(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6808835
(24)【登録日】2020年12月11日
(45)【発行日】2021年1月6日
(54)【発明の名称】航跡予測装置、航跡予測方法、および、航跡予測プログラム
(51)【国際特許分類】
G01C 21/16 20060101AFI20201221BHJP
G01S 15/60 20060101ALI20201221BHJP
G01S 19/42 20100101ALI20201221BHJP
G01S 19/53 20100101ALI20201221BHJP
G08G 3/02 20060101ALI20201221BHJP
【FI】
G01C21/16
G01S15/60
G01S19/42
G01S19/53
G08G3/02 A
【請求項の数】20
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2019-526709(P2019-526709)
(86)(22)【出願日】2018年5月29日
(86)【国際出願番号】JP2018020513
(87)【国際公開番号】WO2019003758
(87)【国際公開日】20190103
【審査請求日】2019年11月29日
(31)【優先権主張番号】特願2017-128510(P2017-128510)
(32)【優先日】2017年6月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000166247
【氏名又は名称】古野電気株式会社
(72)【発明者】
【氏名】中村 拓
(72)【発明者】
【氏名】戸田 裕行
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 奈緒美
(72)【発明者】
【氏名】肥野 明大
【審査官】
久保田 創
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−194806(JP,A)
【文献】
実開昭60−111214(JP,U)
【文献】
特開2015−25671(JP,A)
【文献】
特開2014−145614(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0210865(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 21/16
G01S 15/60
G01S 19/42
G01S 19/53
G08G 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体の姿勢角、対地進路、および、対地船速から水平対地速度を算出する水平対地速度算出部と、
前記移動体の角速度を計測または算出する角速度算出部と、
現在時刻から予測時刻までの時間と前記水平対地速度とを用い、前記角速度が前記回動検出閾値を超えていれば前記角速度の積分演算を用いて予測位置を算出する予測位置算出部と、
を備える、航跡予測装置。
【請求項2】
請求項1に記載の航跡予測装置であって、
前記予測位置算出部は、
前記角速度が回動検出閾値以下であれば前記角速度を用いずに予測位置を算出する、
航跡予測装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の航跡予測装置であって、
測位信号の搬送波位相を用いて、前記姿勢角を算出する姿勢角算出部を備える、航跡予測装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の航跡予測装置であって、
測位信号の搬送波位相を用いて、前記対地進路を算出する対地進路算出部を備える、航跡予測装置。
【請求項5】
請求項3に記載の航跡予測装置であって、
前記姿勢角算出部は、前記姿勢角における少なくともヨー角を算出する、
航跡予測装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の航跡予測装置であって、
前記角速度算出部は、
測位信号の搬送波位相または慣性センサの出力を用いて前記角速度を算出する、
航跡予測装置。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の航跡予測装置であって、
前記予測位置算出部は、複数の前記予測時刻に対する予測位置を算出して、これらを繋ぐ予測航跡を算出する、
航跡予測装置。
【請求項8】
請求項7に記載の航跡予測装置であって、
前記予測位置と前記予測航跡とを表示する表示部を備える、
航跡予測装置。
【請求項9】
移動体の姿勢角、対地進路、および、対地船速から水平対地速度を算出し、
前記移動体の角速度を計測または算出し、
現在時刻から予測時刻までの時間と前記水平対地速度とを用い、前記角速度が前記回動検出閾値を超えていれば前記角速度の積分演算を用いて予測位置を算出する、
航跡予測方法。
【請求項10】
請求項9に記載の航跡予測方法であって、
前記予測位置を算出するときに、前記角速度が回動検出閾値以下であれば前記角速度を用いずに前記予測位置を算出する、
航跡予測方法。
【請求項11】
請求項9または請求項10に記載の航跡予測方法であって、
測位信号の搬送波位相を用いて、前記姿勢角を算出する、
航跡予測方法。
【請求項12】
請求項9乃至請求項11のいずれかに記載の航跡予測方法であって、
測位信号の搬送波位相を用いて、前記対地進路を算出する、
航跡予測方法。
【請求項13】
請求項11に記載の航跡予測方法であって、
前記姿勢角を算出する際に、前記姿勢角における少なくともヨー角を算出する、
航跡予測方法。
【請求項14】
請求項9乃至請求項13のいずれかに記載の航跡予測方法であって、
前記角速度を算出する際に、
測位信号の搬送波位相または慣性センサの出力を用いて前記角速度を算出する、
航跡予測方法。
【請求項15】
移動体の姿勢角、対地進路、および、対地船速から水平対地速度を算出し、
前記移動体の角速度を計測または算出し、
現在時刻から予測時刻までの時間と前記水平対地速度とを用い、前記角速度が前記回動検出閾値を超えていれば前記角速度の積分演算を用いて前記予測位置を算出する、
処理を、演算処理器に実行させる、航跡予測プログラム。
【請求項16】
請求項15に記載の航跡予測プログラムであって、
前記予測位置を算出するときに、前記角速度が回動検出閾値以下であれば前記角速度を用いずに前記予測位置を算出する、
処理を、前記演算処理器に実行させる、航跡予測プログラム。
【請求項17】
請求項15または請求項16に記載の航跡予測プログラムであって、
測位信号の搬送波位相を用いて、前記姿勢角を算出する、
処理を、前記演算処理器に実行させる、航跡予測プログラム。
【請求項18】
請求項15乃至請求項17のいずれかに記載の航跡予測プログラムであって、
測位信号の搬送波位相を用いて、前記対地進路を算出する、
処理を、前記演算処理器に実行させる、航跡予測プログラム。
【請求項19】
請求項17に記載の航跡予測プログラムであって、
前記姿勢角を算出する際に、前記姿勢角における少なくともヨー角を算出する、
処理を、前記演算処理器に実行させる、航跡予測プログラム。
【請求項20】
請求項15乃至請求項19のいずれかに記載の航跡予測プログラムであって、
前記角速度を算出する際に、
測位信号の搬送波位相または慣性センサの出力を用いて前記角速度を算出する、
処理を、前記演算処理器に実行させる、航跡予測プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体の移動位置を予測する航跡予測装置、航跡予測方法、および、航跡予測プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、予測航跡を表示する機能を有する航法装置が各種考案され、実用化されている。従来の航法装置は、現在時刻から予測先時刻迄の時間に、現在の速度を乗じることで距離を算出する。従来の航法装置は、この算出した距離を現在位置に加算することで、予測位置を算出する。そして、従来の航法装置は、この予測位置の算出を順次繰り返すことによって、予測航跡を算出する。
【0003】
このような航法装置として、特許文献1に記載の航法装置(船舶用表示装置)は、さらに、加速度の二重積分を用いて、予測位置を算出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第0428636号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の航法装置では、時間の2乗の1/2乗値に、加速度を乗じた値を用いるため、加速度の観測誤差等によるノイズ成分が増大してしまう。これにより、予測位置および予測航跡の誤差が大きくなってしまう。
【0006】
したがって、本発明の目的は、予測位置を高精度に算出する航跡予測装置、航跡予測方法、および、航跡予測プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の航跡予測装置は、水平対地速度算出部、角速度算出部、および、予測位置算出部を備える。水平対地速度算出部は、移動体の姿勢角、対地進路、および、対地船速から水平対地速度を算出する。角速度算出部は、移動体の角速度を計測または算出する。予測位置算出部は、現在時刻から予測先時刻までの時間と水平対地速度とを用い、角速度が回動検出閾値を超えていれば角速度の積分演算を用いて予測位置を算出する。
【0008】
この構成では、予測位置は、移動体が回転運動を行っている時には、取得された角速度の積分値を用いて算出される。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、予測位置を高精度に算出できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る航跡予測装置のブロックである。
【
図2】本発明の第1の実施形態の予測位置の算出概念を説明するための図である。
【
図3】本実施形態の航跡予測装置と比較例の航跡予測装置との航跡予測結果をシミュレーションした図である。
【
図4】本実施形態の航跡予測装置と比較例の航跡予測装置との実航跡に対する予測航跡の標準偏差を示した図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る航跡予測のフローチャートである。
【
図6】本発明の実施形態に係る予測位置の算出のフローチャートである。
【
図7】本発明の第2の実施形態に係る航跡予測装置のブロックである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の第1の実施形態に係る航跡予測装置、航跡予測方法、および、航跡予測プログラムについて、図を参照して説明する。なお、以下では、移動体として船舶を用いる態様を示すが、他の水上、水中移動体、陸上移動体、または、空中移動体にも、本願発明の構成は適用できる。
【0012】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る航跡予測装置のブロックである。
図2は、本発明の第1の実施形態の予測位置の算出概念を説明するための図である。
【0013】
図1に示すように、航跡予測装置10は、現在位置算出部20、角速度算出部30、姿勢角算出部40、対地進路算出部50、対地船速算出部60、水平対地速度算出部70、および、予測位置算出部80を備える。
【0014】
現在位置算出部20は、航跡予測装置10が装備される移動体の現在位置Pを算出する。現在位置P(0)は、緯度成分Plat(0)と経度成分Plon(0)とを有する。現在位置算出部20は、例えば、測位信号のコード擬似距離等を用いて、ECEF直交座標系の現在位置Pec(0)を算出する。現在位置算出部20は、船体に装着された少なくとも1個のアンテナで受信した測位信号を用いて、現在位置Pec(0)を算出する。現在位置算出部20は、ECEF直交座標系とENU座標系との座標変換行列を用いて、ECEF直交座標系の現在位置Pec(0)を、ENU座標系の現在位置Pに変換し、現在位置Pの緯度成分Plat(0)と経度成分Plon(0)とを算出する。現在位置算出部20は、現在位置P(0)を、予測位置算出部80に出力する。
【0015】
角速度算出部30は、船体の角速度ω(t)を算出する。角速度算出部30は、一例として、慣性センサであるジャイロセンサ等であり、角速度ω(t)を計測して出力する。角速度算出部30は、また別の一例として、測位信号の搬送波位相差を用いて角速度ωを算出する。この場合、角速度算出部30は、移動体の異なる位置に配置された少なくとも2個のアンテナで受信した搬送波位相の差を用いて、角速度ω(t)を算出する。角速度算出部30は、角速度ω(t)を、予測位置算出部80に出力する。搬送波位相を用いることによって、簡素な構成で、高精度な角速度が得られる。
【0016】
姿勢角算出部40は、船体の姿勢角を算出する。姿勢角は、通常、ピッチ角φ(t)、ロール角θ(t)、および、ヨー角ψ(t)で構成されている。姿勢角算出部40は、少なくともヨー角ψ(t)を算出する。姿勢角算出部40は、角速度算出部30と、慣性センサの計測値または搬送波位相差を用いて、少なくともヨー角ψ(t)を含む姿勢角を算出する。なお、姿勢角算出部40は、角速度算出部30で算出された角速度からヨー角ψ(t)を算出してもよい。搬送波位相を用いることによって、簡素な構成で、高精度な姿勢角が得られる。
【0017】
対地進路算出部50は、船体の姿勢角等を用いて、対地進路COG(t)を算出する。対地進路算出部50は、対地進路COG(t)を、水平対地速度算出部70に出力する。
【0018】
対地船速算出部60は、ドップラソナーの出力等を用いて、対地船速SOG(t)を算出する。対地船速算出部60は、対地船速SOG(t)を、水平対地速度算出部70に出力する。
【0019】
水平対地速度算出部70は、次に示す方法を用いて、船体座標系の水平対地速度Vb(t)を算出する。水平対地速度Vb(t)は、ベクトル量であり、x方向成分Vbx(t)と、y方向成分Vby(t)とから構成されている。x方向とは、
図2に示すように船舶100の船首方向に平行な成分であり、船尾から船首に向く方向を正方向とする。y方向とは、船首方向(x方向)に直交し、左舷から右舷に向く方向を正の方向とする。
【0020】
図2に示すように、水平対地速度Vb(t)のx方向成分Vbx(t)とy方向成分Vby(t)とは、偏角β(t)として、次式から得られる。
【0021】
Vbx(t)=SOG(t)・cosβ(t) −(式1)
Vby(t)=SOG(t)・sinβ(t) −(式2)
【0022】
ここで、偏角βは、対地進路COGとヨー角ψから次式で得られる。
【0023】
β(t)=COG(t)−ψ(t) −(式3)
【0024】
水平対地速度算出部70は、次式を用いて、ENU座標系の水平対地速度Vn(t)を算出する。
【0025】
図2に示すように、ENU座標系(NED座標系)の水平対地速度Vn(t)と船体座標系の水平対地速度Vb(t)とは、ヨー角ψ(t)を2個の座標系の成す角とする関係にある。したがって、ENU座標系(NED座標系)の水平対地速度Vn(t)のノース方向成分VnN(t)とイースト方向成分VnE(t)とは、船体座標系の水平対地速度Vb(t)のx方向成分Vbx(t)とy方向成分Vby(t)、および、ヨー角ψ(t)から算出される。
【0026】
VnN(t)=Vbx(t)・cosψ(t)−Vby(t)・sinψ(t)
−(式4)
VnE(t)=Vbx(t)・sinψ(t)+Vby(t)・cosψ(t)
−(式5)
【0027】
水平対地速度算出部70は、ENU座標系の水平対地速度Vn(t)=(VnN(t)、VnE(t))を、予測位置算出部80に出力する。
【0028】
予測位置算出部80は、次の方法を用いて、予測時刻τの予測位置P(τ)を算出する。
【0029】
時刻tにおいて、予測位置P(t)=(Plat(t)、Plon(t))と、水平対地速度Vn(t)=(VnN(t)、VnE(t))との間には、以下の関係が成り立つ。
【0030】
dPlat(t)/dt=VnN(t) −(式6)
dPlon(t)/dt=VnE(t) −(式7)
【0031】
また、予測時刻のヨー角ψ(τ)は、初期時刻のヨー角ψ(0)と、初期時刻t=0から予測時刻t=τまでの角速度ω(t)の積分演算とを用いて得られる。船舶100が定常旋回すると想定すると、初期時刻t=0から予測時刻t=τまで、ω(t)は一定値ωとなる。したがって、予測時刻のヨー角ψ(τ)は次式で得られる。
【0032】
ψ(τ)=ψ(0)+ω・τ −(式8)
【0033】
また、予測位置算出部80は、角速度ωから、船舶100が並進運動中か回転運動中かを判断する。予測位置算出部80は、それぞれの場合に応じて、P(τ)=(Plat(τ)、Plon(τ))を算出する。
【0034】
予測位置算出部80は、回転運動中、すなわち、ヨー角ψ(τ)が、回動検出閾値を超えていれば、予測位置(式6)、(式7)の積分演算を用いて、予測位置P(τ)=(Plat(τ)、Plon(τ))を算出する。
【0035】
Plat(τ)=Plat(0)+(積分演算(VnN))
=Plat(0)+(VnN(0)・sinωτ)/ω−(VnE(0)・(1−cosωτ))/ω −(式9)
Plon(τ)=Plon(0)+(積分演算(VnE))
=Plon(0)+(VnN(0)・(1−cosωτ))/ω−(VnE(0)・sinωτ)/ω −(式10)
【0036】
すなわち、予測位置算出部80は、船舶100が回転運動中であれば、回頭方向の加速度である角速度の積分値を含む演算を用いて、予測位置P(τ)を算出する。
【0037】
一方、予測位置算出部80は、並進運動中、すなわち、ヨー角ψ(τ)が、回動検出閾値以下であれば、加速度(角速度)を用いない次の演算を用いて、予測位置P(τ)を算出する。
【0038】
Plat(τ)=Plat(0)+VnN(0)・τ −(式11)
Plon(τ)=Plon(0)+VnE(0)・τ −(式12)
【0039】
予測位置算出部80は、算出した予測位置P(τ)=(Plat(τ)、Plon(τ))を出力する。また、予測位置算出部80は、この予測位置P(τ)の算出を、継続的に実行していき、複数の時刻τでの予測位置P(τ)を算出する。そして、予測位置算出部80は、これら複数の時刻τでの予測位置P(τ)を繋ぐことで、予測航跡を得ることができる。
【0040】
このような構成および処理を用いることによって、航跡予測装置10は、船舶100の挙動に応じて、予測位置P(τ)の算出への不必要な加速度項の利用を抑制できる。これにより、当該加速度項を用いることによる誤差の増加は抑制される。したがって、航跡予測装置10は、予測位置P(τ)を高精度に算出できる。さらに、速度センサ、角速度センサ等の慣性センサの船体での位置情報(重心位置からの船体座標)があれば船体の姿勢角から船体の重心位置に補正し、予測位置P(τ)をより高精度に算出できる。
【0041】
図3は、本実施形態の航跡予測装置と比較例の航跡予測装置との航跡予測結果をシミュレーションした図である。
図3(A)は、本願の構成を用いた予測航跡を示し、
図3(B)は、速度と速度の変化量とを常時用いた予測航跡を示し、
図3(C)は、速度のみを用いた予測航跡を示し、
図3(D)は、速度と加速度を常時用いた予測航跡を示す。
図3(A)、
図3(B)、
図3(C)、
図3(D)において、点線は実航跡を示し、実線は予測航跡を示す。
【0042】
図3(A)、
図3(B)、
図3(C)、
図3(D)に示すように、本実施形態に航跡予測装置10の構成を用いることで、実航跡と予測航跡との差を小さくできる。
【0043】
図4は、本実施形態の航跡予測装置と比較例の航跡予測装置との実航跡に対する予測航跡の標準偏差を示した図である。
図4(A)は、緯度における予測航跡の標準偏差を示し、
図4(B)は、経度における予測航跡の標準偏差を示す。
図4(A)、
図4(B)において、実線は、本願の予測航跡の標準偏差であり、点線は、速度のみを用いた予測航跡の標準偏差であり、一点鎖線は、速度と速度の変化量とを常時用いた予測航跡の標準偏差であり、二点鎖線は、速度と加速度を常時用いた予測航跡の標準偏差である。
【0044】
図4(A)、
図4(B)、
図4(C)、
図4(D)に示すように、本実施形態に航跡予測装置10の構成を用いることで、予測航跡の標準偏差を小さくできる。すなわち、実航跡に対する予測航跡の誤差を小さくできる。
【0045】
なお、上述の説明では、航跡予測装置10で実行する処理を複数の機能部によって実現する態様を示した。しかしながら、上述の複数の処理をプログラム化して記憶媒体に記憶しておき、コンピュータ等の演算処理器で、当該プログラムを読み出して実行してもよい。この場合、演算処理器は、
図5、
図6に示すフローチャートに応じた処理を実行すればよい。
【0046】
図5は、本発明の実施形態に係る航跡予測のフローチャートである。
図6は、本発明の実施形態に係る予測位置の算出のフローチャートである。なお、各処理の具体的な実現方法は、上述の各機能部の処理を同じであるので、説明は省略する。
【0047】
図5に示すように、演算処理器は、現在位置P(0)を算出する(S11)。演算処理器は、角速度ω(t)を算出する。演算処理器は、姿勢角のヨー角ψ(t)、対地進路COG(t)、および、対地船速SOG(t)を用いて、水平対地速度Vnを算出する(S13)。演算処理器は、現在位置P(0)、角速度ω、および、予測時刻τの水平対地速度Vn(τ)を用いて、予測位置P(τ)を算出する。
【0048】
より具体的には、
図6に示すように、演算処理器は、角速度ωが略0である、すなわち、回動検出閾値以下であることを検出すると(S41:YES)、加速度を用いずに、予測位置P(τ)を算出する(S42)。演算処理器は、角速度ωが0と大きく異なっている、すなわち、回動検出閾値を超えていることを検出すると(S41:NO)、回頭方向の加速度である角速度を利用した積分演算で、予測位置P(τ)を算出する(S43)。
【0049】
次に、第2の実施形態に係る航跡予測装置、航跡予測方法、および、航跡予測プログラムについて、図を参照して説明する。
図7は、本発明の第2の実施形態に係る航跡予測装置のブロックである。
【0050】
図7に示すように、本発明の第2の実施形態に係る航跡予測装置10Aは、第1の実施形態に係る航跡予測装置10に対して、表示器90を追加した点において異なる。航跡予測装置10Aの他の構成は、航跡予測装置10と同様であり、同様の箇所の説明は省略する。
【0051】
予測位置算出部80は、算出した予測位置を表示器90に出力する。表示器90は、この予測位置を表示する。また、予測位置算出部80は、予測航跡を算出した場合、当該予測航跡を表示器90に出力する。表示器90は、予測航跡を表示する。
【0052】
このような構成とすることによって,予測位置や予測航跡を、オペレータが容易に視認できる。
【0053】
なお、上述の航跡予測装置10、10Aに対して、姿勢角算出部40、対地進路算出部50、および、対地船速算出部60は、別体であってもよい。さらに、航跡予測装置10、10Aに対して、現在位置算出部20、および、角速度算出部30は、別体であってもよい。
【符号の説明】
【0054】
10、10A:航跡予測装置
20:現在位置算出部
30:角速度算出部
40:姿勢角算出部
50:対地進路算出部
60:対地船速算出部
70:水平対地速度算出部
80:予測位置算出部
90:表示器
100:船舶