特許第6808928号(P6808928)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6808928
(24)【登録日】2020年12月14日
(45)【発行日】2021年1月6日
(54)【発明の名称】感光性樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/004 20060101AFI20201221BHJP
   G03F 7/023 20060101ALI20201221BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20201221BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20201221BHJP
   C08G 73/10 20060101ALI20201221BHJP
   H05B 33/22 20060101ALN20201221BHJP
【FI】
   G03F7/004 501
   G03F7/023
   H05B33/14 A
   G03F7/20 521
   C08G73/10
   !H05B33/22 Z
【請求項の数】3
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2015-219205(P2015-219205)
(22)【出願日】2015年11月9日
(65)【公開番号】特開2017-90619(P2017-90619A)
(43)【公開日】2017年5月25日
【審査請求日】2018年10月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】南橋 克哉
(72)【発明者】
【氏名】柳澤 泰
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 大公
【審査官】 塚田 剛士
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−151999(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/172793(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/004 − 7/18
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)一般式(1)または(2)で表される構造のうち少なくともいずれかを有する重量平均分子量2,000以上100,000以下のポリマー並びに(b)1−ヒドロキシベンゾトリアゾールおよび1−ヒドロキシ−7−アザベンゾトリアゾールのうち少なくともいずれか並びに(c)キノンジアジド化合物を含有し、
前記(b)化合物の含有量が(a)ポリマー100質量部に対して、0.01質量部以上0.1質量部以下であることを特徴とするポジ型感光性樹脂組成物。
【化1】
(一般式(1)中、Rは炭素数2以上の2〜8価の有機基、Rは炭素数2以上の2〜6価の有機基、R は水素または炭素数1〜20の有機基を示す。mは0〜4の整数、p、qは0〜4の整数を示す。ただしp+q>0である。)
【化2】
(一般式(2)中、Rは炭素数2以上の4〜8価の有機基を示す。Rは炭素数2以上の2〜6価の有機基を示す。rおよびsはそれぞれ0〜4の整数を示す。
【請求項2】
さらに、一般式(9)で表される(d)熱架橋剤を含有する請求項1に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【化3】
(式中、R23は直接結合または1〜4価の連結基を示す。R24は炭素数1〜20の1価の有機基、Cl、Br、I、またはFを示す。R25およびR26は、CHOR28(R28は水素原子または炭素数1〜6の1価の炭化水素基)を示す。R27は水素原子、メチル基、またはエチル基を示す。hは0〜2の整数、iは1〜4の整数を示す。iが2〜4の場合、複数のR24〜R27はそれぞれ同じでも異なってもよいが、同一のベンゼン環がR23を2つ有する場合は、R23は同じである。R23を表す1〜4価の連結基の例において、R29〜R51は水素原子、炭素数1〜20の1価の有機基、Cl、Br、I、またはFを示す。)
【請求項3】
請求項1または2に記載のポジ型感光性樹脂組成物を用いた電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は感光性樹脂組成物に関する。詳しくは、半導体素子の表面保護膜、層間絶縁膜、有機電界発光素子の絶縁層などに適した、紫外線露光部分がアルカリ現像液に溶解するポジ型感光性樹脂組成物、およびこれを用いた電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリイミドやポリベンゾオキサゾールなどの樹脂は、優れた耐熱性、電気絶縁性を有することから、LSI(Large Scale Integration)をはじめとする半導体素子の表面保護膜、層間絶縁膜などに用いられてきた。最近では、有機EL素子の絶縁膜やTFT基板の平坦化膜などにも使用されている(特許文献1)。
【0003】
これらの用途において、絶縁膜や平坦化膜などと基盤との接着性が不十分の場合は、その箇所が剥離し、絶縁膜や平坦化膜としての役割を果たさず、問題となる。
【0004】
絶縁膜や平坦化膜と基盤との接着性を向上させるに際し、基盤がシリコンやチッ化膜等である場合には、有機ケイ素化合物を用いることにより、改善できることは知られている。
【0005】
しかし、上記の方法では、再配線用途で使用される銅や、透明電極として有機EL素子等に使用される酸化インジウムスズ(以下ITO)等の金属と高い接着性を得ることは難 しかった。
【0006】
このため、複素環含有化合物を添加することで金属との接着性を向上させる検討が進められている(特許文献2または3)。
【0007】
しかしながら、複素環含有化合物を含む感光性樹脂組成物を用いて有機EL素子を作製した場合、有機EL素子を長時間発光させると複素環有機化合物が分解し、ガスが発生する。そしてそのガスにより有機EL素子の発光効率が低下するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−54254号公報
【特許文献2】特開2007−17959号公報
【特許文献3】特開2006−184660号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記問題点を鑑み、有機EL素子によく用いられる金属であるITOとの接着性と、EL素子を作製したときの発光効率低下を抑制することができる感光性樹脂組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】

上記課題を解決するため、本発明は以下の構成を有する。
【0011】
すなわち、(a)一般式(1)または(2)で表される構造のうち少なくともいずれかを有する重量平均分子量2,000以上100,000以下のポリマー、(b)一般式(3)で表される分子量300以下の化合物、および(c)キノンジアジド化合物を含有し、
前記(b)化合物の含有量が(a)ポリマー100質量部に対して、0.01質量部以上0.1質量部以下であることを特徴とするポジ型感光性樹脂組成物である。
【0012】
【化1】
【0013】
(一般式(1)中、Rは炭素数2以上の2〜8価の有機基、Rは炭素数2以上の2〜6価の有機基、Rは水素または炭素数1〜20までの有機基を示す。mは0〜4の整数を示す。pおよびqは0〜4の整数を示し、p+q>0である。)
【0014】
【化2】
【0015】
(一般式(2)中、Rは炭素数2以上の4〜8価の有機基を示す。Rは炭素数2以上の2〜6価の有機基を示す。rおよびsはそれぞれ0〜4の整数を示す。)
【0016】
【化3】
【0017】
(一般式(3)中、RおよびRはそれぞれ独立に1〜4価の有機基を示す。)
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、ITO(酸化インジウムスズ)との接着とEL素子を作製したときの発光効率低下を抑制することができるポジ型感光性樹脂組成物を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明のポリマーは、(a)前記一般式(1)または一般式(2)で表される構造単位のうちすくなくともいずれかを有する。ポリマー全体に対する(a)構造単位の含有量は、耐熱性が向上するため50モル%以上が好ましく、70モル%以上がより好ましく、90モル%以上がさらに好ましい。
【0022】
(a)構造単位は、一般式(1)または(2)のいずれかの構造単位単独で構成されていても、一般式(1)および(2)の両方の構造単位で構成されていてもかまわない。
【0023】
一般式(1)で示される構造単位は、加熱あるいは適当な触媒により、イミド環、オキサゾール環、その他の環状構造を有するポリマーとなり得るものである。一般式(1)で示される構造単位は、ポリイミド前駆体のポリアミド酸もしくはポリアミド酸エステル、またはポリベンゾオキサゾール前駆体のポリヒドロキシアミドであることが好ましい。これらは、加熱後環状構造となることで、耐熱性、耐溶剤性が飛躍的に向上するためである。
【0024】
一般式(1)中のRは、酸の構造成分を表しており、炭素数2以上の2〜8価の有機基を示す。具体的には、以下の酸の成分を使用することが好ましいがこれに限定されない。
【0025】
2価となる酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸、ビス(カルボキシフェニル)プロパンなどの芳香族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸などの脂肪族ジカルボン酸などを挙げることができる。
【0026】
3価となる酸としては、トリメリット酸、トリメシン酸などのトリカルボン酸などを挙げることができる。
【0027】
4価以上となる酸としてはピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ビフェニルテトラカルボン酸、ジフェニルエーテルテトラカルボン酸、ジフェニルスルホンテトラカルボン酸、ナフタレンテトラカルボン酸、ピリジンテトラカルボン酸、ペリレンテトラカルボン酸などのテトラカルボン酸や、そのカルボキシル基2個をメチル基やエチル基としたジエステル化合物、ブタンテトラカルボン酸、シクロペンタンテトラカルボン酸などの脂肪族テトラカルボン酸や、そのカルボキシル基2個をメチル基やエチル基としたジエステル化合物を挙げることができる。
【0028】
また、ヒドロキシフタル酸、ヒドロキシトリメリット酸などの水酸基を有する酸も挙げることができる。これら酸成分は単独でも2種以上併用しても構わないが、テトラカルボン酸を1〜40モル%含むことが好ましい。また、アルカリ現像液に対する溶解性や感光性の観点から、水酸基を有する酸成分を50モル%以上用いることが好ましく、70モル%以上がより好ましい。
【0029】
一般式(2)で示される構造単位は、イミド環をもつものである。
【0030】
上記一般式(2)中のRは、酸の構造成分を表しており、炭素数2以上の4〜8価の有機基を示す。具体的には以下の4価以上となる酸の成分を使用することが好ましいがこれに限定されない。
【0031】
4価以上となる酸としてはピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ビフェニルテトラカルボン酸、ジフェニルエーテルテトラカルボン酸、ジフェニルスルホンテトラカルボン酸、ナフタレンテトラカルボン酸、ピリジンテトラカルボン酸、ペリレンテトラカルボン酸などのテトラカルボン酸や、そのカルボキシル基2個をメチル基やエチル基としたジエステル化合物、ブタンテトラカルボン酸、シクロペンタンテトラカルボン酸などの脂肪族テトラカルボン酸や、そのカルボキシル基2個をメチル基やエチル基としたジエステル化合物を挙げることができる。これら酸成分は単独でも2種以上併用しても構わないが、テトラカルボン酸を1〜40モル%含むことが好ましい。また、アルカリ現像液に対する溶解性や感光性の観点から、水酸基を有する酸成分を50モル%以上用いることが好ましく、70モル%以上がより好ましい
一般式(1)中のRは、耐熱性の面から芳香族環を含有し、炭素数6〜30の3価または4価の有機基であることが好ましい。
【0032】
具体的には、一般式(1)中のR(COOR(OH)は、一般式(6)で示されることが好ましい。
【0033】
【化5】
【0034】
(一般式(5)中、R10およびR12はそれぞれ同じでも異なっていてもよく、炭素数2〜20の2価〜4価の有機基を示す。R11は炭素数3〜20の3価〜6価の有機基を示す。R13およびR14はそれぞれ同じでも異なっていてもよく、水素または炭素数1〜20の1価の有機基を示す。tおよびvは0〜2の整数、uは1〜4の整数を示す。ただし、t+v≦2である。)
得られるポリマーの耐熱性の点から、R10およびR12は芳香族環を含むものが好ましく、特に好ましい構造としてトリメリット酸、トリメシン酸、ナフタレントリカルボン酸などの残基が挙げられる。
【0035】
また、R11は炭素数3〜20の3価〜6価の有機基を示している。さらに、u個の水酸基はアミド結合と隣り合った位置にあることが熱閉環の進行をより容易とさせる点で好ましい。このような例として、フッ素原子を含んだ、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(3−ヒドロキシ−4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、フッ素原子を含まない、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3−ヒドロキシ−4−アミノフェニル)プロパン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、2,4−ジアミノ−フェノール、2,5−ジアミノフェノール、1,4−ジアミノ−2,5−ジヒドロキシベンゼンのアミノ基が結合したものなどを挙げることができる。
【0036】
また、一般式(5)のR13およびR14はそれぞれ同じでも異なっていてもよく、水素または炭素数1〜20の1価の有機基を示しており、水素または炭素数1〜20の炭化水素基が好ましい。炭素数を20以下とすることで、アルカリ現像液に対する適度な溶解性が得られる。tおよびvは0〜2の整数を示しているが、好ましくは1または2である。ただし、t+v≦2である。また、uは1〜4の整数を表している。この範囲であれば、良好なパターン加工性が得られる。
【0037】
一般式(5)で表される構造の中で、好ましい構造を例示すると下記に示す構造が挙げられるが、これらに限定されない。
【0038】
【化6】
【0039】
また、一般式(1)中のRおよび一般式(2)中のRは、それぞれ炭素数2以上の2価〜4価の有機基を示しており、ジアミン構造の残基を表している
ジアミンは単独でも2種以上併用しても構わない。ジアミンの具体的な例として以下に挙げるがこれに限定されない。
【0040】
ジェファーミンKH−511、ジェファーミンED−600、ジェファーミンED−900、ジェファーミンED−2003、ジェファーミンEDR−148、ジェファーミンEDR−176(以上商品名、HUNTSMAN(株)製)など、ポリエチレンオキサイド基を含有するジアミン、D−200、D−400、D−2000、D−4000(以上商品名、HUNTSMAN(株)製)のポリオキシプロピレンジアミン、ビス(アミノ−ヒドロキシ−フェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(トリフルオロメチル)ベンチジンなどのフッ素原子を有するジアミン、フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルエーテル、アミノフェノキシベンゼン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、ビス(アミノフェノキシフェニル)プロパン、ビス(アミノフェノキシフェニル)スルホン等のフッ素原子を有さないジアミン、あるいはこれらの芳香族環にアルキル基やハロゲン原子で置換した化合物、ジアミノジヒドロキシピリミジン、ジアミノジヒドロキシピリジン、ヒドロキシ−ジアミノ−ピリミジン、ジアミノフェノール、ジヒドロキシベンチジン、ジアミノ安息香酸、ジアミノテレフタル酸などの化合物や、シクロヘキシルジアミン、メチレンビスシクロヘキシルアミン、ヘキサメチレンジアミンなどの脂肪族ジアミン、一般式(1)中のR(OH)および一般式(2)中のR(OH)が、一般式(6)〜(8)のいずれかで示される構造のものを挙げることができる
これらの中で、アルカリ現像液に対する溶解性や感光性の観点から、水酸基を有するジアミン成分を60モル%以上用いることが好ましい。
【0041】
【化7】
【0042】
一般式(6)のR15およびR17は炭素数2〜20の3価または4価の有機基を示し、R16は炭素数2〜30の2価の有機基を示す。wおよびxは1あるいは2を示す。一般式(7)のR18およびR20は炭素数2〜20の2価の有機基を示し、R19は炭素数3〜20の3価〜6価の有機基を示す。yは1〜4の整数を示す。一般式(8)のR21は炭素数2〜20の2価の有機基を示し、R22は炭素数3〜20の3価〜6価の有機基を示す。zは1〜4の整数を示す。
【0043】
一般式(6)において、R15およびR17は炭素数2〜20の3価または4価の有機基を示しており、得られるポリマーの耐熱性の点より芳香族環を有するものが好ましい。−R15(OH)w−および−R17(OH)x−の例として、具体的にはヒドロキシフェニル基、ジヒドロキシフェニル基、ヒドロキシナフチル基、ジヒドロキシナフチル基、ヒドロキシビフェニル基、ジヒドロキシビフェニル基、ビス(ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン基、ビス(ヒドロキシフェニル)プロパン基、ビス(ヒドロキシフェニル)スルホン基、ヒドロキシジフェニルエーテル基、ジヒドロキシジフェニルエーテル基などが挙げられる。また、ヒドロキシシクロヘキシル基、ジヒドロキシシクロヘキシル基などの脂肪族の基も使用することができる。R16は炭素数2〜30の2価の有機基を表している。得られるポリマーの耐熱性の点より芳香族環を有するものが好ましい。このような例としてはフェニル基、ビフェニル基、ジフェニルエーテル基、ジフェニルヘキサフルオロプロパン基、ジフェニルプロパン基、ジフェニルスルホン基などが挙げられる。これ以外にも脂肪族のシクロヘキシル基なども使用することができる。
【0044】
一般式(7)において、R18およびR20は炭素数2〜20の2価の有機基を表している。得られるポリマーの耐熱性より芳香族環を有するものが好ましい。このような例として、前述のR16の例として示した基が挙げられる。R19は炭素数3〜20の3価〜6価の有機基を示しており、得られるポリマーの耐熱性より芳香族環を有するものが好ましい。−R19(OH)y−の例として、前述の−R15(OH)w−および−R17(OH)x−の例として示した基が挙げられる。
【0045】
一般式(8)において、R21は炭素数2〜20の2価の有機基を表している。得られるポリマーの耐熱性から芳香族環を有するものが好ましい。このような例として、前述のR16の例として示した基が挙げられる。R22は炭素数3〜20の3価〜6価の有機基を示しており、得られるポリマーの耐熱性より芳香族環を有するものが好ましい。−R22(OH)z−の例として、前述の−R15(OH)w−および−R17(OH)x−の例として示した基が挙げられる。
【0046】
一般式(6)で表される構造の中で、好ましい構造を例示すると下記に示す構造が挙げられるが、これらに限定されない。
【0047】
【化8】
【0048】
また、一般式(7)で表される構造の中で、好ましい構造を例示すると下記に示す構造が挙げられるが、これらに限定されない。
【0049】
【化9】
【0050】
また、一般式(8)で表される構造の中で、好ましい構造を例示すると下記に示す構造が挙げられるが、これらに限定されない。
【0051】
【化10】
【0052】
また、一般式(1)のRは、水素または炭素数1〜20の1価の有機基を示している。得られる感光性樹脂組成物溶液の溶液安定性の観点からは、Rは炭素数1〜20の1価の有機基が好ましいが、アルカリ水溶液に対する溶解性の観点からは、水素が好ましい。本発明においては、水素と炭素数1〜20の1価の有機基を混在させることができる。このRの水素と炭素数1〜20の1価の有機基の量を調整することで、アルカリ水溶液に対する溶解速度が変化するので、この調整により適度な溶解速度を有した感光性樹脂組成物を得ることができる。好ましい範囲は、10モル%〜90モル%が水素原子である。また、アルカリ現像液に対する溶解性の観点から、有機基の炭素数は20以下である。以上よりRは、炭素数1〜16の炭化水素基を少なくとも1つ以上含有し、その他は水素原子であることが好ましい。
【0053】
また、一般式(1)のmはカルボキシル基またはエステルの数を示しており、0〜4の整数である。好ましくは1または2である。一般式(1)のpおよびqはそれぞれ0〜4の整数を示し、p+q>0である
一般式(1)または(2)で表される構造を主成分とするポリマーは、例えば次の方法により重合液を得ることができる。
【0054】
ポリアミド酸またはポリアミド酸エステルの場合、例えば、低温中でテトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物、末端封止に用いるモノアミノ化合物を反応させる方法、テトラカルボン酸二無水物とアルコールとによりジエステルを得、その後ジアミン化合物、モノアミノ化合物と縮合剤の存在下で反応させる方法、テトラカルボン酸二無水物とアルコールとによりジエステルを得、その後残りのジカルボン酸を酸クロリド化し、ジアミン化合物、モノアミノ化合物と反応させる方法などがある。
【0055】
ポリヒドロキシアミドの場合、ビスアミノフェノール化合物とジカルボン酸ジクロライドを反応させる方法などによって得ることができる。
【0056】
ポリイミドの場合は、上記ポリアミド酸またはポリアミド酸エステルを得た後、加熱あるいは酸や塩基などの化学処理で脱水閉環することで得ることができる。
【0057】
重合液を得る溶剤としては、N−メチルピロリドン、γ−ブチロラクトン、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、テトラメチル尿素、スルホラン、ジメチル−2−ピペリドン、ジメチルスルホキシド、ジグリムがあげられるがこれに限定されない。
【0058】
本発明の(a)一般式(1)または(2)で表される構造を主成分とするポリマーにおける重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)でポリスチレン換算により測定した値が2000〜100,000であることが好ましく、5000〜50,000であることがより好ましく、10,000〜30,000の範囲内であることがさらに好ましい。一般式(1)または(2)で表される分子量は2,000〜100,000の範囲内であることにより、ポリマーのアルカリ現像液への溶解性が得られ、露光部と未露光部のコントラストが得られるため好ましい。
【0059】
また、本発明は、(b)一般式(3)または(4)で表される分子量300以下の化合物のうち少なくともいずれか、を含有する。
【0060】
一般式(3)および(4)の構造においては、接着性および保存安定性を得るため、N−OH基を含有することが重要である。N−H基では保存安定性が低下し、炭化水素では接着性が得られない。
【0061】
一般式(3)で表される好ましい化合物は、1−ヒドロキシベンゾトリアゾールまたは1−ヒドロキシ−7−アザベンゾトリアゾール、一般式(4)で表される好ましい化合物は、N−ヒドロキシスクシンイミドである。これらを1種類以上用いることができる。
【0062】
本発明の(b)化合物の含有量については、(a)成分100質量部に対して、0.01質量部以上10質量部以下含有することが好ましい。また、(a)成分100質量部に対して、(b)化合物は0.01質量部以上0.1質量部以下含有することがより好ましい。添加量が0.01質量部以上であることにより、金属基板との接着性を向上できる。添加量が10質量部以下であることにより、保存安定性を向上することができ、添加量が0.1質量部以下であることにより、より保存安定性を向上できる。添加量を上記の範囲内とすることで、感度を維持し、またフィルター口径0.05um以下でろ過を行う工程に際しては、元々の異物量を低減することで、工程通過性を高めることができる。
【0063】
また、本発明のポジ型感光性樹脂組成物は(c)キノンジアジド化合物を含有する。(c)キノンジアジド化合物は、2種以上含有してもよい。
【0064】
(c)キノンジアジド化合物の例としては、ポリヒドロキシ化合物にキノンジアジドのスルホン酸がエステルで結合したもの、ポリアミノ化合物にキノンジアジドのスルホン酸がスルホンアミド結合したもの、ポリヒドロキシポリアミノ化合物にキノンジアジドのスルホン酸がエステル結合および/またはスルホンアミド結合したものなどが挙げられる。
【0065】
(c)キノンジアジド化合物は、例えば、5−ナフトキノンジアジドスルホニルクロライドとポリヒドロキシ化合物をトリエチルアミン存在下で反応させることにより得ることができる。
【0066】
また上記ポリヒドロキシ化合物、ポリアミノ化合物、ポリヒドロキシポリアミノ化合物は反応させず添加することもできる。
【0067】
これらポリヒドロキシ化合物やポリアミノ化合物の全ての官能基がキノンジアジドで置換されていなくてもよいが、露光部と未露光部のコントラストの観点からは、官能基全体の50モル%以上がキノンジアジドで置換されていることが好ましい。このようなキノンジアジド化合物を用いることで、一般的な紫外線である水銀灯のi線(365nm)、h線(405nm)、g線(436nm)に感光するポジ型の感光性樹脂組成物を得ることができる。
【0068】
ポリヒドロキシ化合物は、Bis−Z、BisP−EZ、TrisP−HAP、TrisP−PA、TrisP−SA、TrisOCR−PA、BisOCHP−Z、BisP−MZ、BisP−PZ、BisP−IPZ、BisOCP−IPZ、BisP−CP、BisRS−2P、BisRS−3P、BisP−OCHP、メチレントリス−FR−CR、BisRS−26X、DML−MBPC、DML−MBOC、DML−OCHP、DML−PCHP、DML−PC、DML−PTBP、DML−34X、DML−EP,DML−POP、ジメチロール−BisOC−P、DML−PFP、DML−PSBP、DML−MTrisPC、TriML−P、TriML−35XL、TML−BP、TML−HQ、TML−pp−BPF、TML−BPA、TMOM−BP、HML−TPPHBA、HML−TPHAP(以上、商品名、本州化学工業(株)製)、BIR−OC、BIP−PC、BIR−PC、BIR−PTBP、BIR−PCHP、BIP−BIOC−F、4PC、BIR−BIPC−F、TEP−BIP−A、46DMOC、46DMOEP、TM−BIP−A(以上、商品名、旭有機材工業(株)製)、2,6−ジメトキシメチル−4−t−ブチルフェノール、2,6−ジメトキシメチル−p−クレゾール、2,6−ジアセトキシメチル−p−クレゾール、ナフトール、テトラヒドロキシベンゾフェノン、没食子酸メチルエステル、ビスフェノールA、ビスフェノールE、メチレンビスフェノール、BisP−AP(商品名、本州化学工業(株)製)などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0069】
ポリアミノ化合物は、1,4−フェニレンジアミン、1,3−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0070】
また、ポリヒドロキシポリアミノ化合物は、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、3,3’−ジヒドロキシベンジジン等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0071】
本発明のキノンジアジドは5−ナフトキノンジアジドスルホニル基、4−ナフトキノンジアジドスルホニル基のいずれも好ましく用いられる。4−ナフトキノンジアジドスルホニルエステル化合物は水銀灯のi線領域に吸収を持っており、i線露光に適している。5−ナフトキノンジアジドスルホニルエステル化合物は水銀灯のg線領域まで吸収が伸びており、g線露光に適している。本発明においては、露光する波長によって4−ナフトキノンジアジドスルホニルエステル化合物、5−ナフトキノンジアジドスルホニルエステル化合物を選択することが好ましい。また、同一分子中に4−ナフトキノンジアジドスルホニル基、5−ナフトキノンジアジドスルホニル基を併用した、ナフトキノンジアジドスルホニルエステル化合物を得ることもできるし、4−ナフトキノンジアジドスルホニルエステル化合物と5−ナフトキノンジアジドスルホニルエステル化合物を混合して使用することもできる。
【0072】
また、(c)キノンジアジド化合物の数平均分子量は2,500以下が好ましく、1,500以下がより好ましく、1,200以下がさらに好ましい。数平均分子量が2,500以下であれば、パターン形成後の熱処理において(c)キノンジアジド化合物が十分に熱分解し、耐熱性、機械特性、接着性に優れた硬化膜を得ることができる。一方、プリベーク時に揮発することを抑えるべく、分子量は300以上が好ましく、350以上がより好ましい。
【0073】
また、本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、一般式(9)で表される(d)熱架橋剤を含有する。
【0074】
【化11】
【0075】
(式中、R23は直接結合または1〜4価の連結基を示す。R24は炭素数1〜20の1価の有機基、Cl、Br、I、またはFを示す。R25およびR26は、CHOR28(R28は水素原子または炭素数1〜6の1価の炭化水素基)を示す。R27は水素原子、メチル基、またはエチル基を示す。hは0〜2の整数、iは1〜4の整数を示す。iが2〜4の場合、複数のR24〜R27はそれぞれ同じでも異なってもよいが、同一のベンゼン環がR23を2つ有する場合は、R23は同じである。R23を表す1〜4価の連結基の例において、R29〜R51は水素原子、炭素数1〜20の1価の有機基、Cl、Br、I、またはFを示す。)
本発明において、一般式(9)で表される熱架橋剤は、未置換のものや多量化したものなどが混入すると、樹脂組成物の架橋反応が十分進まない場合がある。このため、一般式(9)で表される化合物の純度は、80%以上であることが好ましく、95%以上であることがより好ましい。純度が80%以上であれば、樹脂組成物の架橋反応を十分に行い、吸水性基となる未反応基を少なくすることができるため、樹脂組成物の吸水性を小さくすることができる。高純度の熱架橋剤を得るためには、再結晶、蒸留などを行い、目的物だけを集める方法などがある。熱架橋剤の純度は液体クロマトグラフィー法により求めることができる。
【0076】
本発明の(d)熱架橋剤の含有量は、(a)成分100質量部に対して5質量部以上が好ましく、10質量部以上がより好ましい。5質量部以上であると、硬化膜の架橋密度が高くなり、耐薬品性が向上するため好ましい。さらに10質量部以上であるとより高い機械特性が得られる。一方、組成物の保存安定性、機械強度の観点から、50質量部以下が好ましく、40質量部以下がより好ましく、30質量部以下がさらに好ましい。
【0077】
本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、さらにシラン化合物を含有することができる。シラン化合物を含有することにより、SIN等の下地基板との接着性が向上する。シラン化合物の具体例としては、N−フェニルアミノエチルトリメトキシシラン、N−フェニルアミノエチルトリエトキシシラン、N−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニルアミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニルアミノブチルトリメトキシシラン、N−フェニルアミノブチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシランや以下のシラン化合物を用いることができるがこれらに限定されない。
【0078】
本発明のシラン化合物の含有量は、SIN等の下地基板との接着性が向上するため、(a)成分100質量部に対して0.5質量部以上が好ましく、1.0質量部以上がより好ましい。一方、組成物の保存安定性、感度の観点から、シラン化合物の含有量は、(a)成分100質量部に対して50質量部以下が好ましく、10質量部以下がより好ましい。
【0079】
本発明の溶剤としては、γ−ブチロラクトンなどの極性の非プロトン性溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、ジイソブチルケトン、ジアセトンアルコールなどのケトン類、酢酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、乳酸エチルなどのエステル類、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類などが挙げられ、これらの溶剤を2種以上含有してもよい。
【0080】
本発明においては、ポジ型感光性樹脂組成物の粘度は、塗膜均一性が向上するため、1mPa・s以上になるように調整することが好ましく、5mPa・s以上になるように調整することがより好ましい。一方、ポジ型感光性樹脂組成物の保存安定性、塗布時の送液の容易性の観点から、ポジ型感光性組成物の粘度を1000mPa・s以下になるように調整することが好ましく、100mPa・s以下になるように調整することがより好ましい。
【0081】
次に、本発明のポジ型感光性樹脂組成物の製造方法を例示する。
【0082】
(a)〜(d)成分、溶剤および必要によりその他成分をガラス製のフラスコやステンレス製の容器に入れてメカニカルスターラーなどによって撹拌溶解させる方法、超音波で溶解させる方法、遊星式撹拌脱泡装置で撹拌溶解させる方法などが挙げられる。
【0083】
この際、ポジ型感光性樹脂組成物の粘度は、塗布性より1〜10000mPa・sが好ましい。また、異物を除去するために0.001μm〜5μmのポアサイズのフィルターで濾過してもよい。ポアサイズが大きすぎると異物が除去しきれず、デバイスを作製後に欠点や不良になる。ポアサイズが小さすぎるとろ過に時間がかかる。
【0084】
次に、本発明のポジ型感光性樹脂組成物を用いて耐熱性樹脂パターンを形成する方法について説明する。
【0085】
感光性樹脂組成物を基板上に塗布する。基板はシリコンウエハー、セラミックス類、ガリウムヒ素、金属、ガラス、金属酸化絶縁膜、窒化ケイ素、透明電極として有機EL素子等に使用されるITOが挙げられるが、これらに限定はされない。
【0086】
塗布方法はスピンナを用いた回転塗布、スプレー塗布、ロールコーティング、スリットダイコーティングなどの方法が挙げられる。また、塗布膜厚は、塗布手法、組成物の固形分濃度、粘度などによって異なるが、通常、デバイスの設計により乾燥後の膜厚が0.1〜150μmになるように塗布される。
【0087】
次に、感光性樹脂組成物を塗布した基板を乾燥して、感光性樹脂膜を得る。乾燥はオーブン、ホットプレート、赤外線などを使用し、50℃〜150℃の範囲で1分〜数時間の範囲内で行うことが好ましい。低温、短時間すぎると溶媒が揮発せず感光性膜を得られず、高温、長時間すぎると感光剤等が分解する可能性がある。
【0088】
次に、この感光性樹脂膜上に所望のパターンを有するマスクを通して化学線を照射し、露光する。露光に用いられる化学線としては紫外線、可視光線、電子線、X線などがあるが、本発明では水銀灯のi線(365nm)、h線(405nm)、g線(436nm)を用いることが好ましい。これはこの化学線でナフトキノン化合物が容易に反応するためである。
【0089】
感光性樹脂膜から耐熱性樹脂のパタ−ンを形成するには、露光後、現像液を用いて露光部を除去すればよい。現像液は、テトラメチルアンモニウムの水溶液、ジエタノールアミン、ジエチルアミノエタノール、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、トリエチルアミン、ジエチルアミン、メチルアミン、ジメチルアミン、酢酸ジメチルアミノエチル、ジメチルアミノエタノール、ジメチルアミノエチルメタクリレート、シクロヘキシルアミン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどのアルカリ性を示す化合物の水溶液が好ましい。また場合によっては、これらのアルカリ水溶液にN−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、ジメチルアクリルアミドなどの極性溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのエステル類、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、イソブチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類などを単独あるいは数種を組み合わせたものを添加してもよい。現像後は水にてリンス処理をする。ここでもエタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのエステル類などを水に加えてリンス処理をしてもよい。
【0090】
現像後、200℃〜500℃の温度を加えて耐熱性樹脂被膜に変換する。この加熱処理は温度を選び、段階的に昇温するか、ある温度範囲を選び連続的に昇温しながら5分〜5時間実施する。一例としては、130℃、200℃、350℃で各30分ずつ熱処理する。あるいは室温より320℃まで2時間かけて直線的に昇温するなどの方法が挙げられる。
【0091】
本発明のポジ型感光性樹脂組成物により形成した耐熱性樹脂被膜は、電子部品に好適に用いることができ、LSI(Large Scale Integration)などの半導体素子の表面保護膜、層間絶縁膜、有機EL素子の絶縁膜、TFT基板の平坦化膜などに使用することができる。
【実施例】
【0092】
<感度評価方法>
(i)感光性樹脂膜の作製
6インチシリコンウエハー上に、各実施例および比較例で得られたワニスをプリベーク後の膜厚T1=1.5μmとなるように塗布し、ついでホットプレート(東京エレクトロン(株)製の塗布現像装置Mark−7)を用いて、120℃で2分プリベークすることにより、感光性樹脂膜を得た。膜厚は大日本スクリーン製造(株)製ラムダエースSTM−602を使用し屈折率1.629で測定した。
【0093】
(ii)露光
得られた感光性樹脂膜を用いてパターンの切られたレチクルを複数作製した。次に露光機(GCA社製i線ステッパーDSW−8570i)に、上記レチクルの1つをセットし、365nmの強度で所定の露光時間で感光性樹脂膜をi線で露光した。
【0094】
(iii)現像
上記露光後の感光性樹脂膜を露光後すぐに、東京エレクトロン(株)製Mark−7の現像装置を用いて、50回転で水酸化テトラメチルアンモニウムの2.38%水溶液を10秒間噴霧した。この後0回転で20秒間静置し、400回転で水にてリンス処理、3000回転で10秒振り切り乾燥させた。
【0095】
(iv)感度の評価
得られた感光性樹脂膜の露光部の膜厚が0μmであった場合は、上記露光時間がより短い条件で、膜厚が0μmより厚い場合は上記露光時間がより長い条件で、上記測定を繰り返し、現像後に露光部の膜厚が0μmとなる露光量のうち、最小のものを感度として評価した。
【0096】
感度を比較し良い順に、60mJ/cm以下を◎、100mJ/cm以下を○、200mJ/cm以下を△、200mJ/cmを超えるもの×と評価した。
【0097】
<接着性評価方法>
(i)キュア膜の作製
ガラス基板corning 1737(コーニング(株)製)上に、表面にスパッタリング蒸着法によって厚さ130nmのITO透明電極膜が形成した後、各ワニスを使用しT1=1.5μmとなるようにプリベーク膜を作製し、光洋サーモシステム(株)製イナートオーブンINH−21CDを用いて、230℃で30分間、窒素雰囲気中で熱処理を行った。
【0098】
(ii)PCT処理
キュア膜に2mm間隔で10行10列(100マス)の碁盤目状の切り込みを入れ、ハストチャンバー EHS−211MD(エスペック(株)製)を用いて121℃、2気圧の飽和条件でプレッシャークッカーテスト(PCT)処理を行った。セロハンテープ(登録商標)による引き剥がしによって100マスのうち、1マス以上剥がれたPCT処理時間を測定した。
【0099】
(iii)接着性の評価(基盤目テープテスト結果(剥離時間))
PCT処理時間を比較し、良い順に、100時間以上剥離のなかったものを◎、50時間以上剥離がなかったものを○、50時間未満で剥離をしたものを×と評価した。
【0100】
<耐久性評価方法(発光効率測定方法)>
(i)有機EL素子の作製
ガラス基板corning 1737(コーニング(株)製)上に、表面にスパッタリング蒸着法によって厚さ130nmのITO透明電極膜が形成した後、ITO膜を長さ90 mm、幅80μm のストライプ形状にパターニングした。このストライプ状第一電極は100μmピッチとした。
【0101】
このITOをパターニングしたガラス基板上にT1=1.5μmとなるように各ワニスを用いたプリベーク膜を作製し、露光現像キュア等の加工することで、幅70μm、長さ250μmの開口部があけ、しかも、第一電極の端部を覆うような形状の樹脂からなる厚さ約1μm絶縁層を形成させた。
【0102】
次に、絶縁層を形成した基板を用いて有機電界発光表示装置の作製を行った。発光層を
含む薄膜層は、抵抗線加熱方式による真空蒸着法によって形成した。基板有効エリア全面
に蒸着して正孔輸送層を形成し、シャドーマスクを用いて発光層、第二電極のアルミニウ
ムを形成した。
【0103】
得られた上記基板を蒸着機から取り出し、基板と封止用ガラス板とを紫外線硬化型エポ
キシ樹脂を用いて貼り合わせることで封止した。このようにしてITOストライプ状第一電極上に、パターニングされた発光層が形成され、第一電極と直交するようにストライプ状第二電極が配置された単純マトリクス型カラー有機電界発光表示装置を作製し、耐久性試験前の有効発光領域面積を測定しS1とした。
【0104】
(ii)耐久性評価
この有機電界発光表示装置について、85℃で250時間保持する耐久性試験を実施した。耐久性試験後の発光領域面積をS2とし、次式により有効発光面積率S(%)を求め、これを耐久性評価とした。
S(%)=(S2/S1)×100
耐久性評価結果を比較し良い順に、99%以上を◎、90%以上を○、80%以上を△、80%未満を×として評価した。
【0105】
合成例1 ヒドロキシル基含有酸無水物(a)の合成
乾燥窒素気流下、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(BAHF)183g(0.5モル)とアリルグリシジルエーテル342g(3モル)をガンマブチロラクトン(GBL)1000gに溶解させ、−15℃に冷却した。ここにGBL500gに溶解させた無水トリメリット酸クロリド221g(1.1モル)を反応液の温度が0℃を越えないように滴下した。滴下終了後、0℃で4時間反応させた。この溶液をロータリーエバポレーターで濃縮して、トルエン10Lに投入して、下記式で表されるヒドロキシル基含有酸無水物(a)を得た。
【0106】
【化12】
【0107】
合成例2 ヒドロキシル基含有ジアミン化合物(b)の合成
BAHF183g(0.5モル)をアセトン1L、プロピレンオキシド174g(3モル)に溶解させ、−15℃に冷却した。ここに3−ニトロベンゾイルクロリド204g(1.1モル)をアセトン1Lに溶解させた溶液を滴下した。滴下終了後、−15℃で4時間反応させ、その後室温に戻した。析出した白色固体をろ別し、50℃で真空乾燥した。
【0108】
得られた固体300gを3Lのステンレスオートクレーブに入れ、メチルセルソルブ2.5Lに分散させ、5%パラジウム−炭素を20g加えた。ここに水素を風船で導入して、還元反応を室温で行った。約2時間後、風船がこれ以上しぼまないことを確認して反応を終了させた。反応終了後、ろ過して触媒であるパラジウム化合物を除き、ロータリーエバポレーターで濃縮し、下記式で表されるヒドロキシル基含有ジアミン化合物(b)を得た。
【0109】
【化13】
【0110】
合成例3 ヒドロキシル基含有ジアミン(c)の合成
2−アミノ−4−ニトロフェノール154g(1モル)をアセトン500mL、プロピレンオキシド300g(3.4モル)に溶解させ、−15℃に冷却した。ここにイソフタル酸クロリド112g(0.55モル)をアセトン600mLに溶解させた溶液を徐々に滴下した。滴下終了後、−15℃で4時間反応させた。その後、室温に戻して生成している沈殿をろ過で集めた。
【0111】
この沈殿をGBL2Lに溶解させて、5%パラジウム−炭素30gを加えて、激しく攪拌した。ここに水素ガスを入れた風船を取り付け、室温で水素ガスの風船がこれ以上縮まない状態になるまで攪拌を続け、さらに2時間水素ガスの風船を取り付けた状態で攪拌した。攪拌終了後、ろ過でパラジウム化合物を除き、溶液をロータリーエバポレーターで半量になるまで濃縮した。ここにエタノールを加えて、再結晶を行い、下記式で表されるヒドロキシル基含有ジアミン(c)の結晶を得た。
【0112】
【化14】
【0113】
合成例4 キノンジアジド化合物(d)の合成
乾燥窒素気流下、TrisP−HAP(商品名、本州化学工業(株)製)、15.31g(0.05モル)と5−ナフトキノンジアジドスルホニル酸クロリド40.28g(0.15モル)を1,4−ジオキサン450gに溶解させ、室温にした。ここに、1,4−ジオキサン50gと混合させたトリエチルアミン15.18gを系内が35℃以上にならないように滴下した。滴下後30℃で2時間攪拌した。トリエチルアミン塩を濾過し、ろ液を水に投入させた。その後、析出した沈殿をろ過で集めた。この沈殿を真空乾燥機で乾燥させ、下記式で表されるキノンジアジド化合物(d)を得た。
【0114】
【化15】
【0115】
合成例5 キノンジアジド化合物(e)の合成
乾燥窒素気流下、TrisP−PA(商品名、本州化学工業(株)製)、21.22g(0.05モル)と4−ナフトキノンジアジドスルホニル酸クロリド32.23g(0.12モル)を1,4−ジオキサン450gに溶解させ、室温にした。ここに、1,4−ジオキサン50gと混合させたトリエチルアミン15.18gの代わりに、1,4−ジオキサン50gと混合させたトリエチルアミン12.65gを用いた以外は、合成例4と同様にして下記式で表されるキノンジアジド化合物(e)を得た。
【0116】
【化16】
【0117】
合成例6 ポリイミド前駆体Aの合成
乾燥窒素気流下、4,4’−ジアミノフェニルエーテル(DAE)50.1g(0.25モル)、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン(SiDA)12.4g(0.05モル)をN−メチル−2−ピロリドン(NMP)500gに溶解させた。ここに合成例1で得られたヒドロキシ基含有酸無水物(a)214g(0.30モル)をNMP140gとともに加えて、20℃で1時間反応させ、次いで50℃で4時間反応させた。その後、N、N−ジメチルホルムアミドジメチルアセタール71.4g(0.6モル)をNMP50gで希釈した溶液を10分かけて滴下した。滴下後、50℃で3時間攪拌し重合液を得た。この重合液を水5Lに加えスラリー化した。このスラリーを減圧濾過し脱水したのち、5Lの水を加えメカニカルスターラーで攪拌後減圧濾過し脱水を2回繰り返した。この後、80℃の真空乾燥機で20時間乾燥し、ポリイミド前駆体Aを得た。
【0118】
合成例7 ポリイミド前駆体Bの合成
乾燥窒素気流下、合成例2で得られたヒドロキシル基含有ジアミン(b)136g(0.225モル)をNMP500gに溶解させた。ここに合成例1で得られた3,3’,4,4’−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸無水物(ODPA)77.6g(0.25モル)をピリジン300gとともに加えて、40℃で2時間反応させた。その後、末端封止剤として、3−エチニルアニリン5.8g(0.05モル)を加え、さらに40℃で1時間反応させた。その後、N、N−ジメチルホルムアミドジエチルアセタール73.5g(0.5モル)をNMP50gで希釈した溶液を10分かけて滴下した。滴下後、40℃で2時間攪拌し重合液を得た。この重合液を水5Lに加えスラリー化した。このスラリーを減圧濾過し脱水したのち、5Lの水を加えメカニカルスターラーで攪拌後減圧濾過し脱水を2回繰り返した。この後、80℃の真空乾燥機で72時間乾燥し、ポリイミド前駆体Bを得た。
【0119】
合成例8 ポリイミド前駆体Cの合成
乾燥窒素気流下、合成例3で得られたヒドロキシル基含有ジアミン化合物(c)151g(0.40モル)、SiDA12.4g(0.05モル)をNMP500gに溶解させた。ここにODPA155g(0.5モル)をNMP210gとともに加えて、20℃で1時間反応させ、次いで50℃で1時間反応させた。その後、末端封止剤として、4−アリルアニリン9.5g(0.08モル)を加え、さらに50℃で1時間反応させた。その後、N,N−ジメチルホルムアミドジエチルアセタール132g(0.9モル)をNMP150gで希釈した溶液を10分かけて滴下した。滴下後、40℃で3時間攪拌し重合液を得た。この重合液を水5Lに加えスラリー化した。このスラリーを減圧濾過し脱水したのち、5Lの水を加えメカニカルスターラーで攪拌後減圧濾過し脱水を2回繰り返した。この後、80℃の真空乾燥機で20時間乾燥し、ポリイミド前駆体Cを得た。
【0120】
合成例9 ポリベンゾオキサゾール前駆体Dの合成
乾燥窒素気流下、ジフェニルエーテル−4,4’−ジカルボン酸ジクロライド(DEDC)1モルと1−ヒドロキシベンゾトリアゾール2モルとを反応させて得られたジカルボン酸誘導体197g(0.40モル)とBAHF183g(0.50モル)をNMP500gに溶解させ、75℃で12時間攪拌した。次に、末端封止剤として、NMP300gに溶解させた3−アリルベンゼンジカルボン酸無水物37.6g(0.20モル)を加え、さらに75℃で12時間攪拌し、重合液を得た。この重合液を水5Lに加えスラリー化した。このスラリーを減圧濾過し脱水したのち、5Lの水を加えメカニカルスターラーで攪拌後減圧濾過し脱水を2回繰り返した。この後、80℃の真空乾燥機で36時間乾燥し、ポリベンゾオキサゾール前駆体Dを得た。
【0121】
合成例10 ポリイミドEの合成
乾燥窒素気流下、BAHF49.6g(0.135モル)とSiDA3.7g(0.015モル)をNMP200gに溶解させ、ODPA46.7g(0.15モル)を加えて撹拌し、室温で5時間反応させた。その後、200℃まで加熱し2時間イミド化させ、重合液を得た。
【0122】
上記重合液を水2Lに加えスラリー化した。このスラリーを減圧濾過し脱水したのち、5Lの水を加えメカニカルスターラーで攪拌後減圧濾過し脱水を2回繰り返した後、80℃の真空乾燥機で72時間乾燥しポリイミドEを得た。
【0123】
[実施例1]
ポリマーAを10g、合成例4で得られたキノンジアジド化合物(d)2.0g1−ヒドロキシベンゾトリアゾール 1mg MX−280 2.0gをγ―ブチルラクトン60g、乳酸エチル40gに溶解させてワニスを得た。
【0124】
[実施例2〜1、および比較例1〜3]
ポリマー、キノンジアジド化合、含窒素化合物および架橋材を表1に記載のとおりとした以外は実施例1と同様にして、ワニスを得た。ここで、実施例3、4、5、7は参考例1〜と読み替えるものとする。
【0125】
使用した架橋剤の構造を以下に示す。
【0126】
【化17】
【0127】
使用した複素環化合物の構造を以下に示す。
【0128】
【化18】
【0129】
使用した各成分の組成と評価結果を表1に示す。
【0130】
【表1】