(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の特許文献1に記載の圧電アクチュエータでは、接着剤の量、及びフィラーのサイズ等のばらつきに起因して、圧電素子がアクチュエータベースに対して傾いて固定され、圧電素子の変位がアクチュエータベースに適切に伝達されない懼れがある。また、接着剤が圧電素子の端面に回り込み、圧電素子の変位が拘束される懼れもある。
【0005】
本発明は、変位量の向上を図ることが可能な圧電素子、圧電アクチュエータ及び圧電素子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る圧電素子は、圧電体と、圧電体に設けられた複数の電極と、を有する本体部と、均一の厚さで本体部に接着している半硬化状態の第一及び第二スペーサと、を備え、本体部は、矩形状を呈する面を有しており、面は、互いに対向する第一及び第二辺を含んでおり、第一スペーサは、第一辺に沿って面に接着しており、第二スペーサは、第二辺に沿って面に接着している。
【0007】
この圧電素子は、均一の厚さで予め本体部に接着している半硬化状態の第一及び第二スペーサを備えている。第一及び第二スペーサは更に硬化する余地があるため、圧電素子をアクチュエータベース等の支持部材に固定する際に、接着剤としても機能することができる。したがって、接着剤を別途設ける必要がない。これにより、接着剤の量、フィラーのサイズ等のばらつきに起因して、圧電素子が支持部材に対して傾いて固定されることが抑制される。また、接着剤が圧電素子の端面に回り込むことも抑制される。この結果、変位量の向上を図ることが可能となる。
【0008】
本発明に係る圧電素子では、第一及び第二スペーサのそれぞれは、硬化状態の第一樹脂と、未硬化状態の第二樹脂と、を含んでいてもよい。この場合、第一樹脂が硬化状態であるため、第一及び第二スペーサを均一の厚さで平坦化された所定の形状に保つことができると共に、第一及び第二スペーサを本体部に接着している状態とすることができる。また、第二樹脂が未硬化状態であるため、第一及び第二スペーサを支持部材に配置した状態で、第二樹脂を硬化させることにより、圧電素子を支持部材に接着させて固定することができる。
【0009】
本発明に係る圧電素子では、第一樹脂は、紫外線硬化性樹脂であり、第二樹脂は、熱硬化性樹脂であってもよい。本体部を支持部材に配置したときに、第一及び第二スペーサが支持部材により覆われ、第一及び第二スペーサに紫外線が照射され難くなる場合がある。このような場合でも、第二樹脂が熱硬化性樹脂であれば、熱伝導により第一及び第二スペーサを十分に加熱し、硬化させることができる。
【0010】
本発明に係る圧電素子では、面は、互いに対向する第三及び第四辺を更に含み、第一スペーサは、第一辺、第三辺、及び第四辺のそれぞれと一致する端面を有しており、第二スペーサは、第二辺、第三辺、及び第四辺のそれぞれと一致する端面を有していてもよい。また、本発明に係る圧電素子では、第一及び第二スペーサは、面に垂直な方向から見て、矩形状を呈していてもよい。
【0011】
本発明に係る圧電アクチュエータは、上記圧電素子と、第一及び第二スペーサを介して本体部を支持する支持部材と、を備えていてもよい。この場合、圧電アクチュエータは、上記圧電素子を備えるので、変位量の向上を図ることが可能となる。
【0012】
本発明に係る圧電素子の製造方法は、圧電体基板と、圧電体基板に設けられた複数の電極膜と、を有する本体基板を準備する工程と、本体基板において、所定方向に沿う切断予定ライン上に硬化条件が互いに異なる第一及び第二樹脂を含む樹脂層を設ける工程と、本体基板と、本体基板と対向する平面とにより樹脂層を挟持した状態で、第二樹脂が硬化しない条件で、第一樹脂を硬化させる工程と、第二樹脂が未硬化の状態である樹脂層ごと、本体基板を切断予定ラインに沿って切断する工程と、を含む。
【0013】
この圧電素子の製造方法は、樹脂層を本体基板と平面とにより挟持した状態で第一樹脂を硬化させるので、均一の厚さで平坦化された樹脂層を形成することができる。また、個片化により、予め本体部に均一の厚さで接着している第一及び第二スペーサを備える圧電素子を容易に得ることができる。この圧電素子によれば、上述のように、変位量の向上を図ることが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、変位量の向上を図ることが可能な圧電素子、圧電アクチュエータ及び圧電素子の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0017】
図1及び
図2を参照して、本実施形態に係る圧電アクチュエータ及び圧電素子について説明する。
図1は、本実施形態に係る圧電アクチュエータを示す断面図である。
図2(a)は、本実施形態に係る圧電素子を示す平面図である。
図2(b)は、
図2(a)のIIb−IIb線に沿っての断面図である。
図2(a)及び
図2(b)の圧電素子2は、圧電アクチュエータ1に搭載される前の状態で示されている。
【0018】
図1、
図2(a)、及び
図2(b)に示されるように、圧電アクチュエータ1は、圧電素子2と、支持部材S1,S2と、を備えている。支持部材S1,S2は、例えばハードディスク装置用のサスペンションのアクチュエータベースであり、圧電素子2はその変位をアクチュエータベースに伝達する。圧電素子2は、本体部10と、第一スペーサ3及び第二スペーサ4と、を備えている。本体部10は、矩形平板状を呈し、圧電体5と、圧電体5に設けられた第一電極6及び第二電極7と、を有している。なお、
図1では、第一電極6及び第二電極7の図示が省略されている。
【0019】
圧電体5は、矩形平板状を呈している。圧電体5は、互いに対向する第一面51及び第二面52と、互いに対向する第三面53及び第四面54と、を有している。第一面51と第二面52とが対向する方向D1は、圧電体5の厚さ方向であって、第一面51と第二面52とに垂直な方向である。第三面53と第四面54とが対向する方向D2は、方向D1に垂直な方向である。以下では、圧電体5において第一面51が設けられる方向を上、第二面52が設けられる方向を下として説明を行う。
【0020】
第一面51は矩形状を呈している。第一面51は、たとえば長方形状を呈し、かつ、第二面52と同形状を呈している。第一面51は、第一辺51a〜第四辺51dを含んでいる。第一辺51a及び第二辺51bは、方向D2に沿って互いに対向している。第三辺51c及び第四辺51dは、方向D1及び方向D2に垂直な方向D3に沿って互いに対向している。ここでは、第一辺51a及び第二辺51bは、第一面51の短辺であり、第三辺51c及び第四辺51dは、第一面51の長辺である。
【0021】
圧電体5の外形寸法は、例えば厚さ(方向D1に沿う長さ)が30μm以上500μm以下、長さ(長辺の長さ、方向D2に沿う長さ)が1.5mm、幅(短辺の長さ、方向D3に沿う長さ)が1.0mmである。圧電体5は、圧電セラミックからなる。圧電セラミックとしては、PZT[Pb(Zr,Ti)O
3]、PT[PbTiO
3]、PLZT[(Pb,La)(Zr,Ti)O
3]、又はチタン酸バリウム[BaTiO
3]、非鉛圧電セラミックスなどが挙げられる。
【0022】
第一電極6は、第一面51上に全面的に配置されている。第二電極7は、第二面52上に全面的に配置されている。第一電極6及び第二電極7の厚さは、例えば0.01μm以上100μm以下である。第一電極6及び第二電極7は、例えば、Ni,Cr,Ti,Cu,Ag,Au,Pd,Pt,Ruまたはその合金からなる。
【0023】
第一電極6及び第二電極7は、例えばCr/Ni−Cu/Au積層構造(圧電体5側から順にCr層、Ni−Cu合金層、Au層が積層された構造)からなってもよい。また、第一電極6及び第二電極7は、単層の同じ金属層(Cr層、Ni−Cu合金層、Au層、又はNi層など)として形成されていてもよい。第一電極6及び第二電極7は、スパッタリング法、めっき法、ペースト焼き付け法、又は蒸着法などの従来方法により形成される。
【0024】
第一電極6は、導電性樹脂R1によって制御配線W1に電気的に接続されている。第二電極7は、導電性樹脂R2によって制御配線W2に電気的に接続されている。導電性樹脂R1,R2は、導電性材料(例えば金属粒子など)を含有する樹脂である。
【0025】
図2(a)及び
図2(b)を参照して、圧電素子2が圧電アクチュエータ1に搭載される前の状態の第一スペーサ3及び第二スペーサ4について説明する。
図2(a)及び
図2(b)に示されるように、第一スペーサ3及び第二スペーサ4は、その厚さ方向が方向D1と一致すると共に、方向D2に沿って互いに離間するように配置されている。第一スペーサ3及び第二スペーサ4は、方向D1から見て、矩形状を呈している。ここでは、第一スペーサ3及び第二スペーサ4は、方向D1から見て、長方形状を呈し、かつ、第一スペーサ3及び第二スペーサ4は、互いに同形状を呈しているとして説明する。
【0026】
第一スペーサ3は、第一辺51aに沿って第一面51に接着している。第一スペーサ3は、第一面51の第一辺51a側の端部に接着している。第一スペーサ3は、接着面31と、対向面32と、4つの端面33とを有している。接着面31は、第一面51に接着している。対向面32は、接着面31と方向D1に沿って互いに対向している。
【0027】
各端面33は、接着面31と対向面32とを方向D1に沿って接続している。方向D1から見て、3つの端面33は、第一辺51a、第三辺51c、及び第四辺51dのそれぞれと一致している。第一スペーサ3の外形寸法は、例えば厚さ(方向D1に沿う長さ)が5μm以上200μm以下、好ましくは20μm以上30μm以下、長さ(第一辺51aに沿う長さ)が1.0mm、幅(第三辺51c及び第四辺51dに沿う長さ)が0.2mmである。
【0028】
第二スペーサ4は、第二辺51bに沿って第一面51に接着している。第二スペーサ4は、第一面51の第二辺51b側の端部に接着している。第二スペーサ4は、接着面41と、対向面42と、4つの端面43とを有している。接着面41は、第一面51に接着している。対向面42は、接着面41と方向D1に沿って互いに対向している。
【0029】
各端面43は、接着面41と対向面42とを方向D1に沿って接続している。方向D1から見て、3つの端面43は、第二辺51b、第三辺51c、及び第四辺51dのそれぞれと一致している。第二スペーサ4の外形寸法は、例えば厚さ(方向D1に沿う長さ)が5μm以上200μm以下、好ましくは20μm以上30μm以下、長さ(第二辺51bに沿う長さ)が1.0mm、幅(第三辺51c及び第四辺51dに沿う長さ)が0.2mmである。
【0030】
第一スペーサ3及び第二スペーサ4は、均一の厚さで本体部10に接着している。即ち、対向面32は、接着面31に対して平行に設けられている。また、対向面42は、接着面41に対して平行に設けられている。ここでの「均一の厚さ」及び「平行」には、予め設定した範囲での微差又は製造誤差などが許容されるとする。たとえば、第一スペーサ3及び第二スペーサ4の厚さが、全領域において平均値の±10%の範囲内であれば、均一の厚さであるとする。また、対向面32と接着面31とのなす角度、及び対向面42と接着面41とのなす角度は、それぞれ±5度の範囲内であれば、平行であるとする。
【0031】
第一スペーサ3及び第二スペーサ4は、半硬化状態であって、硬化状態の第一樹脂と、未硬化状態の第二樹脂と、を含む絶縁性接着樹脂である。即ち、半硬化状態とは、接着能を発揮している成分と、接着能を発揮していない成分とが含まれる状態である。未硬化状態で接着能を発揮していない第二樹脂が含まれることから、第一スペーサ3及び第二スペーサ4には更に硬化して、接着能を発揮する余地がある。
【0032】
第一樹脂は、紫外線硬化性樹脂である。第一樹脂としては、例えば、アクリル樹脂が挙げられる。第二樹脂は、熱硬化性樹脂である。第二樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂が挙げられる。第一スペーサ3及び第二スペーサ4は、フィラーを含んでいてもよい。フィラーとして、例えばシリカなどが挙げられる。フィラーを含むことにより、収縮防止の効果が得られるほか、後述する樹脂層86(
図3(b)参照)を印刷により容易に設けることができる。
【0033】
図1に示されるように、圧電素子2が圧電アクチュエータ1に搭載された状態の第一スペーサ3及び第二スペーサ4は、方向D1に沿って圧縮されて、方向D1に垂直な方向に広がっている。これにより、端面33及び端面43は、湾曲面となっている。この状態の第一スペーサ3及び第二スペーサ4の厚さ(方向D1に沿う長さ)は、例えば20μmであり、圧縮率は、例えば10%である。
【0034】
支持部材S1は、第一スペーサ3を介して本体部10を支持している。支持部材S1は、第一部分S1aと、第二部分S1bと、を有している。第一部分S1aは、本体部10の第三面53側に本体部10から離間して配置されている。第二部分S1bは、第一部分S1aの下端部から方向D2に沿って本体部10の下方まで延在している。本体部10の下方に位置する第二部分S1bの端部は、第一スペーサ3を介して本体部10を支持している。第二部分S1bの厚さ(方向D1に沿う長さ)は、第一部分S1aの厚さ(方向D1に沿う長さ)よりも薄い。
【0035】
支持部材S2は、第二スペーサ4を介して本体部10を支持している。支持部材S2は、第一部分S2aと、第二部分S2bと、を有している。第一部分S2aは、本体部10の第四面54側に本体部10から離間して配置されている。第二部分S2bは、第一部分S2aの下端部から方向D2に沿って本体部10の下方まで延在している。本体部10の下方に位置する第二部分S2bの端部は、第二スペーサ4を介して本体部10を支持している。第二部分S2bの厚さ(方向D1に沿う長さ)は、第一部分S2aの厚さ(方向D1に沿う長さ)よりも薄い。
【0036】
支持部材S1と支持部材S2とは、方向D2に沿って互いに対向している。第一部分S1aと第一部分S2aとは、圧電素子2を挟んで、方向D2に沿って互いに対向している。圧電素子2の下方に位置する第二部分S1bの端部と、圧電素子2の下方に位置する第二部分S2bの端部とは、方向D2に沿って互いに対向している。
【0037】
第一スペーサ3の下側には、支持部材S1に当接した状態で、制御配線W1が方向D2に沿って配置されている。制御配線W1の端部は、導電性樹脂R1により、第一電極6(
図2(b)参照)における第一スペーサ3の接着している部分よりも方向D2の中央側の部分と接続されている。第一部分S2aの上側には、方向D2に沿って制御配線W2が配置されている。制御配線W2の端部は、導電性樹脂R2により、第二電極7(
図2(b)参照)における第四面54側の端部と接続されている。
【0038】
次に、上述した圧電素子2の製造方法について、
図3及び
図4を参照して説明する。
図3は、本実施形態に係る圧電素子の製造方法について説明するための図である。
図4は、本体基板を示す斜視図である。
【0039】
まず、
図3(a)及び
図4に示されるように、本体基板82を準備する。本体基板82は、後述する工程を経て、複数の本体部10となる基板である。本体基板82は、圧電体基板83と、圧電体基板83に設けられた複数の電極膜84,85と、を有している。なお、圧電体基板83は、後述する工程を経て、複数の圧電体5となる基板である。また複数の電極膜84,85は、後述する工程を経て、複数の第一電極6及び複数の第二電極7となる膜である。
【0040】
図4に示されるように、本体基板82には、方向D3に沿う複数の切断予定ラインL1と、方向D2に沿う複数の切断予定ラインL2とが仮想的に設定されている。各切断予定ラインL1の間隔は、圧電素子2の長さ(方向D2に沿う長さ)に設定されている。各切断予定ラインL2の間隔は、圧電素子2の幅(方向D3に沿う長さ)に設定されている。
【0041】
続いて、
図3(b)に示されるように、本体基板82において、方向D3に沿う切断予定ラインL1上に、第一樹脂及び第二樹脂を含む樹脂層86を設ける。樹脂層86は、例えばスクリーン印刷、転写などの印刷方法を用いて、第一樹脂及び第二樹脂を含む樹脂により所定幅の直線的なパターンを形成することで設けられる。
【0042】
続いて、
図3(c)に示されるように、本体基板82の樹脂層86が形成された面上に透明部材87を載置する。透明部材87は、紫外線硬化性樹脂である第一樹脂の吸収波長の紫外線を50%以上透過する部材である。透明部材87、例えば、平板、フィルムであり、本体基板82と対向する平面87aを有している。このとき、本体基板82に対して平面87aが平行となるように、透明部材87を載置する。
【0043】
例えば、第一樹脂が365nmの紫外線を吸収する樹脂である場合、透明部材87として、例えばホウケイ酸ガラス、ソーダガラスなどのガラス板を使用することができる。第一樹脂がテフロン(登録商標)、ポリフッ化ビニリデン、PETなどの樹脂であれば、透明部材87として、厚さ1mm以下の板又はフィルムを使用することができる。平面87aをシリコーン系またはフッ素系のコーティング材で表面処理し剥離性を高めてもよい。
【0044】
このように、本体基板82と平面87aとにより樹脂層86を挟持した状態で、第二樹脂が硬化しない条件で、透明部材87を通して紫外線を照射し、第一樹脂を硬化させる。このとき、樹脂層86の厚さが5μm以上200μm以下、好ましくは20μm以上30μm以下となるよう、本体基板82と平面87aとの間にスペーサを配置してもよい。
【0045】
続いて、透明部材87を取り外す。これにより、
図3(d)に示されるように、均一の厚さの半硬化状態の樹脂層86が得られる。半硬化状態の樹脂層86は、硬化状態の第一樹脂と未硬化状態の第二樹脂とを含んでいる。続いて、
図3(e)に示されるように、第二樹脂が未硬化の状態である樹脂層86ごと、本体基板82を切断予定ラインL1,L2に沿って切断して、個片化(個品化)する。このとき、本体基板82の樹脂層86が形成されている面をダイシングテープに貼り付けて、ダイシングを行う。
【0046】
以上により、
図2(b)に示されるように、平坦化された対向面32,42を有し、均一の厚さで、かつ、硬化状態の第一樹脂と未硬化状態の第二樹脂とを含む第一スペーサ3及び第二スペーサ4を備える圧電素子2が得られる。
【0047】
次に、圧電素子2を支持部材S1,S2に取付け、圧電アクチュエータ1を製造する方法について説明する。まず、個片化された圧電素子2をピックアップし、支持部材S1,S2上に配置する。ピックアップは、例えば真空吸着により行うことができる。このとき、第一スペーサ3の対向面32が支持部材S1の第二部分S1bと対向し、第二スペーサ4の対向面42が支持部材S2の第二部分S2bと対向する。
【0048】
続いて、第一スペーサ3及び第二スペーサ4の温度が第二樹脂の硬化温度となるまで、第一スペーサ3及び第二スペーサ4を加熱し、第一スペーサ3及び第二スペーサ4を完全硬化させる。これにより、圧電素子2が支持部材S1,S2に接着されて固定される。続いて、導電性樹脂R1により制御配線W1を第一電極6に取付けると共に、導電性樹脂R2により制御配線W2を第二電極7に取り付ける。これにより、圧電アクチュエータ1が得られる。
【0049】
図5(a)は、第一比較形態に係る圧電アクチュエータを示す断面図である。
図5(b)は、第二比較形態に係る圧電アクチュエータを示す断面図である。
図5(a)の第一比較形態に係る圧電アクチュエータ100A、及び
図5(b)の第二比較形態に係る圧電アクチュエータ100Bのそれぞれは、圧電素子101と、支持部材102,103とを備えている。圧電素子101は、圧電体105と、一対の電極106,107とを有している。
【0050】
圧電アクチュエータ100A,100Bに用いられる圧電素子101は、
図2(b)の本実施形態の圧電素子2と異なり、第一スペーサ3及び第二スペーサ4を備えていない。このため、圧電素子101を支持部材102,103に固定する際に、例えばディスペンサーで圧電素子101に1個ずつ接着剤樹脂及びフィラーを含む接着剤108を塗布して別途設ける必要がある。この結果、手間及び時間がかかり、生産性が低下する。
【0051】
更に、
図5(a)に示されるように、接着剤108の量、及びフィラーのサイズ等のばらつきに起因して、圧電素子101が支持部材102,103に対して傾いて固定され、圧電素子101の変位が支持部材102,103に適切に伝達されない場合がある。また、
図5(b)に示されるように、圧電素子101において支持部材103と対向する部分以外に接着剤108が回り込み、圧電素子101の変位が拘束される場合がある。
【0052】
これに対し、本実施形態に係る圧電素子2は、均一の厚さで予め本体部10に接着している半硬化状態の第一スペーサ3及び第二スペーサ4を備えている。このため、圧電素子2を支持部材S1,S2に固定する際に接着剤を別途設ける必要がなく、生産性が向上する。更に、接着剤の量、フィラーのサイズ等のばらつきに起因して、圧電素子2が支持部材S1,S2に対して傾いて固定されることが抑制される。また、接着剤が圧電素子2の第三面53及び第四面54等に回り込むことも抑制される。この結果、変位量の向上を図ることが可能となる。
【0053】
また、第一スペーサ3及び第二スペーサ4のそれぞれは、硬化状態の第一樹脂と、未硬化状態の第二樹脂と、を含んでいる。このように第一樹脂が硬化状態であるため、第一スペーサ3及び第二スペーサ4を均一の厚さで平坦化された所定の形状に保つことができると共に、第一スペーサ3及び第二スペーサ4を本体部10に接着している状態とすることができる。また、第二樹脂が未硬化状態であるため、第一スペーサ3及び第二スペーサ4を支持部材S1,S2に配置した状態で、第二樹脂を硬化させることにより、圧電素子2を支持部材S1,S2に接着させて固定することができる。
【0054】
また、第一樹脂は、紫外線硬化性樹脂であり、第二樹脂は、熱硬化性樹脂である。したがって、本体部10を支持部材S1,S2に配置したときに、第一スペーサ3及び第二スペーサ4が支持部材S1,S2により覆われ、紫外線照射が難しい場合でも、熱伝導により第一スペーサ3及び第二スペーサ4を十分に加熱し、第二樹脂を硬化させることができる。
【0055】
また、第一スペーサ3及び第二スペーサ4の厚さは5μm以上、好ましくは20μm以である。このため、支持部材S1,S2と第一電極6との間に十分なクリアランスを形成することができる。これにより、例えば第一電極6にバリがあったとしても、短絡を抑制することができる。
【0056】
本実施形態の圧電素子2の製造方法は、樹脂層86を本体基板82と平面87aとにより挟持した状態で第一樹脂を硬化させるので、均一の厚さで平坦化された樹脂層86を形成することができる。また、樹脂層86ごと本体基板82を個片化することにより、予め本体部10に均一の厚さで接着している第一スペーサ3及び第二スペーサ4を備える圧電素子2を容易に得ることができる。この圧電素子2によれば、上述のように、変位量の向上を図ることが可能となる。また、樹脂層86を印刷により一度に形成することができるので、生産性を向上させることができる。
【0057】
また、本体基板82の樹脂層86が形成されている面をダイシングテープに貼り付けてダイシングを行う。このため、個片化された圧電素子2をダイシングテープからピックアップした後、圧電素子2の上下方向を反転させることなく、支持部材S1,S2上に配置することができる。
【0058】
また、対向面32,42が平坦化されているので、対向面32,42が盛り上がったような凸状面を呈している場合に比べて、支持部材S1,S2との接着面積が大きくなる。このため、圧電素子2と支持部材S1,S2との接着強度を十分に保つことができる。これにより、圧電素子2の変位が支持部材S1,S2に効率よく伝達される。この結果、圧電アクチュエータ1の変位が更に向上する。
【0059】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲で変形し、又は他のものに適用したものであってもよい。
【0060】
例えば、本体基板82の樹脂層86が形成されている面の反対側の面をダイシングテープに貼り付けてダイシングを行ってもよい。この場合、本体基板82とダイシングテープとの間に隙間がないので、ダイシング後の洗浄が容易となる。また、樹脂層86を切断した後に本体基板82を切断するので、本体基板82を切断した後に樹脂層86を切断する場合に比べて、本体基板82、特に電極膜84の割れ、欠けを抑制することができる。
【0061】
圧電素子2は、複数の電極を有していればよく、電極の配置及び数は限定されない。例えば、第一電極6及び第二電極7は、圧電体5の内部に設けられていてもよい。圧電素子2が、3つ以上の電極を有していてもよい。
【0062】
第一樹脂及び第二樹脂は、硬化条件が互いに異なる樹脂であればよく、例えば、第一樹脂が熱硬化性樹脂であり、第二樹脂が紫外線硬化性樹脂であってもよい。また、第一樹脂及び第二樹脂が互いに硬化温度が異なる熱硬化性樹脂であってもよい。また、第一樹脂及び第二樹脂が互いに吸収波長が異なる紫外線硬化性樹脂であってもよい。
【0063】
以下、本発明の実施例及び比較例について説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0064】
(実施例1)
圧電セラミック粉のペーストから作成したグリーンシートを重ね合わせ、圧電体グリーンとした後、焼成した。これにより、30mm×30mm、厚さ50μmのPZT焼成基板を作成した。作成したPZT焼成基板の両面にスパッタリング法で下地層としてNiCrを形成した後、Auを形成し、電極膜とした。樹脂層として、スクリーン印刷で紫外線硬化性樹脂と熱硬化性樹脂とを含む絶縁性接着樹脂により、L/S(ライン幅/スペース幅)が1mm/2mmのパターンを形成した。表面をフッ素コーティングした0.7mmのホウケイ酸ガラスを樹脂層上に載せた。このとき、樹脂層の厚さが100μmとなるようにスペーサを用いた。続いて、波長365nmの紫外線を照射し、樹脂層の紫外線硬化性樹脂成分を硬化させた。ホウケイ酸ガラスを取り除き、樹脂層が印刷された面をダイシングテープに貼り付けた後、ダイシングにより個片化した。
【0065】
(実施例2)
樹脂層が印刷された面の反対側の面をダイシングテープに貼り付けた以外は、実施例1と同様にして、圧電素子を形成した。
【0066】
(比較例)
ホウケイ酸ガラスを載せずに、樹脂層の紫外線硬化性樹脂成分を硬化させた以外は実施例1と同様にして圧電素子を形成した。
【0067】
以上のようにして形成した実施例1,2及び比較例の圧電素子をアクチュエータベースに取り付け、連続駆動したところ、比較例の圧電素子を用いたアクチュエータでは、圧電素子とアクチュエータベースとの接着が外れ、アクチュエータが変位しなくなるという現象が生じた。一方、実施例1,2の圧電素子を用いたアクチュエータではそのような現象は生じなかった。