特許第6808906号(P6808906)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ シージェイ チェイルジェダン コーポレーションの特許一覧

特許6808906高含量のアルロースを含有する糖類を含む発酵乳
<>
  • 特許6808906-高含量のアルロースを含有する糖類を含む発酵乳 図000011
  • 特許6808906-高含量のアルロースを含有する糖類を含む発酵乳 図000012
  • 特許6808906-高含量のアルロースを含有する糖類を含む発酵乳 図000013
  • 特許6808906-高含量のアルロースを含有する糖類を含む発酵乳 図000014
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6808906
(24)【登録日】2020年12月14日
(45)【発行日】2021年1月6日
(54)【発明の名称】高含量のアルロースを含有する糖類を含む発酵乳
(51)【国際特許分類】
   A23C 9/13 20060101AFI20201221BHJP
   A23C 9/123 20060101ALI20201221BHJP
   C12N 1/20 20060101ALI20201221BHJP
【FI】
   A23C9/13
   A23C9/123
   C12N1/20 A
【請求項の数】11
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2019-530417(P2019-530417)
(86)(22)【出願日】2017年12月4日
(65)【公表番号】特表2020-511939(P2020-511939A)
(43)【公表日】2020年4月23日
(86)【国際出願番号】KR2017014061
(87)【国際公開番号】WO2018105967
(87)【国際公開日】20180614
【審査請求日】2019年6月6日
(31)【優先権主張番号】10-2016-0167707
(32)【優先日】2016年12月9日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】512088051
【氏名又は名称】シージェイ チェイルジェダン コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】CJ CheilJedang Corporation
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】コ, ジフン
(72)【発明者】
【氏名】パク, スンウォン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン, ドンチョル
【審査官】 山村 周平
(56)【参考文献】
【文献】 韓国公開特許第10−2016−0051084(KR,A)
【文献】 国際公開第2015/075473(WO,A1)
【文献】 国際公開第2008/059623(WO,A1)
【文献】 特表2016−510987(JP,A)
【文献】 特開2014−033652(JP,A)
【文献】 特開2014−014276(JP,A)
【文献】 特開2014−007966(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23C 9/00−9/20
C12N 1/00−1/38
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/WPIDS/FSTA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルロース含有糖類を含む発酵乳であって、
前記アルロースは乾燥固形分基準、前記糖類100重量部に対して70重量部以上で含有され
前記糖類は乾燥固形分基準、前記糖類100重量部に対して15重量部以下のブドウ糖を含み、20重量部以下の果糖を含む、発酵乳。
【請求項2】
前記発酵乳は7℃の条件で製造日から21日〜31日のうち選択された日付経過後のpHの差が0.30以下である、請求項1に記載の発酵乳。
【請求項3】
前記発酵乳は7℃の条件で製造日から17日〜28日のうち選択された日付経過後の下記の式1により計算した滴定酸度(titratable acidity)の差が0.20%以下である、請求項1に記載の発酵乳。
【数1】
【請求項4】
前記発酵乳はラクトバチルス属微生物、ビフィドバクテリウム属微生物及びストレプトコッカス属微生物からなる群から選択される1種以上の微生物を含む、請求項1に記載の発酵乳。
【請求項5】
前記発酵乳はラクトバチルスアシドフィルス、ラクトバチルスメセンテロイデス、ラクトバチルスガセリ、ラクトバチルスデルブリッキー、ラクトバチルスラムノーサス、ラクトバチルスカゼイ、ラクトバチルスブレビス、ラクトバチルスサリバリウス、ラクトバチルスプラタラム、ビフィドバクテリウムラクティス及びストレプトコッカスサーモフィルスからなる群から選択される1種以上の微生物を含む、請求項1に記載の発酵乳。
【請求項6】
前記糖類は前記発酵乳100重量部基準、5〜20重量部で含まれる、請求項1に記載の発酵乳。
【請求項7】
前記発酵乳は前記発酵乳100重量部に対して80〜95重量部の牛乳をさらに含む、請求項1に記載の発酵乳。
【請求項8】
乳酸菌培養物にアルロース含有糖類を添加するステップを含む発酵乳の貯蔵性を増加させる方法であって、
前記アルロースは乾燥固形分基準、前記糖類100重量部に対して70重量部以上で含有され
前記糖類は乾燥固形分基準、前記糖類100重量部に対して15重量部以下のブドウ糖を含み、20重量部以下の果糖を含む、方法。
【請求項9】
前記貯蔵性の増加はpH低下の抑制、酸度増加の抑制、酸味増加の抑制、後発酵の抑制または前記微生物の生育抑制によるものである、請求項に記載の方法。
【請求項10】
前記乳酸菌はラクトバチルス属微生物、ビフィドバクテリウム属微生物及びストレプトコッカス属微生物からなる群から選択される1種以上の微生物である、請求項に記載の方法。
【請求項11】
アルロース含有糖類を含み、前記アルロースは乾燥固形分基準、前記糖類100重量部に対して70重量部以上で含有され、前記糖類は乾燥固形分基準、前記糖類100重量部に対して15重量部以下のブドウ糖を含み、20重量部以下の果糖を含む、ラクトバチルスアシドフィルス、ラクトバチルスメセンテロイデス、ラクトバチルスガセリ、ラクトバチルスデルブリッキー、ラクトバチルスラムノーサス、ラクトバチルスブレビス、ラクトバチルスサリバリウス、ラクトバチルスプラタラム、ビフィドバクテリウムラクティス及びストレプトコッカスサーモフィルスからなる群から選択される1種以上の微生物の、生育抑制剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、高含量のアルロースを含有する糖類を含む発酵乳及び前記糖類を用いた発酵乳の貯蔵性を増加させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発酵乳は、原乳または乳加工食品を主成分として微生物(例えば、乳酸菌及び酵母など)で発酵させたものであって、整腸作用だけでなく、免疫調節、抗癌効果及びコレステロール低下などの多様な健康機能性が知られているため代表的な健康食品として認識されており、特有の風味で官能品質も優れているため嗜好食品としても脚光を浴びている。
【0003】
このような発酵乳は生きている乳酸菌を含有しなければならないため、滅菌による常温流通が不可能であり、冷蔵流通が必要であり、賞味期限の確保にも多くの制約が存在する。発酵乳の賞味期限を決める基準としては、賞味期限内に変質されてはならず、法的基準(韓国の場合、「畜産物の加工基準及び成分規格」)を満たす生菌数以上の乳酸菌が含まれていなければならず、賞味期限内に官能品質が保持されなければならない等の内容が含まれる。
【0004】
韓国の場合、従来発酵乳の一般的な賞味期限は10〜14日程度で2週間を超えないが、これは変質の懸念や乳酸菌数の保持よりは官能品質の低下により左右されると考えられる。発酵乳の官能品質には、外観(色及び離水など)、風味(香り、甘味及び酸味など)、物性(組織感及び粘度など)等があるが、このうち賞味期限の設定において最も重要な役割をするのは、甘味と酸味の調和を通じて具現される発酵乳特有の風味と言える。発酵乳の風味を決める甘味と酸味のうち、甘味は流通中にほぼ一定に保持されるが、酸味の場合、発酵乳内に存在する乳酸菌による後発酵により乳酸が生成されて冷蔵流通中にも酸度及び酸味が増加することになる。
【0005】
アルロース(allulose)は、D−フルクトースのC−3エピマーであって、干し葡萄、イチジク、小麦などにごく微量に存在する天然単糖類であり、ショ糖対比70%の甘味度を有するが、g当たりカロリーが0.2kcalであってショ糖(g当たり4kcal)の5%に過ぎず、ショ糖を代替できる甘味料の原料として注目されており、牛乳を含む乳酸菌発酵物に適用した。貯蔵期間の間、適正な範囲内の酸度及びpHを保持する方法が報告されたことがあるが(韓国登録特許第10−1648170号)、発酵乳の一般的な賞味期限を延長できなかった限界があった。
【0006】
このような背景の下で、本出願者らは、発酵乳の賞味期限の延長のために鋭意研究した。その結果、発酵乳に添加する糖類にアルロースが一定の含量以上で含有された場合、ラクトバチルス属微生物、ビフィドバクテリウム属微生物及びストレプトコッカス属微生物が生育できず、後発酵を抑制して発酵乳のpH減少、酸度増加、酸味増加を抑制して賞味期限を延長させることができることを確認することにより、本願を完成するに至った。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本出願の目的は、高含量のアルロースを含有する糖類を含む発酵乳を提供することにある。
【0008】
本出願の他の目的は、乳酸菌培養物に高含量のアルロースを含有する糖類を添加するステップを含む発酵乳の貯蔵性を増加させる方法を提供することにある。
【0009】
本出願のまた他の目的は、高含量のアルロースを含有する糖類を含む微生物の生育抑制剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本出願の目的を達成するために、一態様として、本出願は、アルロース含有糖類を含む発酵乳であって、前記アルロースは乾燥固形分基準、前記糖類100重量部に対して70重量部以上で含有するものである、発酵乳を提供する。
【0011】
具体的に、本出願の発酵乳は、乾燥固形分基準、前記糖類100重量部に対して80重量部以上、90重量部以上、95重量部以上、98重量部以上、70〜100重量部、80〜100重量部、90〜100重量部、93〜100重量部、95〜100重量部、97〜100重量部、98〜100重量部、70〜99重量部、80〜99重量部、90〜99重量部、93〜99重量部、95〜99重量部、97〜99重量部または98〜99重量部でアルロースを含有することができる。
【0012】
本出願において使用されるアルロースは、天然物から直接抽出されたものであってもよく、化学的合成、または生物学的方法で製造されたものであってもよいが、これに限定されない。また、アルロースは結晶質形態または液状(すなわち、シロップ)の形態で提供されることができる。液状アルロースは乾燥固形分(dsまたはDS)基準70〜99重量%のアルロースを含有することができる。また、結晶アルロースは乾燥固形分基準90〜100重量%でアルロースを含有することができる。
【0013】
本出願の用語である「発酵乳」は、原乳を微生物で発酵させたものを意味し、韓国の「畜産物の加工基準及び成分規格」上の発酵乳、濃厚発酵乳、クリーム発酵乳、濃厚クリーム発酵乳、発酵バター油及び発酵乳粉末を含むが、これに限定されない。本出願の原乳は生乳、低脂肪牛乳、無脂肪牛乳、還元乳、還元低脂肪牛乳、粉乳及び脱脂粉乳からなる群から選択された1種以上であってもよいが、これに限定されない。
【0014】
本出願の発酵乳は7℃の条件で製造日から21日〜31日のうち選択された日付経過後のpHの差が0.30以下であってもよい。具体的に、本出願の発酵乳は7℃の条件で製造日から21日〜28日のうち選択された日付経過後のpHの差が0.28以下であってもよく、21日〜24日のうち選択された日付経過後のpHの差が0.27以下であってもよい。
【0015】
また、本出願の発酵乳は7℃の条件で製造日から14日〜35日のうち選択された日付経過後のpHが4.25〜4.5の範囲内であってもよい。
【0016】
本出願の発酵乳は7℃の条件で製造日から17日〜28日のうち選択された日付経過後の下記の式1により計算した滴定酸度(titratable acidity)の差が0.20%以下であってもよい。
【0017】
また、本出願の発酵乳は7℃の条件で製造日から14日〜35日のうち選択された日付経過後の下記の式1により計算した滴定酸度が1.0%未満であってもよい。
【0018】
【数1】
【0019】
本出願の発酵乳は、ラクトバチルス属微生物、ビフィドバクテリウム属微生物及びストレプトコッカス属微生物からなる群から選択される1種以上の微生物を含むことができる。具体的に、本出願の発酵乳はラクトバチルスアシドフィルス、ラクトバチルスメセンテロイデス、ラクトバチルスガセリ、ラクトバチルスデルブリッキー、ラクトバチルスラムノーサス、ラクトバチルスカゼイ、ラクトバチルスブレビス、ラクトバチルスサリバリウス、ラクトバチルスプラタラム、ビフィドバクテリウムラクティス及びストレプトコッカスサーモフィルスからなる群から選択される1種以上の微生物を含むことができる。
【0020】
また、本出願においてアルロースは、発酵乳100重量部基準とする場合、乾燥固形分5〜15重量部、5〜10重量部または5〜8重量部で含まれることができる。
【0021】
本出願の糖類は、ブドウ糖、果糖またはこれらの組み合わせをさらに含むことができる。具体的に、前記ブドウ糖、果糖またはこれらの組み合わせは、乾燥固形分基準、糖類100重量部に対して35重量部以下、30重量部以下、25重量部以下、20重量部以下、15重量部以下、10重量部以下、5重量部以下、1〜35重量部、1〜30重量部、1〜25重量部、1〜20重量部、1〜15重量部、1〜10重量部、1〜5重量部、5〜35重量部、5〜30重量部、5〜25重量部、5〜20重量部、5〜15重量部、5〜10重量部、10〜35重量部、10〜30重量部、10〜25重量部、10〜20重量部、10〜15重量部、15〜35重量部、15〜30重量部、15〜25重量部、15〜20重量部、20〜35重量部、20〜30重量部、20〜25重量部、25〜35重量部、25〜30重量部、30〜35重量部で含まれることができる。本出願の発酵乳は、アルロース、ブドウ糖および果糖以外にも一つ以上の糖類(例えば、単糖類、二糖類、オリゴ糖類、糖アルコール、高甘味料及び液状糖)をさらに含むことができる。
【0022】
具体的に、前記単糖類は、例えば、アラビノース、キシロース、タガトース、アロース及びガラクトースなどが含まれ、前記二糖類は、二つの単糖が結合した糖であって、例えば、乳糖、麦芽糖、トレハロース、ツラノースまたはセロビオースなどが含まれることができる。前記オリゴ糖類は、単糖が3分子以上結合された糖であって、例えば、フラクトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、キシロオリゴ糖、ゲンチオオリゴ糖、マルトオリゴ糖及びガラクトオリゴ糖が含まれることができる。また、前記糖アルコールは、糖類のカルボニル基を還元して生じた物質であって、例えば、エリスリトール、キシリトール、アラビトール、マンニトール、ソルビトール、マルチトール及びラクチトールが含まれることができ、高甘味料はショ糖に比べて10倍以上の甘みを有する物質であって、例えば、アスパルテーム、アセスルファムK、レバウジオシドA及びスクラロースが含まれることができ、液状糖は甘味料を液状形態で含む糖であって、例えば、水あめ、蜂蜜、メープルシロップ及びアカベシロップが含まれることができるが、これに制限されない。
【0023】
他の具現例として、本出願の糖類は、ショ糖(sucrose)、ブドウ糖またはこれらの組み合わせを含まなくてもよい。
【0024】
本出願の発酵乳は、前記発酵乳100重量部に対して80〜95重量部の牛乳をさらに含むことができる。前記牛乳は、原乳、粉乳、全脂粉乳、脱脂粉乳またはこれらの組み合わせであってもよい。
【0025】
さらには、本出願の発酵乳は、7℃の条件で製造日から14日〜35日のうち選択された日付経過後の乳酸菌数が10cfu/ml以上であってもよい。
【0026】
本出願は他の態様として、乳酸菌培養物にアルロース含有糖類を添加するステップを含む発酵乳の貯蔵性を増加させる方法であって、前記アルロースは乾燥固形分基準、前記糖類100重量部に対して70重量部以上で含有される、方法を提供する。
【0027】
前記発酵乳の貯蔵性を増加させる方法において使用される乳酸菌は、前述の発酵乳に含まれる微生物であってもよい。
【0028】
具体的に、本出願の貯蔵性の増加は、pH低下の抑制、酸度増加の抑制、酸味増加の抑制、後発酵の抑制または微生物の生育抑制によるものであってもよい。
【0029】
前記発酵乳の貯蔵性を増加させる方法において、前記アルロース含有糖類を添加するステップは、前記乳酸菌培養物に前記糖類及び牛乳を添加するステップであってもよい。
【0030】
本出願は、また他の態様として、アルロース含有糖類を含む、ラクトバチルスアシドフィルス、ラクトバチルスメセンテロイデス、ラクトバチルスガセリ、ラクトバチルスデルブリッキー、ラクトバチルスラムノーサス、ラクトバチルスカゼイ、ラクトバチルスブレビス、ラクトバチルスサリバリウス、ラクトバチルスプラタラム、ビフィドバクテリウムラクティス及びストレプトコッカスサーモフィルスからなる群から選択される1種以上の微生物の、生育抑制剤を提供する。
【0031】
前記生育抑制剤において、前記アルロースは乾燥固形分基準、前記糖類100重量部に対して70重量部以上で含有されることができる。
【0032】
本出願の発酵乳の貯蔵性を増加させる方法及びアルロース含有糖類を含む微生物の生育抑制剤は、前述のアルロース含有糖類を含む発酵乳と共通する事項(発酵乳、糖類、アルロース、発酵乳に含まれる微生物、pH及び滴定酸度など)について、本明細書の過度な複雑性を避けるためにその記載を省略する。
【発明の効果】
【0033】
本出願によるアルロースを用いた発酵乳は、製品製造後の冷蔵流通中のpH低下、酸度増加及び酸味増加を抑制し、さらには、後発酵の抑制及び微生物の生育抑制を達成することができる。これにより、本出願の発酵乳は官能品質の保持期間が増加し、乳酸菌数は保持されることにより、発酵乳の賞味期限を画期的に延長することができ、併せて、製品の熱量まで下げることにより健康増進に有益である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】本出願の一具現例による発酵乳の冷蔵保管中のpHの変化グラフである。
図2】本出願の一具現例による発酵乳の冷蔵保管中の酸度の変化グラフである。
図3】本出願の一具現例による発酵乳の冷蔵保管中の酸味の変化グラフである。
図4】本出願の一具現例による発酵乳の冷蔵保管中の乳酸菌数の変化グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本出願を下記の実施例を挙げて詳細に説明しようとするが、下記の実施例は例示的に提供されるものであって、本出願がこれに限定されるものではない。
【0036】
1.実験例1:発酵乳の製造
常温で原乳97%(w/w)及び脱脂粉乳3%(w/w)の配合比で原料を混合して30分間攪拌し、90℃で10分間殺菌した後40℃に冷却した。前記混合液にラクトバチルスアシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)、ビフィドバクテリウムラクティス(Bifidobacterium lactis)及びストレプトコッカスサーモフィルス(Streptococcus thermophilus)が混合されたスターターであるABT−5(Chr.Hansen、デンマーク、以下、「乳酸菌」と記載)を無菌的に接種して乳酸菌接種液を製造した。
【0037】
前記乳酸菌接種液を40℃の培養器(Jeio Tech IL−11インキュベータ、韓国)でpH 4.6、滴定酸度0.9%付近に到達するまで4〜5時間培養した後、カードを粉砕し、20℃以下に迅速に冷却させた後、150barの圧力で均質(NiroSoavi NS2006H homogenizer、イタリア)して乳酸菌培養液を製造した。
【0038】
前記乳酸菌培養液とは別途に液状果糖シロップ(75Brix;55重量%果糖、41重量%ブドウ糖及び4重量%麦芽糖混合物;CJ第一製糖(株)の「高果糖」)、50%アルロース混合糖シロップ[アルロース(72Brix、アルロース98重量%以上、CJ第一製糖(株)の「液状アルロース」)と、前記「高果糖」を混合してアルロース乾燥固形分含量を50重量%で製造)、60%アルロース混合糖シロップ(前記「アルロース」と前記「高果糖」を混合してアルロース乾燥固形分含量を60重量%で製造)、70%アルロース混合糖シロップ(前記「液状アルロース」と前記「高果糖」を混合してアルロース乾燥固形分含量を70重量%で製造)、80%アルロース混合糖シロップ(前記「アルロース」と前記「高果糖」を混合してアルロース乾燥固形分含量を80重量%で製造)及びアルロースシロップ(前記「液状アルロース」)をそれぞれ準備した(表1)。アルロースとアルロース混合糖の甘味度が液状果糖より低いため、天然高甘味料であるレバウジオシドA(Rebaudioside A、RA)(RA90重量%、(株)マクロケア)を使用して甘味度を補正した。
【0039】
前記各シロップを常温で30分間攪拌し、90℃で10分間殺菌した後、10℃以下に冷却した上で、前記乳酸菌培養液と各シロップを85:15の重量比率で混合して発酵乳の製造を完了した。
【0040】
【表1】
【0041】
2.実験例2:発酵乳の貯蔵実験
比較例及び実施例1〜実施例5の発酵乳6種を多数の滅菌容器に200mlずつ充填して7℃で冷蔵保管し(Jeio Tech IL−11インキュベータ、韓国)、貯蔵実験を行った。貯蔵期間中、0、1、3、5、7、10、14、17、21、24、28、31及び35日目に試料を採取してpH、滴定酸度(titratable acidity)及び官能検査を通じた酸味の測定を行っており、貯蔵期間中、0、3、7、10、14、17、21、24、28、31及び35日目にはさらに乳酸菌数を測定した。
【0042】
滴定酸度が1.00%以上である場合または酸味が9点尺度法基準で7点以上である場合、官能が低下し、乳酸菌数が10cfu/ml以下である場合には、韓国の「畜産物の加工基準及び成分規格」上の濃厚発酵乳の法的基準を満たせないところ、正常な賞味期限の確保に不適合な時点と判断した。
【0043】
2−1.貯蔵期間によるpHの測定
pHは、採取した試料自体を20℃に調整してpH測定器(Mettler−ToledoSevenCopmpact pH/Ion S220、米国)で測定した。
【0044】
その結果、発酵乳の製造直後にpH4.5〜4.6であったpHが、冷蔵保管中に次第に減少して比較例、実施例1及び実施例2の場合、従来の発酵乳の賞味期限である10〜14日の間にpH4.25未満に減少する一方、実施例3の場合、冷蔵保管後28日まで、実施例4の場合、冷蔵保管後31日まで、実施例5の場合、冷蔵保管後35日までもpH 4.25以上を保持することを確認することができた(表3及び図1)。
【0045】
したがって、アルロースが発酵乳の冷蔵保管中にpHの低下を抑制する機能があるが、60%アルロース混合糖シロップを発酵乳に使用する場合(実施例1及び実施例2)にはその効果が大きくなく、アルロース含量が70%以上であるアルロース混合糖を発酵乳に使用する場合(実施例3〜実施例5)、その効果が著しいことを確認することができた。
【0046】
2−2.貯蔵期間による滴定酸度の測定
滴定酸度は、試料9gを取って同量の炭酸ガスを含有していない蒸留水と混合した後、攪拌しながらpH8.3に到達するまで0.1NのNaOHで滴定して測定することにより、NaOHの滴定量を下記の式1により乳酸の酸度に換算した。
【0047】
【数2】
【0048】
その結果、発酵乳の製造直後0.8程度であった酸度が冷蔵保管中に次第に増加して比較例と実施例1の場合、冷蔵保管14日目の酸度が1.00%まで到達し、既存の発酵乳の賞味期限が14日を超えられない限界を克服することができず、貯蔵期間によって酸度が継続的に増加する傾向を示した。実施例2の場合、冷蔵保管17日目に酸度1.00%に到達して賞味期限の延長効果が大きくなかった。しかし、実施例3の場合、冷蔵保管28日目、実施例4の場合、冷蔵保管31日目、実施例5の場合、冷蔵保管35日までも酸度が1.00%に到達せず、14日以降の酸度の変化の程度が極めて低い傾向を示して賞味期限を画期的に延長できる可能性を示した(表3及び図2)。
【0049】
したがって、アルロースが発酵乳の冷蔵保管中に酸度増加を抑制する機能があるが、アルロース含量が60%以下であるアルロース混合糖を発酵乳に使用する場合(実施例1及び実施例2)にはその効果が大きくなく、アルロース含量が70%以上であるアルロース混合糖を発酵乳に使用する場合(実施例3〜実施例5)にアルロース含量に比例してその効果が増加することが分かった。
【0050】
2−3.貯蔵期間による酸味の測定
酸味の測定は、官能検査を通じて行っており、官能検査のパネルは総10名の訓練されたパネルで運用し、9点尺度法で表2のような基準を設定して行った。
【0051】
【表2】
【0052】
その結果、発酵乳の製造直後5点(酸味が適当である)水準であった酸味が冷蔵保管中に次第に増加して比較例と実施例1の場合、冷蔵保管14日目の酸味が7点(酸っぱい)まで到達して、既存の発酵乳の賞味期限が14日を超えられない限界を克服することができず、14日以降にも酸味は継続的に増加する傾向を示した。実施例2の場合、冷蔵保管17日目に酸味7点に到達して賞味期限の延長効果が大きくなかった。しかし、実施例3及び実施例4の場合、冷蔵保管31日目、実施例5の場合、冷蔵保管35日目になって酸味7点に到達して賞味期限を画期的に延長することができる可能性を示した(表3及び図3)。
【0053】
したがって、アルロースが発酵乳の冷蔵保管中に酸味の増加を抑制する機能があるが、アルロース含量が60%以下であるアルロース混合糖を発酵乳に使用する場合(実施例1及び実施例2)にはその効果が大きくなく、アルロース含量が70%以上であるアルロース混合糖を発酵乳に使用する場合(実施例3〜実施例5)にアルロース含量に比例してその効果が増加することが分かった。
【0054】
2−4.貯蔵期間による乳酸菌数の測定
乳酸菌数の測定は、試料を滅菌された生理食塩水に無菌的に希釈した後、BCP plate count agar(Eiken Chemical、Japan)培地を使用して標準平板法で行っており、37℃で72時間培養した後(Jeio Tech IL−11 incubator、Korea)、黄色の集落のみを計数して希釈倍率を乗じることにより、乳酸菌の生菌数を算出した。
【0055】
その結果、比較例及び実施例のいずれも発酵乳の製造直後10cfu/ml程度であった乳酸菌数が冷蔵保管中に一定に保持されて17日以降減少し始める傾向を示したが、冷蔵保管35日まで10cfu/ml以上を保持して発酵乳にアルロースが添加されても乳酸菌数の減少により賞味期限が減少していないことを確認した(表3及び図4)。
【0056】
【表3】

【表4】
【0057】
前記貯蔵実験の結果を総合する時、発酵乳に添加される糖類として従来一般的に使用される液状果糖を使用した比較例と50%アルロース混合糖を使用した実施例1の場合、冷蔵保管14日目に酸度1.00%及び酸味7点以上に到達して既存の発酵乳の賞味期限が14日を超えられない限界を克服することができなかった。また、60%アルロース混合糖シロップを使用した実施例2の場合にも冷蔵保管17日目に酸度1.00%及び酸味7点以上に到達して発酵乳の賞味期限の延長効果が微々たるものであった。反面、発酵乳の糖類として70%アルロース混合糖シロップを使用した実施例3と80%アルロース混合糖シロップを使用した実施例4の場合、冷蔵保管28日目まで酸度1.00%及び酸味7点以上に到達せず、発酵乳の糖類として液状アルロースのみを使用した実施例5の場合、冷蔵保管31日目まで酸度1.00%、酸味7点に到達しなかった。したがって、アルロースの乾燥固形分含量が70重量%以上である糖類を発酵乳に使用する場合、賞味期限を既存の14日より2倍以上延長可能であることが分かる。
【0058】
3.実験例3:アルロースの乳酸菌生育抑制能の評価
アルロースがABT−5に含まれている乳酸菌以外の乳酸菌の生育を抑制して乳酸の発酵も抑制することができるかを確認するために、代表的な乳酸菌18種を対象として培養実験を行った。
【0059】
下記の表4の組成で最小培地を製造して121℃で15分間滅菌処理し(Jeio Tech AC−13 autoclave、Korea)、これとは別途に、ブドウ糖(glucose)とアルロースをそれぞれ蒸留水に溶解して50%(w/v)溶液を製造した後、0.45μmのマイクロフィルタで濾過した(Pall Life Sciences Acrodisc syringe filter、U.S.A.)。以後、50%(w/v)ブドウ糖溶液及び50%(w/v)アルロースそれぞれの溶液を滅菌処理した最小培地と4:96の比率で混合してブドウ糖培地及びアルロース培地を製造した。
【0060】
【表5】
【0061】
代表的な乳酸菌18種(表5)を選別してブドウ糖培地及びアルロース培地にそれぞれ0.1%(w/v)の比率で接種し、37℃の培養器で培養し(Jeio Tech IL−11 incubator、Korea)、時間別に(0、3、6、9、12、24及び48時間)試料を採取して600nmの条件でそれぞれの吸光度を測定した(Hitachi U−2900 spectrophotometer、Japan)。
【0062】
その結果、ブドウ糖培地では、前記18種の乳酸菌が全て正常な生長をしたが、アルロース培地では、前記18種の乳酸菌の全てが全く生長できず、吸光度が増加しなかった(表5)。したがって、アルロースが前記18種の乳酸菌の生育を抑制することができ、前記18種の乳酸菌を培養した培養液を用いて製造した発酵乳において、生育の抑制に起因した乳酸の後発酵の抑制により、賞味期限の延長効果を有し得ることが分かる。
【0063】
【表6】
図1
図2
図3
図4