(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来の技術のように、電極体を製造する工程において、2枚のセパレータの端部を超音波溶着等によって接合した場合、2枚のセパレータの一方の端部は、他方の端部に拘束される。このように、2枚のセパレータが互いに拘束し合う状態で、電極体を製造した場合、電極体の形状に歪みが生じる場合がある。その結果、例えば、電極体の端部の、正極板または負極板の活物質未塗工部が積層された部分にずれが生じることがある。このことは、例えば、当該端部と集電体との接合強度または接合精度の低下を招き得る。
【0007】
本発明は、上記従来の課題を考慮し、信頼性の高い蓄電素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る蓄電素子は、電極体を備える蓄電素子であって、前記電極体は、第一セパレータ及び第二セパレータと、前記第一セパレータ及び前記第二セパレータの間に配置された極板と、前記第一セパレータの、前記第二セパレータと対向する面の端縁に沿って設けられ、前記第二セパレータの方向に突出する帯状部とを有する。
【0009】
この構成によれば、第一セパレータの端縁と第二セパレータの端縁との隙間の少なくとも一部が、第一セパレータの端縁に設けられた帯状部によって埋められる。これにより、当該隙間からの、微小な金属片等の異物の進入が抑制される。そのため、例えば、異物が極板に接触することに起因する不具合(例えば、微短絡)の発生が抑制される。
【0010】
また、帯状部は第一セパレータに設けられるため、例えば、第一セパレータ、極板、及び、第二セパレータが積層された電極体の製造工程において、これらの積層を行う際に、帯状部と第二セパレータとの接着または溶着等の作業の必要はない。言い換えると、当該積層等の作業が行われる際に、第二セパレータの端縁は、帯状部に実質的に拘束されない。そのため、第一セパレータの端縁と第二セパレータの端縁とが互いを拘束し合う状態で電極体が形成されることによる、電極体の形状の歪み等の発生が抑制される。つまり、電極体は精度よく形成される。これにより、高い信頼性を有する蓄電素子が実現される。
【0011】
また、本発明の一態様に係る蓄電素子において、前記帯状部は、前記第一セパレータの前記端縁に沿って貼付された片面テープによって形成されているとしてもよい。
【0012】
この構成によれば、帯状部を、片面に接着力を有するテープ(片面テープ)で実現することができる。つまり、異物の進入を抑制する効果を奏する帯状部を、比較的に容易に第一セパレータに設けることができる。
【0013】
また、本発明の一態様に係る蓄電素子において、前記片面テープは、多孔質の材料で形成された基材と、前記基材の前記第一セパレータ側の面に配置された接着材とを有する。
【0014】
この構成によれば、片面テープの基材が多孔質であるため、例えば、片面テープ(帯状部)に電解液が染み込みやすい。つまり、帯状部は、電極体の内部への異物の進入を抑制しつつ、電解液の進入を許容することができる。また、電解液が片面テープの基材に染み込むことにより、電極体の製造後において、帯状部の少なくとも一部が、第二セパレータと接着される。これにより、帯状部による、異物の進入抑制効果がより向上される。
【0015】
また、本発明の一態様に係る蓄電素子において、前記帯状部の、前記第一セパレータの前記面からの高さは、前記極板の厚みよりも小さいとしてもよい。
【0016】
この構成によれば、例えば、帯状部の厚みが大きすぎることによる、電極体の形状の歪み等を生じさせずに、電極体の内部への異物の進入を抑制することができる。
【0017】
また、本発明の一態様に係る蓄電素子において、前記電極体は、前記第一セパレータ、前記極板、及び、前記第二セパレータが巻回されることで形成された巻回型の電極体であるとしてもよい。
【0018】
この構成によれば、電極体の巻回軸方向の端部において存在する、巻回軸と交差する方向に並ぶ第一セパレータの端縁と第二セパレータの端縁との隙間から、電極体の内部への異物の進入が抑制される。また、第一セパレータ等の構成要素を巻回する際に、第二セパレータは帯状部に拘束されないため、例えば、周長差に起因する第一セパレータまたは第二セパレータの端縁の皺の発生が抑制される。
【0019】
また、本発明の一態様に係る蓄電素子において、前記帯状部の伸縮性は、前記第一セパレータ及び前記第二セパレータの伸縮性よりも高いとしてもよい。
【0020】
この構成によれば、帯状部は、例えば巻回されることで生じる圧縮応力または引っ張り応力に応じて変形しやすい。そのため、例えば、周長差に起因する第一セパレータの端縁の皺の発生が抑制される。
【0021】
また、本発明の一態様に係る蓄電素子は、電極体を備える蓄電素子であって、前記電極体は、第一セパレータ及び第二セパレータと、前記第一セパレータ及び前記第二セパレータの間に配置された極板と、前記第一セパレータ及び前記第二セパレータの、互いに対向する端部の間に配置された帯状部とを有し、前記帯状部の、前記第一セパレータ側の接着力は、前記第二セパレータ側の接着力よりも大きいとしてもよい。
【0022】
この構成によれば、第一セパレータの端縁と第二セパレータの端縁との隙間の少なくとも一部が、第一セパレータの端縁に設けられた帯状部によって埋められる。これにより、当該隙間からの、微小な金属片等の異物の進入が抑制される。そのため、例えば、異物が極板に接触することに起因する不具合(例えば、微短絡)の発生が抑制される。
【0023】
また、帯状部の、第一セパレータ側の接着力は、第二セパレータ側の接着力より大きいため、例えば、帯状部が第一セパレータに固定された状態で、第一セパレータ、極板、及び、第二セパレータの積層等の作業を行うことができる。これにより、例えば、当該積層等の作業を効率よく行うことができる。
【0024】
また、本発明の一態様に係る蓄電素子の製造方法は、第一セパレータ及び第二セパレータと、前記第一セパレータ及び前記第二セパレータの間に配置された極板とを有する電極体を備える蓄電素子の製造方法であって、前記第一セパレータの端縁に沿って片面テープを貼付する貼付工程と、前記片面テープが貼付された前記第一セパレータ、前記極板、及び、前記第二セパレータを積層する積層工程とを含む。
【0025】
この製造方法によれば、異物の電極体の内部への進入を抑制する片面テープを備える蓄電素子を製造することができる。また、片面テープは第一セパレータに貼付される。そのため、第一セパレータ、極板、及び、第二セパレータの積層等の作業を行う際に、片面テープは第一セパレータに固定され、かつ、第二セパレータの端縁は、片面テープに実質的に拘束されない。そのため、第一セパレータの端縁と第二セパレータの端縁とが互いを拘束し合う状態で電極体が形成されることによる、電極体の形状の歪み等の発生が抑制される。つまり、電極体は精度よく形成される。このように、本態様に係る蓄電素子の製造方法によれば、信頼性の高い蓄電素子を製造することができる。
【0026】
また、本発明の一態様に係る蓄電素子の製造方法はさらに、前記積層工程において積層された前記第一セパレータ、前記極板、及び、前記第二セパレータを巻回する巻回工程を含むとしてもよい。
【0027】
この製造方法によれば、巻回型の電極体であって、内部への異物の進入を抑制する片面テープを有する電極体を備える蓄電素子を製造することができる。また、第一セパレータ等の構成要素を巻回する際に、第二セパレータは片面テープに拘束されないため、例えば、周長差に起因する第二セパレータの端縁の皺の発生が抑制される。つまり、巻回型の電極体が精度よく形成される。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、信頼性の高い蓄電素子を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態に係る蓄電素子について説明する。なお、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示したものではない。
【0031】
また、以下で説明する実施の形態及びその変形例のそれぞれは、本発明の一具体例を示すものである。以下の実施の形態及びその変形例で示される形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、製造工程の順序などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態及びその変形例における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0032】
また、以下の説明及び図面中において、蓄電素子の上下方向をZ軸方向と定義する。つまり、Z軸方向は、集電体の脚部が延びる方向、または、容器の短側面の長手方向として定義できる。
【0033】
また、2つの電極体の並び方向をY軸方向と定義する。つまり、Y軸方向は、容器の長側面の対向方向、容器の短側面の短手方向、または、容器の厚さ方向として定義できる。また、Z軸方向及びY軸方向と交差する方向をX軸方向と定義する。つまり、X軸方向は蓄電素子の電極体の巻回軸方向、集電体もしくは電極端子の並び方向、または、容器の短側面の対向方向として定義できる。
【0034】
なお、Z軸方向を上下方向としているが、この上下方向は、鉛直方向と平行であってもよく、平行でなくてもよい。つまり、蓄電素子の使用時における姿勢に特に限定はない。
【0035】
(実施の形態)
まず、実施の形態に係る蓄電素子10の構成について説明する。
図1は、実施の形態に係る蓄電素子10の外観を模式的に示す斜視図である。
図2は、実施の形態に係る蓄電素子10の容器100の容器本体111を分離して蓄電素子10が備える各構成要素を示す斜視図である。
図3は、実施の形態に係る蓄電素子10の分解斜視図である。
【0036】
本実施の形態に係る蓄電素子10は、電気を充電し、また、電気を放電することのできる二次電池であり、例えば、非水電解質二次電池である。非水電解質二次電池としては、例えば、正極活物質がコバルト酸リチウムなどのリチウム遷移金属酸化物であり、負極活物質が炭素材料であるリチウムイオン二次電池を挙げることができる。なお、蓄電素子10の種類は、非水電解質二次電池には限定されず、非水電解質二次電池以外の二次電池であってもよく、また、一次電池であってもよい。また、蓄電素子10は、リチウムイオンキャパシタ等のキャパシタであってもよい。
【0037】
図1〜
図3に示すように、蓄電素子10は、容器100と、正極端子200と、負極端子300とを備えている。また、容器100の外方に上部絶縁部材125、135が配置されている。さらに、容器100内方には、下部絶縁部材120、130と、正極集電体140と、負極集電体150と、2つの電極体400とが収容されている。
【0038】
また、蓄電素子10の容器100の内部には電解液(非水電解液)などの液体が封入されているが、当該液体の図示は省略する。なお、容器100に封入される電解液としては、蓄電素子10の性能を損なうものでなければその種類に特に制限はなく様々なものを選択することができる。
【0039】
容器100は、矩形筒状で底を備える容器本体111と、容器本体111の開口を閉塞する板状部材である蓋体110とで構成されている。また、容器100は、2つの電極体400等を内部に収容後、蓋体110と容器本体111とが溶接等されることにより、内部空間を密閉する構造を有している。なお、蓋体110及び容器本体111の材質は、特に限定されないが、例えばステンレス鋼、アルミニウム、アルミニウム合金など溶接可能な金属であるのが好ましい。
【0040】
2つの電極体400は、並列に配置される2つの発電要素であり、ともに、正極集電体140及び負極集電体150と電気的に接続される。本実施の形態では、2つの電極体400は、
図2及び
図3に示すように絶縁フィルム170が周囲に巻きつけられて束ねられている。絶縁フィルム170は、長方形状のシート状の樹脂製の部材であり、2つの電極体400に巻きつけられて、巻き終わり部分を絶縁テープなどにより留められることで、固定される。電極体400の詳細については
図4〜
図9を用いて後述する。
【0041】
正極集電体140は、2つの電極体400の正極側に配置され、正極端子200と2つの電極体400の正極とに電気的に接続される導電性と剛性とを備えた部材である。具体的には、正極集電体140は、2つの電極体400の正極側端部に溶接等によって接合されることで、2つの電極体400の正極と接続される。また、正極集電体140には、開口部140aが形成されており、開口部140aに、後述する正極端子200の接続部210が挿入されてかしめられることで、正極集電体140と正極端子200とが接続される。
【0042】
負極集電体150は、2つの電極体400の負極側に配置され、負極端子300と2つの電極体400の負極とに電気的に接続される導電性と剛性とを備えた部材である。具体的には、負極集電体150は、2つの電極体400の負極側端部に溶接等によって接合されることで、2つの電極体400の負極と接続される。また、負極集電体150には、開口部150aが形成されており、開口部150aに、後述する負極端子300の接続部310が挿入されてかしめられることで、負極集電体150と負極端子300とが接続される。
【0043】
下部絶縁部材120及び上部絶縁部材125は、容器100の蓋体110に固定され、正極集電体140と容器100とを絶縁する絶縁性の樹脂などで形成されたパッキンである。なお、下部絶縁部材120には、後述する正極端子200の接続部210が挿入される開口部120aが形成されており、上部絶縁部材125には、接続部210が挿入される開口部125aが形成されている。
【0044】
下部絶縁部材130及び上部絶縁部材135は、容器100の蓋体110に固定され、負極集電体150と容器100とを絶縁する絶縁性の樹脂などで形成されたパッキンである。なお、下部絶縁部材130には、後述する負極端子300の接続部310が挿入される開口部130aが形成されており、上部絶縁部材135には、接続部310が挿入される開口部125aが形成されている。
【0045】
正極端子200は、2つの電極体400の正極に電気的に接続された電極端子であり、負極端子300は、2つの電極体400の負極に電気的に接続された電極端子である。正極端子200及び負極端子300は、2つの電極体400の上方に配置された蓋体110に取り付けられている。
【0046】
正極端子200には、
図3に示すように、正極端子200と正極集電体140とを電気的に接続する接続部210が設けられている。接続部210は、正極集電体140の開口部140aに挿入されて、正極集電体140に接続される部材であり、例えばリベットである。つまり、接続部210は、上部絶縁部材125の開口部125aと、蓋体110の貫通孔110aと、下部絶縁部材120の開口部120aと、正極集電体140の開口部140aとに挿入されて、かしめられる。これにより、正極端子200は、上部絶縁部材125、下部絶縁部材120、及び正極集電体140とともに蓋体110に固定される。
【0047】
また同様に、負極端子300には、負極端子300と負極集電体150とを電気的に接続する接続部310が設けられている。接続部310は、負極集電体150の開口部150aに挿入されて、負極集電体150に接続される部材であり、例えばリベットである。つまり、接続部310は、上部絶縁部材135の開口部135aと、蓋体110の貫通孔110bと、下部絶縁部材130の開口部130aと、負極集電体150の開口部150aとに挿入されて、かしめられる。これにより、負極端子300は、上部絶縁部材135、下部絶縁部材130、及び負極集電体150とともに蓋体110に固定される。
【0048】
次に、以上のように構成された蓄電素子10が備える電極体400の構成等について、
図4〜
図9を用いて説明する。
【0049】
図4は、実施の形態に係る電極体400の構成概要を示す斜視図である。なお、
図4では、積層されて巻回された極板等の要素を一部展開して図示している。また、図において符号Wが付された一点鎖線は、電極体400の巻回軸を表している。巻回軸Wは、極板等を巻回する際の中心軸となる仮想的な軸であり、本実施の形態では、電極体400の中心を通るX軸に平行な直線である。
【0050】
電極体400は、極板とセパレータとを有する電極体の一例である。本実施の形態では、
図4に示すように、電極体400は、2種類の極板である正極板410及び負極板420と、セパレータ430または450とが積層されかつ巻回されることで形成されている。
【0051】
より詳細には、電極体400は、セパレータ450と、負極板420と、セパレータ430と、正極板410とがこの順に積層され、かつ、巻回されることで形成されている。また、
図4に示すように、電極体400は、巻回軸Wの方向と直交する方向(本実施の形態ではY軸方向)に扁平な形状である。つまり、電極体400は、巻回軸Wの方向から見た場合に、全体として長円形状であり、長円形状の直線部分が平坦な形状となり、長円形状の曲線部分が湾曲した形状となる。このため、電極体400は、対向する一対の扁平部(巻回軸Wを挟んでY軸方向で対向する部分)と、対向する一対の湾曲部(巻回軸Wを挟んでZ軸方向で対向する部分)とを有している。
【0052】
正極板410は、アルミニウムからなる長尺帯状の金属箔(正極基材層411)の表面に、正極活物質を含む正極合剤層412が形成されたものである。負極板420は、銅からなる長尺帯状の金属箔(負極基材層421)の表面に、負極活物質を含む負極合剤層422が形成されたものである。
【0053】
なお、正極合剤層412に用いられる正極活物質、または負極合剤層422に用いられる負極活物質としては、リチウムイオンを吸蔵放出可能な正極活物質または負極活物質であれば、適宜公知の材料を使用できる。また、セパレータ430及び450としては、例えば樹脂からなる微多孔性のシートが採用される。
【0054】
このように構成された電極体400において、より具体的には、正極板410と負極板420とは、セパレータ430または450を介し、巻回軸Wの方向に互いにずらして巻回されている。そして、正極板410及び負極板420は、それぞれのずらされた方向の端部に、活物質が塗工されていない部分である未塗工部を有する。
【0055】
具体的には、正極板410は、巻回軸Wの方向の一端(
図4ではX軸方向プラス側の端部)に、正極活物質が塗工されていない未塗工部411aを有している。また、負極板420は、巻回軸Wの方向の他端(
図4ではX軸方向マイナス側の端部)に、負極活物質が塗工されていない未塗工部421aを有している。
【0056】
つまり、正極板410の露出した金属箔(未塗工部411a)の層によって正極側端部が形成され、負極板420の露出した金属箔(未塗工部421a)の層によって負極側端部が形成されている。正極側端部は正極集電体140と接合され、負極側端部は負極集電体150と接合される。これら接合の手法としては、例えば超音波溶接が採用される。
【0057】
なお、蓄電素子10が備える電極体400の数は2には限定されず、1でもよく、また3以上でもよい。
【0058】
以上のように構成された電極体400はさらに、セパレータ430の端縁に沿って設けられた帯状部435を有する。具体的には、
図4において、セパレータ430の上面は、セパレータ450、負極板420、セパレータ430、及び正極板410からなる積層体が巻回された場合に、セパレータ450と対向する面である。この面(
図4におけるセパレータ430の上面)の端縁に沿って、セパレータ430の長手方向に帯状部435が設けられている。なお、この場合、セパレータ430は第一セパレータの一例であり、セパレータ450は第二セパレータの一例である。また、帯状部435の横幅(
図4におけるX軸方向の幅)は、例えば、0.5mm〜5mm程度である。
【0059】
帯状部435は、微小な金属片等の異物が、セパレータ430及びセパレータ450の端部の隙間から電極体400の内部に進入することを抑制する部材として機能する。
【0060】
図5は、実施の形態に係る帯状部435の配置位置を示す部分拡大図であり、
図6は、
図5におけるVI−VI断面の概要を示す断面図である。なお、
図5及び
図6では、一組の、セパレータ450、負極板420、セパレータ430、及び正極板410からなる積層体の構造を図示している。また、
図5では、帯状部435の配置位置を分かり易く示すように、セパレータ450を、正極板410から離隔させて図示している。
【0061】
図5及び
図6に示すように、電極体400は、帯状部435を有する。帯状部435は、セパレータ430の、セパレータ450と対向する面の端縁に沿って設けられ、セパレータ450の方向に突出する。帯状部435は、例えば、伸縮性、可撓性及び電気絶縁性を有する材料で形成された帯状の部材である。
【0062】
つまり、セパレータ430の端縁とセパレータ450の端縁との隙間の少なくとも一部が帯状部435によって埋められるため、当該隙間からの、異物の進入が抑制される。具体的には、本実施の形態では、
図6に示すように、セパレータ430の端縁とセパレータ450の端縁との隙間であって、負極板420の未塗工部421a側の隙間に、帯状部435が配置される。そのため、例えば、電極体400と負極集電体150(
図3参照)との接合の際に、未塗工部421aの一部が剥がれることで、金属片(異物)が生じた場合、その異物が、当該隙間を介して正極板410に到達することが防がれる。
【0063】
ここで、電極体400の正極板410に、異物である微小な金属片が接触した場合、当該金属が正極電位でイオン化することがある。この場合、イオン化した金属が、近くの負極板420に到達した際に、金属が析出してデンドライトを形成し、このデンドライトが、セパレータ430を貫いて正極板410と負極板420との間の微短絡を発生させる可能性がある。しかしながら、本実施の形態では、上述のように、例えば電極体400と負極集電体150との接合工程において発生した異物の移動は、帯状部435によって抑制される。そのため、上記微短絡等の不具合の発生の可能性は低減される。
【0064】
また、帯状部435は、セパレータ430に設けられるため、例えば、電極体の製造工程において、セパレータ450、負極板420、セパレータ430、及び、正極板410をこの順に繰り返して積層する際に、帯状部435とセパレータ450との接着または溶着等の作業の必要はない。言い換えると、当該積層等の作業が行われる際に、帯状部435は、セパレータ430に固定され、かつ、セパレータ450の端縁は、帯状部435に実質的に拘束されない。そのため、セパレータ430の端縁とセパレータ450の端縁とが互いを拘束し合う状態で電極体400が形成されることによる、電極体400の形状の歪み等の発生が抑制される。つまり、電極体400は精度よく形成される。これにより、高い信頼性を有する蓄電素子10が実現される。
【0065】
また、本実施の形態では、帯状部435は、セパレータ430の端縁に沿って貼付された片面テープによって形成されている。この構成によれば、異物の進入を抑制する効果を奏する帯状部435を、比較的に容易にセパレータ430に設けることができる。
【0066】
具体的には、帯状部435は、
図6に示すように、帯状部435の本体である基材435aと、基材435aのセパレータ430側の面に配置された接着材435bとによって構成されている。つまり、本実施の形態では、基材435aの厚み方向(
図6におけるY軸方向)の両面のうちの一方の面のみに接着材435bが配置された片面テープによって、帯状部435が形成されている。
【0067】
そのため、電極体400の製造工程において、片面テープである帯状部435は、自身が有する接着力によって、セパレータ430に固定され、かつ、セパレータ450の端縁は、帯状部435の外面(接着材435bが配置されていない側の面)と滑り合うことができる。そのため、電極体400の形状の歪み等の発生が抑制され、これにより、電極体400は精度よく形成される。
【0068】
例えば
図7に模式的に示される工程により、帯状部435を有する電極体400が製造される。
図7は、実施の形態に係る電極体400の製造工程を示す図である。なお、
図7では、巻回される各要素を識別しやすいように、正極板410及び負極板420を実線で表し、セパレータ430及び450を破線で表し、片面テープである帯状部435を点線で表している。また、巻回装置730については、矩形の破線によって配置位置が示されている。これらの事項については、後述する
図11についても同じである。
【0069】
本実施の形態に係る蓄電素子10の製造方法は、例えば
図7に示される電極体400の製造工程を含んでいる。すなわち、本実施の形態に係る蓄電素子10は、セパレータ430の端縁に沿って帯状部435(片面テープ)を貼付する貼付工程と、片面テープが貼付されたセパレータ430、正極板410、負極板420、及び、セパレータ450を積層する積層工程とを含む。例えば、
図7において、第一ローラユニット710によって貼付工程が実行されており、第二ローラユニット720によって積層工程が実行されている、と説明することができる。
【0070】
この製造方法によれば、異物の電極体400の内部への進入を抑制する帯状部435であって、片面テープによって形成された帯状部435を備える蓄電素子10を製造することができる。
【0071】
また、本実施の形態に係る蓄電素子10はさらに、積層工程において積層された正極板410、セパレータ430、負極板420、及び、セパレータ450を巻回する巻回工程を含む。これにより、巻回型の電極体400であって、内部への異物の進入を抑制する帯状部435を有する電極体を備える蓄電素子を製造することができる。
【0072】
具体的には、本実施の形態では、下から順に、セパレータ450、負極板420、セパレータ430及び正極板410が重ねられた状態で、巻回装置730によって巻回されることで、電極体400が製造される。つまり、巻回装置730によって巻回工程が実行されている。
【0073】
より詳細には、セパレータ430等を含む積層体が、巻回装置730によって巻回されるよりも前に、第一ローラユニット710によって、セパレータ430の端縁に、片面テープである帯状部435が貼付される。また、第二ローラユニット720によって、セパレータ450、負極板420、帯状部435が貼付されたセパレータ430、及び、正極板410が、厚み方向(
図7におけるY軸方向)でまとめられ、巻回装置730によって巻回される。
【0074】
すなわち、本実施の形態では、帯状部435が貼付されたセパレータ430が、巻回装置730によって巻回される。その結果、セパレータ430と、正極板410と、巻回装置730において巻回されている部分の最外周に位置するセパレータ450と、負極板420とが、この順に積層される。つまり、
図5及び
図6に示される順で積層された、負極板420、セパレータ430、正極板410、及び、セパレータ450からなる積層体が形成される。
【0075】
そのため、巻回装置730を用いてセパレータ430等を巻回する巻回工程が、負極板420、片面テープ(帯状部435)が貼付されたセパレータ430、正極板410、及び、セパレータ450をこの順で積層する積層工程を兼ねている、ということもできる。すなわちこの場合、当該積層工程が、巻回装置730によって実行されている、と説明することができる。
【0076】
なお、正極板410と負極板420との間に、セパレータ430または450が挟まれた状態で電極体400が形成されるのであれば、巻回される前における、正極板410、負極板420、セパレータ430及びセパレータ430の重なり順に限定はない。
【0077】
例えば、
図7に示す第二ローラユニット720を通過する時点において、片面テープ(帯状部435)が貼付されたセパレータ430、正極板410、セパレータ450、及び負極板420がこの順に積層されてもよい。
【0078】
また、電極体400の製造工程において、第二ローラユニット720は必須ではなく、セパレータ430等が巻回される前の時点において、セパレータ430への片面テープ(帯状部435)の貼付が行われていればよい。例えば、
図7において、第二ローラユニット720が配置されていなくてもよい。
【0079】
このように、本実施の形態では、巻回型の電極体400の製造工程において、セパレータ430及び正極板410等を巻回しながら、セパレータ430への片面テープの貼付、つまり、帯状部435の形成を行っている。つまり、電極体400の製造効率を低下させない態様で、帯状部435の形成が行われている。
【0080】
また、本実施の形態に係る蓄電素子10の製造方法によれば、セパレータ430の端縁とセパレータ450の端縁とを溶着する場合、及び、これら端縁を両面テープ等によって接着する場合と比較すると、電極体400を精度よく形成することができる。
【0081】
具体的には、仮に、セパレータ430の端縁とセパレータ450の端縁とを溶着した場合を想定すると、以下のような問題が生じる。すなわちこの場合、これら端縁の隙間を、これら端縁の延在方向のほぼ全域に渡って埋めることができる。しかしその一方で、セパレータ430及びセパレータ450が巻回された場合に、セパレータ430及びセパレータ450の周長差により、これら端縁の一方が他方に引っ張られる状態となる。その結果、セパレータ450、負極板420、セパレータ430、及び、正極板410からなる積層体を巻回していくうちに、これらセパレータ450等の、巻回軸Wの方向へのずれが生じる。これにより、例えば、本来的には端縁が揃った位置に並ぶべき未塗工部(未塗工部411a及び未塗工部421aのそれぞれ(
図4参照))が、ずれた状態となる。このことは、例えば、電極体400と正極集電体140または負極集電体150との接合強度または接合精度の低下の要因となる。
【0082】
また、仮に、セパレータ430の端縁及びセパレータ450の端縁を、両面テープで接着した場合を想定すると、以下のような問題が生じる。すなわちこの場合、セパレータ430及びセパレータ450が巻回されることで、セパレータ430及びセパレータ450の周長差により、これら端縁の一方が他方に引っ張られる状態となる。その結果、例えば、極率半径が小さい部分である湾曲部において、両面テープと、セパレータ430またはセパレータ450との剥離が生じ、かつ、セパレータ430またはセパレータ450に皺が発生することで、比較的に大きな隙間が生じる場合がある。つまり、セパレータ430の端縁及びセパレータ450の端縁の延在方向の一部において、異物が進入しやすい部分が形成される場合がある。
【0083】
しかしながら、本実施の形態に係る蓄電素子10の製造方法によれば、電極体400の製造工程において、帯状部435である片面テープは、セパレータ430に固定され、かつ、セパレータ450とは滑り合うことができる。そのため、例えば、セパレータ430の端縁とセパレータ450の端縁とを溶着する場合、及び、これら端縁を両面テープ等によって接着する場合と比較すると、周長差に起因するセパレータ430またはセパレータ450の端縁の皺の発生が抑制される。すなわち、本実施の形態に係る蓄電素子10の製造方法によれば、電極体400の形状の変形が抑制される。つまり、巻回型の電極体400は精度よく形成される。
【0084】
また、本実施の形態では、帯状部435である片面テープの基材は、多孔質の材料で形成されている。
図8は、多孔質の材料で形成された基材435aを有する片面テープ(帯状部435)の効果を説明するための断面図である。
【0085】
本実施の形態に係る帯状部435が有する基材435aは、例えば、不織布、クラフト紙、または発泡成形された樹脂等の、多孔質の材料によって形成されている。そのため、例えば、帯状部435に電解液が染み込みやすい。つまり、帯状部435は、電極体400の内部への異物の進入を抑制しつつ、電解液の進入を許容することができる。
【0086】
また、電解液が帯状部435の基材435aに染み込むことにより、帯状部435の少なくとも一部がセパレータ450と接着されるようになる。この帯状部435とセパレータ450との接着のメカニズムについては、未だ十分に明らかにはなっていないが、本発明者は以下のように推察している。
【0087】
例えば、
図8に模式的に示されるように、接着材435bの一部が、電解液で溶かされることで、基材435aを透過してセパレータ450側の面に現れ、接着層435cが形成される部分が生じる。これにより、帯状部435の少なくとも一部がセパレータ450と接着される。つまり、帯状部435による、異物の進入を抑制する効果がより向上される。なお、この接着は、電極体400の製造後に生じるため、セパレータ450の端縁が、セパレータ430に設けられた帯状部435に拘束された状態で電極体400の製造が行われることによる、電極体400の形状の歪み等の問題は生じない。
【0088】
また、
図8に示すように、帯状部435の厚み方向の両面に接着力がある場合、電極体400は、以下のように説明することもできる。すなわち、電極体400は、セパレータ430及びセパレータ450と、セパレータ430及びセパレータ450の間に配置された正極板410と、セパレータ430及びセパレータ450の、互いに対向する端部の間に配置された帯状部435とを有する。この電極体400において、帯状部435の、セパレータ430側の接着力は、セパレータ450側の接着力よりも大きい。
【0089】
また、基材435aが多孔質の材料で形成されていることにより、例えば、帯状部435の伸縮性が向上される。その結果、帯状部435は、巻回されることで生じる圧縮応力または引っ張り応力に応じて変形しやすくなる。そのため、帯状部435は、例えばセパレータ430とともに巻回される場合におけるセパレータ430への追従性が向上され、このことは、電極体400の形状の歪みの抑制に寄与する。また、例えば、帯状部435が、セパレータ430の端縁とセパレータ450の端縁との隙間の形状に沿って変形し易くなるため、当該隙間全体における、帯状部435によって埋められる割合を増加させる効果も発揮される。つまり、帯状部435による異物の進入抑制効果が向上される。なお、この効果は、帯状部435の伸縮性が、セパレータ430及びセパレータ450の伸縮性よりも高い場合に顕著となる。
【0090】
また、本実施の形態では、帯状部435の厚みは正極板410の厚みよりも小さい。
図9は、実施の形態に係る帯状部435の厚みと正極板410の厚みとの関係を示す図である。すなわち、セパレータ430の、セパレータ450と対向する面の端縁に沿って設けられに帯状部435の、当該面からの高さ(帯状部435の厚みHa)は、正極板410の厚みHbよりも小さい。具体的には、帯状部435の厚みHaは、例えば50〜200μm程度であり、正極板410の厚みHbは、例えば、100〜250μm程度であり、かつHa<Hbである。
【0091】
これにより、例えば、帯状部435の厚みが大きすぎることによる、電極体400の形状の歪み等を生じさせずに、電極体400の内部への異物の進入を抑制することができる。つまり、帯状部435による異物の進入抑制効果を実質的に損なわない程度に帯状部435を薄くすることで、帯状部435を含む積層体が巻回される場合における、帯状部435によって生じるストレスを軽減させることができる。
【0092】
ここで、本願発明者らは、以上のように構成された蓄電素子10における帯状部435の実効性を確認するための実験を行った。具体的には、容器本体111の内部に、厚みが10μm程度であって、縦幅及び横幅が300μm程度の、銅(Cu)の微小金属片を、約20個投入し、容器本体111の開口を蓋体110で封止した。つまり、負極基材層421の一部が剥離することで生じる程度のサイズの異物を複数用意し、これら異物を蓄電素子10の製造工程において容器100内に封入した。このようにして、予め異物を封入させた蓄電素子10を2つ(蓄電素子A及びBとする)用意し、それぞれ揺することで異物を流動させ、その後、負極が上向きとなる姿勢で2週間放置した。つまり、蓄電素子A及びBは、電極体400の巻回軸Wが鉛直方向と平行(略平行も含む)になり、かつ、帯状部435が配置された端部が上向きとなる姿勢で放置された。
【0093】
放置後、蓄電素子A及びBの端子電圧を測定したところ、何れも微小短絡が発生しているとみなせるような電圧低下はなかった。
【0094】
さらに、このように所定の期間放置された蓄電素子A及びBを分解して、蓄電素子A及びBのそれぞれが備える2つの電極体400(合計4つの電極体400)において、異物が帯状部435を越えて当該電極体400の内部に進入したか否かを調べた。以上の実験により、表1に示す結果が得られた。なお、表中の、「エレメントa」及び「エレメントb」は、1つの蓄電素子10に備えられた2つの電極体400を表している。また、「テープ」は、帯状部435を形成する片面テープを意味しており、表中の数値は、異物の数を示している。また、本実験では、片面テープとして、基材が特殊クラフト紙(基材厚さ:0.1mm)、接着材がゴム系接着剤である、2.5mm幅の電気絶縁用テープ(厚さ:0.15mm)を用いた。この片面テープは、接着材435b側のセパレータ430だけでなく、反対側のセパレータ450にも接着していた。また、接着した2枚のセパレータ430とセパレータ450とを引き剥がすと、片面テープは、セパレータ450から引き離されて、セパレータ430側に残った。
【0096】
この表1に示されるように、各電極体400において、帯状部435の近傍に到った異物は1以上存在するものの、いずれの異物も、帯状部435またはその手前で停止していた。より具体的には、上記実験の結果、いずれの異物も、帯状部435の端面に引っ掛かった状態、または、帯状部435に乗り上げた状態で停止するか、2つのセパレータ(430、450)の端縁の間において帯状部435に到達する前で停止していた。すなわち、4つの電極体400の全てにおいて、帯状部435を越えて当該電極体400の内部に進入した異物は存在しなかった。
【0097】
以上の実験結果からも、電極体400が、セパレータ430の端縁に沿って設けられた帯状部435を有することで、帯状部435が設けられた側(本実施の形態では負極側)から電極体400の内部への異物の進入が抑制されることが分かる。
【0098】
なお、蓄電素子10は、
図4〜
図9に示す帯状部435とは異なる態様の帯状部を有してもよい。そこで、以下に、実施の形態に係る帯状部435に関する各種の変形例を、上記実施の形態との差分を中心に説明する。
【0099】
(変形例1)
図10は、実施の形態の変形例1に係る帯状部436の断面形状の一例を示す図である。なお、
図10は、
図5におけるVI−VI断面に相当する位置における帯状部436の断面が図示されている。
【0100】
図10に帯状部436は、セパレータ430の、セパレータ450と対向する面の端縁に沿って設けられ、セパレータ450の方向に突出した形状を有している。また、帯状部436は、片面テープによって形成されており、片面テープは、基材436aと接着材436bとによって構成されている。つまり、これらの点において、上記実施の形態に係る帯状部435と共通する。しかし、帯状部435は、断面形状が矩形(略矩形も含む)であるのに対し、帯状部436の断面形状は、セパレータ450に近づくほど横幅が狭くなる形状を有している。
【0101】
本変形例に係る帯状部436は、上記形状を有することで、例えば、帯状部436の柔軟性を向上させることができる。また、帯状部436の上端部(
図10におけるY軸方向プラス側の端部)の、セパレータ450との接触面積を低減させることができる。これにより、例えば、帯状部436の上端部がセパレータ450に当接している状態において、帯状部436がセパレータ450に与えるストレスを低減させることができる。すなわち、帯状部436による異物の進入抑制効果を向上させ、かつ、帯状部436が存在することに起因する電極体400の変形を抑制することができる。
【0102】
(変形例2)
図11は、実施の形態の変形例2に係る電極体400の製造工程を示す図である。
図12は、実施の形態の変形例2に係る電極体400の一部を示す断面図である。なお、
図12では、
図5におけるVI−VI断面に相当する位置における電極体400の一部の断面が図示されている。
【0103】
図11に示す変形例2に係る電極体400の製造工程では、
図7に示す実施の形態に係る電極体400の製造工程と同じく、セパレータ430及び正極板410等を巻回しながら、セパレータ450への片面テープの貼付を行っている。これにより、セパレータ430の端縁とセパレータ450の端縁との間に帯状部435が形成され、その結果、帯状部435による異物の進入抑制効果を得ることができる。
【0104】
すなわち、本変形例に係る電極体400は、当該隙間に配置された片面テープによって帯状部435が実現されている点で、上記実施の形態に係る電極体400と共通している。しかし、帯状部435が、セパレータ430ではなく、セパレータ450に貼付されている点で上記実施の形態に係る電極体400とは異なる。
【0105】
具体的には、本変形例に係る電極体400は、セパレータ450の、セパレータ430と対向する面(
図12におけるセパレータ450の下面)の端縁に沿って設けられ、セパレータ430の方向に突出する帯状部435を有する。なお、本変形例において、セパレータ450は、第一セパレータの一例であり、セパレータ430は、第二セパレータの一例である。
【0106】
つまり、本変形例では、
図11及び
図12に示されるように、正極板410を挟む2枚のセパレータのうち、巻回軸Wに近い側(内側)のセパレータである、セパレータ450に、片面テープが貼付される。すなわち、上記実施の形態では、セパレータ430の巻回軸W側の面(内側面)に貼付されているのに対し、本変形例では、セパレータ450の巻回軸Wとは反対側の面(外側面)に貼付されている。
【0107】
この場合、セパレータ450が巻回されることで、片面テープである帯状部435の基材435aは、長手方向に伸長される力を受ける。しかし、帯状部435は伸縮性を有しているため、セパレータ450に追従して巻回されることに実質的な問題は生じない。また、帯状部435は、セパレータ430には固定されず、セパレータ430と滑り合うことができる。そのため、本変形例に係る電極体400の製造工程において、セパレータ430が帯状部435に引っ張られることに起因する、セパレータ430における皺等の発生は抑制される。
【0108】
従って、本変形例に係る電極体400は、セパレータ450に設けられた帯状部435によって異物の進入を抑制することができ、かつ、帯状部435が存在することに起因する変形が抑制された電極体400である。
【0109】
(変形例3)
図13は、実施の形態の変形例3に係る電極体400の一部を示す断面図である。なお、
図13では、
図5におけるVI−VI断面に相当する位置における電極体400の一部の断面が図示されている。
【0110】
図13に帯状部437は、セパレータ430の、セパレータ450と対向する面の端縁に沿って設けられ、セパレータ450の方向に突出した形状を有している。この点において、上記実施の形態に係る帯状部435と共通する。しかし、帯状部437は、セパレータ430と一体に設けられており、この点において、セパレータ430とは別部材の片面テープによって形成された上記実施の形態に係る帯状部435とは異なる。
【0111】
例えば、樹脂または不織布等を素材とするセパレータ430を形成する際に、短手方向の少なくとも一方の端縁に、他の部分よりも厚い部分を形成することで、
図13に示す、帯状部437を備えるセパレータ430を作製することができる。
【0112】
また、帯状部437の上端部(
図13におけるY軸方向プラス側の部分)は、セパレータ450は固定されず、セパレータ450と滑り合うことができる。そのため、本変形例に係る電極体400の製造工程において、セパレータ450が帯状部435に引っ張られることに起因する、セパレータ450における皺等の発生は抑制される。
【0113】
(他の実施の形態)
以上、本発明に係る蓄電素子について、実施の形態及びその変形例に基づいて説明した。しかしながら、本発明は、上記実施の形態及びその変形例に限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を上記実施の形態またはその変形例に施したものも、あるいは、上記説明された複数の構成要素を組み合わせて構築される形態も、本発明の範囲内に含まれる。
【0114】
例えば、セパレータ430とセパレータ450とは、互いに別体の2枚のセパレータである必要はない。例えば、1枚のセパレータを長手方向の中央部分で折り返すことで、セパレータ430及びセパレータ450が実現されてもよい。
【0115】
また、本実施の形態において、帯状部435は、電極体400の負極側に配置されているが、帯状部435は、電極体400の正極側に配置されていてもよい。つまり、2枚のセパレータの間に極板が配置された構造を有する電極体は、2枚のセパレータの一方のセパレータの端縁に沿って設けられ、他方のセパレータの方向に突出する帯状部を備えればよい。
【0116】
これにより、帯状部が、電極体の内部への異物の進入を抑制する部分として機能する。すなわち、2枚のセパレータの間に極板が配置された構造を有する電極体であれば帯状部による異物の進入抑制効果を得ることができる。そのため、例えば、平板状極板を積層した積層型の電極体、または、長尺帯状の極板を山折りと谷折りとの繰り返しによって蛇腹状に積層した構造を有する電極体が、片面テープ等によって実現される帯状部を備えてもよい。