(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
<農薬用水面拡展剤>
1.本発明の第1の態様
本発明の第1の態様は、下記一般式(I)で表される化合物及び下記一般式(II)で表される化合物を含む農薬用水面拡展剤であって、
下記一般式(I)で表される化合物と下記一般式(II)で表される化合物とのモル比が30:70〜70:30である農薬用水面拡展剤である。
【化3】
(一般式(I)中、R
1は、炭素数6〜10の直鎖又は分岐鎖のアルキル基であり、AOは、炭素数2〜4のオキシアルキレン基であって、互いに同一であっても、異なっていてもよく、nは、AOの平均付加モル数を示す1〜3の数であり、AOの付加形式は、ホモ、ランダム、ブロック及び交互のいずれでもよく、M
+はNa
+、K
+、NH
4+又はH
+であって、互いに同一であっても、異なっていてもよい。一般式(II)中、R
1は、炭素数6〜10の直鎖又は分岐鎖のアルキル基であって、互いに同一であっても、異なっていてもよく、AOは、炭素数2〜4のオキシアルキレン基であって、互いに同一であっても、異なっていてもよく、nは、AOの平均付加モル数を示す1〜3の数であり、AOの付加形式は、ホモ、ランダム、ブロック及び交互のいずれでもよく、M
+はNa
+、K
+、NH
4+、又はH
+である。)
【0011】
上記一般式(I)で表される化合物(以下、本明細書において「モノエステル」ともいう。)と上記一般式(II)で表される化合物(以下、本明細書において「ジエステル」ともいう。)とは、モル比で、上記一般式(I)で表される化合物:上記一般式(II)で表される化合物=30:70〜70:30で含まれ、40:60〜60:40であることが好ましく、拡展距離の観点から、50:50〜60:40で含まれることがより好ましい。この比は、モノエステルとジエステルとを混合して製造する場合は、混合比であるが、モノエステルとジエステルとが混合物として得られる製造方法による場合は、電位差滴定により測定して求められる。詳細は実施例に記載する。
【0012】
R
1は、炭素数6〜10の直鎖又は分岐鎖のアルキル基である。炭素数6〜10の直鎖又は分岐鎖のアルキル基としては、n−ヘキシル基、1−エチルペンチル基、n−ヘプチル基、2−エチルヘキシル基、n−オクチル基、n−ノニル基、2,4,4−トリメチルペンチル基、2,6−ジメチルヘプチル基、n−デシル基等が挙げられる。これらの中でも、n−ヘキシル基、2−エチルへキシル基、及びn−デシル基が好ましく、n−デシル基がより好ましい。上記一般式(II)において複数あるR
1は、互いに同一であっても、異なっていてもよいが、互いに同一であることが好ましい。
【0013】
AOは、炭素数2〜4のオキシアルキレン基である。Aは、炭素数2〜4の直鎖状または分枝状のアルキレン基であり、エチレン基、n−プロピレン基、プロピレン基(−CH
2−CH(CH
3)−)、n−ブチレン基、1−メチルプロピレン基(−CH
2−CH
2−CH(CH
3)−)、2−メチルプロピレン基(−CH
2−CH(CH
3)−CH
2−)、ジメチルエチレン基(−CH
2−C(CH
3)
2−)、エチルエチレン基(−CH
2−CH(CH
2CH
3)−)、等が挙げられる。また、Aにおいて、(AO)
nの主鎖を構成する部分の炭素数は2以下であることが好ましい。すなわち、Aは、エチレン基、プロピレン基およびエチルエチレン基からなる群より選択される少なくとも1種を有することが好ましい。AOの平均付加モル数を示すnは、1〜3であり、2〜3が好ましく、3がより好ましい。AOは互いに同一であっても、異なっていてもよく、その付加形式は、ホモ、ランダム、ブロック及び交互のいずれでもよいが、互いに同一でありホモ形式であることが好ましい。AOとしては、オキシエチレン基、オキシプロピレン(−O−CH
2−CH(CH
3)−)基、オキシエチレン基とオキシプロピレン基(−O−CH
2−CH(CH
3)−)との組み合わせが好ましく、オキシエチレン基がより好ましい。
【0014】
M
+はNa
+、K
+、NH
4+又はH
+であり、Na
+が好ましい。上記一般式(I)において複数あるM
+は、互いに同一であっても、異なってもよいが、互いに同一であることが好ましい。
上記一般式(I)で表される化合物と上記一般式(II)で表される化合物との間で、R
1、AO、AOの付加形式、n及びM
+はそれぞれ独立に選択されるが、上記一般式(I)で表される化合物におけるR
1と上記一般式(II)で表される化合物におけるR
1とは同一であることが好ましく、上記一般式(I)で表される化合物におけるAO、n及びその付加形式と上記一般式(II)で表される化合物におけるAO、n及びその付加形式とは同一であることが好ましく、上記一般式(I)で表される化合物におけるM
+と上記一般式(II)で表される化合物におけるM
+とは同一であることが好ましい。
農薬用水面拡展剤は、他の成分を含んでいてもよいが、上記一般式(I)で表される化合物及び上記一般式(II)で表される化合物のみからなることが好ましい。
【0015】
上記一般式(I)で表される化合物は、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルとポリリン酸とを反応させることによりM
+=H
+の場合が製造でき、それ以外の場合は、その後さらに中和することにより製造することができる。上記一般式(II)で表される化合物は、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルと五酸化二リンとを反応させた後、アルカリで加水分解し、その後、M
+=H
+以外の場合は、中性水で水洗精製することにより、M
+=H
+の場合は、酸性水で水洗精製することにより製造することができる。詳細は実施例に記載する。
【0016】
農薬用水面拡展剤は、農薬有効成分とともに、水田に投下されて使用される。本発明の農薬用水面拡展剤は、水面拡展距離、水面拡展速度及び水面を凝集することなく分散する能力が優れるため、農薬を凝集させることなく、農薬が沈降前に素早く農薬の投下地点から離れた場所に拡展させることができるので、農薬が水田に局所的に固まることなく均一に分散され、農薬の効果、及び人体への安全性の観点から好ましい。
【0017】
2.本発明の第2の態様
本発明の第2の態様は、下記一般式(III)で表される化合物及び下記一般式(IV)で表される化合物を含む農薬用水面拡展剤であって、
下記一般式(III)で表される化合物と下記一般式(IV)で表される化合物とのモル比が、70超:30未満〜100:0である農薬用水面拡展剤である。
【化4】
(一般式(III)中、R
2は、炭素数8〜10の直鎖又は分岐鎖のアルキル基であり、AOは、炭素数2〜4のオキシアルキレン基であって、互いに同一であっても、異なっていてもよく、mは、AOの平均付加モル数を示す2〜4の数であり、AOの付加形式は、ホモ、ランダム、ブロック及び交互のいずれでもよく、M
+はNa
+、K
+、NH
4+又はH
+であって、互いに同一であっても、異なっていてもよい。一般式(IV)中、R
2は、炭素数8〜10の直鎖又は分岐鎖のアルキル基であって、互いに同一であっても、異なっていてもよく、AOは、炭素数2〜4のオキシアルキレン基であって、互いに同一であっても、異なっていてもよく、mは、AOの平均付加モル数を示す2〜4の数であり、AOの付加形式は、ホモ、ランダム、ブロック及び交互のいずれでもよく、M
+はNa
+、K
+、NH
4+又はH
+である。)
【0018】
上記一般式(III)で表される化合物(以下、本明細書において「モノエステル」ともいう。)と上記一般式(IV)で表される化合物(以下、本明細書において「ジエステル」ともいう。)とは、モル比で、上記一般式(III)で表される化合物:上記一般式(IV)で表される化合物=70超:30未満〜100:0で含まれ、75:25〜100:0で含まれることが好ましく、75:25〜99:1で含まれることがより好ましい。この比は、モノエステルとジエステルとを混合して製造する場合は、混合比であるが、モノエステルとジエステルとが混合物として得られる製造方法による場合は、電位差滴定により測定して求められる。詳細は実施例に記載する。
【0019】
R
2は、炭素数8〜10の直鎖又は分岐鎖のアルキル基である。炭素数8〜10の直鎖又は分岐鎖のアルキル基としては、2−エチルヘキシル基、n−オクチル基、n−ノニル基、2,4,4−トリメチルペンチル基、2,6−ジメチルヘプチル基、n−デシル基等が挙げられる。これらの中でも、2−エチルへキシル基及びn−デシル基が好ましく、n−デシル基がより好ましい。上記一般式(IV)において複数あるR
2は、互いに同一であっても、異なっていてもよいが、互いに同一であることが好ましい。
【0020】
AOは、炭素数2〜4のオキシアルキレン基である。Aは、炭素数2〜4の直鎖状または分枝状のアルキレン基であり、エチレン基、n−プロピレン基、プロピレン基(−CH
2−CH(CH
3)−)、n−ブチレン基、1−メチルプロピレン基(−CH
2−CH
2−CH(CH
3)−)、2−メチルプロピレン基(−CH
2−CH(CH
3)−CH
2−)、ジメチルエチレン基(−CH
2−C(CH
3)
2−)、エチルエチレン基(−CH
2−CH(CH
2CH
3)−)、等が挙げられる。また、Aにおいて、(AO)
mの主鎖を構成する部分の炭素数は2以下であることが好ましい。すなわち、Aは、エチレン基、プロピレン基およびエチルエチレン基からなる群より選択される少なくとも1種を有することが好ましい。AOの平均付加モル数を示すmは、2〜4であり、3〜4が好ましく、3がより好ましい。一般式(III)においてAOは互いに同一であっても、異なっていてもよく、その付加形式は、ホモ、ランダム、ブロック及び交互のいずれでもよいが、互いに同一でありホモ形式であることが好ましい。AOとしては、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシエチレン基とオキシプロピレン基との組み合わせが好ましく、オキシエチレン基がより好ましい。
【0021】
M
+はNa
+、K
+、NH
4+、又はH
+であり、Na
+が好ましい。上記一般式(III)において複数あるM
+は、互いに同一であっても、異なってもよいが、互いに同一であることが好ましい。
上記一般式(III)で表される化合物と上記一般式(IV)で表される化合物との間で、R
2、AO、AOの付加形式、m、及びM
+はそれぞれ独立に選択されるが、上記一般式(III)で表される化合物におけるR
2と上記一般式(IV)で表される化合物におけるR
2とは同一であることが好ましく、上記一般式(III)で表される化合物におけるAO、m及びその付加形式と上記一般式(IV)で表される化合物におけるAO、m及びその付加形式とは同一であることが好ましく、上記一般式(III)で表される化合物におけるM
+と上記一般式(IV)で表される化合物におけるM
+とは同一であることが好ましい。
農薬用水面拡展剤は、他の成分を含んでいてもよいが、上記一般式(III)で表される化合物及び上記一般式(IV)で表される化合物のみからなる、又は上記一般式(III)で表される化合物のみからなることが好ましい。
【0022】
上記一般式(III)で表される化合物は、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルとポリリン酸とを反応させることによりM
+=H
+の場合が製造でき、それ以外の場合は、その後さらに中和することにより製造することができる。上記一般式(IV)で表される化合物は、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルと五酸化二リンとを反応させた後、アルカリで加水分解し、その後、M
+=H
+以外の場合は、中性水で水洗精製することにより、M
+=H
+の場合は、酸性水で水洗精製することにより製造することができる。詳細は実施例に記載する。
【0023】
農薬用水面拡展剤は、農薬有効成分とともに、水田に投下されて使用される。本発明の農薬用水面拡展剤は、水面拡展距離、水面拡展速度及び水面を凝集することなく分散する能力が優れるため、農薬を凝集させることなく、農薬が沈降前に素早く農薬の投下地点から離れた場所に拡展させることができるので、農薬が水田に局所的に固まることなく均一に分散され、農薬の効果、及び人体への安全性の観点から好ましい。
【0024】
<農薬組成物>
農薬組成物は、上記本発明の第1の態様の農薬用水面拡展剤又は第2の態様の農薬用水面拡展剤と農薬有効成分とを含む。このような農薬組成物は、水面浮遊型農薬組成物とも言われる。
農薬の有効成分としては、農薬として使用されているものであれば、特に制限はなく用いることができる。例えば「農薬ハンドブック」(2016年版 一般社団法人 日本植物防疫協会)に記載の農薬が参照される。
【0025】
農薬組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、浮遊助剤、増量剤、分散剤、他の界面活性剤、溶媒等を含むことができる。
浮遊助剤としては、公知の無機浮遊助剤、有機浮遊助剤が挙げられ、無機浮遊助剤としては、中空シラス、発泡シラス、発泡軽石、発泡パーライト、焼成バーミュライト、中空ガラス等が挙げられる。有機浮遊助剤としては、ろう状物質、パラフィンワックス、コルク、木粉、発泡合成樹脂、合成樹脂中空体、合成樹脂粉末等が挙げられる。増量剤としては、分散性のよい鉱物質微粉末担体を用いることができる。鉱物質微粉末担体としては、塩化カリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸アンモニウム、硫酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸ナトリウム等の無機塩、珪藻土、はくとう土、ベントナイト、パイロフィライト系クレー及びカオリナイト系クレー等が挙げられる。その他増量剤としては、樹脂、糖類、澱粉、木粉、米糠、ふすま、モミガラ等も用いることができる。分散剤としては、ポリアクリル酸ナトリウム塩、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩、ホワイトカーボン等が挙げられる。
他の界面活性剤としては、非イオン界面活性剤、アニオン界面活性剤等が挙げられる。溶媒としては、水が挙げられる。
これらは1 種単独で用いても、2 種以上を混合して用いてもよい。
なお、本明細書では、農薬用水面拡展剤にこれら任意成分、例えば浮遊助剤、増量剤、分散剤を含む組成物であって農薬有効成分を含まないものを農薬用水面拡展製剤ともいう。
【0026】
農薬組成物の製造方法としては、公知の方法を採用できる。例えば、本発明の第1の態様においては、上記一般式(I)で表される化合物、上記一般式(II)で表される化合物、農薬有効成分及び任意成分を混合したものに、水を加えて混練し、適切な大きさとした後、100℃未満の温度で乾燥させることにより製造することができる。本発明の第2の態様においては、上記一般式(III)で表される化合物、上記一般式(IV)で表される化合物、農薬有効成分及び任意成分を混合したものに、水を加えて混練し、適切な大きさとした後、100℃未満の温度で乾燥させることにより製造することができる。
農薬組成物の剤型としては、錠剤、粒剤、並びに農薬組成物を水溶性フィルムに包んだ剤型等が挙げられる。
粒剤の形状は、特に制限されないが、粒状、紐状等が挙げられる。
農薬組成物中の各成分の組成比は、特に制限されないが、上記一般式(I)及び(II)で表される化合物の合計、又は上記一般式(III)及び(IV)で表される化合物の合計を、好ましくは0.1〜20重量%、より好ましくは0.2〜10重量%含み、農薬有効成分を、好ましくは0.1〜80重量%、より好ましくは1〜50重量%含む。上記任意成分を含む場合は、浮遊助剤は、好ましくは1〜80重量%、より好ましくは10〜50重量%、増量剤は、好ましくは1〜80重量%、より好ましくは5〜60重量%、分散剤は、好ましくは0.1〜10重量%、より好ましくは1〜7重量%含む。
農薬用水面拡展製剤中の各成分の組成比は、特に制限されないが、上記一般式(I)及び(II)で表される化合物の合計、又は上記一般式(III)及び(IV)で表される化合物の合計を、好ましくは0.1〜10重量%、より好ましくは0.5〜5重量%を含み、上記任意成分を含む場合は、浮遊助剤は、好ましくは35〜55重量%、増量剤は、好ましくは30〜55重量%、分散剤は、好ましくは1〜10重量%含む。
【実施例】
【0027】
以下、本発明を実施例及び比較例により更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例により限定されるものではない。
実施例において、モノエステルとは、上記一般式(I)及び(III)のリン酸モノエステル塩を称し、ジエステルとは、上記一般式(II)及び(IV)のリン酸ジエステル塩を称し、比較例においても、それらに対応して称される。
【0028】
<ポリオキシエチレンアルキルエーテルの合成>
[合成例1]
n−ヘキサノール102質量部及び水酸化カリウム2質量部をオートクレーブに仕込み、150℃まで昇温した後、エチレンオキシド44質量部を0.5MPa以下の条件にて圧入し、5時間反応させ、オキシエチレンの平均付加モル数1のポリオキシエチレンヘキシルエーテルを得た。
【0029】
[合成例2]
エチレンオキシドの量を88質量部とした以外は、合成例1と同様にしてオキシエチレンの平均付加モル数2のポリオキシエチレンヘキシルエーテルを得た。
【0030】
[合成例3]
エチレンオキシドの量を132質量部とした以外は、合成例1と同様にしてオキシエチレンの平均付加モル数3のポリオキシエチレンヘキシルエーテルを得た。
【0031】
[合成例4]
エチレンオキシドの量を176質量部とした以外は、合成例1と同様にしてオキシエチレンの平均付加モル数4のポリオキシエチレンヘキシルエーテルを得た。
【0032】
[合成例5]
2−エチルヘキサノール130質量部及び水酸化カリウム2質量部をオートクレーブに仕込み、150℃まで昇温した後、エチレンオキシド44質量部を0.5MPa以下の条件にて圧入し、5時間反応させ、オキシエチレンの平均付加モル数1のポリオキシエチレン2−エチルヘキシルエーテルを得た。
【0033】
[合成例6]
エチレンオキシドの量を88質量部とした以外は、合成例5と同様にしてオキシエチレンの平均付加モル数2のポリオキシエチレン2−エチルヘキシルエーテルを得た。
【0034】
[合成例7]
エチレンオキシドの量を132質量部とした以外は、合成例5と同様にしてオキシエチレンの平均付加モル数3のポリオキシエチレン2−エチルヘキシルエーテルを得た。
【0035】
[合成例8]
エチレンオキシドの量を176質量部とした以外は、合成例5と同様にしてオキシエチレンの平均付加モル数4のポリオキシエチレン2−エチルヘキシルエーテルを得た。
【0036】
[合成例9]
n−デカノール158質量部及び水酸化カリウム2質量部をオートクレーブに仕込み、150℃まで昇温した後、エチレンオキシド44質量部を0.5MPa以下の条件にて圧入し、5時間反応させ、オキシエチレンの平均付加モル数1のポリオキシエチレンデシルエーテルを得た。
【0037】
[合成例10]
エチレンオキシドの量を88質量部とした以外は、合成例9と同様にしてオキシエチレンの平均付加モル数2のポリオキシエチレンデシルエーテルを得た。
【0038】
[合成例11]
エチレンオキシドの量を132質量部とした以外は、合成例9と同様にしてオキシエチレンの平均付加モル数3のポリオキシエチレンデシルエーテルを得た。
【0039】
[合成例12]
エチレンオキシドの量を176質量部とした以外は、合成例9と同様にしてオキシエチレンの平均付加モル数4のポリオキシエチレンデシルエーテルを得た。
【0040】
[合成例13]
エチレンオキシドの量を220質量部とした以外は、合成例9と同様にしてオキシエチレンの平均付加モル数5のポリオキシエチレンデシルエーテルを得た。
【0041】
[合成例14]
n−ドデカノール186質量部及び水酸化カリウム2質量部をオートクレーブに仕込み、150℃まで昇温した後、エチレンオキシド88質量部を0.5MPa以下の条件にて圧入し、5時間反応させ、オキシエチレンの平均付加モル数2のポリオキシエチレンドデシルエーテルを得た。
【0042】
[合成例15]
n−ブタノール74質量部及び水酸化カリウム2質量部をオートクレーブに仕込み、150℃まで昇温した後、エチレンオキシド88質量部を0.5MPa以下の条件にて圧入し、5時間反応させ、オキシエチレンの平均付加モル数2のポリオキシエチレンブチルエーテルを得た。
【0043】
<リン酸エステルの合成>
[合成例A:モノエステルとジエステルとのモル比=100:0の合成]
合成例1〜15で得られたポリオキシエチレンアルキルエーテルのそれぞれとポリリン酸とを反応させた。その後、水を加えて未反応ポリリン酸を加水分解した後、加熱して窒素を吹き込んで脱水し、ろ過した。ろ液中のモノエステルとジエステルとのモル比を後述する電位差滴定法により測定し、所定のモル比であることを確認した後、水酸化ナトリウムで中和し、目的物を得た。
エチレンオキシドの平均付加モル数が0の化合物については、ポリオキシエチレンアルキルエーテルの代わりにn−ヘキサノール、2−エチルヘキサノール又はn−デカノールを用いた以外は同様にして、目的物を得た。
【0044】
[合成例B:モノエステルとジエステルとのモル比=50:50の合成]
合成例1〜15で得られたポリオキシエチレンアルキルエーテルのそれぞれと五酸化二リンとを反応させて、モノエステルとジエステルとのモル比を後述する電位差滴定法により測定し、所定のモル比であることを確認した後、水酸化ナトリウムで中和し、目的物を得た。
【0045】
[合成例C:モノエステルとジエステルとのモル比=0:100の合成]
合成例1〜15で得られたポリオキシエチレンアルキルエーテルのそれぞれと五酸化二リンとを反応させたものに水と水酸化ナトリウムを加えて、モノエステルを加水分解した後、後述する液体クロマトグラフィーによりモノエステルのピークが存在しないのを確認した後、水洗精製して目的物を得た。
【0046】
[合成例D:モノエステルとジエステルとのモル比=90:10、75:25、60:40、40:60及び25:75(モル比)の合成]
合成例A、B及びCで得られた、モノエステルとジエステルとのモル比=100:0、50:50及び0:100の混合物を所定のモル比になるように混合して目的物を得た。
【0047】
[実施例1〜37、比較例1〜43]
合成例A〜Dで得られたモノエステル、ジエステル及びモノエステルとジエステルとの混合物を用いて以下の調製例にしたがって、農薬用水面拡展製剤を調製した。
<<農薬用水面拡展製剤の調製>>
以下の処方を基に、中空シラス、はくとう土、ベントナイト、ポリアクリル酸ナトリウムを秤量し、プラスチック容器で混合して混合粉を調製した。混合粉にモノエステル及びジエステルを加え、乳鉢で混合したものに、イオン交換水を添加し、更に混練し、粘度状物を得た。この粘度状物を、0.8mm径の網で押出し、70℃の恒温槽にて1日乾燥し、粒状の農薬用水面拡展製剤を得た。
【0048】
【表1】
【0049】
<モノエステルとジエステルとのモル比の測定方法>
(1)電位差滴定
電位差滴定の方法は試料0.5gを水100mlに溶解し、1/2規定の水酸化ナトリウム水溶液で滴定を行った。
得られた第1当量点及び第2当量点から以下のようにして求めた。
モノエステル比 =(第2当量点 − 第1当量点)/ 第1当量点 × 100(%)
ジエステル比 = 100− モノエステル比(%)
(2)液体クロマトグラフィー
試料0.2gを下記溶離液10mlで溶解して、以下の条件で測定した。
カラム:Inertsil ODS−3(46×250mm)(ジーエルサイエンス株式会社製)
溶離液:10mMリン酸二水素カリウム アセトニトリル/水=50/50混合液
流速:1ml/分
温度:40℃
検出器:示差屈折計
【0050】
<評価方法>
プラスチック容器(縦10cm、横250cm)に、水道水を水深2cmとなるように溜めた。
上記の通り調製した農薬用水面拡展製剤0.2gを、この容器に投入して、以下の評価を行なった。
1.拡展距離
農薬用水面拡展製剤を水面に投入して120秒後に拡展した先端の位置について、投入位置からの距離を測定した。測定は3回行ない、その平均値を下記の基準で評価した。
◎:200cm以上
○:150cm以上200cm未満
△:100cm以上150cm未満
×:100cm未満
【0051】
2.拡展速度
農薬用水面拡展製剤を水面に投入して10秒後の拡展距離を1と同様にして測定し、下記の計算式により拡展速度を算出した。
測定は3回行ない、その平均値から下記の基準で評価した。
計算式:拡展速度(cm/秒)=10秒後の拡展距離(cm)/10(秒)
◎:8cm/秒以上
○:6cm/秒以上8cm/秒未満
△:4cm/秒以上6cm/秒未満
×:4cm/秒未満
【0052】
3.拡展状態
農薬用水面拡展製剤を水面に投入して、投入した直後の拡展状態を目視にて観察し、下記の基準で評価した。
○:
図1に示すように、農薬用水面拡展製剤の粒が凝集することなく、1粒ずつ分散しながら拡展する。
△:
図2に示すように、農薬用水面拡展製剤の粒の一部が凝集した状態で、拡展する。
×:
図3に示すように、ほとんどの農薬用水面拡展製剤の粒が凝集し、拡展せず、一部の凝集していない粒だけが拡展する。
【0053】
実施例及び比較例の結果を表2及び表3に示す。表2及び3中、R
1、R
2、n及びmは、上記一般式(I)〜(IV)の構造で示された内容に対応する。表2及び表3中、R
1及びR
2の炭素数4はn−ブチル基、炭素数6は、n−ヘキシル基、炭素数8は、2−エチルヘキシル基、炭素数10は、n−デシル基、炭素数12は、n−ドデシル基を示す。AOはオキシエチレン基である。
【表2】
【0054】
【表3】
【0055】
表2、表3において、拡展距離、拡展速度及び拡展状態のすべての評価項目が○以上であったものを実施例とした。
実施例2及び3と比較例1及び2とを比較すると、R
1の炭素数が6であり、オキシエチレン基の平均付加モル数が2又は3である場合、モノエステルとジエステルとのモル比が、70:30よりも、モノエステルの割合が多いと、拡展距離及び拡展速度が悪くなることがわかる。
【0056】
実施例19〜27と比較例25〜32とを比較すると、モノエステルとジエステルとのモル比が、30:70よりも、モノエステルの割合が少ないと、拡展距離、拡展速度は良いものの、拡展状態が悪く、農薬の局在化につながる。
【0057】
実施例1〜27と比較例4〜24を比較すると、モノエステルとジエステルとのモル比が、30:70〜70:30の範囲では、R
1の炭素数が6〜10、オキシエチレン基の平均付加モル数が1〜3であると、拡展距離、拡展速度及び拡展状態のすべての評価がよい。それに対してオキシエチレン基の平均付加モル数が1未満であると、拡展距離が悪くなり、オキシエチレン基の平均付加モル数が3を超えると、拡展距離及び拡展速度が悪くなる、又は拡展状態が悪くなる。また、R
1の炭素数が6未満であると、拡展距離、拡展速度及び拡展状態のすべての評価が悪く、R
1の炭素数が10を超えると、拡展距離及び拡展速度が悪い。
【0058】
実施例28〜37と比較例1〜3及び34〜43とを比較すると、モノエステルとジエステルとのモル比が、70超:30未満〜100:0の範囲では、R
2の炭素数が8〜10、オキシエチレン基の平均付加モル数が2〜4であると、拡展距離、拡展速度及び拡展状態のすべての評価がよい。それに対してオキシエチレン基の平均付加モル数が2未満であると、拡展距離及び拡展速度が悪くなり、オキシエチレン基の平均付加モル数が4を超えると、拡展距離及び拡展速度が悪くなる。また、R
2の炭素数が8未満であると、拡展距離及び拡展速度が悪く、R
2の炭素数が10を超えると、拡展距離及び拡展速度が悪い。
【0059】
一般式(I)及び(II)において、R
1が2−エチルヘキシル基、AOがオキシエチレン基であり、nが2であり、モノエステルとジエステルとのモル比=50:50の混合物について、表1にしたがって、農薬用水面拡展製剤を調製し、M
+の違いによる効果を表4の通り確認した。
【0060】
【表4】
なお、M
+=NH
4+、N−エチル−N−ヒドロキシエチルアンモニウムカチオン及びN−メチル−N−ヒドロキシエチルアンモニウムカチオンの例は、合成例Bにおいて、水酸化ナトリウムの代わりに、それぞれ水酸化アンモニウム、N−エチル−N−ヒドロキシエチルアミン、N−メチル−N−ヒドロキシエチルアミンを用いて中和することにより調製した。
表4の結果から、M
+としてNa
+、NH
4+を用いると、N−エチル−N−ヒドロキシエチルアンモニウムカチオン、N−メチル−N−ヒドロキシエチルアンモニウムカチオンを用いた場合よりも、拡展距離に優れる。