(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る好適な実施形態について詳細に説明する。なお、本発明は、以下に記載された実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲にお
いて実施される各種の変形例も含むものとして理解されるべきである。なお、本明細書における「(メタ)アクリル〜」とは、「アクリル〜」および「メタクリル〜」の双方を包括する概念である。また、「〜(メタ)アクリレート」とは、「〜アクリレート」および「〜メタクリレート」の双方を包括する概念である。
【0020】
本発明において「粘着フィルム」とは、基材層の少なくとも一方の面に粘着層が形成されたフィルムのことをいう。
【0021】
1.粘着剤用組成物
本実施形態に係る粘着剤用組成物は、ヨウ素価が2〜150g/100gであり、かつ、重量平均分子量(Mw)が1×10
5〜1×10
6である重合体(A)(以下、単に「成分(A)」ともいう。)と、重量平均分子量(Mw)が5×10
2〜1×10
4である重合体(B)(以下、単に「成分(B)」ともいう。)と、を含有する粘着剤用組成物であって、前記組成物中の分子量が1×10
4以下である成分の割合が3〜30質量%であることを特徴とする。
【0022】
以下、本実施形態に係る粘着剤用組成物に含有される各成分について詳細に説明する。
【0023】
1.1.重合体(A)
本実施形態に係る粘着剤用組成物に含まれる重合体(A)は、ヨウ素価が2〜150g/100gであり、かつ、重量平均分子量(Mw)が1×10
5〜1×10
6である重合体であり、粘着フィルムの一部を構成する粘着層を作製するために用いられる。成分(A)は、熱可塑性樹脂であることが好ましく、共役ジエン化合物に由来する繰り返し単位と、芳香族ビニル化合物に由来する繰り返し単位とを有する熱可塑性樹脂であることがより好ましい。以下、成分(A)を構成する繰り返し単位、成分(A)の構造及び特性について順に説明する。
【0024】
1.1.1.共役ジエン化合物に由来する繰り返し単位
成分(A)は、共役ジエン化合物に由来する繰り返し単位を有することが好ましい。共役ジエン化合物としては、例えば1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−クロル−1,3−ブタジエンなどを挙げることができ、これらのうちから選択される1種以上であることができる。共役ジエン化合物としては、1,3−ブタジエンが特に好ましい。
【0025】
成分(A)において、共役ジエン化合物に由来する繰り返し単位の含有割合は、成分(A)の全繰り返し単位を100質量部とした場合に30〜95質量部であることが好ましく、35〜90質量部であることがより好ましい。共役ジエン化合物に由来する繰り返し単位の含有割合が前記範囲にあると、粘弾性及び強度に優れた粘着フィルムを製造することが容易となると共に、粘着層の粘着特性がさらに向上する。
【0026】
1.1.2.芳香族ビニル化合物に由来する繰り返し単位
成分(A)は、芳香族ビニル化合物に由来する繰り返し単位を有することが好ましい。芳香族ビニル化合物としては、例えばスチレン、tert−ブチルスチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−エチルスチレン、ジビニルベンゼン、1,1−ジフェニルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、N,N−ジエチル−p−アミノエチルスチレン、ビニルピリジン等を挙げることができる。これらの中でも、スチレンが特に好ましい。
【0027】
成分(A)において、芳香族ビニル化合物に由来する繰り返し単位の含有割合は、成分(A)の全繰り返し単位を100質量部とした場合に5〜70質量部であることが好まし
く、10〜65質量部であることがより好ましい。芳香族ビニル化合物に由来する繰り返し単位の含有割合が前記範囲にあると、粘着層のタック性がより良好となる。
【0028】
1.1.3.その他の繰り返し単位
成分(A)は、上記以外の繰り返し単位を有してもよい。上記以外の繰り返し単位としては、例えば、不飽和カルボン酸エステルに由来する繰り返し単位、不飽和カルボン酸に由来する繰り返し単位、α,β−不飽和ニトリル化合物に由来する繰り返し単位等が挙げられる。
【0029】
上記不飽和カルボン酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸エステルであることが好ましい。このような(メタ)アクリル酸エステルの具体例としては、例えば(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸i−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸i−ブチル、(メタ)アクリル酸n−アミル、(メタ)アクリル酸i−アミル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシメチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸エチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸エチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸プロピレングリコール、トリ(メタ)アクリル酸トリメチロールプロパン、テトラ(メタ)アクリル酸ペンタエリスリトール、ヘキサ(メタ)アクリル酸ジペンタエリスリトール、(メタ)アクリル酸アリルなどを挙げることができ、これらのうちから選択される1種以上であることができる。これらのうち、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル及び(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルから選択される1種以上であることが好ましく、(メタ)アクリル酸メチルであることが特に好ましい。
【0030】
上記不飽和カルボン酸の具体例としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等のモノまたはジカルボン酸を挙げることができ、これらの中から選択される1種以上であることができる。特に、アクリル酸、メタクリル酸及びイタコン酸から選択される1種以上であることが好ましい。
【0031】
上記α,β−不飽和ニトリル化合物の具体例としては、例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−クロルアクリロニトリル、α−エチルアクリロニトリル、シアン化ビニリデンなどを挙げることができ、これらから選択される1種以上であることができる。これらのうち、アクリロニトリル及びメタクリロニトリルから選択される1種以上であることが好ましく、アクリロニトリルであることが特に好ましい。
【0032】
また、成分(A)は、以下に示す化合物に由来する繰り返し単位をさらに有してもよい。このような化合物としては、例えばフッ化ビニリデン、四フッ化エチレン、六フッ化プロピレン等のエチレン性不飽和結合を有する含フッ素化合物;(メタ)アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド等のエチレン性不飽和カルボン酸のアルキルアミド;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のカルボン酸ビニルエステル;エチレン性不飽和ジカルボン酸の酸無水物;モノアルキルエステル;モノアミド;アミノエチルアクリルアミド、ジメチルアミノメチルメタクリルアミド、メチルアミノプロピルメタクリルアミド等のエチレン性不飽和カルボン酸のアミノアルキルアミド等を挙げることができ、これらのうちから選択される1種以上であることができる。
【0033】
1.1.4.重合体(A)の構造、特性及び合成方法
本発明における重合体(A)としては、特に限定されないが、芳香族ビニル化合物に由来する繰り返し単位のブロックと、共役ジエン化合物に由来する繰り返し単位のブロックとが交互に存在するA−B−A型ブロック共重合体が好ましく用いられる。具体的には、
スチレンとブタジエンやイソプレンなどの共役ジエン化合物とのブロック共重合体、あるいはその水素添加物が好ましく、耐久性の観点からスチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体あるいはその水素添加物がより好ましい。このような重合体(A)は、特開2010−255007号公報や国際公開第2007/126081号に記載されている方法により合成することができる。
【0034】
このようなスチレン−共役ジエンブロック共重合体における芳香族ビニル化合物に由来する繰り返し単位の含有量としては、通常5〜40質量%であり、10〜35質量%の範囲にあることが好ましい。芳香族ビニル化合物に由来する繰り返し単位の含有量が前記範囲にあると、粘着力を一層高めることができ、また凝集破壊により糊残りが生じなくなる傾向がある。
【0035】
成分(A)のヨウ素価は、2〜150g/100gである必要があり、5〜100g/100gであることが好ましく、10〜70g/100gであることがより好ましい。成分(A)のヨウ素価が前記範囲内にあると、本発明の粘着剤用組成物を基材に塗布した後、UV(紫外線)やEB(電子線)等のエネルギー線を照射することにより、粘着層の表面を部分的に架橋することができる。これにより、粘着層の表面に適度な柔軟性を保ちつつ、粘着昂進に優れた粘着層を作製することができる。成分(A)のヨウ素価は、例えば、成分(A)がスチレン−共役ジエンブロック共重合体の水素添加物である場合、水素添加の条件を制御して水添率を変化させることにより適宜調整することができる。なお、本発明における熱可塑性樹脂(A)のヨウ素価は、「JIS K 0070:1992」に記載の方法に準じて測定することができる。
【0036】
成分(A)の重量平均分子量(Mw)は、1×10
5〜1×10
6である必要があり、2×10
5〜5×10
5であることが好ましい。成分(A)の重量平均分子量(Mw)が前記範囲にあると、成形加工性及び粘着力に優れた粘着フィルムが得られやすい。このMwが前記範囲未満であると、タック性に優れるが剥離時に糊残り等を生ずる場合がある。Mwが前記範囲を超えると、成形加工性又は粘着力を十分に高めることができない場合がある。なお、ここでいう「重量平均分子量」とは、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)によって測定されたポリスチレン換算の重量平均分子量のことを指す。
【0037】
粘着フィルムを製造するに際して、基材用組成物と粘着剤用組成物とを溶融共押出装置等を使用して共押出成形する場合には、粘着剤用組成物に含まれる成分(A)の、230℃、21.2N荷重で測定されるメルトフローレート(MFR)が、0.1〜100g/10分であることが好ましく、1.0〜50g/10分であることがより好ましく、2.0〜30g/10分であることが特に好ましい。MFRが0.1g/10分未満であると、共押出成形時の負荷が過大となる場合がある。一方、MFRが100g/10分を超えると、ドローダウン等の共押出成形性に問題を生ずる傾向にある。
【0038】
成分(A)は、50〜150℃の範囲に少なくとも1つの融解ピーク(結晶融解ピーク)を有するものが好ましい。この融解ピーク温度は、示差走査熱量測定法(DSC法)により測定される。具体的には、示差走査熱量計(DSC)を使用し、サンプルとなる成分(A)を200℃で10分保持した後、−80℃まで10℃/分の速度で冷却し、次いで−80℃で10分間保持した後、10℃/分の速度で昇温したときの熱流量(結晶融解熱量)のピーク温度である。なお、その融解ピークの結晶融解熱量は5〜70J/g、好ましくは10〜50J/gの範囲である。
【0039】
本実施形態に係る粘着剤用組成物中の成分(A)の含有割合は、組成物の全質量を100質量%としたときに、好ましくは50〜96質量%、より好ましくは55〜91質量%、特に好ましくは60〜85質量%である。
【0040】
1.2.重合体(B)
本実施形態に係る粘着剤用組成物に含まれる重合体(B)は、重量平均分子量(Mw)が5×10
2〜1×10
4である重合体であり、粘着フィルムの一部を構成する粘着層を作製するために用いられる。
【0041】
成分(B)は、成分(A)と相溶して、粘着力をコントロールする機能を有する。したがって、成分(B)は、例えば、粘着フィルムを剥離したときの粘着層残渣の発生をさらに低減する目的で使用することができる。なお、「相溶」とは、粘着剤用組成物に成分(B)を添加することにより得られる混合物のtanδピーク温度が、もとの粘着剤用組成物のtanδピーク温度とは異なる値になる状態のことをいう。なお、本明細書中、「tanδピーク温度」とは、tanδの最大となる温度を意味する。
【0042】
成分(B)の重量平均分子量(Mw)は、5×10
2〜1×10
4であることが必要であり、1×10
3〜8×10
3であることが好ましい。成分(B)の重量平均分子量(Mw)が前記範囲にあると、成分(A)と成分(B)とが容易に相溶することができるので、均質な粘着力を有する粘着フィルムが得られやすい。なお、ここでいう「重量平均分子量」とは、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)によって測定されたポリスチレン換算の重量平均分子量のことを指す。
【0043】
成分(B)としては、例えば、脂肪族共重合体、芳香族共重合体、脂肪族・芳香族共重合体、脂環式共重合体等の石油系樹脂;クマロン−インデン系樹脂;テルペン系樹脂;テルペン−フェノール系樹脂;重合ロジン等のロジン系樹脂;(アルキル)フェノール系樹脂;キシレン系樹脂;又はこれらの水素添加物等の重合体が挙げられ、これらの重合体の重量平均分子量(Mw)が5×10
2〜1×10
4であるものを使用することができる。
【0044】
成分(B)は、90〜140℃の範囲内の軟化点を有することが好ましい。また、剥離性及び耐候性などを高めるために、水素添加物型の粘着付与剤を用いてもよい。これらの成分(B)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、粘着付与剤とオレフィン樹脂とを組み合わせて配合した混合物が市販されており、このような市販の粘着付与剤を用いてもよい。
【0045】
成分(B)のヨウ素価は、1〜30g/100gであることが好ましく、2〜29g/100gであることがより好ましく、3〜28g/100gであることが特に好ましい。成分(B)のヨウ素価が前記範囲内にあると、本発明の粘着剤用組成物を基材に塗布した後、UV(紫外線)やEB(電子線)等のエネルギー線を照射することにより、粘着層の表面を部分的に架橋することができる。これにより、粘着層の表面に適度な柔軟性を保ちつつ、粘着昂進に優れ、粘着フィルムを剥離したときの粘着層残渣の少ない粘着層を作製することができる。また、成分(A)と成分(B)とが相溶する場合には、成分(A)と成分(B)との間で架橋が進むことにより、均質性や粘着特性に優れた粘着層を作製することができる。成分(B)のヨウ素価は、成分(B)が水素添加物である場合には、成分(B)の水素添加の条件を制御して水添率を変化させることにより適宜調整することができる。なお、本発明における粘着付与剤(B)のヨウ素価は、「JIS K 0070:1992」に記載の方法に準じて測定することができる。
【0046】
本実施形態に係る粘着剤用組成物中の成分(B)の含有割合は、組成物の全質量を100質量%としたときに、好ましくは4〜50質量%、より好ましくは9〜45質量%、特に好ましくは15〜40質量%である。
【0047】
1.3.成分(A)と成分(B)との含有比
本実施形態に係る粘着剤用組成物において、成分(A)の含有量をMa(質量部)、成分(B)の含有量をMb(質量部)としたときに、含有比Ma/Mbは、1〜10であることが好ましく、1.3〜9.5であることがより好ましく、1.7〜9.1であることが特に好ましい。含有比Ma/Mbが前記範囲にあると、粘着層を作製する製造装置においてホッパーなどでのブロッキングを抑制することができ、粘着フィルムの生産性が向上する。また、UV(紫外線)やEB(電子線)等のエネルギー線照射による粘着層の表面での架橋が効率良く進行するため、粘着フィルムの粘着特性(耐溶剤性、粘着昂進、糊残り等)が良好となる。
【0048】
1.4.その他の成分
本実施形態に係る粘着剤用組成物には、上記の各成分の他、必要に応じて、ラジカル発生剤;ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、脂肪酸アミド、脂肪酸エステル及び脂肪酸金属塩からなる群より選ばれる少なくとも1種;老化防止剤;充填剤;ポリマー;着色剤;難燃剤等を添加してもよい。
【0049】
<ラジカル発生剤>
本実施形態に係る粘着剤用組成物に含まれ得るラジカル発生剤は、粘着フィルムの一部を構成する粘着層を作製する際に、加熱や紫外線等の放射線を照射することによりラジカルを発生させるために用いられる。ラジカルを発生させて前記成分(A)及び/前記成分(B)を架橋させることにより、形成される粘着層の粘着昂進を効果的に低減することができる。
【0050】
ラジカル発生剤としては、紫外線等の光を照射することによりラジカルを発生する光ラジカル発生剤が好ましい。光ラジカル発生剤の具体例としては、ヒドロキシケトン類、ベンジルジメチルケタール類、アミノケトン類、アシルフォスフィンオキサイド類、ベンゾフェノン類等が挙げられる。これらの光ラジカル発生剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0051】
ラジカル発生剤としては、オリゴマー型の光ラジカル発生剤であることが特に好ましい。オリゴマー型の光ラジカル発生剤は、紫外線等の光を照射することによってラジカルを発生できる官能基を有する単量体の低分子量重合物である。このようなオリゴマー型の光ラジカル発生剤は、ラジカルの発生点が一分子中に複数個存在するため、酸素による架橋阻害の影響を受けにくく、少量で架橋処理できる点や、基材に塗布する際に無溶剤のホットメルト状態でも飛散せず、ポリマー中からも抽出されない点から好ましく用いられる。
【0052】
オリゴマー型の光ラジカル発生剤の具体例としては、アクリル化ベンゾフェノン(UCB社製、商品名「EbecrylP36」)を重合したオリゴマー、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン(BASF社製、商品名「Irgacure2959」)の一級水酸基と2−イソシアナートエチルメタクリレートの反応物を重合したオリゴマー、2−ヒドロキシ−2−メチル−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノールオリゴマー(Lamberti社製、商品名「EsacureKIP150」)などが挙げられる。これらのオリゴマー型の光ラジカル発生剤の分子量は、50000程度までであることが好ましい。
【0053】
本実施形態に係る粘着剤用組成物におけるラジカル発生剤の含有割合は、成分(A)及び成分(B)の合計100質量部に対して0.1質量部以上10質量部以下であることが好ましく、0.5質量部以上5質量部以下であることがより好ましい。
【0054】
<ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、脂肪酸アミド、脂肪酸エステル及び脂肪酸金属塩からなる群より選ばれる少なくとも1種である成分>
本実施形態に係る粘着剤用組成物に含まれ得る、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、脂肪酸アミド、脂肪酸エステル及び脂肪酸金属塩からなる群より選ばれる少なくとも1種である成分は、ホッパーなどでのブロッキング(詰まり)を抑制して粘着フィルムの生産性をさらに向上させるために用いられる。
【0055】
ホッパーなどでのブロッキングを抑制するための成分としては、フッ素系重合体、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、エチレン−プロピレン共重合体ワックス、フィッシャー・トロプシュワックスおよびそれらの部分酸化物あるいはエチレン性不飽和カルボン酸との共重合体等の合成炭化水素系ワックス;モンタンワックス誘導体、パラフィンワックス誘導体、マイクロクリスタリンワックス誘導体等の変成ワックス;硬化ひまし油、硬化ひまし油誘導体等の水素化ワックス;セチルアルコール、ステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸等の高級脂肪酸およびアルコール;グリセリルステアレート、ポリエチレングリコールステアレート、ステアリン酸ステアリル、パルミチン酸イソプロピル等の脂肪酸エステル;ステアリン酸アミド等の脂肪酸アミド;ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸リチウム等の脂肪酸金属塩;無水フタル酸イミド;塩素化炭化水素等が挙げられる。
【0056】
これらの中でも、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、脂肪酸アミド、脂肪酸エステル及び脂肪酸金属塩からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。本実施形態に係る粘着剤用組成物にこれらの成分を添加すると、粘着層を作製する製造装置においてホッパーなどでのブロッキングをより効果的に抑制することができる。
【0057】
本実施形態に係る粘着剤用組成物における、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、脂肪酸アミド、脂肪酸エステル及び脂肪酸金属塩からなる群より選ばれる少なくとも1種である成分の含有割合は、成分(A)及び成分(B)の合計100質量部に対して0.01質量部以上5質量部以下であることが好ましく、0.05質量部以上1質量部以下であることがより好ましい。
【0058】
<老化防止剤>
老化防止剤としては、例えばヒンダードフェノール系、ホスファイト系等の酸化防止剤、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、サリチル酸エステル系等の紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系等の光安定剤が好適に添加される。老化防止剤の添加量は、成分(A)及び成分(B)の合計100質量部に対して10質量部以下であることが好ましく、0.1質量部以上1質量部以下であることがより好ましい。
【0059】
<充填剤>
充填剤としては、タルク、シリカ、炭酸カルシウム等の無機充填材、炭素繊維、アミド繊維等の有機充填材を使用することができる。
【0060】
1.5.粘着剤用組成物の分子量分布
本実施形態に係る粘着剤用組成物は、成分(A)及び成分(B)を含有するので、通常、組成物としての分子量には分布が生じ得る。この分子量分布において、分子量が1×10
4以下の割合が3〜30質量%である必要があり、5〜25質量%であることが好ましい。このような低分子量成分を前記範囲で含有することにより、エネルギー線照射時に効率よく架橋を進めることができ、初期粘着力と粘着昂進に優れた粘着層を作製することができる。
【0061】
本実施形態に係る粘着剤用組成物において、組成物としての重量平均分子量(Mw)は、1×10
5〜5×10
5であることが好ましく、1.5×10
5〜4×10
5であることがより好ましく、1.7×10
5〜3×10
5であることが特に好ましい。組成物とし
ての重量平均分子量が前記範囲にあると、適度な柔軟性を保ちつつ、初期粘着力に優れた粘着層を作製することができる。また、エネルギー線照射時に効率よく架橋を進めることができるので、粘着昂進に優れた粘着層を作製することができる。なお、ここでいう「重量平均分子量」とは、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)によって測定されたポリスチレン換算の重量平均分子量のことを指す。
【0062】
2.粘着フィルム
本実施形態に係る粘着フィルムは、基材層と、当該基材層の片面又は両面に形成された粘着層とを備えたフィルムである。粘着層を形成するための粘着剤用組成物については、上述の通りである。以下、基材層及び基材用組成物、粘着フィルムの製造方法についてこの順に説明する。
【0063】
<基材層及び基材用組成物>
基材層を作製するための基材用組成物は、熱可塑性樹脂を含有することが好ましい。熱可塑性樹脂の中でも、オレフィン系樹脂が好ましい。
【0064】
オレフィン系樹脂としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン系の共重合体を好適に用いることができる。具体的には、プロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−ブテン−1共重合体、ブテン−1−エチレン共重合体、プロピレン−エチレン−ブテン−1共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−エチルメタクリレート共重合体、エチレン−メチルアクリレート共重合体、エチレン−メチルメタクリレート共重合体、エチレン−n−ブチルアクリレート共重合体等を挙げることができる。これらの熱可塑性樹脂は、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0065】
基材用組成物は熱可塑性樹脂を主成分として含有するが、劣化防止等を目的に、例えば酸化防止剤、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系光安定剤等の光安定剤、帯電防止剤、その他に、例えば、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、シリカ、酸化亜鉛、酸化チタン等の充填剤、顔料、目ヤニ防止剤、滑剤、アンチブロッキング剤等を適宜添加することができる。
【0066】
基材用組成物に含有される熱可塑性樹脂の、230℃、21.2N荷重で測定されるMFRは、0.01〜100g/10分であることが好ましく、0.1〜80g/10分であることがより好ましい。また、基材用組成物に含有される熱可塑性樹脂は、1種類の熱可塑性樹脂のみで構成されてもよいし、2種類以上の熱可塑性樹脂を混合して構成されることもできる。基材層は単層であってもよく、二層以上の多層であってもよい。また、基材層として発泡層を選択することも可能である。
【0067】
<粘着フィルムの製造方法>
本実施形態に係る粘着フィルムは、基材層と、当該基材層の片面又は両面に形成された粘着層とを備えた、いわゆる積層構造を有するフィルムである。したがって、本実施形態に係る粘着フィルムは、(1)塗布法;予め作製された基材層の片面又は両面に粘着剤用組成物を塗布して粘着層を形成した後に巻き取る方法、(2)共押出し法;基材用組成物と粘着剤用組成物とを、溶融共押出装置等を使用して共押出成形することにより、基材層の片面又は両面に粘着層を形成する方法、などの方法により製造することができる。
【0068】
塗布法により粘着フィルムを製造する場合、厚さが2〜150μm程度の基材層の片面又は両面に上記の粘着剤用組成物を塗布し、必要に応じて紫外線(UV)もしくは電子線(EB)等のエネルギー線を照射して架橋処理し、厚さ5〜200μmとなる粘着層を形成することにより製造できる。また、基材層の片面に離型処理を施すことにより、転写用
粘着フィルムとすることもできる。粘着剤用組成物を基材層へ塗布する際には、必要により加熱して粘度を低下させた状態で塗工することができ、具体的には、ホットメルトコータ、コンマロール、グラビアコータ、ロールコータ、キスコータ、スロットダイコータ、スクイズコータ等を使用することができる。
【0069】
基材用組成物と粘着剤用組成物とを共押出し法により一括成形して粘着フィルムを製造する場合、必要に応じて紫外線(UV)もしくは電子線(EB)等のエネルギー線を照射して架橋処理し、厚さ5〜200μmとなる粘着層を形成することにより製造できる。
【0070】
紫外線照射は、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、エキシマレーザ、メタルハライドランプなどの適宜の紫外線源を用いて行うことができる。紫外線の照射量は、必要とする架橋度に応じて決められるが、好ましくは10mJ/cm
2〜5000mJ/cm
2、より好ましくは100mJ/cm
2〜5000mJ/cm
2である。また、必要に応じて短波長側の紫外線をカットするフィルターやポリエステルシートを用いることもできる。さらに、紫外線照射時の温度は、特に限定はなく、室温から140℃までの加熱条件を適宜選択することができる。
【0071】
電子線の線源としては、例えば、市販されているタングステンフィラメントから発生する熱電子を利用する方式、金属に高電圧パルスを通じて発生させる冷陰極方式及びイオン化したガス状分子と金属電極との衝突により発生する2次電子を利用する2次電子方式を挙げることができる。電子線量は、必要とする架橋度に応じて決められるが、好ましくは10〜1000kGy、より好ましくは100〜500kGyである。
【0072】
上記の粘着フィルムの製造方法においてエネルギー線を照射する場合、粘着層の架橋の進行しやすさという点では、紫外線(UV)照射よりも電子線(EB)照射の方が好適である。電子線を照射した粘着層は、ゲル成分の発生を極微量とすることができ、ゲル成分に由来する異物の発生を抑制することができる点で有利である。一方、紫外線照射の場合、押出温度でラジカル発生剤が分解することがあり、また遮光環境で製造する必要がある等の製造上の問題がある。
【0073】
上記の粘着フィルムの製造方法によれば、粘着剤用組成物により形成された粘着層へ紫外線(UV)もしくは電子線(EB)等のエネルギー線を照射することによって、粘着特性及び耐熱性が向上した粘着層を作製することができる。粘着層表面の部分架橋によって流動性が抑制されるため、粘着特性の中でも、特に粘着昂進が小さくなる。その際、エネルギー線架橋後において、ブロック共重合体の溶剤可溶分が5〜60質量%、好ましくは10〜50質量%となるようにするのがよい。このような溶剤可溶分とするには、ラジカル発生剤の使用量を選択したり、エネルギー線の照射量を選択するなどして、架橋度を適宜調節すればよい。
【0074】
なお、ラジカル発生剤に代えて、一般にゴムの架橋に用いられる硫黄や硫黄系加硫剤、加硫促進剤を用いると、硫化物イオンや硫酸イオンが大量に発生し、粘着層よりブリードアウトする場合があるので好ましくない。また、過酸化物を用いた架橋では、十分な耐熱性を得ることが困難となる場合がある。
【0075】
なお、このようにして製造された粘着フィルムは、必要に応じてテープ状やシート状などの形状で使用することができる。
【0076】
3.実施例
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例、比較例中の「部」および「%」は、特に断らない限り質量
基準である。
【0077】
なお、重合体(A)、重合体(B)、粘着剤用組成物の重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー〔GPC、カラム;東ソー(株)製、GMHHR−H〕を用いて、ポリスチレン換算で求めた。また、粘着剤用組成物中の分子量が1×10
4以下の分子量領域の割合(質量%)は、上記で粘着剤用組成物の重量平均分子量(Mw)を求めたときの積分分子量分布曲線から求めた。
【0078】
3.1.重合体(A)の合成及びヨウ素価の測定
<合成例1>
窒素置換された反応容器に、脱気・脱水されたシクロヘキサン500部、スチレン4部、及びテトラヒドロフラン15部を仕込み、重合開始温度40℃にてn−ブチルリチウム0.05部を加えて、昇温重合を行った。重合転化率が99%以上に達した後、反応液を10℃に冷却し、次いで、1,3−ブタジエン90部及びスチレン4部を加えて、さらに昇温重合を行った。重合転化率が99%以上に達した後、スチレン2部を加えて、さらに昇温重合を行った。その後、反応容器内に、ジエチルアルミニウムクロライド0.03部及びビス(シクロペンタジエニル)チタニウムフルフリルオキシクロライド0.06部を加え、撹拌した。水素ガス供給圧0.7MPa−Gauge、反応温度80℃で水素添加反応を開始し、3時間後に反応溶液を常温・常圧に戻し、反応容器より抜き出すことにより、重合体A−1を得た。
【0079】
<ヨウ素価の測定>
重合体A−1を0.250g秤量し、シクロヘキサンを50mL加えて希釈した。次にウィイス試薬(和光純薬製、0.1mol/L塩化ヨウ素・酢酸溶液)を10.0mL加えてよく振り混ぜ、30分放置して反応を進行させた。ここに15wt%ヨウ化カリウム水溶液を10mL加え、水を30mL加え撹拌した。0.1Nチオ硫酸ナトリウム水溶液(和光純薬製)を徐々に滴下し、溶液が薄い黄色となった段階でデンプン溶液(10g/L)を3滴加え、液の青色がなくなるまで滴下した(滴下量YmL)。次に、試料を加えないこと以外は同様にして、ブランクの滴下量(滴下量ZmL)を求めた。下記計算により、重合体A−1のヨウ素価を算出したところ、10g/100gであった。
ヨウ素価(g/100g)=(Z−Y)×1.269/0.250
【0080】
<合成例2〜4、7>
水素添加反応の反応時間を、それぞれ10時間、1時間、0.5時間、5時間とした以外は、上記合成例1と同様にして熱可塑性樹脂A−2、A−3、A−4、A−7を得た。得られた重合体A−2、A−3、A−4、A−7のヨウ素価を上記と同様にして算出したところ、A−2:1g/100g、A−3:66g/100g、A−4:160g/100g、A−7:3g/100gであった。
【0081】
<合成例5>
窒素置換された反応容器に、脱気・脱水されたシクロヘキサン500部、スチレン4部、及びテトラヒドロフラン15部を仕込み、重合開始温度40℃にてn−ブチルリチウム0.014部を加えて、昇温重合を行った。重合転化率が99%以上に達した後、反応液を10℃に冷却し、次いで、1,3−ブタジエン90部及びスチレン4部を加えて、さらに昇温重合を行った。重合転化率が99%以上に達した後、スチレン2部を加えて、さらに昇温重合を行った。その後、反応容器内に、ジエチルアルミニウムクロライド0.03部及びビス(シクロペンタジエニル)チタニウムフルフリルオキシクロライド0.06部を加え、撹拌した。水素ガス供給圧0.7MPa−Gauge、反応温度80℃で水素添加反応を開始し、15時間後に反応溶液を常温・常圧に戻し、反応容器より抜き出すことにより、重合体A−5を得た。A−5のヨウ素価を上記と同様にして算出したところ、1
g/100gであった。
【0082】
<合成例6>
窒素置換された反応容器に、脱気・脱水されたシクロヘキサン500部、スチレン4部、及びテトラヒドロフラン15部を仕込み、重合開始温度40℃にてn−ブチルリチウム0.18部を加えて、昇温重合を行った。重合転化率が99%以上に達した後、反応液を10℃に冷却し、次いで、1,3−ブタジエン90部及びスチレン4部を加えて、さらに昇温重合を行った。重合転化率が99%以上に達した後、スチレン2部を加えて、さらに昇温重合を行った。その後、反応容器内に、ジエチルアルミニウムクロライド0.03部及びビス(シクロペンタジエニル)チタニウムフルフリルオキシクロライド0.06部を加え、撹拌した。水素ガス供給圧0.7MPa−Gauge、反応温度80℃で水素添加反応を開始し、12時間後に反応溶液を常温・常圧に戻し、反応容器より抜き出すことにより、重合体A−6を得た。A−6のヨウ素価を上記と同様にして算出したところ、1g/100gであった。
【0083】
3.2.実施例1
3.2.1.粘着剤用組成物の作製
重合体A−1を100質量部、重合体(B)としてパインクリスタルPE−590(商品名、荒川化学工業株式会社製、水素添加ロジンエステル、ヨウ素価=4g/100g)30質量部、Irgacure127(BASF社製)1質量部、ステアリン酸カルシウム(和光純薬工業(株)製)0.15質量部を、二軸押出機(東洋精機製作所製、商品名「ラボブラストミル」)にて溶融押出混合を行い、押出ストランドを60℃に設定した温浴槽で固化し、ストランドカッターにてペレタイズすることにより5mmφのペレット状の粘着剤用組成物を得た。
【0084】
3.2.2.粘着フィルムの製造
基材層としてポリエチレン(三菱化学(株)製、商品名「YF30」)、接着層として上記で作製したペレット状の粘着剤用組成物を使用し、フィードブロックタイプのTダイを備えた二層共押出装置により、基材層の厚みが100μm、粘着層の厚みが10μmとなるように、シリンダー温度190℃、ダイス温度190℃の成形条件にて基材層と粘着層とを共押出し成形して、フィルムを製造した。得られたフィルムの粘着層面に対し、高圧水銀ランプにて、表1に記載の照射量の紫外線を照射し、粘着フィルムを製造した。
【0085】
3.2.3.評価方法
<ホッパー内でのブロッキング評価>
得られた粘着剤用組成物のペレットをフィードブロックタイプのTダイを備えた二層共押出装置に投入し、ホッパー内でブロッキングの状態を確認し、下記の基準により評価した。結果を表1に示す。
・「3点」:ホッパー内でブロッキングすることはなく、非常に良好。
・「2点」:ホッパー内でブロッキングするが、棒で付けばブロッキングが崩れるため、良好。
・「1点」:ホッパー内でブロッキングし、棒で付いてもブロッキングが解消されず、不良。
【0086】
<ゲル成分有無の評価>
粘着フィルムの作製に使用する粘着剤用組成物20.0mgを、25℃、20時間テトラヒドロフラン20mLに浸漬し、フィルター濾過することで粘着剤の溶出成分Aを回収した。一方、UV/EB照射前のフィルム20.0mgを、25℃、20時間テトラヒドロフラン20mLに浸漬し、フィルター濾過することで溶出成分Bを回収した。溶出成分A、BのGPC測定を実施し、フィルム化工程時のゲル成分有無を以下のように評価した
。
・「4点」:溶出成分Aと溶出成分BのGPC強度比、GPC形状共に変化がほとんど認められず、ゲル成分が極めて微量。
・「3点」:溶出成分Aと溶出成分BのGPC強度比に変化がほとんど認められず、GPC形状から多量体生成が認められ、ゲル成分は微量である。
・「2点」:溶出成分BのGPC強度が小さく、GPC形状から多量体生成が認められ、ゲル成分が多い。
・「1点」:溶出成分BのGPC強度が極めて小さく、ゲル成分が極めて多い。
フィルム化工程時に生成するゲル成分は、フィルム異物となり得るため少ないことが望ましいが、2点以上であれば良好と判断できる。
【0087】
<粘着フィルムの外観評価>
得られた粘着フィルムの外観を目視にて観察し、粘着フィルムの着色について以下のように評価した。
・「4点」:粘着フィルムに黄色味が認められず、フィルム着色が極めて小さい。
・「3点」:粘着フィルムに黄色味が僅かに認められ、フィルム着色が小さい。
・「2点」:粘着フィルムに黄色味が認められ、フィルム着色が認められる。
・「1点」:粘着フィルムの黄色味が強く、フィルム着色が非常に大きい。
光学用途等の透明性が必要とされる用途において、粘着フィルムの着色は小さいことが望ましいが、2点以上であれば良好と判断できる。
【0088】
<粘着フィルムの耐溶剤性評価>
得られた粘着フィルム20.0mgを、25℃、20時間テトラヒドロフラン20mLに浸漬し、フィルター濾過することで溶出成分Cを回収した。溶出成分CのGPC測定を実施し、上記「ゲル成分有無の評価」で回収された溶出成分AのGPC形状と比較することにより粘着フィルムの耐溶剤性を以下のように評価した。
・「5点」:溶出成分CのGPC形状にて、重合体(A)に由来するピーク強度がほとんど認められず、耐溶剤性が格段極めて良好である。
・「4点」:溶出成分Aと溶出成分CのGPC形状比較にて、溶出成分Cの重合体(A)に由来するピーク強度が溶出成分Aの重合体(A)に由来するピーク強度の20%以下であり、耐溶剤性が極めて良好である。
・「3点」:溶出成分Aと溶出成分CのGPC形状比較にて、溶出成分Cの重合体(A)に由来するピーク強度が溶出成分Aの重合体(A)に由来するピーク強度の20%超50%以下であり、耐溶剤性が特に良好である。
・「2点」:溶出成分Aと溶出成分CのGPC形状比較にて、溶出成分Cの重合体(A)に由来するピーク強度が溶出成分Aの重合体(A)に由来するピーク強度の50%超90%未満であり、耐溶剤性が良好である。
・「1点」:溶出成分Aと溶出成分CのGPC強度比、GPC形状共に変化がほとんど認められず、耐溶剤性は不良である。
粘着フィルムの耐溶剤性が高いと、フィルム表面に薬品等が付着した際の形状変化を抑制でき好ましい。耐薬品性の観点から、耐溶剤が3点以上あることが好ましい。なお、耐溶剤性はポリマー架橋の指標であり、重合体(A)の架橋による粘着層の流動抑制や糊残り防止等の粘着性能の指標となり、耐溶剤性の評価が3点以上であれば良好と判断できる。
【0089】
<初期粘着力の評価>
被着体として五洋紙工(株)製のプリズムシート(GTL5000)を使用し、25mm幅に切出した粘着フィルムの粘着層と前記プリズムシートのレンズ面とが対向するようにして、室温(23℃)にて2kgローラーで粘着フィルムを被着体に圧着した。その後、23℃で2時間静置し、23℃、60%RH環境下においてストログラフ((株)東洋
精機製作所製、型番「VES05D」)を用いて300mm/分の速度で180°引き剥がしを行い、初期粘着力を測定した。初期粘着力は値が大きいほどより良好であるが、実用的には80mN/25mm以上である場合、良好と判断できる。
【0090】
<昂進倍率の評価>
被着材として五洋紙工(株)製のプリズムシート(GTL5000)を使用し、25mm幅に切出した粘着フィルムの粘着層と前記プリズムシートのレンズ面とが対向するようにして、室温(23℃)にて2kgローラーで粘着フィルムを被着体に圧着した。その後、60℃、20時間静置し、23℃、60%RH環境下においてストログラフ(東洋精機製作所社製、型番「VES05D」)を用いて300mm/分の速度で180°引き剥がしを行い、昂進粘着力を測定した。
初期粘着力と昂進粘着力の値を用いて、以下の式より昂進倍率を算出した。
・昂進倍率=昂進粘着力/初期粘着力
昂進倍率は値が小さいほどより良好であるが、実用的には2.0以下である場合、良好と判断できる。
【0091】
<糊残りの評価>
昂進粘着力を評価した後の被着体の表面状態を視認し、被着体表面の状態を確認し、以下の指標に従い評価した。
・「3点」:粘着剤の残留が認められないため非常に良好。
・「2点」:粘着剤の残留がわずかに認められるため良好。
・「1点」:粘着剤の残留が大量に認められ不良。
【0092】
3.3.実施例2〜6、比較例1〜4、6、7
表1〜表2に記載の組成と製造条件とした以外は、実施例1と同様に粘着剤用組成物及び粘着フィルムを製造し、評価を行った。その結果を表1〜表2に示す。
【0093】
3.4.実施例7〜11、比較例5
表1〜表2に記載の組成と製造条件とした以外は、実施例1と同様に粘着剤用組成物を作製した。次いで、基材層としてポリエチレン(三菱化学(株)製、商品名「YF30」)、接着層として上記で作製したペレット状の粘着剤用組成物を使用し、フィードブロックタイプのTダイを備えた二層共押出装置により、基材層の厚みが100μm、粘着層の厚みが10μmとなるように、シリンダー温度190℃、ダイス温度190℃の成形条件にて基材層と粘着層とを共押出し成形して、フィルムを製造した。得られたフィルムの粘着層面に対し、NHVコーポレーション社製の電子線照射装置(EBC300−60)を用い、加速電圧を300keV、照射雰囲気を窒素下にて、表1〜表2に記載の照射量の電子線を照射し、粘着フィルムを製造した。このようにして作製された粘着フィルムを実施例1と同様に評価した。
【0094】
3.5.評価結果
下表1〜下表2に、各実施例、比較例で使用した粘着剤用組成物の組成、粘着フィルムの製造条件ならびに評価結果を示す。
【0097】
なお、上表1〜上表2において、各成分の略称はそれぞれ下記の通りである。
<重合体(A)>
・A−1:上記合成例1で合成された熱可塑性樹脂、ヨウ素価=10g/100g、重量平均分子量(Mw)=3.1×10
5
・A−2:上記合成例2で合成された熱可塑性樹脂、ヨウ素価=1g/100g、重量平
均分子量(Mw)=3.3×10
5
・A−3:上記合成例3で合成された熱可塑性樹脂、ヨウ素価=66g/100g、重量平均分子量(Mw)=3.0×10
5
・A−4:上記合成例4で合成された熱可塑性樹脂、ヨウ素価=160g/100g、重量平均分子量(Mw)=2.9×10
5
・A−5:上記合成例5で合成された熱可塑性樹脂、ヨウ素価=1g/100g、重量平均分子量(Mw)=1.2×10
6
・A−6:上記合成例6で合成された熱可塑性樹脂、ヨウ素価=1g/100g、重量平均分子量(Mw)=8.7×10
4
・A−7:上記合成例7で合成された熱可塑性樹脂、ヨウ素価=3g/100g、重量平均分子量(Mw)=3.1×10
5
<重合体(B)>
・PE−590:商品名「パインクリスタルPE−590」、荒川化学工業株式会社製、水素添加ロジンエステル、ヨウ素価=4g/100g、重量平均分子量(Mw)=7.9×10
2
・P−125:商品名「アルコンP−125」、荒川化学工業株式会社製、脂環族飽和炭化水素、ヨウ素価=7g/100g、重量平均分子量(Mw)=1.2×10
3
・KE−311:商品名「KE−311」、荒川化学工業株式会社製、水素添加ロジンエステル、ヨウ素価=26g/100g、重量平均分子量(Mw)=7.7×10
2
・A−100:商品名「スーパーエステルA−100」、荒川化学工業株式会社製、変性ロジンエステル、ヨウ素価=48g/100g、重量平均分子量(Mw)=7.9×10
2
・UH115:商品名「YSポリスターUH115」、ヤスハラケミカル株式会社製、水添テルペンフェノール共重合体、ヨウ素価=17g/100g、重量平均分子量(Mw)=1.2×10
3
<その他の成分>
・Irgacure127(商品名、BASF社製、ラジカル発生剤)
・ステアリン酸Ca(和光純薬工業(株)製、ステアリン酸カルシウム)
【0098】
実施例1〜11によれば、本発明に係る粘着剤用組成物は、ホッパー内でのブロッキングが抑制されると共に、被着体への粘着力が高く、粘着昂進が小さく、そして被着体への糊残りがないといった粘着特性のバランスに優れた粘着層を有する粘着フィルムを製造することができた。また、実施例1〜6と実施例7〜11と対比すると、紫外線照射よりも電子線照射の方がフィルム化工程時のゲル成分を極微量とすることができ、より望ましい状態であることがわかった。なお、比較例6では、重合体(A)の重量平均分子量が高すぎるために、フィルムを成形することができず、粘着フィルムの性能を評価することができなかった。また、比較例7では、重合体(A)の重量平均分子量が低すぎるために、架橋が充分に進行せず、粘着昂進が大きくなることが判明した。
【0099】
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法および結果が同一の構成、あるいは目的および効果が同一の構成)を包含する。また本発明は、上記の実施形態で説明した構成の本質的でない部分を他の構成に置き換えた構成を包含する。さらに本発明は、上記の実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成または同一の目的を達成することができる構成をも包含する。さらに本発明は、上記の実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成をも包含する。