特許第6809091号(P6809091)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6809091
(24)【登録日】2020年12月14日
(45)【発行日】2021年1月6日
(54)【発明の名称】燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/0606 20160101AFI20201221BHJP
   H01M 8/04 20160101ALI20201221BHJP
   C01B 3/38 20060101ALI20201221BHJP
   C01B 3/48 20060101ALI20201221BHJP
   H01M 8/12 20160101ALN20201221BHJP
【FI】
   H01M8/0606
   H01M8/04 Z
   C01B3/38
   C01B3/48
   !H01M8/12
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-190748(P2016-190748)
(22)【出願日】2016年9月29日
(65)【公開番号】特開2018-55960(P2018-55960A)
(43)【公開日】2018年4月5日
【審査請求日】2019年8月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】アイシン精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】特許業務法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村上 大河
【審査官】 笹岡 友陽
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−157481(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/004803(WO,A1)
【文献】 特開2009−283268(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00− 8/2495
C01B 3/38
C01B 3/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アノードガスとカソードガスとの電気化学反応により発電する燃料電池と、原燃料を改質して前記アノードガスを生成する改質器と、前記原燃料から硫黄成分を除去して前記改質器に供給する脱硫器とを含む燃料電池システムにおいて、
前記燃料電池から排出される排ガス中の可燃性ガスの濃度を検出する可燃性ガスセンサと、
前記脱硫器に前記原燃料が供給される際の前記可燃性ガスセンサの検出値の変化に基づいて、前記原燃料中の燃料成分の前記脱硫器への吸着が飽和状態に達したか否かを判定する燃料吸着判定装置と、
を備え
前記燃料吸着判定装置は、前記脱硫器に対する前記原燃料の供給開始後に所定時間おきに該所定時間内における前記可燃性ガスセンサの検出値の最大値を取得し、前記最大値の今回値と前回値との差分が所定値以上である場合、前記燃料成分の前記脱硫器への吸着が飽和状態に達したと判定することを特徴とする燃料電池システム。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料電池システムにおいて、
前記燃料吸着判定装置は、前記脱硫器に対する前記原燃料の供給開始後における前記可燃性ガスセンサの検出値の変化率に基づいて、前記燃料成分の前記脱硫器への吸着が飽和状態に達したか否かを判定することを特徴とする燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の発明は、アノードガスとカソードガスとの電気化学反応により発電する燃料電池を含む燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の燃料電池システムとして、燃料を改質する改質器に燃料を供給する燃料供給本ラインと、燃料供給本ラインに設けられて燃料に含まれる硫黄分を除去する脱硫器とを含むものが知られている(例えば、特許文献1参照)。この燃料電池システムでは、脱硫器の入口側に燃料を加熱する熱交換器を有する燃料供給仮ラインが接続され、脱硫器の入口側および出口側に流量計が設置されている。そして、当該燃料電池発電システムの起動に際しては、脱硫器の出口側の流量計により、燃料中の燃料成分の脱硫器への吸着が平衡状態(飽和状態)に到達したか否かを計測し、必要な燃料を燃料供給仮ラインから脱硫器に供給する。これにより、起動時等の非定常運転条件下においても常に脱硫器に供給された燃料と概ね同量の燃料が当該脱硫器から流出することになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−320622号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の燃料電池システムでは、燃料成分の脱硫器への吸着が飽和状態に達したかを判定するために、燃料供給仮ラインや複数の流量計等を設置しなければならず、システム全体のコストアップやサイズアップを招いてしまう。更に、上記従来の燃料電池システムでは、脱硫器の出口側の流量計が万が一故障してしまった場合、燃料成分の脱硫器への吸着が飽和状態に達したか否かを判定し得なくなり、燃料電池システムの起動に支障をきたしてしまうおそれがある。
【0005】
そこで、本開示の発明は、燃料電池システムのコストアップやサイズアップを抑制しつつ、原燃料中の燃料成分の脱硫器への吸着が飽和状態に達したか否かを精度よく判定可能にすることを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の燃料電池システムは、アノードガスとカソードガスとの電気化学反応により発電する燃料電池と、原燃料を改質して前記アノードガスを生成する改質器と、前記原燃料から硫黄成分を除去して前記改質器に供給する脱硫器とを含む燃料電池システムにおいて、前記燃料電池から排出される排ガス中の可燃性ガスの濃度を検出する可燃性ガスセンサと、前記脱硫器に前記原燃料が供給される際の前記可燃性ガスセンサの検出値の変化に基づいて、前記原燃料中の燃料成分の前記脱硫器への吸着が飽和状態に達したか否かを判定する燃料吸着判定装置とを備えることを特徴とする。
【0007】
この燃料電池システムは、燃料電池から排出される排ガス中の可燃性ガスの濃度を検出する可燃性ガスセンサを含む。かかる可燃性ガスセンサの検出値(可燃性ガスの濃度)は、脱硫器に対する原燃料の供給が開始されてから当該原燃料中の燃料成分の脱硫器への吸着が飽和状態に達するまでの間、実質的に変化せず、当該吸着が飽和状態に達するのに応じて増加していく。従って、この燃料電池システムのように、脱硫器に原燃料が供給される際の可燃性ガスセンサの検出値の変化を監視することで、流量計等の追設によるシステム全体のコストアップやサイズアップを抑制しつつ、原燃料中の燃料成分の脱硫器への吸着が飽和状態に達したか否かを精度よく判定することが可能となる。
【0008】
また、前記燃料吸着判定装置は、前記脱硫器に対する前記原燃料の供給開始後における前記可燃性ガスセンサの検出値の変化率に基づいて、前記燃料成分の前記脱硫器への吸着が飽和状態に達したか否かを判定するものであってもよい。これにより、脱硫器に原燃料が供給される際の可燃性ガスセンサの検出値の変化をより適正に把握して、燃料成分の脱硫器への吸着が飽和状態に達したか否かを精度よく判定することが可能となる。
【0009】
更に、前記燃料吸着判定装置は、前記脱硫器に対する前記原燃料の供給開始後に所定時間おきに該所定時間内における前記可燃性ガスセンサの検出値の最大値を取得し、前記最大値の今回値と前回値との差分が所定値以上である場合、前記燃料成分の前記脱硫器への吸着が飽和状態に達したと判定するものであってもよい。これにより、燃料成分の脱硫器への吸着が飽和状態に達したか否かをより確実かつ精度よく判定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示の燃料電池システムを示す概略構成図である。
図2】本開示の燃料電池システムにおいて実行される燃料成分吸着ルーチンの一例を示すフローチャートである。
図3図2の燃料成分吸着ルーチンが実行される際の可燃性ガスセンサの検出値の変化を示すタイムチャートである。
図4】本開示の燃料電池システムにおいて実行される燃料成分吸着ルーチンの他の例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、図面を参照しながら、本開示の発明を実施するための形態について説明する。
【0012】
図1は、本開示の燃料電池システム10を示す概略構成図である。同図に示す燃料電池システム10は、アノードガス(燃料ガス)中の水素とカソードガス(酸化剤ガス)中の酸素との電気化学反応により発電する燃料電池FCを有する発電ユニット20と、湯水を貯留する貯湯タンク101を有する給湯ユニット100と、システム全体を制御する制御装置80とを含む。また、発電ユニット20は、燃料電池FCや、断熱性材料により形成された箱型のモジュールケース31、気化器32、改質器33等を含む発電モジュール30と、発電モジュール30の気化器32に例えば天然ガスやLPガスといった原燃料ガス(原燃料)を供給するための原燃料ガス供給系統40と、発電モジュール30の燃料電池FCにカソードガスとしてのエア(空気)を供給するためのエア供給系統50と、発電モジュール30の気化器32に改質水を供給するための改質水供給系統55と、発電モジュール30で発生した排熱を回収するための排熱回収系統60と、燃料電池FCの出力端子に接続されたパワーコンディショナ71と、これらを収容する筐体22とを有する。
【0013】
発電モジュール30の燃料電池FCは、固体酸化物燃料電池であり、例えば酸化ジルコニウム等の電解質と当該電解質を挟持するアノード電極およびカソード電極とを含む単セルを図1中左右方向に複数積層することにより構成された複数(本実施形態では、2つ)のセルスタックCSを含む。各セルのアノード電極極側には、アノードガスを流通させる図示しないアノードガス通路がセルの積層方向と直交する方向(図中上下方向)に延びるように形成されている。また、各セルのカソード電極側には、エアを流通させる図示しないエア通路がセルの積層方向と直交する方向(図中上下方向)に延びるように形成されている。燃料電池FCを構成する2つのセルスタックCSは、断熱材を介してモジュールケース31内に設置されたマニホールド上に並設され、各セルのアノードガス通路は、マニホールドに形成されたアノードガス通路に接続される。また、各セルのエア通路は、モジュールケース31内の図示しないエア供給通路に接続される。
【0014】
発電モジュール30の気化器32および改質器33は、モジュールケース31内の複数のセルスタックCSの上方に両者と間隔をおいて配設される。2つのセルスタックCSと気化器32および改質器33との間には、燃料電池FCの作動や、気化器32および改質器33での反応に必要な熱を発生させる燃焼部34が画成されている。燃焼部34には、点火ヒータ35が設置されると共に、2つのセルスタックCSの一方に近接するように温度センサ36が設置されている。
【0015】
気化器32は、燃焼部34からの熱により原燃料ガス供給系統40からの原燃料ガスと改質水供給系統55からの改質水とを加熱し、原燃料ガスを予熱すると共に改質水を蒸発させて水蒸気を生成する。気化器32により予熱された原燃料ガスは、水蒸気と混ざり合い、予熱された原燃料ガスと水蒸気との混合ガスは、当該気化器32から改質器33に導入される。
【0016】
改質器33は、その内部に充填された例えばRu系またはNi系の改質触媒を有し、燃焼部34からの熱の存在下で、改質触媒による気化器32からの混合ガスの反応(水蒸気改質反応)によって水素ガスと一酸化炭素とを生成する。更に、改質器33は、水蒸気改質反応にて生成された一酸化炭素と水蒸気との反応(一酸化炭素シフト反応)によって水素ガスと二酸化炭素とを生成する。これにより、改質器33によって、水素、一酸化炭素、二酸化炭素、水蒸気、未改質の原燃料ガス等を含むアノードガスが生成されることになる。
【0017】
改質器33により生成されたアノードガスは、上記マニホールドやセルスタックCSの各セルのアノードガス通路等を介して各セルのアノード電極に供給される。また、セルスタックCSの各セルのカソード電極には、各セルのエア通路等を介して酸素を含むカソードガスとしてのエアが供給される。カソード電極では、酸化物イオン(O2-)が生成され、当該酸化物イオンが電解質を透過してアノード電極で水素や一酸化炭素と反応することにより電気エネルギが得られる。また、各セルスタックCSにおいて電気化学反応(発電)に使用されなかったアノードガス(以下、「アノードオフガス」という)およびエア(以下、「カソードオフガス」という)は、各セルのアノードガス通路やエア通路から上方の燃焼部34へと流出する。
【0018】
各セルのアノードガス通路から燃焼部34に流入したアノードオフガスは、水素や一酸化炭素等の燃料成分を含む可燃性ガスであり、各セルのエア通路から燃焼部34に流入した酸素を含むカソードオフガスと混ざり合う。以下、アノードオフガスとカソードオフガスとの混合ガスを「オフガス」という。そして、点火ヒータ35により点火させられて燃焼部34でオフガス(アノードオフガス)が着火すると、当該オフガスの燃焼により、燃料電池FCの作動や、気化器32での原燃料ガスの予熱や水蒸気の生成、改質器33での水蒸気改質反応等に必要な熱が発生することになる。また、オフガスの燃焼に伴い、燃焼部34では、水蒸気を含む燃焼排ガスが生成される。
【0019】
図1に示すように、気化器32に原燃料ガスを供給するための原燃料ガス供給系統40は、天然ガスやLPガスを供給する原燃料供給源1と気化器32とを結ぶ原燃料ガス供給管41と、当該原燃料ガス供給管41に組み込まれた原燃料ガス供給弁(電磁開閉弁)42,43および原燃料ガスポンプ45と、気化器32と原燃料ガスポンプ45との間に位置するように原燃料ガス供給管41に組み込まれた脱硫器46とを含む。更に、原燃料ガス供給管41には、当該原燃料ガス供給管41内の原燃料ガスの圧力を検出する圧力センサ47や、原燃料ガス供給管41を流通する原燃料ガスの単位時間あたりの流量を検出する流量センサ48が設置されている。
【0020】
脱硫器46は、例えばゼオライト等の吸着剤を用いて原燃料ガスから硫黄成分(硫黄化合物)を除去するものである。また、かかる脱硫器46に対する原燃料ガスの供給が開始されると、硫黄成分と共に原燃料ガス中の燃料成分(メタン等の炭化水素)が上記吸着剤に物理的に吸着する。当該燃料成分の吸着剤(脱硫器46)への吸着が飽和状態に達するまで、脱硫器46から流出する燃料成分の量は、実質的にゼロとなり、当該吸着が飽和状態に達すると、脱硫器46への燃料成分の流入量と、当該脱硫器46からの燃料成分の流出量とが理論上一致することになる。なお、脱硫器46の脱硫方式は、いわゆる常温脱硫式に限られるものではない。
【0021】
エア供給系統50は、モジュールケース31内のエア供給通路に接続されるエア供給管51と、エア供給管51のエア入口に設置されたエアフィルタ52と、エア供給管51に組み込まれたエアブロワ53とを含む。エアブロワ53を作動させることで、エアフィルタ52を介して吸入されたエアが当該エアブロワ53により燃料電池FCへと圧送(供給)される。また、エア供給管51には、当該エア供給管51を流通するエアの単位時間あたりの流量が所定値に達するとオンする流量スイッチ54が設置されている。
【0022】
改質水供給系統55は、気化器32に接続された改質水供給管56と、改質水供給管56に接続されると共に改質水を貯留する改質水タンク57と、改質水供給管56に組み込まれた改質水ポンプ58とを含む。改質水ポンプ58を作動させることで、改質水タンク57内の改質水が当該改質水ポンプ58により気化器32へと圧送(供給)される。また、改質水タンク57内には、貯留されている改質水を精製する図示しない水精製器が設置されている。
【0023】
排熱回収系統60は、給湯ユニット100の貯湯タンク101に接続された循環配管61と、循環配管61を流通する湯水と発電モジュール30の燃焼部34からの燃焼排ガスとを熱交換させる熱交換器62と、循環配管61に組み込まれた循環ポンプ63とを含む。循環ポンプ63を作動させることで、当該循環ポンプ63により貯湯タンク101に貯留されている湯水を熱交換器62へと導入し、熱交換器62で燃焼排ガスから熱を奪って昇温した湯水を貯湯タンク101へと返送することができる。
【0024】
また、排熱回収系統60の熱交換器62(燃焼排ガスの通路)は、凝縮水供給管66を介して改質水タンク57に接続されており、燃焼排ガス中の水蒸気が貯湯タンク101からの湯水との熱交換により凝縮することにより得られた凝縮水は、当該凝縮水供給管66を介して改質水タンク57内に導入される。更に、熱交換器62の燃焼排ガスの通路は、排気管67に接続されており、当該排気管67は、発電ユニット20の筐体の外部に設置される煙突200に接続される。これにより、発電モジュール30の燃焼部34(燃料電池FC)から排出されて熱交換器62で水分が除去された排ガスは、排気管67および煙突200を介して大気中に排出される。
【0025】
図1に示すように、煙突200の内部には、当該煙突200内の排ガス中の可燃性ガス(燃料成分)の濃度を検出する可燃性ガスセンサ201が設置されている。本実施形態において、可燃性ガスセンサ201は、コイルおよび当該コイル上に固定されると共に白金触媒等の酸化触媒(燃焼触媒)を担持したアルミナ等の担体を含む検知素子と、酸化触媒をもたない補償素子とにより構成されたブリッジ回路を有する触媒燃焼式ガスセンサである。かかる触媒燃焼式ガスセンサにおいて、電流の印加によって触媒燃焼反応を生じやすい温度(例えば200〜500℃)に保持された検知素子が可燃性ガスに触れると、触媒燃焼反応に伴う発熱により抵抗値が変化してブリッジ回路の平衡が崩れ、当該ブリッジ回路の出力端子には、可燃性ガスの濃度に概ね比例した電圧(不均衡電圧)が出力される。これにより、可燃性ガスセンサ201は、煙突200内を流通する排ガス中の可燃性ガスの濃度に応じた電圧信号を出力する。また、当該ブリッジ回路の抵抗値は、可燃性ガスの存在しない雰囲気下(可燃性ガス濃度:ゼロ)での通電時のセンサ出力(最小出力値Gmin)と、非通電時のセンサ出力とが互いに異なるように調整される。
【0026】
パワーコンディショナ71は、燃料電池FCの出力端子に接続されて当該燃料電池FCからの直流電力を昇圧するDC/DCコンバータと、DC/DCコンバータからの直流電力を交流電力に変換するインバータとを有する(何れも図示省略)。パワーコンディショナ71(インバータ)の出力端子は、系統電源2に接続された電力ライン3に接続される。これにより、燃料電池FCからの直流電力を交流電力に変換して家電製品等の負荷4に供給することが可能となる。更に、燃料電池システム10は、電力ライン3に接続された電源基板72を含む。電源基板72は、系統電源2からの交流電力を直流電力に変換するAC/DCコンバータを有しており、原燃料ガス供給弁42,43や原燃料ガスポンプ45、エアブロワ53、改質水ポンプ58、循環ポンプ63といった補機類、温度センサ36や可燃性ガスセンサ201といったセンサ類、更には制御装置80等に直流電力を供給する。
【0027】
また、パワーコンディショナ71や電源基板72等が配置される補機室内には、当該パワーコンディショナ71や電源基板72等を冷却するための冷却ファン(図示省略)と、換気ファン24とが配置されている。図示しない冷却ファンは、パワーコンディショナ71や電源基板72の発熱部にエアを送り込み、当該発熱部を冷却して昇温したエアは、換気ファン24により煙突200の内部に送り込まれる。
【0028】
制御装置80は、CPU81や、各種プログラムを記憶するROM82、データを一時的に記憶するRAM83、タイマ84、何れも図示しない入力ポートおよび出力ポート等を含むコンピュータである。制御装置80は、温度センサ36や、圧力センサ47、流量センサ48、可燃性ガスセンサ201の検出値や流量スイッチ54からの信号等を入力ポートを介して入力する。また、制御装置80は、換気ファン24や、点火ヒータ35、原燃料ガス供給弁42,43のソレノイド、原燃料ガスポンプ45、エアブロワ53、改質水ポンプ58、循環ポンプ63、パワーコンディショナ71(DC/DCコンバータおよびインバータ)、表示パネル90等への制御信号を出力ポートを介して出力し、これらの機器を制御する。
【0029】
更に、制御装置80は、燃料電池システム10の起動に際して、対応する補機類を順次制御して、エアブロワの暖機処理、脱硫器46に原燃料ガス中の燃料成分を吸着させる前の冷却処理、脱硫器46に燃料成分を吸着させて混合ガスの空燃比ずれを抑制する燃料吸着処理、燃焼部34のパージ処理、燃焼部34におけるオフガスの着火処理、水蒸気改質処理等を実行する。これらの処理が実行されることにより、燃料電池システム10が起動され、燃料電池FCによる発電や給湯ユニット100による給湯が可能となる。ただし、これらの起動処理は、あくまで一例であり、燃料電池システム10の構成や補機類の状態等によっては、これらの処理の少なくとも何れかをスキップまたは省略してもよい。
【0030】
次に、図2および図3を参照しながら、脱硫器46に原燃料ガス中の燃料成分を吸着させる手順について説明する。図2は、脱硫器46に原燃料ガス中の燃料成分を吸着させるために制御装置80により実行される燃料成分吸着ルーチンの一例を示すフローチャートである。また、図3は、図2の燃料成分吸着ルーチンが実行される際の可燃性ガスセンサ201の検出値Gの変化を示すタイムチャートである。なお、図2のルーチンが実行される際、燃焼部34でオフガスが燃焼させられることはなく、気化器32での原燃料ガスの予熱や水蒸気の生成、改質器33での水蒸気改質反応は実行されない。
【0031】
図2の燃料成分吸着ルーチンの開始に際して、制御装置80のCPU81は、まず、原燃料ガスポンプ45を作動させて燃料電池FC(脱硫器46)側への原燃料ガスの供給を開始させると共に、エアブロワ53を作動させてエア供給系統50から燃料電池FC(各セルスタックCS)へのエア(カソードガス)の供給を開始させる(ステップS100)。原燃料ガスおよびエアの供給開始後、CPU81は、燃料電池FC側への原燃料ガスの単位時間あたりの流量と、燃料電池FC側へのエアの単位時間あたりの流量とが、それぞれ予め定められた一定値になるように原燃料ガスポンプ45とエアブロワ53とを制御する。
【0032】
また、原燃料ガスおよびエアの供給開始後、CPU81は、比較的短い周期で可燃性ガスセンサ201の検出値Gを入力し、入力した検出値Gに基づいて、予め定められた時間tref(例えば、1分程度)内における可燃性ガスセンサ201の検出値Gの最大値Gmaxを取得する(ステップS110)。ステップS110において、CPU81は、入力した検出値G(今回値)と、それまでの検出値Gの最大値(仮の最大値)との大きい方を当該仮の最大値とする処理を上記周期に従って繰り返し実行することにより、時間tref内における検出値Gの最大値Gmaxを取得する。なお、本ルーチンの開始直後に用いられる上記仮の最大値の初期値は、例えば可燃性ガスセンサ201の最小出力値Gminとされる。
【0033】
ステップS110にて可燃性ガスセンサ201の検出値Gの最大値Gmaxを取得した後、CPU81は、取得した最大値Gmax(今回値)から当該最大値Gmaxの前回値Gmax_oldを減じることにより、両者の差分ΔG(=Gmax−Gmax_old)を算出する(ステップS120)。前回値Gmax_oldは、ステップS120にて最大値Gmaxが取得される直前の最大値Gmaxであり、本ルーチンの開始直後に用いられる前回値Gmax_oldの初期値は、例えば可燃性ガスセンサ201の最小出力値Gminとされる。
【0034】
次いで、CPU81は、ステップS120にて算出した差分ΔGが実験・解析を経て予め定められた閾値(所定値)ΔGref以上であるか否かを判定する(ステップS130)。ステップS130にて差分ΔGが閾値ΔGref未満であると判定した場合、CPU81は、上述のステップS110およびS120の処理を再度実行する。これにより、ステップS100にて脱硫器46に対する原燃料ガスの供給が開始された後に、ステップS130にて差分ΔGが閾値ΔGref未満であると判定される間、時間tref内における可燃性ガスセンサ201の検出値Gの最大値Gmaxが当該時間trefおきに取得され、最大値Gmaxと前回値Gmax_oldとの差分ΔGが閾値ΔGrefと比較される。
【0035】
ここで、原燃料ガスの供給開始(図3における時刻t0)の後であって燃料成分の上記吸着剤(脱硫器46)への吸着が飽和状態に達する前には、原脱硫器46に流入する原燃料ガス中の燃料成分の殆どが吸着剤に対して吸着し、燃料電池FCからのオフガス中には、燃料成分が実質的に含まれないことになる。そして、燃料成分の脱硫器46への吸着が飽和状態に近づくと、脱硫器46から流出する燃料成分の量が少しずつ増加し、当該吸着が飽和状態に達すると(図3における時刻t1と時刻t2との間)、脱硫器46に対する燃料成分の単位時間あたりの流入量と、燃料電池FCから単位時間あたりに流出するアノードオフガス中の燃料成分の量とが概ね一致する。ただし、脱硫器46からの燃料成分の流出量が増え始めてから、原燃料ガス中の燃料成分の量に応じた可燃性ガスを含む排ガスが煙突200内の可燃性ガスセンサ201に達するまでには多少の時間を要する。このため、可燃性ガスセンサ201の検出値G(煙突200内の可燃性ガスの濃度)は、図3に示すように、脱硫器46に対する原燃料ガスの供給が開始されてから燃料成分の脱硫器46への吸着が飽和状態に達するまでの間、ほぼ最小出力値Gminのまま実質的に変化せず、当該吸着が飽和状態に達するのに応じて比較的大きな勾配で増加していく。
【0036】
従って、CPU81は、ステップS130にて上記差分ΔGが閾値ΔGref以上であると判定した場合、燃料成分の脱硫器46への吸着が飽和状態に達したとみなして燃料吸着飽和フラグをオンする(ステップS140)、更に、CPU81は、原燃料ガスおよびエアの供給を停止させ(ステップS150)、本ルーチンを終了させる。ステップS140にて燃料吸着飽和フラグがオンされて本ルーチンが終了した後、パージラインを用いた燃焼部34のパージ処理が実行され、その後、オフガス着火処理や水蒸気改質処理といった起動処理が順次実行される。
【0037】
上述のように、燃料電池FCからの排ガス中の可燃性ガスの濃度を検出する可燃性ガスセンサ201を含む燃料電池システム10では、脱硫器46に原燃料ガスが供給される際の可燃性ガスセンサ201の検出値Gの変化を監視することで、流量計等の追設によるシステム全体のコストアップやサイズアップを抑制しつつ、原燃料ガス中の燃料成分の脱硫器46への吸着が飽和状態に達したか否かを精度よく判定することが可能となる。また、燃料電池システム10において、制御装置80のCPU81は、脱硫器46に対する原燃料ガスの供給開始後に時間trefおきに当該時間tref内における可燃性ガスセンサ201の検出値Gの最大値Gmaxを取得し、取得した最大値Gmax(今回値)と前回値Gmax_oldとの差分ΔGが閾値ΔGref以上である場合、燃料成分の脱硫器46への吸着が飽和状態に達したと判定する(図2のステップS110−S140)。これにより、燃料成分の脱硫器46への吸着が飽和状態に達したか否かをより確実かつ精度よく判定することが可能となる。
【0038】
なお、燃料電池システム10において、可燃性ガスセンサ201は、煙突200内に設置されるが、これに限られるものではない。すなわち、燃料電池システム10から煙突200が省略される場合には、可燃性ガスセンサ201が排気管67内に設置されてもよい。また、図2の燃料成分吸着ルーチンは、流量計を用いた燃料成分の吸着判定処理と併用されてもよい。これにより、可燃性ガスセンサ201や流量計が故障した際の冗長性を確保することが可能となる。
【0039】
また、図2の燃料成分吸着ルーチンにおける差分ΔGは、検出値Gの上記時間trefあたりの変化率を示すものともいえる。従って、図4に示す燃料成分吸着ルーチンのように、脱硫器46に対する原燃料ガスの供給開始後における可燃性ガスセンサ201の検出値Gの変化率(変化勾配)自体に基づいて、燃料成分の脱硫器46への吸着が飽和状態に達したか否かを判定してもよい。
【0040】
制御装置80により図4の燃料成分吸着ルーチンが実行される場合、CPU81は、原燃料ガスおよびエアの供給を開始させると(ステップS200)、比較的短く定められた周期dtで可燃性ガスセンサ201の検出値Gを取得し、検出値Gの今回値から前回値(初期値:最小出力値Gmin)を減じた値を周期dtで除することにより可燃性ガスセンサ201の検出値Gの変化率dGを算出する(ステップS210)。次いで、CPU81は、変化率dGが実験・解析を経て予め定められた閾値(所定値)dGref以上であるか否かを判定する(ステップS220)。ステップS220にて変化率dGが閾値dGref未満であると判定した場合、CPU81は、上記周期dtに従ってステップS210およびS220の処理を再度実行する。
【0041】
また、ステップS220にて変化率dGが閾値dGref以上であると判定した場合、CPU81は、カウンタC(初期値:ゼロ)をインクリメントし(ステップS230)、当該カウンタCが予め定められた閾値Cref以上であるか否かを判定する(ステップS240)。ステップS240にてカウンタCが閾値Cref未満であると判定した場合、CPU81は、ステップS210以降の処理を再度実行する。そして、CPU81は、ステップS240にてカウンタCが閾値Cref以上であると判定した場合、燃料成分の脱硫器46への吸着が飽和状態に達したとみなし、カウンタCをリセットすると共に、燃料吸着飽和フラグをオンする(ステップS250)、更に、CPU81は、原燃料ガスおよびエアの供給を停止させ(ステップS260)、図5のルーチンを終了させる。このように、脱硫器46に対する原燃料ガスの供給開始後における可燃性ガスセンサ201の検出値Gの変化率dGを用いても、脱硫器46に原燃料ガスが供給される際の可燃性ガスセンサ201の検出値Gの変化をより適正に把握して、燃料成分の脱硫器46への吸着が飽和状態に達したか否かを精度よく判定することが可能となる。
【0042】
以上説明したように、本開示の燃料電池システム10は、燃料電池FCから排出される排ガス中の可燃性ガスの濃度を検出する可燃性ガスセンサ201と、脱硫器46に原燃料ガスが供給される際の可燃性ガスセンサ201の検出値Gの変化に基づいて、原燃料ガス中の燃料成分の脱硫器46への吸着が飽和状態に達したか否かを判定する燃料吸着判定装置としての制御装置80とを含む。これにより、流量計等の追設によるシステム全体のコストアップやサイズアップを抑制しつつ、原燃料ガス中の燃料成分の脱硫器46への吸着が飽和状態に達したか否かを精度よく判定することが可能となる。
【0043】
なお、本開示の発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本開示の外延の範囲内において様々な変更をなし得ることはいうまでもない。更に、上記実施形態は、あくまで発明の概要の欄に記載された発明の具体的な一形態に過ぎず、発明の概要の欄に記載された発明の要素を限定するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本開示の発明は、燃料電池システムの製造産業等において利用可能である。
【符号の説明】
【0045】
1 原燃料供給源、2 系統電源、3 電力ライン、4 負荷、10 燃料電池システム、20 発電ユニット、22 筐体、24 換気ファン、30 発電モジュール、31 モジュールケース、32 気化器、33 改質器、34 燃焼部、35 点火ヒータ、36 温度センサ、40 原燃料ガス供給系統、41 原燃料ガス供給管、42,43 原燃料ガス供給弁、45 原燃料ガスポンプ、46 脱硫器、47 圧力センサ、48 流量センサ、50 エア供給系統、51 エア供給管、52 エアフィルタ、53 エアブロワ、54 流量スイッチ、55 改質水供給系統、56 改質水供給管、57 改質水タンク、58 改質水ポンプ、60 排熱回収系統、61 循環配管、62 熱交換器、63 循環ポンプ、66 凝縮水供給管、67 排気管、71 パワーコンディショナ、72 電源基板、80 制御装置、81 CPU、82 ROM、83 RAM、84 タイマ、90 表示パネル、100 給湯ユニット、101 貯湯タンク、200 煙突、201 可燃性ガスセンサ、CS セルスタック、FC 燃料電池。
図1
図2
図3
図4