特許第6809046号(P6809046)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6809046ゴルフクラブ用のシャフトアセンブリ及び捩れ計測方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6809046
(24)【登録日】2020年12月14日
(45)【発行日】2021年1月6日
(54)【発明の名称】ゴルフクラブ用のシャフトアセンブリ及び捩れ計測方法
(51)【国際特許分類】
   A63B 53/00 20150101AFI20201221BHJP
   A63B 53/10 20150101ALI20201221BHJP
【FI】
   A63B53/00 B
   A63B53/10 A
【請求項の数】12
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-166716(P2016-166716)
(22)【出願日】2016年8月29日
(65)【公開番号】特開2018-33500(P2018-33500A)
(43)【公開日】2018年3月8日
【審査請求日】2019年6月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【弁理士】
【氏名又は名称】立花 顕治
(74)【代理人】
【識別番号】100156845
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 威一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100179213
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 未知子
(74)【代理人】
【識別番号】100170542
【弁理士】
【氏名又は名称】桝田 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100195305
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 恵
(72)【発明者】
【氏名】大貫 正秀
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 宏
(72)【発明者】
【氏名】君塚 渉
【審査官】 松山 紗希
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭55−125369(JP,U)
【文献】 特開2002−371780(JP,A)
【文献】 特開2003−102876(JP,A)
【文献】 特開2013−048736(JP,A)
【文献】 特開昭63−082678(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 53/00−53/14、69/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフト軸方向に延びる中空構造のゴルフクラブ用のシャフトと、
前記シャフトの内部において、前記シャフト軸方向に沿って少なくとも第1点と第2点との間を延びるように配置される棒体であって、前記第1点において、前記シャフトに対して自由に回転できるように保持され、前記第2点において、前記シャフトに追従して回転するように前記シャフトに対して固定される棒体と、
前記第1点における前記棒体に対する前記シャフトの相対的な回転変位を計測する第1回転角度計と
を備える、シャフトアセンブリ。
【請求項2】
シャフト軸方向に延びる中空構造のゴルフクラブ用のシャフトと、
前記シャフトの内部において、前記シャフト軸方向に沿って少なくとも第1点と第2点との間を延びるように配置される棒体であって、前記第1点及び前記第2点において、前記シャフトに対して自由に回転できるように保持される棒体と、
前記第1点における前記棒体に対する前記シャフトの相対的な回転変位を計測する第1回転角度計と、
前記第2点における前記棒体に対する前記シャフトの相対的な回転変位を計測する第2回転角度計と、
を備える、シャフトアセンブリ。
【請求項3】
前記棒体は、前記第2点において、前記シャフトに追従して並進するように前記シャフトに対して固定される、
請求項に記載のシャフトアセンブリ。
【請求項4】
前記第1点は、前記シャフトのバット端からチップ端に向かう方向に±200mm以内に位置する、
請求項1から3のいずれかに記載のシャフトアセンブリ。
【請求項5】
前記第2点は、前記シャフトのチップ端からバット端に向かう方向に200mm以内に位置する、
請求項1から4のいずれかに記載のシャフトアセンブリ。
【請求項6】
前記棒体の曲げ剛性は、前記シャフト軸方向の同じ位置での前記シャフトの曲げ剛性の1/10以下である、
請求項1から5のいずれかに記載のシャフトアセンブリ。
【請求項7】
前記棒体の直径は、0.5mm以上、かつ、5.0mm以下である、
請求項1から6のいずれかに記載のシャフトアセンブリ。
【請求項8】
前記シャフトの内部に配置され、前記シャフト軸に直交する方向への、前記棒体の前記シャフトに対する変位を妨げるように前記棒体を保持する保持具
をさらに備える、
請求項1から7のいずれかに記載のシャフトアセンブリ。
【請求項9】
前記第1回転角度計は、回転軸と、前記回転軸周りを相対的に回転可能な本体部と、前記回転軸周りの前記本体部の相対的な回転変位を表す信号を検出する検出器とを有し、
前記本体部は、前記シャフトに対して固定され、
前記棒体は、前記回転軸周りで回転不能なように前記回転軸に対して固定される、
請求項1から8のいずれかに記載のシャフトアセンブリ。
【請求項10】
請求項1から9のいずれかに係る前記シャフトアセンブリと、
前記第1回転角度計から前記回転変位の情報を取得し、前記回転変位に基づいて、前記第1点と前記第2点との間の前記シャフト軸周りの前記シャフトの捩じれ量を算出する演算装置と
を備える、捩れ計測システム。
【請求項11】
シャフト軸方向に延びる中空構造のゴルフクラブ用のシャフトを用意するステップと、
前記シャフトの内部において、前記シャフト軸方向に沿って少なくとも第1点と第2点との間を延びるように棒体を配置し、このとき、前記第1点において、前記シャフトに対して自由に回転できるように前記棒体を保持するとともに、前記第2点において、前記シャフトに追従して回転するように前記棒体を前記シャフトに対して固定するステップと、
前記棒体が内部に配置された前記シャフトに外力を加えることにより、前記シャフトを捩じれ変形させ、このときの前記第1点における前記棒体に対する前記シャフトの相対的な回転変位を計測するステップと、
前記回転変位に基づいて、前記第1点と前記第2点との間の前記シャフト軸周りの前記シャフトの捩じれ量を算出するステップと
を含む、
捩れ計測方法。
【請求項12】
シャフト軸方向に延びる中空構造のゴルフクラブ用のシャフトを用意するステップと、
前記シャフトの内部において、前記シャフト軸方向に沿って少なくとも第1点と第2点との間を延びるように棒体を配置し、このとき、前記第1点及び前記第2点において、前記シャフトに対して自由に回転できるように前記棒体を保持するステップと、
前記棒体が内部に配置された前記シャフトに外力を加えることにより、前記シャフトを捩じれ変形させ、このときの前記第1点及び前記第2点における前記棒体に対する前記シャフトの相対的な回転変位を計測するステップと、
前記第1点及び前記第2点における前記回転変位に基づいて、前記第1点と前記第2点との間の前記シャフト軸周りの前記シャフトの捩じれ量を算出するステップと
を含む、
捩れ計測方法。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフクラブ用のシャフトの捩じれ量を計測するためのシャフトアセンブリ、及びこれを備える捩れ計測システム、並びに捩れ計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ゴルフクラブには、ボールを真っ直ぐに飛ばすことができるようにする特性が求められる。このような左右の方向性に関するゴルフクラブの特性は、1つには、シャフトのトルクに依存するものと考えられている。トルクとは、シャフトの捩じれ易さ(捩じり剛性)を表す指標である。一般的には、トルクが大きいシャフトほど左右の方向性が悪く(安定しない)、トルクの小さなシャフトを用いた方が左右の方向性が良くなるものと言われている。
【0003】
以上のとおり、シャフトの捩じれ易さは、ゴルフスイングの良否を決定する要因となり得るため、ゴルフクラブに外力が加えられたときのシャフトの捩じれ量を計測したいという要求がある。この点、特許文献1,2は、ゴルフスイング中のシャフトの捩じれ量を計測する方法を開示している。
【0004】
特許文献1は、シャフトから突出する治具上にマーカーを取り付けたゴルフクラブを用意し、このようなゴルフクラブのスイング動作を様々な方向から光学式のモーションキャプチャシステムで撮影し、マーカーの位置を画像処理により特定することにより、捩じれ量を算出している。特許文献2は、ゴルフクラブのヘッド側及び手元側に2つの姿勢角センサを取り付け、これらのセンサによる姿勢角の差分から捩じれ量を算出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−102825号公報
【特許文献2】特開2012−143342号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の方法では、多数のカメラを設置しなければならず、設備が大型化してしまう。さらに、マーカーを取り付ける治具の振動による誤差も生じ得る。また、特許文献2の方法では、姿勢角センサとして慣性センサが用いられるが、慣性センサにはドリフトによる誤差が生じる。このような誤差は、特に位置や姿勢を求めるために慣性センサの出力値である角速度及び加速度のデータが積分される中で累積してゆき、最終的に精度が低下してしまう要因となり得る。
【0007】
本発明は、簡易な設備で高精度にゴルフクラブ用のシャフトの捩じれ量を計測することができるシャフトアセンブリ、捩れ計測システム及び捩れ計測方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1観点に係るシャフトアセンブリは、シャフト軸方向に延びる中空構造のゴルフクラブ用のシャフトと、棒体と、回転角度計とを備える。前記棒体は、前記シャフトの内部において、前記シャフト軸方向に沿って少なくとも第1点と第2点との間を延びるように配置され、前記第1点において、前記シャフトに対して自由に回転できるように保持される。前記回転角度計は、前記第1点における前記棒体に対する前記シャフトの相対的な回転変位を計測する。
【0009】
第2観点に係るシャフトアセンブリは、第1観点に係るシャフトアセンブリであって、前記棒体は、前記第2点において、前記シャフトに追従して回転するように、前記シャフトに対して固定される。
【0010】
第3観点に係るシャフトアセンブリは、第2観点に係るシャフトアセンブリであって、前記棒体は、前記第2点において、前記シャフトに追従して並進するように前記シャフトに対して固定される。
【0011】
第4観点に係るシャフトアセンブリは、第1観点から第3観点のいずれかに係るシャフトアセンブリであって、前記第1点は、前記シャフトのバット端からチップ端に向かう方向に±200mm以内に位置する。
【0012】
第5観点に係るシャフトアセンブリは、第1観点から第4観点のいずれかに係るシャフトアセンブリであって、前記第2点は、前記シャフトのチップ端からバット端に向かう方向に200mm以内に位置する。
【0013】
第6観点に係るシャフトアセンブリは、第1観点から第5観点のいずれかに係るシャフトアセンブリであって、前記棒体の曲げ剛性は、前記シャフト軸方向の同じ位置での前記シャフトの曲げ剛性の1/10以下である。
【0014】
第7観点に係るシャフトアセンブリは、第1観点から第6観点のいずれかに係るシャフトアセンブリであって、前記棒体の直径は、0.5mm以上、かつ、5.0mm以下である。
【0015】
第8観点に係るシャフトアセンブリは、第1観点から第7観点のいずれかに係るシャフトアセンブリであって、保持具をさらに備える。前記保持具は、前記シャフトの内部に配置され、前記シャフト軸に直交する方向への、前記棒体の前記シャフトに対する変位を妨げるように前記棒体を保持する。
【0016】
第9観点に係るシャフトアセンブリは、第1観点から第8観点のいずれかに係るシャフトアセンブリであって、前記回転角度計は、回転軸と、前記回転軸周りで相対的に回転可能な本体部と、前記回転軸周りの前記本体部の相対的な回転変位を表す信号を検出する検出器とを有する。前記本体部は、前記シャフトに対して固定される。前記棒体は、前記回転軸周りを回転不能なように前記回転軸に対して固定される。
【0017】
第10観点に係る捩れ計測システムは、第1観点から第9観点のいずれかに係るシャフトアセンブリと、演算装置とを備える。前記演算装置は、前記回転角度計から前記回転変位の情報を取得し、前記回転変位に基づいて、前記第1点と前記第2点との間の前記シャフト軸周りの前記シャフトの捩じれ量を算出する。
【0018】
第11観点に係る捩じれ計測方法は、以下の(1)〜(4)のステップを含む。
(1)シャフト軸方向に延びる中空構造のゴルフクラブ用のシャフトを用意するステップ。
(2)前記シャフトの内部において、前記シャフト軸方向に沿って少なくとも第1点と第2点との間を延びるように棒体を配置し、このとき、前記第1点において、前記シャフトに対して自由に回転できるように前記棒体を保持するステップ。
(3)前記棒体が内部に配置された前記シャフトに外力を加えることにより、前記シャフトを捩じれ変形させ、このときの前記第1点における前記棒体に対する前記シャフトの相対的な回転変位を計測するステップ。
(4)前記回転変位に基づいて、前記第1点と前記第2点との間の前記シャフト軸周りの前記シャフトの捩じれ量を算出するステップ。
【0019】
第12観点に係る捩じれ計測方法は、第11観点に係る捩じれ計測方法であって、前記棒体を保持するステップは、前記第2点において、前記シャフトに追従して回転するように前記棒体を前記シャフトに対して固定するステップを含む。
【発明の効果】
【0020】
第1観点によれば、捩じれ量を計測する対象となるシャフトの内部に、棒体が配置される。棒体は、シャフト軸方向に沿って少なくとも第1点と第2点との間を延びるように配置され、第1点においてシャフトに対して自由に回転できるように保持される。そのため、第1点においては、シャフトにシャフト軸周りの回転変位が生じたとしても、棒体は実質的にシャフトに追従して回転しない。従って、このような棒体に対するシャフトの回転変位は、シャフトの捩じれ量を表すのに用いることができる。ここでは、回転角度計により、このような回転変位が計測される。従って、簡易な設備で高精度にゴルフクラブ用のシャフトの捩じれ量を計測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施形態に係る捩じれ計測システムの全体構成図。
図2】シャフトアセンブリの縦断面図。
図3】捩じれ計測システムの電気的な構成を示すブロック図。
図4】電圧データを捩じれ量のデータに変換するための変換データを説明する図。
図5A】変換データを導出するための設備の側面図。
図5B】変換データを導出するための設備を図5AのB1方向から見た図。
図6】捩じれ計測処理の流れを示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しつつ、本発明の一実施形態に係るゴルフクラブ用のシャフトの捩じれ量を計測するためのシャフトアセンブリ、及びこれを備える捩れ計測システム、並びに捩れ計測方法について説明する。
【0023】
<1.捩じれ計測システムの全体構成>
図1に、本実施形態に係る捩れ計測システム100の全体構成図を示す。捩れ計測システム100は、ゴルフクラブ10のシャフト12の撓み量を計測するシステムであり、シャフトアセンブリ15と、コンピュータ8とを備える。ゴルフクラブ10は、直線状に延びるシャフト12と、シャフト12の一端側に固定されているヘッド13と、シャフト12の他端側に固定されているグリップ11とを有する。グリップ11は、ゴルファー7がゴルフクラブ10をスイングするときに手で握る部位である。図1には示されていないが、グリップ11の内部には、回転角度計2が取り付けられている(図2参照)。回転角度計2は、シャフト12の捩じれ量を表す回転変位を計測するセンサーユニットであり、ケーブル3を介してコンピュータ8に接続されている。回転角度計2は、シャフト12及びシャフト12の内部に配置される後述する棒体50(図2参照)等とともに、シャフトアセンブリ15を構成する。以下、シャフトアセンブリ15及びコンピュータ8の構成について説明した後、シャフト12の捩じれ量を計測する捩じれ計測処理について説明する。
【0024】
<2.各部の構成>
<2−1.シャフトアセンブリ>
図2は、シャフトアセンブリ15の縦断面図である。同図に示すように、シャフト12は、中空構造であり、シャフト軸A1方向に延びる円筒形状の部材である。シャフト軸A1とは、シャフト12の長手方向の中心軸である。シャフト12は、チップ端12A側からバット端12B側に向けて徐々に拡径している。シャフト12は、ゴルフスイング時の遠心力等の慣性力が加えられたときに撓みや捩じれを生じやすい材質から構成されており、典型的には、カーボン製である。
【0025】
シャフト12の内部には、棒体50がシャフト軸A1方向に平行に配置されている。棒体50とシャフト12とは、同軸となるように位置合わせされている。棒体50は、シャフト12のチップ端12A近傍からバット端12B近傍まで直線状に延びている。棒体50は、弾性体であり、本実施形態では、針金、より具体的にはピアノ線から構成されている。棒体50の直径は、棒体50の強度を維持し、かつ軽量化する観点から、0.5mm以上、かつ、5.0mm以下であることが好ましい。棒体50は、シャフト軸A1方向の同じ位置の部位どうしで比較したとき、棒体50の全長に亘ってシャフト12よりも曲げ剛性が小さいことが好ましい。棒体50の曲げ剛性が大きいと、場合によってはシャフト12の曲げ剛性に影響を与え、シャフト12の特性を変化させる可能性があるからである。より具体的には、棒体50の曲げ剛性は、シャフト軸A1方向の同じ位置でのシャフト12の曲げ剛性の1/10以下であることが好ましい。
【0026】
棒体50は、チップ端12Aにおいてシャフト12に対して固定されている。このとき、棒体50のチップ端12A側の端部50Aは、シャフト12のチップ端12A近傍の部位に追従して回転及び並進するように固定されている。本実施形態では、棒体50の端部50Aは、治具61を介してシャフト12に取り付けられる。治具61は、シャフト12の内周面に圧着するようにシャフト12内に挿入される円柱状の挿入部61Aと、挿入部61Aの一端に配置されるフランジ部61Bとから構成される。フランジ部61Bは、挿入部61Aがシャフト12内に入り込んでしまわないようにする役割を果たす。棒体50の端部50Aは、棒体50と挿入部61Aとが同軸となるように位置合わせされ、挿入部61Aに溶接等の方法により強固に固定される。
【0027】
一方、シャフト12のバット端12Bには、治具62が取り付けられ、さらに治具62には、回転角度計2が取り付けられている。治具62は、シャフト12のバット端12B近傍の部位に対して実質的に回転及び並進することがないように強固に固定されている。本実施形態では、治具62は、円筒状の側壁部62Bと、側壁部62Bの内側の空間をシャフト軸A1方向に沿って2つに分割する分割板62Aとを有する。分割板62Aは、中央に開口を有する円板状の部材であり、側壁部62Bの中心軸に直交するように配置される。側壁部62Bは、シャフト12のバット端12B近傍の部位の内周面に圧着するように、シャフト12内に部分的に挿入されている。シャフト12と治具62との固定の態様は、特に限定されないが、例えば、ネジやパイプバンドのような締め付け機構や、接着剤を用いて固定することができる。
【0028】
また、バット端12B側では、シャフト12及び治具62の側壁部62Bの外周面を覆うように、シャフト12及び治具62に対して嵌め込み式にグリップ11が取り付けられている。グリップ11は、シャフト12及び側壁部62Bの外周面に圧着しており、シャフト12のバット端12B近傍の部位に対して実質的に回転及び並進することがないように強固に固定されている。また、グリップ11におけるヘッド13と反対側の端部(以下、グリップエンドという)11Aには、ケーブル3(図1参照)が通り抜けるための開口が形成されている。
【0029】
治具62の分割板62A上には、回転角度計2の筐体25が固定されている。筐体25は、側壁部62Bの内側において分割板62Aにより分割される2つの空間のうち、バット端12Bから遠い側の空間に収容されている。筐体25は、分割板62Aに対して実質的に回転及び並進することがないように強固に固定されている。このときの固定の態様は、特に限定されないが、例えば、ナット等の固定具を用いて又は接着剤を用いて固定することができる。以上述べたことから明らかなとおり、治具62により、回転角度計2の筐体25は、シャフト12のバット端12B近傍の部位に対して実質的に回転及び並進することがないように強固に固定されている。
【0030】
分割板62Aの中央には、開口が形成されており、当該開口には、回転角度計2の筐体25から突出する回転軸21が挿入されている。回転軸21は、分割板62Aを貫通し、シャフト12及び治具62により画定される閉鎖空間C1に達している。回転軸21は、シャフト軸A1方向に沿って延びており、シャフト12と同軸となるように位置合わせされている。
【0031】
閉鎖空間C1内では、棒体50のバット端12B側の端部50Bが、回転角度計2の回転軸21に対して実質的に回転及び並進することがないように強固に固定されている。棒体50は、回転軸21と同軸となるように位置合わせされている。また、回転軸21は、筐体25に対してシャフト軸A1周りを自由に回転可能である。そのため、棒体50の端部50Bもまた、筐体25に対して、ひいてはバット端12Bに対してシャフト軸A1周りを自由に回転することができる。棒体50の端部50Bと回転軸21との固定の態様は、特に限定されないが、本実施形態では、端部50Bは、カップリング63を介して回転軸21に対して取り付けられている。カップリング63は、底部63A及び底部63Aから起立する側壁部63Bからなる部材と、側壁部63Bに設けられた開口内に進入するネジ63Cとを有する。そして、底部63Aに棒体の端部50Bが溶接等により固定されており、側壁部63B内に回転軸21が挿入されている。そして、ネジ63Cを側壁部63B内により深く進入させることにより、ネジ63Cの先端で回転軸21を押圧し、回転軸21を側壁部63B内において実質的に回転及び並進することができないように固定することができる。以上のカップリング63は、特に曲げ方向の変形に対する高い剛性を確保すべく、金属製とすることが好ましい。
【0032】
また、図2に示すように、シャフト12の内部には、棒体50を保持する保持具70が配置されている。保持具70は、シャフト軸A1に直交する方向への、棒体50のシャフト12に対する変位を妨げるための部材である。本実施形態では、保持具70は、シャフト軸A1方向に沿って所定の間隔をあけながら、複数箇所に設置されている。棒体50は、保持具70をシャフト軸A1方向に沿って貫通している。保持具70は、スポンジ等の軽量の材料から構成されることが好ましい。また、棒体50の捩じれに影響を与えない程度の軟らかさとすることが好ましい。このような保持具70により、例えば、ゴルフスイング中にシャフト12が撓んだときに、棒体50もまたシャフト12に合わせて同様に撓むことになる。すなわち、保持具70は、シャフト12に曲げ変形が生じたときにおいても、棒体50を常に概ねシャフト12の中心軸に沿って配置させる役割を果たす。その結果、チップ端12A及びバット端12Bにおける撓みの差をキャンセルし、捩れによる回転変位の差だけをより正確に評価できるようになる。
【0033】
次に、回転角度計2の構成について説明する。上述したとおり、本実施形態では、回転角度計2の筐体25は、バット端12Bに対して回転不能に固定されており、棒体50は、筐体25から突出する回転軸21周りを回転不能に固定されている。そのため、回転角度計2は、バット端12Bにおける棒体50に対するシャフト12の相対的な回転変位を計測することができる。また、棒体50は、チップ端12A側において固定端を形成しているが、バット端12B側において自由端を形成しているため、ゴルフクラブ10のスイング動作中に実質的に捩じれ変形が生じない。そのため、回転角度計2により計測される回転変位は、チップ端12Aとバット端12Bとの間のシャフト12の捩じれ量を表すことになる。棒体50の捩じり剛性は、回転角度計2の筐体25に対して回転軸21を回転させるのに必要なトルクによって生じる棒体50の捩じれが、回転角度計2により測定しようとしているシャフト12の捩じれに対して無視できる程度に小さいことが好ましい。
【0034】
図3は、捩れ計測システム100の電気的な構成を示すブロックである。図3に示すとおり、本実施形態に係る回転角度計2は、ポテンショメータであり、筐体25内には、検出器20が収容されている。検出器20は、回転軸21周りの筐体25の相対的な回転変位を表す電圧信号を検出することができる。より具体的には、検出器20は、3つの端子T1〜T3を有する。そして、筐体25に対して回転軸21が回転すると、端子T2が端子T1,T3の間を移動し、端子T2,T3間の電圧が変化する。従って、この端子T2,T3間の電圧は、筐体25に対する回転軸21の相対的な回転変位、ひいてはバット端12Bにおける棒体50に対するシャフト12の回転変位を表す信号となる。これらの端子T1〜T3は、ケーブル3を構成する3つの電圧線L1〜L3にそれぞれ接続されている。電圧線L1,L3は、定電圧電源9に接続されており、端子T1,T3間には、定電圧電源9により定電圧が印加される。一方、電圧線L2,L3は、コンピュータ8のA/D変換器31に接続されている。すなわち、回転角度計2により計測された電圧データは、コンピュータ8に送信される。
【0035】
<2−2.コンピュータ>
次に、コンピュータ8の構成について説明する。コンピュータ8は、回転角度計2から出力される電圧データに基づいて、シャフト12の捩じれ量を算出する装置である。コンピュータ8は、ハードウェアとしては汎用のコンピュータであり、ラップトップコンピュータ、デスクトップコンピュータ、スマートフォン、タブレット等として実現される。コンピュータ8には、CD−ROM等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体90から、又はインターネット等のネットワークを介して他の機器からプログラム5がインストールされており、プログラム5は、コンピュータ8に後述する動作を実行させる。
【0036】
コンピュータ8は、表示部81、入力部82、記憶部83、制御部84及び通信部85に加え、A/D変換器31を備える。そして、これらの部81〜85,31は、バス線86を介して接続されている。なお、A/D変換器31は、内蔵型であってもよいが、外付け型であってもよい。本実施形態では、表示部81は、液晶ディスプレイ等で構成され、後述する情報をユーザに対し表示する。また、入力部82は、マウス、キーボード、タッチパネル等で構成され、コンピュータ8に対するユーザからの操作を受け付ける。通信部85は、コンピュータ8と外部装置との通信を可能にする通信インターフェースである。制御部84は、CPU、ROMおよびRAM等で構成され、記憶部83内のプログラム5を読み出して実行する。記憶部83は、ハードディスク等の不揮発性の記憶装置により構成される。記憶部83内には、プログラム5が格納されている他、各種データが保存される。
【0037】
A/D変換器31は、ケーブル3に含まれる電圧線L2,L3に接続され、回転角度計2から出力される端子T2,T3間の電圧を表すアナログ信号をデジタル変換する。変換後の電圧データは、記憶部83内に保存される。また、記憶部83内には、この電圧データをシャフト12の捩じれ量のデータに変換するための変換データ83Aも格納されている。
【0038】
具体的には、変換データ83Aは、図4に示すようなデータである。図4に示すとおり、端子T2,T3間の電圧と、筐体25に対する回転軸21の角度とは、比例関係にある。変換データ83Aは、この比例関係を特定する情報である。端子T2,T3間の電圧は、筐体25に対する回転軸21の回転変位、言い換えると、バット端12Bにおける棒体50に対するシャフト12の相対的な回転変位に応じた値をとる。さらに言い換えると、端子T2,T3間の電圧は、チップ端12Aとバット端12Bとの間のシャフト軸A1周りのシャフト12の捩じれ量に応じた値をとる。変換データ83Aは、回転角度計2からの電圧データを、チップ端12Aとバット端12Bとの間のシャフト12の捩じれ量のデータに変換するためのデータである。
【0039】
変換データ83Aは、例えば、図5A及び図5Bに示すような設備4を使用して、以下のようにして導出することができる。図5Aは、設備4の側面図であり、図5Bは、設備4を図5AのB1方向から見た図である。ただし、図5Aにおいては、グリップ11近傍は断面図として描かれている。これらの図に示すように、設備4には、シャフトアセンブリ15が含まれ、シャフト12が水平に延びるようにグリップ11が3爪チャック等の固定具を介して固定されている。このとき、シャフト12は、バット端12Bが地面に対して実質的に回転及び並進することがないように強固に固定されている。なお、このとき、グリップ11を省略し、治具62を固定することもできる。
【0040】
また、シャフト12のチップ端12Aの近傍に、治具40を取り付ける。治具40は、シャフト12を外側から締め付けるようにシャフト12に巻き付くリング状の部位41と、リング状の部位41から径方向に水平に突出するアーム42とを有する。アーム42には、錘43が吊り下げられる。これにより、シャフト12の軸心から偏心した位置に、錘43による荷重が付与される。また、チップ端12Aには、シャフト軸A1に直交する方向に延びる針44が固定される。
【0041】
以上のような設備4において、アーム42上での錘43の吊り下げ位置を変化させることにより、或いは錘43の重さを変化させることにより、シャフト軸A1周りのシャフト12の捩じれ量を様々に変化させる。そして、このように捩じれ量を変化させながら、回転角度計2により電圧データを収集する。電圧データはコンピュータ8に入力され、デジタルデータに変換される。また、電圧データを収集すると同時に、針44のシャフト軸A1周りの回転変位を計測する。なお、シャフト12のバット端12Bは地面に対して変位しないため、このときの針44の回転変位とは、チップ端12Aとバット端12Bとの間のシャフト軸A1周りのシャフト12の捩じれ量を表すことになる。そして、この針44の回転変位のデータをコンピュータ8に入力し、コンピュータ8により、針44の回転変位、すなわち、シャフト12の捩じれ量と端子T2,T3間の電圧との関係を算出する。この関係を表すデータが、変換データ83Aとなる。
【0042】
<3.捩じれ計測処理>
以下、図6を参照しつつ、シャフト12の捩じれ量を計測する捩じれ計測処理について説明する。ここでは、ゴルフスイング中のシャフト12の捩じれ量が計測される。
【0043】
まず、ステップS1では、シャフト12及びグリップ11を用意するとともに、棒体50、回転角度計2、治具61,62、カップリング63を用意し、これらを組み立てて上述したシャフトアセンブリ15を作製する。より具体的には、シャフト12の内部において、シャフト軸A1方向に沿ってチップ端12A近傍からバット端12B近傍までを延びるように棒体50を固定する。このとき、棒体50のバット端12B側の端部50Bが、シャフト12に対して自由に回転できるように棒体50を取り付ける。また、棒体50のチップ端12A側の端部50Aを、シャフト12に対して回転不能に固定する。そして、ヘッド13にシャフトアセンブリ15を固定して、上述したゴルフクラブ10を作製する。
【0044】
続くステップS2では、ゴルファー7にこのゴルフクラブ10をスイングさせる。このとき、ゴルフクラブ10には遠心力等の慣性力が加わるため、シャフト12は曲がり、捩れる等して変形する。この変形のうち、捩れ変形は、ゴルフクラブ10に搭載されている回転角度計2により、時系列の電圧データとして計測される。この時系列の電圧データは、ケーブル3を介して、順次コンピュータ8のA/D変換器31に入力される。A/D変換器31は、アナログデータである時系列の電圧データをデジタルデータに変換した後、これを記憶部83に保存する。
【0045】
続くステップS3では、制御部84が、ステップS2で取得された電圧データに基づいて、チップ端12Aとバット端12Bとの間のシャフト12の捩じれ量を算出する。より具体的には、変換データ83Aを参照して、時系列の電圧データを時系列のシャフト12の捩じれ量のデータに変換する。
【0046】
続くステップS4では、制御部84は、ステップS3で算出された時系列の捩じれ量のデータを出力する。具体的には、表示部81上に、時系列の捩じれ量のデータを示す画面を表示させる。このとき、時系列の捩じれ量のデータは、グラフ化される等、適宜、ユーザが結果を理解し易いような表示形式に加工される。
【0047】
<4.変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。例えば、以下の変更が可能である。また、以下の変形例の要旨は、適宜組み合わせることができる。
【0048】
<4−1>
上記実施形態では、チップ端12Aとバット端12Bとの間のシャフト12の捩じれ量が計測された。しかしながら、本発明は、シャフト12上のシャフト軸A1方向に沿った任意の2点間の捩じれ量を計測するのに用いることができる。なお、シャフト12の捩じれ特性を解析する観点からは、一方の点は、バット端12Bからチップ端12Aに向かって±200mm以内に設置することが好ましく、±100mm以内に設置することがより好ましい。また、他方の点は、チップ端12Aからバット端12Bに向かって200mm以内に設定することが好ましい。
【0049】
<4−2>
上実施形態では、回転角度計2がポテンショメータとして実現されたが、棒体50に対するシャフト12の回転変位を計測することができる限り、回転角度計2の構成はこれに限られない。例えば、ポテンショメータに代えて、ロータリーエンコーダを用いることもできる。ロータリーエンコーダも、一般に、回転軸と、回転軸周りを相対的に回転可能な筐体を有し、これらの相対的な回転変位に応じた信号を磁気式又は光学式に検出する。
【0050】
<4−3>
上実施形態では、棒体50のチップ端12A側の端部50Aが固定端とされ、バット端12B側の端部50Bが自由端とされた。しかしながら、この態様に限られず、例えば、バット端12B側の端部50Bだけでなく、チップ端12A側の端部50Aも、シャフト12に対して自由に回転できるように構成することもできる。その上で、回転角度計2をチップ端12A側にも用意し、チップ端12Aにおける棒体50に対するシャフト12の相対的な回転変位を計測するようにする。そして、コンピュータ8において、2つの回転角度計2により計測される回転変位の差分を、シャフト12の捩じれ量として算出することができる。
【0051】
<4−4>
上記実施形態では、電圧データがアナログデータのまま回転角度計2からコンピュータ8に送信され、コンピュータ8においてデジタルデータに変換された。しかしながら、シャフトアセンブリ15にA/D変換器を搭載し、このA/D変換器により回転角度計2の出力値をA/D変換した後、電圧データをコンピュータ8に送信し、通信部85でこれを受信するようにしてもよい。また、上記実施形態では、電圧データがシャフトアセンブリ15側から有線式にコンピュータ8に送信されたが、無線式に送信することもできる。この場合、例えば、シャフトアセンブリ15にI/Oインターフェース等の通信モジュールを搭載すればよい。
【0052】
さらに、シャフトアセンブリ15側で、電圧データをシャフト12の捩じれ量に変換することもできる。この態様は、例えば、シャフトアセンブリ15にA/D変換器及び通信モジュールに加え、CPU及びメモリを搭載し、メモリに変換データ83Aを格納しておくことにより実現することができる。変換後の捩じれ量のデータは、コンピュータ8等の外部機器に送信し、表示部81上に表示させることができる。
【符号の説明】
【0053】
10 ゴルフクラブ
100 捩じれ計測システム
12 シャフト
12A チップ端(第2点)
12B バット端(第1点)
15 シャフトアセンブリ
2 回転角度計
20 検出部
21 回転軸
25 筐体(本体部)
50 棒体
70 保持具
8 コンピュータ(演算装置)
A1 シャフト軸
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6