(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6809132
(24)【登録日】2020年12月14日
(45)【発行日】2021年1月6日
(54)【発明の名称】器具
(51)【国際特許分類】
G01N 33/24 20060101AFI20201221BHJP
E02D 1/04 20060101ALI20201221BHJP
【FI】
G01N33/24 Z
E02D1/04
【請求項の数】7
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-208877(P2016-208877)
(22)【出願日】2016年10月25日
(65)【公開番号】特開2018-72037(P2018-72037A)
(43)【公開日】2018年5月10日
【審査請求日】2019年9月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】松尾 暢
(72)【発明者】
【氏名】及川 隆仁
(72)【発明者】
【氏名】中本 健二
(72)【発明者】
【氏名】井上 智子
【審査官】
三木 隆
(56)【参考文献】
【文献】
特公平05−048092(JP,B2)
【文献】
実公昭56−023399(JP,Y2)
【文献】
特開2004−050146(JP,A)
【文献】
特公昭49−003327(JP,B1)
【文献】
特開2006−119050(JP,A)
【文献】
特開昭52−055684(JP,A)
【文献】
実開昭57−201951(JP,U)
【文献】
特開2007−120992(JP,A)
【文献】
実開昭52−134385(JP,U)
【文献】
特開平09−089729(JP,A)
【文献】
特開平05−203546(JP,A)
【文献】
特開2005−283511(JP,A)
【文献】
特開平08−075619(JP,A)
【文献】
実公平04−000152(JP,Y2)
【文献】
実開昭62−051258(JP,U)
【文献】
特開昭61−205840(JP,A)
【文献】
実公平01−016027(JP,Y2)
【文献】
特開2008−259429(JP,A)
【文献】
特公平05−073848(JP,B2)
【文献】
山中省子,水田における水生生物の調査手法の検討,平成 25 年度愛媛衛環研年報,2013年,No.16,Page.28-33
【文献】
福岡市道路下水道局,新西部水処理センター環境監視計画,2012年,URL,https://www.city.fukuoka.lg.jp/data/open/cnt/3/74798/1/02-5_kannkyoukannsikeikaku.pdf?20200331140821
【文献】
川瀬基弘,愛知県藤前干潟に生息する貝類,豊橋市自然史博物館研報,2009年,No.19,Page.11-20
【文献】
Guy B Kyser,New trial for control of waterhyacinth,UC WEED SCIENCE,2016年 7月 5日,URL,https://ucanr.edu/blogs/blogcore/postdetail.cfm?postnum=21445
【文献】
G.W. TANNER,A Floating Quadrat,JOURNAL OF RANGE MANAGEMENT,1985年,Vol.38 No.3,Page.287
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/24
E02D 1/04
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
浮泥を調査する際に用いられる器具であって、
上面及び下面が開口し、壁板により側面をなす筒体であり、前記壁板で囲まれる領域を前記浮泥の調査場所として規定するべく、前記下面を下方に向けて前記壁板が前記浮泥内に押し込まれる領域規定部材と、
前記壁板の一部が前記浮泥内に沈下するのを防止するべく、前記壁板に装着される浮泥に浮く材料により構成される沈下防止具と、
を備えることを特徴とする器具。
【請求項2】
請求項1に記載の器具であって、
前記沈下防止具は、前記壁板の上端部における、前記上面の開口を挟んで相対する位置に装着される一対の発泡樹脂である
ことを特徴とする器具。
【請求項3】
請求項1に記載の器具であって、
前記沈下防止具は、前記壁板の上端部における、前記上面の開口を挟んで相対する位置に装着される一対の木材である
ことを特徴とする器具。
【請求項4】
請求項1〜請求項3の何れかに記載の器具であって、
前記領域規定部材は、前記壁板の上端部における、前記上面の開口を挟んで相対する位置に一対の持ち手が装着されてなる
ことを特徴とする器具。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれかに記載の器具であって、
前記領域規定部材の前記壁板は、金属製である
ことを特徴とする器具。
【請求項6】
請求項1〜請求項4のいずれかに記載の器具であって、
前記領域規定部材の前記壁板は、樹脂製である
ことを特徴とする器具。
【請求項7】
請求項1〜請求項6のいずれかに記載の器具であって、
前記領域規定部材は、角筒形状である
ことを特徴とする器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、器具に関する。
【背景技術】
【0002】
電力会社は、日々、電力設備の敷地内や建設予定地、周辺地域において、様々な環境調査を行っている。そのような調査の一つとして、湿地帯における浮泥の成分や浮泥内の生物の生息状況、水質等の調査を行うことがある。
【0003】
このような調査を行う場合には、通常、
図4に示すようなコドラート1100を調査対象とする場所に設置する。コドラート1100を設置することにより、調査場所を明確化し、定量的で客観性の高い調査結果を得ることが期待される。
【0004】
このようなコドラート1100に関しては、例えば特許文献1のような技術が開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−119050号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、浮泥のような、極めて水分含有量が多く、流動性の高い地盤上にコドラート1100を設置すると、時間の経過とともにコドラート1100が浮泥内に沈下してしまい、調査場所が分からなくなってしまうことがある。
【0007】
また
図5に示すように、コドラート1100により規定される破線で示す調査領域内の浮泥をサンプルとして採取した際に、調査範囲外の浮泥が調査範囲内に流入してしまう場合もある。また浮泥の流動性によりコドラート1100自体が移動してしまう場合もある。このような場合、浮泥の調査を正確に行うことが困難になる。
【0008】
本発明は上記課題を鑑みてなされたものであり、浮泥のような流動性の高い土壌の調査をより正確に行うことが可能となる器具を提供することを一つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一つの側面に係る器具は、浮泥を調査する際に用いられる器具であって、上面及び下面が開口し、壁板により側面をなす筒体であり、前記壁板で囲まれる領域を前記浮泥の調査場所として規定するべく、前記下面を下方に向けて前記壁板が前記浮泥内に押し込まれる領域規定部材と、前記壁板の一部が前記浮泥内に沈下するのを防止するべく、前記壁板に装着される
浮泥に浮く材料により構成される沈下防止具と、を備える。
【0010】
その他、本願が開示する課題、及びその解決方法は、発明を実施するための形態の欄の記載、及び図面の記載等により明らかにされる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、浮泥のような流動性の高い土壌の調査をより正確に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本実施形態に係るコドラートの全体構成を示す図である。
【
図2】本実施形態に係るコドラートにより浮泥の調査領域が規定される様子を示す図である。
【
図3】本実施形態に係るコドラートにより規定される調査領域の浮泥を採取する様子を説明するための図である。
【
図4】本実施形態とは異なるコドラートを示す図である。
【
図5】本実施形態とは異なるコドラートにより規定される調査領域の浮泥を採取する様子を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書および添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
【0014】
図1に、本発明の実施形態に係るコドラート1000の全体構成図を示す。また
図2に、コドラート1000によって浮泥Gの調査領域300が規定される様子を示す。また
図3に、コドラート1000によって規定される調査領域300から浮泥Gを採取する様子を示す。
【0015】
なお、
図1〜
図3において、コドラート1000に設けられる一対の持ち手120(後述)が向かい合う方向をx軸方向とし、一対の沈下防止具200(後述)が向かい合う方向をy軸方向とし、鉛直方向をz軸方向とする。
【0016】
本実施形態に係るコドラート1000は、浮泥のような水分含有量の比較的多い土壌の調査に好適に用いられる筒状の器具であり、コドラート1000で囲まれる領域を調査領域300として規定する。
【0017】
本実施形態に係るコドラート1000は、
図1に示すように、領域規定部材100と、沈下防止具200と、を有して構成される。
【0018】
領域規定部材100は、上面及び下面が開口し、壁板110により側面をなす筒状の部材である。そして領域規定部材100の開口する下面を下方(−z軸方向)に向けて、浮泥G内に壁板110が押し込まれることにより、壁板110で囲まれる領域が調査領域300として規定される。
【0019】
壁板110によって調査領域300が規定される様子を
図2及び
図3に示す。
図2において調査領域300は斜線で示されている。調査員は、このようにして規定される調査領域300内の浮泥Gの調査を行う。
【0020】
なおこのとき、浮泥Gは通常の土壌に比べて水分含有量が多いため、浮泥Gにコドラート1000を設置した際に、コドラート1000が時間の経過とともに徐々に浮泥G内に沈下してしまう可能性がある。そうなると、調査員はコドラート1000を見失い、調査領域300が分からなくなってしまう。
【0021】
そのため本実施形態に係るコドラート1000は、壁板110の一部が浮泥G内に沈下するのを防止するために、壁板110に沈下防止具200を装着している。例えば、コドラート1000は、壁板110の上端部111が浮泥G内に沈下するのを防止するために、壁板110の上端部111に沈下防止具200を装着している。
【0022】
このような態様により、浮泥Gにコドラート1000を設置した際に、コドラート1000が浮泥G内に沈下しそうになったとしても、沈下防止具200が浮きとして機能し、コドラート1000の沈下を防ぐことができる。
【0023】
また沈下防止具200は、例えば発泡スチロールのような発泡樹脂、あるいは木材等の浮泥Gに浮く材料により構成すると良い。発泡樹脂を用いた場合には、沈下防止具200を安価に構成できると共に、コドラート1000の軽量化を図ることもできる。そのため、新しい沈下防止具200に交換することも容易にでき、メンテナンス性も向上できる。一方、木材により沈下防止具200を構成した場合には、耐久性に優れたコドラート1000を実現できる。
【0024】
またコドラート1000は、
図1〜
図3に示すように、領域規定部材100の相対する壁板110にそれぞれ沈下防止具200を設けると良い。具体的には、コドラート1000は、壁板110の上端部111における、領域規定部材100の上面の開口を挟んで相対する位置にそれぞれ沈下防止具200を設けると良い。このように、一対の沈下防止具200を領域規定部材100の上面の開口を挟んで相対する位置に装着しておくことによって、沈下防止具200がコドラート1000の沈下を防ぐ際に、コドラート1000の姿勢を安定的に維持することが可能となる。
【0025】
さらに、本実施形態に係るコドラート1000は、
図1に示すように、壁板110の上端部111における、領域規定部材100の上面の開口を挟んで相対する位置に一対の持ち手120が設けられている。このような態様によって、浮泥G内へのコドラート1000の押し込み作業や浮泥Gからのコドラート1000の引き抜き作業を容易に行うことが可能となる。
【0026】
なお、上述した領域規定部材100の壁板110は、金属製あるいは樹脂製の板材により構成すると良い。このような態様により、領域規定部材110の剛性を高めることができ、壁板110により規定される調査領域300の境界面を鉛直方向に直線状に規定することが可能となる。
【0027】
なお、壁板110を金属板を用いて構成した場合には、樹脂板を用いて構成した場合に比べ、壁板110の板厚をより薄くすることができ、コドラート1000を浮泥Gに押し込む際の抵抗力を低減することが可能となる。
【0028】
さらに、金属板に土砂は通さないが水分は通す程度の大きさの通水孔あるいはメッシュ構造を設けておくこともできる。このような態様により、長期間に亘ってコドラート1000を浮泥G内に設置して調査を行う場合であっても、調査領域300における生物の生育環境の劣化を防止することが可能となる。
【0029】
一方、壁板110をアクリル等の樹脂板を用いて構成した場合には、金属板を用いて構成した場合に比べ、コドラート1000の軽量化を図ることが可能となる。また壁板110が錆びることも防ぐことができる。また透明の樹脂板を用いる場合には壁板110を透明化でき、コドラート1000内の浮泥Gを取り除いた際に、調査領域300の周囲の浮泥Gの様子を壁板110を通して観察することも可能となる。
【0030】
また領域規定部材100は、角筒形状にすると良い。これにより、調査領域300の形状を方形に定めることができる。もちろん領域規定部材100は、調査内容や調査目的に応じて、四角筒に限らずに三角筒や六角筒などの多角筒形状にすることもできるし、円筒形状にすることもできる。
【0031】
なお、領域規定部材100は、浮泥Gの調査内容や調査目的に応じて適切なサイズ及び形状のものを用いることができるが、例えば四角筒形状の場合において、x軸方向及びy軸方向のサイズをそれぞれ10cm乃至25cm程度、z軸方向のサイズを10cm程度に定めると良い。
【0032】
このようなサイズであれば、コドラート1000の持ち運びが容易であり、足場の不安定な浮泥Gへコドラート1000を搬入する際にも作業の安全性が確保できる。
【0033】
上述したように、本実施形態に係るコドラート1000は、壁板110が側面をなす筒体である。そのため、
図3に示すように、調査領域300内の浮泥Gを例えばサンプルとして採取するために除去した場合であっても、調査領域300の周囲の浮泥Gが調査領域300内に流入してくるのを防止することができる。このため、コドラート1000によって定めた調査領域300内のみの浮泥Gに対して調査を行うことが可能となるため、より正確で客観的な調査を行うことが可能となる。
【0034】
また浮泥Gは流動性を有しているが、浮泥G内に押し込まれた壁板110が浮泥Gの変位を抑制するように作用するため、コドラート1000を移動しにくくすることができる。このため、調査領域300の位置ずれが防止でき、より正確で客観的な浮泥Gの調査を行うことが可能となる。
【0035】
以上、本実施形態に係るコドラート1000について説明したが、本実施形態に係るコドラート1000によれば、浮泥Gのような流動性の高い土壌の調査をより正確に行うことが可能となる。
【0036】
なお上述した実施の形態は本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明はその趣旨を逸脱することなく変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物も含まれる。
【符号の説明】
【0037】
100 領域規定部材
110 壁板
111 上端部
120 持ち手
200 沈下防止具
300 調査領域
1000 コドラート
1100 コドラート
G 浮泥