(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
<実施の形態の概要>
実施の形態の概要を述べる。実施の形態に係る操舵補助装置は、当該操舵補助装置を搭載した車両が車線に沿って平行に走行するように車両の操舵を補助する、いわゆる車線維持支援のための装置である。具体的には、実施の形態に係る操舵補助装置は、車両が走行中の車線から逸脱しそうになること、及び逸脱していることを検出して、車両を元の車線に戻す向きの操舵力を付与するとともに、車両が車線中央付近に来たら車両の向きを車線と平行にする。このように、実施の形態に係る操舵補助装置を車両に搭載することによって車両が車線を逸脱すること抑制し、車両を車線と平行に走行するように支援することにより、走行の安全性をより高めることができる。
【0014】
車線維持支援を実現するための操舵補助装置は、車両の運転者によるステアリングの操作に対して反対方向のトルクをステアリングにかけることになる。すなわち、操舵補助装置は運転者の操作に逆らう向きの力をステアリングにかけることになる。もし、車線維持支援によって車線の端から車線中央に車両が移動したときに車両が車線中央を通り過ぎてしまうと、今度は反対方向に車線維持支援がはたらくことになる。
【0015】
このような状況が継続すると運転者の操作に逆らう向きの力が何度もステアリングにかけられることになるため、好ましくない。このように、車線維持支援機能を実現する操舵補助装置は、車両の走行の安全性を高める点では有用であるが、運転者のドライビングフィールを向上させるという観点では必ずしも好ましいものとはいえない。
【0016】
そこで実施の形態に係る操舵補助装置は、車両が走行する車線を含む車両前方を撮像した画像を解析し、車両が車線に内側で平行になることを条件として車線維持支援機能を適切に終了する。これにより、実施の形態に係る操舵補助装置は、車線維持支援の必要性の有無に応じて車線維持支援を実行するため、車両の走行の安全性を向上させるとともに、車線維持支援による運転者のドライビングフィールの低下を抑制することができる。
【0017】
<操舵補助装置1の機能構成>
実施の形態に係る操舵補助装置は車両のパワーアシスト及び車線維持支援として機能するが、以下では車両の車線維持支援機能を実現させるための操舵補助装置1の機能構成について主に説明する。
【0018】
図1は、実施の形態に係る操舵補助装置1の機能構成を模式的に示す図である。
操舵補助装置1は、制御部10、補助部11、及び撮像装置Iを備える。制御部10は、図示しないCPU(Central Processing Unit)やメモリ等を含む計算リソースであり、プログラムを実行することによって区画線検出部100、横速度測定部101、及び操舵制御部102の機能を実現する。
【0019】
撮像装置Iは車両に搭載された車載カメラであり、操舵補助装置1における撮像部として機能する。撮像装置Iは、車両が走行する車線を含む、車両の進行方向前方の画像を撮像する。区画線検出部100は、撮像装置Iが撮像した画像を取得する。区画線検出部100は、取得した画像を解析することにより、車両が走行する車線における左右の車線区画線を検出する。
【0020】
制御部10は、撮像装置Iが撮像した画像を解析して車両が走行する車線の曲率を算出する。制御部10は、算出した曲率から、車両が車線を走行するために必要な目標操舵角を算出する。制御部10は、算出した目標操舵角に基づいて油圧シリンダ2及びモータ3を制御することにより、車両における車線維持支援を実現する。
【0021】
補助部11は、車両の運転手がステアリングを操作することで操舵輪を動かすことを補助する機構であり、油圧シリンダ2とモータ3とを含む。油圧シリンダ2は、油圧により車両の操舵を補助するためのトルクを発生する。またモータ3は、電力により車両の操舵を補助するためのトルクを発生する。
【0022】
油圧シリンダ2は制御部10の制御の下、ステアリングの動きを操舵輪に伝達するパワーアシスト機能を主として提供する。一方モータ3は制御部10の制御の下、車両が走行車線に沿って走行するための車線維持支援機能を主として提供する。
【0023】
横速度測定部101は、車線に対して垂直な方向における車両の速度成分である横速度を算出する。具体的には、横速度測定部101は、撮像装置Iが撮像した画像において区画線検出部100が検出した車線区画線の撮像位置の移動速度に基づいて、車両の横速度を算出する。
【0024】
操舵制御部102は、補助部11を制御して、車両が左右の車線区画線の中央に沿って走行するように、車両の操舵補助を実行させる。以下、操舵制御部102が補助部11に操舵補助を開始させる条件、及び操舵制御部102が補助部11の操舵補助を停止させる条件について説明する。
【0025】
<操舵補助の開始条件及び停止条件>
図2(a)−(c)は、実施の形態に係る操舵補助の開始条件及び停止条件を説明するための図である。以下
図2(a)−(c)を参照しながら、操舵補助の開始条件及び停止条件について説明する。
【0026】
なお、実施の形態に係る操舵補助には、車両を車線の端から中央に向かわせる操舵補助第1段階と、車両の走行方向を車線と平行にさせる操舵補助第2段階と、の大きく分けて二つの段階がある。以下では、主に操舵補助第2段階に関する開始条件及び停止条件について説明する。
【0027】
本明細書において、「車線区画線L」とは、車両Vが走行する車線を区分けするために道路上に引かれた線を意味する。車線区間線は、白色の実線、白色の破線、黄色の実線等の種類が存在するが、本明細書ではこれらを含めて車線区画線Lと記載する。以下説明の便宜上、車両Vの進行方向に対して車両Vの左側に位置する車線区画線を第1車線区画線Ll、車両Vの右側に位置する車線区画線を第2車線区画線Lr、両者を特に区別する必要がない場合には両者を合わせて車線区画線Lと記載する。
【0028】
図2(a)−(c)において、符号Lcで示す破線は左右の車線区画線Lの中央を通る車線中央線Lcである。なお車線中央線Lcは、路面上に実際に描かれている線ではなく、仮想的な線である。また符号Vcで示す一点鎖線は、車両Vの短手方向の二等分線である車両中央線Vcである。車両中央線Vcは車両Vの進行方向に対して平行である。車両中央線Vcも、車線中央線Lcと同様に、実際に存在する線ではなく仮想的な線である。
【0029】
[操舵補助第2段階の開始条件]
例えば車両Vが何らかの理由で左右いずれか一方の車線区画線Lを乗り上げるような走行をしたときや、隣接車線から車線変更してきたようなとき等は、車線維持のために車両Vを車線中央線Lcに向けて移動させることになる。このような場合、車両Vの横速度は、左右いずれかの車線区画線Lから車線中央線Lcに向かう向きとなる。
【0030】
この横速度が大きい場合、車両Vは車線中央線Lcを通過して、車線中央線Lcに対して車線の反対側の領域に移動しかねない。そうすると、車線維持支援によって今度は車両Vを車線中央線Lcに向かわせる向きのアシストがはたらくことになり、走行が不安定となりかねない。
【0031】
そこで操舵制御部102は、車両Vの横速度が所定の速度以上となり、かつ車両Vの中央が左右の車線区画線Lの中央から所定の距離となる場合、補助部11による車両Vの操舵補助を開始させる。以下このことについてより具体的に説明する。
【0032】
図2(a)−(b)は、操舵補助第2段階の開始条件を説明するための図である。
図2(a)において、角度α(0≦α<90度)は車両中央線Vcと車線中央線Lcとがなす角度であり、車両Vの進行方向と車線中央線Lcとがなす角である。例えば、車両Vが車線に対して平行に走行している場合、角度αは0度となる。また
図2(b)において、車線中央線Lcと車両中央線Vcとの間の距離Dは、車両Vの中央と、車線中央線Lcとの距離を示している。
【0033】
図2(a)に示した角度αは、車両Vの横速度の大きさを示す指標ともなる。いま、横風強風等によって車両Vが横方向に流されていないとする。この場合、車両Vが時速Sキロメートルで走行しているとすると、車両Vの車線に沿った方向の時速はScos(α)キロメートルとなり、車両Vの車線と垂直な方向の時速、すなわち横速度はSsin(α)キロメートルとなる。したがって、0≦α<90度の範囲において、車両Vの横速度は角度αと正の相関があり、α=0のとき横速度も0となる。
【0034】
ここで車両Vがトラックであり、車両Vが高速道路を走行している場合を想定し、車両Vが車線中央線Lcから離れた位置から車線中央線Lcに向かって走行している場合を考える。このとき、車両Vの中心が所定の時間後(例えば10秒後)に、車両中央線Vcに到達するための条件について考える。
【0035】
車両Vがトラックの場合車両Vの車幅は2.5メートル程度であり、高速道路の車線の幅は3.5メートル程度となる。車両Vが車線の端と重なるようにして車線内を走行しているとすると、車両Vの中央は車線中央線Lcから0.5メートル離れた位置に存在することになる。このとき車両Vの中央が10秒以内に車線中央線Lcに到達するための条件は、車両Vの横速度が秒速0.05メートル以上(時速0.18キロメートル以上)となることである。
【0036】
車両Vは高速道路を走行していることを想定しているため、車両Vの時速Sを80キロメートルと仮定する。このとき車両Vの横速度が時速0.18キロメートル以上となるための条件は、sin(α)が0.18/80=0.00225以上となることである。これは、αがおよそ13度以上となることに相当する。したがって、車両中央線Vcと車線中央線Lcとがなす角度αが13度以上となることは、高速道路において車両Vが車線の端と重なるようにして車線内を走行しているときに、車両Vの中心が10秒以内に車線の中央に到達することの十分条件となる。
【0037】
ここで、車両中央線Vcと車線中央線Lcとがなす角度αが、車線の縁を走行している車両Vの中央が10秒以内に車線中央線Lcに到達することの十分条件となる13度の半分である6.5度のときを考える。この場合、車両Vの横速度の時速は、80×sin(6.5)≒0.11キロメートル(秒速約0.03メートル)となる。すなわち、車両Vは10秒間で車線に対して垂直な方向に0.3メートル移動する。このため、αが6.5度であるときは車両Vが車線の中央から0.3メートル離れて走行していると、10秒後に車両Vの中央が車線中央線Lcに到達することになる。
【0038】
そこで実施の形態に係る操舵制御部102は、補助部11に車両Vの操舵補助第2段階を開始させるための条件である「所定の速度」の一例として、時速0.11キロメートルを採用し、「所定の距離」の一例として、0.3メートルを採用する。すなわち、操舵制御部102は、車両Vの横速度が時速0.11キロメートル以上であり、かつ車両Vの中央が左右の車線区画線Lの中央から0.3メートル以上に近づいた場合、補助部11による車両Vの操舵補助第2段階を開始させる。
【0039】
より具体的には、操舵制御部102は、車両Vの進行方向と左右の車線区画線Lの中央を通る車線中央線Lcとのなす角度αが時間とともに減少するように、補助部11を制御する。これにより、車両Vの中央が車線中央線Lcに近づくにしたがって角度αが小さくなり、車両Vが車線中央線Lcを追い越すことが抑制される。結果として、過度の回頭によって車両Vが反対側に向かうことも抑制でき、車両Vの挙動を安定させることができる。
【0040】
なお、上記「所定の時間」の値、「所定の速度」の値及び「所定の距離」の値はあくまでも例示であり、これらの値は車両Vの車幅や動力性能、車両Vが走行する車道として想定される車線の幅等を考慮して決定すればよい。
【0041】
[操舵補助第2段階の停止条件]
続いて、上述した操舵補助第2段階の停止条件について説明する。
【0042】
図2(a)に示した角度αが十分小さければ、車両Vは車線と平行に走行していると考えることができる。そこで操舵制御部102は、車両Vの進行方向と左右の車線区画線Lの中央を通る車線中央線Lcとのなす角度αが所定の角度α
T以下である場合、補助部11による車両Vの操舵補助を停止することを基本とする。
【0043】
ここで「所定の角度α
T」は、車両Vが車線内を走行し続けられるか否かを判定するために操舵制御部102が参照する車線維持判定用角度であり、例えば上述した6.5度よりもさらに小さな角度である5度である。なお、操舵制御部102は、車両Vの横速度に応じて「所定の角度α
T」を適応的に変更してもよい。具体的には、操舵制御部102は、車両Vの横速度が大きいほど、「所定の角度α
T」を小さくしてもよい。
【0044】
実施の形態に係る操舵補助装置1は、車線維持支援機能を実現するための操舵補助を提供する。したがって、車両Vが車線と平行に走行したとしても
図2(c)に示すように車両Vが車線からはみ出している場合には「車線維持」とはいえない。そこで操舵制御部102は、車両Vの操舵補助を停止するための条件として、車両Vが左右の車線区画線Lの間にあることも考慮する。
【0045】
以上をまとめると、実施の形態に係る操舵補助装置1は、車両Vが左右の車線区画線Lの間にあり、かつ車両Vの進行方向と左右の車線区画線Lの中央を通る車線中央線Lcとのなす角度αが所定の角度α
T以下である場合、補助部11による車両Vの操舵補助を停止する。これにより、車両Vが車線内を走行し続けられる場合には補助部11による操舵補助が停止するため、運転者の意図と反対の方向のトルクがステアリングにかかることがなくなる。結果として、運転者のドライビングフィールが低下することを抑制できる。
【0046】
ところで、角度αが所定の角度α
T以下であっても、車両Vの横速度が大きいときは、早い段階で車両Vが車線を外れたり、車線中央線Lcを通り越して反対側から車線を外れたりする場合があると考えられる。車両Vの横速度が大きいときとは、車両Vの速度が大きいときや、横風強風等によって車両Vが横方向に流されているようなときである。
【0047】
このように、車両Vの横速度が所定の速度V
T以上である場合は、車両Vが左右の車線区画線Lの間にあり、かつ車両Vの進行方向と左右の車線区画線Lの中央を通る車線中央線Lcとのなす角度αが所定の角度α
T以下であったとしても、操舵制御部102は補助部11による車両Vの操舵補助を継続する。これにより、車両Vが車線を逸脱することを抑制することができる。操舵制御部102が操舵補助を継続するか否かを判定するために横速度の基準値として参照する「所定の速度V
T」の一例は、上述した時速0.11キロメートルである。
【0048】
<操舵補助装置1が実行する操舵補助処理の処理フロー>
図3は、実施の形態に係る操舵補助装置1が実行する操舵補助の制御処理の流れを説明するためのフローチャートである。本フローチャートにおける処理は、例えば車両Vのエンジンが始動したときに開始する。
【0049】
補助部11が車両Vの操舵補助第2段階を実行中の場合(S10のYes)、操舵制御部102は、補助部11による車両Vの操舵補助第2段階を停止するか否かを判定するための補助停止判定処理を実行する(S12)。補助部11による車両Vの操舵補助第2段階を停止すべきと判定した場合(S14のYes)、操舵制御部102は、補助部11による車両Vの操舵補助第2段階を停止させる(S16)。補助部11による車両Vの操舵補助を停止すべきと判定しない場合(S14のNo)、操舵制御部102は補助部11による車両Vの操舵補助第2段階を停止せず、操舵補助第2段階を継続させる。
【0050】
補助部11が車両Vの操舵補助第2段階を実行中でない場合(S10のNo)、操舵制御部102は、補助部11による車両Vの操舵補助第2段階を開始するか否かを判定するための補助開始判定処理を実行する(S20)。補助部11による車両Vの操舵補助第2段階を開始すべきと判定した場合(S22のYes)、操舵制御部102は、補助部11による車両Vの操舵補助第2段階を開始させる(S24)。補助部11による車両Vの操舵補助第2段階を開始すべきと判定しない場合(S22のNo)、操舵制御部102は補助部11による車両Vの操舵補助第2段階を開始せず、操舵補助第2段階の停止状態を継続させる。
【0051】
車両Vのエンジンが停止される等、操舵補助の制御処理を終了すべき特段の事情がない場合(S18のNo)、ステップS10に戻って上記の処理を継続する。操舵補助の制御処理を終了する場合(S18のYes)、本フローチャートにおける処理は終了する。
【0052】
図4は、実施の形態に係る操舵制御部102による補助停止判定処理の流れを説明するためのフローチャートであり、
図3におけるステップS12の処理を詳細に説明するための図である。
【0053】
区画線検出部100は、撮像装置Iが撮像した画像を解析することにより、車両Vが走行する車線における左右の車線区画線Lを検出する(S120)。操舵制御部102は、区画線検出部100が検出した車線区画線Lに基づいて、左右の車線区画線Lの中央を通る車線中央線Lcと車両Vの中央を通る車両中央線Vcとがなす角度αを算出する(S122)。横速度測定部101は、撮像装置Iが撮像した画像において区画線検出部100が検出した車線区画線の撮像位置の移動速度に基づいて、車両の横速度Vhを算出する(S124)。
【0054】
車両Vが車線区画線L内を走行していない場合(S126のNo)、操舵制御部102は補助部11による車両Vの操舵補助第2段階を継続させる(S128)。車両Vが車線区画線L内を走行している場合であっても(S126のYes)、車線中央線Lcと車両中央線Vcとがなす角度αが所定の角度α
T以下でない場合(S130のNo)、操舵制御部102は補助部11による車両Vの操舵補助第2段階を継続させる(S128)。
【0055】
車両Vが車線区画線L内を走行している場合であり(S126のYes)、かつ車線中央線Lcと車両中央線Vcとがなす角度αが所定の角度α
T以下の場合であっても(S130のYes)、車両Vの横速度Vhが所定の速度V
T以下でない場合(S132のNo)、操舵制御部102は補助部11による車両Vの操舵補助第2段階を継続させる(S128)。
【0056】
車両Vが車線区画線L内を走行している場合であり(S126のYes)、かつ車線中央線Lcと車両中央線Vcとがなす角度αが所定の角度α
T以下の場合であり(S130のYes)、かつ車両Vの横速度Vhが所定の速度V
T以下の場合(S132のYes)、操舵制御部102は補助部11による車両Vの操舵補助第2段階を停止させる(S134)。
【0057】
図5は、実施の形態に係る操舵制御部102による補助開始判定処理の流れを説明するためのフローチャートであり、
図3におけるステップS20の処理を詳細に説明するための図である。
【0058】
区画線検出部100は、撮像装置Iが撮像した画像を解析することにより、車両Vが走行する車線における左右の車線区画線Lを検出する(S200)。区画線検出部100は、区画線検出部100が検出した車線区画線Lに基づいて、左右の車線区画線Lの中央を通る車線中央線Lcと車両Vの中央を通る車両中央線Vcとの距離Dを算出する(S202)。横速度測定部101は、撮像装置Iが撮像した画像において区画線検出部100が検出した車線区画線の撮像位置の移動速度に基づいて、車両の横速度Vhを算出する(S204)。
【0059】
左右の車線区画線Lの中央を通る車線中央線Lcと車両Vの中央を通る車両中央線Vcとの距離Dが所定の距離D
Tより大きい場合(S206のNo)、操舵制御部102は補助部11による車両Vの操舵補助第2段階を停止した状態を継続させる(S208)。左右の車線区画線Lの中央を通る車線中央線Lcと車両Vの中央を通る車両中央線Vcとの距離Dが所定の距離D
T以下であっても(S206のYes)、車両Vの横速度Vhが所定の速度V
T以下の場合(S210のYes)、操舵制御部102は補助部11による車両Vの操舵補助第2段階を停止した状態を継続させる(S208)。
【0060】
左右の車線区画線Lの中央を通る車線中央線Lcと車両Vの中央を通る車両中央線Vcとの距離Dが所定の距離D
T以下となり(S206のYes)、かつ車両Vの横速度Vhが所定の速度V
Tよりも速い場合(S210のNo)、操舵制御部102は補助部11による車両Vの操舵補助第2段階を開始させる(S212)。
【0061】
以上説明したように、実施の形態に係る操舵補助装置1によれば、車線維持支援による車両Vの安全性向上と運転者のドライビングフィールの低下抑制とをバランスさせることができる。車線逸脱に対し抑制するよう働く操舵アシストの影響により、過度の回頭によって車両Vが反対側に向かう事も抑制できる。結果として車両Vの挙動を安定させることができる。
【0062】
操舵補助装置1は、車両Vが左右の車線区画線Lの間にあり、かつ車両Vの進行方向と左右の車線区画線Lの中央を通る線とのなす角が所定の角度以下である場合に車線維持支援を停止する。このため、車両Vが車線内を走行していれば車線維持支援は停止することになるので、運転者の操舵に反するような操舵補助のためのトルクがかからない。結果として、運転者のドライビングフィールが低下することを抑制できる。
【0063】
一方、車両Vが左右の車線区画線Lの間にあり、かつ車両Vの進行方向と左右の車線区画線Lの中央を通る線とのなす角が所定の角度以下であっても、車両Vの横速度が大きい場合には、車線維持支援は停止されない。これにより、車両Vが車線を逸脱する前に車線維持支援が働くため、車両Vの走行の安全性を向上させることができる。
【0064】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0065】
なお本願発明は、以下の各項目によって特定されてもよい。
[項目1]
車両が走行する車線における左右の車線区画線を検出する区画線検出部と、
前記車線に対して垂直な方向における前記車両の速度成分である横速度を算出する横速度測定部と、
前記車両が前記左右の車線区画線と平行に走行するように、前記車両の操舵補助を行う補助部と、
前記横速度が所定の速度以上となり、かつ前記車両の中央が前記左右の車線区画線の中央から所定の距離以上離れる場合、前記補助部による前記車両の操舵補助を開始させる操舵制御部と、
を備える操舵補助装置。
[項目2]
前記車両の進行方向前方の画像を撮像する撮像部をさらに備え、
前記区画線検出部は、前記撮像部が撮像した画像から前記左右の車線区画線を検出し、
前記横速度測定部は、前記画像における前記車線区画線の撮像位置の移動速度に基づいて前記横速度を算出する、
項目1に記載の操舵補助装置。
[項目3]
プロセッサが実行する操舵補助方法であって、
車両が走行する車線における左右の車線区画線を検出するステップと、
前記車線に対して垂直な方向における前記車両の速度成分である横速度を算出するステップと、
前記車両の中央が前記左右の車線区画線の中央から所定の距離以上離れ、かつ前記横速度が所定の速度以上となる場合、前記車両が前記左右の車線区画線と平行に走行するように、前記車両の操舵補助を開始するステップと、
を含む操舵補助方法。