(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記温度算出手段が、前記受信センサで検出したうなりを生じているテラヘルツ波のうなりの最大振幅と最小振幅と比に基づいて、前記計測領域の温度を算出するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の立体装置の温度計測装置。
前記送信ユニットが、うなりを生じているテラヘルツ波の基本周波数を時間的に変化させて、同一の前記計測領域に、基本周波数の異なるテラヘルツ波のうなりを順次発生させて、
前記温度算出手段が、複数の基本周波数の周辺でうなりを生じているテラヘルツ波のそれぞれに対して温度を算出し、これらの温度から同一の前記計測領域の温度を算出するように構成されている請求項1または2に記載の立体装置の温度計測装置。
前記送信ユニットが、前記計測領域の温度計測用に、前記基本周波数に対して相互にうなりを生じる程度に周波数が異なる2つの周波数のテラヘルツ波の組を、同時に複数組、それぞれ異なる前記計測領域に送信して、
前記温度算出手段が、複数の前記基本周波数の周辺でうなりを生じているテラヘルツ波のそれぞれに対して温度を算出し、これらの温度からそれぞれの前記計測領域の温度を算出するように構成されている請求項1または2に記載の立体装置の温度計測装置。
前記受信センサを2つの前記送信アンテナから発信されるテラヘルツ波の送信方向から等距離に位置するように構成している請求項1〜4のいずれか1項に記載の立体装置の温度計測装置。
前記送信ユニットにおいては前記送信アンテナの位置及び送信方向を変更可能に構成していると共に、前記受信ユニットにおいては前記受信センサの位置を移動可能に構成している請求項1〜5のいずれか1項に記載された立体装置の温度計測装置。
前記送信ユニットにおいて、2つの前記送信アンテナを回転軸から離れた位置に配置して、前記送信ユニットを前記回転軸回りに回転可能に構成し、前記送信ユニットの回転により、前記計測領域を移動させるように構成されている請求項1〜6のいずれか1項に記載された立体装置の温度計測装置。
前記受信ユニットにおいて、副受信センサが、前記送信アンテナのテラヘルツ波の各送信方向に配置され、前記制御装置が、前記副受信センサで検出したテラヘルツ波の強度に基づいて、前記送信アンテナの送信方向を補正する送信方向補正手段を備えて構成されている請求項1〜7のいずれか1項に記載の立体装置の温度計測装置。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る実施の形態の立体装置の温度計測装置、燃焼機関の温度計測装置、燃焼機関及び立体装置の温度計測方法について図面を参照しながら説明する。なお、本実施形態では、燃焼機関の例として内燃機関を、立体装置の例として、内燃機関の気筒(シリンダ)を採用して説明しているが、本発明はこれに限定されず、例えば、ガスタービン等を燃焼機関とし、その燃焼室を立体装置としてもよく、また、立体装置も燃焼機関に含まれるものでなくてもよい。さらに、計測領域についても説明し易くするために、第1〜第3の3つの計測領域で説明しているが、実際にはより多い計測領域が連続的又は離間しタ状態となっている。
【0014】
なお、ここでは温度計測に絞っているが、テラヘルツ波の特定の周波数と特定の分子とが密接な関係があることが知られているので、基本周波数を各種の分子に対応させて選択することにより、測定対象のガスの温度のみでなく、ガス中の各種の分子の濃度も計測できる可能性がある。
【0015】
図1〜
図16に示すように、本発明に係る実施の形態の立体装置の温度計測装置2、2A、2B、2Cは、エンジン(内燃機関:燃焼機関)Eの気筒1aのピストン1bの頂部より上の内部空間である燃焼室1cの温度分布を計測する燃焼機関の温度計測装置として説明する。つまり、この実施の形態の立体装置の温度計測装置2は、本発明に係る実施の形態の燃焼機関の温度計測装置でもあり、このエンジンEは、本発明に係る実施の形態の燃焼機関でもある。
【0016】
図1に示すように、この立体装置の温度計測装置(以下、温度計測装置という)2は、エンジンEのガス成分Gを内包した気筒(立体装置)1aの燃焼室(内部空間)1cの温度Tmを計測する温度計測装置であり、この温度計測装置2において、気筒1aを間に挟んで、送信ユニット10と受信ユニット20が互いに対向している状態で気筒1aの壁面に設けられている。また。この温度計測装置2は、送信ユニット10と受信ユニット20と演算装置(温度算出手段)30を備えた制御装置40を有して構成されている。
【0017】
このエンジンEでは、制御装置40と送信ユニット10の間、受信ユニット20の受信センサ21の間、制御装置40と燃料噴射装置3の間、及び、制御装置40と空気制御装置50の間を配線25、26、27、28で結び、受信センサ21からの信号を取得して制御装置40で演算して得られた温度分布から、燃料噴射装置3の制御をするための信号を制御する。例えば、気筒1a内の燃焼室(内部空間)の局所的な温度Tmが予め設定された閾値を超えた時点で、燃料噴射装置3を停止する信号を出して、エンジンEを保護する等である。
【0018】
また、
図2〜
図4に示すように、基本周波数Fsを0.01THz〜10THzの範囲内にある周波数としたときに、送信ユニット10は、2つの送信アンテナ11a、11bから内部空間1cに向けて、この基本周波数Fsに対して相互にうなりを生じる程度に周波数が異なる2つの周波数Fa、Fbのテラヘルツ波Sa、Sbを同時に送信して、燃焼室1cの計測領域Rmでテラヘルツ波Smにうなりを発生させる。
【0019】
この2つテラヘルツ波Sa、Sbにおける周波数Fa、Fbの差分ΔFは、基本周波数Fsの1/10〜1/1000程度で、好ましくは、1/50〜1/500程度で、実験によって、計測し易いうなりが生じる周波数範囲を求めておき、予め設定しておく。
【0020】
この場合に、どちらか一方のテラヘルツ波Sa(またはSb)を基本周波数Fsとして、他方のテラヘルツ波Sb(またはSa)を基本周波数Fsから差分ΔFの分だけずらしてもよく、それぞれのテラヘルツ波Sa、Sbaを基本周波数Fsから差分ΔFの半分を増減してもよい。また、この周波数の変化は、送信装置の発信回路のRLCの値を変化させるなどの周知の方法を用いることで容易に行うことができる。
【0021】
また、受信ニット20は、計測領域Rmから伝搬してくるうなりを生じているテラヘルツ波Smを検出する受信センサ21と受信センサ21からの信号を処理する信号処理装置22を備えている。この受信センサ21は、2つの送信アンテナ11a、11bから発信されるテラヘルツ波Sa、Sbの送信方向から等距離に位置するように構成することが好ましい。
【0022】
また、制御装置40は、温度計測装置2を制御する制御装置であり、演算装置30は、計測領域Rmから伝搬してくるうなりを生じているテラヘルツ波Smから計測領域Rmの温度Tを算出する。
【0023】
この演算装置(温度算出手段)30では、受信センサ21で検出した、
図5に示すような、うなりを生じているテラヘルツ波Smのうなりの最大振幅Hmaxと最小振幅Hminと比γ(=Hmax/Hmin)に基づいて、
図6に例示するような、予め設定されたマップデータなどを参照して、計測領域Rmの温度Tmを算出する。この最大振幅Hmaxと最小振幅Hminは、テラヘルツ波Smのうなりを示す包絡線の最大振幅と最小振幅として求めることができる。
【0024】
この最大振幅Hmaxと最小振幅Hminとの比γを用いて温度を算出することで、多少、2つテラヘルツ波Sa、Sbの周波数Fa、Fbや送信波の大きさ(強度)が乱れて揺らいでも、計測信号の細かい基本周波数Fsの近傍の波の強度をみているのではなく、計測信号の包絡線となるうなりの波を見ているので精度の高い計測が可能となる。言い換えれば、受信センサ21の検出精度においても、頑強さをもたらすことができる。
【0025】
つまり、この温度計測装置2は、燃焼室1cに指向性のあるテラヘルツ波Sa、Sbを発信する2つの第1及び第2の送信アンテナ11a、11bと、そのテラヘルツ波Sa、Sbの交差位置Pmからのうなりを生じているテラヘルツ波Smを受信する受信センサ21と、受信したテラヘルツ波Smから燃焼室1cの温度を検出する装置である。
【0026】
そして、本発明の実施の形態の立体装置の温度計測方法は、ガス成分を内包した気筒(立体装置)1aの燃焼室(内部空間)1cの温度Tmを計測する立体装置の温度計測方法であり、この立体装置の温度計測方法において、複数の送信アンテナ11a、11bから燃焼室1cに向けて、0.01THz〜10THzの範囲内にある基本周波数Fsに対して相互にうなりを生じる程度に周波数が異なる2つの周波数Fa、Fbのテラヘルツ波Sa、Sbを同時に送信して、燃焼室1cの計測領域Rmでテラヘルツ波にうなりを発生させて、計測領域Rmから伝搬してくるうなりを生じているテラヘルツ波Smを検出して、このうなりを生じているテラヘルツ波Smから計測領域Rmの温度Tmを算出する方法である。
【0027】
さらに、送信ユニット10が、うなりを生じているテラヘルツ波Smの基本周波数Fsを時間的に変化させて、同一の計測領域Rmに、基本周波数Fsの異なるテラヘルツ波のうなりを順次発生させて、演算装置(温度算出手段)30が、複数の基本周波数Fs1、Fs2・・の周辺でうなりを生じているテラヘルツ波Sm1、Sm2・・・のそれぞれに対して温度Tm1、Tm2・・を算出し、これらの温度Tm1、Tm2・・から同一の計測領域Rmの温度Tmを算出すると、計測領域Rmの温度Tmの計測精度を向上できるので、より好ましい。なお、温度Tm1、Tm2・・から温度Tmを算出する方法としては、平均や重み付き平均を取るなど、周知のデータ処理方法を用いることができる。
【0028】
なお、局所的な計測領域Rmの温度測定ではなく、テラヘルツ波Sa、Sbの通過領域全体Rtcの温度を測定する場合には、計測領域Rmとなる通過領域の体積を狭めて温度の計測精度を高めるために、送信アンテナ11a、11b同士を十分に接近させて配置しておくことが好ましい。また、送信ユニット10において、1つの送信アンテナ11aで2つの周波数のテラヘルツ波Sa、Sbを送信することができる場合は、この1つの送信アンテナ11aで2つの周波数のテラヘルツ波Sa、Sbを送信する。
【0029】
この場合には、計測領域Rmを通過してうねりを発生しているテラヘルツ波Smを受信センサ21で受信して、このテラヘルツ波Smから通過領域全体の温度Tmを算出する。この通過領域全体の温度を測定する場合では、通過領域の通過方向の各位置に関する温度分布を得ることはできないが、計測時間が短時間となるので、全体的な温度計測となるが、変化の激しい温度変化をその変化に追従しながら計測できるようになる。
【0030】
そして、送信ユニット10においては、送信アンテナ11a、11bの位置及び送信方向を変更可能に構成していると共に、受信ユニット20においては受信センサ21の位置を移動可能に構成している。さらに、この送信アンテナ11a、11bからの送信方向や送信位置を回動又は移動することで、燃焼室1cの内部における受信センサ21の受信方向の直線に対して計測領域Rmが移動するように構成する。
【0031】
次に、この計測領域Rmの位置移動について説明する。この計測領域Rmの位置移動のために、送信ユニット10は、送信アンテナ11a、11bの送信方向の変更、又は、送信アンテナ11a、11b同士の離間距離Lを変更することにより、気筒(立体装置:測定対象)1aにおける送信方向の交差位置PMを変更する交差位置移動機構を備えている
この
図2〜
図4に示す交差位置移動機構の第1の例の構成では、送信アンテナ11a、11bから同時送信される2つのテラヘルツ波Sa、Sb同士の交差角度β1、β2、β3を変更することにより、燃焼室1cにおける交差位置Pmを変更する搭載ステージ(交差位置移動機構)12a、12bを備えて構成される。この場合は、送信アンテナ11a、11b同士の離間距離Lは固定とされる。
【0032】
そして、
図2に示すように、2つテラヘルツ波Sa、Sbの送信方向の交差角度β1が小さい場合には、言い換えれば、送信アンテナ11a、11bがテラヘルツ波Sa、Sbを送信する方向の角度α1(=β1/2)が小さい場合には、交差位置Pmは送信アンテナ11a、11bから遠くなるので、この交差位置Pmのある第1の計測領域Raの温度を計測できる。
【0033】
また、
図3に示すように、交差角度β2が中程度の場合には、言い換えれば、送信する方向の角度α2(=β2/2)が中程度の場合には、交差位置Pmは送信アンテナ11a、11bに近づき、この交差位置Pmのある第2の計測領域Rbの温度を計測できる。
【0034】
さらに、
図4に示すように、交差角度β3が大きい場合には、言い換えれば、送信する方向の角度α3(=β3/2)が大きい場合には、交差位置Pmは送信アンテナ11a、11bにより近くなるので、この交差位置Pmのある第3の計測領域Rcの温度を計測できる。
【0035】
この
図2〜
図4の構成は、搭載ステージ12a、12bが、2つの送信アンテナ11a、11bの送信方向の角度α1、α2、α3を同じ大きさで逆方向に変化させることで、気筒1aにおける送信方向の交差位置Pmを直線状に(直線の上を)移動させる機構である。これにより、計測領域Rmを両方の送信アンテナ11a、11bから等距離になるようにしてテラヘルツ波Sa、Sbでうねりを発生し易くすると共に、この直線上に受信センサ21を固定して配置することで、固定状態の受信センサ21で計測領域Rmからのうねりを発生しているテラヘルツ波Smを効率よく受信するように構成している。
【0036】
また、この搭載ステージ12a、12bで、送信アンテナ11a、11bのテラヘルツ波Sa、Sbの送信方向の角度α1、α2、α3を同じ大きさで逆方向に変化させる構成としては、
図7に示すように、両方の搭載ステージ12a、12bを搭載ステージ12a、12bのギア13a、13bと駆動軸のギア14と中間ギア14a〜14dを噛み合わせて同時に回動する構成を用いることができる。また、
図8に示すように、両方の搭載ステージ12a、12bに設けたプーリー15a、15bと駆動軸のプーリー16の間にベルト17を架け渡して、駆動軸のプーリー16を回動することに、搭載ステージ12a、12bを同期させて回動させる構成を用いることもできる。
【0037】
なお、特に、受信センサ21が指向性を有していない場合や、指向性を有していても、変化する計測領域Ra、Rb、Rcに対して受信方向を追従できるように受信センサ21を構成した場合には、例えば、一方の送信アンテナ11aのテラヘルツ波Saの送信方向の角度を固定して、他方の送信アンテナ11bのテラヘルツ波Sbの送信方向の角度を変更することで、交差位置Pmをテラヘルツ波Saの送信方向に沿って移動させることもできる。
【0038】
また、
図9〜
図12に示す交差位置移動機構の第2の例の構成では、2つの送信アンテナ11a、11b同士の離間距離Lを変更することにより、気筒1aにおける送信方向の交差位置Pmを直線状に交差位置PMに移動させる搭載ステージ(交差位置移動機構)12a、12bを備えて構成される。
【0039】
図9〜
図11に示すように、この搭載ステージ12a、12bは、テラヘルツ波Sa、Sbを送信する送信アンテナ11a、11b同士の離間距離L(La、Lb、Lc)を変更することにより、燃焼室1cにおける交差位置Pmを移動するように構成される。この例の場合は、テラヘルツ波Sa、Sb同士の交差角度βは、言い換えれば、送信方向の角度α(=β/2)は固定とされる。
【0040】
図9に示すように、送信アンテナ11a、11b同士の離間距離Laが大きい場合には、交差位置Pmは送信アンテナ11a、11bから遠くなるので、この交差位置Pmのある第1の計測領域Raの温度を計測できる。また、
図10に示すように、送信アンテナ11a、11b同士の離間距離Lbが中程度の場合には、交差位置Pmは送信アンテナ11a、11bに近づき、この交差位置Pmのある第2の計測領域Rbの温度を計測できる。そして、
図11に示すように、送信アンテナ11a、11b同士の離間距離Lcが小さい場合には、交差位置Pmは送信アンテナ11a、11bにより近くなるので、この交差位置Pmのある第3の計測領域Rcの温度を計測できる。
【0041】
また、この搭載ステージ12a、12bで、送信アンテナ11a、11b同士の離間距離Lを同じ大きさで逆方向に変化させる構成としては、
図12に示すように、両方の搭載ステージ12a、12bをレール18に搭載し同時に同期させて移動する構成を用いることができる。
【0042】
または、
図13に示すように、送信ユニット10において、案内溝31を設けて、送信アンテナ11a、11bを載置した変形台32を案内溝31に沿って移動可能に構成すると共に、送信ユニット10の外縁側に伸縮機構33を送信アンテナ11a、11bに接続して設けて構成する。
【0043】
この案内溝31は、変形台32を直線方向に移動可能にする構成であればよく、凹部以外にも、レールや条などでも良い。これらの移動方向拘束手段のいずれかにより1組の送信アンテナ11a、11bを、変形しないように移動させるために、中心軸CAに対して対称の位置になるように直線Lt上を移動するように構成する。
【0044】
また、変形台32は自身を傾斜させて、送信アンテナ11a、11bの送信方向を変更できればよく、例えば、ピエゾ素子、ばね、あるいは、電気素子(電荷の反発による変形)を利用した周知の機構で、容易に構成できる。これらの傾斜手段により、2つの送信アンテナ11a、11bの送信方向の交わる領域、即ち、計測領域Rmを中心軸CAから離間した位置にすることができるように構成する。
【0045】
また、伸縮機構33は自身を伸縮させて、送信アンテナ11a、11bの位置を移動できればよく、例えば、ピエゾ素子、ばね、ねじ、歯車、クランク機構等を利用した周知の機構で、容易に構成できる。
図13の構成では、伸縮機構33が伸びると送信アンテナ11a、11bは中心軸CA側に移動するように構成されている。
【0046】
なお、交差位置移動機構としては、搭載ステージ12a、12bが2つの送信アンテナ11a、11bから送信されるテラヘルツ波Sa、Sb同士の交差角度β1、β2、β3を変更する機構と、送信アンテナ11a、11b同士の離間距離Lを変更する機構の両方を備えて構成することもできる。
【0047】
そして、上記の温度計測測定装置2、2Aにおいては、測定対象である燃焼室1cの全体を広範囲で測定することができるように、搭載ステージ12a、12b、又は、搭載ステージ23a、23bを、燃焼室c1の周囲を旋回、又は、燃焼室1cに沿って上下移動するように構成することが好ましい。
【0048】
さらに、この構成の場合には、温度計測装置2、2Aでは備えられた送信アンテナ11a、11bと受信センサ21との相対的な位置を維持したまま、燃焼室1cの周囲を旋回、又は、燃焼室1cに沿って上下移動するように構成することが好ましい。
【0049】
そして、本発明に係る実施の形態の燃焼機関の温度計測装置は、上記の立体装置の温度計測装置2、2A、2B、2Cを用いて、エンジン(内燃機関:燃焼機関)Eの気筒1a内の温度Tmを計測するように構成されている。
【0050】
また、
図14に示すように、送信ユニット10において、2つの送信アンテナ11a11bを回転軸10bから離れた位置に配置して、送信ユニット10を回転軸10b回りに回転可能に構成し、送信ユニット10の回転により、計測領域Rmを移動させるように構成してもよい。
【0051】
この
図14に示す温度計測装置2Bの構成では、2つの送信アンテナ11a、11bを第1モータ(回転機械)10aの第1回転軸10bから等距離に配置して、送信ユニット10を第1回転軸10b回りに回転可能に構成する。それと共に、受信ユニット20において、受信センサ21を第2モータ(回転機械)20aの第2回転軸20bから離れて、かつ、うなりを生じているテラヘルツ波Smを受信できる、2つの送信アンテナ11a、11bの中央に対向する位置に配置する。そして、受信ユニット20を第2回転軸20b回りに、送信ユニット10の回転に同期させて回転するように構成する。なお、この第2回転軸20bと第1回転軸10bとは中心軸CAと同軸とする。
【0052】
また、送信ユニット10において、基本周波数Fsに対して相互にうなりを生じる程度に周波数が異なる2つの周波数Fa、Fbのテラヘルツ波Sa、Sbを同時に送信して、燃焼室(内部空間)1cの計測領域Rm1、Rm2でテラヘルツ波にうなりを発生させる送信アンテナ11a、11bの組を複数組備えているように構成することもできる。
【0053】
更に、
図14に示すように、受信ユニット20において、送信アンテナ11a、11bのテラヘルツ波Sa、Sbを受信できるように、送信アンテナ11a、11bの対向位置に、副受信センサ21sをそれぞれ設けて、この副受信センサ21sが、送信アンテナ11a、11bのテラヘルツ波Sa、Sbの各送信方向に配置され、制御装置40が、副受信センサ21sで検出したテラヘルツ波Sa、Sbの強度に基づいて、送信アンテナ11a、11bの送信方向を補正する送信方向補正手段を備えて構成されていると、より精度よく、計測領域Rmの位置を設定できるようになる。なお、この副受信センサ21sにより送信アンテナ11a、11bの送信位置及び送信方向を確認するときには、テラヘルツ波Sa、Sbが相互に干渉しないように、一方のテラヘルツ波Sa(またはSb)を送信しているときには、他方のテラヘルツ波Sb(またはSb)は送信を停止する。
【0054】
更に、送信ユニット10においては送信アンテナ11a、11bの位置及び送信方向を変更可能に構成していると共に、受信ユニット20においては副受信センサ21sの位置を移動可能に構成していると、より広い範囲で計測領域Rmの位置をより精度よく設定できるようになる。
【0055】
この2つの送信アンテナ11a、11bの組を複数組備えている構成の例としては、
図15に示すような温度計測装置2Cの構成があり、この構成では、2つの組の送信アンテナ11a,11bを第1モータ(回転機械)10aの第1回転軸10bから等距離に配置して、送信ユニット10を第1回転軸10b回りに回転可能に構成する。
【0056】
それと共に、受信ユニット20において、2つの受信センサ21で第2モータ(回転機械)20aの第2回転軸20bから離れて、かつ、うなりを生じているテラヘルツ波Sm1、Sm2を受信できる、2つの送信アンテナ11a、11bの中央に対向する位置にそれぞれ配置する。そして、受信ユニット20を第2回転軸20b回りに、送信ユニット10の回転に同期させて回転するように構成する。なお、この第2回転軸20bと第1回転軸10bとは中心軸CAと同軸とする。
【0057】
この
図15に示す温度計測装置2Cでは、送信ユニット10が、計測領域Rm1、Rm2の温度計測用に、基本周波数Fs1、Fs2に対して相互にうなりを生じる程度に周波数が異なる2つのテラヘルツ波Sa1、Sb1(Sa2,Sb2)の組を、同時に複数組、それぞれ異なる計測領域Rm1、Rm2に送信して、演算装置(温度算出手段)30が、複数の基本周波数Fs1、Fs2の周辺でうなりを生じているテラヘルツ波Sm1、Sm2のそれぞれに対して温度を算出し、これらの温度からそれぞれの計測領域Rmの温度を算出する。
【0058】
この場合に、基本周波数Fs1、Fs2は、互いの計測領域Rm1、Rm2が近接している場合には、2つのうねりを生じているテラヘルツ波Sm1、Sm2の干渉を避けて、計測上支障が生じないように異なる周波数Fs1、Fs2に設定して同時送信したり、基本周波数Fs1、Fs2を同じ基本周波数Fsにした場合でも、時間をずらして順次送信したりすることが好ましい。ただし、互いの計測領域Rm1、Rm2が近接しておらず、2つのうねりを生じているテラヘルツ波Sm1、Sm2が互いに干渉するおそれがない場合は、基本周波数Fs1、Fs2を同一にして同時送信してもよい。
【0059】
この
図14及び
図15では回転運動としているが、直線往復運動にしてもよい。なお、回転運動にして、円状に送信アンテナ11a、11bと受信センサ21の組を幾つも配置することで、スペースの都合が許す限り、送信アンテナ数と受信センサ数を増加させることができる。
【0060】
そして、送信アンテナ11a、11bと受信センサ21の組のそれぞれにおいて、特定の位置(例えば、送信ユニット10の上死点)まで回転したときに、テラヘルツ波Sa、Sbを同時に組ごとに順繰りに送信する。
【0061】
この
図14及び
図15の構成では、この送信ユニット10と受信ユニット20の同期回転により、2つの周波数Fa、Fbのテラヘルツ波Sa、Sbの基本周波数Fsを異ならせて送信する場合には、この組を順繰りに同じ位置に移動させて配置、気筒1aの燃焼室1cの計測領域Rmに、異なる基本周波数Fsのテラヘルツ波Sa、Sbを順繰りに発生させることができる。これにより、異なる基本周波数Fsに対して相互にうなりを生じる程度に周波数Fa、Fbが異なる2つの周波数のテラヘルツ波Sa、Sbが通過する計測領域Rmを気筒1a内の同じ領域に設定することが容易にできるようになる。
【0062】
この送信ユニット10と受信ユニット20を回転させる方法を用いると、気筒1aの内部空間1cの計測領域Rmにおける計測を高速化することが可能となる。つまり、回転速度を上げることと、それぞれの送信アンテナ11a、11bと受信センサ21の組の発信・受信を計測領域Rmごとに制御することで、この計測領域Rmでの温度計測を高速化することができる。
【0063】
なお、送信ユニット10と受信ユニット20を固定した場合には、それぞれの送信アンテナ11a11bと受信センサ21の組の発信・受信を高速化する必要があるが、回転させることで、送信アンテナ11a、11bと受信センサ21の組を待機させることができる。
【0064】
そして、本発明に係る実施の形態の内燃機関Eは、
図16に示すように、上記の温度計測装置2、2Aを備えると共、この温度計測装置2、2Aからの計測結果を入力して、エンジン(内燃機関:燃焼機関)Eの気筒1a内の燃料噴射を制御する制御装置40を備えて構成される。つまり、内燃機関Eの燃焼室1cに燃料Fを噴射する燃料噴射装置3を温度計測装置2、2Aで得た温度を基に制御装置40で制御する。この内燃機関Eによれば、燃焼室1cにおける局所的な温度を検出して、この温度に基づいて燃料噴射の噴射時期(噴射開始時期、噴射終了時期)、噴射位置、噴射量、噴射圧力、エンジン空気過給圧力などの調整制御を行うことで、内燃機関Eの燃料噴射の精密な制御が可能となる。
【0065】
また、燃焼室1cの内部の最大過熱箇所、過熱時期を追跡することが可能となるので、この追跡結果を制御装置40内で記憶するとともに、制御装置40でこの追跡結果を利用して、次の燃料噴射の際に、局所的な過熱状態が発生しないように燃料噴射を調整することが可能となる。
【0066】
つまり、上記の温度計測装置2、2A、2B、2Cにより、物理的な状態、化学的状態を局所別に検出することができる。例えば、温度を測定した場合には、燃焼室1cの内部における過熱箇所と過熱時期の特定が可能となる。そして、この過熱箇所、加熱時期が特定可能であると、燃料Fの噴射時期を前後すること等で過熱状態の発生を回避することができるようになる。言い換えれば、この過熱箇所の特定により、過熱箇所を判断して、燃料噴射の制御を変更することで、局所的な過熱状態が発生するのを回避することができる。
【0067】
また、これらの温度計測装置2、2A、2B、2Cで、内燃機関Eの燃焼室1cの内部のみならず、内燃機関Eの排気マニホールド(図示しない)の内部、又は、内燃機関Eの排気管(図示しない)の内部の状態を示す温度やガス成分の濃度等の物理量を測定するように構成すると、温度が高くなる内燃機関Eの燃焼室1cの内部、排気マニホールドの内部、排気管の内部の状態などの内燃機関Eの状態を精度良く測定できるようになる。