(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
リードのピッチを鍵に合わせて特注するのはコスト面で現実的でないため、発音ユニットとして市販のオルゴールを利用するのが通常であり、上記非特許文献1でも市販品を用いていると思われる。このような市販品ではリードのピッチが鍵のピッチより狭いため、リードを駆動するための機構を狭いスペースに配設すると駆動機構が集中してしまう。また、鍵操作でリードを弾くように構成する場合、リードとリードを駆動する駆動部との相互位置関係を正確に確保する必要がある。市販のオルゴールを利用する場合、個々のリードの位置は固定であるため、リードに合わせて鍵及び駆動部の位置を調整する必要がある。従って、駆動機構の集中配置が必要となると駆動機構が複雑化し、鍵盤楽器の製造が容易でなくなるという問題がある。
【0005】
本発明は上記従来技術の問題を解決するためになされたものであり、その目的は、発音体を駆動する機構の集中配置を回避し、製造を容易にすることができる鍵盤楽器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために本発明の請求項1の鍵盤楽器は、複数の鍵として白鍵及び黒鍵を含む鍵盤と、基部、及び、前記複数の各鍵に対応して前記基部から延設され発音可能な複数の発音体(12)を有する発音ユニット(10)と、前記複数の各鍵に対応して設けられ、対応する鍵の操作に応じて変位し、対応する発音体を駆動して発音させる発音体駆動
部と、を有し、前記発音ユニットにおける発音体の配設ピッチは、前記鍵の長手方向の前記黒鍵の配設範囲における前記複数の鍵の配設ピッチと略等し
く、前記発音ユニットは、互いに隣接する発音体同士の間において前記発音体とは別に前記基部から延設された延設部であって前記隣接する発音体よりも剛性の高い前記延設部を有することを特徴とする。なお、上記括弧内の符号は例示である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の請求項1によれば、発音体を駆動する機構の集中配置を回避し、製造を容易にすることができる。
【0008】
請求項2によれば、発音ユニットを軽量化することができる。請求項3によれば、発音体間の空隙を有効利用することができる。請求項4によれば、外力から発音体を保護することができる。請求項5によれば、空きスペースを利用し、発音ユニットを大型化することなく音響を豊かにすることができる。請求項6によれば、発音体と鍵との位置精度を高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0011】
図1(a)、(b)はそれぞれ、本発明の一実施の形態に係る鍵盤楽器の要部の平面図、側面図である。この鍵盤楽器においては、下ケース40に、複数の鍵Kとして白鍵WK及び黒鍵BKを含む鍵盤KBが配設される。この鍵盤楽器は、鍵Kに対応して設けられる発音体であるリード12を鍵Kの操作によって振動させて発音させるように構成される。鍵Kの並び方向を左右方向とし、鍵Kの長手方向を前後方向とする。鍵盤KBは、複数の鍵K(例えば、1オクターブ分)が一体となった鍵ユニットKUTを複数有する。
図1(a)では鍵ユニットKUT−1、KUT−2を図示しているが、これら以外にも鍵ユニットKUTは存在してもよい。鍵ユニットKUTは例えば樹脂製である。
【0012】
複数の鍵ユニットKUTの構成は同様であるので、1つの鍵ユニットKUTについて説明する。鍵ユニットKUTは1つの共通基端部20を有する。共通基端部20は下ケース40に支持される。鍵ユニットKUTにおける鍵Kの各々は、薄肉のヒンジ部21を有し、ヒンジ部21が共通基端部20に接続されている。鍵ユニットKUTは、複数の鍵Kの各々が押離鍵方向へ変位自在に共通基端部20に支持されて一体となっている。非操作状態では、ヒンジ部21が撓まない状態であり、鍵Kの各々は非押鍵位置にある。ヒンジ部21が弾性によって撓むことで鍵Kは共通基端部20に対して回動(揺動)自在となっている。さらに、各鍵Kの押鍵方向の変位終了位置を規制するストッパ(図示せず)が下ケース40に設けられている。押鍵操作されると各鍵Kの前端部が下方に揺動し、離鍵操作されると前端部が上方に揺動して非押鍵位置へ復帰する。
【0013】
各鍵Kの下方には、対応するリード12を弾くための連動部材25が配置される。各鍵Kに対応する連動部材25の構成は共通である。各連動部材25は、回動軸24を中心に回動自在に配設される。回動軸24は下ケース40に支持される。鍵Kからは垂下部23が垂下形成され、垂下部23に連動部材25の前端部が係合しており、連動部材25は鍵Kと連動して回動する。鍵Kが押下操作されると、対応する連動部材25の先端が上昇し、対応するリード12を駆動する。これによりリード12が振動して発音する。
【0014】
鍵盤楽器は、発音ユニット10を複数有する。本実施の形態では、発音ユニット10は、鍵ユニットKUTと1対1に対応するように、1オクターブを単位として構成され、
図1(a)では発音ユニット10−1、10−2が図示されている。各発音ユニット10は基部11を有し、基部11からは、発音音高の異なる複数本のリード12が櫛歯状に延設されている。各発音ユニット10の基本構成は共通するが、各リード12は音高に応じてその長さや幅が異なり、前後方向における自由端部の位置はほぼ同じになっている。基部11は、下ケース40に固定された支持部41に取り付けられる。支持部41への基部11の取り付けの態様は問わず、接着や螺着による固着でもよい。
【0015】
発音ユニット10は、基部11及び複数本のリード12を含んで金属等で一体に形成される。発音ユニット10における隣接するリード12間には空隙領域Sが形成され、軽量化が図られている。リード12の配設ピッチはPである。鍵ユニットKUTにおける鍵Kの配設ピッチもPであり、従って、リード12と鍵Kとは配設ピッチがPで略一致している。なお、配設ピッチPは概ね一定ではあるが、厳密には、鍵Kの配設ピッチは領域によって異なり、隣接する鍵K同士の間隔が音高によって僅かに異なっている。従って、隣接するリード12同士の配設間隔は、対応する鍵K同士の配設間隔と同じとなるように設計される。ここで、リード12についての配設ピッチは、リード12の幅方向(左右方向)中央位置同士の距離で定義される(隣接するもの同士の配設間隔も同様)。一方、鍵Kについての配設ピッチは、鍵Kの長手方向(前後方向)の黒鍵BKの配設範囲における鍵Kの幅方向中央位置同士の距離で定義される。
【0016】
ところで、各連動部材25は、予め対応する鍵Kの垂下部23に組み付けられており、鍵ユニットKUTは、連動部材25を含んでユニット化されて、駆動部材付きユニット100となっている。しかも、連動部材25の先端位置は共通となり、連動部材25のピッチはリード12のピッチと一致するように調整されている。
【0017】
下ケース40からは支柱42が突出して設けられている。この支柱42は、下ケース40と不図示の上ケースとの間に介装され、上ケースを支持する機能を有する。
【0018】
発音ユニット10における複数の空隙領域Sの1つに支柱42が貫通するように介在する。これにより空隙領域Sが有効利用される。支柱42の数は問わず、複数でもよい。
【0019】
発音ユニット10及び鍵ユニットKUTの鍵盤楽器への組み付けは次のようになされる。まず、作業者は、作業者は、下ケース40に支持部41を固定すると共に、駆動部材付きユニット100(連動部材25を含んだ鍵ユニットKUT)を下ケース40に固定する。その際、発音ユニット10及び鍵ユニットKUTの少なくともいずれかの位置を調整可能に構成しておく。例えば、発音ユニット10の位置が固定であるとすると、鍵ユニットKUTを単位として左右及び前後方向の位置を調整する。発音ユニット10におけるリード12同士の相対的な位置関係が予め決められていると共に、鍵ユニットKUTにおける鍵K同士及び連動部材25同士の相対的な位置関係が予め決められているので、位置合わせは鍵ユニットKUTを単位として容易に行える。
【0020】
本実施の形態によれば、発音ユニット10におけるリード12の配設ピッチが鍵盤KBにおける鍵Kの配設ピッチと略等しいので、リード12を駆動する機構を市販のオルゴールのような狭いリードピッチに合わせて設計する必要がない。そのため、駆動機構の複雑化も回避されシンプルな構成を採用できる。よって、発音体を駆動する機構の集中配置を回避し、製造を容易にすることができる。
【0021】
また、発音ユニット10における互いに隣接するリード12同士の間には、発音ユニット10の構成要素が存在しない空隙領域Sが形成されるので、発音ユニット10を軽量化することができる。さらに、空隙領域Sには支柱42が配設されるので、リード12間の空隙を有効利用することができる。なお、この観点からは、空隙領域Sに配設される要素は支柱42に限定されず、発音ユニット10の構成要素以外の当該鍵盤楽器の構成要素であればよい。また、鍵盤楽器の構成要素が配設される空隙領域Sは複数の空隙領域Sのうち少なくとも1つであってもよい。
【0022】
また、発音ユニット10と鍵ユニットKUTとが1対1に対応するので、リード12と鍵Kとの相対的な位置精度を高めることができる。リード12に対する鍵Kの位置調整は、発音ユニット10に対する鍵ユニットKUTの位置調整という形で行えるので容易である。さらに、部品を共通化しやすくなり製造コストの削減に寄与する。なお、この観点からは、発音ユニット10及び鍵ユニットKUTは1オクターブを単位として構成されることは必須でない。
【0023】
なお、鍵Kがヒンジ部21の弾性により揺動する構成を例示したが、これに限定されない。例えば、鍵Kは回動軸を中心に自由端部が回動する構成としてもよい。
【0024】
図2、
図3で変形例を説明する。
図2(a)、(b)はいずれも、変形例の発音ユニット10の平面図である。
図1の例では、リード12が櫛歯状に延設されており、組み付け作業時にリード12が特に先端から外力を受けると折れたり変形したりするおそれがある。そこで
図2(a)の例では、互いに隣接するリード12同士の間において、リード12とは別に基部11から延設部13を延設する。延設部13は、発音ユニット10を構成する材料を切り出す際に、リード12だけでなく延設部13を残すという態様で形成できる。延設長さについてもリード12と共通にすれば製造が容易である。
【0025】
これにより、例えば、前方から外力を受けても、延設部13が主に力を受けとめることでリード12に過剰な力がかかることを回避できる。従って、外力からリード12が保護される。なお、この観点からは延設部13の上下左右の曲げ剛性はリード12よりも十分に高いことが好ましく、厚み及び幅の少なくともいずれかはリード12よりも大きくする。なお、前方からの外力からの保護に着目するならば、延設部13の延設長さを長くし、その先端位置をリード12の先端位置よりも突出させてもよい。
【0026】
次に、
図2(b)の例では、各リード12に近接して共鳴用リード14(共鳴用発音体)が設けられる。共鳴用リード14はリード12とは別に基部11から延設される。共鳴用リード14の固有振動数は、近接するリード12の固有振動数と略一致している。共鳴用リード14は、発音ユニット10を構成する材料を切り出す際に、リード12と共に共鳴用リード14を残すという態様で形成できる。
【0027】
リード12が振動すると、その根元付近の基部11を通じて対応する共鳴用リード14へ振動が伝わり、共鳴用リード14が共振する。これにより音響を豊かにすることができる。しかも、共鳴用リード14は空隙領域Sに配置できるので、空きスペースを利用でき、発音ユニット10を大型化することもない。なお、1つのリード12に対応する共鳴用リード14は2本以上であってもよく、配置箇所も各リード12の左右両側あってもよい。
【0028】
図3は、変形例の鍵盤楽器におけるリード12の先端付近の模式的な側面図である。
図1に示した例では、発音体駆動部として、鍵Kと連動する連動部材25を示した。しかし、発音体駆動部は、対応する鍵Kの操作に応じて変位し、対応するリード12を駆動して発音させる構成であればよい。
図3に示す変形例では、発音体駆動部としてロータリーピック30を例示する。発音ユニット10、鍵ユニットKUT及び連動部材25の構成は
図1で説明したのと同様である。
【0029】
リード12の先端部に近接して回転体であるロータリーピック30が各リード12に対応して配設される。各ロータリーピック30は、共通の回転軸33の周りに回転可能に軸支されており、回転軸33を中心として各々独立して滑らかに回転することができる。台座18には、板バネで構成されるスプリング19の下端部がロータリーピック30に対応して固定されている。回転軸33及び台座18は下ケース40に支持される。
【0030】
ロータリーピック30は金属製の薄板で側面視略円形状に構成され、その外周部には、複数(例えば4つ)の突起部32が一体に形成される。ロータリーピック30には、側面視形状が矩形(四角形)のカム部31が左右両側に固定的に設けられると共に、カム部31の外面にスプリング19の自由端部が圧接している。スプリング19は金属等の板状弾性部材で構成される。なお、カム部31を付勢できるものであればよく、スプリング19に限定されるものではない。カム部31とスプリング19との係合による逆回転防止の機能は、特開2003−280659号公報等に開示されているのと同様である。ロータリーピック30は、実質的に一方向(
図3でいう時計方向)にのみ回転する。
【0031】
通常の押鍵操作によって、ロータリーピック30は、
図3の時計方向に回転する。突起部32は、連動部材25から駆動力を受ける被駆動部としての機能と、リード12を駆動する発音体駆動部としての機能とを併せ持つ。突起部32の、回転方向後ろ側のほぼ平坦な面が被駆動部としての機能を果たす。突起部32の、回転方向前側の側面視略弧状の面が、リード12を直接弾く発音体駆動部としての機能を果たす。押鍵行程において、連動部材25が突起部32の1つと係合し、係合した突起部32を駆動する。するとロータリーピック30が時計方向に回転していく。その際、係合した突起部32とは対称位置にある突起部32がリード12の先端部を弾く。押鍵終了状態から離鍵操作すると、連動部材25は非押鍵位置に対応する初期位置へ復帰する。
【0032】
なお、発音体としてリードを例示したが、これに限定されるものではなく、アコースティックな発音をするもの、例えば金属製や木製等の板状発音体も発音体に含まれる。
【0033】
以上、本発明をその好適な実施形態に基づいて詳述してきたが、本発明はこれら特定の実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の様々な形態も本発明に含まれる。