(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6808971
(24)【登録日】2020年12月14日
(45)【発行日】2021年1月6日
(54)【発明の名称】超音波探傷の較正方法
(51)【国際特許分類】
G01N 29/30 20060101AFI20201221BHJP
【FI】
G01N29/30
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2016-99171(P2016-99171)
(22)【出願日】2016年5月18日
(65)【公開番号】特開2017-207345(P2017-207345A)
(43)【公開日】2017年11月24日
【審査請求日】2019年3月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003713
【氏名又は名称】大同特殊鋼株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107700
【弁理士】
【氏名又は名称】守田 賢一
(72)【発明者】
【氏名】森 大輔
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 光宏
【審査官】
村田 顕一郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−242146(JP,A)
【文献】
特開2002−098674(JP,A)
【文献】
実開昭49−148988(JP,U)
【文献】
特開昭57−070454(JP,A)
【文献】
特開2008−224232(JP,A)
【文献】
特開平07−027751(JP,A)
【文献】
米国特許第04173139(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 29/00−29/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面から異なる深さにそれぞれ所定径の円形のモデル欠陥を形成した、被探傷材と同材質の較正体を用意し、超音波受発振手段によって少なくとも前記モデル欠陥を形成した範囲の較正体表面に向けて超音波を発振するとともに超音波の反射波を受振し、受振された反射波中の欠陥信号の強度を較正体表面からの深さに応じて較正するための第1較正値を得るとともに、較正された欠陥信号強度が所定値以上となる領域の直径をさらに較正体表面からの深さに応じて較正するための第2較正値を得ることを特徴とする超音波探傷の較正方法。
【請求項2】
前記第1較正値および前記第2較正値をそれぞれ、多項式による補間曲線で求める請求項1に記載の超音波探傷の較正方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は超音波探傷の較正方法に関し、特に、欠陥の大きさを当該欠陥の深さに応じて較正できるようにした較正方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
超音波探傷器で被探傷材内の欠陥の有無を正確に検出するためには、反射波中に含まれる欠陥信号のレベルを、被探傷材内での超音波の減衰を考慮して較正する必要がある。そこで、例えば特許文献1では、欠陥信号に対する受信ゲインを当該欠陥の被探傷材内での深さ(受信時間)に応じて変化させるようにした超音波探傷器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭49−148988
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、超音波探傷器の超音波受発振器から出力される超音波は実際には三次元的な広がりのある球面波であり、収束波であるか発散波であるかによっても被探傷材内の深さでの超音波強度が変化するとともに、面積的な拡がりのある欠陥の各部からの超音波強度も異なってくることから、欠陥の有無のみならずその大きさ(投影面積)についても較正をしないと欠陥につての正確な情報は入手できない。
【0005】
そこで、本発明はこのような要請に鑑みたもので、被探傷材の欠陥の深さに関係なくその有無と大きさを正確に把握可能とした超音波探傷の較正方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本第1発明では、表面から異なる深さにそれぞれ所定径の
円形のモデル欠陥(11〜14)を形成した、被探傷材と同材質の較正体(1)を用意し、超音波受発振手段(2)によって少なくとも前記モデル欠陥(11〜14)を形成した範囲の較正体(1)表面に向けて超音波を発振するとともに超音波の反射波を受振し、受振された反射波中の欠陥信号の強度を較正体(1)表面からの深さに応じて較正するための第1較正値を得るとともに、較正された欠陥信号強度
が所定値以上となる領域の直径をさらに較正体表面からの深さに応じて較正するための第2較正値を得る。
【0007】
本第1発明によれば、第1較正値によって被探傷材の欠陥の有無をその深さに関係なく確実に知ることができるとともに、第2較正値によって被探傷材の欠陥の大きさをその深さに関係なく正確に知ることができる。
また、第1較正値および第2較正値を簡易に得ることができる。
【0010】
本第2発明では、前記第1較正値および前記第2較正値をそれぞれ、多項式(F(x)、G(x))による補間曲線で求める。
【0011】
本第2発明によれば、第1較正値および第2較正値を正確に求めることができる。
【0012】
上記カッコ内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を参考的に示すものである。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、本発明の超音波探傷の較正方法によれば、被探傷材の欠陥の深さに関係なくその有無と大きさを正確に把握することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態を示す、較正体の平面図である。
【
図3】各モデル欠陥から得られる反射波の強度を濃淡分布で示した図である。
【
図4】
図3の濃淡分布の中心部強度を較正体表面からの深さに応じてプロットしたグラフである。
【
図5】
図3における各モデル欠陥の濃淡分布を較正した後の濃度分布を示す図である。
【
図7】
図6の白色領域の直径を較正体表面からの深さに応じてプロットしたグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
なお、以下に説明する実施形態はあくまで一例であり、本発明の要旨を逸脱しない範囲で当業者が行う種々の設計的改良も本発明の範囲に含まれる。
【0016】
以下、本発明の較正方法について具体的に説明する。
図1には本発明方法に使用する較正体1の平面図を示し、
図2にはその断面図を示す。較正体1は被探傷材と同一材料で成形された直方体で、裏面は複数段に抉られている。そして、各段面には平面視で長方形の裏面の中央線Cに沿って、表面からそれぞれL1,L2,L3、L4の距離の面上に、同形の、本実施形態では円形平底穴がモデル欠陥11,12,13,14として形成されている。なお、距離L1,L2,L3、L4の一例はそれぞれ14mm、20mm、26mm、32.5mmであり、平底穴の直径の一例は0.5mmである。
【0017】
較正体1の表面上方に超音波受発振器2を位置させ、これより較正体1の表面に向けて、当該表面から距離L2の面に焦点を有する収束型超音波を出力する。そして、超音波受発振器2を、較正体1の表面に対して一定高さを保ちつつ適当なピッチ(例えば0.1mm)で表面全面に対し往復走査する。
【0018】
以上の構成で超音波受発振器2から超音波を発振しつつ反射波を受振し、モデル欠陥11〜14の各領域から得られる受信信号を、その強度に応じた濃淡の分布で表すと
図3に示すようなものとなる。
【0019】
図4は、横軸に較正体1の表面からの深さをとり、縦軸にモデル欠陥11〜14の各領域からの反射波の濃淡分布の中心部の信号強度(ここが最も信号強度が高い)をとったものである。これより、サンプル数をn(本実施形態では4)として、(n−1)の次数で各モデル欠陥11〜14の中心部信号強度を連ねる多項式の補間曲線F(x)(
図4の破線)を求める。
【0020】
超音波の焦点である、較正体1の表面からL2の距離の面にあるモデル欠陥12からの反射波の中心部信号強度を100%として、上記補間曲線F(x)を使用することによって、較正体1の任意の深さにあるモデル欠陥からの反射波の中心部信号強度を100%に換算するための較正値(第1較正値)を得ることができる。このような較正値によって、実際の被探傷材中に生じた欠陥からの反射波により得られる受信信号の強度を較正すれば、欠陥の有無の判定を当該欠陥の深さに影響されることなく適正に行うことができる。
【0021】
本実施形態ではさらに、各モデル欠陥11〜14からの受信信号強度を較正して得られた濃淡分布(
図5)に対して、その中心部の信号強度に対し強度が例えば−6dB以内の所定領域を、欠陥の大きさとして二値化によって抽出する。抽出された領域を
図6に白色で示す。
【0022】
図7は、横軸に較正体1の表面からの深さをとり、縦軸に各モデル欠陥11〜14の白色領域の直径(二値化直径)をとったものである。そこでこれより、サンプル数をn(本実施形態では4)として、(n−1)の次数で各モデル欠陥11〜14の直径値を連ねる多項式の補間曲線G(x)(
図7の破線)を求める。
【0023】
上記補間曲線G(x)を使用することによって、較正体1の任意の深さにあるモデル欠陥の直径を、実際のモデル欠陥の直径(本実施形態では0.5mm)に換算する較正値(第2較正値)を得ることができる。そして、このような較正値によって、実際の被探傷材中に生じた欠陥からの反射波に応じた受信信号の、濃淡分布の大きさを較正することによって、欠陥の大きさ(投影面積)を当該欠陥の深さに影響されることなく正確に知ることができる。
【符号の説明】
【0024】
1…較正体、11,12,13,14…モデル欠陥、2…超音波受発振器。