特許第6809097号(P6809097)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6809097モータ、および電動パワーステアリング装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6809097
(24)【登録日】2020年12月14日
(45)【発行日】2021年1月6日
(54)【発明の名称】モータ、および電動パワーステアリング装置
(51)【国際特許分類】
   H02K 5/04 20060101AFI20201221BHJP
【FI】
   H02K5/04
【請求項の数】9
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-192592(P2016-192592)
(22)【出願日】2016年9月30日
(65)【公開番号】特開2018-57193(P2018-57193A)
(43)【公開日】2018年4月5日
【審査請求日】2019年8月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】日本電産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】特許業務法人 志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村上 俊輔
(72)【発明者】
【氏名】新子 剛央
(72)【発明者】
【氏名】児玉 光生
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 裕也
【審査官】 田村 耕作
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−263768(JP,A)
【文献】 特開2001−286095(JP,A)
【文献】 実開昭61−043747(JP,U)
【文献】 特開2013−224169(JP,A)
【文献】 特開2013−090376(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0083583(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 5/00−5/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方向に延びる中心軸に沿って配置され、軸方向の一方側を出力側とし、軸方向の他方側を反出力側とするシャフトを有するロータと、
前記ロータの径方向外側に配置されたステータと、
前記ロータおよび前記ステータを収容するハウジングと、
前記ハウジングに固定された雌ネジ部材と、
を備え、
前記ハウジングは、
第1部材と、
前記第1部材と別部材で、かつ、前記雌ネジ部材が固定された第2部材と、
を有し、
前記第1部材は、前記ステータを囲む第1筒部と、を有し、
前記第2部材は、
筒状であり、前記第1筒部の外周面に固定される第2筒部と、
前記第2筒部の軸方向出力側の端部から径方向外側に延びた第1フランジ部と、
前記第1フランジ部を軸方向に貫通する第1貫通孔と、
を有し、
前記雌ネジ部材は、
軸方向に延びる筒状の部材であり、
軸方向出力側から軸方向反出力側に窪む雌ネジ穴を有し、かつ、前記第1フランジ部の軸方向反出力側の面に固定され、
前記雌ネジ穴は、軸方向に沿って視て前記第1貫通孔と重なる位置に配置され
前記第2筒部と前記雌ネジ部材との間には間隙が構成され、
前記第1筒部、前記第2筒部、および前記雌ネジ部材は、径方向に重なる、
モータ。
【請求項2】
前記雌ネジ部材は、周方向に複数配置され、
前記第1フランジ部は、前記第1貫通孔を周方向に複数有し、
複数の前記雌ネジ部材の前記雌ネジ穴は、軸方向に沿って視て複数の前記第1貫通孔のそれぞれと重なる位置に配置されている、請求項に記載のモータ。
【請求項3】
前記第1フランジ部と前記雌ネジ部材とを固定する固定部をさらに備え、
前記固定部は、溶接部またはカシメ部である、請求項1または2のいずれか一項に記載のモータ。
【請求項4】
前記雌ネジ穴の内径は、前記第1貫通孔の内径よりも小さい、
請求項1から3のいずれか一項に記載のモータ。
【請求項5】
前記ハウジングは、前記第1フランジ部よりも軸方向反出力側において前記第1筒部から径方向外側に延びた第2フランジ部を有し、
前記第2フランジ部は、前記第2フランジ部を軸方向に貫通する第2貫通孔を有し、
前記第2貫通孔は、周方向において、前記雌ネジ部材と異なる位置に配置されている、
請求項1から4のいずれか一項に記載のモータ。
【請求項6】
前記ハウジングとは別部材である、環状の連結部材と、をさらに有し、
前記連結部材は、
筒状であり、前記第1筒部の軸方向反出力側の外周面に取り付けられる第3筒部と、
前記第3筒部から径方向外側に突出する第2フランジ部と、
を有し、
前記第2フランジ部は、前記第2フランジ部を軸方向に貫通する第2貫通孔を有し、
前記第2貫通孔は、周方向において、前記雌ネジ部材と異なる位置に配置されている、
請求項1から4のいずれか一項に記載のモータ。
【請求項7】
前記ステータと電気的に接続されたバスバーをさらに備える、請求項1から6のいずれか一項に記載のモータ。
【請求項8】
前記ステータに供給される電流を制御する制御装置をさらに備える、請求項7に記載のモータ。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載のモータを備える電動パワーステアリング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ、および電動パワーステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、他の部材との被取付部が設けられたハウジングを有するモータが知られている。例えば、特許文献1のモータハウジングには、モータと減速機とを締結する締結用ネジのための締結用ネジ穴が設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−187794号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようなハウジングを、製造コストを低減する観点から、板材をプレス加工することによって製造することが考えられる。しかし、この場合、ハウジングの厚みが薄くなるため、ハウジングの被取付部に設けるネジ穴の長さが短くなる。したがって、モータを他の部材に固定する際の取付強度を十分に確保できない場合あった。
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑みて、製造コストを低減しつつ、他の部材との取付強度を確保できる構造を有するモータ、およびそのようなモータを備える電動パワーステアリング装置を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一つの態様のモータは、 一方向に延びる中心軸に沿って配置され、軸方向の一方側を出力側とし、軸方向の他方側を反出力側とするシャフトを有するロータと、 前記ロータの径方向外側に配置されたステータと、前記ロータおよび前記ステータを収容するハウジングと、前記ハウジングに固定された雌ネジ部材と、を備え、前記ハウジングは、第1部材と、前記第1部材と別部材で、かつ、前記雌ネジ部材が固定された第2部材と、を有し、前記第1部材は、前記ステータを囲む第1筒部と、前記第1筒部の軸方向出力側の端部に配置される底部と、を有し、前記第2部材は、筒状であり、前記第1筒部の外周面に固定される第2筒部と、前記第2筒部の軸方向出力側の端部から径方向外側に延びた第1フランジ部と、前記第1フランジ部を軸方向に貫通する第1貫通孔と、を有し、前記雌ネジ部材は、軸方向に延びる筒状の部材であり、軸方向出力側から軸方向反出力側に窪む雌ネジ穴を有し、かつ、前記第1フランジ部の軸方向反出力側の面に固定され、前記雌ネジ穴は、軸方向に沿って視て前記第1貫通孔と重なる位置に配置され、前記第2筒部と前記雌ネジ部材との間には間隙が構成され、前記第1筒部、前記第2筒部、および前記雌ネジ部材は、径方向に重なる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、製造コストを低減しつつ、他の部材との取付強度を確保できる構造を有するモータ、およびそのようなモータを備える電動パワーステアリング装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本実施形態のモータを示す断面図である。
図2図2は、本実施形態のモータを示す斜視図である。
図3図3は、本実施形態のモータの部分を示す断面図である。
図4図4は、本実施形態の他の一例であるモータの部分を示す断面図である。
図5図5は、本実施形態の電動パワーステアリング装置を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1に示すように、本実施形態のモータ10は、ロータ30と、ステータ40と、ハウジング20と、第1軸受51と、第2軸受52と、雌ネジ部材90と、制御装置80と、を備える。ロータ30は、シャフト31およびロータコア32を有する。シャフト31は、一方向に延びる中心軸Jに沿って配置されている。図1において一方向は、上下方向である。以下の説明においては、中心軸Jと平行な方向を単に「軸方向」と呼び、中心軸Jを中心とする径方向を単に「径方向」と呼び、中心軸Jを中心とする周方向を単に「周方向」と呼ぶ。
【0010】
シャフト31は、軸方向の一方側を出力側とし、軸方向の他方側を反出力側とする。図1では、下側が軸方向の一方側、すなわち出力側であり、上側が軸方向の他方側、すなわち反出力側である。本明細書において「出力側」とは、モータ10の出力が取り出される側であり、シャフト31において他の部材が取り付けられる側である。本明細書において「反出力側」とは、出力側と反対の側である。以下の説明においては、図1における下側を「軸方向出力側」と呼び、図1における上側を「軸方向反出力側」と呼ぶ。
【0011】
ロータコア32は、シャフト31の外周面に直接的または間接的に固定されている。図1では、ロータコア32は、シャフト31の外周面に直接的に固定されている。ステータ40は、ロータ30の径方向外側に配置されている。ステータ40は、環状のステータコア41と、ステータコア41に装着されたインシュレータ42と、インシュレータ42を介してステータコア41に装着されたコイル43と、を有する。
【0012】
ハウジング20は、ロータ30およびステータ40を収容する。図1および図2に示すように、ハウジング20は、ハウジング本体21と、モータ固定部材22と、蓋部材23と、連結部材27と、を有する。ハウジング本体21は、中心軸Jを中心として軸方向に延びた有底の円筒状である。ハウジング本体21は、例えば、プレス加工によって製造される。ハウジング本体21は、第1部材に相当する。図1に示すように、ハウジング本体21は、第1筒部21bと、底部21aと、を有する。第1筒部21bは、ステータ40を囲んでいる。第1筒部21bの内周面には、ステータ40の外周面が固定されている。これにより、ハウジング本体21は、ステータ40を保持する。第1筒部21bは、軸方向反出力側に開口している。
【0013】
底部21aは、第1筒部21bの軸方向出力側の端部に配置されている。底部21aは、ステータ40の軸方向出力側を覆っている。底部21aは、軸方向出力側から軸方向反出力側に窪む嵌合部24と、第1軸受51を保持する第1軸受保持部25と、を有する。嵌合部24は、底部21aの中央に配置されている。嵌合部24の内径は、軸方向出力側から軸方向反出力側に向かうに従って小さくなる。嵌合部24は、ロータコア32よりも軸方向出力側に配置されている。第1軸受保持部25は、嵌合部24の径方向内側に配置されている。第1軸受保持部25は、中心軸Jを中心とし、軸方向出力側に突出する円筒状である。第1軸受保持部25の中央には、底部21aを軸方向に貫通する孔部25aが設けられている。
【0014】
図1および図2に示すように、モータ固定部材22は、中心軸Jを中心とする円環状の部材である。モータ固定部材22は、ハウジング本体21と別部材である。モータ固定部材22は、例えば、プレス加工によって製造される。モータ固定部材22は、ハウジング本体21の外周面に固定されている。モータ固定部材22は、第2部材に相当する。モータ固定部材22は、第2筒部22aと、第1フランジ部22bと、を有する。第2筒部22aは、中心軸Jを中心とする円筒状である。第2筒部22aは、ハウジング本体21の軸方向出力側の端部に、嵌め合わされて固定されている。
【0015】
第1フランジ部22bは、第2筒部22aの軸方向出力側の端部から径方向外側に延びた板状である。第1フランジ部22bは、ロータコア32よりも軸方向出力側に配置されている。図2に示すように、第1フランジ部22bは、鍔部22cと、突出板部22dと、を有する。鍔部22cは、中心軸Jを中心とする円環板状である。突出板部22dは、鍔部22cから径方向外側に突出する板状である。本実施形態において突出板部22dは、2つ設けられている。2つの突出板部22dは、中心軸Jを径方向に挟んで配置されている。突出板部22dの周方向の寸法は、径方向内側から径方向外側に向かうに従って小さくなる。突出板部22dの径方向外縁の平面視形状は、径方向外側に凸となる円弧状である。
【0016】
図1に示すように、蓋部材23は、ハウジング本体21の軸方向反出力側の端部に固定されている。蓋部材23は、ステータ40の軸方向反出力側を覆っている。蓋部材23は、第2軸受保持部26を有する。第2軸受保持部26は、中心軸Jを中心として軸方向出力側に突出する円筒状である。蓋部材23は、例えば、ダイカストによって製造される。
【0017】
図2に示すように、連結部材27は、中心軸Jを中心とする円環状の部材である。連結部材27は、ハウジング本体21と別部材である。連結部材27は、例えば、ダイカストによって製造される。連結部材27は、ハウジング本体21の外周面に固定されている。連結部材27は、第3筒部27aと、第2フランジ部27bと、を有する。すなわち、ハウジング20は、第2フランジ部27bを有する。第3筒部27aは、中心軸Jを中心とする円筒状である。第3筒部27aは、ハウジング本体21の軸方向反出力側の端部に、嵌め合わされて固定されている。
【0018】
第2フランジ部27bは、第3筒部27aから径方向外側に突出する。第2フランジ部27bは、後述する板状部20bよりも軸方向反出力側において後述する筒状部20aから径方向外側に延びている。第2フランジ部27bの周方向の寸法は、径方向内側から径方向外側に向かうに従って小さくなる。第2フランジ部27bの径方向外縁の平面視形状は、径方向外側に凸となる円弧状である。第2フランジ部27bは、第2フランジ部27bを軸方向に貫通する第2貫通孔27cを有する。第2貫通孔27cの形状は、例えば、円形状である。第2貫通孔27cは、例えば、制御装置80をハウジング20に固定するためのネジが通される孔である。
【0019】
本実施形態において第2フランジ部27bは、2つ設けられている。2つの第2フランジ部27bは、中心軸Jを径方向に挟んで配置されている。2つの第2フランジ部27bの周方向位置は、2つの突出板部22dの周方向位置と異なる。
【0020】
図1および図2に示すように、本実施形態においては、第1筒部21bと第2筒部22aと第3筒部27aとによって筒状部20aが構成されている。底部21aと第1フランジ部22bとによって板状部20bが構成されている。すなわち、ハウジング20は、ステータ40を囲む筒状部20aと、筒状部20aの径方向に拡がる板状部20bと、を有する。また、板状部20bは、筒状部20aから径方向外側に延びた第1フランジ部22bを含む。
【0021】
板状部20bは、板状部20bを軸方向に貫通する第1貫通孔22eを有する。本実施形態において第1貫通孔22eは、第1フランジ部22bに配置されている。より詳細には、第1貫通孔22eは、2つの突出板部22dのそれぞれに配置されている。これにより、第1フランジ部22bは、第1貫通孔22eを周方向に複数有する。第1貫通孔22eの形状は、例えば、円形状である。
【0022】
図1に示すように、第1軸受51は、ロータコア32よりも軸方向出力側においてシャフト31を支持している。第2軸受52は、ロータコア32よりも軸方向反出力側においてシャフト31を支持している。第1軸受51および第2軸受52は、例えば、ボールベアリングである。
【0023】
雌ネジ部材90は、軸方向に延びた多角筒状の部材である。雌ネジ部材90は、ハウジング20に固定されている。雌ネジ部材90は、板状部20bの軸方向反出力側の面に固定されている。より詳細には、雌ネジ部材90は、突出板部22dの軸方向反出力側の面に固定されている。すなわち、雌ネジ部材90は、第1フランジ部22bの軸方向反出力側の面に固定されている。図3に示すように、雌ネジ部材90は、軸方向出力側から軸方向反出力側に窪む雌ネジ穴93を有する。雌ネジ穴93の内側面には、雌ネジ部(ネジ山)が設けられている。雌ネジ部は、雌ネジ穴93の内側面の全体に設けられていてもよいし、一部に設けられていてもよい。雌ネジ穴93は、軸方向に沿って視て第1貫通孔22eと重なる位置に配置されている。
【0024】
そのため、第1貫通孔22eに通されるボルトBを雌ネジ穴93に締め込むことができる。これにより、ボルトBによってモータ10と他の部材とを固定することができる。具体的には、組立者は、第1フランジ部22bの軸方向出力側の面に他の部材の被取付部Mを重ね合わせ、被取付部Mのボルト挿通孔Maに軸方向出力側からボルトBを挿入する。そして、組立者は、ボルトBを雌ネジ穴93に締め込み、雌ネジ部材90と被取付部Mとで第1フランジ部22bを挟み込むことによって、被取付部Mと第1フランジ部22bとを固定する。このように、モータ10と他の部材とを固定するボルトBを締め込む雌ネジ穴93を有する雌ネジ部材90がハウジング20に固定されているため、ハウジング20の厚み、すなわち本実施形態では第1フランジ部22bの厚みが小さい場合であっても、ボルトBが締め込まれるネジ穴の長さを確保できる。これにより、本実施形態のモータ10によれば、第1フランジ部22bを例えばプレス加工等によって製造して製造コストを低減しつつ、他の部材との取付強度を確保できる。
【0025】
本明細書において「雌ネジ穴は、軸方向に沿って視て第1貫通孔と重なる位置に配置されている」とは、第1貫通孔に通されるボルトBを雌ネジ穴に締め込めればよく、軸方向に沿って視て雌ネジ穴の中心と第1貫通孔の中心とが一致していなくてもよい。本実施形態では、軸方向に沿って視て雌ネジ穴93の中心と第1貫通孔22eの中心とが一致している。
【0026】
本実施形態によれば、雌ネジ部材90は、筒状部20aから径方向外側に延びた第1フランジ部22bに固定されているため、ハウジング20に雌ネジ部材90を固定することが容易である。
【0027】
本実施形態によれば、雌ネジ部材90が固定されたモータ固定部材22は、ステータ40を保持するハウジング本体21とは別部材である。そのため、モータ固定部材22の構成を変更することで、雌ネジ部材90の数および配置等を容易に変更することができる。また、例えば、モータ固定部材22をハウジング本体21に固定する前に、モータ固定部材22に雌ネジ部材90を固定することもできる。この場合、雌ネジ部材90の固定が容易である。
【0028】
他の部材が第1フランジ部22bに固定される際、例えば、嵌合部24には、他の部材が嵌め合わされる。これにより、他の部材がモータ10に対して位置決めされる。このように、本実施形態において嵌合部24および第1フランジ部22bは、モータ10の被取付部に相当する。
【0029】
本実施形態において雌ネジ穴93は、雌ネジ部材90を軸方向に貫通する孔である。雌ネジ穴93の内径は、第1貫通孔22eの内径よりも小さい。本実施形態において雌ネジ部材90は、本体部91と、圧入部92と、を有する。本体部91は、第1フランジ部22bよりも軸方向反出力側に配置されている。本体部91は、第1フランジ部22bの軸方向反出力側の面と接触している。
【0030】
圧入部92は、本体部91と同心の円筒状である。圧入部92は、本体部91の軸方向出力側の端部に接続されている。圧入部92の外径は、本体部91の外径よりも小さい。圧入部92は、第1貫通孔22eに軸方向反出力側から圧入されて第1フランジ部22bに固定されている。圧入部92の軸方向出力側の面は、第1フランジ部22bの軸方向出力側の面と軸方向において同じ位置、または、ほぼ同じ位置に配置されている。雌ネジ部材90は、例えば、圧入ナットである。
【0031】
図1および図2に示すように、本実施形態において雌ネジ部材90は、周方向に複数配置されている。図2では、雌ネジ部材90は、2つ設けられ、突出板部22dのそれぞれに固定されている。2つの雌ネジ部材90は、中心軸Jを径方向に挟んで配置されている。複数の雌ネジ部材90の雌ネジ穴93は、軸方向に沿って視て複数の第1貫通孔22eのそれぞれと重なる位置に配置されている。そのため、複数のボルトBを雌ネジ穴93のそれぞれに締め込むことによって、ハウジング20に他の部材の被取付部Mを固定することができる。これにより、モータ10と他の部材との取付強度を向上できる。
【0032】
雌ネジ部材90は、周方向において、第2フランジ部27bと異なる位置に配置されている。すなわち、第2貫通孔27cは、周方向において、雌ネジ部材90と異なる位置に配置されている。そのため、第2貫通孔27cに軸方向出力側から通したネジを締め込む際に、雌ネジ部材90が邪魔になりにくい。これにより、第2フランジ部27bに固定する部材、すなわち例えば制御装置80をハウジング20に固定しやすい。
【0033】
図1に示すように、制御装置80は、ステータ40の軸方向反出力側に配置されている。制御装置80は、ステータ40に供給される電流を制御する。そのため、モータ10の回転数を制御することができる。制御装置80は、ステータ40と電気的に接続されたバスバー70を有する。すなわち、モータ10は、バスバー70を備える。バスバー70には、ステータ40から軸方向反出力側に延びた導線43aが接続されている。導線43aは、例えば、コイル43の端部であってもよいし、コイル43と別部材であってもよい。バスバー70は、例えば、図示しない外部電源と電気的に接続される。バスバー70が設けられることで、バスバー70を介してステータ40に電流を供給することができる。図示は省略するが、本実施形態において制御装置80は、連結部材27を介してハウジング20に固定されている。
【0034】
本発明は上述の実施形態に限られず、他の構成を採用することもできる。以下の説明において上記説明と同様の構成については、適宜同一の符号を付す等により説明を省略する場合がある。
【0035】
雌ネジ部材90が固定される箇所は、板状部20bであれば、特に限定されない。例えば、雌ネジ部材90は、底部21aに固定されてもよい。この場合、第1貫通孔22eは、底部21aに設けられる。また、雌ネジ部材90の固定方法は、特に限定されない。また、雌ネジ部材90の数は、1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。雌ネジ部材90の形状は、特に限定されない。また、雌ネジ穴93は、軸方向出力側から軸方向反出力側に窪んでいれば、有底の穴であってもよい。
【0036】
ハウジング20の製造方法は、特に限定されない。ハウジング本体21とモータ固定部材22とのうちの少なくとも一方は、ダイカストによって製造されてもよい。蓋部材23と連結部材27とのうちの少なくとも一方は、プレス加工によって製造されてもよい。また、ハウジング20は、単一の部材であってもよい。
【0037】
モータの構成は、図4に示すモータ110のような構成であってもよい。モータ110において雌ネジ部材190は、軸方向に延びた円筒状の部材である。雌ネジ部材190は、本体部191と、取付筒部192と、を有する。本体部191は、第1フランジ部22bよりも軸方向反出力側に配置されている。取付筒部192は、本体部191の軸方向出力側の端部に接続されている。取付筒部192は、第1貫通孔22eに通されている。取付筒部192の内径は、本体部191の内径よりも大きい。雌ネジ部材190の雌ネジ穴193の内側面のうち、本体部191の内側面には雌ネジ部が設けられており、取付筒部192の内側面には雌ネジ部が設けられていない。
【0038】
取付筒部192は、挿入部192aと、固定部192bと、引掛部192cと、を有する。すなわち、モータ110は、固定部192bを備える。挿入部192aは、第1貫通孔22eに挿入された円筒状である。固定部192bは、挿入部192aの軸方向反出力側の端部に接続されている。固定部192bは、本体部191の軸方向出力側の端部に接続されている。固定部192bは、挿入部192aよりも取付筒部192の径方向外側に突出している。図示は省略するが、固定部192bは、円環状である。
【0039】
固定部192bの外径は、第1貫通孔22eの内径よりも大きい。固定部192bは、第1フランジ部22bよりも軸方向反出力側に配置されている。固定部192bの軸方向出力側の面は、第1フランジ部22bの軸方向反出力側の面と接触する。固定部192bは、取付筒部192の一部が径方向外側に座屈して構成された部分である。
【0040】
引掛部192cは、挿入部192aの軸方向出力側の端部から取付筒部192の径方向外側に突出している。図示は省略するが、引掛部192cは、円環状である。引掛部192cの外径は、第1貫通孔22eの内径よりも大きく、固定部192bの外径よりも小さい。引掛部192cは、第1フランジ部22bよりも軸方向出力側に配置され、第1フランジ部22bの軸方向出力側の面に引っ掛けられている。
【0041】
雌ネジ部材190は、ブラインドナットである。雌ネジ部材190の取付筒部192は、ハウジング20に固定される前の状態において、固定部192bを有していない。雌ネジ部材190は、第1貫通孔22eに軸方向出力側から挿入された後、取付筒部192のうち第1フランジ部22bよりも軸方向反出力側に位置する部分が座屈によりカシメられる。これにより、固定部192bが形成される。すなわち、固定部192bは、カシメ部である。固定部192bが形成されることで、固定部192bと引掛部192cとによって第1フランジ部22bが軸方向に挟持され、雌ネジ部材190が第1フランジ部22bに固定される。これにより、固定部192bは、板状部20bと雌ネジ部材190とを固定する。このように、カシメ部である固定部192bによって雌ネジ部材190を板状部20bに固定できるため、雌ネジ部材190をハウジング20に対して容易かつ強固に固定できる。
【0042】
板状部20bと雌ネジ部材とを固定する固定部は、溶接部であってもよい。この構成によれば、溶接によって雌ネジ部材をハウジング20に対して容易かつ強固に固定できる。この場合、例えば、雌ネジ部材と板状部20bとの境界部分のうち軸方向出力側を向く部分に対して、軸方向出力側から溶接を行う。これにより、雌ネジ部材と筒状部20aとの径方向の隙間が小さい場合であっても、雌ネジ部材と板状部20bとの境界部分を一周に亘って溶接して固定できる。
【0043】
次に、本実施形態のモータ10を搭載する装置の実施形態について説明する。本実施形態においては、モータ10を電動パワーステアリング装置に搭載した例について説明する。図5に示す電動パワーステアリング装置2は、自動車の車輪の操舵機構に搭載される。電動パワーステアリング装置2は、操舵力を油圧により軽減する装置である。電動パワーステアリング装置2は、モータ10と、操舵軸214と、オイルポンプ216と、コントロールバルブ217と、を備える。
【0044】
操舵軸214は、ステアリング211からの入力を、車輪212を有する車軸213に伝える。オイルポンプ216は、車軸213に油圧による駆動力を伝えるパワーシリンダ215に油圧を発生させる。コントロールバルブ217は、オイルポンプ216のオイルを制御する。電動パワーステアリング装置2において、モータ10は、オイルポンプ216の駆動源として搭載されている。
【0045】
本実施形態の電動パワーステアリング装置2は、本実施形態のモータ10を備えるため、モータ10の製造コストを低減しつつ、モータ10の取付強度を確保できる。これにより、本実施形態によれば、低コストで信頼性に優れた電動パワーステアリング装置2が得られる。なお、電動パワーステアリング装置2においては、モータ10の代わりに、モータ110が搭載されてもよい。
【0046】
上述した実施形態のモータは、電動パワーステアリング装置に限られず、いかなる装置に搭載されてもよい。
【0047】
上記の各構成は、相互に矛盾しない範囲内において、適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0048】
2…電動パワーステアリング装置、10,110…モータ、20…ハウジング、20a…筒状部、20b…板状部、22…モータ固定部材(第2部材)、22b…第1フランジ部、22e…第1貫通孔、27b…第2フランジ部、27c…第2貫通孔、30…ロータ、31…シャフト、40…ステータ、70…バスバー、80…制御装置、90,190…雌ネジ部材、93,193…雌ネジ穴、192b…固定部、J…中心軸
図1
図2
図3
図4
図5