(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記導電用ハーネスは、導電糸と弾性糸とを混用して製編された導電部と非導電糸のみによって製編された非導電部とを有し、前記導電部には前記導電糸として金属線を採用した電気的に独立した2以上の構成経路が設けられており、
各前記検出手段は、
前記2以上の構成経路の中から第1の部位と第2の部位とで異なるように選択されて電気的に接続され、前記導電用ハーネスに取り付けられた端子と、
前記端子に電気的に接続された生体電極とを含む、請求項1に記載の生体信号検出装具。
生体の個体差により第1の部位から第2の部位までの距離が異なることを調整するために、前記第1の検出手段および前記第2の検出手段の少なくともいずれかは、前記導電用ハーネスに取り付けられた複数の端子を備え、
前記生体電極は、前記複数の端子のいずれかに電気的に接続される、請求項2に記載の生体信号検出装具。
人体の頭部に装着されて、第1の部位として額における生体信号および第2の部位として耳介の付け根における生体信号を検出する生体信号検出装具を用いた生体信号検出方法であって、
前記生体信号検出装具は、
少なくとも一部に伸縮性を備えた環状の基材層と、
前記第1の部位に対応する基材層の位置に設けられ、前記第1の部位についての第1の生体信号を検出する第1の検出手段と、
前記第2の部位に対応する基材層の位置に設けられ、前記第2の部位についての第2の生体信号を検出する第2の検出手段と、
前記第1の検出手段により検出された信号および前記第2の検出手段により検出された信号が電気的に流れる伸縮性を備えたハーネスであって、前記基材層に接合された導電用ハーネスとを含み、
前記導電用ハーネスは、導電糸と弾性糸とを混用して製編された導電部と非導電糸のみによって製編された非導電部とを有し、前記導電部には前記導電糸として金属線を採用した電気的に独立した2以上の構成経路が設けられており、
各前記検出手段は、
前記2以上の構成経路の中から第1の部位と第2の部位とで異なるように選択されて電気的に接続され、前記導電用ハーネスに取り付けられた端子と、
前記端子に電気的に接続された生体電極とを含み、
前記第2の検出手段は、前記導電用ハーネスに取り付けられた複数の端子を備え、前記生体電極は、前記複数の端子のいずれかに電気的に接続され、
前記基材層および前記基材層に接合された導電用ハーネスを、その環状の径を人為的に拡張させる拡張ステップと、
環状の径が拡張させた状態の生体信号検出装具を人体の頭部に嵌めた後に、人為的な拡張を取り止めて前記生体信号検出装具を人体の頭部に装着する装着ステップと、
前記第1の検出手段の位置を人体の頭部の額の位置に合わせる第1部位決定ステップと、
前記第2の検出手段を構成する複数の端子の中で耳介の付け根の位置に適合するいずれか1つの端子を選択する選択ステップと、
前記選択された端子に生体電極を電気的に接続する接続ステップと、
前記第1の部位である額における生体信号および前記第2の部位である外耳における生体信号を検出する検出ステップと、を含む、生体信号検出方法。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づき説明する。なお、本実施の形態においては、本発明に係る生体信号検出装具の一例である生体信号測定用ヘッドバンド(以下において単にヘッドバンドと記載する場合がある)を人体の頭部に装着して生体信号(主として脳波)を検出する装具および方法について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。このため、本発明は、人体に限定されない生体(実験動物等)を対象として、頭部に装着することに限定されない生体の部位(上腕、下肢等)に装着され、脳波に限定されない生体信号(心拍信号、心電信号、筋電信号等)を検出する生体信号検出装具および生体信号検出方法を含む。また、図を用いた説明において、上下左右方向を用いて説明する場合があるが、本発明に係る生体信号検出装具は、このような方向に限定されるものではない。ここで、左右方向は、このヘッドバンド100を頭部に装着した被験者から見た左右方向である。
【0018】
まず、
図1〜
図3を参照して、本実施の形態に係るヘッドバンド100の概略構造を説明した後に、各部の詳細な構造およびヘッドバンド100を用いた生体信号検出方法について説明する。
<ヘッドバンドの概略構造>
図1はヘッドバンド100を被験者である人体の頭部Hに装着した図であって、
図1(A)は前方からの斜視図、
図1(B)は後方からの斜視図、
図1(C)は側方からの平面図である。
図2はヘッドバンド100単体の状態(被験者の頭部Hに装着していない状態)における全体斜視図であって、
図2(A)は前方からの斜視図、
図2(B)は後方からの斜視図である。
図3は、ヘッドバンド100を分解した上面図である。
【0019】
これらの図に示すように、このヘッドバンド100は、生体(ここでは人体)に装着されて生体における第1の部位S(B)の生体信号および第1の部位S(B)とは位置が異なる第2の部位S(C)の生体信号を検出する。このヘッドバンド100は、少なくとも一部に伸縮性を備えた環状基材層110と、環状における第1の部位S(B)に対応する位置に設けられ、第1の部位S(B)についての第1の生体信号を検出する第1の検出手段220Bと、環状における第2の部位S(C)に対応する位置に設けられ、第2の部位S(C)についての第2の生体信号を検出する第2の検出手段220Cと、第1の検出手段220Bおよび第2の検出手段220Cに電気的に接続され、第1の検出手段220Bにより検出された信号および第2の検出手段220Cにより検出された信号が電気的に流れる伸縮性を備えた導電用ハーネス200とを含み、導電用ハーネス200が環状基材層110に接合されている。
【0020】
なお、第1の生体信号および第2の生体信号は生体電位信号(ここでは脳波電位信号)であって、第1の部位S(B)についての第1の生体信号は左右の第1の部位S(B)間の電位差であって、第2の部位S(C)についての第2の生体信号は左右の第2の部位S(C)間の電位差である(詳しくはこれらの電位差をそれぞれ増幅した信号)。ここで、額略中央部(図示しないが基準部位S(A)とする)に対応する位置に基準検出手段220Aが設けられ、基準検出手段220Aにより検出された生体信号(基準生体信号)は、計測時の基準電位として使用される。そして、導電用ハーネス200には、第1の生体信号および第2の生体信号に加えて、この基準生体信号が電気的に流れる。ここで、基準検出手段220A、第1の検出手段220Bおよび第2の検出手段220Cの基本的な構造は同じであるため、これらを検出手段220と纏めて記載する場合がある。これらの複数の検出手段により検出された検出信号は、後頭部に設けられた取り出し基板240からリード線240を介してヘッドバンド100の外部へ取り出されてアンプ等により増幅される(アナログ増幅処理)。
【0021】
詳しくは後述するが、このヘッドバンド100においては、導電用ハーネス200として4線タイプを採用して(1線は予備)、頭部の左右で検出回路を独立させて(端子台基板222Aの部分と導電用ハーネス200の端部202とにおいて電気的に切断しておいて)、左右3箇所ずつの脳波信号(基準信号は左右で共通)を検出している。また、第2の部位S(C)は、耳介Yの付け根に対応する領域S内において、第2の生体信号(脳波信号)を最も精度高く検出することができるポイント(領域S内の点)である。
【0022】
このようなヘッドバンド100の各部の詳細な構造について、以下に詳しく説明する。
<ヘッドバンドの詳細構造>
・導電用ハーネス
まず、検出信号が流れる導電用ハーネス200について説明する。この導電用ハーネス200の平面図を
図4(A)に、その導電用ハーネス200の導電部1をスムースにより構成した断面方向の両面編目図における非伸長状態を示す図を
図4(B)に、その伸長状態を示す図を
図4(C)に、それぞれ示す。なお、
図4において記載している導電用ハーネス2と他の図において記載している導電用ハーネス200とは同一のものである。
【0023】
この導電用ハーネス2は、導電糸10と弾性糸11とを混用して製編された導電部1と非導電糸のみによって製編された非導電部3(4)とを有し、導電部1は少なくとも導電糸10が編地中を表裏間方向にジグザグ状となる配置で設けられていると共に弾性糸11が編地の表裏面の面方向に沿って引き締め力を生じて導電糸10のジグザグ状配置を保形する配置で設けられており、導電部1には導電糸10として金属線を採用した構成経路が設けられ、非導電部3(4)には非導電糸として合成繊維を採用した構成経路が設けられていることを特徴とする。
【0024】
図4(A)に示すように、導電用ハーネス2(以下、単に「ハーネス2」と記載する場合がある)を示した平面図である。このハーネス2は偏平で細長い帯紐状を呈して形成され、帯長手方向に沿って互いに平行な2本の導電部1,1を備えたものとしてある。また、
図4(B)および
図4(C)は導電部1,1を構成している編地を示した両面編目図である。
【0025】
図4(A)に示した例では導電部1が細帯状であって且つハーネス2の表裏面に露出する状態に形成され、2本の導電部1,1の相互間には互いの短絡を防止するための非導電部3が設けられたものとしてある。
また、これら導電部1,1に対する帯幅方向の外側にも非導電部4が設けられており、ハーネス2の側縁部が他物と接触したときに導電部1による短絡や漏電等が起こらないように対処してある。非導電部3,4は、いずれも合成繊維(例えばアラミド繊維)や天然繊維、合成繊維と弾性糸とを混用した素材等の非導電糸のみによって製編された編地として組成されており、導電部1と同様にハーネス2の表裏面に露出する状態に形成されている。
【0026】
なお、導電部1は、ハーネス2の帯幅方向の中に3本以上設けてそれらを非導電部3で区分けするようにしてもよいし、ハーネス2の帯幅方向の中に1本だけ設けてもよい。また非導電部4については導電部1の片側だけとしたり、設けなかったりしてもよい。
また導電部1は、帯状とせず、線状に形成することも可能であるし、ハーネス2の帯幅方向及び帯長手方向の全部を形成する広幅のものとして形成することもできる(これらについては後述する)。要は、導電部1の配置や形成数は何ら限定されるものではない。またハーネス2自体も、そもそも帯紐状に形成することが限定されるものではなく、正方形や長方形などの四角形に形成すること等も可能である。
【0027】
図4(A)で示したハーネス2では、当然に、2本の導電部1,1が帯長手方向の両端部で電気抵抗の低い導通特性を有したものとされている。のみならず、帯長手方向の任意位置であっても、帯表面及び/又は帯裏面において電気抵抗の低い導通特性を有したものとされている。従って、導電部1の帯長手方向において導通させる2点間距離に応じて電気抵抗の大小を設定したり、反対に電気抵抗に応じた長さを設定したりするといった使い方をすればよい。或いはまた、導電部1の帯幅(コース数)を幅広にしたり幅狭にしたりすることの選択によっても電気抵抗の大小を設定することができる。
【0028】
また、このハーネス2は、2本の導電部1,1及び非導電部3,4が一体となって帯長手方向に沿った豊富な伸縮性を有していると共に、表裏方向へ向けた反りや曲がり、面方向に沿った左右への曲がり、更には捻りなどに自由に対応できるだけの豊富な柔軟性を有している。そして、このようにハーネス2を帯長手方向に伸縮させたときや、表裏方向へ反らせたり曲げたり、或いは面方向に沿って曲げたりしたとき、更にはこれらの伸縮や反り、曲げを繰り返したときであっても、電気抵抗は不変状態に保持される特性を有している。
【0029】
導電部1の製編時には、
図4(B)および
図4(C)に示すように導電糸10と弾性糸11とを混用させる。導電糸10と弾性糸11とが含まれていれば、その他に別種の糸を混用させることは任意である。
導電部1に採用し得る編組織は、例えばスムース編(両面編又はインターロックとも言う)とする。スムース編は、ゴム編を2枚重ね合わせてお互いの凹凸の溝を埋め合ったような編組織である。すなわち、
図4(B)の上面側を編地表面側とおき、同下面側を編地裏面側とおいて説明すると、導電糸10は、編地表面側の導電糸オールドループ10aと絡んで第1ループP1を形成し、編地裏面側へ移行する。そして編地裏面側の導電糸オールドループ10bと絡んで第2ループP2を形成し、以後同様に編地表面側で第3ループP3を形成し、編地裏面側で第4ループP4を形成するといったことを繰り返す。従って導電糸10は、導電部1の編地中を表裏間方向にジグザグ状となる配置で設けられている。
【0030】
これに対して弾性糸11は、編地裏面側の弾性糸オールドループ11aと絡んで第1ループR1を形成し、編地表面側へ移行する。そして、編地表面側の弾性糸オールドループ11bと絡んで第2ループR2を形成し、以後同様に編地裏面側で第3ループR3を形成し、編地表面側で第4ループR4を形成するといったことを繰り返す。従って弾性糸11も、導電部1の編地中を表裏間方向にジグザグ状となる配置で設けられている。その結果、編地中には、導電糸10と弾性糸11とのクロス部13がループ毎に交互配置で形成されることになる。
【0031】
但し、弾性糸11は豊富な伸縮性を有しているのに対して導電糸10は殆ど伸縮しない。そのため、導電部1をその表裏面の面方向(
図4(B)の左右方向であり後述する「コース方向」と同じである)に沿って伸長させると、クロス部13では、弾性糸11が導電糸10と交差することで編地の表裏面側に生じさせているクロス角θを徐々に拡大させ、鈍角となる状況を経て、次第に弾性糸11だけがよく伸びてゆくようになる。
【0032】
次に、この弾性糸11の伸びに引っ張られるようにして導電糸10がそのループからクロス部13へと繰り出される挙動が生じる。
また、導電部1の伸長を解除すると、クロス部13では弾性糸11だけが収縮による引き締め力を生じ、この引き締め力を受けて導電糸10がクロス部13からその両外側のループへと押し込める挙動が生じる。このときの弾性糸11による引き締め力が、非伸縮時の導電部1において、導電糸10のジグザグ状配置を保形させ、厚さ方向のボリュウムを持たせる作用を奏することになる。
【0033】
このように導電糸10は、ループからクロス部13への繰り出しや押し込みによってループを小さくさせたり大きくさせたりするだけでありながら、弾性糸11の伸縮に合わせて一緒に伸び縮みをしているかのようになり、導電部1は
図4(C)に示すような伸縮性を有するものとなっている。
この説明から明らかなように、導電糸10は実質的に伸縮するものではないので、コース方向で使用された全長は変化せず、もとよりその外径も変化しない。のみならず、導電糸10はコース方向に並ぶループ同士が接触することがなく、複数のコース間で絡まったり接触したりすることもない。従って、電気抵抗も不変となるものである。
【0034】
また、導電部1では、編地中の同一コース内が導電糸10により製編された構成経路と、弾性糸11により製編された構成経路とに分離されたものであると言える。そのため、互いの構成経路における伸縮挙動の互いへの影響(干渉)が抑制され、各独立したものとなるので、各構成経路ではそれぞれ自由度の高い伸縮挙動が許容されることになる。これにより、導電部1として、豊富な伸縮性及び柔軟性が確保される。
【0035】
このように詳説したところから明らかなように、ハーネス2が備える導電部1は、伸縮性及び柔軟性が豊富で伸長を繰り返した際の復元性をも備えた編地でありながら、伸長時と非伸長時とで電気抵抗の変化が皆無又は抑制される特性を備えている。そのため、複数の基板間を配線するような場合にあって、各基板の配置により配線経路が複雑な曲がりを有するものとなっていたり、配線する段階まで配線長さや配線経路が確定していなかったり、基板同士が配線後に移動したりするとき、或いは基板と動体との間に配線する状況下において動体の動作で配線距離に大きな伸縮変動が繰り返し起こったりするとき等にも、好適な配線部材として使用可能である。
【0036】
また、伸長時と非伸長時とで電気抵抗が不変であるので、外乱を嫌う信号線としても好適に使用できることになる。
導電部1は、弾性糸11による面方向の引き締め力(収縮力)に付随させることにより、編地の伸長状態と非伸長状態との間で導電糸10を挙動させるものである。そのため導電部1では、豊富な伸縮性(例えば200%以上)を発現させながらも導電糸10として金属線を使用することができる点が、特徴点の一つである。
【0037】
このように導電糸10に金属線を用いた場合、メッキ糸などに比べて電気抵抗を遥かに低く抑えることができ、編地厚を分厚くすることなく、通電可能な電圧値や電流値を高めるのにも適している(薄地にできる)。また導電部、ひいては導電部1としての耐久性を高めることができるといった利点がある。更に、デザイン性を高めることができると共に、外観面での展開を広範に拡大させることができる。
・生体電極
次に、検出部位の体表面に密着させて生体電気信号を検出する生体電極20について説明する。この生体電極20の略図的断面図を
図4(D)に示す。なお、
図4において記載している生体電極20と他の図において記載している生体電極230とは同一のものである。
【0038】
この生体電極20は、繊維編地により構成された電極層21を備えており、繊維編地の表面粗さ(Ra)が、40μm以下であり、好ましくは、繊維編地が、導電性繊維と、熱融着繊維または熱合着繊維とを含んでおり、導電性繊維と熱融着繊維または熱合着繊維とが結合されており、さらに好ましくは、電極層21が、基材層22の上に設けられており、さらに好ましくは、電極層21と基材層22との間に、水分透過抑制層23を有する。
【0039】
この生体電極20は、
図4(D)に示され、上述したように、電極層21を備えている。電極層21は、繊維編地により構成されている。
電極層21を構成する繊維編地は、導電性を備えている。繊維編地に導電性を付与する観点から、繊維編地は、導電性繊維を含んでいることが好ましい。導電性繊維としては、特に限定されず、導電性を備える公知の繊維を用いることができる。導電性繊維の具体例としては、金属めっき繊維、導電性高分子繊維、金属繊維、炭素繊維、スリット繊維、導電材含有繊維などが挙げられる。導電性繊維は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0040】
金属めっき繊維としては、特に制限されず、公知のものが使用でき、例えば、銀、銅、金、ステンレスなどの金属、またはこれらのうち少なくとも1種を含む合金などにより、合成繊維の表面が被覆された繊維が挙げられる。金属めっきが施される合成繊維としては、好ましくはナイロン繊維、ポリエステル繊維などが挙げられる。
導電性高分子繊維としては、特に制限されず、公知のものが使用でき、例えば、ポリ3、4−エチレンジオキシチオフェン(PEDOT)にポリスチレンスルホン酸(ポリ4−スチレンサルフォネート;PSS)をドープしたPEDOT/PSSを用いたPEDOT/PSS繊維、また、PEDOT/PSSとマトリックス樹脂を複合化した繊維などが挙げられる。マトリックス樹脂としては、ポリビニルアルコール(PVA)などが挙げられる。また、導電性高分子を合成繊維に含浸させたものであってもよい。合成繊維としては、ポリエステル繊維、ナイロン繊維などが挙げられる。
【0041】
金属繊維としては、特に制限されず、銀、ニッケル、銅、鉄、錫などの金属、またはこれらの金属のうち少なくとも1種を含む合金などにより構成された繊維が挙げられる。
導電材含有繊維としては、ポリエステル系ポリマーやポリアミド系ポリマーなどの繊維形成性ポリマーに導電性物質を均一分散したもの(つまり、導電性ポリマー)を用いて構成されるものが有用である。導電性物質としては、例えば、ファーネスブラック、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、チャネルブラックなどの導電性カーボンブラック;銀、ニッケル、銅、鉄、錫などの金属単体;硫化銅、硫化亜鉛、ヨウ化銅などの金属化合物などが挙げられる。
【0042】
導電性繊維の中でも、銀めっきナイロン繊維、銀めっきポリエステル繊維、PEDOT/PSSにPVA等のマトリックス樹脂と複合化した繊維が好ましい。
導電性繊維の電気抵抗値としては、特に制限されないが、例えば、0.1〜100,000Ω/10cm程度が挙げられる。
電極層21を構成する繊維編地は、導電性繊維のみにより構成されていてもよいし、他の繊維をさらに含んでいてもよい。他の繊維としては、好ましくは熱融着繊維または熱合着繊維(以下、熱融着繊維等という。)が挙げられる。熱融着繊維と熱合着繊維との差異は、半溶融または軟化状態からの冷却により生じる結合力の強弱によって区別すればよく、結合力が強いものは熱融着繊維とし、これよりも結合力が弱いものは熱合着繊維とする。この区別は明確とは言えず曖昧模糊とした部分を含むが、要は、熱処理によって繊維同士の交差部を結合できる繊維であればよいものとする。たとえば熱融着繊維としてのポリウレタン繊維の例としては日清紡テキスタイル株式会社製のモビロンR、モビロンR−L等が例示でき、熱融着繊維とも熱合着繊維ともされるポリウレタン繊維の例としては旭化成株式会社製のロイカSF等が例示できる。繊維編地が熱融着繊維等をさらに含んでいる場合、導電性繊維と熱融着繊維等とを含む電極層21を熱プレス処理することにより、電極層21の表面平滑性を向上(すなわち、表面粗さ(Ra)を小さく)させて、皮膚(体表面)への密着性を向上することができる。生体電極20の皮膚への密着性が高められることにより、生体電気信号をより一層精度高く取得し得る。
【0043】
熱融着繊維等としては、例えば80℃以上程度の熱プレスによって、繊維同士が結合するものであれば、特に制限されないが、好ましくはポリウレタン繊維、ナイロン繊維、ポリエステル繊維などが挙げられる。熱融着繊維等は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
この生体電極20においては、繊維編地の表面粗さ(Ra)が40μm以下である。電極層21を構成している繊維編地表面の表面粗さ(Ra)が、このような小さな値を有しており、表面平滑性が非常に高いことから、体動が大きい状況など、生体電気信号中にアーチファクトが取り込まれやすい状況においても、生体電気信号を高い精度で取得することが可能となる。より具体的には、この生体電極20は、電極層21表面の表面平滑性が非常に高いことから、皮膚に対する密着性が高い。これにより、皮膚と電極層21との間の接触インピーダンスが低減し、結果として、生体電気信号中にアーチファクトが取り込まれにくくなり、生体電気信号を精度高く取得することが可能となる。また、体動が大きくなくとも、例えば汗をかきにくい状況においても、生体電気信号中にアーチファクトが取り込まれやすいが、この生体電極20は、皮膚に対する密着性が高いことから、生体電気信号中にアーチファクトが取り込まれにくくなり、生体電気信号を精度高く取得することが可能となる。
【0044】
また、従来の生体電極では、電気刺激を付与する場合にも、生体電極20の感度が悪くなり、電気刺激を付与しにくくなる場合があったが、この生体電極20は、皮膚と電極層21との間の接触インピーダンスが低減しているため、感度が高く、生体に対して効果的に電気刺激を付与することもできる。
生体電気信号をより一層精度高く取得する観点から、繊維編地の表面における表面粗さ(Ra)としては、好ましくは35μm以下、より好ましくは30μm以下、さらに好ましくは26μm以下が挙げられる。同様の観点から、表面粗さ(Ra)としては、好ましくは10μm以上が挙げられる。
【0045】
繊維編地の表面における表面粗さ(Ra)は、JIS B0601−2001の規定に準拠した方法により測定した値である。
電極層21の厚みとしては、特に制限されず、例えば10〜1,000μm程度、より好ましくは30〜800μm程度が挙げられる。
この生体電極20において、例えば
図4(D)に示されるように、電極層21は、基材層22の上に設けられていることが好ましい。これにより、この生体電極20の形状安定性、機械的強度を高めることが可能となる。
【0046】
基材層22を構成する素材としては、特に制限されないが、生体電極20の皮膚への密着性を向上させる観点からは、柔軟性に優れた素材が好ましい。基材層22を構成する素材としては、好ましくは、クロロプレンゴムなどのゴムなどや、ポリエステル、ポリウレタン、ポリエチレンなどの樹脂が挙げられる。基材層22を構成する素材は、1種類であってもよいし、2種類以上であってもよい。生体電極20の皮膚への密着性を向上させる観点から、基材層22が樹脂により構成されている場合、樹脂はスポンジ状であることが好ましい。
【0047】
基材層22は、単層であってもよいし、複層であってもよい。また、基材層22が複層である場合、各層を構成する素材は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
基材層22の厚みとしては、特に制限されないが、生体電極20の形状安定性、機械的強度を高めつつ、生体電極20の皮膚への密着性を向上させる観点からは、好ましくは0.1〜10mm程度、より好ましくは1〜8mm程度が挙げられる。
【0048】
この生体電極20において、例えば
図4(D)に示されるように、電極層21と基材層22との間に、水分透過抑制層23をさらに有することが好ましい。この生体電極20においては、水分透過抑制層23が設けられていることにより、皮膚から放出された水分を、皮膚と電極層21表面との間に、より効率的に留めることが可能となり、生体電気信号をより一層精度高く取得し得る。
【0049】
水分透過抑制層23は、生体電極20の水分透過を抑制できるものであれば、特に制限されず、樹脂フィルム、不織布などにより構成することができる。水分透過抑制層23を構成する素材としては、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレート、アクリル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロンなどが挙げられる。また、水分透過抑制層23を不織布により構成することができる。水分透過抑制層23は、単層であってもよいし、複層であってもよい。また、水分透過抑制層23が複層である場合、各層を構成する素材は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0050】
水分透過抑制層23の水分透過率としては、特に制限されないが、好ましくは200g/m
2/h以下、より好ましくは150g/m
2/h以下が挙げられる。なお、水分透過抑制層23の水分透過率は、JIS L1099(A−1法)の方法により測定した値である。
【0051】
水分透過抑制層23の厚みとしては、特に制限されず、例えば1〜500μm程度、より好ましくは10〜200μm程度が挙げられる。
電極層21と、基材層22や水分透過抑制層23とを積層する方法としては、特に制限されず、熱プレスや、接着層24を設ける方法などが挙げられる。例えば、電極層21と基材層22とを熱プレスにより接着する場合、温度80〜200℃程度、圧力0.05〜20MPa程度、1〜60秒程度の条件で熱プレスすることが好ましい。また、電極層21と水分透過抑制層23とを熱プレスにより接着する場合、温度80〜200℃程度、圧力0.01〜10MPa程度、5〜120秒程度の条件で熱プレスすることが好ましい。また、基材層22と水分透過抑制層23とを熱プレスにより接着する場合、温度80〜200℃程度、圧力0.01〜10MPa程度、5〜120秒秒程度の条件で熱プレスすることが好ましい。
【0052】
また、接着層24を設ける方法としては、例えば、ウレタン不織布、ナイロン不織布などを各層の間に配置して、熱圧着させる方法や、変性シリコーンポリマーなどの接着剤を用いる方法が挙げられる。接着層24を設ける場合、接着層24の厚みとしては、特に制限されず、例えば1〜300μm程度、より好ましくは10〜200μm程度が挙げられる。
【0053】
この生体電極20には、必要に応じて、これらの層以外の層をさらに設けてもよい。この生体電極20の総厚みとしては、特に制限されず、例えば0.1〜12mm程度、より好ましくは1〜10mm程度が挙げられる。
この生体電極20と、生体電気信号を記録する機器とを、後述するように、配線などで接続することにより、心電図、筋電図、脳波、心拍変動などの生体電気信号の取得・記録が可能となる。
【0054】
この生体電極20は、電極層21が繊維編地により構成されているため、例えば導電性の粘着性層を電極とした従来の生体電極と異なり、繰り返し洗濯して使用することもできる。
・ヘッドバンドの詳細構造(導電用ハーネスの基材層への取付構造)
上述したように、導電用ハーネス200は電気的に独立した2以上(ここでは4であるが1は予備であるので3であっても構わない)の構成経路が設けられており、検出手段220はこれら4の構成経路の中から基準部位S(A)と第1の部位S(B)と第2の部位S(C)とで異なるように選択されて電気的に接続された生体電極230を含む。さらに詳しくは、検出手段220は、これら4の構成経路の中から基準部位S(A)と第1の部位S(B)と第2の部位S(C)とで異なるように選択されて電気的に接続され導電用ハーネス200に取り付けられた3つの端子台基板222と、端子台基板222の端子に電気的に接続された生体電極230とを含む。
【0055】
図3に示すように、このヘッドバンド100においては、導電用ハーネス200に端子台基板222が取り付けられ、端子台基板222が取り付けられた導電用ハーネス200が環状基材層110に接合されている。以下においては、
図3および
図5を参照して、導電用ハーネス200への端子台基板222の取り付け、および、環状基材層110への(端子台基板222が取り付けられた)導電用ハーネス200の接合について説明し、その後、
図6を参照して、生体電極230の端子台基板222への取り付けを説明する。
【0056】
図3に示すように、環状基材層110は、公知のスポーツ用ヘッドバンド等を流用することが可能であって、内側には滑り防止用のシリコーンゲル等で構成された滑り止め環112を備えることも好ましい。この環状基材層110は、少なくとも一部に伸縮性を備えた環状の形状を備えるものであれば特に限定されるものではなく、その伸縮性を備える比率は、全周長に対して50%以上、好ましくは80%以上であることが好ましい。この比率であると、このヘッドバンド100を頭部Hに装着した場合に、生体電極230を皮膚に密着させて生体信号(脳波信号)を精度高く検出することができる。
【0057】
ここで、生体の個体差により(頭部の大きさは略同じであっても)第1の部位S(B)から第2の部位S(C)までの距離が異なることを容易に調整することのできる変形例を後述するが、そもそも頭部の大きさが異なる人体であってもこのヘッドバンド100で対応できるように、周囲長(径)の異なる環状基材層110を準備して(たとえば、S、M、L等の3種類のスポーツ用ヘッドバンド)、伸張させていない状態で大きさ(径)が異なる3種類のヘッドバンド100を製作することも好ましい。
【0058】
導電用ハーネス200には4線タイプが採用され(1線は予備)、頭部の左右で検出回路を独立させて(端子台基板222Aの部分と導電用ハーネス200の端部202とにおいて電気的に切断しておいて)、左右3箇所ずつの脳波信号(基準信号は左右で共通)を検出しているために、
図3および
図5に示すように、導電用ハーネス200の4つの導電部1のいずれかに端子台基板222の所定の端子が電気的に接続(半田付け)されているとともに、端子台基板222が半田付けされた3線に対して取り出し基板240の3つの端子が電気的に接続(半田付け)されている。ここで、導電用ハーネス200は、額略中央の端子台基板222Aの裏側部分と後頭部中央近傍の端部202とにおいて電気的に切断するために、導電用ハーネス200が環状基材層110の左右略半分ずつで構造的(物理的)に切断されている。このように左右対称の導電用ハーネス200を環状基材層110に接合しているために、均一にこのヘッドバンド100の径が拡張される点で好ましい。
【0059】
図5(A)〜
図5(C)(および後述する
図6)に示すように、端子台基板222は、絶縁基板に金属製のスナップボタンのオス側(オススナップ230A)が取り付けられている。なお、オス側(オススナップ230A)およびメス側(メススナップ230B)で一対の金属製のスナップボタンのいずれか一方側が絶縁基板に取り付けられていれば良い(本実施の形態に係るヘッドバンド100のスナップボタンのオス側とメス側とが逆でも構わない)。
【0060】
ここで、スナップボタンとは、オス側のゲンコ(凸)側とメス側のバネ(凹)側とで構成される衣料等に用いられる保持具(いわゆるボタン)であって、弾性部材(ここではバネ)を含む凹部とその凹部へ嵌合され弾性部材により嵌合状態が保持される凸部とを備えた嵌合部材であれば、スナップボタンに限定されるものではない。さらに、本発明に係る生体信号検出装具においては、このようなスナップボタンおよび上述した嵌合部材に限定されるものではなく、生体信号検出時に検出可能に保持できて生体信号非検出時に取り替え可能に容易に取り外しできる面ファスナー等であっても構わない。
【0061】
端子台基板222のうちの
図5(A)に示す(基準検出手段220A用の)端子台基板222Aにおいては、このオススナップ230Aに端子222T1および端子222T5が電気的に接続され、端子222T1および端子222T5が、導電用ハーネス200の導電部1Aに電気的に接続(半田付け)されている。
端子台基板222のうちの
図5(B)に示す(第1の検出手段220B用の)端子台基板222Bにおいては、このオススナップ230Aに端子222T2および端子222T6が電気的に接続され、端子222T2および端子222T6が、導電用ハーネス200の導電部1Bに電気的に接続(半田付け)されている。
【0062】
端子台基板222のうちの
図5(C)に示す(第2の検出手段220C用の)端子台基板222Cにおいては、このオススナップ230Aに端子222T6および端子222T2が電気的に接続され、端子222T6および端子222T2が、導電用ハーネス200の導電部1Cに電気的に接続(半田付け)されている。
図示したように、端子台基板222Cは端子台基板222Bの上下方向逆使いであって、予備用の端子台基板222は端子台基板222Aの上下方向逆使いが可能である。
【0063】
また、
図5(D)に示すように、取り出し基板240は、絶縁基板に設けられた、端子240T1と端子240T5とが、端子240T2と端子240T6とが端子240T3と端子240T7とが、端子240T4と端子240T8とが、それぞれ電気的に接続(半田付け)され、端子240T1が導電用ハーネス200の導電部1Aに、端子240T2が導電用ハーネス200の導電部1Bに、端子240T3が導電用ハーネス200の導電部1Cに、それぞれ電気的に接続(半田付け)されている。そして、この取り出し基板240に対して、
図2(B)に示すように、3本のリード線242(左右で合計6本)が、端子240T1(または端子240T5)、端子240T2(または端子240T6)および端子240T3(または端子240T7)に、それぞれ電気的に接続(半田付け)されて、ヘッドバンド100の外部のアンプへリード線242が接続されて、アンプにより検出された生体信号が増幅される。
【0064】
図3に示すように、このように端子台基板222および取り出し基板240が電気的に接続(半田付け)された導電用ハーネス200が、環状基材層110に接合される。この場合において、右側(R側)と左側(L側)の検出回路を独立させて(端子台基板222Aの部分と導電用ハーネス200の端部202とにおいて電気的(構造的、物理的)に切断しておいて)導電用ハーネス200が環状基材層110に熱融着テープ(熱溶着テープ、熱合着テープ等)により接合されている。
【0065】
ここで、本実施の形態に係るヘッドバンド100においては、伸張させていない状態における環状基材層110の全周長と導電用ハーネス200の長さ(
図3の右側の端部202から左側の端部202までの長さ)とを略同じにして、環状基材層110の全周に導電用ハーネス200を接合しているが、環状基材層110の一部に導電用ハーネス200を接合するものであっても構わない(環状基材層110の全周に導電用ハーネス200が接合されるヘッドバンドに限定されない)。ただし、この場合においても、端子台基板222および取り出し基板240の位置においては、環状基材層110に導電用ハーネス200が接合されていることが好ましい。
【0066】
さらに、このヘッドバンド100においては取り出し基板240を環状基材層110の周囲に接合された導電用ハーネス200の部分に設けているが、
図3における端部202をさらに延長して、延長した部分に取り出し基板240を設けるようにしても構わない。この場合、取り出し基板240を人体(の頭部H)から遠く離隔させて設けることもできるので、たとえば就寝時の生体信号(脳波)を検出する場合に人体が寝返りしても、硬いリード線が被検者の頭部にないので就寝中であっても違和感なく、一晩中でも生体信号(脳波)を精度高く取得することができる。
・生体電極の詳細構造(生体電極の端子台基板への取付構造)
上述したように、端子台基板222および取り出し基板240が電気的に接続された導電用ハーネス200が環状基材層110へ接合された状態のヘッドバンド100について、
図6を参照して、生体電極230の端子台基板222への取り付けを説明する。なお、
図6(A)は生体電極230を端子台基板222への取り付け直前を、
図6(B)は生体電極230を端子台基板222への取り付け途中を、
図6(C)は生体電極230を端子台基板222への取り付け後を、
図6(D)は
図6(C)に図示した平面Pを矢示X方向から見た、それぞれ斜視図である。
【0067】
図5(A)〜
図5(C)および
図6に示すように、生体電極230が備える電極層21を構成する繊維編地232には、端子台基板222に設けられた一方側(ここではオス側)と対をなす他方側(ここではメス側)の金属製のスナップボタン(メススナップ230B)が設けられるとともに、オス部230A1の大きさに対応する穴部236が設けられ、穴部236を通してオス側のスナップボタン(オススナップ230A)とメス側のスナップボタン(メススナップ230B)とが嵌合されて、端子台基板222に生体電極230が取り付けられる。ここで、生体電極230の少なくとも肌に当接する側(表側)は、電極層21を構成する繊維編地232により構成されていなければならない。また、オススナップ230Aとメススナップ230Bとで一対のスナップボタンは金属製であって、メススナップ230Bが電極層21を構成する繊維編地232に設けられているために、オススナップ230Aとメススナップ230Bとが嵌合した後には、電極層21、メススナップ230B、オススナップ230A、端子台基板222の所定の端子222Tおよび導電用ハーネス200の所定の導電部1が電気的に導通される。
【0068】
この生体電極230の裏側にはスポンジ等の弾力性を備えた緩衝体234が設けられている。
図6(D)に示すように、この緩衝体234により、電極層21を構成する繊維編地232が肌に密着されて、生体信号(脳波)を精度高く取得することができる。なお、生体電極230の上下方向長さは、環状基材層110の上下方向長さの3倍〜4倍程度であって、
図6(D)に示すように生体電極230を端子台基板222に取り付けた場合に環状基材層110の内側であって上下方向の中央を含む部分に来るように緩衝体234が生体電極230の裏側に貼付等により設けられている。
【0069】
以下において、
図6(A)〜
図6(C)を参照して、生体電極230の端子台基板222への取り付け手順を説明する。
図6(A)に示すように、生体電極230の裏側(緩衝体234取り付け面)が端子台基板222(ここでは端子台基板222Aとする)に対向させて、かつ、オススナップ230Aのオス部230A1が穴部236に対向させる。
【0070】
次いで、
図6(B)に示すように、オススナップ230Aのオス部230A1を穴部236に貫通させてから、環状基材層110の表面(外側)から裏面(内側)へ、メススナップ230Bがオススナップ230Aの位置まで生体電極230を回り込ませる。なお、この
図6(B)においては環状基材層110に対して生体電極230を上側から下側へ回り込ませているが、逆に生体電極230を下側から上側に回り込ませても構わない。
【0071】
次いで、
図6(C)に示すように、メススナップ230Bをオススナップ230Aへ穴部236を介して嵌合させて固定することにより、端子台基板222に生体電極230を取り付ける。このとき、
図6(D)に示す構造になるように、生体電極230の大きさ(特に上下方向長さ)、緩衝体234の大きさおよび位置、オススナップ230Aおよびメススナップ230Bの位置、ならびに、穴部236の大きさおよび位置が設定されている。
【0072】
<ヘッドバンドによる生体信号検出方法>
このようにして、端子台基板222および取り出し基板240が導電用ハーネス200に電気的に接続され、導電用ハーネス200が環状基材層110へ接合され、生体電極230が端子台基板222への電気的に接続されて、
図1および
図2に示すヘッドバンド100が完成する。以下において、このヘッドバンド100を用いた生体信号検出方法を
図1を参照して説明する。
【0073】
まず、ヘッドバンド100の環状基材層110および環状基材層110に接合された導電用ハーネス200を、その環状の径を人為的に拡張させる(拡張ステップ)。
次に、環状の径が拡張させた状態のヘッドバンド100を人体の頭部Hに嵌めた後に、人為的な拡張を取り止めてヘッドバンド100を人体の頭部Hに装着する(装着ステップ)。なお、このとき、ヘッドバンド100が環状基材層110(および導電用ハーネス200)の伸縮性により人体の頭部Hに確実に装着されるように(環状基材層110の伸縮性により検出部位がずれないように)ヘッドバンド100の種類(サイズ)が適宜選択されることが好ましい。
【0074】
次に、
図1(C)に示すように、第1の検出手段220Bの位置を人体の頭部Hの額の位置(第1の部位S(B))に合わせ(第1部位決定ステップ)、第2の検出手段220Cの位置を、領域S内の所定の位置である、人体の耳介の付け根の位置(第2の部位S(C))に合わせる(第2部位決定ステップ)。このとき、ヘッドバンド100の環状基材層110および導電用ハーネス200が伸縮性を備えるので、生体の個体差により第1の部位から第2の部位までの距離が異なる場合であっても位置を調整しやすい。また、このように部位調整ステップが終わったときには、基準生体信号を検出する基準検出手段220Aの位置は、額略中央部の基準部位S(A)に位置決めされている。
【0075】
このように検出準備が終わると、第1の部位(S(B))である額における第1の生体信号である左右の第1の部位S(B)間の電位差、および、第2の部位(S(C))である外耳における第2の生体信号である左右の第2の部位S(C)間の電位差をアンプを介して検出する(検出ステップ)。
このようにして、第1の部位の生体信号および第1の部位とは位置が異なる第2の部位の生体信号を、1つの装具で検出できるようにしたので、容易に調整可能で、かつ、精度高く生体信号を検出することができる。
【0076】
なお、このような生体信号検出方法を繰り返した場合、生体電極230が備える電極層21を構成する繊維編地232が人体の肌の皮脂等により汚損すると、精度高く生体信号を検出することが困難になる。このような場合には、生体電極230と端子台基板222とがスナップボタンで取り付けられているので、容易に交換することが可能である。
<本実施の形態に係るヘッドバンドの作用効果>
以上のようにして、本実施の形態に係るヘッドバンド100によると、人体の頭部に装着されて人体の体表面に取り付けられた生体電極から生体信号を検出する場合において、第1の部位(額)の生体信号(脳波)および第1の部位とは位置が異なる第2の部位(耳)の生体信号(脳波)を、生体の個体差により第1の部位から第2の部位までの距離が異なる場合であっても容易に調整可能で、かつ、精度高く生体信号を検出することができる。
【0077】
<変形例>
以下において、上述した
図3に対応する
図7および上述した
図1に対応する
図8を参照して、本発明に係る生体信号検出装具の変形例であるヘッドバンド101について説明する。なお、このヘッドバンド101は、上述した実施の形態に係るヘッドバンド100の構成に加えてさらに2つの端子台基板222Cを備える点が異なる。それ以外の構造であって上述した実施の形態と同じ構造については同じ符号を付している。それらについての説明は、上述した説明と重複するために、ここでは繰り返して説明しない。
【0078】
このヘッドバンド101は、生体の個体差により第1の部位(S(B))から第2の部位(S(C))までの距離Lが異なること(
図8におけるL(1)≠L(2))を調整するために、第1の検出手段220Bおよび第2の検出手段220Cの少なくともいずれかは(このヘッドバンド101においては第2の検出手段220C)、導電用ハーネス200に取り付けられた複数(ここでは3)の端子台基板222Cを備え、生体電極230は、複数の端子台基板222Cのいずれかに電気的に接続される。
【0079】
さらに好ましくは、このヘッドバンド101は、人体の頭部に装着されて、第1の生体信号として額(第1の部位(S(B))における生体信号を検出するとともに第2の生体信号として耳介の付け根(第2の部位(S(C))における生体信号を検出し、耳介の付け根における生体信号を検出する第2の検出手段220Cを構成する端子台基板222Cは、導電用ハーネス200に複数(ここでは3)備えられ、第2の検出手段220Cにおいて、生体電極230は、第2の検出手段220Cを構成する複数の端子台基板222Cの中で耳介の付け根の位置に適合するいずれか1つの端子台基板222Cに電気的に接続される。
【0080】
より詳しくは、
図7に示すように、このヘッドバンド101は、
図3に示すヘッドバンド100の端子台基板222Cの前後(環状基材層110の周囲方向における前後)に1つずつ端子台基板222Cをさらに設けている。なお、ヘッドバンド101は、ヘッドバンド100の端子台基板222Cの前後に端子台基板222Cを1つずつ追加するものに限定されるものではなく、3つの端子台基板222Cに限定されるものでもない。すなわち、ヘッドバンド101は、ヘッドバンド100に対して、2以上の端子台基板222Cを備えれば構わず、追加される端子台基板222Cの位置および個数は任意で構わず(追加される個数は1以上)、それらが連続して設けられていても構わず、間隔を備えて設けられていても構わず、それらの間隔が不一致でも構わない。ただし、追加される端子台基板222Cの個数が多くなると、環状基材層110の伸縮性を低下させるために(導電用ハーネス200は伸縮しても端子台基板は基本的に伸縮しないので)好ましくない。
【0081】
以上のような構造を備えたヘッドバンド101を用いた生体信号検出方法を
図8を参照して説明する。
まず、ヘッドバンド100の環状基材層110および環状基材層110に接合された導電用ハーネス200を、その環状の径を人為的に拡張させる(拡張ステップ)。
次に、環状の径が拡張させた状態のヘッドバンド100を人体の頭部Hに嵌めた後に、人為的な拡張を取り止めてヘッドバンド100を人体の頭部Hに装着する(装着ステップ)。なお、このとき、ヘッドバンド100が環状基材層110(および導電用ハーネス200)の伸縮性により人体の頭部Hに確実に装着されるように(環状基材層110の伸縮性により検出部位がずれないように)ヘッドバンド100の種類(サイズ)が適宜選択されることが好ましい。
【0082】
次に、
図8(C)または
図8(D)に示すように、第1の検出手段220Bの位置を人体の頭部Hの額の位置(第1の部位S(B))に合わせる(第1部位決定ステップ)。このとき、基準生体信号を検出する基準検出手段220Aの位置は、額略中央部の基準部位S(A)に位置決めされる。
次に、第2の検出手段220Cを構成する複数の端子台基板222Cの中で耳介の付け根の位置(第2の部位S(C))に最も適合するいずれか1つの端子台基板222Cを選択する(選択ステップ)。
【0083】
次に、
図6を参照して説明した手順で、選択された端子台基板222Cに生体電極230を電気的に接続する(接続ステップ)。
このように検出準備が終わると、第1の部位(S(B))である額における第1の生体信号である左右の第1の部位S(B)間の電位差、および、第2の部位(S(C))である外耳における第2の生体信号である左右の第2の部位S(C)間の電位差をアンプを介して検出する(検出ステップ)。
【0084】
このようにして、ヘッドバンド101はヘッドバンド100と同様に、第1の部位の生体信号および第1の部位とは位置が異なる第2の部位の生体信号を、1つの装具で検出できるようにしたので、容易に調整可能で、かつ、精度高く生体信号を検出することができることに加えて、以下のような作用効果を備える。
図8(C)は、
図1(C)と同じ図(同じ被験者)であって、符号としての長さH(1)および長さL(1)を付している。
図8(D)は、
図1(C)と異なる被験者であって、
図8(C)の符号に加えて長さL(2)を付している。
図8(C)に示す被験者と
図8(D)に示す被験者とでは頭の大きさを示す長さH(1)は同じであっても(この長さH(1)が異なる場合にはサイズ違いのヘッドバンドを選択することになる)頭蓋に対する外耳の相対的な位置が異なるために、第1の部位S(B)と第2の部位S(C)との距離Lが異なり、
図8(C)に示す被験者は長さL(1)であって、
図8(D)に示す被験者は長さL(2)(<L(1))である。
【0085】
図8(C)に示す被験者にヘッドバンド100を装着した場合には、第2の部位S(C)の適正な位置に第2の検出手段220Cが位置決めされるが、
図8(D)に示す被験者にヘッドバンド100を装着した場合には、第2の部位S(C)の適正な位置には第2の検出手段220Cが位置決めされない。これでは、
図8(D)に示す被験者はヘッドバンド100を使用した検出方法では精度高く生体信号を検出することができない。
【0086】
これに対して、本変形例に係るヘッドバンド101においては、
図8(D)に示す被験者に対しては、上述した選択ステップにて、第2の検出手段220Cを構成する複数の端子台基板222Cの中で耳介の付け根の位置(第2の部位S(C))に最も適合するいずれか1つの端子台基板222Cを選択するために(ここでは一番前側の端子台基板222Cが選択される)、精度高く生体信号を検出することができる。しかも、複数の端子台基板222Cの中からいずれか1つの端子台基板222Cを選択して、選択された端子台基板222Cに生体電極230をスナップボタンにより接続するだけにより電気的に接続されるので、その調整が極めて簡単である。
【0087】
以上のようにして、本変形例に係るヘッドバンド101によると、人体の頭部に装着されて人体の体表面に取り付けられた生体電極から生体信号を検出する場合において、第1の部位(額)の生体信号(脳波)および第1の部位とは位置が異なる第2の部位(耳)の生体信号(脳波)を、生体の個体差により第1の部位から第2の部位までの距離Lが異なる場合であっても容易に調整可能で、かつ、精度高く生体信号を検出することができる。
【0088】
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
たとえば、上述した実施の形態に係るヘッドバンド100もその変形例に係るヘッドバンド101も、緩衝体234を介して電極層21を構成する繊維編地232が肌に当接していたが、(1)オススナップ230Aのオス部230A1が肌に当接するようにしても、(2)メススナップ230Bの表面230B1が肌に当接するようにしても、構わない。