(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、端材の巻き取りを可能にするには、例えば、特許文献1に記載のように帯状金属箔の短手方向両端に至るまで未塗工部が切断されないようにする必要がある。一方で、歩留まりを高めるためには、帯状金属箔の短手方向の両縁まで利用して電極を製造することが好ましい。しかし、帯状金属箔の短手方向の両縁に至るまで電極材料を切断してしまうと、電極材料が搬送方向の途中で分断されてしまうため端材を巻取装置で巻き取ることができず、電極材料の張力を維持することができずロータリーダイカッタによる電極の切り出しができない。
【0007】
本発明の目的は、帯状金属箔の短手方向の両縁に至るまで電極材料を切断して電極を切り出すことができる電極製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する電極製造装置は、前記未塗工部は、前記帯状金属箔の短手方向の両縁に沿うように設けられ、前記周方向刃部は、前記塗工部を切断する少なくとも1つの第1周方向刃部と、前記第1周方向刃部に対して前記軸線方向の両側に前記第1周方向刃部と間隔を空けて配置された複数の第2周方向刃部と、を備え、前記軸線方向刃部は、一端が前記第1周方向刃部に繋がり、他端が前記第2周方向刃部に繋がる複数の第1軸線方向刃部と、一端が前記第2周方向刃部に繋がり、前記電極材料を前記帯状金属箔の短手方向の縁に至るまで切断する複数の第2軸線方向刃部と、を備え、前記軸線方向の両端の前記第2周方向刃部の間の複数の前記第1軸線方向刃部は、全ての前記第1軸線方向刃部が前記軸線方向に一直線上に位置しないように少なくとも1つの前記第1軸線方向刃部が前記周方向にずれて位置している。
【0009】
供給部から供給された電極材料は、アンビルロールとロータリーダイの刃に挟まれ、電極材料が刃で切断されることで、電極を得ることができる。刃は、電極材料に進入し、電極材料を切断するまでの間、アンビルロールと電極材料を挟むことで電極材料に力を加えている。この力により電極材料は挟持されている。
【0010】
アンビルロールとロータリーダイは、アンビルロールと刃で電極材料を挟持した状態で回転することで電極材料を搬送する。全ての軸線方向刃部が、軸線方向に一直線上に位置している場合、電極材料の短手方向に並んで電極が同時に切り出されることになる。すると、周方向刃部からの力が電極材料に加わりにくくなる。
【0011】
これに対して、軸線方向刃部のうち、少なくとも1つの軸線方向刃部を周方向にずれて位置させることで、全ての軸線方向刃部が、軸線方向に一直線上に位置しないようにすると、帯状金属箔の短手方向に並んで切り出される複数の電極のうち、少なくとも1つは他の電極とは異なるタイミングで切り出される。周方向刃部の力が電極材料に加わっている状態が維持され、電極材料に張力を働かせながら電極材料を搬送することができる。
【0012】
上記したように、刃によって電極材料を挟持する力で電極材料を搬送することで、帯状金属箔の短手方向の両縁に至るまで電極材料を切断しても電極材料を搬送することができる。したがって、帯状金属箔の短手方向の両縁に至るまで電極材料を切断して電極を切り出すことができる。
【0013】
上記電極製造装置について、前記未塗工部は、前記帯状金属箔の短手方向の両縁に沿うように設けられ、前記周方向刃部は、前記塗工部を切断する少なくとも1つの第1周方向刃部と、前記第1周方向刃部と前記軸線方向に間隔を空けて配置された複数の第2周方向刃部と、を備え、前記軸線方向刃部は、一端が前記第1周方向刃部に繋がり、他端が前記第2周方向刃部に繋がる複数の第1軸線方向刃部と、一端が前記第2周方向刃部に繋がり、前記電極材料を前記帯状金属箔の短手方向の縁に至るまで切断する複数の第2軸線方向刃部と、を備え、前記軸線方向の両端の前記第2周方向刃部の間の複数の前記第1軸線方向刃部は、全ての前記第1軸線方向刃部が前記軸線方向に一直線上に位置しないように少なくとも1つの前記第1軸線方向刃部が前記周方向にずれて位置していてもよい。
【0014】
少なくとも1つの第1軸線方向刃部が軸線方向に一直線上に位置しないようにすることで、帯状金属箔の短手方向に並んで切り出される複数の電極のうち、少なくとも1つは他の電極とは異なるタイミングで切り出される。このため、第2周方向刃部の力が電極材料に加わっている状態が維持され、電極材料に張力を働かせながら電極材料を搬送することができる。
【0015】
上記電極製造装置について、前記第2周方向刃部は、前記塗工部を切断してもよい。
電極材料において塗工部が設けられた部位は、未塗工部に比べて厚い。このため、刃からの力を受けやすく電極材料を挟持しやすい。
【0016】
上記電極製造装置について、前記刃は、前記第1周方向刃部を1つ備え、前記第1周方向刃部における前記軸線方向の両側の複数の前記第1軸線方向刃部が前記一直線上に位置しないように前記周方向にずれて位置していてもよい。
【0017】
これによれば、帯状金属箔の短手方向に並んで2つの電極を電極材料から切り出すことができる。
上記電極材料製造装置について、前記未塗工部は、前記帯状金属箔の短手方向に間隔を空けて設けられた前記塗工部の間に設けられ、前記周方向刃部は、前記軸線方向に互いに対向する第1対向刃部及び第2対向刃部を備え、前記軸線方向刃部は、各対向刃部同士の間で延びる内側刃部と、各対向刃部から前記内側刃部の延びる方向とは反対方向に延び、前記電極材料を前記帯状金属箔の短手方向の縁に至るまで切断する外側刃部とを備え、全ての前記外側刃部が前記軸線方向に一直線上に位置しないように少なくとも1つの前記外側刃部が前記周方向にずれて位置している。
【0018】
少なくとも1つの外側刃部が軸線方向に一直線上に位置しないようにすることで、帯状金属箔の短手方向に並んで切り出される複数の電極のうち、少なくとも1つは他の電極とは異なるタイミングで切り出される。このため、内側刃部の力が電極材料に加わっている状態が維持され、電極材料に張力を働かせながら電極材料を搬送することができる。
【0019】
上記電極製造装置について、前記アンビルロールと前記ダイカットロールとの間で弾性変形する弾性部材を前記ダイカットロールの外周面に備えていてもよい。
これによれば、弾性部材により電極材料をアンビルロールに押し付け、電極材料の動きを抑制しながら、電極材料を切断することができる。また、この弾性部材とアンビルロールで電極材料を挟持することができるため、電極材料に張力を働かせながら電極材料を搬送することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、帯状金属箔の短手方向の両縁に至るまで電極材料を切断して電極を切り出すことができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(第1実施形態)
以下、電極製造装置の第1実施形態について説明する。
図1に示すように、リチウムイオン二次電池10は、電極組立体20と、図示しない電解液と、電極組立体20及び電解液を収容しているケース11と、電極組立体20と電気を授受するための2つの端子12と、を備える。
【0023】
図2に示すように、電極組立体20は、リチウムイオン二次電池用の電極としての複数の正極電極21と、リチウムイオン二次電池用の電極としての複数の負極電極22と、複数のセパレータ26と、を備える。正極電極21と負極電極22とは、セパレータ26によって相互に絶縁された状態で層状に重なっている。
【0024】
正極電極21及び負極電極22は、四角シート状の電極本体24と、電極本体24の第1辺24aから突出する形状のタブ25とを備える。電極本体24は、四角シート状の金属箔23を備える。正極電極21の金属箔23は、例えばアルミニウム箔である。負極電極22の金属箔23は、例えば銅箔である。金属箔23の厚みは、例えば、5〜30μmとすることができる。
【0025】
タブ25は、電極本体24の金属箔23から突出する。正極電極21のタブ25は、例えばアルミニウム箔であり、負極電極22のタブ25は、例えば銅箔である。正極電極21及び負極電極22の電極本体24は、金属箔23の両面の全体に亘って活物質層27を備える。活物質層27は、それぞれの極性用の活物質、バインダ、及び導電助剤などを含有している。活物質層27の厚みは、例えば、5〜200μmとすることができる。
【0026】
電極本体24において、タブ25の存在する第1辺24aの対辺となる長辺を第2辺24bとする。また、電極本体24において、第1辺24aと第2辺24bを繋ぐ一対の辺(短辺)のうち、一方の短辺を第3辺24cとし、他方の辺を第4辺24dとする。
【0027】
次に、電極製造設備40について説明する。
図3(a)及び
図4に示すように、電極製造設備40は、帯状の電極材料30を切断し、予め定めた形状の正極電極21又は負極電極22を切り出す装置である。以下、正極電極21の製造について説明する。電極製造設備40には、電極材料30が供給される。
【0028】
図3(b)及び
図4に示すように、長尺帯状の電極材料30は、長尺の帯状金属箔31と、帯状金属箔31の両面に、活物質合剤を塗布した塗工部32を備える。帯状金属箔31は、シート状の金属箔23を形成し得る。塗工部32は、それぞれ正極電極21が電極材料30から切り出された際に、活物質層27となる部位である。各塗工部32は、帯状金属箔31の長手方向に、帯状に一定の幅で延びている。
【0029】
また、電極材料30は、短手方向の両縁E1,E2に沿って未塗工部33を備える。未塗工部33は、帯状金属箔31の長手方向に一定幅で設けられている。未塗工部33は、活物質合剤(塗工部32)が存在しない部位であり、帯状金属箔31が露出した部分である。
【0030】
帯状金属箔31の厚みは、例えば、5〜30μmとすることができる。塗工部32の厚みは、例えば、5〜200μmとすることができる。したがって、電極材料30において、塗工部32が設けられた部分の厚みは、15〜430μmとすることができ、未塗工部33の厚みは、5〜30μmとすることができる。
【0031】
続けて、電極製造設備40について詳しく説明する。
図3(a)及び
図4に示すように、電極製造設備40は、電極材料30を供給する供給部41を備える。供給部41は、ロール状に捲回された電極材料30を支持するホルダ42を備える。ホルダ42は、電極材料30の搬送速度にあわせて、電極材料30を送り出す。電極製造設備40は、電極材料30を搬送する円柱状の搬送ロール43を、電極材料30を挟んで一対備える。搬送ロール43の軸心は、帯状金属箔31の短手方向に延びている。搬送ロール43は、軸心まわりで回転できるように支持されている。
【0032】
電極製造設備40は、電極製造装置としてのダイカット装置44を備える。ダイカット装置44は、電極材料30を、正極電極21の外形に沿って切断することにより、予め定めた形状の正極電極21を電極材料30から切り出す装置である。また、電極製造設備40は、ダイカット装置44によって得られた正極電極21を搬送する搬送部45を備える。
【0033】
ダイカット装置44は、ロータリーダイ50と、アンビルロール51とを備える。ロータリーダイ50の軸心、及び、アンビルロール51の軸心は、帯状金属箔31の短手方向に延び、かつ互いに平行である。
【0034】
ロータリーダイ50及びアンビルロール51は、軸心まわりで回転できるように支持されている。ダイカット装置44は、図示しないモータなどの駆動装置を備える。この駆動装置によって、ロータリーダイ50及びアンビルロール51は回転する。
【0035】
ロータリーダイ50は、ダイカットロール52と、ダイカットロール52の径方向外側に突出する形状の刃60とを備える。ダイカットロール52は、マグネットロール53と、マグネットロール53の外周面の全周に亘って巻き付けられたプレート54とを備える。プレート54は、マグネットロール53の外周面に貼り付けられ、マグネットロール53と同心の円筒状となっている。これにより、プレート54の厚み方向の一面がダイカットロール52の外周面となる。刃60は、プレート54の厚み方向の面のうち、マグネットロール53側の面とは反対側の面(外周面)に一体である。刃60の刃高(ダイカットロール52の外周面からの突出長)は、電極材料30を打ち抜くことができる寸法に設定されている。ダイカットロール52の軸線方向の寸法は、帯状金属箔31の短手方向の寸法よりも長い。
【0036】
ロータリーダイ50とアンビルロール51が供給部41から送り出された電極材料30を挟持した状態で回転するとともに、回転による刃60の打ち抜きにより電極材料30を切断して、正極電極21を得る。本実施形態では、ダイカット装置44では、電極材料30を搬送方向には分断せず、電極材料30に張力を与えながら搬送を行えるようにすることで、巻取装置を用いることなく電極材料30から正極電極21を得ることを可能にしている。以下、電極材料30の切断を行う刃60について詳細に説明を行う。なお、以下の説明においてダイカットロール52の軸線方向を「軸線方向」、ダイカットロール52の周方向を「周方向」として説明を行う。
図5は、プレート54の展開図を平面視した図であり、言い換えれば、ダイカットロール52の外周面を直線状に引き延した図であるともいえる。
【0037】
図5に示すように、刃60は、周方向に延びる周方向刃部60Aと、軸線方向に延びる軸線方向刃部60Bとを備える。周方向刃部60Aは、第1周方向刃部61を1つ備える。第1周方向刃部61は、ダイカットロール52の軸線方向の中央に位置しており、周方向の全体に亘って設けられている。
【0038】
軸線方向刃部60Bは、第1軸線方向刃部62を備える。第1軸線方向刃部62の軸線方向の寸法は、電極本体24の短辺である第3辺24c及び第4辺24dと同一である。第1軸線方向刃部62は、第1周方向刃部61に一端が繋がり、第1周方向刃部61から軸線方向の両側に延びている。以下の説明において、第1軸線方向刃部62のうち、第1周方向刃部61から軸線方向の一方に向けて延びている第1軸線方向刃部62を、適宜、第1刃部63と称し、第1軸線方向刃部62のうち、第1周方向刃部61から軸線方向の他方に向けて延びている第1軸線方向刃部62を、適宜、第2刃部64と称する。
【0039】
本実施形態の第1軸線方向刃部62は、第1刃部63と第2刃部64を2つずつ備える。第1刃部63同士は、周方向に対向している。第1刃部63同士の周方向の間隔は、電極本体24の長辺である第1辺24a及び第2辺24bの寸法と同一である。第2刃部64同士は、周方向に対向している。第2刃部64同士の周方向の間隔は、電極本体24の長辺である第1辺24a及び第2辺24bの寸法と同一である。
【0040】
第1刃部63と第2刃部64とは、軸線方向の異なる位置に設けられている。第1刃部63と第2刃部64とは、周方向にずれて位置しており、軸線方向において一直線上に位置していない。第2刃部64は、全ての第1軸線方向刃部62が軸線方向において一直線上に位置しないように周方向にずれて位置しているといえる。
【0041】
周方向刃部60Aは、各第1軸線方向刃部62の両端部のうち第1周方向刃部61に繋がる端部とは反対側の端部(他端)に繋がる第2周方向刃部65を備える。各第2周方向刃部65は、周方向の途中位置で分断された分断部66を2つ備える。分断部66は、第2周方向刃部65が設けられていない箇所である。分断部66の周方向の寸法は、タブ25の第1辺24aに沿う寸法と同一である。
【0042】
軸線方向刃部60Bは、第2周方向刃部65からプレート54の長縁(軸線方向の縁)に向けて軸線方向に延びる第2軸線方向刃部67を備える。第2軸線方向刃部67の一端は第2周方向刃部65に繋がり、第2軸線方向刃部67の他端はプレート54の長縁に繋がっている。第2軸線方向刃部67は、第2周方向刃部65のうち、分断部66を挟んだ位置から延びている。分断部66を挟んで位置する第2軸線方向刃部67同士の周方向の間隔は、タブ25の第1辺24aに沿う寸法と同一である。第2軸線方向刃部67の軸線方向の寸法は、タブ25の第1辺24aからの突出寸法以上である。
【0043】
図6に示すように、ダイカット装置44は、アンビルロール51とダイカットロール52の間で弾性変形する弾性部材71をダイカットロール52の外周面に備える。そして、弾性部材71によって電極材料30をアンビルロール51に押し付け、ダイカットロール52とアンビルロール51との間での電極材料30の動きを抑制しながら、電極材料30を切断する。弾性部材71は、ダイカットロール52の外周面のうち、刃60が突出する部分の周囲を除く箇所に設けられている。なお、弾性部材71としては、例えば、スポンジやゴムなどが用いられる。
【0044】
次に、本実施形態のダイカット装置44の作用について説明する。
図7(a)に示すように、本実施形態のダイカット装置44は、電極材料30を短手方向の中央で二分して、短手方向の両側から正極電極21を切り出す。また、本実施形態のダイカット装置44は、ダイカットロール52が1周する間に、電極材料30の長手方向に並んで2つの正極電極21を切り出す。したがって、ダイカットロール52が1周する間には、計4つの正極電極21が切り出される。
【0045】
第1周方向刃部61は、塗工部32が設けられた部位を帯状金属箔31の長手方向に連続的に切断することで、正極電極21の第2辺24bを形成する。第1軸線方向刃部62は、塗工部32が設けられた部位を切断することで、正極電極21の第3辺24c及び第4辺24dを形成する。第2周方向刃部65は、塗工部32が設けられた部位を切断することで、正極電極21の第1辺24aを形成する。縁切断刃部としての第2軸線方向刃部67は、未塗工部33を両縁E1,E2に至るまで切断することで、タブ25を形成する。
【0046】
ここで、電極材料30に張力を働かせながら、電極材料30を搬送するためには、アンビルロール51及びロータリーダイ50からの力が電極材料30に加わり、電極材料30が挟持された状態に維持されている必要がある。即ち、供給部41とダイカット装置44で、電極材料30を支持する必要がある。
【0047】
ロータリーダイ50のうち電極材料30に力を加えているのは刃60である。刃60は、電極材料30に進入し、電極材料30を切断するまでの間、アンビルロール51と電極材料30を挟むことで電極材料30に力を加えている。この力により電極材料30は挟持されている。
【0048】
ここで各軸線方向刃部62,67は、ロータリーダイ50が1周する間に僅かしか電極材料30に進入しないのに対し、各周方向刃部61,65は、ロータリーダイ50が1周する間中、連続的に電極材料30に進入する。このため、刃60のうち、電極材料30を挟持するのに起因しているのは主として各周方向刃部61,65といえる。
図7(a)及び
図7(b)では、各周方向刃部61,65のうちアンビルロール51の外周面と電極材料30を挟んでいる箇所、即ち、各周方向刃部61,65からの力が最も強く加わっている箇所を点P1〜P3で示している。また、
図7(a)及び
図7(b)では、刃60で切断されることで電極材料30から分離された部分をドットで示している。
【0049】
まず、比較例として、第1刃部63と第2刃部64とが周方向の同一位置に設けられ、軸線方向において一直線上に並んでいる場合のダイカット装置について説明する。
図7(b)に示すように、第1刃部63と第2刃部64とが軸線方向において一直線上に並んでいる場合、電極材料30の短手方向に並んで2つの正極電極21が同時に切り出される。すると、点P1〜P3は電極材料30と、電極材料30から分離された部分である正極電極21との境界に位置することになる。この場合、各周方向刃部61,65からの力が電極材料30に加わらなくなる、あるいは、電極材料30を挟持できるだけの力を維持できず、電極材料30に張力を働かせることができなくなるおそれがある。すると、電極材料30は、アンビルロール51とダイカットロール52との間から抜けてしまい、電極材料30の搬送、ひいては、正極電極21の製造を行うことができない。
【0050】
図7(a)に示すように、本実施形態のダイカット装置44では、第1刃部63によって電極材料30が切断されるタイミングと、第2刃部64によって電極材料30が切断されるタイミングが異なる。このため、第1刃部63によって電極材料30から正極電極21が切り出されたタイミングでは、点P1、点P2は電極材料30と、正極電極21との境界に位置している。これに対し、第2刃部64によっては正極電極21が切り出されていないため、第2周方向刃部65からの力(点P3)は電極材料30に加わっている。
【0051】
即ち、電極材料30の短手方向に並ぶ正極電極21が切り出される周期(位相)をずらすことで、電極材料30の短手方向に並ぶ正極電極21が同時に切り出されないようにしている。すると、電極材料30の短手方向に並ぶ正極電極21のうち、いずれかは常に切断途中となる。切断途中の正極電極21は、電極材料30から分離されていないため、少なくとも1つの第2周方向刃部65からの力を電極材料30で受けることができる。
図7(a)では、点P3で示すように、第2周方向刃部65からの力が電極材料30に加わっている。
【0052】
また、ダイカットロール52の外周面に弾性部材71を設けていることで、アンビルロール51の外周面と弾性部材71によっても電極材料30は挟持されている。この場合であっても、電極材料30の短手方向に並んで2つの正極電極21が同時に切り出されると、電極材料30に加わる力が、電極材料30から分離された正極電極21に分散してしまう。これに対して、電極材料30の短手方向に並ぶ正極電極21が同時に切り出されないようにすることで、電極材料30に加わる力が大きく、電極材料30を挟持しやすい。
【0053】
したがって、上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)軸線方向の両端の第2周方向刃部65の間に位置している第1刃部63と第2刃部64とは、周方向にずれて位置している。このため、電極材料30を切断する際に、少なくとも1つの第2周方向刃部65からの力が電極材料30に加わる状態が維持される。したがって、電極材料30をロータリーダイ50とアンビルロール51で挟持して、電極材料30に張力を働かせつつ、電極材料30の搬送をダイカット装置44で行うことができる。電極材料30に張力を働かせつつ電極材料30を搬送するために未塗工部33の一部を残すように電極材料30を切断する必要がなく、未塗工部33の両縁E1,E2に至るまで電極材料30を切断して、正極電極21を得ることができる。したがって、正極電極21の歩留まりが向上する。更に、巻取装置が不要となるため、電極製造設備40の低コスト化が図られる。
【0054】
(2)第2周方向刃部65は、塗工部32を切断している。塗工部32は、未塗工部33に比べて厚い。このため、各周方向刃部61,65からの力が電極材料30に加わりやすく、ダイカット装置44による電極材料30の搬送を行いやすい。
【0055】
(3)ダイカット装置44は、ダイカットロール52の外周面に弾性部材71を備える。したがって、弾性部材71とアンビルロール51でも電極材料30を挟持することができ、ダイカット装置44による電極材料30の搬送を行いやすい。
【0056】
(第2実施形態)
次に、電極製造装置の第2実施形態について説明する。以下の説明において、第1実施形態と同様の構成については同一の符合を付すことで説明を省略する。
【0057】
図8(a)に示すように、第2実施形態では、帯状金属箔31の短手方向の両縁E1,E2に沿って塗工部32が設けられた電極材料30から正極電極21が切り出される。電極材料30は、帯状金属箔31の短手方向における一対の塗工部32の間に、両塗工部32の長手方向に延びる縁に沿う未塗工部33を備える。第2実施形態と、第1実施形態では刃の形状が異なることを除き、ダイカット装置44は同一の構成を備える。以下、第2実施形態の刃の形状について説明する。
【0058】
図8(b)に示すように、刃90は、周方向に延びる周方向刃部90Aと、軸線方向に延びる軸線方向刃部90Bとを備える。周方向刃部90Aは、軸線方向に互いに対向する第1対向刃部91及び第2対向刃部92を備える。2つの対向刃部91,92は、ダイカットロール52の軸線方向の中央を挟んで位置している。各対向刃部91,92は、周方向の途中位置で分断された分断部93を2つ備える。分断部93は、各対向刃部91,92が設けられていない箇所である。分断部93の周方向の寸法は、タブ25の第1辺24aに沿う寸法と同一である。各対向刃部91,92の分断部93は、軸線方向に重なり合わないように配置されている。
【0059】
刃90の軸線方向刃部90Bは、各対向刃部91,92の間で延び、各対向刃部91,92に繋がる複数の内側刃部94を備える。各内側刃部94は、分断部93を挟んだ位置から延びている。分断部93を挟んで位置する内側刃部94同士の周方向の間隔は、タブ25の第1辺24aに沿う寸法と同一である。内側刃部94の軸線方向の寸法は、タブ25の第1辺24aからの突出寸法と同一である。
【0060】
刃90の軸線方向刃部90Bは、各対向刃部91,92から内側刃部94の延びる方向とは反対方向に延びる外側刃部95を備える。外側刃部95の軸線方向の寸法は、電極本体24の短辺である第3辺24c及び第4辺24dの寸法以上である。外側刃部95は、対向刃部91,92に一端が繋がり、プレート54の長縁(軸線方向の縁)に他端が繋がる。以下の説明において、外側刃部95のうち、第1対向刃部91に繋がる外側刃部95を、適宜、第1刃部96と称し、外側刃部95のうち、第2対向刃部92に繋がる外側刃部95を、適宜、第2刃部97と称する。
【0061】
本実施形態の外側刃部95は、第1刃部96と第2刃部97を2つずつ備える。第1刃部96同士は、周方向に対向している。第1刃部96同士の周方向の間隔は、電極本体24の長辺である第1辺24a及び第2辺24bの寸法と同一である。第2刃部97同士は、周方向に対向している。第2刃部97同士の周方向の間隔は、電極本体24の長辺である第1辺24a及び第2辺24bの寸法と同一である。
【0062】
第1刃部96と第2刃部97とは、軸線方向の異なる位置に設けられている。第1刃部96と第2刃部97とは、周方向にずれて位置しており、軸線方向において一直線上に位置していない。第2刃部97は、全ての外側刃部95が軸線方向において一直線上に位置しないように周方向にずれて位置しているといえる。
【0063】
第2実施形態のダイカット装置44は、第1実施形態と同様に電極材料30の短手方向に並んで二つの正極電極21を切り出す。本実施形態では、塗工部32の間に設けられた1つの未塗工部33から、電極材料30の短手方向に並んで切り出される各正極電極21のタブ25が切り出される。
【0064】
第1刃部96と第2刃部97とが軸線方向に一直線上に位置しないようにすることで、帯状金属箔31の短手方向に並んで切り出される正極電極21は、異なるタイミングで切り出される。このため、対向刃部91,92の力が電極材料30に加わっている状態が維持され、電極材料30に張力を働かせながら電極材料30を搬送することができる。
【0065】
各対向刃部91,92は、塗工部32が設けられた部位を切断することで、正極電極21の第1辺24aを形成する。各内側刃部94は、未塗工部33を切断することでタブ25を形成する。
【0066】
縁切断刃部としての各外側刃部95は、各塗工部32を両縁E1,E2に至るまで切断することで、正極電極21の第3辺24c及び第4辺24dを形成する。
したがって、上記実施形態によれば、第1実施形態の効果(1)に加えて、以下のような効果を得ることができる。
【0067】
(4)帯状金属箔31の短手方向に並んで切り出される各正極電極21のタブ25を、共通の未塗工部33から切り出している。帯状金属箔31の両縁E1,E2に沿う未塗工部33のそれぞれからタブ25を切り出す場合に比べて、未塗工部33の数を少なくすることができ、電極材料30の端材を減らすことができる。
【0068】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
○第1実施形態において、ダイカット装置44は、1つの電極材料30から短手方向に並んで3つ以上の電極を切り出す装置であってもよい。この場合、電極材料30は、帯状金属箔31の短手方向に並んで複数の塗工部32を備える。1つの電極材料30から短手方向に並んで4つの電極を切り出す場合、刃は、例えば、
図9に示す形状となる。
図9に実線で示す刃80は、第1実施形態に記載の刃60を、ダイカットロール52の軸線方向に2つ並べた形状である。また、
図9に二点鎖線で示すように、刃80は、軸線方向に隣り合う2つの第1軸線方向刃部62同士が軸線方向において一直線上に位置する刃60を、軸線方向に2つ並べた形状であってもよい。この場合、刃60同士の第1軸線方向刃部62を周方向にずらして位置させる。
【0069】
即ち、1つの電極材料30から短手方向に並んで3つ以上の電極を切り出す場合、刃60は、軸線方向において異なる位置に設けられた第1軸線方向刃部62を3つ以上備える。この場合、全ての第1軸線方向刃部62が軸線方向に一直線上に位置しないように少なくとも1つの第1軸線方向刃部62が周方向にずれて位置する。
【0070】
また、第2実施形態において、ダイカット装置44は、1つの電極材料30から短手方向に並んで3つ以上の電極を切り出す装置であってもよい。この場合、電極材料30は、帯状金属箔31の短手方向に並んで複数の未塗工部33を備える。電極材料30から4つの電極を切り出す場合、刃は、例えば、第2実施形態に記載の刃90をダイカットロール52の軸線方向に2つ並べ、かつ、軸線方向に並ぶ刃90の境界に周方向に延びる刃を備えた形状となる。
【0071】
○各実施形態では、ダイカットロール52が1周する間に、帯状金属箔31の長手方向に2つの正極電極21が切り出されるようにしたが、これに限られない。例えば、ダイカットロール52が1周する間に、帯状金属箔31の長手方向に3つ以上の正極電極21が切り出されるようにしてもよいし、1つの正極電極21が切り出されるようにしてもよい。この場合、ダイカットロール52が1周する間に切り出したい正極電極21の数に合わせて第1軸線方向刃部62又は外側刃部95の数を適宜変更する。
【0072】
○各実施形態において、弾性部材71は設けられていなくてもよい。この場合であっても、第2周方向刃部65で塗工部32が切断されるようにすることで、第2周方向刃部65とアンビルロール51によって電極材料30を挟持することができる。
【0073】
○第1実施形態において、第2周方向刃部65は、未塗工部33を切断するようにしてもよい。この場合、ダイカットロール52の外周面に弾性部材71を設けて、弾性部材71とアンビルロール51とで電極材料30を挟持する。この場合、電極本体24の第1辺24aに沿って、活物質層27の設けられていない露出部を備える電極が切り出される。
【0074】
○第2実施形態において、各対向刃部91,92は、未塗工部33を切断するようにしてもよい。この場合、電極本体24の第1辺24aに沿って、活物質層27の設けられていない露出部を備える電極が切り出される。
【0075】
○各実施形態において、刃60,90のうち、未塗工部33を切断する部分の刃高を、塗工部32を切断する刃60,90の刃高よりも高くしてもよい。また、アンビルロール51のうち、未塗工部33に接する部分の直径を塗工部32に接する部分の直径よりも大きくしてもよい。これにより、ダイカットロール52やアンビルロール51の摩耗を抑制できる。
【0076】
○各実施形態において、ダイカット装置44は、負極電極用の電極材料30を切断して負極電極22を製造する装置であってもよい。
○鵜各実施形態では、マグネットロール53にプレート54を貼り付けることで、ロータリーダイ50を構成したが、これに限られない。例えば、円筒状のダイカットロール52と刃60が一体のロータリーダイ50を用いてもよい。
【0077】
○各実施形態において、電極材料30は、帯状金属箔31の片面に活物質合剤を塗布したものでもよい。