(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を詳しく説明する。尚、本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、アクリル及び/又はメタクリルを意味し、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及び/又はメタクリレートを意味する。また、「(メタ)アクリロイル基」とは、アクリロイル基及び/又はメタクリロイル基を意味する。
【0011】
本発明の硬化性組成物は、(A)成分である反応性シリル基
を含有する(メタ)アクリル系重合体(ただし、炭素数10以上のアルキル基を有するビニル系単量体に由来する構造単位を25質量%以上含む(メタ)アクリル系重合体を除く)および反応性シリル基を含有するオキシアルキレン系重合体である架橋性官能基含有重合体、(B)成分である炭素数10以上のアルキル基(ただし、炭化水素基の水素原子の2個以上がフッ素原子に置換されたポリフルオロ炭化水素基を除く)を有する(メタ)アクリル系重合体、及び(C)成分である炭素数6以上のアルキル基又はアルキレン基を有するアミン化合物を必須とするものである。また、必要に応じて(D)成分である可塑剤を含有してもよい。以下に、各成分の詳細について説明する。
【0012】
<(A)成分:架橋性官能基含有重合体>
(A)成分である架橋性官能基含有重合体は、架橋性官能基を有する有機重合体であり、シリコーン系、変性シリコーン系、ポリサルファイド系、(メタ)アクリル系及びポリウレタン系等の各種重合体を使用することができる。これらの中でも、一液型とすることが可能であり、硬化物の機械的物性にも優れる点で、反応性シリル基を含有する(メタ)アクリル系重合体若しくは反応性シリル基を含有するオキシアルキレン系重合体、又は、これらの混合物が好ましい。これらの中でも、反応性シリル基を含むオキシアルキレン系重合体を含むものが特に好ましい。ただし、(A)成分である架橋性官能基含有重合体からは、炭素数10以上のアルキル基を有するビニル系単量体に由来する構造単位を25質量%以上含むものが除かれる。この点において、後述する(B)成分と明確に相違する。
【0013】
(A)成分である架橋性官能基含有重合体のうち、上記反応性シリル基を含有する(メタ)アクリル系重合体は、(メタ)アクリル系単量体に由来する構造単位、及び反応性シリル基を有する重合体であり、例えば、(メタ)アクリル系単量体及び反応性シリル基を有するビニル系単量体を含む単量体混合物を重合することにより得ることができる。(メタ)アクリル系単量体は、分子内に(メタ)アクリロイル基を有する単量体であり、(メタ)アクリル酸及び(メタ)アクリル酸アルキルエステル等が挙げられる。(メタ)アクリル系単量体は、上記の反応性シリル基を有するビニル系単量体を含んでもよい。(メタ)アクリル系単量体の使用量は、反応性シリル基を含有する(メタ)アクリル系重合体の全構成単量体に対し、好ましくは10〜100質量%の範囲であり、より好ましくは30〜100質量%の範囲であり、さらに好ましくは50〜100質量%の範囲である。
【0014】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、具体的には(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ペンチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸メチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸n−ヘプチル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n−ノニル及び(メタ)アクリル酸イソノニル等の直鎖状若しくは分岐状脂肪族アルキル基又は脂環式アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル等が例示され、これらの内の1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、硬化物の機械的物性の観点から炭素数1〜8の直鎖状若しくは分岐状脂肪族アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましい。
【0015】
反応性シリル基を有するビニル系単量体としては、分子内に反応性シリル基及び重合性不飽和基を有する化合物を用いることができる。反応性シリル基としては特に限定されず、アルコキシシリル基、ハロゲノシリル基、シラノール基等が挙げられるが、反応性を制御し易い点からアルコキシシリル基が好ましい。アルコキシシリル基の具体例としては、トリメトキシシリル基、メチルジメトキシシリル基、ジメチルメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、メチルジエトキシシリル基、ジメチルエトキシシリル基等が挙げられる。
反応性シリル基を有するビニル系単量体としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルジメチルメトキシシラン等のビニルシラン類;(メタ)アクリル酸トリメトキシシリルプロピル、(メタ)アクリル酸トリエトキシシリルプロピル、(メタ)アクリル酸ジメチルメトキシシリルプロピル及び(メタ)アクリル酸メチルジメトキシシリルプロピル等のシリル基含有(メタ)アクリル酸エステル類;トリメトキシシリルプロピルビニルエーテル等のシリル基含有ビニルエーテル類;トリメトキシシリルウンデカン酸ビニル等のシリル基含有ビニルエステル類等が例示され、これらの内の1種又は2種以上を用いることができる。
【0016】
反応性シリル基を含有する(メタ)アクリル系重合体は、上記の単量体以外にこれらと共重合可能な他の単量体を共重合してもよい。
上記の他の単量体としては、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸2−アミノエチル、(メタ)アクリル酸のエチレンオキサイド付加物等の官能基含有単量体;
(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸トルイル、(メタ)アクリル酸ベンジル等の(メタ)アクリル酸芳香族エステル類;
(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−エトキシエチル、(メタ)アクリル酸3−メトキシプロピル等の(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル類;
(メタ)アクリル酸トリフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸2−トリフルオロメチルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロエチルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロエチル−2−パーフルオロブチルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロエチル、(メタ)アクリル酸パーフルオロメチル、(メタ)アクリル酸ジパーフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロメチル−2−パーフルオロエチルメチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロヘキシルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロデシルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロヘキサデシルエチル、パーフルオロエチレン、パーフルオロプロピレン、フッ化ビニリデン等のフッ素含有(メタ)アクリル酸エステル類;
スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、クロルスチレン、スチレンスルホン酸及びその塩等の芳香族単量体;
無水マレイン酸;マレイン酸及びフマル酸等の不飽和ジカルボン酸、並びに、これらのモノアルキルエステル及びジアルキルエステル;
マレイミド、メチルマレイミド、エチルマレイミド、プロピルマレイミド、ブチルマレイミド、ヘキシルマレイミド、オクチルマレイミド、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド化合物;
アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル基含有ビニル系モノマー;
アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド基含有ビニル系モノマー;
酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニル等のビニルエステル類;
エチレン、プロピレン等のアルケン類;ブタジエン、イソプレン等の共役ジエン類;
塩化ビニル、塩化ビニリデン、塩化アリル、アリルアルコール等が挙げられるが、これらに限らない。また、これらのうちの1種又は2種以上を用いることができる。
【0017】
上記の他にも反応性シリル基を含有する(メタ)アクリル系重合体は、炭素数10以上のアルキル基を有するビニル系単量体に由来する構造単位を全構造単位の内の25質量%未満の範囲において使用してもよい。
炭素数10以上のアルキル基を有するビニル系単量体としては、具体的には後述する(B)成分の構造単位として記載する化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらのうちの1種又は2種以上を用いることができる。
【0018】
反応性シリル基を含有する(メタ)アクリル系重合体1分子に含まれる反応性シリル基の数の平均値は、硬化物の接着性及び引張特性等の性能の観点から、好ましくは0.05〜0.8個の範囲であり、より好ましくは0.3〜0.6個の範囲である。
上記(メタ)アクリル系重合体に含まれる反応性シリル基の位置は、特に限定されるものではなく、重合体の側鎖及び/又は末端とすることができる。
【0019】
上記反応性シリル基を含有する(メタ)アクリル系重合体の重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、「GPC」ともいう。)によるポリスチレン換算分子量で、好ましくは2,000〜50,000の範囲であり、より好ましくは8,000〜25,000である。Mwが2,000以上であれば、得られる硬化物の耐候性が良好になり、50,000以下にすることにより、硬化性組成物の作業性が良好になる。
【0020】
反応性シリル基を含有する(メタ)アクリル系重合体の粘度は、25℃において好ましくは500〜100,000mPa・sの範囲であり、より好ましくは5,000〜80,000mPa・sの範囲であり、さらに好ましくは20,000〜70,000mPa・sの範囲である。粘度が500mPa・s以上であれば、垂直面に塗布した際の垂れが抑制されるために好ましく、100,000mPa・s以下にすることにより、硬化性組成物の作業性が良好になる。
【0021】
反応性シリル基を含有する(メタ)アクリル系重合体は、通常のラジカル重合によって製造することができる。例えば、溶液重合法、塊状重合法、分散重合法等のいずれの方法を採用してもよく、また、近年開発されたリビングラジカル重合法を利用してもよい。反応プロセスは、バッチ式、セミバッチ式、連続重合のいずれの方法でもよい。これらの中でも、150〜350℃の高温連続重合方法が好ましい。
150℃以上の重合温度であれば、高温重合のために高分子鎖からの水素引き抜き反応に始まる切断反応が起こるために、分子量制御に多量の開始剤や連鎖移動剤等の不純物を含まず容易に製造することができる。メルカプタン等の連鎖移動剤は耐候性の低下につながるため、使用しないことが好ましい。他方、350℃以下であれば、分解反応による重合液の着色や分子量低下等の虞がなくなるため好ましい。上記の温度範囲で重合することにより、適度な分子量を有し、粘度が低く、無着色で夾雑物の少ない共重合体を効率よく製造することができる。すなわち、当該重合方法によれば、極微量の重合開始剤を使用すればよく、メルカプタンのような連鎖移動剤や、重合溶剤を使用する必要がなく、純度の高い共重合体を得ることができる。
【0022】
一般に、重合体中に均一に架橋性官能基が導入された場合、該重合体を含む硬化性組成物の硬化性、及び得られる硬化物の耐候性等の物性が良好となる。この点、反応器に撹拌槽型反応器を用いた場合、組成分布(架橋性官能基の分布)や分子量分布の比較的狭い(メタ)アクリル系重合体を得ることができるため好ましい。また、連続撹拌槽型反応器を用いるプロセスが組成分布、分子量分布を狭くする点でより好ましい。
【0023】
高温連続重合法としては、特開昭57−502171号公報、特開昭59−6207号公報、特開昭60−215007号公報等に開示された公知の方法に従えば良い。例えば、加圧可能な反応機を溶媒で満たし、加圧下で所定温度に設定した後、各単量体、及び必要に応じて重合溶媒とからなる単量体混合物を一定の供給速度で反応器へ供給し、単量体混合物の供給量に見合う量の重合液を抜き出す方法が挙げられる。また、単量体混合物には、必要に応じて重合開始剤を配合することもできる。その配合する場合の配合量としては、単量体混合物100質量部に対して0.001〜2質量部であることが好ましい。圧力は、反応温度と使用する単量体混合物及び溶媒の沸点に依存するもので、反応に影響を及ぼさないが、前記反応温度を維持できる圧力であればよい。単量体混合物の滞留時間は、1〜60分であることが好ましい。滞留時間が1分に満たない場合は単量体が十分に反応しない恐れがあり、未反応単量体が60分を越える場合は、生産性が悪くなってしまうことがある。好ましい滞留時間は2〜40分である。
【0024】
上記反応性シリル基を含有するオキシアルキレン系重合体は下記一般式(1)で表される繰り返し単位を含むものであれば、特に限定されない。
−O−R
1− (1)
(式中、R
1は、2価の炭化水素基である。)
上記一般式(1)におけるR
1としては、以下のものが例示される。
(CH
2)n (nは1〜10の整数)
CH(CH
3)CH
2
CH(C
2H
5)CH
2
C(CH
3)
2CH
2
上記オキシアルキレン系重合体は、上記繰り返し単位を1種又は2種以上を組み合わせて含んでもよい。これらの中でも、作業性に優れる点で、CH(CH
3)CH
2が好ましい。
【0025】
反応性シリル基を含有するオキシアルキレン系重合体に含まれる反応性シリル基は、上記反応性シリル基を含有するアクリル系重合体が有する反応性シリル基をそのまま適用することが出来る。
【0026】
オキシアルキレン系重合体の製造方法としては、特に限定されるものではないが、例えば対応するエポキシ化合物又はジオールを原料として、KOHのようなアルカリ触媒による重合法、遷移金属化合物−ポルフィリン錯体触媒による重合法、複合金属シアン化物錯体触媒による重合法、フォスファゼンを用いた重合法等が挙げられる。
また、上記オキシアルキレン系重合体は、直鎖状重合体又は分岐状重合体のいずれでもよい。また、これらを組み合わせて用いてもよい。
【0027】
反応性シリル基を有するオキシアルキレン系重合体1分子に含まれる反応性シリル基の数の平均値は、硬化物の接着性及び引張特性等の性能の観点から、好ましくは1〜4個の範囲であり、より好ましくは1.5〜3個の範囲である。
上記オキシアルキレン系重合体に含まれる反応性シリル基の位置は、特に限定されるものではなく、重合体の側鎖及び/又は末端とすることができる。
また、上記オキシアルキレン系重合体は、直鎖状重合体及び分岐状重合体のいずれでもよい。また、これらを組み合わせて用いてもよい。
【0028】
反応性シリル基を含有するオキシアルキレン系重合体の数平均分子量(Mn)は、好ましくは3,000〜60,000の範囲であり、より好ましくは4,000〜50,000の範囲であり、さらに好ましくは5,000〜40,000の範囲である。上記範囲のMnを有する場合、引張特性に優れた硬化物を得ることができる。
【0029】
反応性シリル基を有するオキシアルキレン系重合体の具体例として、株式会社カネカ製「MSポリマーS203」、「MSポリマーS303」、「サイリルSAT200」及び「サイリルSAT30」、並びに、旭硝子株式会社製「エクセスターESS2410」、「エクセスターESS2420」及び「エクセスターESS3430」(いずれも商品名)が例示され、本発明ではこれらを用いることができる。
【0030】
本発明の硬化性組成物における(A)成分の使用量の下限値は、後述する(B)成分及び(C)成分を含めた総量を100質量部とした場合に44質量部以上とすることができ、好ましくは65質量部以上であり、より好ましくは80質量部以上である。一方、上限値は99.2質量部以下とすることができ、好ましくは98質量部以下であり、より好ましくは95質量部以下である。本発明の硬化性組成物における(A)成分の使用量の範囲は、44質量部以上99.2質量部以下の範囲とすることができ、65質量部以上98質量部以下の範囲としても良く、80質量部以上95質量部以下の範囲としても良い。44質量部未満の場合は、得られる硬化物の性能が不十分となる虞がある。一方、99.2質量部を超えると、後述する(B)成分及び(C)成分の使用量を確保することができないため、耐汚染性が不十分となる場合がある。
【0031】
<(B)成分:炭素数10以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル系重合体>
(B)成分である炭素数10以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル系重合体は、(メタ)アクリル系単量体に由来する構造単位を有する重合体であるが、炭素数10以上のアルキル基を有するビニル系単量体に由来する構造単位を25質量%以上含む。(B)成分である(メタ)アクリル系重合体は、ランダム重合体であってもよいし、ブロック重合体またはグラフト重合体などの構造を制御された重合体であってもよい。
上記、炭素数10以上のアルキル基を有するビニル系単量体に由来する構造単位は、好ましくは40質量%以上であり、より好ましくは45質量%以上であり、さらに好ましくは50質量%以上であり、一層好ましくは60質量%以上である。一方、上限は好ましくは100質量%以下であり、より好ましくは99質量%以下であり、さらに好ましくは95質量%以下である。炭素数10以上のアルキル基を有するビニル系単量体に由来する構造単位の範囲は25質量%以上100質量%以下であり、例えば25質量%以上99質量%以下としてもよく、40質量%以上95質量%以下としてもよく、45質量%以上95質量%以下としてもよい。
(B)成分である(メタ)アクリル系重合体が炭素数10以上のアルキル基を有するビニル系単量体に由来する構造単位を25質量%以上含む場合、当該(メタ)アクリル系重合体の極性が低下することから、硬化物を形成した際に表面に濃縮(偏在)され易くなる。結果として、得られた硬化物の表面エネルギーが低下するため、優れた耐汚染性を発揮するものと推察される。さらに、硬化性樹脂組成物が上記(B)成分を有する場合、後述する(C)成分を含む硬化性組成物から形成される硬化物の耐汚染性が顕著に向上する。これは、上記(B)成分により、後述する(C)成分も同時に硬化物表面に濃縮され易くなったためと考えられる。炭素数10以上のアルキル基を有するビニル系単量体に由来する構造単位が25質量%未満の場合、硬化物表面において(B)成分が十分濃縮されず、耐汚染性が不足する虞がある。
【0032】
炭素数10以上のアルキル基を有するビニル系単量体に由来する構造単位は、例えば、炭素数10以上のアルキル基を有するビニル系単量体を含む単量体混合物を重合することにより得ることができる。上記炭素数10以上のアルキル基を有するビニル系単量体としては、共重合性が良く、入手が容易である等の観点から、炭素数10以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましい。
炭素数10以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、具体的には(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸エイコシル、(メタ)アクリル酸ヘンイコシル、(メタ)アクリル酸ベヘニル、(メタ)アクリル酸テトラコシル、(メタ)アクリル酸ヘキサコシル、(メタ)アクリル酸オクタコシル、(メタ)アクリル酸トリアコンチル、(メタ)アクリル酸ドトリアコンチル、(メタ)アクリル酸テトラトリアコンチル、(メタ)アクリル酸ヘキサトリアコンチル、(メタ)アクリル酸オクタトリアコンチル、(メタ)アクリル酸テトラコンチル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸イソウンデシル、(メタ)アクリル酸イソラウリル、(メタ)アクリル酸イソトリデシル、(メタ)アクリル酸イソテトラデシル、(メタ)アクリル酸イソペンタデシル、(メタ)アクリル酸イソヘキサデシル、(メタ)アクリル酸イソヘプタデシル、(メタ)アクリル酸イソステアリル、(メタ)アクリル酸イソノナデシル、(メタ)アクリル酸イソエイコシル、(メタ)アクリル酸イソヘンイコシル、(メタ)アクリル酸イソベヘニル、(メタ)アクリル酸イソテトラコシル、(メタ)アクリル酸イソヘキサコシル、(メタ)アクリル酸イソオクタコシル、(メタ)アクリル酸イソトリアコンチル、(メタ)アクリル酸イソドトリアコンチル、(メタ)アクリル酸イソテトラトリアコンチル、(メタ)アクリル酸イソヘキサトリアコンチル、(メタ)アクリル酸イソオクタトリアコンチル、(メタ)アクリル酸イソテトラコンチル等が例示され、これらの内の1種又は2種以上を用いることができる。
【0033】
上記、炭素数10以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルの中でも、アルキル基の炭素数は好ましくは10〜20であり、より好ましくは12〜20である。アルキル基の炭素数が10以上であれば、(B)成分が硬化物の表面に濃縮しやすくなり、かつ、表面の自由エネルギーが下がり、耐汚染性が向上するため好ましい。アルキル基の炭素数が20以下であれば、(B)成分たる(メタ)アクリル系重合体が結晶化しにくくなり、塗膜内で移動しやすくなるため、表面に濃縮しやすくなる。
【0034】
炭素数10以上のアルキル基を有するビニル系単量体としては、上記炭素数10以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルの他にも同様のアルキル基を有するビニルエーテル化合物及びビニルエステル化合物が挙げられ、これらの内の1種又は2種以上を用いることができる。
【0035】
(メタ)アクリル系単量体に由来する構造単位は、例えば(メタ)アクリル系単量体を含む単量体を重合することにより得ることができる。(メタ)アクリル系単量体とは、(メタ)アクリロイル基を有する化合物であればよく、上記炭素数10以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルも含まれるが、その他の(メタ)アクリル系単量体としては、炭素数9以下のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル、官能基含有(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸芳香族エステル、フッ素含有(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。上記その他の(メタ)アクリル系単量体は、1種を単独で又は2種以上を併用して使用してもよい。その他の(メタ)アクリル系単量体の使用量は、好ましくは0〜75質量%であり、より好ましくは0〜60質量%であり、さらに好ましくは0〜50質量%であり、一層好ましくは0〜40質量%であり、特に好ましくは0〜15質量%である。
(メタ)アクリル系単量体の使用量は、(B)成分である(メタ)アクリル系重合体の全構成単量体に対し、好ましくは10〜100質量%の範囲であり、より好ましくは30〜100質量%の範囲であり、さらに好ましくは50〜100質量%の範囲である。
【0036】
上記炭素数9以下のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、具体的には(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ペンチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸メチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸n−ヘプチル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n−ノニル及び(メタ)アクリル酸イソノニル等の直鎖状若しくは分岐状脂肪族アルキル基又は脂環式アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル等が例示され、これらの内の1種又は2種以上を用いることができる。
【0037】
上記(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルとしては、(メタ)アクリル酸メトキシメチル、(メタ)アクリル酸エトキシメチル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル、(メタ)アクリル酸メトキシブチル及び(メタ)アクリル酸エトキシブチル、(メタ)アクリル酸ブトキシブチル等の炭素数2〜10のアルコキシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルが例示され、これらの内の1種又は2種以上を用いることができる。
【0038】
上記官能基含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸2−アミノエチル、(メタ)アクリル酸のエチレンオキサイド付加物等の官能基含有単量体が例示され、これらの内の1種又は2種以上を用いることができる。
上記(メタ)アクリル酸芳香族エステルとしては、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸トルイル、(メタ)アクリル酸ベンジル等の(メタ)アクリル酸芳香族エステル類が例示され、これらの内の1種又は2種以上を用いることができる。
【0039】
上記フッ素含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸トリフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸2−トリフルオロメチルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロエチルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロエチル−2−パーフルオロブチルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロエチル、(メタ)アクリル酸パーフルオロメチル、(メタ)アクリル酸ジパーフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロメチル−2−パーフルオロエチルメチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロヘキシルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロデシルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロヘキサデシルエチル、パーフルオロエチレン、パーフルオロプロピレン、フッ化ビニリデン等のフッ素含有(メタ)アクリル酸エステル類が例示され、これらの内の1種又は2種以上を用いることができる。
【0040】
その他にも、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、クロルスチレン、スチレンスルホン酸及びその塩等の芳香族単量体;
無水マレイン酸;マレイン酸及びフマル酸等の不飽和ジカルボン酸、並びに、これらのモノアルキルエステル及びジアルキルエステル;
マレイミド、メチルマレイミド、エチルマレイミド、プロピルマレイミド、ブチルマレイミド、ヘキシルマレイミド、オクチルマレイミド、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド化合物;
アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル基含有ビニル系モノマー;
アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド基含有ビニル系モノマー;
酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニル等のビニルエステル類;
エチレン、プロピレン等のアルケン類;ブタジエン、イソプレン等の共役ジエン類;
塩化ビニル、塩化ビニリデン、塩化アリル、アリルアルコール等が挙げられるが、これらに限らない。また、これらのうちの1種又は2種以上を用いることができる。
【0041】
本発明では、(B)成分である(メタ)アクリル系重合体は、反応性シリル基を有していても有していなくてもよいが、1分子中に反応性シリル基を平均0.03〜0.5個有することが好ましい。上記反応性シリル基の数は、より好ましくは平均0.05〜0.3個である。(B)成分が反応性シリル基を有する場合、硬化物の表面で濃縮された当該(B)成分が表面層に固定されるため、耐汚染性の向上が長期間に亘り維持できる。1分子中の反応性シリル基の数が0.03個以上であれば長期の耐汚染性が向上する点で好ましく、0.5以下であれば架橋反応が進行する前に(B)成分が表面に濃縮されるため初期の耐汚染性が向上する点で好ましい。
反応性シリル基は、例えば反応性シリル基を有するビニル系単量体を共重合することにより導入することができる。反応性シリル基を有するビニル系単量体としては、(A)成分である架橋性重合体において挙げた化合物を使用することができる。反応性シリル基を有するビニル系単量体の使用量は、(B)成分である(メタ)アクリル系重合体の全構造単位に対して好ましくは0.1〜10質量%であり、より好ましくは0.3〜6.0質量%であり、さらに好ましくは0.5〜5.0質量%である。
【0042】
(B)成分の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは1,000〜30,000の範囲であり、より好ましくは1,500〜20,000の範囲であり、さらに好ましくは2,000〜15,000の範囲であり、一層好ましくは3,000〜10,000の範囲である。Mwが1,000以上であれば、良好な耐候性を有する硬化物が得られる。また、30,000以下にすることにより(B)成分が塗膜内で移動しやすくなり、表面に濃縮しやすくなる。これにより、特に初期の耐汚染性が向上する傾向がある。
【0043】
(B)成分の粘度は、25℃において好ましくは100〜20,000mPa・sの範囲であり、より好ましくは100〜10,000mPa・sの範囲であり、さらに好ましくは200〜5,000mPa・sの範囲である。粘度が100mPa・s以上であれば、垂直面に塗布した際の垂れが抑制されるために好ましく、100,000mPa・s以下にすることにより、硬化性組成物の作業性が良好になる。
【0044】
本発明の硬化性組成物における(B)成分の使用量は、(A)成分及び後述する(C)成分を含めた総量を100質量部とした場合に0.3質量部以上とすることができ、好ましくは0.5質量部以上であり、より好ましくは1.0質量部以上である。一方、上限値は50質量部以下とすることができ、好ましくは35質量部以下であり、より好ましくは25質量部以下である。本発明の硬化性組成物における(B)成分の使用量の範囲は、0.3質量部以上50質量部以下の範囲とすることができ、0.5質量部以上35質量部以下の範囲としても良く、1.0質量部以上20質量部以下の範囲としても良い。0.3質量部以上であれば、得られる硬化物が十分な耐汚染性を有する。一方、50質量部以下であれば、硬化物表面に存在する(B)成分の割合が過剰にはならないため、表面層の軟化に起因する耐汚染性低下の虞がない。
【0045】
<(C)成分:アミン化合物>
本発明の硬化性組成物は、(C)成分として炭素数6以上のアルキル基またはアルキレン基を有するアミン化合物を含む。上記アルキル基は直鎖状であってもよいし、分岐状又は環状構造を有するものであってもよい。上記アミン化合物により、硬化後のシーリング材の表面の耐汚染性がより向上する。さらには、硬化物に艶消し表面を付与することができる。アミン化合物が6以上のアルキル基またはアルキレン基を有する場合、シーリング材の表面に当該アミン化合物が濃縮しやすくなり、得られる硬化物の耐汚染性が向上する。
【0046】
上記アミン化合物としては、オクチルミアン、ノニルアミン、デシルアミン、ウンデシルアミン、ラウリルアミン、トリデシルアミン、テトラデシルアミン、ペンタデシルアミン、ヘキサデシルアミン、ヘプタデシルアミン、ステアリルアミン、ノナデシルアミン、エイコシルアミン、ヘンイコシルアミン、ベヘニルアミン、テトラコシルアミン、ヘキサコシルアミン、オクタコシルアミン、トリアコンチルアミン、ドトリアコンチルアミン、テトラトリアコンチルアミン、ヘキサトリアコンチルアミン、オクタトリアコンチルアミン、テトラコンチルアミン、ヘキサメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、1,8−ジアミノオクタン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、1,11−ジアミノウンデカン、1,12−ジアミノドデカン、1,14−ジアミノテトラデカン、1,16−ジアミノヘキサデカン、1,18−ジアミノステアリルアミン、1,20−ジアミノエイコサン、1,22−ジアミノドコサン、1,24−ジアミノテトラコサン、ジラウリルアミン、ジステアリルアミン、メチルラリルアミン、N,N’−ジラウリルプロピルアミン、N,N’−ジステアリルブチルアミン、N−ブチル−N’ラウリルエチルアミン、N−ラウリル−N’−ステアリルブチルアミン、N−ラウリルプロピレンジアミン、N−ステアリルプロリレンジアミン等が例示され、これらの内1種又は2種以上を用いることができる。
【0047】
上記アミン化合物は、融点35℃以上であることが好ましく、40℃以上であることがより好ましい。融点の範囲は好ましくは35℃以上、100℃以下であり、より好ましくは40℃以上、100℃以下である。融点35℃以上、100℃以下のアミン化合物としては、ステアリルアミン、エイコシルアミン、ベヘニルアミン、1,10−ジアミノデカン等が例示されるが、この限りではない。上記アミン化合物の融点が35℃以上である場合、アミン化合物が硬化物表面に濃縮した際に室温で固化し、シーリング材樹脂の表面を覆うため、耐汚染性が向上する。また、融点が100℃を超えると、高温での溶融工程が必要となり、混合作業が煩雑となる。
【0048】
本発明の硬化性組成物における(C)成分の使用量は(A)成分及び(B)成分を含めた総量を100質量部とした場合に0.5質量部以上とすることができ、好ましくは1.0質量部以上である。一方、上限値は6.0質量部以下とすることができ、好ましくは3.0質量部以下である。本発明の硬化性組成物における(C)成分の使用量の範囲は、0.5質量部以上6.0質量部以下の範囲とすることができ、1.0質量部以上3.0質量部以下の範囲としても良い。0.5質量部未満の場合は、得られる硬化物の耐汚染性が不十分となる虞がある。一方、6.0質量部を超えると硬化物表面にアミン化合物が過度に濃縮され、当該表面が固くなるため、柔軟性が損なわれる虞がある。
上記アミン化合物は、表面に濃縮しやすい観点から、炭素数6以上のアルキルアミンが好ましい。
【0049】
<(D)成分:可塑剤>
本発明の硬化性組成物は、上記(A)〜(C)成分以外に(D)成分として可塑剤を含んでいてもよい。可塑剤としては、液状ポリウレタン樹脂、ジカルボン酸とジオールとから得られたポリエステル系可塑剤;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコールのエーテル化物あるいはエステル化物;スクロース等の糖類多価アルコールに、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加重合した後、エーテル化又はエステル化して得られた糖類系ポリエーテル等のポリエーテル系可塑剤;ポリ−α−メチルスチレン等のポリスチレン系可塑剤;ポリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの内、ポリ(メタ)アクリレートが硬化物の耐候性等の耐久性の点で好ましい。
本発明の硬化性組成物では、上記(D)成分としてポリ(メタ)アクリレートを用いる場合、当該ポリ(メタ)アクリレートは架橋性官能基を含まず、且つ、炭素数10以上のアルキル基を有するビニル系単量体に由来する構造単位が0質量%以上25質量%未満の重合体である。中でも、Mwが1,000〜7,000の範囲であり、且つ、ガラス転移温度が−30℃以下のものがより好ましい。
上記架橋性官能基を有さないポリ(メタ)アクリレートとしては、東亞合成社製の「ARUFON UP1000」、「ARUFON UP1010」、「ARUFON UP1020」、「ARUFON UP1060」、「ARUFON UP1080」、「ARUFON UP1110」、「ARUFON UP1171」、「ARUFON UP1172」(以上、商品名。「ARUFON」は東亞合成株式会社の登録商標である。)等を用いることができる。
【0050】
本発明の硬化性組成物における(D)成分の使用量の上限は、(A)成分〜(C)成分の総量を100質量部とした場合に100質量部以下とすることができ、好ましくは70質量部以下であり、より好ましくは60質量部以下である。一方、下限値は0質量部以上とすることができ、好ましくは20質量部以上であり、より好ましくは30質量部以上である。本発明の硬化性組成物における(D)成分の使用量の範囲は、0質量部以上100質量部以下の範囲とすることができ、20質量部以上70質量部以下の範囲としても良く、30質量部以上60質量部以下の範囲としても良い。100質量部以内であれば、硬化物の性能及び耐汚染性に優れる硬化物が得られる。
【0051】
<硬化性組成物>
上記の通り、本発明の硬化性組成物は、(A)成分、(B)成分及び(C)成分を必須成分とするものであり、(D)成分を含んでもよい。ここで、得られる硬化物の耐候性が良好となる点で、(A)〜(D)成分の総量を100質量%とした場合に、(メタ)アクリル系重合体が15質量%以上含まれることが好ましく、40質量%以上含まれることがより好ましい。(メタ)アクリル系重合体の含有量の上限値は99.75質量%である。本発明の硬化性組成物はにおける(メタ)アクリル系重合体の範囲は、15質量%以上99.75質量%以下の範囲とすることができ、40質量%以上99.75質量%以下の範囲としても良い。
また、本段落における(メタ)アクリル系重合体は、(メタ)アクリロイル基を有する単量体を構成成分とする重合体の総称であり、(A)成分、(B)成分及び(D)成分のいずれに属するものでもよい。上記(メタ)アクリル系重合体の構成単量体である(メタ)アクリロイル基を有する単量体の使用量は、(A)成分、(B)成分及び(D)成分に属する各(メタ)アクリル系重合体の全構成単量体に対し、好ましくは10〜100質量%の範囲であり、より好ましくは30〜100質量%の範囲であり、さらに好ましくは50〜100質量%の範囲である。
【0052】
本発明の硬化性組成物は、本発明により奏される効果を妨げない限りにおいて、(A)〜(D)成分以外の成分を含むことができる。係る成分には、充填材、老化防止剤、硬化促進剤、タック防止剤、アミノシラン等が含まれる。
【0053】
充填材としては平均粒径0.02〜2.0μm程度の軽質炭酸カルシウム、平均粒径1.0〜5.0μm程度の重質炭酸カルシウム、酸化チタン、カーボンブラック、合成ケイ酸、タルク、ゼオライト、マイカ、シリカ、焼成クレー、カオリン、ベントナイト、水酸化アルミニウム及び硫酸バリウム、ガラスバルーン、シリカバルーン、ポリメタクリル酸メチルバルーンが例示される。これら充填材により、硬化物の機械的な性質が改善され、強度や伸度を向上させることができる。
これらの中でも、物性改善の効果が高い、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム及び酸化チタンが好ましく、軽質炭酸カルシウムと重質炭酸カルシウムとの混合物がより好ましい。充填剤の添加量は、(A)〜(C)成分の総量を100質量部とした場合、20〜300質量部が好ましく、より好ましくは、50〜200質量部である。上記のように軽質炭酸カルシウムと重質炭酸カルシウムの混合物とする場合には、軽質炭酸カルシウム/重質炭酸カルシウムの質量割合が90/10〜50/50の範囲であることが好ましい。
【0054】
老化防止剤としては、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物及びシュウ酸アニリド系化合物などの紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系化合物などの光安定剤、ヒンダードフェノール系などの酸化防止剤、熱安定剤、またはこれらの混合物である老化防止剤を用いることができる。
紫外線吸収剤としては、BASF社製の商品名「チヌビン571」、「チヌビン1130」、「チヌビン327」が例示される。光安定剤としては同社製の商品名「チヌビン292」、「チヌビン144」、「チヌビン123」、三共社製の商品名「サノール770」が例示される。熱安定剤としては、BASF社製の商品名「イルガノックス1135」、「イルガノックス1520」、「イルガノックス1330」が例示される。紫外線吸収剤/光安定剤/熱安定剤の混合物であるBASF社製の商品名「チヌビンB75」を使用してもよい。
【0055】
硬化促進剤としては、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジアゼトナート等の錫系硬化促進剤が挙げられる。具体的には、日東化成社製の商品名「ネオスタンU−28」、「ネオスタンU−100」、「ネオスタンU−200」、「ネオスタンU−220H」、「ネオスタンU−303」、「SCAT−24」等が例示される。
【0056】
タック防止剤としては、アクリル系オリゴマーである東亞合成社製の商品名「アロニックスM8030」、「M8100」,「M309」、または光重合開始剤との混合物、桐油、亜麻仁油などの飽和脂肪酸油、出光石油社製の商品名「R15HT」、日本曹達社製の商品名「PBB3000」、日本合成化学者製の商品名「ゴーセラック500B」などが例示される。
【0057】
アミノシランとしては、信越シリコーン社製の商品名「KBM602」、「KBM603」、「KBE602」、「KBE603」、「KBM902」、「KBM903」などが例示される。
その他にも、オルト蟻酸メチル及びオルト酢酸メチル等の脱水剤、密着性付与剤、有機溶剤等を配合してもよい。
【0058】
本発明の硬化性組成物は、全ての配合成分を予め配合密封保存し、塗布後空気中の湿分を吸収することにより硬化する1成分型として調整することが可能である。また、硬化剤として別途硬化触媒、充填材、可塑剤、水等の成分を配合しておき、該配合材と重合組成物を使用前に混合する2成分型として調整することもできる。取扱いが容易で、塗布時の調合混合の間違いも少ない1成分型がより好ましい。
【実施例】
【0059】
以下、実施例に基づいて本発明を具体的に説明する。尚、本発明は、これらの実施例により限定されるものではない。尚、以下において「部」及び「%」は、特に断らない限り質量部及び質量%を意味する。
製造例、実施例及び比較例で得られた重合体の分析方法について以下に記載する。
【0060】
<分子量測定>
ゲル浸透クロマトグラフ装置(型式名「HLC−8320」、東ソー社製)を用いて、下記の条件よりポリスチレン換算による数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)を得た。また、得られた値から分子量分布(Mw/Mn)を算出した。
○測定条件
カラム:東ソー製TSKgel SuperMultiporeHZ−M×4本
カラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン
検出器:RI
【0061】
<(メタ)アクリル系重合体に含まれる反応性シリル基の平均数>
反応性シリル基であるアルコキシシリル基の数(平均数)fは全構成単量体を100質量部とした場合の反応性シリル基を有する単量体の質量部から、下記式を用いて算出した。
f(Si)={シリル基単量体の質量部/(シリル基単量体の分子量×100/Mn)}
【0062】
<硬化性組成物の粘度>
E型粘度計を用いて、温度25℃±0.5℃の条件で測定した。
【0063】
<耐候性試験>
各硬化性組成物を厚さ2mmでテフロン(登録商標)のシートに塗布し、23℃、50%RHの条件下で1週間養生して硬化シートを作成した。得られた硬化物を、メタリングウェザーメーター(ダイプラ・ウィンテス社製「DAIPLA METAL WEATHER KU−R5NCI−A」)に入れ、促進耐候試験を行った。条件は照射63℃、70%RH、6時間(80mW/cm
2)、結露30℃、98%RH、2時間(結露の前、19秒シャワー)で試験を実施した。外観にクラック、ブリード等の異常が生じ始めた時間を記録した。
【0064】
<耐汚染性試験>
各硬化性組成物を厚さ3mmでスレート板に塗布し、23℃、50%RHの条件下で1週間養生して硬化シートを作成した。得られた硬化物を200メッシュ金網に通した汚染粉(試験用ダスト8種(日本紛体工業技術協会製)9g、新オーカ(ホルベイン工業社製)27g、試験用ダスト3種(日本紛体工業技術協会製)2gの混合物)を振りかけ、5分静置後、粉を払い落とした(エアーブロー、水洗い)。その後、日本電色社製分光色彩計SE−2000を用いて、黄色度(YI)を測定した(YIは下式の通り)。養生直後のYI(YI
0)との差である黄変度(ΔYI)の大きさにより、耐汚染性を評価した。これを汚染試験1回後とした。
測定後70℃3時間、23℃1時間放置し、上記同様に汚染粉を振りかけ、ΔYIを測定することを1サイクルとし、4サイクル繰り返した。
YI=100(1.28X−1.06Z)/Y(X,Y,Zは色座標系)
ΔYI=YI−YI
0 (YI
0は養生直後のYIを示す)
【0065】
≪(A)成分:架橋性官能基含有重合体の製造≫
合成例A−1(架橋性官能基含有重合体A−1の製造)
オイルジャケットを備えた加圧式撹拌層型反応器の温度を181℃に保った。次いで、反応器内の圧力を一定に保ちながら、10部のメタクリル酸メチル(以下、「MMA」ともいう)、67部のアクリル酸ブチル(以下、「BA」ともいう)、20部のアクリル酸2−エチルヘキシル(以下、「HA」ともいう)、3部の3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(東レ・ダウコーニング社製、XIAMETER OFS−6030 SILANE、以下、「TMS」ともいう)、3.0部のメチルエチルケトン、4.0部のイソプロピルアルコールと、6.0部のオルソ酢酸メチル(以下、「MOA」ともいう)、0.5部のジ−tert−ブチルルパーオキサイド(重合開始剤)からなる単量体混合物を、一定の供給速度(48g/分、滞留時間:12分)で原料タンクから反応器に連続供給を開始し、単量体混合物の供給量に相当する反応液を出口から連続的に抜出した。反応開始直後に、一旦反応温度が低下した後、重合熱による温度上昇が認められたが、オイルジャケット温度を制御する事により、反応器の内温(重合温度)を181±1℃に保持した。反応器内温が安定してから36分後の時点を、反応液採取開始点とし、これから25分間反応を継続した結果、1.2kgの単量体混合液を供給し、1.2kgの反応液を回収した。その後反応液を薄膜蒸発機に導入して、未反応モノマー等の揮発成分を分離して、未反応モノマー等の揮発成分を除去し、架橋性官能基含有重合体(A−1)を得た。重合体A−1の組成は、MMA/BA/HA/TMS=10/67/20/3であった。架橋性官能基含有樹脂(A−1)のMnは4000、Mwは12000、Mw/Mnは3.0であった。また、この重合体の1分子あたりのアルコキシシリルの数f(Si)は0.54であった。
【0066】
合成例A−2(架橋性官能基含有重合体A−2の製造)
オイルジャケットを備えた加圧式撹拌相型反応器の温度を181℃に保った。次いで、反応器内の圧力を一定に保ちながら、10部のMMA、88.8部のHA、1.2部のTMS、7.0部のメチルエチルケトン、8.0部のイソプロピルアルコール、6.0部のMOA、1.0部のジ−tert−ブチルルパーオキサイド(重合開始剤)からなる単量体混合物を、一定の供給速度(48g/分、滞留時間:12分)で原料タンクから反応器に連続供給を開始し、単量体混合物の供給量に相当する反応液を出口から連続的に抜出した。反応開始直後に、一旦反応温度が低下した後、重合熱による温度上昇が認められたが、オイルジャケット温度を制御する事により、反応器の内温(重合温度)を181±1℃に保持した。反応器内温が安定してから36分後の時点を、反応液採取開始点とし、これから25分間反応を継続した結果、1.2kgの単量体混合液を供給し、1.2kgの反応液を回収した。その後反応液を薄膜蒸発機に導入して、未反応モノマー等の揮発成分を分離して、未反応モノマー等の揮発成分を除去し、架橋性官能基含有重合体(A−2)を得た。重合体A−2の組成は、MMA/HA/TMS=10/88.8/1.2であった。架橋性樹脂(A−2)のMnは1500、Mwは2000、Mw/Mnは1.3であった。また、この重合体の1分子あたりのアルコキシシリルの数f(Si)は0.07であった。
【0067】
≪(B)成分:炭素数10以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル系重合体の製造≫
合成例B−1((メタ)アクリル系重合体B−1の製造)
オイルジャケットを備えた加圧式撹拌相型反応器の温度を240℃に保った。次いで、反応器内の圧力を一定に保ちながら、9.1部のMMA、90部のアクリル酸テトラデシル(以下、「TDA」ともいう)、0.9部のTMS、7.0部のメチルエチルケトン、8.0部のイソプロピルアルコールと、6.0部のMOA、1.0部のジ−tert−ブチルパーオキサイド(重合開始剤)からなる単量体混合物を、一定の供給速度(48g/分、滞留時間:12分)で原料タンクから反応器に連続供給を開始し、単量体混合物の供給量に相当する反応液を出口から連続的に抜出した。反応開始直後に、一旦反応温度が低下した後、重合熱による温度上昇が認められたが、オイルジャケット温度を制御する事により、反応器の内温(重合温度)を240±1℃に保持した。反応器内温が安定してから36分後の時点を、反応液採取開始点とし、これから25分間反応を継続した結果、1.2kgの単量体混合液を供給し、1.2kgの反応液を回収した。その後反応液を薄膜蒸発機に導入して、未反応モノマー等の揮発成分を分離して、未反応モノマー等の揮発成分を除去し、(メタ)アクリル系重合体(B−1)を得た。重合体の組成は、MMA/TDA/TMS=8.7/90.4/0.9であった。(メタ)アクリル系重合体(B−1)のMnは1990、Mwは3610、Mw/Mnは1.8であった。また、この重合体の1分子あたりのアルコキシシリルの数f(Si)は0.07であり、E型粘度は420mPa・sであった。
【0068】
合成例B−2((メタ)アクリル系重合体B−2の製造)
供給する単量体の組成を、70部のTDA、9.1部のMMA、20部のBA、0.9部のTMSとし、重合温度を238±1℃とした以外は合成例B−1と同様の操作により、(メタ)アクリル系重合体(B−2)を得た。重合体(B−2)の物性値について、表1に示した。
【0069】
合成例B−3((メタ)アクリル系重合体B−3の製造)
供給する単量体の組成を、60部のTDA、9.1部のMMA、30部のBA、0.9部のTMSとし、重合温度を236±1℃とした以外は合成例B−1と同様の操作により、(メタ)アクリル系重合体(B−3)を得た。重合体(B−3)の物性値について、表1に示した。
【0070】
合成例B−4((メタ)アクリル系重合体B−4の製造)
供給する単量体の組成を、55部のTDA、9.1部のMMA、35部のBA、0.9部のTMSとし、重合温度を236±1℃とした以外は合成例B−1と同様の操作により、(メタ)アクリル系重合体(B−4)を得た。重合体(B−4)の物性値について、表1に示した。
【0071】
合成例B−5((メタ)アクリル系重合体B−5の製造)
供給する単量体の組成を、45部のTDA、9.1部のMMA、45部のBA、0.9部のTMSとし、重合温度を235±1℃とした以外は合成例B−1と同様の操作により、(メタ)アクリル系重合体(B−5)を得た。重合体(B−5)の物性値について、表1に示した。
【0072】
合成例B−6((メタ)アクリル系重合体B−6の製造)
供給する単量体の組成を、42部のTDA、9.1部のMMA、48部のBA、0.9部のTMSとし、重合温度を235±1℃とした以外は合成例B−1と同様の操作により、(メタ)アクリル系重合体(B−6)を得た。重合体(B−6)の物性値について、表1に示した。
【0073】
合成例B−7((メタ)アクリル系重合体B−7の製造)
供給する単量体の組成を、30部のTDA、9.1部のMMA、60部のBA、0.9部のTMSとし、重合温度を232±1℃とした以外は合成例B−1と同様の操作により、(メタ)アクリル系重合体(B−7)を得た。重合体(B−7)の物性値について、表1に示した。
【0074】
合成例B−8((メタ)アクリル系重合体B−8の製造)
供給する単量体の組成を、90部のTDA、10部のMMAとした以外は合成例B−1と同様の操作により、(メタ)アクリル系重合体(B−8)を得た。重合体(B−8)の物性値について、表1に示した。
【0075】
合成例B−9((メタ)アクリル系重合体B−9の製造)
供給する単量体の組成を、90部のTDA、7.5部のMMA、2.5部のTMSとした以外は合成例B−1と同様の操作により、(メタ)アクリル系重合体(B−9)を得た。重合体(B−9)の物性値について、表1に示した。
【0076】
合成例B−10((メタ)アクリル系重合体B−10の製造)
供給する単量体の組成を、90部のTDA、5.1部のMMA、4.9部のTMSとした以外は合成例B−1と同様の操作により、(メタ)アクリル系重合体(B−10)を得た。重合体(B−10)の物性値について、表1に示した。
【0077】
合成例B−11((メタ)アクリル系重合体B−11の製造)
供給する単量体の組成を、90部のTDA、3.1部のMMA、6.9部のTMSとした以外は合成例B−1と同様の操作により、(メタ)アクリル系重合体(B−11)を得た。重合体(B−11)の物性値について、表1に示した。
【0078】
合成例B−12((メタ)アクリル系重合体B−12の製造)
供給する単量体の組成を、90部のアクリル酸ラウリル(以下、「LA」ともいう)、9.1部のMMA、0.9部のTMSとし、重合温度を239±1℃とした以外は合成例B−1と同様の操作により、(メタ)アクリル系重合体(B−12)を得た。重合体(B−12)の物性値について、表1に示した。
【0079】
合成例B−13((メタ)アクリル系重合体B−13の製造)
供給する単量体の組成を、90部のアクリル酸ステアリル(以下、「SA」ともいう)、9.1部のMMA、0.9部のTMSとし、重合温度を242±1℃とした以外は合成例B−1と同様の操作により、(メタ)アクリル系重合体(B−13)を得た。重合体(B−13)の物性値について、表1に示した。
【0080】
合成例B−14((メタ)アクリル系重合体B−14の製造)
供給する単量体の組成を、90部のアクリル酸イソステアリル(以下、「ISTA」ともいう、大阪有機工業社製)、9.1部のMMA、0.9部のTMSとし、重合温度を245±1℃とした以外は合成例B−1と同様の操作により、(メタ)アクリル系重合体(B−14)を得た。重合体(B−14)の物性値について、表1に示した。
【0081】
合成例B−15((メタ)アクリル系重合体B−15の製造)
供給する単量体の組成を、90部のアクリル酸ベヘニル(以下、「BEA」ともいう)、9.1部のMMA、0.9部のTMSとし、重合温度を244±1℃とした以外は合成例B−1と同様の操作により、(メタ)アクリル系重合体(B−15)を得た。重合体(B−15)の物性値について、表1に示した。
【0082】
合成例B−16((メタ)アクリル系重合体B−16の製造)
供給する単量体の組成を、90部のTDA、8.8部のMMA、1.3部のTMSとし、重合温度を255±1℃とした以外は合成例B−1と同様の操作により、(メタ)アクリル系重合体(B−16)を得た。重合体(B−16)の物性値について、表1に示した。
【0083】
合成例B−17((メタ)アクリル系重合体B−17の製造)
供給する単量体の組成を、90部のTDA、8.9部のMMA、1.1部のTMSとし、重合温度を248±1℃とした以外は合成例B−1と同様の操作により、(メタ)アクリル系重合体(B−17)を得た。重合体(B−17)の物性値について、表1に示した。
【0084】
合成例B−18((メタ)アクリル系重合体B−18の製造)
供給する単量体の組成を、90部のTDA、9.2部のMMA、0.8部のTMSとし、重合温度を224±1℃とした以外は合成例B−1と同様の操作により、(メタ)アクリル系重合体(B−18)を得た。重合体(B−18)の物性値について、表1に示した。
【0085】
合成例B−19((メタ)アクリル系重合体B−19の製造)
供給する単量体の組成を、90部のTDA、9.5部のMMA、0.5部のTMSとし、重合温度を210±1℃とした以外は合成例B−1と同様の操作により、(メタ)アクリル系重合体(B−19)を得た。重合体(B−19)の物性値について、表1に示した。
【0086】
合成例B−20((メタ)アクリル系重合体B−20の製造)
供給する単量体の組成を、90部のTDA、9.6部のMMA、0.4部のTMSとし、重合温度を196±1℃とした以外は合成例B−1と同様の操作により、(メタ)アクリル系重合体(B−20)を得た。重合体(B−20)の物性値について、表1に示した。
【0087】
合成例B−21((メタ)アクリル系重合体B−21の製造)
供給する単量体の組成を、90部のTDA、9.7部のMMA、0.3部のTMSとし、重合温度を176±1℃とした以外は合成例B−1と同様の操作により、(メタ)アクリル系重合体(B−21)を得た。重合体(B−21)の物性値について、表1に示した。
【0088】
比較合成例B−22((メタ)アクリル系重合体B−22の製造)
供給する単量体の組成を、23部のTDA、9.1部のMMA、67部のBA、0.9部のTMSとした以外は合成例B−1と同様の操作により、(メタ)アクリル系重合体(B−22)を得た。重合体(B−22)の物性値について、表1に示した。
【0089】
比較合成例B−23((メタ)アクリル系重合体B−23の製造)
供給する単量体の組成を、90部のHA、9.1部のMMA、0.9部のTMSとした以外は合成例B−1と同様の操作により、(メタ)アクリル系重合体(B−23)を得た。重合体(B−23)の物性値について、表1に示した。
【0090】
【表1】
【0091】
表1に示された化合物の詳細は以下の通り。
HA:アクリル酸2−エチルヘキシル
LA:アクリル酸ラウリル
TDA:アクリル酸トリデシル
SA:アクリル酸ステアリル
ISTA:アクリル酸イソステアリル
BEA:アクリル酸ベヘニル
MMA:メタクリル酸メチル
BA:アクリル酸ブチル
TMS:3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン
【0092】
≪(D)成分:可塑剤の製造≫
合成例D−1((可塑剤D−1の製造)
オイルジャケットを備えた加圧式撹拌相型反応器の温度を240℃に保った。次いで、反応器内の圧力を一定に保ちながら、100部のBA、6.0部のイソプロピルアルコール、6.0部のメチルエチルケトンと、1.0部のジ−tert−ブチルパーオキサイド(重合開始剤)からなる単量体混合物を、一定の供給速度(48g/分、滞留時間:12分)で原料タンクから反応器に連続供給を開始し、単量体混合物の供給量に相当する反応液を出口から連続的に抜出した。反応開始直後に、一旦反応温度が低下した後、重合熱による温度上昇が認められたが、オイルジャケット温度を制御する事により、反応器の内温(重合温度)を240±1℃に保持した。反応器内温が安定してから36分後の時点を、反応液採取開始点とし、これから25分間反応を継続した結果、1.2kgの単量体混合液を供給し、1.2kgの反応液を回収した。その後反応液を薄膜蒸発機に導入して、未反応モノマー等の揮発成分を分離して、未反応モノマー等の揮発成分を除去し、架橋性官能基を有さない(メタ)アクリル系重合体である可塑剤(D−1)を得た。可塑剤(D−1)は、架橋性官能基を含まず、且つ、炭素数10以上のアルキル基を有するビニル系単量体に由来する構造単位が25質量%未満の(メタ)アクリル系重重合体である。可塑剤(D−1)のMnは1650、Mwは2500、Mw/Mnは1.5であった。
【0093】
≪硬化性組成物の調製及び評価≫
実施例1〜3
0、参考例1〜2及び比較例1〜9
上記合成例で得られた(A)、(B)、(D)成分及び市販の原料を表2〜表5に示す割合で配合し、プラネタリーミキサーを用いて、温度60℃及び10Torrの条件で1時間混合することにより硬化性組成物を得た。各組成物から得られた硬化物について耐候性及び耐汚染性の評価を行い、結果を表2〜表5に示した。
【0094】
【表2】
【0095】
【表3】
【0096】
【表4】
【0097】
【表5】
【0098】
表2〜表5に示された化合物の詳細は以下の通り。
ES−S2420:ジメトキシシリル基を有するポリプロピレンオキサイド(旭硝子社製)
エクセノール3020:ポリエーテル系可塑剤(旭硝子社製)
U220H:ジブチル錫ジアセチルアセトナート(日東化成社製)
チヌビンB75:老化防止剤(BASFジャパン社製)
R820:酸化チタン(石原産業社製)
スーパーSS:重質炭酸カルシウム(丸尾カルシウム社製、商品名「スーパーSS」)
CCR:軽質炭酸カルシウム(白石カルシウム社製、商品名「白艶華CCR」)
OFS−6300:ビニルシラン(東レ・ダウコーニング社製)
SH−6020:3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン(東レ・ダウコーニング社製)
ファーミン80S:ステアリルアミン(花王社製、融点50℃)
ファーミンCS:ココナットアミン(炭素数12、14、16のアルキルアミンの混合物)(花王社製、融点13〜19℃)
【0099】
実施例1〜3
0は本発明の硬化性組成物に関する評価である。汚染試験1回後のΔYI値は0.6〜3.5と低く、耐汚染性に優れる結果が得られた。さらに、その効果が長期間に亘り維持されることが確認された。
一方、比較例1〜4は(B)成分である(メタ)アクリル系重合体を用いない実験例であり、得られる硬化物の耐汚染性は、初期及びサイクル試験後ともに不十分なものであった。また、(C)成分である炭素数6以上のアルキル基又はアルキレン基を有するアミン化合物を含まない比較例5及び6も同様に耐汚染性に劣る結果が得られた。
比較例7は(B)成分を過剰に含む(55質量部)組成物であるが、耐汚染性が十分ではない結果であった。表面層の軟化に起因する結果であると推察される。さらに、(B)成分中の炭素数10以上のアルキル基を有するビニル系単量体に由来する構造単位が25質量%未満又は当該構造単位を有さない比較例8及び9の耐汚染性も不十分なものであることが分かる。