(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
一般的に、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイなどのフラットパネルディスプレイ(FPD)用のガラス基板を製造する際には、製造過程でガラス基板のガラス面(具体的には、ガラス面における電子機能素子等が形成される有効面)に付着した微小なガラス片や塵芥等の異物を取り除くための洗浄処理が行われる。これにより、ガラス基板のガラス面が清浄化され、後工程等においてガラス基板のガラス面上に電子機能素子等を精度良く形成することが可能となる。
【0003】
例えば、特許文献1には、ウエハ(例えば、ガラス基板)の表面及び裏面を洗浄するための基板処理装置が開示されている。
【0004】
特許文献1に開示される基板処理装置は、多数のウエハを純液中に浸漬する液中ローダと、裏面洗浄装置と、表面洗浄装置と、搬送装置とを備えている。裏面洗浄装置は、回転軸の上端に固定される円形ブラシを有し、液中ローダから取り出されたウエハに処理液を供給することにより、円形ブラシをウエハの裏面に当接させるとともに回転させて、ウエハの裏面を下方からブラシ洗浄する。表面洗浄装置は、裏面洗浄装置による洗浄後のウエハに化学処理のための薬液を供給することにより、ウエハの表面を上方からブラシ洗浄する。
【0005】
また、従来から、上記円形ブラシのような洗浄部材を複数有し、該洗浄部材を回転させながら板ガラスのガラス面に押し当てて、板ガラスのガラス面に付着した異物を取り除く板ガラス洗浄装置が用いられている。このような板ガラス洗浄装置では、複数の洗浄部材を回転させるために洗浄部材の各回転軸にギア(例えば、平歯車)を設けて、隣接するギア同士を噛み合わせて、そのうちの一つの駆動用のギアを駆動手段により回転させることで複数のギアを同時に回転させて複数の洗浄部材を回転させることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述の板ガラス洗浄装置が有する複数のギアを噛み合わせた機構では、隣接するギア同士が同一の材質で構成された場合、摩擦抵抗が大きくなるため、ギア同士の磨耗により発塵し、板ガラスのガラス面を汚染する原因となる。そのため、このような板ガラス洗浄装置においては、ギア同士の磨耗による発塵を抑制する構成が望まれていた。
【0008】
本発明は、以上に示した現状の問題点を鑑みてなされたものであり、ギア同士の磨耗による発塵の抑制が図られた板ガラス洗浄装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0010】
即ち、本発明に係る板ガラス洗浄装置は、板ガラスのガラス面を洗浄する板ガラス洗浄装置であって、複数の洗浄部材と、前記複数の洗浄部材の各々を支持する回転軸と、前記回転軸に設けられるギアと、前記回転軸の少なくとも1つを駆動する回転駆動手段と、を備え、前記ギアは、隣接するギア同士で互いに噛合し、かつ材質が異なることを特徴とする。
【0011】
このような板ガラス洗浄装置によれば、隣接するギア同士で材質が異なることにより、ギアを同一の材質で構成した場合よりも摩擦抵抗が小さくなり、ギア同士の磨耗による発塵を抑制することができる。
【0012】
また、本発明に係る板ガラス洗浄装置において、前記隣接するギア同士は、一方のギアが金属製であり、他方のギアが樹脂製であることが好ましい。
【0013】
このような板ガラス洗浄装置によれば、金属製のギア同士を噛み合わせて構成した場合に発生する金属粉が発生し難くなる。
これにより、金属粉による板ガラスのガラス面への汚染を防止することができる。
さらに、金属製のギアを使用しているため、樹脂製のギア同士を噛み合わせて構成した場合より、ギアの耐久性が向上し、ギアの交換頻度が抑えられ、装置のメンテナンスに手間がかからない。
【0014】
また、本発明に係る板ガラス洗浄装置において、前記金属製のギアと前記樹脂製のギアが交互に噛み合うように複数配置されることが好ましい。
【0015】
このような板ガラス洗浄装置によれば、複数のギアの少なくとも一つを回転駆動手段により駆動することで、複数のギアを駆動することができるため、複数の回転駆動手段を必要とせず、メンテナンスが容易となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、隣接するギア同士で材質が異なることにより、ギアを同一の材質で構成した場合よりも摩擦抵抗が小さくなり、ギア同士の磨耗による発塵を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明の一実施形態に係る板ガラス洗浄装置10について、
図1乃至
図3を用いて説明する。
なお、以下の説明に関しては便宜上、
図1、
図3に示す上下方向を、それぞれ板ガラス洗浄装置10の上下方向と規定して記述する。
また、
図1、
図2においては、矢印Fの方向を板ガラスGの搬送方向と規定して記述する。
また、
図1、
図2においては、搬送方向に直交する方向を幅方向と規定して記述する。
【0019】
図1に示すように、本実施形態に係る板ガラス洗浄装置10(以下、単に洗浄装置10という)は、回転駆動手段であるモータMにより洗浄部材11を回転駆動して板ガラスGのガラス面の両面(表面及び裏面)を洗浄する装置である。
洗浄装置10は、例えば、板ガラスGの製造装置における搬送装置の搬送経路上に配置され、搬送装置により上流側から下流側(
図2においては、図中左側から右側)に向けて水平状態で搬送される矩形状の板ガラスGのガラス面の両面(表面及び裏面)を洗浄するための装置である。
【0020】
なお、洗浄装置10の上流側には、板ガラスGに対して切断加工や端面加工等の種々の加工を施す加工装置等(図示せず)が設けられている。
【0021】
洗浄装置10は、上流側に設けられた各種加工工程を経ることによって板ガラスGのガラス面の表面及び裏面に付着した微小なガラス粉や塵芥等の異物を取り除くための洗浄処理を実行するものである。洗浄装置10は、板ガラスGのガラス面の表面側及び裏面側にそれぞれ複数の洗浄部材11・11・・・を有している。
なお、例えば本実施形態においては、洗浄装置10は、板ガラスGのガラス面の表面側及び裏面側(本実施形態では、上面側及び下面側)を洗浄するために複数の洗浄部材11・11・・・が板ガラスGを介して上下に対向配置されている。
また、本実施形態の洗浄装置10では、板ガラスGのガラス面の両面を洗浄する装置として構成しているが、特に限定するものでなく、板ガラスGのガラス面の一方面(例えば、ガラス面における電子機能素子等が形成される有効面)のみを洗浄する装置として構成することもできる。
また、
図1及び
図2では、洗浄装置10において、板ガラスGの上面側に配置される複数の洗浄部材11・11の図示を省略し、板ガラスGの下側面に配置される複数の洗浄部材11・11・・・のみを図示している。
【0022】
洗浄装置10は、複数の洗浄部材11・11・・・と、複数の洗浄部材11・11・・・の各々を支持する回転軸12・12・・・と、回転軸12・12・・・の各々に設けられるギア(平歯車)13・13・・・と、回転軸12・12・・・を駆動する回転駆動手段であるモータMと、を備える。
図1では、モータMが回転軸12を直接回転させているが、モータMの図示しない回転軸に図示しないギアを設け、モータMのギアと洗浄部材11の回転軸12に設けられたギア13と噛み合わせることで、モータMがギア13を回転させる形態でも良い。
【0023】
洗浄部材11は、ディスク形状の部材であり、板ガラスGのガラス面に対して対向配置される洗浄パッド14と、洗浄パッド14を保持する洗浄ヘッド15とを主に備えている。
また、洗浄部材11は、平面視において搬送方向に対して直交する方向に並べて配置されている。
【0024】
洗浄パッド14は、硬質樹脂、軟質樹脂等の弾性体を使用することができ、例えばフェルト状の繊維成形体、スポンジ状の発泡樹脂成形体、あるいはスポンジ状の発泡ゴム成形体等で円形状に形成されている。本実施形態においては、洗浄パッド14の材質は、ポリビニルアルコール(PVA)である。
【0025】
洗浄パッド14における板ガラスGとの対向面(接触面)には、径方向に放射状に形成された凹溝14aが円周方向に複数(本実施形態では6本)設けられている。
また、洗浄パッド14には、その中心部及び中心部近傍に洗浄液を供給するための円形状の複数(本実施形態では3個)の供給口14bが形成されている。
【0026】
そして、供給口14bは、洗浄ヘッド15が有する図示しない洗浄液供給孔に連通されており、洗浄処理の実行中には、洗浄液が、供給口14bを介して供給されるようになっている。
【0027】
なお、洗浄ヘッド15は、例えば、アルミニウム合金やステンレス鋼等の金属材料で円盤状に形成されている。
【0028】
回転軸12は、先端に洗浄部材11の洗浄ヘッド15が固定される軸部材である。
複数の回転軸12・12・・・は、
図3に示すように、互いの回転軸12の軸方向が平行となるように、回転軸支持部16に回転自在に支持されている。
なお、
図3では、板ガラスGの上面側の回転軸12・12を支持する回転軸支持部16及び回転軸12・12のそれぞれに設けられるギア13・13の図示を省略している。
【0029】
ここで、回転軸支持部16は、図示しない上下位置駆動手段により、複数の洗浄パッド14を板ガラスGの一方面に当接させる前進位置(当接位置)と、洗浄パッド14を板ガラスGから離間させる後退位置(離間位置)との間を往復動可能で、かつ回転可能に構成されている。
【0030】
複数の回転軸12・12・・・のうちの一つには、モータMが連結され、該モータMを回転駆動させることで、回転軸12を回転駆動させることができる。
複数の回転軸12・12・・・は、
図1に示すように、モータMに連結される回転軸である駆動軸12aと、モータMに連結されていない回転軸である従動軸12b・12b・・・とにより構成されている。
【0031】
ギア13は、隣接するギア同士で互いに噛合し、かつ材質が異なるものである。
また、ギア13は、回転軸12の軸方向中途部に設けられた平歯車である。
具体的には、ギア13は、金属製のギア13aと、合成樹脂製のギア13bとにより構成され、互いに噛み合うとともに交互に直列状に配置されている。
すなわち、複数のギア13・13・・・は、直列状に噛み合うギア列を構成し、板ガラスGの搬送方向に対して直交するように配置されている。
【0032】
金属製のギア13aは、錆び難い金属を使用することが好ましく、ステンレスを使用することが好ましい。
合成樹脂性のギア13bは、硬質樹脂であることが好ましく、例えば、ポリエーテルエーテルケトン樹脂(PEEK樹脂)や、MCナイロン樹脂等を使用することができる。
【0033】
なお、本実施形態では、ギア13として平歯車を用いているが、特に限定するものではない。
例えば、平歯車以外では、はすば歯車を用いて構成することもできる。
【0034】
本実施形態の洗浄装置10では、
図2に示すように、板ガラスGの搬送方向との直交方向に沿って直列状に複数配置して構成される洗浄部材11・11・・・の列を板ガラスGの搬送方向(水平方向)に沿って所定間隔で複数配置される。
具体的には、本実施形態の洗浄装置10では、板ガラスGの搬送方向(水平方向)に沿って上流側と下流側に2列配置されている。
【0035】
洗浄部材11・11・・・の配置態様は、板ガラスGの一方面の洗浄領域内で洗浄されない部位が生じないように設定される。
本実施形態では、板ガラスGの搬送方向(水平方向)で隣り合う各洗浄部材11・11・・・が板ガラスGの幅方向の位置を相互に異ならせて(オフセットして)配置されている。
【0036】
すなわち、板ガラスGの搬送方向において上流側と下流側で隣り合う洗浄部材11・11・・・の各列においては、各洗浄部材11の板ガラスGの幅方向の位置を相互に異ならせている。
これにより、板ガラスGの一方面の洗浄領域内で洗浄されない部位が残ることを防ぐことができる。
【0037】
なお、洗浄部材11・11・・・の配置態様は板ガラスGの洗浄面内で洗浄されない部位が生じない限りにおいて任意に設定することができる。
【0038】
次に、洗浄装置10により板ガラスGの一方面を洗浄する工程を説明する。
【0039】
先ず、搬送装置により板ガラスGが洗浄装置10に水平状態で搬入されると、洗浄装置10のうち、最も上流側にある洗浄部材11・11・・・の列がモータMの駆動により回転しながら前進位置(当接位置)に移動し、各洗浄部材11の洗浄パッド14が板ガラスGの表面及び裏面(本実施形態では、上面及び下面)に各々当接されて洗浄処理が開始される。
この際、モータMが回転駆動することにより、互いに噛み合う複数のギア13・13・・・(ギア13a・13a・・・およびギア13b・13b・・・)が連動し、回転駆動されことになる。
【0040】
続いて
図1において、洗浄部材11による洗浄処理の実行中、各洗浄部材11に設けられた供給口14bから板ガラスGの上面及び下面に対して洗浄液が連続的に供給・吐出される。
すなわち、洗浄部材11(洗浄パッド14)と板ガラスGとの間に所定量の洗浄液が介在した状態で板ガラスGの上面及び下面の洗浄処理が実行される。
【0041】
その後、板ガラスGが下流側に徐々に搬送されるのに伴って、各洗浄パッド14の供給口14bから洗浄液が供給されつつ、洗浄部材11・11・・・の次列(
図2において右側の列)が回転しながら順次後退位置(離間位置)から前進位置(当接位置)に移動し、板ガラスGの上面及び下面の洗浄処理が実行される。
【0042】
以上のように構成された洗浄装置10では、モータMによる回転駆動力が、直列状のギア13・13・・・の列を介して、各々のギア13・13・・・に対応する複数の回転軸12・12・・・に伝達され、これによってこれらの回転軸12・12・・・が回転駆動される。
これにより、各回転軸12の先端に設けた洗浄部材11が回転する。
【0043】
このように洗浄装置10が動作することによって、噛み合うギア間で摩擦が生じるが、本実施形態のように金属製のギア13aと合成樹脂製のギア13bを交互に噛み合わせて構成した場合では、金属製のギア同士を噛み合わせて構成した場合に比べて摩擦抵抗が低減されるため、歯の部分が擦れることによる磨耗が減少し、金属粉等の発塵が抑制される。
【0044】
また、本実施形態における洗浄装置10において、ギア13は、隣接するギア13・13同士で互いに噛合し、かつ材質が異なるものである。
このように構成することで、全てのギア13・13・・・を同一の材質で構成した場合よりも摩擦抵抗が小さくなり、ギア同士の磨耗による発塵を抑えることができる。
【0045】
また、本実施形態における洗浄装置10では、隣接するギア13・13同士は、一方のギア13が金属製のギア13aであり、他方のギア13が合成樹脂製のギア13bである。
一般的に、金属製のギア13a・13a同士を噛み合わせて構成した場合、ギア13a・13a同士の磨耗により発塵(金属粉が発生)するおそれがあるが、このようにしたことで、金属製のギア同士を噛み合わせて構成した場合に発生する金属粉が発生し難くなる。
これにより、金属粉による板ガラスGのガラス面への汚染を防止することができる。
さらに、金属製のギア13aを使用しているため、合成樹脂製のギア13b・13b同士を噛み合わせて構成した場合より、ギア13の耐久性が向上し、各ギア13の交換頻度が抑えられ、装置のメンテナンスに手間がかからない。
【0046】
また、本実施形態における洗浄装置10では、金属製のギア13aと合成樹脂製のギア13bが交互に噛み合うように複数配置されている。
これにより、複数のギア13・13・・・の少なくとも一つをモータMにより駆動することで、複数のギア13・13・・・(ギア13a・13a・・・およびギア13b・13b・・・)を駆動することができるため、複数の回転駆動手段を必要とせず、装置構成が簡略化でき、メンテナンスが容易となる。