【実施例】
【0033】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
但し、実施例7は参考例とする。
【0034】
[測定方法]
実施例中に示す測定や評価は次に示すような条件で行った。
【0035】
(1)貫通孔の内部表面粗さRa(μm)
丸本ストルアス社製のレプリセットを用いて、任意に選択した一つの貫通孔の内部のレプリカを製作し、表面計測機能を有する顕微鏡(キーエンス社製VK−X100)にて、対物レンズ倍率10倍でレプリカの表面部を観察して表面粗さを計測した。なお、計測結果表示はJIS B0601:1994に準ずるパラメーターを使用し、カットオフ値は0.20mmとした。測定は、レプリカ上で任意に選択した3箇所について行い、その平均値を貫通孔の内部表面粗さRa(μm)とした。
【0036】
(2)フィルムの厚み(μm)
シックネスゲージ(ミツトヨ社製 型番KK547−401)を用いて、任意の5点における厚みを測定し、その平均値をフィルム厚みとした。
【0037】
(3)成型物の温度(℃)
造粒機の運転開始から運転終了まで、成型物を切断するカッター刃先端の熱電対にて検出する温度をデータロガー(オムロン社製 型番ZR−RX45)にて、サンプリング周期1分で記録した。なお、運転が正常に終了した場合は、運転開始後温度が安定したときの温度を成型物の温度とし、運転が異常停止したときは、停止時の温度を成型物の温度とした。
【0038】
(4)成型物の平均嵩密度(g/cm
3)
体積1Lの容器に成型物を投入して全体の質量を測定し、そこから容器の質量を引いて成型物1Lの質量を算出した。成型物1Lの質量より成型物1cm
3の質量を算出し、これを成型物の嵩密度とした。なお、成型物の嵩密度の測定を3回行い、その平均値を成型物の平均嵩密度とした。
【0039】
(5)造粒機運転停止直後のダイス表面温度(℃)
造粒機運転停止直後に、ダイス表面温度をサーモグラフィで測定した。
【0040】
(6)ダイス外径側における成型物の融着した痕跡の有無
運転終了後又は異常停止後に、造粒機のカバーを開き、ダイス貫通孔より押し出された切断前の成型物が2つ以上固着していることが確認されれば、溶融した痕跡有とし、2つ以上の固着がなければ溶融した痕跡無とした。
【0041】
[貫通孔の内部の加工]
本実施例及び比較例においては、ドリルでダイスにφ6mmの貫通孔を形成し、貫通孔の内部表面粗さRaが所望の値となるように、リーマで貫通孔の内部を切削した。なお、ドリル、リーマによる加工は、全てマシニングセンタ(自動加工機)を用いて自動で行った。研磨終了後、前述の方法により、貫通孔の内部表面粗さRaを測定し、貫通孔の内部表面粗さRaが所望の値となったことを確認した。
【0042】
(実施例1)
二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(以下、PETと略すことがある)フィルム製造工程から発生した厚み23μmのPETフィルム屑を、粉砕機により粉砕し、粉砕物を造粒ホッパに投入した。その後、供給速度が400kg/hrとなるようにフィーダーの回転速度を設定して、孔径がφ6mm、ダイス貫通孔の内部表面粗さRaが3μmであるダイスを有し、かつ成型物のカット長さが30mmとなる位置にカッターが設置され、造粒機カバーを有する造粒機(新田ゼラチン製ペレットミルを改良したもの)に、粉砕物を投入し、運転した。なお、造粒機カバーは二重構造であり、φ150mmの給気口、排気口を各1箇所有し、空間内に冷却媒体を供給できる構造のものを使用した。また、成型物の温度を測定する熱電対の上限温度は、145℃に設定した。運転中は、給気用として制御室に設置されたダイキン製63kwパッケージエアコンからダクトを枝取りした20℃の空気を、給気口より風量10m
3/minで給気し、排気用に接続した0.75kwのシロッコファンをダンパーにより調整し、造粒機カバー内の空気を、排気口より風量12m
3/minで排気した。また、冷却媒体供給口から、冷却媒体として水温18℃の冷却水を、流速5L/minにて供給した。
【0043】
この条件にて造粒機を連続8時間運転し、約3200kgの成型物を得た。運転中、成型物の温度は100℃で安定しており、得られた成型物の平均嵩密度は0.52g/cm
3であった。造粒機運転停止直後のダイス表面温度は、104℃であった。また、ダイス外径側に成型物の溶融した痕跡は見られなかった。
【0044】
(実施例2)
フィルム厚みを188μm、供給速度を500kg/hrとした以外、実施例1と同様にして造粒機を連続8時間運転し、約4000kgの成型物を得た。運転中、成型物の温度は103℃で安定しており、製造した成型物の平均嵩密度は0.55g/cm
3であった。造粒機運転停止直後にダイス表面温度をサーモグラフィで測定したところ、107℃であった。また、ダイス外径側に成型物の溶融した痕跡は見られなかった。
【0045】
(実施例3)
ダイス貫通孔の内部表面粗さRaを0.5μm、供給速度を500kg/hrとした以外、実施例1と同様にして造粒機を連続8時間運転し、約4000kgの成型物を得た。運転中、成型物の温度は102℃で安定しており、製造した成型物の平均嵩密度は0.51g/cm
3であった。造粒機運転停止直後にダイス表面温度をサーモグラフィで測定したところ、106℃であった。また、ダイス外径側に成型物の溶融した痕跡は見られなかった。
【0046】
(実施例4)
ダイス貫通孔の内部表面粗さRaを4.7μm、供給速度を500kg/hrとした以外、実施例1と同様にして造粒機を連続8時間運転し、約4000kgの成型物を得た。運転中、成型物の温度は111℃で安定しており、製造した成型物の平均嵩密度は0.51g/cm
3であった。造粒機運転停止直後にダイス表面温度をサーモグラフィで測定したところ、114℃であった。また、ダイス外径側に成型物の溶融した痕跡は見られなかった。
【0047】
(実施例5)
フィルム製造工程にて両面に下記の組成からなる塗液を一軸延伸後に塗布して易接着層を有するフィルムとしたこと以外は実施例1と同様にして造粒機を8時間運転し、約3200kgの成型物を得た。運転中、成型物の温度は101℃で安定しており、製造した成型物の平均嵩密度は0.51g/cm
3であった。造粒機運転停止直後にダイス表面温度をサーモグラフィで測定したところ、105℃であった。また、ダイス外径側に成型物の溶融した痕跡は見られなかった。
【0048】
[塗液]
下記のポリエステル樹脂エマルジョン100質量部に対し、下記のメラミン系架橋剤液を55質量部と、平均粒径が0.1μmのコロイダルシリカ粒子を1質量部添加したものを塗液の原液とした。これを水で希釈し、5質量%濃度の水溶液としたものを塗液とした。
【0049】
〔ポリエステル樹脂エマルジョン〕
下記組成の酸成分とジオール成分を共重合して得られたポリエステル共重合体のエマルジョン。
<酸成分>
・テレフタル酸:50モル%
・イソフタル酸:40モル%
・5−ナトリウムスルホイソフタル酸:10モル%
<ジオール成分>
・エチレングリコール:96モル%
・ネオペンチルグリコール:3モル%
・ジエチレングリコール:1モル%
〔メラミン系架橋剤液〕
イミノ基型メチル化メラミンを、イソプロピルアルコールと水との混合溶媒(イソプロピルアルコール:水=10:90(質量比))で希釈した液。
【0050】
(実施例6)
フィルム製造工程にて両面に実施例5に記載の塗液を一軸延伸後に塗布して易接着層を有するフィルムとしたこと、フィルム厚みを188μm、供給速度を500kg/hrとした以外は実施例1と同様にして造粒機を8時間運転し、約4000kgの成型物を得た。運転中、成型物の温度は105℃で安定しており、製造した成型物の平均嵩密度は0.54g/cm
3であった。造粒機運転停止直後にダイス表面温度をサーモグラフィで測定したところ、108℃であった。また、ダイス外径側に成型物の溶融した痕跡は見られなかった。
【0051】
(実施例7)
フィルムをポリエチレンイソフタレート(以下PET−Iと略すことがある。)フィルムとしたこと以外は実施例1と同様にして造粒機を8時間運転し、約3200kgの成型物を得た。運転中、成型物の温度は99℃で安定しており、製造した成型物の平均嵩密度は0.53g/cm
3であった。造粒機運転停止直後にダイス表面温度をサーモグラフィで測定したところ、103℃であった。また、ダイス外径側に成型物の溶融した痕跡は見られなかった。
【0052】
(比較例1)
ダイス貫通孔の内部表面粗さRaを10μmとし、
図3に示すような給気口、排気口がなく、カバーへの改良がされていない造粒機(新田ゼラチン製ペレットミル)を使用した以外、実施例1と同様にして造粒機を運転した。運転開始後30分で成型物の温度が上限に達し、造粒機の運転が異常停止した。造粒機運転停止後に造粒機カバーを開放し、内部を点検したところ、ダイス外径側に成型物の融着した痕跡が確認された。
【0053】
(比較例2)
フィルム厚みを188μm、ダイス貫通孔の内部表面粗さRaを10μmとし、
図3に示すような給気口、排気口がなく、カバーへの改良がされていない造粒機(新田ゼラチン製ペレットミル)を使用した以外、実施例1と同様にして造粒機を運転した。運転開始後1時間10分で成型物の温度が上限に達し、造粒機の運転が異常停止した。造粒機運転停止後に造粒機カバーを開放し、内部を点検したところ、ダイス外径側に成型物の融着した痕跡が確認された。
【0054】
(比較例3)
ダイス貫通孔の内部表面粗さRaを10μmとした以外、実施例1と同様にして造粒機を運転した。運転開始後45分で成型物の温度が上限に達し、造粒機の運転が異常停止した。造粒機運転停止後に造粒機カバーを開放し、内部を点検したところ、ダイス外径側に成型物の融着した痕跡が確認された。
【0055】
(比較例4)
フィルム厚みを188μm、ダイス貫通孔の内部表面粗さRaを18μmとし、
図3に示すような給気口、排気口がなく、カバーへの改良がされていない造粒機(新田ゼラチン製ペレットミル)を使用した以外、実施例1と同様にして造粒機を運転した。運転開始後1時間で成型物の温度が上限に達し、造粒機の運転が異常停止した。造粒機運転停止後に造粒機カバーを開放し、内部を点検したところ、ダイス外径側に成型物の融着した痕跡が確認された。
【0056】
(比較例5)
フィルム製造工程にて両面に実施例5に記載の塗液を一軸延伸後に塗布して易接着層を有するフィルムとしたこと、ダイス貫通孔の内部表面粗さRaを10μmとした以外は実施例1と同様にして造粒機を運転した。運転開始後30分で成型物の温度が上限に達し、造粒機の運転が異常停止した。造粒機運転停止後に造粒機カバーを開放し、内部を点検したところ、ダイス外径側に成型物の融着した痕跡が確認された。
【0057】
実施例1〜7及び比較例1〜5における造粒機の運転条件、評価結果等を表1に示す。
【0058】
【表1】
【0059】
成型物採取量(kg)、運転中成型物温度(℃)、平均嵩密度(g/cm
3)、及び停止直後ダイス表面温度(℃)については、造粒機の運転が異常停止した場合は測定していない。