特許第6808911号(P6808911)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6808911
(24)【登録日】2020年12月14日
(45)【発行日】2021年1月6日
(54)【発明の名称】蓋付き容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 43/22 20060101AFI20201221BHJP
【FI】
   B65D43/22 100
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-64987(P2015-64987)
(22)【出願日】2015年3月26日
(65)【公開番号】特開2016-182983(P2016-182983A)
(43)【公開日】2016年10月20日
【審査請求日】2018年2月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001276
【氏名又は名称】特許業務法人 小笠原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】和田 潔
(72)【発明者】
【氏名】漆原 修
【審査官】 矢澤 周一郎
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2014/0319162(US,A1)
【文献】 実開平06−078265(JP,U)
【文献】 英国特許出願公開第02240322(GB,A)
【文献】 特開2000−236937(JP,A)
【文献】 特開平11−263359(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 35/44−35/54
B65D 39/00−55/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒型の容器本体と、前記容器本体とヒンジによって連結され、前記容器本体の開口部に対して開閉自在に設けられた蓋体とを備える容器であって、
前記蓋体は、天面板および、前記天面板に形成され、閉状態において前記容器本体の側壁の内周面に嵌合して前記容器本体を密封するインナーリングを含み、
前記インナーリングには、外周面の周方向に沿って突出する外周面凸部が形成され、
前記容器本体には、側壁の端部近傍の内周面の周方向に沿って突出する内周面凸部が形成され、
前記蓋体を閉じる際、前記蓋体は、前記容器本体に対して前記インナーリングのみが前記内周面凸部のみに接触し、接触箇所である前記外周面凸部が前記内周面凸部を乗り越えることによって、前記インナーリングが前記容器本体を密封した状態で、前記蓋体が前記容器本体にロックされ
前記容器本体の側壁は、前記側壁の開口部の近傍に、前記容器本体の外側に向かって屈曲する部分を有し、前記内周面凸部が前記屈曲する部分より前記側壁の開口部側に形成されている、容器。
【請求項2】
前記蓋体を閉じる際、前記外周面凸部が前記内周面凸部に接触して乗り越えた後、前記インナーリングが、前記容器本体を密封する、請求項1に記載の容器。
【請求項3】
前記蓋体と前記容器本体の側壁の端部とは、相等しい外径を有し、閉状態において、前記蓋体の天面板と前記容器本体の側壁の端部とが接触する、請求項1または2に記載の、容器。
【請求項4】
前記蓋体の前記ヒンジとの連結箇所とは反対側の周縁部に、前記蓋体の天面板の上面と同一平面に含まれる上面を有する鍔が形成されている、請求項1〜3のいずれかに記載の、容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器本体とその開口部を封止する蓋体とを備えた容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、容器本体にヒンジによって連結され容器本体の開口部に対して開閉自在に設けられた蓋体を備える容器が知られている。図4にこのような容器900の断面図を示す。容器900においては、蓋体911に設けられた側壁922とインナーリング912とが、容器本体901の開口部を挟む形で、蓋体911が閉じられる。また、このとき、密閉性を高めるため、インナーリング912が、容器本体901の側壁902の開口部の内周面に嵌入される。蓋体911の側壁922の内周面には周方向に沿って凸部914が形成され、容器本体901の側壁902の外周面には周方向に沿って凹部903が形成され、蓋体の閉状態においては、これらが係合して蓋体911が開かないようロックされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−297010号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような容器においては、蓋体を閉じる際、突条が容器本体の開口部を乗り越える際に、蓋体の側壁が、開口部からの抵抗を受けて、外径が広がる方向に変位する。これにともなってインナーリングも外径が広がる方向に変位するため、開口部の内壁に嵌入する際、内壁に強く当たることとなり、蓋体を閉じるのに大きな力を要する。また、蓋体の側壁を設ける分、蓋体の外径が大きくなり、意匠性を損なう場合がある。また、蓋体の側壁とインナーリングとで容器本体を挟むため、蓋体を閉じる際、空気の逃げ道が狭くなり内圧が高い状態となるため、閉状態において蓋が浮き上がりやすくなり、封止が不充分となったり蓋が開きやすくなったりするおそれがあった。
【0005】
本発明は、容器本体にヒンジで連結された蓋体を有する容器において、蓋体の閉操作をより簡易に確実に行えるようにするとともに、意匠性を向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一局面は、筒型の容器本体と、容器本体とヒンジによって連結され、容器本体の開口部に対して開閉自在に設けられた蓋体とを備える容器である。蓋体は、天面板および、天面板に形成され、閉状態において容器本体の側壁の内周面に嵌合して容器本体を密封するインナーリングを含み、インナーリングには、外周面の周方向に沿って突出する外周面凸部が形成され、容器本体には、側壁の端部近傍の内周面の周方向に沿って突出する内周面凸部が形成され、蓋体を閉じる際、蓋体は、容器本体に対してインナーリングのみが内周面凸部のみに接触し、接触箇所である外周面凸部が内周面凸部を乗り越えることによって、インナーリングが容器本体を密封した状態で、蓋体が容器本体にロックされ、容器本体の側壁は、側壁の開口部の近傍に、容器本体の外側に向かって屈曲する部分を有し、内周面凸部が屈曲する部分より側壁の開口部側に形成されている。
【0007】
蓋体を閉じる際、外周面凸部が内周面凸部に接触して乗り越えた後、インナーリングが、容器本体を密封してもよい。
【0008】
蓋体と容器本体の側壁の端部とは、相等しい外径を有し、閉状態において、蓋体の天面板と容器本体の側壁の端部とが接触してもよい。
【0009】
蓋体のヒンジとの連結箇所とは反対側の周縁部に、蓋体の天面板の上面と同一平面に含まれる上面を有する鍔が形成されてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、容器本体にヒンジで連結された蓋体を有する容器において、蓋体の閉操作をより簡易に確実に行えるようにするとともに、意匠性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係る容器の断面図
図2】本発明の一実施形態および変形例に係る容器の拡大部分断面図
図3】本発明の一実施形態に係る容器の断面図
図4】従来の容器の断面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一実施形態に係る容器100を説明する。容器100は、筒状の側壁102を有する容器本体101と、蓋体111とを含む。容器本体101および蓋体111は、互いにヒンジ121によって連結されている。図1は、容器本体101の中心軸とヒンジ121とを通る面による、蓋体111を閉状態にしたときの容器100の縦断面図である。図2の(a)は、図1に示した縦断面図の部分拡大図である。
【0013】
蓋体111は、天面板113とインナーリング112を有する。インナーリング112は天面板113に形成され、蓋体111の閉状態において容器本体101の側壁102の内周面に嵌合して容器本体101を密封する。
【0014】
インナーリング112の外周面には、周方向に沿って突出する外周面凸部114が形成されている。また、容器本体101には、側壁102の端部近傍の内周面の周方向に沿って突出する内周面凸部103が形成されている。
【0015】
蓋体111を閉じる際、外周面凸部114が内周面凸部103に接触して乗り越えることによって、インナーリング112が容器本体101を密封した状態で、蓋体111が容器本体101にロックされる。
【0016】
蓋体111には、ヒンジ121との連結箇所とは反対側の周縁部に鍔115が形成されている。鍔115と天面板113とは、平坦な面形状を有し、それぞれの上面が同一平面に含まれる形状であることが好ましい。
【0017】
図2の(a)に示す例では、インナーリング112の断面形状は、くの字形状を有している。また、容器本体101の側壁102は、後述する弾性変形を容易にするよう、屈曲して剛性を低減する断面形状を有している。図2の(b)に示す他の例ではインナーリング112は、曲線で面取りされた三角形状の外周面凸部114とを有する断面形状であり、側壁102の内周面凸部103とその近傍は、インナーリング112の外周面に沿う断面形状を有し、また、屈曲して剛性を低減する断面形状を有している。また、図2の(c)に示す他の例では、外周面凸部114としてリブが形成され、側壁102は、剛性を低減するため、内周面凸部103の下方近傍の厚さを薄くしている。このように、インナーリング112および側壁102の断面形状は多様に実施可能である。
【0018】
外周面凸部114は、インナーリング112の全周に形成されてもよく、周方向に沿って部分的に形成されてもよい。また、天面板113には強度を確保するため、中心から放射状に延びる複数のリブを設けてもよい。
【0019】
以下に、蓋体111の開閉の様子の一例を説明する。図3は、一例として図2の(a)に示す蓋体111の開閉過程における、容器100の鍔115近傍の断面図である。
【0020】
蓋体111をヒンジ121を軸として開状態から閉じていくと、図3の(a)に示すように、まず、外周面凸部114が、内周面凸部103に接触する。
【0021】
その後、図3の(b)に示すように、側壁102は径が広がる方向に弾性変形し、インナーリング112は、径が狭まる方向に弾性変形する。さらに、図3の(c)に示すように、外周面凸部114は、内周面凸部103に接触してすべりながらこれを乗り越える。ここで、乗り越えるとは、外周面凸部114の頂部が、内周面凸部103の頂部を越え、側壁102およびインナーリング112の変形状態からの復帰が開始されることをいう。
【0022】
その後、図3の(d)に示すようにインナーリング112が側壁102に接触して、すべりながら嵌入して容器本体101を密封するとともに、外周面凸部114と内周面凸部103とが係合することによって、蓋体111と容器本体101とがロックされ、上記弾性変形の復帰が完了し、閉状態となる。このように、外周面凸部114による内周面凸部103の乗り越えより後にインナーリング112による容器本体101の密封が行われるほうが、密閉後に続行するインナーリング112の嵌入量を小さくでき、容器100の内圧が上昇しにくく好ましい。しかし、これに限定されず、外周面凸部114、インナーリング112の側壁102への接触、インナーリング112による密封のタイミングは、上述と異なってもよい。また、閉状態における係合部分は0.02mm程度の隙間があることが好ましい。
【0023】
蓋体111をヒンジ121を軸として閉状態から開いていく場合、上記の逆の過程をたどる。すなわち、図3の(d)に示す状態から、インナーリング112が容器本体101の内周面をすべって離脱し(図3の(c))、その後、側壁102およびインナーリング112が弾性変形しながら、外周面凸部114の頂部が、内周面凸部103の頂部を乗り越える(図3の(b)、(a))。さらに、外周面凸部114が、内周面凸部103から離脱し、容器本体101の開口部が露出し、開状態となる。図2の(b)、(c)に示す他の例においても同様である。
【0024】
容器100においては、蓋体111を閉じる際、蓋体111は、インナーリング112のみによって容器本体101の側壁102の内側のみから接触する。また、容器本体101の側壁102の外周面を蓋体111が覆うことがない。
【0025】
そのため、インナーリング112が、位置合わせのガイドとして好適に機能し、閉状態に向かうにつれて蓋体111および容器本体101の各中心軸が一致させやすい。また、外周面凸部114が、内周面凸部103を乗り越える際、側壁102の外径が広がるため、インナーリング112の先端が側壁102の内周面に嵌入する際の摩擦力が小さくなる。これらにより、蓋体111と容器本体101との無用な干渉による抵抗力が発生することがなく、開閉動作を小さな力で安定的に行うことができる。また、このため、インナーリング112の側壁102の内周面への接触面積を増やして、密封性を向上することができる。また、鍔115を小さくすることができる。また、閉操作は、天面板113の中央を押下することによっても行うことができる。
【0026】
また、閉状態において、蓋体111の天面板113と容器本体101の側壁102とが接触し、閉状態であることを直接的に視認することができる。そのため、天面板113と側壁102とが少なくとも部分的に接触せず蓋体111が容器本体101から浮いていることを確認することによって、閉操作が不充分であることをただちに検出できるため、閉まり不足を防止しやすい。
【0027】
また、蓋体111と容器本体101の側壁102の端部とを、相等しい外径とすることによって、閉状態において、平面状の天面板113が容器本体101の開口部を最低限度覆う、すっきりした美観を持たせることが可能となり意匠性が向上する。また、側面が揃って蓋体111の周縁が突出しないことにより、落下時の衝撃が蓋体111に局所的に作用して蓋体111が開くおそれを低減することができる。
【0028】
また、閉動作時において蓋体111を閉じる際、空気が逃げやすいため、容器の内圧が高くなりにくく、閉状態において蓋体111が浮き上がりにくく、閉状態を安定的に維持することが出来る。
【0029】
鍔115の上面が天面板113の上面と同一平面に含まれる形状とすることにより、鍔115の押下面の容器本体101の側壁102へのかぶさりをなくし、開閉のための鍔115の押し上げ、押し下げのストロークを小さくすることができる。
【0030】
以上のように、本発明によれば、容器本体にヒンジで連結された蓋体を有する容器において、蓋体の閉操作をより簡易に確実に行えるようにするとともに、意匠性を向上することができる。また、上述した各特徴は適宜省略、変更して実施してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は、容器本体とその開口部を封止する蓋体を備えた容器に有用である。とくに医薬品、試薬、血糖値等のセンサ等を収容する、高い密封性および繰り返しの開閉が要求される容器に有用である。
【符号の説明】
【0032】
100 容器
101 容器本体
102 側壁
103 内周面凸部
111 蓋体
112 インナーリング
113 天面板
114 外周面凸部
115 鍔部
121 ヒンジ
図1
図2
図3
図4