特許第6809133号(P6809133)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ TDK株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6809133
(24)【登録日】2020年12月14日
(45)【発行日】2021年1月6日
(54)【発明の名称】アンテナ装置
(51)【国際特許分類】
   H01Q 7/08 20060101AFI20201221BHJP
【FI】
   H01Q7/08
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-209233(P2016-209233)
(22)【出願日】2016年10月26日
(65)【公開番号】特開2018-74265(P2018-74265A)
(43)【公開日】2018年5月10日
【審査請求日】2019年7月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115738
【弁理士】
【氏名又は名称】鷲頭 光宏
(74)【代理人】
【識別番号】100121681
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 和文
(74)【代理人】
【識別番号】100130982
【弁理士】
【氏名又は名称】黒瀬 泰之
(72)【発明者】
【氏名】小町 俊文
(72)【発明者】
【氏名】友成 寿緒
(72)【発明者】
【氏名】麻生 裕文
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 由智
【審査官】 佐藤 当秀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−188855(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に延在する巻芯部と、前記巻芯部の前記軸方向における両端に設けられた第1及び第2の鍔部を有するコアと、
前記巻芯部に巻回されたワイヤと、
前記第1の鍔部の実装面に設けられ、前記ワイヤの一端が接続される第1の端子電極と、
前記第2の鍔部の実装面に設けられ、前記ワイヤの他端が接続される第2の端子電極と、を備え、
前記第1及び第2の鍔部の前記軸方向における表面は、前記軸方向からみて前記巻芯部と重なる表面の少なくとも一部が曲面であり、
前記第1及び第2の鍔部の前記実装面は、いずれも平坦面であることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項2】
前記曲面は、前記実装面から離れるにしたがって法線の前記軸方向に対する角度が増大する部分を有していることを特徴とする請求項に記載のアンテナ装置。
【請求項3】
前記第1及び第2の鍔部の前記軸方向に垂直な断面は、矩形であることを特徴とする請求項1又は2に記載のアンテナ装置。
【請求項4】
前記第1及び第2の鍔部の前記軸方向における表面は、平坦面と前記平坦面に設けられた凹部を有し、前記凹部の表面が曲面であることを特徴とする請求項乃至のいずれか一項に記載のアンテナ装置。
【請求項5】
前記ワイヤは、隣接するターン間に所定のスペースが形成されるよう、前記巻芯部に巻回されていることを特徴とする請求項乃至のいずれか一項に記載のアンテナ装置。
【請求項6】
前記所定のスペースは、前記ワイヤの第1ターンと前記第1の鍔部との距離及び前記ワイヤの最終ターンと前記第2の鍔部との距離の少なくとも一方よりも広いことを特徴とする請求項に記載のアンテナ装置。
【請求項7】
軸方向に延在する巻芯部と、前記巻芯部の前記軸方向における両端に設けられた第1及び第2の鍔部を有するコアと、
前記巻芯部に巻回されたワイヤと、を備え、
前記第1及び第2の鍔部の前記軸方向における表面は、平坦面と、前記平坦面に設けられ、前記軸方向からみて前記巻芯部と重なる凹部を有し、前記凹部の表面が曲面であることを特徴とするアンテナ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアンテナ装置に関し、特に、コアにワイヤを巻回してなるアンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スマートフォン等の携帯無線機器にはRFID(Radio Frequency Identification:電波による個体識別)システムが搭載されており、そのための通信手段としてリーダ・ライタ等と近距離無線通信を行うためのアンテナ装置が搭載されている。
【0003】
この種のアンテナ装置としては、例えば特許文献1に記載されたアンテナ装置が知られている。特許文献1に記載されたアンテナ装置は、ドラム型コアの巻芯部にワイヤを巻回してなる表面実装型のコイル部品によって構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−306137号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されたアンテナ装置は、鍔部の軸方向における表面が平坦面であることから磁界の広がりが不十分であり、その結果、通信距離が短いという問題があった。
【0006】
したがって、本発明は、コアにワイヤを巻回してなるアンテナ装置における磁界の広がりを拡大することによって、通信距離を伸ばすことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によるアンテナ装置は、軸方向に延在する巻芯部を有するコアと、前記巻芯部に巻回されたワイヤとを備え、前記コアは、前記軸方向からみて前記巻芯部と重なる表面の少なくとも一部が曲面であることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、巻芯部を軸方向に進む磁束が曲面から放出されるため、従来よりも磁界の広がりが拡大される。これにより、通信距離を伸ばすことが可能となる。
【0009】
本発明において、前記コアは、前記巻芯部の前記軸方向における両端に設けられた第1及び第2の鍔部をさらに有し、前記第1及び第2の鍔部の前記軸方向における表面が曲面であることが好ましい。これによれば、表面実装に適した構造を得ることができる。
【0010】
本発明によるアンテナ装置は、前記第1の鍔部の実装面に設けられ、前記ワイヤの一端が接続される第1の端子電極と、前記第2の鍔部の実装面に設けられ、前記ワイヤの他端が接続される第2の端子電極とをさらに備え、前記第1及び第2の鍔部の前記実装面は、いずれも平坦面であることが好ましい。これによれば、プリント基板上におけるアンテナ装置の姿勢を安定させることができる。この場合、前記曲面は、前記実装面から離れるにしたがって法線の前記軸方向に対する角度が増大する部分を有していることが好ましい。これによれば、垂直方向における磁界の広がりを拡大することができる。
【0011】
本発明において、前記第1及び第2の鍔部の前記軸方向に垂直な断面は、矩形であることが好ましい。これによれば、磁界の水平方向への不要な広がりを抑えることができる。
【0012】
本発明において、前記第1及び第2の鍔部の前記軸方向における表面は、平坦面と前記平坦面に設けられた凹部を有し、前記凹部の表面が曲面であることが好ましい。これによれば、表面実装時において平坦面を容易にチャッキングすることが可能となる。
【0013】
本発明において、前記ワイヤは、隣接するターン間に所定のスペースが形成されるよう、前記巻芯部に巻回されていることが好ましい。これによれば、巻芯部に発生する磁場がより均一となるとともに、ワイヤの直流抵抗を低減することが可能となる。この場合、前記所定のスペースは、前記ワイヤの第1ターンと前記第1の鍔部との距離及び前記ワイヤの最終ターンと前記第2の鍔部との距離の少なくとも一方よりも広いことが好ましい。これによれば、巻芯部の軸方向における長さを有効に活用することが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、アンテナ装置から発せられる磁界が大きく広がることから、通信距離を伸ばすことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明の第1の実施形態によるアンテナ装置11Aの外観を示す略斜視図である。
図2図2は、アンテナ装置11Aをy方向から見た側面図である。
図3図3は、アンテナ装置11Aをx方向から見た側面図である。
図4図4は、第1の実施形態の改良例によるアンテナ装置11Bの外観を示す略斜視図である。
図5図5は、本発明の第2の実施形態によるアンテナ装置12Aの外観を示す略斜視図である。
図6図6は、アンテナ装置12Aをy方向から見た側面図である。
図7図7は、第2の実施形態の改良例によるアンテナ装置12Bの外観を示す略斜視図である。
図8図8は、本発明の第3の実施形態によるアンテナ装置13Aの外観を示す略斜視図である。
図9図9は、アンテナ装置13Aをy方向から見た側面図である。
図10図10は、アンテナ装置13Aをx方向から見た側面図である。
図11図11は、第3の実施形態の改良例によるアンテナ装置13Bの外観を示す略斜視図である。
図12図12は、本発明の第4の実施形態によるアンテナ装置14Aの外観を示す略斜視図である。
図13図13は、アンテナ装置14Aをy方向から見た側面図である。
図14図14は、第4の実施形態の改良例によるアンテナ装置14Bの外観を示す略斜視図である。
図15図15は、本発明の第5の実施形態によるアンテナ装置15Aの外観を示す略斜視図である。
図16図16は、アンテナ装置15Aをy方向から見た側面図である。
図17図17は、第5の実施形態の改良例によるアンテナ装置15Bの外観を示す略斜視図である。
図18】比較例によるサンプルC1の外観を示す略斜視図である。
図19】比較例によるサンプルC2の外観を示す略斜視図である。
図20】比較例によるサンプルC3の外観を示す略斜視図である。
図21】比較例によるサンプルC4の外観を示す略斜視図である。
図22】参考例によるサンプルD1の外観を示す略斜視図である。
図23】参考例によるサンプルD2の外観を示す略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照しながら、本発明のいつくかの実施形態について詳細に説明する。
【0017】
<第1の実施形態>
図1は、本発明の第1の実施形態によるアンテナ装置11Aの外観を示す略斜視図である。また、図2はアンテナ装置11Aをy方向から見た側面図であり、図3はアンテナ装置11Aをx方向から見た側面図である。
【0018】
図1図3に示すように、本実施形態によるアンテナ装置11Aは、コア20と、コア20の巻芯部23に巻回されたワイヤ30と、ワイヤ30の一端31に接続された第1の端子電極41と、ワイヤ30の他端32に接続された第2の端子電極42とを備えている。
【0019】
コア20は、フェライトなど透磁率の高い磁性材料からなり、第1の鍔部21と、第2の鍔部22と、これらの間に設けられた巻芯部23とを有する。巻芯部23は、軸方向であるx方向に延在する棒状体であり、その両端に第1及び第2の鍔部21及び22がそれぞれ設けられている。巻芯部23のyz断面(軸方向に垂直な断面)は略矩形である。
【0020】
第1及び第2の鍔部21,22は、一部の表面が湾曲した曲面を構成している。具体的に説明すると、第1の鍔部21は、巻芯部23に接続される内側面21iと、内側面21iの反対側に位置する外側面21oと、第1の端子電極41が形成される実装面21bと、互いに反対側に位置する2つの側面21sとを有している。同様に、第2の鍔部22は、巻芯部23に接続される内側面22iと、内側面22iの反対側に位置する外側面22oと、第2の端子電極42が形成される実装面22bと、互いに反対側に位置する2つの側面22sとを有している。
【0021】
図1及び図2に示すように、内側面21i,22iはyz平面を構成し、実装面21b,22bはxy平面を構成し、側面21s,22sはxz平面を構成する。このように、実装面21b,22bが平坦面であることから、アンテナ装置11Aを実装した場合に、プリント基板上における姿勢を安定させることができる。
【0022】
これに対し、外側面21o,22oは曲面であり、実装面21b,22bから離れるにしたがって法線の軸方向(x方向)に対する角度が増大する湾曲形状を有している。外側面21o,22oのxz断面のうち、実装面21b,22bに最も近い部分の接線はほぼz方向であり、実装面21b,22bから最も遠い部分の接線はほぼx方向である。一方、第1及び第2の鍔部21,22のyz断面は、x方向におけるいずれの位置においても矩形である。また、第1及び第2の鍔部21,22のxz断面は、y方向におけるいずれの位置においても同じ形状である。つまり、側面21s,22sは湾曲していない。
【0023】
本例では、ワイヤ30が巻芯部23のx方向における略中央部にまとめて巻回されている。これは、ワイヤ30の必要な巻回数に比べて巻芯部23のx方向における長さが長いためである。巻芯部23のx方向における長さを長く設計しているのは、巻芯部23のx方向における長さが短いと、第1及び第2の鍔部21,22からの磁束がz方向に大きく広がることなく巻芯部23の上部近傍で収束してしまい、十分な通信距離が確保できなくなるためである。
【0024】
但し、ワイヤ30を巻芯部23のx方向における略中央部にまとめて巻回することは必須でなく、図4に示す改良例によるアンテナ装置11Bのように、隣接するターン間に所定のスペースが形成されるよう、ワイヤ30を巻回しても構わない。これによれば、巻芯部23に発生する磁場がより均一になるとともに、図2において符号φ0で示すような、鍔部をショートカットする磁束がほとんど生じないことから、通信距離を拡大することができる。しかも、隣接するターン間に所定のスペースが形成されるようワイヤ30を巻回した方が、所望のインダクタンスを得るために必要なターン数が削減されるため、ワイヤ30の直流抵抗を低減することも可能となる。
【0025】
図4に示すアンテナ装置11Bは、ワイヤ30の一端31側に位置する第1ターンが第1の鍔部21の近傍に巻回され、且つ、ワイヤ30の他端32側に位置する最終ターンが第2の鍔部22の近傍に巻回されている。これにより、ワイヤ30の隣接ターン間に形成されるスペースは、ワイヤ30の第1ターンと第1の鍔部21との距離及びワイヤ30の最終ターンと第2の鍔部22との距離よりも広くなっており、巻芯部23のx方向における長さが有効に活用されている。
【0026】
図3に示すように、本実施形態によるアンテナ装置11A(11B)においては、曲面を構成する外側面21o,22oが軸方向(x方向)からみて巻芯部23と重なっている。これにより、第1及び第2の鍔部21,22から放出又は吸収される磁束がz方向に大きく広がるため、z方向における通信距離を拡大することができる。その理由は次の通りである。つまり、大部分の磁束は、軸方向(x方向)からみて巻芯部23と重なる表面から放出/吸収されるともに、その放射角度は、当該表面に対して略垂直方向(法線方向)の成分が支配的となる。このため、軸方向(x方向)からみて巻芯部23と重なる外側面21o,22oを曲面とすれば、図2において符号φ1で示すように、磁束が様々な角度で放出/吸収されることになり、z方向における磁界の広がりが拡大される。その結果、通信距離を伸ばすことが可能となるのである。
【0027】
このように、本実施形態によるアンテナ装置11A(11B)は、外側面21o,22oが実装面21b,22bから離れるにしたがって法線の軸方向(x方向)に対する角度が増大する湾曲形状を有していることから、z方向における磁界の広がりが拡大され、通信距離を伸ばすことが可能となる。
【0028】
<第2の実施形態>
図5は、本発明の第2の実施形態によるアンテナ装置12Aの外観を示す略斜視図である。また、図6はアンテナ装置12Aをy方向から見た側面図である。アンテナ装置12Aをx方向から見た側面形状は、図3に示した形状と同じである。
【0029】
本実施形態によるアンテナ装置12Aは、第1及び第2の鍔部21,22の外側面21o,22oが全体的に凸型に湾曲したアーチ型形状を有している点において、第1の実施形態によるアンテナ装置11Aと相違している。つまり、本実施形態においては、外側面21o,22oのxz断面が実装面21b,22bから離れるにしたがって法線の軸方向(x方向)に対する角度が減少する部分と、増大する部分を有している。その他の構成は第1の実施形態によるアンテナ装置11Aと同一であることから、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0030】
本実施形態によるアンテナ装置12Aは、図6に示すように、磁界の広がり方が第1の実施形態によるアンテナ装置11Aとはやや異なり、実装面21b,22b側へも広がる。また、外側面21o,22oが全体的に凸型形状であることから、第1の実施形態によるアンテナ装置11Aよりも、表面実装時におけるチャッキングが容易であるという利点を有する。
【0031】
本実施形態においても、図7に示すアンテナ装置12Bのように、隣接するターン間に所定のスペースが形成されるよう、ワイヤ30を巻回することが好ましい。
【0032】
<第3の実施形態>
図8は、本発明の第3の実施形態によるアンテナ装置13Aの外観を示す略斜視図である。また、図9はアンテナ装置13Aをy方向から見た側面図であり、図10はアンテナ装置13Aをx方向から見た側面図である。
【0033】
本実施形態によるアンテナ装置13Aは、第1及び第2の鍔部21,22の外側面21o,22oが平坦面を有し、平坦面に設けられた凹部の表面が曲面である点において、第1の実施形態によるアンテナ装置11Aと相違している。図10に示すように、外側面21o,22oに設けられた凹部は、軸方向(x方向)からみて巻芯部23と重なる位置に設けられている。その他の構成は第1の実施形態によるアンテナ装置11Aと同一であることから、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0034】
本実施形態によるアンテナ装置13Aは、図9に示すように、磁界の広がり方が第1の実施形態によるアンテナ装置11Aとはやや異なり、実装面21b,22b側へも広がる。また、外側面21o,22oが平坦面を有していることから、第2の実施形態によるアンテナ装置12Aよりも、表面実装時におけるチャッキングがよりいっそう容易であるという利点を有する。
【0035】
本実施形態においても、図11に示すアンテナ装置13Bのように、隣接するターン間に所定のスペースが形成されるよう、ワイヤ30を巻回することが好ましい。
【0036】
<第4の実施形態>
図12は、本発明の第4の実施形態によるアンテナ装置14Aの外観を示す略斜視図である。また、図13はアンテナ装置14Aをy方向から見た側面図である。アンテナ装置14Aをx方向から見た側面形状は、図10に示した形状と同じである。
【0037】
本実施形態によるアンテナ装置14Aは、第1及び第2の鍔部21,22の外側面21o,22oが平坦面を有し、平坦面に設けられた凸部の表面が曲面である点において、第3の実施形態によるアンテナ装置13Aと相違している。その他の構成は第3の実施形態によるアンテナ装置13Aと同一であることから、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0038】
本実施形態によるアンテナ装置14Aは、図13に示すように、磁界の広がり方が第3の実施形態によるアンテナ装置13Aとはやや異なる。また、第3の実施形態によるアンテナ装置13Aと比べてコア20の体積が大きいことから、高い機械的強度を確保することが可能となる。
【0039】
本実施形態においても、図14に示すアンテナ装置14Bのように、隣接するターン間に所定のスペースが形成されるよう、ワイヤ30を巻回することが好ましい。
【0040】
<第5の実施形態>
図15は、本発明の第5の実施形態によるアンテナ装置15Aの外観を示す略斜視図である。また、図16はアンテナ装置15Aをy方向から見た側面図である。
【0041】
本実施形態によるアンテナ装置15Aは、コア20が鍔部を備えず、巻芯部23の軸方向における端面が湾曲している。本例では、巻芯部23の軸方向における端面は平坦面を有さず、全体的に凸型に湾曲したアーチ型形状を有している。その他の構成は第2の実施形態によるアンテナ装置12Aと同一であることから、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。本実施形態においても、図17に示すアンテナ装置15Bのように、隣接するターン間に所定のスペースが形成されるよう、ワイヤ30を巻回することが好ましい。
【0042】
本実施形態が例示するように、本発明によるアンテナ装置においてコアが鍔部を備えることは必須でなく、巻芯部の軸方向における端面が曲面を構成していても構わない。
【0043】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0044】
例えば、上述した各実施形態によるアンテナ装置においては、一対の鍔部の形状が互いに同じであり、巻芯部から見て対称形であるが、本発明がこれに限定されるものではなく、一対の鍔部が非対称であっても構わない。したがって、一方の鍔部については巻芯部と重なる表面が曲面であり、他方の鍔部については巻芯部と重なる表面が平坦面であっても構わない。また、巻芯部と重なる表面の全面が曲面である必要はなく、少なくとも一部が曲面であれば足りる。但し、巻芯部と重なる表面のより多くの部分を曲面とした方が、磁界の広がりを拡大する効果が高められる。
【実施例1】
【0045】
上述したアンテナ装置11A,12A,13Aとそれぞれ同じ構造を有するサンプルA1,A2,A3に対し、高周波電磁界シミュレータを用いて13.56MHzの周波数帯域におけるS21特性を解析した。S21特性は電力伝送のロスの大きさを示している。サンプルとカードリーダとの距離は、30mmを想定した。比較例として、図18に示す構造を有するサンプルC1についても同様の解析を行った。図18に示すように、サンプルC1は、第1及び第2の鍔部21,22の外側面21o,22oが平坦なyz面を構成している。
【0046】
各サンプルのサイズは、x=5.0mm、y=2.5mm、z=1.8mmである。また、ワイヤのターン数はいずれも9ターンである。シミュレーションの結果を表1に示す。
【0047】
【表1】
【0048】
表1に示すように、サンプルA1〜A3のS21特性は、比較例であるサンプルC1のS21特性よりも小さいことが確認された。
【実施例2】
【0049】
上述したアンテナ装置11B,12B,13Bとそれぞれ同じ構造を有するサンプルB1,B2,B3に対し、高周波電磁界シミュレータを用いて13.56MHzの周波数帯域におけるS21特性を解析した。サンプルとカードリーダとの距離は、30mmを想定した。比較例として、それぞれ図19図21に示す構造を有するサンプルC2〜C4についても同様の解析を行った。さらに、参考例として、それぞれ図22及び図23に示す構造を有するサンプルD1,D2についても同様の解析を行った。
【0050】
図19に示すサンプルC2は、第1及び第2の鍔部21,22の外側面21o,22oが平坦なyz面を構成している。図20に示すサンプルC3は、第1及び第2の鍔部21,22の外側面21o,22oが斜めの平坦面である。図21に示すサンプルC4は、第1及び第2の鍔部21,22の外側面21o,22oの上端部及び下端部が面取りされている。図22に示すサンプルD1は、第1及び第2の鍔部21,22が球形である。図23に示すサンプルD2は、第1及び第2の鍔部21,22が半球形である。
【0051】
各サンプルのサイズは、x=5.0mm、y=2.5mm、z=1.8mmである。また、ワイヤのターン数はいずれも9ターンである。シミュレーションの結果を表2に示す。
【0052】
【表2】
【0053】
表2に示すように、サンプルB1〜B3のS21特性は、比較例であるサンプルC2〜C4及び参考例であるサンプルD1,D2のS21特性よりも小さいことが確認された。また、サンプルB1〜B3のS21特性は、サンプルA1〜A3のS21特性よりも小さかった。尚、サンプルD1,D2のS21特性が大きいという結果は、鍔部のxz断面がy方向における位置によって変化すると、磁界の水平方向への不要な広がりが発生することを示唆している。
【符号の説明】
【0054】
11A〜15A,11B〜15B アンテナ装置
20 コア
21,22 鍔部
21b,22b 実装面
21i,22i 内側面
21o,22o 外側面
21s,22s 側面
23 巻芯部
30 ワイヤ
31 ワイヤの一端
32 ワイヤの他端
41,42 端子電極
φ0,φ1 磁束
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23