【実施例】
【0023】
以下、図面を参照して本発明の好適な第1〜第5実施例について説明する。
【0024】
<第1実施例>
[ヘッドアップディスプレイの構成]
図1は、第1実施例に係るヘッドアップディスプレイ100の概略構成図である。
図1に示すように、第1実施例に係るヘッドアップディスプレイ100は、主に、光源ユニット1と、凹面鏡10と、を備え、フロントウィンドウ25と、天井部27と、ボンネット28と、ダッシュボード29とを備える車両に取り付けられる。
【0025】
光源ユニット1は、ダッシュボード29内に設けられ、表示像を構成する光(「表示光」とも呼ぶ。)を凹面鏡10に照射させる。この場合、凹面鏡10で反射した表示光は、ダッシュボード29に設けられた開口部89を介してフロントウィンドウ25へ到達し、さらにフロントウィンドウ25で反射することで運転者の目の位置に到達する。このように、光源ユニット1は、表示光を運転者の目の位置へ到達させて、運転者に虚像「Iv」を視認させる。なお、光源ユニット1は、図示しないナビゲーション装置と通信を行うことで、ユーザが設定した目的地への経路(案内経路)の情報など、虚像Ivとして表示させる画像を生成するのに必要な種々の情報を受信してもよい。光源ユニット1は、本発明における「画像表示装置」の一例である。
【0026】
凹面鏡10は、光源ユニット1から出射された表示光を、ダッシュボード29に設けられた開口部89に向けて反射し、フロントウィンドウ25へ到達させる。この場合、凹面鏡10は、表示光が示す画像を拡大して反射する。
【0027】
なお、光源ユニット1の設置位置は、
図1に示すようにダッシュボード29の内部であることに限定されない。例えば、光源ユニット1は、天井部27に取り付けられる態様(図示しないサンバイザに取り付けられる態様も含む)であってもよい。この場合、光源ユニット1とフロントウィンドウ25との間にコンバイナが設けられてもよい。また、光源ユニット1がダッシュボード29の内部にある態様であっても、コンバイナが設けられていてもよい。この場合、例えば、光源ユニット1から開口部89に向けて出射された表示光を、ダッシュボード29上に設けられたコンバイナで受光する構成を採用してもよい。
【0028】
[光源ユニットの構成]
図2は、光源ユニット1の概略構成を示す。光源ユニット1は、主に、プロジェクタユニット2と、光源部3と、光源ユニット1の駆動電力を供給する電源4と、ナビゲーション装置51等から虚像Ivの表示に必要なビデオ信号「S1」及びコントロール信号「S2」を受信するインターフェース5とを有する。ビデオ信号S1は、画像コンテンツ信号やプロジェクタ等で対応可能な動画信号であり、例えば、RGB888やYUV444などが該当する。
【0029】
プロジェクタユニット2は、光源部3に表示光を出射させるコントロール信号等を生成するユニットであり、主に、電源ブロック6と、コントロールブロック7と、ビデオ信号処理ブロック8と、フレームメモリ11と、ROM12と、RAM13と、タイミングコントローラ14と、MEMS制御ブロック15と、MEMSドライバ16と、レーザ制御ブロック17と、レーザドライバ18と、モータドライバ19と、上下駆動回路20と、ADC(Analog to Digital Converter)21、22と、を有する。
【0030】
光源部3は、プロジェクタユニット2から供給されるコントロール信号等に基づき表示光を生成して凹面鏡10に照射させる。光源部3は、主に、MEMSミラー31と、グラデーションNDフィルタ32(32U、32D)と、ステッピングモータ(左右駆動機構)33と、左右位置検知センサ34と、ソレノイド(上下駆動機構)35と、レーザ光源部36と、受光素子37と、上下位置検知センサ43とを有する。以後では、グラデーションNDフィルタ32にレーザ光が入射する方向を「X軸方向」、グラデーションNDフィルタ32の長手方向(左右方向)を「Z軸方向」、グラデーションNDフィルタ32の短手方向(上下方向)を「Y軸方向」とし、各正方向を
図2に示すように定める。なお、
図2では、YZ平面と平行に形成されたグラデーションNDフィルタ32の入射面が説明の便宜上図示されている。
【0031】
電源ブロック6は、コントロールブロック7から受信するコントロール信号に基づき、電源4から供給された電力をプロジェクタユニット2内で使う電力に変換し、各ブロックへの電源の供給と停止を行う。
【0032】
コントロールブロック7は、プロジェクタユニット2全体の制御を行う。コントロールブロック7は、ナビゲーション装置51等からインターフェース5を介して供給されるコントロール信号S2を受信し、当該コントロール信号S2が示す指示に応じた動作を行う。例えば、コントロールブロック7は、コントロール信号S2に基づき、輝度調整、画像の点灯/消灯、カラーバランス調整、画像調整等の処理を行う。コントロールブロック7は、輝度変更ブロック70を有する。
【0033】
輝度変更ブロック70は、コントロール信号S2が示す輝度変更指示に応じ、ステッピングモータ33及びソレノイド35の駆動制御を行うことでグラデーションNDフィルタ32を移動させる。これにより、輝度変更ブロック70は、コントロール信号S2により指定された輝度(「目標輝度」とも呼ぶ。)により画像が表示されるように、グラデーションNDフィルタ32におけるレーザ光の入射位置(「レーザ入射位置Pin」とも呼ぶ。)を変更する。この場合、例えば、輝度変更ブロック70は、想定される目標輝度ごとに、レーザ入射位置Pinでの透過率が目標輝度を実現するための透過率となるグラデーションNDフィルタ32の位置を示すマップ等を予め記憶しておき、当該マップを参照してグラデーションNDフィルタ32の移動制御を行う。輝度変更ブロック70によるグラデーションNDフィルタ32の移動制御については、[グラデーションNDフィルタの移動制御]のセクションで詳しく説明する。輝度変更ブロック70及びステッピングモータ33の少なくとも一方は、本発明における「第1移動手段」の一例であり、輝度変更ブロック70及びソレノイド35の少なくとも一方は、本発明における「第2移動手段」の一例である。また、輝度変更ブロック70は、本発明におけるプログラムを実行するコンピュータの一例である。
【0034】
ナビゲーション装置51は、車外の環境光(即ち外光)の光量を測定するための照度センサ52と電気的に接続し、照度センサ52が測定した光量に応じてコントロール信号S2により指示する目標輝度を決定する。具体的には、ナビゲーション装置51は、予め記憶した所定のマップ等を参照し、外光の光量が高いほど目標輝度を高くし、外光の光量が小さいほど目標輝度を低く設定する。
【0035】
ビデオ信号処理ブロック8は、ナビゲーション装置51等からインターフェース5を介して供給されるビデオ信号S1に基づいて、MEMS制御ブロック15やレーザ制御ブロック17を制御する。また、ビデオ信号処理ブロック8は、ビデオ信号S1をフレームメモリ11に書き込み、MEMSミラー31の駆動タイミングに応じて随時読み出し、赤(R)、緑(G)、青(B)の色ごとに各ピクセルの輝度に対応するコントロール信号を順次レーザ制御ブロック17に送信する。ビデオ信号処理ブロック8は、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)として構成されている。
【0036】
ROM12は、ビデオ信号処理ブロック8が動作するための制御プログラムやデータなどを記憶している。RAM13には、ビデオ信号処理ブロック8が動作する際のワークメモリとして、各種データが逐次読み書きされる。
【0037】
タイミングコントローラ14は、フレームメモリ11からのビデオ信号処理ブロック8による画像データの読み出しタイミングを制御する。また、タイミングコントローラ14は、MEMS制御ブロック15を介してMEMSミラー31の動作タイミングも制御する。
【0038】
MEMS制御ブロック15は、ビデオ信号処理ブロック8から供給されるコントロール信号及びMEMSミラー31から供給されるMEMSミラー31の変位情報から、実際にMEMSミラー31を駆動するための出力信号をMEMSドライバ16へ供給する。
【0039】
MEMSドライバ16は、MEMS制御ブロック15から供給されたMEMSミラー31の駆動信号を、実際のMEMSミラー31を動作させる信号になるように増幅させてMEMSミラー31に供給する。
【0040】
レーザ制御ブロック17は、ビデオ信号処理ブロック8から供給されるコントロール信号と、受光素子37からの光検出信号とに基づき、レーザ光源部36を駆動する為の駆動信号を生成し、レーザドライバ18へ供給する。レーザ制御ブロック17は、APC(Auto Power Control)ブロック71を有する。
【0041】
APCブロック71は、虚像Ivとして表示させる画像の描画エリアの外側領域を特定の輝度で光らせた場合の受光素子37が検出したRGBの各レーザの出力値を取得し、これらの出力値が予め記憶した基準値(「APC基準値」とも呼ぶ。)になるように調整する。具体的には、APCブロック71は、レーザドライバ18のゲインを調整したり、ビデオ信号S1のゲインを調整したりすることにより、受光素子37の出力値がAPC基準値になるように制御する。これにより、APCブロック71は、温度変化が生じても、見かけ上の輝度及びカラーバランスを一定に保つ。
【0042】
APC基準値は、最高輝度及びカラーバランスが最適になるようR、G、Bの各レーザのゲイン調整が行われた時点で、R、G、Bの各レーザをある特定の輝度で光らせた時の受光素子37の出力値であって、図示しない不揮発メモリなどに記憶される。
【0043】
レーザドライバ18は、レーザ制御ブロック17から供給されるレーザ光源部36の駆動信号を増幅する。レーザドライバ18は、DAC(Digital−to−Analog Converter)を内蔵し、上述の駆動信号をアナログ信号に変換してレーザ光源部36へ供給してもよい。
【0044】
モータドライバ19は、ステッピングモータ33を駆動するための駆動回路であり、輝度変更ブロック70から供給されるコントロール信号に基づきステッピングモータ33を駆動させてグラデーションNDフィルタ32の左右方向(即ちZ軸方向)の位置調整を行う。上下駆動回路20は、ソレノイド35を駆動するための駆動回路であり、輝度変更ブロック70から供給されるコントロール信号に基づきソレノイド35を駆動させてグラデーションNDフィルタ32の上下方向(即ちY軸方向)の位置調整を行う。
【0045】
ADC21は、受光素子37が出力するアナログ信号をデジタル信号に変換してAPCブロック71に供給する。ADC22は、左右位置検知センサ34が出力するアナログ信号をデジタル信号に変換して輝度変更ブロック70に供給する。さらに、ADC22は、上下位置検知センサ43が出力するアナログ信号をデジタル信号に変換して輝度変更ブロック70に供給する。
【0046】
MEMSミラー31は、グラデーションNDフィルタ32を透過したレーザ光をマイクロレンズアレイ39に向けて反射する。マイクロレンズアレイ39は、複数のマイクロレンズが配列されており、MEMSミラー31で反射されたレーザ光が入射する。マイクロレンズアレイ39の放射面には、中間像が形成される。マイクロレンズアレイ39から射出された光は、図示しないフィールドレンズ等を介し、凹面鏡10に入射される。MEMSミラー31には、ピエゾセンサ41、42が設けられている。ピエゾセンサ41は、水平方向(即ちZ軸方向)のMEMSミラー31の位置を検出し、その検出信号をタイミングコントローラ14に供給する。ピエゾセンサ42は、垂直方向(即ちY軸方向)のMEMSミラー31の位置を検出し、その検出信号をタイミングコントローラ14に供給する。
【0047】
グラデーションNDフィルタ32は、長手方向において透過率が連続的に変化する上側フィルタ部32U及び下側フィルタ部32Dから構成される。上側フィルタ部32U及び下側フィルタ部32Dは、短手方向(即ち上下方向)に並べられており、一体となってY軸方向及びZ軸方向に移動自在に構成される。本実施例では、グラデーションNDフィルタ32Uの透過率は、Z軸正方向側の端部からZ軸負方向側の端部にかけて連続的に増加し、グラデーションNDフィルタ32Dの透過率は、Z軸負方向側の端部からZ軸正方向側の端部にかけて連続的に増加する。このように、グラデーションNDフィルタ32Uにおいて透過率が増加する方向(即ちZ軸負方向)と下側フィルタ部32Dにおいて透過率が増加する方向(即ちZ軸正方向)とは逆方向となっている。即ち、グラデーションNDフィルタ32Uにおける透過率の最大位置及び最小位置は、下側フィルタ部32Dの透過率の最大位置及び最小位置とそれぞれ対極の位置となる。なお、グラデーションNDフィルタ32U、32Dの透過率は、レーザ入射位置PinのZ軸上の位置に応じて線形変化してもよいし、対数変化してもよい。なお、10000対1といった大きな減衰特性を持たせる場合には、グラデーションNDフィルタ32の小型化のため、透過率が対数的に変化するものが望ましい。グラデーションNDフィルタ32は、本発明における「光量調整手段」の一例である。
【0048】
ステッピングモータ33は、モータドライバ19から供給される駆動信号に基づき、グラデーションNDフィルタ32のZ軸上の位置を高精度に調整する。ステッピングモータ33は、Z軸方向に延在するモータ軸44を有し、モータ軸44に沿ってグラデーションNDフィルタ32を移動させる。
【0049】
左右位置検知センサ34は、グラデーションNDフィルタ32のZ軸上の位置を検出し、その検出信号をADC22へ供給する。左右位置検知センサ34は、例えばリニアポジションセンサであって、抵抗値の変化による電圧の変化を内蔵のADCで読み取ることでグラデーションNDフィルタ32のZ軸上の位置を検出する。
【0050】
ソレノイド35は、Y軸方向にグラデーションNDフィルタ32を30〜100ミリ秒程度で高速移動させる2接点ソレノイドである。本実施例では、ソレノイド35は、レーザ入射位置Pinが上側フィルタ部32Uに重なる位置(「A点」とも呼ぶ。)と、レーザ入射位置Pinが下側フィルタ部32Dに重なる位置(「B点」とも呼ぶ。)との間で切り替わる。
【0051】
レーザ光源部36は、R、G、Bの波長を有するレーザダイオードLD1〜LD3を備える。各レーザダイオードLD1〜LD3は、レーザドライバ18からの駆動信号により発光する。レーザ光源部36は、各レーザダイオードLD1〜LD3のレーザ光を平行光にするコリメータレンズと、各レーザダイオードLD1〜LD3のレーザ光を合成するための反射ミラーなどを備える。合成されたレーザ光は、偏光ビームスプリッタ38に入射する。そして、偏光ビームスプリッタ38に入射したレーザ光は、偏光ビームスプリッタ38を透過してグラデーションNDフィルタ32に入射する光と、偏光ビームスプリッタ38で反射して受光素子37に入射する光とに分けられる。
【0052】
受光素子37は、偏光ビームスプリッタ38で反射したレーザ光をR、G、Bごとのレーザ光に分解するビームスプリッタを有し、R、G、Bの各レーザ光の光量(強度)に応じた電気信号である検出信号を生成し、ADC21へ供給する。受光素子37が生成する検出信号は、レーザパワー安定化のためのフィードバック信号として用いられたり、異常発光を検出した場合にレーザダイオードLD1〜LD3の消灯を行うレーザセーフティ動作に用いられたりする。
【0053】
上下位置検知センサ43は、グラデーションNDフィルタ32のY軸上の位置(即ちソレノイド35がA点又はB点のいずれに存在するか)を検知し、その検知信号をADC22へ供給する。なお、上下位置検知センサ43が設けられる代わりに、輝度変更ブロック70は、ソフトウェア処理によりグラデーションNDフィルタ32のY軸上の位置を特定してもよい。例えば、輝度変更ブロック70は、上下駆動回路20に対してグラデーションNDフィルタ32のY軸上の位置を切替えるコントロール信号を送信して所定時間経過した場合に、グラデーションNDフィルタ32のY軸上の位置が切り替わったとみなして切替後の位置を記憶してもよい。
【0054】
[グラデーションNDフィルタの移動制御]
以下では、輝度変更ブロック70によるグラデーションNDフィルタ32の移動制御について説明する。
【0055】
(1)概要
まず、ステッピングモータ33及びソレノイド35によるグラデーションNDフィルタ32の移動制御の概要について
図3を参照して説明する。
図3は、グラデーションNDフィルタ32をレーザ光の入射方向から観察した図である。
【0056】
図3の例では、上側フィルタ部32Uは、透過率が約0%となるZ軸正方向側の端部から透過率が約100%となるZ軸負方向側の端部にかけて、透過率が徐々に増加している。一方、下側フィルタ部32Dは、透過率が約0%となるZ軸負方向側の端部から透過率が約100%となるZ軸正方向側の端部にかけて、透過率が徐々に増加している。ステッピングモータ33によるグラデーションNDフィルタ32のZ軸上での可動距離は、グラデーションNDフィルタ32の物理的な距離、即ち、グラデーションNDフィルタ32の長手方向の長さ(「フィルタ長Lf」とも呼ぶ。)と略一致する。また、ソレノイド35がA点に存在する場合、レーザ入射位置Pinは、上側フィルタ部32Uと重なる位置に存在し、ソレノイド35がB点に存在する場合、レーザ入射位置Pinは、下側フィルタ部32Dと重なる位置に存在する。
【0057】
ここで、レーザ入射位置Pinが透過率10%となる上側フィルタ部32U上の位置に存在するときに、目標輝度の増加に起因して透過率90%となる位置にレーザ入射位置Pinを移動させる場合について考察する。この場合、レーザ入射位置Pinを同じ上側フィルタ部32U上の透過率90%となる位置「PinX」に移動させるときには、
図3に示す矢印50の長さ分だけステッピングモータ33によりグラデーションNDフィルタ32をZ軸負方向に移動させる必要がある。一方、レーザ入射位置Pinを下側フィルタ部32D上の透過率90%となる位置「PinY」に移動させるときには、ソレノイド35をA点からB点に切替えればよい(矢印51参照)。また、上述したように、ソレノイド35によるグラデーションNDフィルタ32の移動速度の方が、ステッピングモータ33によるグラデーションNDフィルタ32の移動速度よりも速い。よって、この場合、ソレノイド35を利用した後者の方がグラデーションNDフィルタ32の移動時間が短くなる。
【0058】
以上を勘案し、第1実施例では、輝度変更ブロック70は、ステッピングモータ33によるZ軸方向の移動に加えて、又はこれに代えて、ソレノイド35によるY軸方向の移動を適宜実行することで、目標の透過率を有するグラデーションNDフィルタ32の位置へレーザ入射位置Pinを高速移動させる。
【0059】
以後では、ソレノイド35をA点とB点とで切替えることで、レーザ入射位置Pinを上側フィルタ部32U上の位置と下側フィルタ部32D上の位置との間で切替える処理を、「ソレノイド35による切替処理」とも呼ぶ。また、ソレノイド35を用いることなくステッピングモータ33によりレーザ入射位置Pinを目標の透過率となる位置に移動させる場合に必要なグラデーションNDフィルタ32の移動距離(
図3では矢印50の長さ)を、「必要移動距離D1」とも呼ぶ。
【0060】
(2)ソレノイドによる切替処理の要否判定
次に、ソレノイド35による切替処理の要否判定について説明する。概略的には、輝度変更ブロック70は、必要移動距離D1がフィルタ長Lfの1/2以上の場合に、ソレノイド35による切替処理を行う。これにより、輝度変更ブロック70は、目標輝度が得られるようにグラデーションNDフィルタ32の移動を高速に完了させる。フィルタ長Lfの1/2は、本発明における「所定距離」の一例である。
【0061】
図4(A)は、グラデーションNDフィルタ32をレーザ光の入射方向から観察した図である。ここで、
図4(A)は、レーザ入射位置Pinを上側フィルタ部32U上の透過率10%の位置「Pin0」から透過率65%の位置に移動させる場合の概要を示す。
【0062】
図4(A)の例では、輝度変更ブロック70は、まず、ソレノイド35の位置をA点に固定しままレーザ入射位置Pinを現在の位置Pin0から透過率65%の位置「Pin1」に移動すると仮定した場合のZ軸上でのグラデーションNDフィルタ32の移動距離を、必要移動距離D1として算出する。そして、この場合、輝度変更ブロック70は、算出した必要移動距離D1が予め記憶したフィルタ長Lfの1/2以上であることから、ソレノイド35の位置をA点からB点に切替えるべきと判定する。
【0063】
従って、この場合、輝度変更ブロック70は、ソレノイド35の位置をB点に切替えることを前提としたときのZ軸上でのグラデーションNDフィルタ32の必要な移動距離(「必要移動距離D2」とも呼ぶ。)を算出する。即ち、この場合、輝度変更ブロック70は、下側フィルタ部32D上での透過率65%の位置「Pin3」を特定し、特定した位置Pin3と現在の位置Pin0とのZ軸上での距離を、必要移動距離D2として算出する。そして、
図4(A)の例では、輝度変更ブロック70は、必要移動距離D2だけステッピングモータ33によりグラデーションNDフィルタ32をZ軸正方向に移動させることでレーザ入射位置Pinを位置Pin0から位置「Pin2」に移動させ、かつ、ソレノイド35をA点からB点に切替えることで、レーザ入射位置Pinを位置Pin2から位置Pin3に移動させている。これにより、輝度変更ブロック70は、ソレノイド35の位置をA点に固定しままレーザ入射位置Pinを位置Pin0から位置Pin1に移動させる場合と比較して、ソレノイド35の高速移動を利用することで、グラデーションNDフィルタ32の移動を早期に完了させることができる。
【0064】
なお、
図4(A)の例に代えて、必要移動距離D1がフィルタ長Lfの1/2未満である場合には、輝度変更ブロック70は、ソレノイド35による切替処理を実行する必要がないと判断し、ステッピングモータ33により必要移動距離D1だけグラデーションNDフィルタ32を移動させる。即ち、この場合、輝度変更ブロック70は、ソレノイド35を用いた場合であっても、グラデーションNDフィルタ32の移動時間の短縮効果は得られない又は限定的であると判断し、ステッピングモータ33のみによるグラデーションNDフィルタ32の移動を行う。これにより、輝度変更ブロック70は、ソレノイド35の位置の切替を不要に実行するのを好適に抑制することができる。
【0065】
(3)ソレノイドによる切替処理の実行タイミング
次に、ソレノイド35による切替処理と、ステッピングモータ33による必要移動距離D2分の移動との両方を行う必要がある場合の各々の処理タイミングについて説明する。第1実施例では、輝度変更ブロック70は、画像の表示中では、表示中の画像の輝度急変を抑制するため、ステッピングモータ33によるZ軸方向の移動を実行後にソレノイド35による切替処理を行う。
【0066】
図4(B)は、
図4(A)の例におけるグラデーションNDフィルタ32の移動手順を示した図である。
図4(A)の例において、仮にソレノイド35を最初に駆動させてレーザ入射位置Pinを透過率10%の位置Pin0から透過率90%の位置「Pin4」に移動させた場合、表示中の画像の輝度が急変して観察者が眩しく感じてしまう。従って、輝度変更ブロック70は、まず必要移動距離D2だけグラデーションNDフィルタ32をZ軸正方向に移動させることで、レーザ入射位置Pinを位置Pin0から位置Pin2に移動させた後(手順1)、ソレノイド35による切替処理を行うことで、レーザ入射位置Pinを位置Pin2から位置Pin3に移動させる(手順2)。これにより、輝度変更ブロック70は、画像の表示中に目標輝度を大幅に変更する必要がある場合であっても、好適に目標輝度に画像を設定することができる。
【0067】
なお、画像の表示中に目標輝度を大幅に変更する状況としては、例えば、トンネル、地下通路、または走行ビルの影となるエリアの出入り口などの環境光の光量が急変する場所を車両が通過する場合などが該当する。これらの場合、照度センサ52が検知する光量が大きく変化し、照度センサ52が検知する光量に応じて目標輝度を大幅に変える必要が生じる。
【0068】
図5は、レーザ入射位置Pinを上側フィルタ部32U上の透過率80%の位置「Pin4」から透過率35%の位置に移動させる場合の概要を示す。レーザ入射位置Pinの透過率を下げる場合においても、レーザ入射位置Pinの透過率を上げる
図4の例と同様に、輝度変更ブロック70は、まず、上側フィルタ部32U上での目標透過率35%となる位置「Pin5」までの必要移動距離D1を算出する。そして、輝度変更ブロック70は、算出した必要移動距離D1が予め記憶したフィルタ長Lfの1/2以上であることから、ソレノイド35をA点からB点に切替えるべきと判定する。従って、この場合、輝度変更ブロック70は、ソレノイド35をB点に切替えることを前提とした必要移動距離D2を算出する。そして、輝度変更ブロック70は、必要移動距離D2だけステッピングモータ33によりグラデーションNDフィルタ32をZ軸負方向に移動させてレーザ入射位置Pinを位置Pin4から位置「Pin6」に移動させた後、ソレノイド35をA点からB点に切替えることで、レーザ入射位置Pinを目標の透過率35%となる位置「Pin7」に移動させる。この場合であっても、輝度変更ブロック70は、まず必要移動距離D2だけグラデーションNDフィルタ32を移動させた後、ソレノイド35による切替処理を行うことで、表示中の画像の輝度の急変を抑制することができる。なお、仮にソレノイド35による切替処理を最初に実行した場合、レーザ入射位置Pinは、透過率80%の位置Pin4から透過率20%の位置「Pin8」へ移動することになり、輝度の急変が生じることになる。
【0069】
なお、グラデーションNDフィルタ32の移動を行った後に画像を表示させる場合(例えば光源ユニット1の起動時)には、画像の輝度の急変が生じないことから、輝度変更ブロック70は、ソレノイド35による切替処理をステッピングモータ33による移動開始よりも先又は同時に行ってもよい。例えば、夜間に画像を最低の輝度で表示して電源を切った後、翌日の昼間に電源を入れた場合には、目標輝度を大幅に上げる必要があるため、必要移動距離D1が長くなる。このような場合、輝度変更ブロック70は、画像の表示前に、ソレノイド35による切替処理等を行うことでグラデーションNDフィルタ32の移動を行う。そして、輝度変更ブロック70は、グラデーションNDフィルタ32の移動完了後、ビデオ信号処理ブロック8等に描画の開始を指示する信号を送信し、ビデオ信号S1に基づく画像の描画を開始させる。この場合であっても、輝度変更ブロック70は、電源投入後にビデオ信号S1に基づく画像の描画を早期に開始させることができる。
【0070】
(4)処理フロー
図6は、光源ユニット1が実行する処理手順を示すフローチャートである。光源ユニット1は、
図6のフローチャートの処理を繰り返し実行する。
【0071】
まず、輝度変更ブロック70は、インターフェース5を介してコントロール信号S2を受信することで、ビデオ信号S1に基づき描画すべき画像の目標輝度を取得する(ステップS101)。次に、輝度変更ブロック70は、ADC22を介して、左右位置検知センサ34からグラデーションNDフィルタ32のZ軸上での位置を示す情報(「左右位置情報」とも呼ぶ。)を取得する(ステップS102)。さらに、輝度変更ブロック70は、ADC22を介して、上下位置検知センサ43からソレノイド35の位置情報を取得する(ステップS103)。
【0072】
次に、輝度変更ブロック70は、ソレノイド35の位置切替を前提としない場合のZ軸上での必要なグラデーションNDフィルタ32の移動距離である必要移動距離D1を算出する(ステップS104)。この場合、まず、輝度変更ブロック70は、ステップS102で取得した左右位置情報及びステップS103で取得したソレノイド35の位置情報に基づき、現在のレーザ入射位置Pinを特定する。また、輝度変更ブロック70は、グラデーションNDフィルタ32を上下方向に移動させない場合での目標輝度を実現するためのレーザ入射位置Pinの目標位置を所定のマップ等を参照して特定する。そして、輝度変更ブロック70は、現在のレーザ入射位置Pinと上述のレーザ入射位置Pinの目標位置との距離差を、必要移動距離D1として算出する。
【0073】
そして、輝度変更ブロック70は、必要移動距離D1が予め記憶したフィルタ長Lfの1/2以上であるか否か判定する(ステップS105)。そして、輝度変更ブロック70は、必要移動距離D1がフィルタ長Lfの1/2以上である場合(ステップS105;Yes)、ソレノイド35による切替処理を前提とした場合のZ軸上での必要な移動距離である必要移動距離D2を算出する(ステップS106)。そして、輝度変更ブロック70は、モータドライバ19に駆動信号を送信してステッピングモータ33を駆動させることでグラデーションNDフィルタ32をZ軸方向に必要移動距離D2だけ移動させる(ステップS107)。そして、輝度変更ブロック70は、上下駆動回路20に駆動信号を送信してソレノイド35の位置の切替を行うことで、グラデーションNDフィルタ32を上下方向に移動させる(ステップS108)。そして、輝度変更ブロック70は、ソレノイド35の位置情報及びセンサ位置情報を継続して取得し、グラデーションNDフィルタ32の移動完了を確認する(ステップS110)。
【0074】
一方、輝度変更ブロック70は、必要移動距離D1がフィルタ長Lfの1/2未満である場合(ステップS105;No)、ソレノイド35の駆動制御を行うことなく、ステッピングモータ33のみを駆動させてグラデーションNDフィルタ32をZ軸方向に必要移動距離D1だけ移動させる(ステップS109)。そして、輝度変更ブロック70は、ソレノイド35の位置情報及びセンサ位置情報を継続して取得し、グラデーションNDフィルタ32の移動完了を確認する(ステップS110)。この場合のレーザ入射位置Pinは、目標輝度を実現する透過率を有する領域と重なるため、外光の光量等を勘案した適切な輝度により虚像Ivが表示される。
【0075】
以上のように、第1実施例では、光源ユニット1は、グラデーションNDフィルタ32と、ステッピングモータ33と、ソレノイド35とを備える。グラデーションNDフィルタ32は、上側フィルタ部32Uと、下側フィルタ部32Dとを有し、上側フィルタ部32U上での透過率の増加方向は、下側フィルタ部32D上での透過率の増加方向と逆方向となっている。この場合、光源ユニット1の輝度変更ブロック70は、グラデーションNDフィルタ32をステッピングモータ33により移動させる必要移動距離D1がフィルタ長Lfの1/2以上の場合に、ソレノイド35による切替処理を行うことで、ステッピングモータ33によるグラデーションNDフィルタ32の移動距離を短くする。このように、光源ユニット1の起動時や画像表示中でのトンネル入口出口付近の通過時などで、大きく目標輝度を変化させなければならない時であっても、ソレノイド35による高速移動を利用することで、必要なグラデーションNDフィルタ32の移動を早期に完了することができる。また、時々刻々移り変わる周囲の細かな明るさの変化、特に、明け方、夕方での細かな周囲の明るさの変化があった場合でも、ステッピングモータ33を駆動することで細かい輝度調整を行うことができる。このように、第1実施例では、車両環境での様々な状況での明るさ調整が可能になる。
【0076】
<第2実施例>
第2実施例では、輝度変更ブロック70は、ステッピングモータ33による必要移動距離D2分の移動と、ソレノイド35による切替処理との両方を行う必要がある場合に、ステッピングモータ33による必要移動距離D2分の移動の完了タイミングとソレノイド35による切替処理の完了タイミングとが同時となるように、ステッピングモータ33及びソレノイド35を制御する。これにより、画像表示中での輝度急変を好適に抑制しつつ、グラデーションNDフィルタ32の移動時間を好適に短縮する。
【0077】
具体的には、まず、輝度変更ブロック70は、
図6のフローチャートの処理のステップS106で必要移動距離D2を算出後、ステッピングモータ33をソレノイド35より先に駆動させてグラデーションNDフィルタ32のZ軸方向の移動を先に開始する。その後、輝度変更ブロック70は、左右位置検知センサ34が出力する左右位置情報に基づき、グラデーションNDフィルタ32の移動開始位置からのZ軸上での移動距離(「移動距離D3」とも呼ぶ。)を特定し、移動距離D3が必要移動距離D2になるまでの所要時間「T1」(秒)をリアルタイムに予測する。具体的には、輝度変更ブロック70は、ステッピングモータ33のパルス周波数を「F」(pps:Pulse Per Second)、1パルス分の移動距離をステップ幅「Sp」(mm)とすると、以下の式により所要時間T1を算出する。
T1=(D2−D3)/Sp/F
【0078】
パルス周波数F及びステップ幅Spは、ステッピングモータ33の仕様により予め定められ、例えば輝度変更ブロック70が予め記憶しておく。なお、ステッピングモータ33を駆動させたパルスの本数を「N」とすると、移動距離D3は「N×Sp」により表される。よって、輝度変更ブロック70は、左右位置検知センサ34が出力する左右位置情報により移動距離D3を求める代わりに、「D3=N×Sp」により移動距離D3を算出してもよい。
【0079】
次に、輝度変更ブロック70は、上述の所要時間T1と、予め記憶したソレノイド35による切替処理の予想所要時間「T2」とを比較し、「T1≦T2」が成立した時点でソレノイド35の駆動を開始する。
【0080】
図4(B)及び
図5の例で説明したように、十分にZ軸方向の移動が完了していないタイミングでソレノイド35による切替処理を実行した場合、当該切替に起因した輝度差が大きいため、観察者に違和感を与えやすくなる。一方、逐次的にステッピングモータ33による移動とソレノイド35による切替処理とを行った場合には、グラデーションNDフィルタ32の移動時間が長くなる。以上を勘案し、第2実施例では、輝度変更ブロック70は、ステッピングモータ33による必要移動距離D2分の移動の完了タイミングとソレノイド35による切替処理の完了タイミングとが同時となるように、ステッピングモータ33及びソレノイド35を制御する。これにより、輝度変更ブロック70は、グラデーションNDフィルタ32の移動時間を短縮しつつ、ソレノイド35の位置切替に起因した輝度急変を好適に低減することができる。
【0081】
<第3実施例>
図7は、第3実施例に係るグラデーションNDフィルタ32Aをレーザ光の入射方向から観察した正面図を示す。
図7に示すグラデーションNDフィルタ32Aは、一枚のフィルタであって、第1実施例の上側フィルタ部32Uに相当する上側フィルタ領域32Uaと、第1実施例の下側フィルタ部32Dに相当する下側フィルタ領域32Daとを有するようにコーティングされている。上側フィルタ領域32Uaは、
図3の上側フィルタ部32Uと同様、Z軸負方向に位置するほど透過率が高くなる構成を有する。また、下側フィルタ領域32Daは、
図3の下側フィルタ部32Dと同様に、Z軸正方向に位置するほど透過率が高くなる構成を有する。この構成においても、輝度変更ブロック70は、第1実施例又は第2実施例と同様にグラデーションNDフィルタ32Aを移動させることで、好適に画像の輝度を調整することができる。
【0082】
<第4実施例>
図8は、第4実施例に係るグラデーションNDフィルタ32Bの斜視図を示す。
図8に示すように、第4実施例に係るグラデーションNDフィルタ32Bは、透過率が増減する方向であるZ軸方向を軸として回転自在な直方体であり、第1実施例の上側フィルタ部32Uに相当するフィルタ領域32Ubと、第1実施例の下側フィルタ部32Dに相当するフィルタ領域32Dbとがそれぞれ側面に設けられている。そして、グラデーションNDフィルタ32Bは、モータなどの回転機構35BによりZ軸回りに回転自在となっている。
【0083】
そして、第4実施例では、輝度変更ブロック70は、
図6のステップS108でソレノイド35をA点とB点との間で切替える代わりに、フィルタ領域32Ubがレーザ光に垂直に当たる状態と、フィルタ領域32Dbがレーザ光に垂直に当たる状態とが切り替わるように、回転機構35Bを駆動してグラデーションNDフィルタ32Bを約90°回転させる。このようにすることで、輝度変更ブロック70は、第1実施例又は第2実施例と同様に、第4実施例においても好適に画像の輝度を調整することができる。
【0084】
<第5実施例>
第5実施例では、画像の表示中に、輝度変更ブロック70は、ソレノイド35による切替処理の前後での輝度差(「切替輝度差dL」とも呼ぶ。)が所定の閾値(「閾値dLth」とも呼ぶ。)以下になるように、ソレノイド35による切替処理前にステッピングモータ33によりグラデーションNDフィルタ32の位置調整を行う。切替輝度差dLthは、観察者が許容可能な輝度差に実験等に基づき予め設定される。これにより、輝度変更ブロック70は、画像の表示中での輝度急変に起因した運転者の違和感を好適に低減する。
【0085】
具体的には、
図6のフローチャートのステップS106で必要移動距離D2の算出後、輝度変更ブロック70は、必要移動距離D2だけZ軸方向にグラデーションNDフィルタ32を移動させてソレノイド35による切替処理を行うと仮定した場合の切替輝度差dLを推定する。この場合、例えば、輝度変更ブロック70は、グラデーションNDフィルタ32上の各位置でソレノイド35による切替処理を行った場合に生じる切替輝度差dLを予め記憶したマップ等を参照することで、切替輝度差dLを推定する。そして、輝度変更ブロック70は、推定した切替輝度差dLが予め記憶した切替輝度差dLthより大きい場合、上述のマップ等を再び参照し、現在位置から必要移動距離D2だけZ軸方向にグラデーションNDフィルタ32を移動させた位置から最も近い位置で切替輝度差dLが切替輝度差dLth以下となる位置(「目標切替位置」とも呼ぶ。)を特定し、目標切替位置に到達するのに必要移動距離D2に加えてさらに移動が必要な距離(「緩衝用距離D4」とも呼ぶ。)を算出する。そして、輝度変更ブロック70は、現在位置から目標切替位置までの距離(即ち必要移動距離D2と緩衝用距離D4との和)だけステッピングモータ33によりグラデーションNDフィルタ32をZ軸方向に移動させ、ソレノイド35の位置の切替を行った後、グラデーションNDフィルタ32を再び緩衝用距離D4だけ切替前の移動方向とは逆方向に移動させる。これにより、画像表示中に、ソレノイド35による切替処理に起因して切替輝度差dLth以上の輝度差が生じるのを好適に防ぐことができる。
【0086】
図9は、第5実施例に基づくグラデーションNDフィルタ32の移動制御を行った場合のレーザ入射位置Pinの推移を示す。
図9の例では、輝度変更ブロック70は、
図6のステップS106で必要移動距離D2を算出後、レーザ入射位置Pinの現在位置「Pin9」から必要移動距離D2だけ移動させた位置「Pin10」でソレノイド35の位置の切替を行った場合の切替輝度差dLを推定し、当該切替輝度差dLが切替輝度差dLthより大きいと判定する。従って、この場合、輝度変更ブロック70は、位置Pin10から最も近い位置で切替輝度差dLが切替輝度差dLth以下となる切替位置「Pin11」を特定すると共に、位置Pin10と切替位置Pin11との距離に相当する緩衝用距離D4を算出する。そして、輝度変更ブロック70は、グラデーションNDフィルタ32をステッピングモータ33により距離「D2+D4」分だけ移動させることでレーザ入射位置Pinを切替位置Pin11に移動させた後、ソレノイド35による切替処理を行い、レーザ入射位置Pinを位置「Pin12」に遷移させる。その後、輝度変更ブロック70は、レーザ入射位置Pinをソレノイド35による切替処理前の移動方向と逆方向であるZ軸負方向に緩衝用距離D4だけ移動させることで、目標輝度を表示するための透過率20%を有する位置「Pin13」にレーザ入射位置Pinを移動させる。
【0087】
このように、第5実施例では、輝度変更ブロック70は、画像の表示中に目標輝度が大幅に変化した場合であっても、輝度急変に起因して運転者が眩しく感じるのを好適に低減することができる。
【0088】
なお、輝度変更ブロック70は、画像の表示中でないと判断した場合には、緩衝用距離D4の算出等を行うことなく、グラデーションNDフィルタ32を必要移動距離D2だけ移動させればよい。この場合、輝度変更ブロック70は、第1実施例でも説明したように、ソレノイド35による切替処理をステッピングモータ33による移動よりも先又はステッピングモータ33による移動と同時に開始してもよい。
【0089】
<変形例>
次に、各実施例に好適な変形例について説明する。以下の変形例は、任意に組み合わせて上述の各実施例に適用してもよい。
【0090】
[変形例1]
図2の構成例では、光源ユニット1は、ステッピングモータ33によりグラデーションNDフィルタ32の左右方向の移動を行うと共に、ソレノイド35によりグラデーションNDフィルタ32の上下方向の移動を行った。しかし、本発明が適用可能な構成は、これに限定されない。
【0091】
例えば、光源ユニット1は、ソレノイド35以外の駆動源(例えばモータ)によりグラデーションNDフィルタ32の上下方向の移動を行ってもよい。同様に、光源ユニット1は、ステッピングモータ33以外の駆動源によりグラデーションNDフィルタ32の左右方向の移動を行ってもよい。
【0092】
他の例では、光源ユニット1は、1つの駆動源によりグラデーションNDフィルタ32の上下方向及び左右方向の移動をそれぞれ行ってもよい。この場合、駆動源は、グラデーションNDフィルタ32を上下方向に動かす機構に接続した状態と、グラデーションNDフィルタ32を左右方向に動かす機構に接続した状態とをクラッチ等を介して切替自在に構成される。そして、輝度変更ブロック70は、上述のクラッチ等の切替制御などを行うことで、第1実施例等に基づき、グラデーションNDフィルタ32の上下方向及び左右方向の移動を逐次的に行う。この構成によれば、駆動源の数を削減して低コスト化を実現することができる。
【0093】
[変形例2]
ナビゲーション装置51は、照度センサ52の出力に代えて、又はこれに加えて、現在位置情報及び地図データに基づき、画像の目標輝度を決定してもよい。
【0094】
例えば、ナビゲーション装置51は、GPS受信機により測定される現在位置情報と地図データとを参照し、トンネルや地下通路の出入り口等の環境光の明るさが急激に変化する地点を車両が通過するか否か判定する。そして、ナビゲーション装置51は、環境光の明るさが急激に変化する地点を車両が通過すると判断した場合、通過後に必要な目標輝度を設定する。この場合、設定すべき目標輝度の情報が地図データに組み込まれていてもよい。そして、ナビゲーション装置51は目標輝度を光源ユニット1に通知し、光源ユニット1は、第1〜第5実施例のいずれかに基づき、グラデーションNDフィルタ32の移動制御を行うことで、レーザ入射位置Pinの調整を行う。
【0095】
[変形例3]
図2の構成例では、ナビゲーション装置51が目標輝度を設定し、目標輝度を指示するコントロール信号S2を輝度変更ブロック70に送信した。これに代えて、光源ユニット1の輝度変更ブロック70は、ナビゲーション装置51の代わりに照度センサ52から出力信号を受信し、目標輝度を自ら設定してもよい。[変形例2]を適用する場合も同様に、輝度変更ブロック70は、ナビゲーション装置51の代わりに、地図データ及び現在位置情報に基づき、環境光の明るさが急激に変化する地点を通過するか否かの判定を行い、目標輝度を設定してもよい。
【0096】
[変形例4]
図2に示す光源ユニット1の用途は、ヘッドアップディスプレイ100に限定されない。例えば、光源ユニット1は、プロジェクタ装置やヘッドマウントディスプレイなどのレーザ光源を有する表示装置にも好適に適用される。
【0097】
[変形例5]
図2及び
図3の上側フィルタ部32U及び下側フィルタ部32Dは、Z軸方向において連続的に透過率が変化した。これに代えて、他の透過率よりも高頻度で使用する所定の透過率が存在する場合、当該透過率となる所定幅分の領域を上側フィルタ部32U及び下側フィルタ部32Dに設けてもよい。
【0098】
図10は、変形例に係るグラデーションNDフィルタ32Cを示す。
図10に示すように、グラデーションNDフィルタ32Cを構成する上側フィルタ部32Uc及び下側フィルタ部32Dcには、それぞれ、透過率約100%の領域が対極となる端部に所定幅だけ設けられている。この構成によれば、輝度変更ブロック70は、高精度なグラデーションNDフィルタ32Cの位置調整を行うことなく、好適に透過率約100%の領域にレーザ入射位置Pinを合わせることができる。
【0099】
[変形例6]
図6のフローチャートの説明では、輝度変更ブロック70は、ステップS105において、必要移動距離D1がフィルタ長Lfの1/2以上のときにソレノイド35による切替処理が必要と判断した。これに代えて、輝度変更ブロック70は、必要移動距離D1がフィルタ長Lfの1/2未満であっても、ソレノイド35を駆動させた方がグラデーションNDフィルタ32の移動が早期に完了すると判断した場合には、ソレノイド35を併用してもよい。
【0100】
この場合、例えば、輝度変更ブロック70は、ソレノイド35による切替処理の所要時間と、ステッピングモータ33の駆動によるグラデーションNDフィルタ32の移動速度の情報を予め記憶しておき、ステッピングモータ33とソレノイド35とを併用した場合とステッピングモータ33のみを駆動させた場合とのそれぞれのグラデーションNDフィルタ32の移動所要時間を予測する。そして、輝度変更ブロック70は、ステッピングモータ33とソレノイド35とを併用した場合のグラデーションNDフィルタ32の移動所要時間がステッピングモータ33のみを駆動させた場合のグラデーションNDフィルタ32の移動所要時間よりも短いと予測した場合に、ソレノイド35による切替処理を行う。これにより、輝度変更ブロック70は、ソレノイド35による切替処理の要否を適切に判定し、グラデーションNDフィルタ32の移動をより早期に完了させることができる。