(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記軸方向にて前記第1フィン側を向く前記第3フィンの側面と先端面との間の角部の曲率半径は、前記軸方向にて前記第1フィン側を向く前記第2フィンの側面と先端面との間の角部の曲率半径より小さい、
請求項2又は3に記載のシール装置。
前記円弧状のフィンは、前記ケーシングの内周面から前記シュラウドへ向かって突出するフィンと、前記シュラウドから前記ケーシングの内周面へ向かって突出するフィンとが前記軸方向に交互に配置されている、
請求項8又は9に記載の回転機械。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して本開示の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本開示の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0012】
(蒸気タービン1の構成について)
図1は、幾つかの実施形態に係るシール装置を備える回転機械の一例としての蒸気タービンについて説明するための図である。
図1に示すように、蒸気タービンプラント10は、軸流回転機械である蒸気タービン1と、作動流体としての蒸気Sを蒸気供給源(不図示)から蒸気タービン1に供給する蒸気供給管12と、蒸気タービン1の下流側に接続されて蒸気を排出する蒸気排出管13とを備えている。
【0013】
図1に示すように、幾つかの実施形態に係る蒸気タービン1は、ケーシング2と、ケーシング2内で軸線AX周りに回転するロータ本体11と、ロータ本体11に接続されるロータ3と、ロータ本体11を軸線AX回りに回転可能に支持する軸受部4とを備えている。また、
図1に示す幾つかの実施形態に係る蒸気タービン1は、後で詳述するシール装置100を備えている。
【0014】
ロータ3は、ロータ本体11とタービン動翼30とを備えている。タービン動翼30は、複数の動翼本体31とシュラウド(チップシュラウド)34とを備える動翼列であり、軸線AX方向において、一定の間隔を持って複数列が配置される。
複数の動翼本体31は、それぞれケーシング2内で軸線AX周りに回転するロータ本体11から径方向に延びるように取り付けられ、ロータ本体11の周方向において間隔をあけて設けられている。複数の動翼本体31は、それぞれ径方向から見て翼型の断面を有する部材である。
シュラウド34は、複数の動翼本体31の各々の先端部(径方向外側の端部)に連なり各々の先端部を接続する環状のチップシュラウドである。
【0015】
ケーシング2は、ロータ3を外周側から覆うように設けられた概略筒状の部材である。ケーシング2には、ロータ本体11に向かって径方向内側に延在するように取り付けられる複数の静翼本体21が設けられている。静翼本体21は、ケーシング2の内周面25の周方向及び軸線AX方向に沿って複数配列される。複数の静翼本体21には、複数の静翼本体21の各々の先端部に連なる静翼環23が取り付けられている。
【0016】
ケーシング2の内部において、静翼本体21と動翼本体31が配列された領域は、作動流体である蒸気Sが流通する主流路20を形成する。
さらに、ケーシング2の内周面25とチップシュラウド34との間には空間が形成されており、この空間をキャビティ50と称する。なお、以下の説明では、ケーシング2内部の空間の面しているケーシング2の内側の面を内面250と称する。したがって、ケーシング2の内周面25は、内面250の一部である。
【0017】
図2A乃至
図2Cは、幾つかの実施形態に係るシール装置について説明するための図であり、周方向から見たチップシュラウド34の近傍を模式的に示している。
図3A乃至
図3Cは、幾つかの実施形態に係るシール装置について説明するための図であり、周方向から見たチップシュラウド34の近傍を模式的に示している。
図4A乃至
図4Cは、幾つかの実施形態に係るシール装置について説明するための図であり、周方向から見たチップシュラウド34の近傍を模式的に示している。
図5A乃至
図5Cは、幾つかの実施形態に係るシール装置について説明するための図であり、周方向から見たチップシュラウド34の近傍を模式的に示している。
図6は、幾つかの実施形態に係るシール装置について説明するための図であり、周方向から見たチップシュラウド34の近傍及びフィンの先端部の拡大図を模式的に示している。
【0018】
幾つかの実施形態に係るキャビティ50には、
図2A乃至
図2C、
図3A乃至
図3C、
図4A乃至
図4C、
図5A乃至
図5C、及び
図6に示すようにシール装置100が設けられている。実施形態のシール装置100は、互いの間に隙間を空けて軸方向に3本以上配列され、各々が周方向に沿って延在する円弧状のフィン(シールフィン)40を備える。すなわち、幾つかの実施形態に係るフィン40は、回転部材(シュラウド34)と静止部材(ケーシング2)との間の環状隙間(キャビティ50)に軸方向に複数設けられたシール部材である。
説明の便宜上、各図に示したフィン40は、互いの間に隙間を空けて軸方向に3本配列されているが、4本以上であってもよい。また、説明の便宜上、各図に示したフィン40について、軸方向上流側から順に第1フィン41、第2フィン42、及び第3フィン43とも称する。
【0019】
図1に示す幾つかの実施形態に係る蒸気タービン1は、後で詳述するシール装置100を備えているので、シール部(シール装置100)を通過する漏洩蒸気流SLの流量を抑制するとともに蒸気タービン1における自励振動の発生を抑制することができる。
【0020】
各図に示したフィン40は、は、軸方向にて最も外側に位置する2本の最外フィンのうちの一方である第1フィン41と、軸方向にて第1フィン41の隣に配置される第2フィン42と、軸方向にて第2フィン42を挟んで第1フィン41とは反対側に配置される少なくとも一つの第3フィン43と、を含む。
なお、第3フィン43は、軸方向にて最も外側に位置する2本の最外フィンのうちの他方であるとよい。幾つかの実施形態に係るフィン40が互いの間に隙間を空けて軸方向に4本以上配列されている場合、少なくとも最も軸方向下流側に配置されたフィン40が第3フィン43として後述する条件(a)又は(b)の少なくとも何れか一方を満たすとよい。すなわち、第3フィン43は、2本の最外フィンのうちの他方の最外フィンを含むとよい。
【0021】
各図に示したフィン40は、基端部40aから先端部40bに向かって径方向に延在するとともに、上述したように周方向に延在する部分円弧形状を有する部材である。より詳細には、フィン40は基端部40aから先端部40bに向かうに従って次第に軸線AX方向の厚みが減少する形状を有するように形成されている。
【0022】
各図に示したフィン40は、例えば
図2A、
図3A、
図4A、
図5A、及び
図6に示すように、ケーシング2の内周面25からシュラウド34へ向かって突出するフィン(例えば第1フィン41と第3フィン43)と、シュラウド34からケーシング2の内周面25へ向かって突出するフィン(例えば第2フィン42)とが軸方向に交互に配置されるようにしてもよい。
また、各図に示したフィン40は、例えば
図2B、
図3B、
図4B、及び
図5Bに示すように、ケーシング2の内周面25からシュラウド34へ向かって突出するように配置されてもよい。
各図に示したフィン40は、例えば
図2C、
図3C、
図4C、及び
図5Cに示すように、シュラウド34からケーシング2の内周面25へ向かって突出するように配置されてもよい。
【0023】
各図に示した幾つかの実施形態では、フィン40の先端部40bは、該先端部40bと対向するシュラウド34の外表面35との間、又は、ケーシング2の内周面25との間で微小な間隙(シール隙間)mを形成する。径方向における間隙mの寸法は、ケーシング2や動翼本体31の熱膨張量や、動翼本体31の遠心伸び量等を考慮して、フィン40の先端部40bが、該先端部40bと対向する相手側の部材と接触することがない範囲で決定される。
【0024】
各図に示した幾つかの実施形態に係るキャビティ50のうち、第1フィン41の上流側の領域を第1キャビティ51と称し、第1フィン41と第2フィン42との間に画定される領域を第2キャビティ52と称し、第2フィン42と第3フィン43との間に画定される領域を第3キャビティ53と称し、第3フィン43の下流側の領域を第4キャビティ54と称する。
【0025】
幾つかの実施形態に係る蒸気タービンプラント10では、蒸気供給源からの蒸気Sが蒸気供給管12を介して蒸気タービン1に供給される。
蒸気タービン1に供給された蒸気Sは、主流路20に到達する。主流路20を到達した蒸気Sは、主流路20を流通するにともなって膨張と流れの転向を繰り返しながら、下流側に向かって流通する。動翼本体31は翼型断面を有するため、動翼本体31に蒸気Sが衝突したり、周方向に沿って隣接する動翼本体31同士の間に形成される翼間流路の内部でも蒸気が膨張する際の反力を受けたりすることで、ロータ3が回転する。これにより、蒸気Sの有するエネルギーは、蒸気タービン1の回転動力として取り出される。
【0026】
上述の過程において主流路20を流通する蒸気Sは、前述のキャビティ50にも流入する。すなわち、主流路20に流入した蒸気Sは静翼本体21を通過した後、主蒸気流SMと漏洩蒸気流SLとに分かれる。主蒸気流SMは、漏洩せずにタービン動翼30に導入される。
漏洩蒸気流SLは、シュラウド34とケーシング2との間を介してキャビティ50に流入する。ここで、蒸気Sは、静翼本体21を通過した後にスワール成分(周方向速度成分)が増大した状態になり、この蒸気Sの一部が分離して漏洩蒸気流SLとしてキャビティ50に流入する。したがって、漏洩蒸気流SLも蒸気Sと同様にスワール成分を含んでいる。
【0027】
(蒸気タービン1における自励振動について)
上述したように、蒸気タービン1のような回転機械では、ロータ又は動翼とケーシングとの間をシールするシール部において、主流路から逸れた作動流体がノズルを通過した際に与えられた旋回流成分を有したまま流入することにより、ロータの周方向に旋回流(所謂スワール流)が生ずることが知られている。スワール流により、ロータに偏心が発生した場合にロータの周方向にはロータの偏心方向と異なる方向にピークを有する周期的な圧力分布が生じ、例えば高出力の運転に伴ってスワール流が増加した際にはロータの自励振動の原因になることがある。このため、シール部におけるスワール流を抑制するための構造が種々考案されている。
【0028】
近年、蒸気タービン、ガスタービンなどの回転機械では、タービン効率をより向上することが求められている。そのために、漏れ流量、すなわち主流路から逸れてシール部を通過する作動流体の流量を抑制することが求められる。しかし、漏れ流量を抑制すると、上述した自励振動の励振力が増加するおそれがある。
【0029】
そこで、幾つかの実施形態では、次のようにしてシール装置100を通過する漏洩蒸気流SLの流量を抑制するとともに蒸気タービン1における自励振動の発生を抑制するようにしている。以下、詳細に説明する。
【0030】
(漏洩蒸気流抑制及び自励振動抑制のための具体的な構成について)
例えば
図2A乃至
図2C、
図4A乃至
図4C、
図5A乃至
図5C、及び
図6に示すように、幾つかの実施形態に係るシール装置100では、第3フィン43は、下記条件(a)又は(b)の少なくとも何れか一方を満たすとよい。
(a)第3フィン43は、基端部40aよりも先端部40bが軸方向にて第1フィン41側に位置するように径方向に対して傾斜して配置され、且つ、径方向に対して、第1フィン41又は第2フィン42よりも大きい傾斜角θ3を有する。
(b)第3フィン43は、第1フィン41又は第2フィン42よりも小さいシール隙間mを形成するように、第1フィン41又は第2フィン42よりも大きい径方向寸法Hrを有する。
【0031】
(上記条件(a)を満たす場合について)
各図に示すように、幾つかの実施形態に係るシール装置100は、第3フィン43が第1フィン41よりも軸方向下流側に位置するように配置されているのとする。そして、第1フィン41、第2フィン42、及び第3フィン43のそれぞれの先端部40bと、該それぞれの先端部40bに対して径方向で対向する部材の表面との間隙であるシール隙間mを漏洩蒸気流SLが通過するものとする。
【0032】
例えば、第3フィン43が上記条件(a)を満たすように構成されていて、第3フィンの軸方向上流側の側面43uが面している第3キャビティ53において、
図2A、
図2B、
図4A、
図4B、
図5A、
図5B、及び
図6に示すように、漏洩蒸気流SLの半径方向流SLrが該側面43uに沿って第3フィン43の基端部40a側から先端部40b側に向かって流れる場合について考える。
この場合、第3フィン43が上記条件(a)を満たすように構成されてない場合と比べて、該側面43uに沿って流れる半径方向流SLrが上記シール隙間mを流れる漏洩蒸気流SLに対して径方向に流れを収縮させる縮流効果をより多く与えることができる。
【0033】
図7Aは、上記条件(a)を満たす第3フィン43による上記の縮流効果について説明するためのグラフであり、各フィン40によって形成されるシール隙間mにおける流量係数を示している。
図7Aでは、実施例として記載されたデータは、上記条件(a)を満たす第3フィン43を有するシール装置100に係る流量係数であり、比較例として記載されたデータは、第3フィン43が第1フィン41又は第2フィン42と同じ傾斜角θ3を有するシール装置に係る流量係数である。
図7Aに示すように、上記条件(a)を満たすことで、第3フィン43によって形成されるシール隙間mにおける流量係数を小さくすることができる。
【0034】
このように、
図2A、
図2B、
図4A、
図4B、
図5A、
図5B、及び
図6に示すシール装置100では、第3フィン43の先端部40bと、該先端部40bに対して径方向で対向する部材の表面であるシュラウド34の外表面35との間隙であるシール隙間mを作動流体が通過し難くなる。
したがって、
図2A、
図2B、
図4A、
図4B、
図5A、
図5B、及び
図6に示すシール装置100では、第3フィン43の上流側のキャビティ50である第3キャビティ53と下流側のキャビティ50である第4キャビティ54との差圧を大きくすることができる。
【0035】
ここで、第1フィン41及び第3フィン43がそれぞれ軸方向にて最も外側に位置する最外フィンであれば、第1フィン41の上流側のキャビティ50である第1キャビティ51と、第3フィン43の下流側のキャビティ50である第4キャビティ54との圧力差、すなわちシール装置100の前後差圧は、動翼本体31の入口側と出口側との圧力差に略等しい。そのため、第3キャビティ53と第4キャビティ54との差圧、すなわち第3フィン43の前後差圧が増加すると、第1キャビティ51と第1フィン41の下流側のキャビティ50である第2キャビティ52との差圧、すなわち第1フィン41の前後差圧が減少する。
【0036】
図7Bは、各フィン40における差圧について説明するためのグラフであり、各フィン40を漏洩蒸気流SLが通過する前後での膨張比を示している。
図7Bでは、実施例として記載されたデータは、上記条件(a)を満たす第3フィン43を有するシール装置100に係る膨張比であり、比較例として記載されたデータは、第3フィン43が第1フィン41又は第2フィン42と同じ傾斜角θ3を有するシール装置に係る膨張比である。
図7Bに示すように、上記条件(a)を満たすことで、第3フィン43の前後差圧が増加するので、第3フィン43を漏洩蒸気流SLが通過する前後での膨張比が大きくなる。また、第3フィン43の前後差圧が増加することで第1フィン41の前後差圧が減少するので、第1フィン41を漏洩蒸気流SLが通過する前後での膨張比が小さくなる。
【0037】
一般的に、シール部(シール装置100)における作動流体の周方向への旋回速度が大きいほど上述した自励振動が生じ易い。また、一般的に、シール部における作動流体の周方向への旋回速度は上流側の方が下流側よりも大きい。一般的に、シールフィンの前後差圧を抑制することで、該シールフィンの下流側のキャビティ内の作動流体による励振力を抑制できる。
したがって、上述したようにして第1フィン41の前後差圧を抑制することで、第2キャビティ52内の漏洩蒸気流SLによる励振力を抑制できるので、上述した自励振動の発生を抑制できる。
また、上述したように、第3フィン43の前後差圧を大きくすることができるので、シール装置100を通過する作動流体の流量を抑制できる。
【0038】
図7Cは、各キャビティ50において発生する励振力について説明するためのグラフである。
図7Cでは、実施例として記載されたデータは、上記条件(a)を満たす第3フィン43を有するシール装置100に係る励振力であり、比較例として記載されたデータは、第3フィン43が第1フィン41又は第2フィン42と同じ傾斜角θ3を有するシール装置に係る励振力である。
図7Cに示すように、上記条件(a)を満たすことで、第2キャビティ52及び第3キャビティ53における励振力を抑制できる。また、上記条件(a)を満たすことで第3キャビティ53における励振力よりも第2キャビティ52における励振力をより抑制できる。
【0039】
例えば、第3フィン43が上記条件(a)を満たすように構成されていて、第3フィン43の軸方向上流側の側面43uが面している第3キャビティ53において、
図2C、
図4C、及び
図5Cに示すように、半径方向流SLrが該側面43uに沿って第3フィン43の先端部40b側から基端部40a側に向かって流れる場合について考える。
この場合、第3フィン43が上記条件(a)を満たすように構成されてない場合と比べて、該半径方向流SLrが第3フィン43の先端部40b側から基端部40a側に向かって該側面に沿って流れ易くなる。そのため、第2フィン42側から第3フィン43側に向かって流れてきた漏洩蒸気流SLが第3フィン43よりも下流側に向かって流れ難くなるので、第3フィン43の前後差圧を大きくすることができる。これにより、第1フィン41の前後差圧を抑制できるので、上述した自励振動の発生を抑制できる。
また、第3フィン43の前後差圧を大きくすることができるので、シール装置100を通過する漏洩蒸気流SLの流量を抑制できる。
【0040】
(上記条件(b)を満たす場合について)
上記条件(a)について説明したときと同様に、幾つかの実施形態に係るシール装置100は、第3フィン43が第1フィン41よりも軸方向下流側に位置するように配置されているのとする。そして、第1フィン41、第2フィン42、及び第3フィン43のそれぞれの先端部40bと、該それぞれの先端部40bに対して径方向で対向する部材の表面との間隙であるシール隙間mを漏洩蒸気流SLが通過するものとする。
【0041】
例えば、第3フィン43が上記条件(b)を満たすように構成されているものとする。
この場合、第3フィン43が上記条件(b)を満たすように構成されてない場合と比べて、第3フィン43の前後差圧を大きくすることができる。これにより、第1フィン41の前後差圧を抑制できるので、上述した自励振動の発生を抑制できる。
また、第3フィン43の前後差圧を大きくすることができるので、シール装置100を通過する漏洩蒸気流SLの流量を抑制できる。
【0042】
なお、幾つかの実施形態に係るフィン40が互いの間に隙間を空けて軸方向に4本以上配列されている場合、少なくとも最も軸方向下流側に配置されたフィン40が第3フィン43として上記条件(a)又は(b)の少なくとも何れか一方を満たすとよい。すなわち、第3フィン43は、2本の最外フィンのうちの他方の最外フィンを含むとよい。
少なくとも最も軸方向下流側に配置されたフィン40が第3フィン43として上記条件(a)又は(b)の少なくとも何れか一方を満たすことで、上述したように、第1フィン41の前後差圧を抑制して自励振動の発生を抑制できるとともに、第3フィン43の前後差圧を大きくして、シール装置100を通過する漏洩蒸気流SLの流量を抑制できる。
【0043】
例えば、
図2B、
図2C、
図4B、
図4C、
図5B、及び
図5Cに示すシール装置100のように、第3フィン43としての上記他方の最外フィンを除き、他のフィン40は、同一形状を有していてもよい。
仮に、上記他方の最外フィン以外の他のフィン40を上記条件(a)又は(b)の少なくとも何れか一方を満たすように構成すると、漏洩蒸気流SLの流量をさらに抑制できるものの、自励振動が発生する可能性が高くなる。したがって、
図2B、
図2C、
図4B、
図4C、
図5B、及び
図5Cに示すシール装置100のように、第3フィン43としての上記他方の最外フィンを除き、他のフィン40を同一形状を有するように構成することで、自励振動の発生を抑制できる。
【0044】
(湾曲凹面430について)
図4A乃至
図4Cに示すように、幾つかの実施形態に係るシール装置100では、第3フィン43の基端部40a側において、軸方向にて第1フィン41側を向く第3フィン43の側面43uは、湾曲凹面430を有するとよい。
図4A及び
図4Bに示すシール装置100では、湾曲凹面430は、ケーシング2の内周面25のうちの側面43uよりも軸方向上流側の面と第3フィン43の側面43uとをなだらかに接続する曲面であり、側面43uよりも軸方向上流側に曲率中心Oを有する。
図4Cに示すシール装置100では、湾曲凹面430は、シュラウド34の外表面35のうちの側面43uよりも軸方向上流側の面と第3フィン43の側面43uとをなだらかに接続する曲面であり、側面43uよりも軸方向上流側に曲率中心Oを有する。
【0045】
これにより、第3フィン43の側面43uが面するキャビティ50(第3キャビティ53)内の漏洩蒸気流SLの半径方向流SLrの流れが湾曲凹面430に案内されて流れ易くなる。
これにより、
図4A及び
図4Bに示すように、第3キャビティ53において、半径方向流SLrが該側面43uに沿って第3フィン43の基端部40a側から先端部40b側に向かって流れる場合、該側面43uに沿って流れる半径方向流SLrがシール隙間mを流れる漏洩蒸気流SLに対して縮流効果をより多く与えることができる。これにより、第3フィン43の前後差圧を大きくすることができる。
また、
図4Cに示すように、半径方向流SLrが該側面43uに沿って第3フィン43の先端部40b側から基端部40a側に向かって流れる場合、該半径方向流SLrが第3フィン43の先端部40b側から基端部40a側に向かって該側面43uに沿って流れ易くなる。そのため、漏洩蒸気流SLが第3フィン43よりも下流側に向かって流れ難くなるので、第3フィン43の前後差圧を大きくすることができる。
【0046】
(第4キャビティ54の拡張部541について)
図5A及び
図5Bに示すように、幾つかの実施形態に係る蒸気タービン1は、該最外フィン40である第3フィン43と、ケーシング2の内面250のうち該最外フィン40(第3フィン43)よりも軸方向下流側における内面250とで画定されるキャビティ50(第4キャビティ54)を備える。そして第4キャビティ54は、上記内面250において径方向外側又は軸方向下流側に拡張された拡張部(ケーシング側拡張部)541を有しているとよい。
【0047】
図5A及び
図5Bに示すように、幾つかの実施形態に係る蒸気タービン1では、拡張部541の径方向外側の面の少なくとも一部は、例えば、第3キャビティ53に面した内周面25よりも径方向外側に位置する内周面251によって画定されるようにしてもよい。また、
図5A及び
図5Bに示すように、幾つかの実施形態に係る蒸気タービン1では、拡張部541の軸方向外下流側の面の少なくとも一部は、下記の環状内壁面253によって径方向外側の面が画定されるようにしてもよい。なお、環状内壁面253は、例えば、動翼本体31よりも軸方向下流側で主流路20を画定するケーシング2の内周面25Aと接続され、該内周面25Aの軸方向上流側で軸方向上流側を向いた内面250である内壁面25Bよりも軸方向下流側において、軸方向上流側を向いている。
【0048】
第4キャビティ54が拡張部541を有していれば、第3フィン43の先端部40bと、該先端部40bに対して径方向で対向する部材の表面(例えばシュラウド34の外表面35)との間隙であるシール隙間mを通過した後の漏洩蒸気流SLが、第4キャビティ54が拡張部541を有していない場合と比べて膨張するので、第3フィン43の前後差圧を大きくすることができる。
【0049】
なお、
図5Cに示すように、シュラウド34のうち、第3フィン43よりも下流側の領域を径方向外側から切り欠くことで拡張部(シュラウド側拡張部)543を設けてもよい。また、幾つかの実施に係る蒸気タービン1において、ケーシング側拡張部541とシュラウド側拡張部543とを設けてもよい。
【0050】
(第3フィン43の先端部40bの形状について)
幾つかの実施形態に係るシール装置100では、
図6に示すように、軸方向にて第1フィン41側を向く第3フィン43の側面43uと先端面43tとの間の角部431の曲率半径ruは、軸方向にて第1フィン41側を向く第2フィン42の側面42uと先端面42tとの間の角部421の曲率半径ruより小さいとよい。
これにより、第3キャビティにおいて、半径方向流SLrが第3フィン43の側面43uに沿って第3フィン43の基端部40a側から先端部40b側に向かって流れる場合、該半径方向流SLrが先端部40b側で該側面43uから剥離し易くなる。したがって、該側面43uに沿って流れる半径方向流SLrがシール隙間mを流れる漏洩蒸気流SLに対して縮流効果をより多く与えることができる。これにより、第3フィン43の前後差圧を大きくすることができる。
【0051】
なお、幾つかの実施形態に係るシール装置100では、
図6に示すように、軸方向下流側を向く第3フィン43の側面43dと先端面43tとの間の角部433の曲率半径rdは、角部431の曲率半径ruと同じであってもよい。また、軸方向下流側を向く第2フィン42の側面42dと先端面42tとの間の角部423の曲率半径rdは、角部421の曲率半径ruと同じであってもよい。
【0052】
本開示は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
例えば、上述した一実施形態の第3フィン43は、上記条件(a)及び(b)の双方を満たすように構成されていてもよい。
また、
図2A乃至
図2C、
図3A乃至
図3C、
図5A乃至
図5C、及び
図6に示すシール装置100において、
図4A乃至
図4Cに示すように湾曲凹面430を設けてもよい。
図2A乃至
図2C、
図3A乃至
図3C、
図4A乃至
図4C、及び
図6に示す示す蒸気タービン1において、
図5A乃至
図5Cに示すようにケーシング側拡張部541又はシュラウド側拡張部543の少なくとも何れか一方を設けてもよい。
【0053】
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
(1)本開示の少なくとも一実施形態に係るシール装置は、互いの間に隙間を空けて軸方向に3本以上配列され、各々が周方向に沿って延在する円弧状のフィンを備える。
円弧状のフィンは、軸方向にて最も外側に位置する2本の最外フィンのうちの一方である第1フィンと、軸方向にて第1フィンの隣に配置される第2フィンと、軸方向にて第2フィンを挟んで第1フィンとは反対側に配置される少なくとも一つの第3フィンと、を含む。
第3フィンは、下記条件(a)又は(b)の少なくとも何れか一方を満たす。
(a)第3フィンは、基端部よりも先端部が軸方向にて第1フィン側に位置するように径方向に対して傾斜して配置され、且つ、第3フィンは、径方向に対して、第1フィン又は第2フィンよりも大きい傾斜角を有する。
(b)第3フィンは、第1フィン又は第2フィンよりも小さいシール隙間を形成するように、第1フィン又は第2フィンよりも大きい径方向寸法を有する。
【0054】
上記(1)の構成によれば、第3フィン43を上記条件(a)又は(b)の少なくとも何れか一方を満たすように構成することで、上記(1)の構成を有するシール装置100を備える回転機械の一例としての蒸気タービン1において、シール部(シール装置100)を通過する作動流体である漏洩蒸気流SLの流量を抑制するとともに蒸気タービン1における自励振動の発生を抑制することができる。
【0055】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)の構成において、第3フィン43は、2本の最外フィン40のうちの他方の最外フィン40を含むとよい。
【0056】
少なくとも最も軸方向下流側に配置されたフィン40が第3フィン43として上記条件(a)又は(b)の少なくとも何れか一方を満たすことで、上述したように、第1フィン41の前後差圧を抑制して自励振動の発生を抑制できるとともに、第3フィン43の前後差圧を大きくして、シール装置100を通過する漏洩蒸気流SLの流量を抑制できる。
【0057】
(3)幾つかの実施形態では、上記(2)の構成において、第3フィン43としての上記他方の最外フィン40を除き、円弧状のフィン40は、同一形状を有するとよい。
【0058】
仮に、上記他方の最外フィン以外の他のフィン40を上記条件(a)又は(b)の少なくとも何れか一方を満たすように構成すると、漏洩蒸気流SLの流量をさらに抑制できるものの、自励振動が発生する可能性が高くなる。したがって、
図2B、
図2C、
図4B、
図4C、
図5B、及び
図5Cに示すシール装置100のように、第3フィン43としての上記他方の最外フィンを除き、他のフィン40を同一形状を有するように構成することで、自励振動の発生を抑制できる。
【0059】
(4)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(3)の何れかの構成において、第3フィン43の基端側(基端部40a側)において、軸方向にて第1フィン41側を向く第3フィン43の側面43uは、湾曲凹面430を有するとよい。
【0060】
上記(4)の構成によれば、上述したように、第3フィン43の前後差圧を大きくすることができる。
【0061】
(5)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(4)の何れかの構成において、軸方向にて第1フィン41側を向く第3フィン43の側面43uと先端面43tとの間の角部431の曲率半径ruは、軸方向にて第1フィン41側を向く第2フィン42の側面42uと先端面42tとの間の角部421の曲率半径ruより小さいとよい。
【0062】
上記(5)の構成によれば、第1フィン41側を向く第3フィン43の側面43uが面する第3キャビティ53において、半径方向流SLrが該側面43uに沿って第3フィン43の基端部40a側から先端部40b側に向かって流れる場合、該半径方向流SLrが先端部40b側で該側面43uから剥離し易くなるので、該側面43uに沿って流れる半径方向流SLrがシール隙間mを流れる漏洩蒸気流SLに対して縮流効果をより多く与えることができる。これにより、第3フィン43の前後差圧を大きくすることができる。
【0063】
(6)本開示の少なくとも一実施形態に係る回転機械である蒸気タービン1は、上記(1)乃至(5)の何れかの構成のシール装置100と、ケーシング2と、ケーシング2内で軸線AX周りに回転するロータ本体11と、ロータ本体11から径方向に延びるように取り付けられる複数の動翼本体31と、複数の動翼本体31の各々の先端部に連なるシュラウド(チップシュラウド)34と、を備える。第3フィン43は、第1フィン41よりもロータ本体11の軸方向下流側に位置する。
【0064】
上記(6)の構成によれば、上記(1)乃至(5)の何れかの構成のシール装置100を備えるので、シール装置100を通過する漏洩蒸気流SLの流量を抑制するとともに蒸気タービン1における自励振動の発生を抑制することができる。
【0065】
(7)幾つかの実施形態では、上記(6)の構成において、第3フィン43は、2本の最外フィン40のうちの他方の最外フィン40を含む。回転機械である蒸気タービン1は、該最外フィン40(第3フィン43)と、ケーシング2の内面250のうち該最外フィン40(第3フィン43)よりも軸方向下流側における内面250とで画定されるキャビティ50(第4キャビティ54)を備える。第4キャビティ54は、上記内面250において径方向外側又は軸方向下流側に拡張された拡張部541を有しているとよい。
【0066】
上記(7)の構成によれば、第3フィン43の先端部40bと、該先端部40bに対して径方向で対向する部材の表面との間隙であるシール隙間mを通過した後の漏洩蒸気流SLが、第4キャビティ54が拡張部541を有していない場合と比べて膨張するので、第3フィン43の前後差圧を大きくすることができる。
【0067】
(8)幾つかの実施形態では、上記(6)又は(7)の構成において、円弧状のフィン40は、ケーシング2の内周面25からシュラウド34へ向かって突出するようにしてもよい。
【0068】
上記(8)の構成によれば、シール装置100の全ての円弧状のフィン40がケーシング2の内周面25からシュラウド34へ向かって突出するように構成することで、熱膨張によってケーシング2とロータ本体11との軸方向の相対位置が変化しても、円弧状のフィン40同士が接触するおそれがない。
【0069】
(9)幾つかの実施形態では、上記(6)又は(7)の構成において、円弧状のフィン40は、シュラウド34からケーシング2の内周面25へ向かって突出するようにしてもよい。
【0070】
上記(9)の構成によれば、シール装置100の全ての円弧状のフィン40がシュラウド34からケーシング2の内周面25へ向かって突出するように構成することで、熱膨張によってケーシング2とロータ本体11との軸方向の相対位置が変化しても、円弧状のフィン40同士が接触するおそれがない。
【0071】
(10)幾つかの実施形態では、上記(6)又は(7)の構成において、円弧状のフィン40は、ケーシング2の内周面25からシュラウド34へ向かって突出するフィン40と、シュラウド34からケーシング2の内周面25へ向かって突出するフィン40とが軸方向に交互に配置されるようにしてもよい。
【0072】
上記(10)の構成によれば、ケーシング2の内周面25からシュラウド34へ向かって突出するフィン40と、シュラウド34からケーシング2の内周面25へ向かって突出するフィン40とが軸方向に交互に配置することで、シール装置100を通過する漏洩蒸気流SLの流量を一層抑制できる。
【解決手段】少なくとも一実施形態に係るシール装置は、軸方向に3本以上配列される円弧状のフィンを備える。円弧状のフィンは、軸方向にて最も外側に位置する2本の最外フィンのうちの一方である第1フィンと、軸方向にて第1フィンの隣に配置される第2フィンと、軸方向にて第2フィンを挟んで第1フィンとは反対側に配置される少なくとも一つの第3フィンとを含む。第3フィンは、基端部よりも先端部が前記軸方向にて第1フィン側に位置するように径方向に対して傾斜して配置され、且つ、径方向に対して、第1フィン又は第2フィンよりも大きい傾斜角を有するとよい。