(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明の一実施形態におけるアレイデバイスを図面に基づいて説明する。
以下の詳細な説明では、本発明の実施形態の完全な理解を提供するように多くの特定の細部について記載される。しかしながら、かかる特定の細部がなくても1つ以上の実施態様が実施できることは明らかである。
図1から
図4は、マイクロビーズ等の球体のビーズを、各種形状の開口部を有する微小孔に収容する場合に、微小孔内の溶媒が微小孔外に排出される際の流路(以後、溶媒の排出路という。)の一例を模式的に示したものである。なお、1つの微小孔に1つのビーズを収容するようになっている。
【0010】
図1は、微小孔(貫通孔)2の開口部2aの形状が円形である場合を示したものである。
図1に示すように、ビーズ1は球体であるため、ビーズ1が微小孔2に収容される場合、微小孔2内の溶媒は、微小孔2の円形状の開口部2aと球体のビーズ1との隙間を通って微小孔2の外に排出されることになる。そのため、開口部2aの直径とビーズ1の直径との差が小さいほど溶媒の排出路10は狭くなり、微小孔2内の溶媒が微小孔2外に排出されにくくなる。つまり、微小孔2内の溶媒とビーズ1との置換がされにくくなり、ビーズ1が微小孔2内に取り込まれにくい。
微小孔2の開口部2aの直径をビーズ1の直径に対してより大きくすれば、溶媒の排出路10は広くなるが、流路内に微小孔2を設ける場合、微小孔2の開口部2aの直径を大きくするほど、限られた流路内に設けることのできる微小孔2の数も少なくなる。つまり、ビーズ1を微小孔2に取り込みやすくはなるが、流路全体でみると、微小孔2に取り込むことのできるビーズ1の数が減少することになる。
【0011】
図2から
図4は、本発明の一実施形態におけるアレイデバイスを用いた場合の一例である。
図2は、微小孔2の開口部2aの形状が五角形である場合を示したものである。
開口部2aの形状が五角形である場合、微小孔2にビーズ1が収容される過程において、微小孔2の開口側から見て、開口部2aとビーズ1との間の、開口部2aの、五角形の角部に相当する部分に空間2bが形成され、この空間2bが微小孔2内の溶媒の排出路となる。開口部2aの形状が五角形である場合、開口部2aを、ビーズ1が五角形の各辺に接する程度の大きさに形成したとしても空間2bは必ず形成されるため、排出路を容易に確保することができる。
【0012】
図3は、微小孔2の開口部2aの形状が正方形であり且つ四隅を面取りしたものである。
開口部2aが面取りした正方形である場合、微小孔2にビーズ1が収容される過程において、開口側から見て、開口部2aとビーズ1との間の、開口部2aの面取り部分の両側に相当する部分に空間2bが形成され、この空間2bが微小孔2内の溶媒の排出路となる。開口部2aの形状が面取りした正方形である場合、開口部2aを、ビーズ1が面取り部分に接する程度の大きさに形成したとしても空間2bは必ず形成されるため、排出路を容易に確保することができる。
【0013】
図4は、微小孔2の開口部2aの形状が楕円形である場合を示したものである。
開口部2aの形状が楕円形である場合、微小孔2にビーズ1が収容される過程において、開口部2aとビーズ1との間の、開口部2aの長軸方向の両端に相当する部分に空間2bが形成され、この空間2bが微小孔2内の溶媒の排出路となる。開口部2aが楕円形である場合、開口部2aを、ビーズ1が楕円形の短軸方向の曲面に接する程度の大きさに形成したとしても空間2bは必ず形成されるため、排出路を容易に確保することができる。また、微小孔2の数を増やすことなく実現することができるため、例えば、生体分子解析用キットに適用した場合等には、アレイデバイスの増大を伴うことなく検出精度の向上を図ることができる。
【0014】
なお、
図2〜
図4では、球体のビーズ1を収容する際に、開口部2aの形状が、五角形、面取りした正方形、楕円形である場合について説明したがこれに限るものではなく、開口部2aの形状が多角形であってもよい。また、ビーズ1は、球体に限るものではなく、微小孔2の開口側から見てビーズ1が多角形であり、開口部2aの形状が円であってもよく、
図2〜
図4で説明したように、ビーズ1を微小孔2に収容する過程において、ビーズ1と微小孔2の開口部2aとの間に、微小孔2内の溶媒の排出路となる隙間が形成されればよい。すなわち、一つの微小孔2に一つのビーズ1が収容された状態において、微小孔2の開口側から見て、開口部2aの形状とビーズ1の形状とが異なっていればよい。なお、ここでいう形状が異なるとは、
図1に示すように相似形状である場合は含まず、
図2〜
図4に示すように、非相似形状である場合をいう。
【0015】
このように、一つの微小孔2に一つのビーズ1が収容された状態において、微小孔2の開口側から見て、開口部2aの形状とビーズ1の形状とを非相似形状とすることによって、ビーズ1を微小孔2に収容する過程において、排出路を確保することができる。したがって、微小孔2内の溶媒により、微小孔2内へのビーズ1の移動が妨げられることを抑制することができ、結果的に、微小孔2内にビーズ1を効率よく収容させることができる。
【0016】
図5は、本発明を適用したアレイデバイスを用いた生体分子解析用キットの一例を示す構成図である。生体分子解析方法では、解析する生体分子として、細胞、エクソソーム、DNA、RNA、miRNA(マイクロRNA)、mRNA(messengerRNA)(以下、RNA類と言うことがある。)、タンパク質のいずれかが選ばれる。
ここでは、核酸定量用のアレイデバイスを用いた場合について説明するが、本発明におけるアレイデバイスは、核酸定量用に限定されるものではない。例えばタンパク質を解析するためのアレイデバイスとして適用することもできる。
【0017】
本実施形態における生体分子解析用キットは、
図5に示すように、核酸定量用アレイデバイス5を備え、この核酸定量用アレイデバイス5の流路内に、マイクロビーズ等の粒子が分散された溶媒からなる検出反応試薬21を導入した後、油性封止液22を導入することによって、検出反応試薬21を反応容器5a内に封止するようになっている。
なお、ここでは、粒子の一例としてマイクロビーズを用いているが、細胞、菌、ウィルス、ゲル、エマルジョン、ミセル等を、検査対象を捕捉する粒子として用いることも可能である。
核酸定量用アレイデバイス5は、
図5に示すように、基体部(基材)11と、基体部11と共に流路12を形成するカバー部13とを備え、流路12に溶媒を導入するための注入口部(図示せず)と排出口部(図示せず)とを備える。基体部11は、基板11aと、基板11a上に形成された微小孔アレイ層11bとを備える。
【0018】
微小孔アレイ層11bは、例えば、基板11a上に形成された微小孔アレイ層を形成するために形成した層を基板11aが露出するまでパターニングすること等により微小孔2となるパターンが形成されている。そして、基板11aの、微小孔アレイ層11bが除去されて露出した部分を底面、基板11aが露出した部分を囲む微小孔アレイ層11bとで囲まれた領域が微小孔2となり、核酸定量用アレイデバイス5における反応容器5aとなる。
微小孔アレイ層11bは、基板11aに直接形成してもよいし、微小孔アレイ層11bを形成した部材を基板11aに接着する、又は溶着する等の手段で固定して設けてもよい。
【0019】
基板11aは、実質的に透明な材料からなる板状部材である。基板11aの材質としては、例えば樹脂やガラス等を適用することができる。具体的には、基板11aは、ポリスチレンやポリプロピレンから形成されていてもよい。また、基板11aは、核酸定量用アレイデバイスを搬送する装置や作業者の手作業による取扱い時に破損しない程度の剛性を持ったものであればよい。
微小孔アレイ層11bは、複数の貫通孔が配列されて形成されている層である。微小孔アレイ層11bの層厚は例えば3μmであり、微小孔アレイ層11bとこの微小孔アレイ層11bと向かい合うカバー部13との間には例えば100μmの間隔が空けられている。反応容器5aは、一端に開口部を有する有底楕円形など、球体のビーズとは異なる形状を有する。
【0020】
反応容器5aは、例えば開口部の形状が楕円形であれば、例えば長径が7μm、短径が3.5μmであり、深さが3μmの断面が楕円の中空の柱状に形成される。
反応容器5aの容積は適宜設定されてよいが、反応容器5aの容積が小さい方がシグナル検出可能となるまでの反応時間を短縮することができる。反応容器5aの容積は、一例として100ピコリットル又はそれ以下とすることができる。つまり、微小空間内で生体分子の識別を行う場合、反応容器5aの容積が大きくなるとシグナルが希釈されて検出感度が落ちる。したがって、反応容器5aの容積を、100ピコリットル以下とすることによって、微小空間内で生体分子の識別を行う場合であっても、検出感度を維持することができる。
【0021】
反応容器5aの容積は、具体的には、シグナルを飽和させて十分なシグナルを発生させるのにかかる時間を短縮する目的がある場合には、解析対象の分子が1つの反応容器5aに1つ以下となる液量に基づいて設定される。
各反応容器5a同士の中心線間の距離(ピッチ)は、各反応容器5aの直径よりも大きければよい。なお、ここでいう反応容器5aの中心線とは、反応容器5aの開口部の重心を通る、反応容器5aの深さ方向と並行な線のことをいう。
【0022】
各反応容器5aの間隔(隙間)の大きさは、各反応容器5aにおいて独立してシグナル検出ができる分解能に応じて設定される。
各反応容器5aは微小孔アレイ層11bに対して三角格子状をなして配列されている。
なお、各反応容器5aの配列方法は特に限定されない。微小孔アレイ層11bに形成された貫通孔と、基板11aの表面とによって、基板11aを底面部とする有底筒状の微小な反応容器5aが形成されている。
【0023】
微小孔アレイ層11bの材質は、樹脂やガラス等であってよい。微小孔アレイ層11bの材質は、基板11aの材質と同じでもよいし基板11aの材質と異なっていてもよい。また、微小孔アレイ層11bは基板11aと同じ材料で一体化されていてもよい。また、微小孔アレイ層11bは基板11aと同じ材料で一体成型されていてもよい。樹脂からなる微小孔アレイ層11bの材質の例としては、シクロオレフィンポリマーや、シリコン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリ酢酸ビニル、フッ素樹脂、アモルファスフッ素樹脂などが挙げられる。なお、微小孔アレイ層11bの例として示されたこれらの材質はあくまでも例であり、微小孔アレイ層11bの材質はこれらには限られない。
【0024】
また、微小孔アレイ層11bは着色されていてもよい。微小孔アレイ層11bが着色されていると、反応容器5a内で蛍光、発光、吸光度等の光の測定をする場合に、測定対象となる反応容器5aに近接する他の反応容器5aからの光の影響が軽減される。
微小孔アレイ層11bは、基板11a上に積層された疎水性膜のベタパターンに対してエッチング、エンボス形成、又は切削等の加工が施されることによって反応容器5aが形成される。
【0025】
また、微小孔アレイ層11bが基板11aと一体成型される場合は、基板11aにエッチング、エンボス形成、又は切削等の加工が施されることによって、微小孔アレイ層11bに、反応容器5aに相当する部分が形成される。これによって、疎水部及び親水部を有するパターンを基板に形成することができる。
後述する実施例では、CYTOP(登録商標)が疎水部、ガラスが親水部に相当する。
疎水部及び親水部を有するパターンを有する基板は、油性封止液22によって、検出反応試薬21(ビーズ等の粒子、検出対象物質を含んでいてよい)を、各反応容器5aに区分するときに効率的である。
【0026】
しかしながら、基体部11、すなわち基板11a及び微小孔アレイ層11bの両方を疎水部(疎水性の材料)で構成するか、又は親水部(親水性の材料)で構成しても良いし、疎水性、親水性を特に考慮せず構成しても良い。
カバー部13は、微小孔アレイ層11bとの間に隙間を有して複数の反応容器5aの開口部分を覆うように配置され、微小孔アレイ層11bとカバー部13との間に、各種の液体が流れる流路を形成する。本実施形態では、微小孔アレイ層11bとカバー部13との間を、注入口部から排出口部へ向かって各種の液体が流れる。例えば、微小孔アレイ層11bと向かい合うように板状のカバー部13を配置し、微小孔アレイ層11bとカバー部13とを、これらの間に所定の隙間をもって別部材により位置決めすることによって、上下が微小孔アレイ層11bとカバー部13に囲まれ、側面が別部材により囲まれた流路を形成している。
【0027】
次に、本実施形態に係る生体分子解析用キットに好適な試薬の組成について説明する。
検出反応試薬21は、微小孔アレイ層11bとカバー部13との間に形成された流路に、注入口部から送液可能な溶液である。検出反応試薬21は、解析対象物質に関連する鋳型核酸に対する酵素反応などの生化学的反応を行うための試薬である。
鋳型核酸に対する生化学的反応は、例えば、鋳型核酸が存在する条件下でシグナル増幅が起こるような反応である。検出反応試薬21は、例えば核酸を検出可能な方法に応じて選択される。具体的には、インベーダー(登録商標)法や、LAMP法(商標登録)、TaqMan(登録商標)法、又は蛍光プローブ法やその他の方法に使用される試薬が本実施形態の検出反応試薬21に含まれる。
【0028】
例えば、特定の遺伝子が解析(検出)対象の場合、鋳型核酸そのもの、又は鋳型核酸の一部分が解析対象となる。
そして、検出対象の物質(生体分子)は、検出反応試薬21に混合して、核酸定量用アレルデバイス5に送液される。このとき、マイクロビーズ等の粒子を検出反応試薬21に分散させることによって、マイクロビーズ等の粒子により、検出対象の物質が、捕捉される。マイクロビーズの例としては、後述する標識ビーズなどが挙げられる。
【0029】
次に、本実施形態に係る生体分子解析用キットに適用可能な生体物質を捕捉するビーズ1について説明する。
生体分子は、それ自体は水の中に分散しているため、反応容器5aの中に重力等の外力で落ちることは無い。そこで、水と比重の異なるビーズ1に生体分子を捕捉させて反応容器5a内に落とし込む。ビーズ1の材質は特に限定されるものではないが、磁性ビーズを使うことで磁力により反応容器5aの中に引き込むことも可能である。また、生体分子がDNAの場合には、ビーズ1にDNAプローブの標識を行い、生体分子がタンパク質の場合には、ビーズ1に抗体標識を行うことができる。ビーズ1の形状は、反応容器5aの開口部から反応容器5a内にビーズ1を収容可能な大きさであればよく、且つ、1つのビーズ1が1つの反応容器5aに収容されたときに、反応容器5aの開口側から見て、反応容器5aの開口部(つまり、微小孔2の開口部2a)の形状と、ビーズ1の形状とが非相似形状であればよい。
【0030】
次に、本実施形態に係る生体分子解析用キットに適用可能な油性封止液22の組成について説明する。
油性封止液22は、微小孔アレイ層11bとカバー部13との間に注入口部から送液可能な溶液である。油性封止液22は、解析対象物質を含む試料と混合しない材料から選ぶことができる。油性封止液22としてはミネラルオイルやクロロホルム、スクアレン、ヘキサデカン、フッ素系液体のFC−40等を用いることができる。
【0031】
解析シグナル(検出対象)が蛍光の場合、反応容器5a中に収容された検出反応試薬に含まれる蛍光色素などに測定用の励起光を当て、発生した蛍光を測定する。このとき、カバー部13が励起光を受けて、蛍光を発することがある。これを自家蛍光という。
このようなとき、本来測定すべき反応容器5a中の蛍光が自家蛍光によって、S/N比が悪くなり、測定精度が下がることがある。このようなことを防止し、S/N比を向上させるために、光吸収性の物質を使用することができる。光吸収性の物質を油性封止液22に混合することも可能である。
【0032】
光吸収性の物質は、励起光又は観察する波長を吸収するもので、油性封止液に溶解する材料から選ぶことができる。光吸収性の物質としては、顔料、染料、クエンチャー(励起エネルギー吸収剤)などから選ぶことができる。
光吸収性の物質を含む油性封止液22を使用することで、次のような効果を得ることができる。つまり、例えば基体部11側から励起光を照射し、反応容器5a内に存在する検出対象からの蛍光を測定する場合、光吸収性の物質を含む油性封止液22によって、カバー部13側に入射される励起光が吸収され、また、カバー部13が励起光を受けて蛍光した光が吸収されるため、自家蛍光の発生を抑制でき、また、発生した自家蛍光が測定側(基体部11)に到達しないため、S/N比の悪化を防止し、測定精度を高くすることが可能となる。
【実施例】
【0033】
次に、本発明のアレイデバイスを適用した生体分子解析用キットの作用効果を確認するために行った実施例について説明する。
<アレイデバイスの作製>
0.5mm厚のガラス製の基板にCYTOP(登録商標)(旭硝子製)をスピンコートした後、180℃で1時間ベークした。形成されたCYTOPの厚みは3μmだった。CYTOPを基板にスピンコートによってコートした後、ポジティブフォトレジストをコートし、フォトマスクを用いて反応容器5aとなる微小孔のパターンを形成した。その後、O
2(酸素)プラズマによってCYTOPをドライエッチングした。表面に残ったフォトレジストを除去するためにアセトンとエタノールにより表面を洗浄し、リンスした。
【0034】
図6(a)に示すようにCYTOPによって形成された開口部の形状が正方形の微小孔(微小空間)である反応容器5aの直径(1辺の長さ)は5μmである。また、
図6(b)に示す、比較例として作製したCYTOPによって形成された開口部の形状が円形の微小孔である反応容器5aの直径は5μmである。
本実施例では、基板11aがガラス、微小孔アレイ層11bがCYTOP(登録商標)で構成された基体部11が得られる。
【0035】
アレイデバイス5は、上述のようにして作製した1つのブロックに10,000個の反応容器5aとしての微小孔を有する。このブロックがアレイデバイス5に複数個形成されており、合計100万個の微小孔が形成された。
図5に示すように、送液ポート(注入口部、排出口部:図示せず)を有するガラス製の板(カバー部13)と基体部11(基板11a、微小孔アレイ層11bを含む部分)とを、50μmの厚みを有し、流路形状に加工された両面テープを用いて接着した。
【0036】
<ビーズと検出反応試薬との混合液の送液>
まず、インベーダー反応のターゲットDNAを標識した直径3μmの
球体の蛍光ビーズとインベーダー反応試薬(1μM アレルプローブ、1μM インベーダーオリゴ、1μM FAM標識アーム、10mM MOPS pH7.5、6.25mM MgCl
2、50U/μL クリベース、Tween 20)22μl及びDNA(検出反応試薬)を、送液ポートを通じてアレイデバイスに送液した。
その後、油性封止液としての検出反応試薬と混ざり合わないFC−40(Sigma)を、送液ポートを通じて80μl送液することで各微小孔内に試薬を分割して封入した。これを63℃のホットプレート上で15分間加熱し、インベーダー反応を実施した。
【0037】
次に、蛍光顕微鏡(オリンパス製)を使用し、NIBAの蛍光フィルタを用いて各微小孔の蛍光を検出した。露光時間は、1000msecとした。
開口部の形状が正方形の微小孔を用いたときの蛍光画像を
図7(a)に示し、開口部の形状が円形の微小孔を用いたときの蛍光画像を
図7(b)に示す。また、開口部の形状が、正方形の微小孔と円形の微小孔とを用いたときの全ての微小孔数に対する反応が起こった微小孔の数を表1に示す。また、蛍光ビーズを数えた後、蛍光ビーズが入っている微小孔の中でインベーダー反応による蛍光が観察された微小孔を数えることでターゲットDNAが含まれていたかを計算することができる。
【0038】
【表1】
【0039】
表1に示すように、同数の微小孔に対し、蛍光ビーズが入った微小孔数は、開口部の形状が正方形である方が円形である場合に比較して倍程度であり、微小孔に蛍光ビーズが入った割合は、開口部の形状が正方形である場合の方が大きいことが確認された。
開口部の形状が正方形の微小孔では、微小孔に蛍光ビーズが収容される際に、微小孔の角部分に必ず隙間ができる。そのため、この隙間が微小孔内の反応試薬の排出路となり、微小孔に入っていた反応試薬が抜けて蛍光ビーズと入れ替わりやすい。これにより微小孔に収容される蛍光ビーズの数が増えるため、蛍光観察の精度が向上することが確認された。