおいて平面を切り替える。続いて、外側の周方向導体40は、第2の平面において点Cまで延在する。点Cにおいては、このとき第2の平面に延在している外側の周方向導体40が、半径方向導体44に接続されており、この半径方向導体44は、第2の平面において点Dまで延在し、そこで、第1の部分巻線38aの内側の周方向導体42に移行する。第1の部分巻線38aの内側の周方向導体42は、第2の平面において点Dから点Eまで延在し、点Eにおいてスルーホールコンタクト37を介して第1の平面に切り替わり、次いで、第1の平面において点Fまで延在し、そこで、別の半径方向導体44に移行する。次いで、第1の部分巻線38aの別の半径方向導体44は、点A’まで延在し、この点A’において、第2の部分巻線38bが始まる。第2の部分巻線38bは、点A’乃至点F’に沿って部分巻線38aと同様に形成されており、ステータ・プリント基板18の2つの平面が反転されているだけである。
【0061】
以下においてより詳細に説明するように、外側の周方向導体40は、円に沿って延在しており、これらの円の中心Mは、スルーホールコンタクト37が設けられている点Bが最大の半径方向距離を有するように、対称軸線Tからずらされている。内側の周方向導体42は、それぞれのスルーホールコンタクト37の右側及び左側において同様に円に沿って延在しており、これらの円の中心(見やすくするために図示せず)は、対称軸線Tからずらされているが、この場合には、それぞれのスルーホールコンタクト37が最小の半径方向距離を有するようにずらされている。
【0062】
図5及び図6は、見やすくするために、図3及び図4と同様に、それぞれ正確に1つのステータ受信コイル22又はステータエレメント12の1つのレイアウトのみを示している。実際のコイルレイアウトは、例えば3つのステータ受信コイル22を有することができ、これら3つのステータ受信コイル22を、相互に角度ξ(3つのステータ受信コイルの場合にはξ=Per/3)だけ回転させることができ、この角度ξを、上述したように計算することができる。2つのステータ受信コイルの場合には、式はξ=Per/4である。この場合、周期又は測定範囲は180°である。
【0063】
ここでは、ステータ受信コイル22は、4つの部分巻線38a,38bを有し、これら4つの部分巻線38a,38bは、円形面積を実質的に覆っており、この円形面積を4つの同等の大きさの面積に分割する。対称軸線Tに関して相互に対向している2つの部分巻線38aは、第1の方向に方向決めされており、残余の2つ部分巻線38bは、反対方向に、即ち、逆向きに方向決めされている。
【0064】
部分巻線38a,38bの各々は、図3及び図4の導体ループと同様に、ステータ・プリント基板18の第1の平面及び第2の平面において点Aから点A’に沿って案内されている。
【0065】
以下においてより詳細に説明するように、外側の周方向導体40は、円に沿って延在しており、これらの円の中心Mは、スルーホールコンタクト37が設けられている点Bが最大の半径方向距離を有するように、対称軸線Tからずらされている。内側の周方向導体42は、それぞれのスルーホールコンタクトの右側及び左側において同様に円に沿って延在しており、これらの円の中心(見やすくするために図示せず)は、対称軸線Tからずらされているが、この場合には、それぞれのスルーホールコンタクトが最小の半径方向距離を有するようにずらされている。
【0066】
回転角度センサ10の実際のレイアウトを作成するために、さらに別のステータ受信コイル22を、周方向に沿って相互に回転させて配置することができる。図5及び図6に図示された唯一のステータ受信コイル22は、(ステータ送信コイル20の周方向に沿った環状領域39のそれぞれ90°を覆っている)それぞれ4つの部分巻線38a,38bから形成されているので、ステータ受信コイルは、180°の測定範囲に基づいてそれぞれ相互に60°だけずらされている(図6参照)。
【0067】
以下においては、図3及び図4のステータエレメント12(360°の測定範囲)並びに図5及び図6のステータエレメント12(180°の測定範囲)のためのコイルレイアウトを形成することができる方法について説明するが、これら2つの測定範囲に限定されているわけではない。この理由から、一般的に適用される式が記載される。
【0068】
環状領域39、即ち、外側の部分巻線34aと内側の部分巻線34bとの間に位置する面積は、複数の作図円を巧みに位置決めすることによって最適に利用し尽くすことが可能であり、続いて、これらの作図円から、ステータ受信コイル22の部分巻線38a,38bが組み立てられる。半径方向に相互に対向する1対の部分巻線38a,38b(図4においては1対、図6においては2対)につき2つの作図円によって外側の周方向導体40が画定され、これら2つの作図円は、2つの部分巻線38a,38bの鏡面対称軸線Sに沿って相互にずらされており、これら2つの作図円の中心Mは、この鏡面対称軸線S上に位置している。
【0069】
部分巻線38a,38bの対が複数ある場合(m個)には、鏡面対称軸線Sは、鏡面対称軸線S同士が周方向に沿ってそれぞれ相互に180°/mだけずらされるように又は回転させられるように、即ち、例えば、図6の2つの鏡面対称軸線S同士が相互に直交(90°)するように配置されている。
【0070】
作図円の直径は、ステータ送信コイル20の直径の約1/3とすることができる。それぞれ2つの作図円の相互のずれは、これらの作図円の直径の30%乃至50%の間、例えば40%とすることができる。このようにして、一方では、面積を最大限に利用し尽くすことを保証することができ、他方では、3つの回転させられたステータ受信コイル22を2つの平面において実現することを可能にすることができる。
【0071】
外側の周方向導体40を内側の周方向導体42に接続する半径方向導体44は、対称軸線Tに対して半径方向に延在している。半径方向導体44の外側端部は、中心Mを中心とした複数の作図円の交点に位置する。
【0072】
内側の周方向導体42も、作図円によって画定することができ、この場合、1つの部分巻線38a,38bにつき2つの作図円が使用され、これらの作図円の中心は、部分巻線38a,38bの鏡面対称軸線Sに直交する軸線に沿ってずらされている。これにより、内側の周方向導体42のための合計で4m個の作図円が得られる。内側の周方向導体42のための作図円の直径は、外側の周方向導体40のための作図円の直径の10%乃至20%であり、例えば15%である。
【0073】
対称軸線Tのより近傍に位置する、内側の周方向導体42のための2つの作図円の交点が、スルーホールコンタクト37の位置を画定する。
【0074】
図7は、図1の回転角度センサ10のためのロータエレメント14の平面図を示し、ロータエレメント14は、ロータ受信コイル28及びロータ送信コイル30を含み、図3及び図4のステータエレメント12と共に使用することができる。
【0075】
1つのロータ受信コイル28は、外側の部分巻線34aと内側の部分巻線34bとを含み、これらは、図2のステータ送信コイルと同様に形成することができる。ロータ受信コイル28の部分巻線34a,34bは、ステータ送信コイル20のそれぞれの部分巻線34a,34bと同等の大きさを有し、これらの部分巻線34a,34bを覆っている。ロータ受信コイル28の場合にも、電磁両立性(EMC)入力結合を抑制するために、左回りの導体ループ36によって閉成される有効面積と、右回りの導体ループ36によって閉成される有効面積とを同一にすることができる。基本的に、他の寸法及び巻線個数比も可能である。従って、例えば、ロータエレメント14上における1つの部分巻線34a,34b当たりの導体ループ36の数を、ステータエレメント12上における対応する部分巻線34a,34bの導体ループ36の数とは異ならせることもできる。
【0076】
ロータ送信コイル30は、2つの部分巻線46a,46bを有し、これらの部分巻線46a,46bは、それぞれ三日月形である。第1の部分巻線46aは、(電流の流れに関して)第2の部分巻線46bとは逆向きに方向決めされている。部分巻線46a,46bの幾何学的形状は、同一とすることができる。部分巻線46a,46bは、部分巻線34aと34bの間に配置された、ロータ送信コイル30の環状領域39内に配置されている。2つの三日月形の部分巻線46a,46bは、実質的に円弧形の導体区分から形成されている。
【0077】
ロータ受信コイル28とロータ送信コイル30とは、相互に電気的に接続されており、又は、直列に接続されている。このために、部分巻線46aと、ロータ送信コイル30の半径方向に延在する導体路35のうちの1つとが、これらが重なり合う領域においてそれぞれ切断されており、交差して相互に接続されている。
【0078】
図8には、図5及び図6のステータエレメント12と共に使用することができるロータエレメント14のレイアウトが示されている。図8においては、ロータ送信コイル30は、4つの三日月形の部分巻線46a,46bから形成されており、これらの部分巻線46a,46bは、周方向に回転軸線Rを取り囲んでおり、それぞれ90°を覆っている。回転軸線Rに関して相互に対向している部分巻線46a同士及び部分巻線46b同士は、電流の流れに関して同様の方向性を有し、その一方で、周方向に隣り合う部分巻線46aと部分巻線46bとは、相互に逆向きの方向性を有する。
【0079】
ロータ送信コイル30又はロータ送信コイル30の部分巻線46a,46bも、複数の作図円に基づいて画定することができる。
【0080】
図7(測定範囲360°)の場合、部分巻線46a,46bは、同等の直径を有する2つの作図円によって画定することができ、これらの作図円の中心Mは、部分巻線46a,46bの鏡面対称軸線Sに沿って相互にずらされている。
【0081】
図8の場合、4つの部分巻線46a,46bは、回転軸線Rに関して第1の経路に沿ってずらされた中心Mを有する4つの比較的大きな作図円と、回転軸線Rに関して第2の経路に沿ってずらされた中心M’を有する4つの比較的小さな作図円とによって画定される。全ての中心M,M’は、鏡面対称軸線S上に位置する。比較的大きな作図円の直径と、比較的小さな作図円の直径との比が約
【数5】
である場合に、最良の測定信号が得られることが判明している。隣り合う部分巻線46a,46bの交点において、比較的大きな円の端部セグメントが、隣り合う比較的小さな円の端部セグメントへとほぼ屈曲することなく移行すると有利である。
【0082】
最後に、「有する」、「含む」等のような用語が他の要素又はステップを排除しないこと、また、「1つ」のような用語が複数形を排除しないことに留意すべきである。特許請求の範囲における参照符号は、限定するものとして見なすべきではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8