特許第6809145号(P6809145)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6809145皮膚貼付用粘着シートおよびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6809145
(24)【登録日】2020年12月14日
(45)【発行日】2021年1月6日
(54)【発明の名称】皮膚貼付用粘着シートおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/02 20060101AFI20201221BHJP
【FI】
   A61F13/02 310J
   A61F13/02 310H
   A61F13/02 390
【請求項の数】6
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-216989(P2016-216989)
(22)【出願日】2016年11月7日
(65)【公開番号】特開2018-75057(P2018-75057A)
(43)【公開日】2018年5月17日
【審査請求日】2019年7月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】711004506
【氏名又は名称】トーヨーケム株式会社
(72)【発明者】
【氏名】中山 雄二
【審査官】 塩治 雅也
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2010/0168633(US,A1)
【文献】 国際公開第2015/119160(WO,A1)
【文献】 特開平08−224817(JP,A)
【文献】 特表2008−541881(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0270965(US,A1)
【文献】 特開2000−128780(JP,A)
【文献】 特表2004−527600(JP,A)
【文献】 特表2010−536823(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/00−13/14
A61F 15/00−17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
剥離性シート上に予め加熱溶融させたホットメルト粘着剤を塗工し、ホットメルト粘着剤層(X)を形成し、
前記ホットメルト粘着剤層(X)と、水蒸気透過率が3000g/m・24時間以上である通気性フォーム体とを加熱圧着して、表面の空隙率が5〜50%、かつ1平方ミリメートル当たり円相当径が10〜400μmの孔を2個以上有するホットメルト粘着剤層(A)を形成する、
皮膚貼付用粘着シートの製造方法。
【請求項2】
前記通気性フォーム体は、厚さ0.5〜10mmである、請求項1に記載の皮膚貼付用粘着シートの製造方法。
【請求項3】
前記ホットメルト粘着剤層(X)の一部を前記通気性フォーム体に沈み込ませつつ、通気性フォーム体の孔に基づく孔をホットメルト粘着剤層(A)に形成する、請求項1または2記載の皮膚貼付用粘着シートの製造方法。
【請求項4】
前記ホットメルト粘着剤が、スチレン系共重合体、粘着付与剤、および軟化剤を含む粘着剤である、請求項1〜3いずれか1項に記載の皮膚貼付用粘着シートの製造方法。
【請求項5】
前記ホットメルト粘着剤層(X)の厚さが50〜300μmであり、前記ホットメルト粘着剤層(A)の厚さが10〜200μmである、請求項1〜4いずれか1項に記載の皮膚貼付用粘着シートの製造方法。
【請求項6】
前記ホットメルト粘着剤層(A)がパターン状である、請求項1〜5いずれか1項に記載の皮膚貼付用粘着シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚に貼り付ける用途の粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
絆創膏、サージカルテープ、心電図測定用の電極固定用シート等のように、医療分野で
使用される粘着シートには、その粘着性の高さからアクリル系重合体が一般的に使用されている。しかし、アクリル系重合体は合成後に未反応のモノマーが残留し易く、アクリル系重合体を使用した粘着シートを、皮膚に貼付すると発疹等の炎症の原因となる場合がある。
そのため、炎症の原因物質を含まないホットメルト粘着剤を使用した粘着シートが使用される場合が多い。
しかし、ホットメルト粘着剤を使用した粘着シートは、粘着剤層に透湿性が無いため、皮膚に貼付して長時間が経過すると、汗が粘着剤層を透過できず滞留して、皮膚の蒸れやかゆみの原因になっていた。
【0003】
そこで、特許文献1および特許文献2には、ホットメルト粘着剤の透湿性確保を目的として一定パターンの開口部を有する粘着剤層を用いた粘着シートが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2003−509121号公報
【特許文献2】特表2009−530058号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の粘着シートは、粘着剤層の開口部には透湿性があったが、非開口部には透湿性が無いため、粘着剤層の非開口部と接する皮膚に蒸れやかゆみが発生する問題があった。
【0006】
本発明は、皮膚に長時間貼付した場合に蒸れやかゆみが生じ難い、皮膚貼付用粘着シートおよびその製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の皮膚貼付用粘着シートは、通気性フォーム体、およびホットメルト粘着剤層(A)を備え、前記ホットメルト粘着剤層(A)は、表面の空隙率が5〜50%であり、1平方ミリメートル当たりに円相当径が10〜400μmの孔を2個以上有する。
【発明の効果】
【0008】
上記の本発明によれば、ホットメルト粘着剤層(A)は、一定面積当たり所定の貫通孔を有することで適度な表面空隙率を有する。そのため、汗等の水分が粘着剤層を通過し、さらに通気性フォーム体を通じて放出されやすくなることで、皮膚の蒸れやかゆみを抑制できる。
【0009】
本発明により皮膚に長時間貼付した場合に蒸れやかゆみが生じ難い、皮膚貼付用粘着シートおよびその製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例で作製するストライプ状粘着剤層の一部を抜き出した平面図である。
図2】実施例で作製するメッシュ状粘着剤層の一部を抜き出した平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の皮膚貼付用粘着シート(以下、単に「粘着シート」という)は、通気性フォーム体、およびホットメルト粘着剤層(A)を備え、前記ホットメルト粘着剤層(A)は、表面の空隙率が5〜50%であり、1平方ミリメートル当たりに円相当径が10〜400μmの孔を2個以上有する。なお、本明細書で粘着シート、粘着テープおよび粘着フィルムは同義語である。
【0012】
本発明の粘着シートは、もともと皮膚を刺激し難い成分で構成されたホットメルト粘着剤を用いた粘着シートである。後述するが一定の透湿性を有するホットメルト粘着剤層(A)の塗工形状は、いわゆるベタ塗りの粘着剤層、開口部を有するパターン状の粘着剤層、あるいは、点状ないし島状のように粘着剤層が連続しないパターンの粘着剤層であっても良い。
【0013】
本発明の粘着シートは、皮膚に直接使用する用途が好ましい。
【0014】
<通気性フォーム体>
本発明で用いる通気性フォーム体は、汗等の水分(水ないし水蒸気)を透過できる連続気泡ないし貫通孔を有している。そのため通気性フォーム体は、ホットメルト粘着剤層(A)を通過(ないし透過)した水分を通過できる程度の連続気泡を有すればよいため特に限定されないところ、その水蒸気透過性を挙げるとすれば3000g/m・24時間以上である。水蒸気透過性は、通気性フォーム体が粘着シートとして使用できる強度を有する範囲内であれば高ければ高いほど好ましいため特に上限値はないところ、強いて挙げれば10000g/m・24時間程度である。なお、水蒸気透過性は、JIS―Z0208に準じた方法で測定された数値である。なお連続気泡とは、例えば、通気性フォーム体を製造する際に使用した発泡剤に起因して生じた気泡であるが、発泡剤を用いて作製されたものに限定されないことはいうまでもない。なお、本明細書で孔は、貫通孔を意味する。
【0015】
通気性フォーム体の素材は、粘着シートとして使用可能な柔軟性および通気性を有する公知の素材であればよく限定されない。前記素材は、プラスチックス、合成ゴムが好ましい。素材は、例えば、ポリウレタン、ポリエステル、ポリオレフィン、エチレンプロピレンゴム等が挙げられる。
【0016】
通気性フォーム体の厚みは、通常0.05mm〜10mm程度であり、0.5mm〜5mmが好ましい。
【0017】
<ホットメルト粘着剤>
ホットメルト粘着剤層(A)は、ホットメルト粘着剤を塗工することで形成する。
ホットメルト粘着剤は、例えばスチレン系共重合体、粘着付与剤、軟化剤を含むことが好ましい。
【0018】
スチレン系共重合体は、ホットメルト粘着剤層(A)に凝集力を付与する主成分であり、公知のスチレンブロック共重合体を用いることが好ましい。
スチレン系共重合体は、例えばスチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体(以下、「SEBS」とも略記する)、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合物(以下、「SIS」とも略記する)、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合物の水素添加物(以下、「SEPS」とも略記する)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合物(以下、「SBS」とも略記する) 、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合物の水素添加物(以下、「SEBS」とも略記する)、スチレン−ブタジエン−イソプレン−スチレンブロック共重合物(以下、「SBIS」とも略記する)、スチレン−ブタジエン−イソプレン−スチレンブロック共重合物の水素添加物(以下、「SEEPS」とも略記する)等が挙げられる。スチレン系共重合体は、単独または2種類以上を併用できる。
【0019】
スチレン系共重合体は、メルトフローレイト(MFR)が0.5g/10分以上100g/10分(190℃、2.16kg)以下であることが好ましい。MFRを前記範囲内にあることで塗工適性がより向上する。なおMFRとは溶液状態にある樹脂の流動性を示す指標であり、JIS K7210に準拠して測定したものである。
【0020】
スチレン系共重合体の配合量は、ホットメルト粘着剤100重量%のうち、3〜65重量%が好ましく、25〜35重量%がより好ましい。配合量が前記範囲内にあると凝集力とホットメルト粘着剤の製造し易さを両立し易い。
【0021】
粘着付与剤は、ホットメルト粘着剤層(A)に粘着力を付与できる公知の化合物である。粘着付与剤は、その軟化点が80〜160℃であることが好ましい。軟化点が前記範囲内にあることで凝集力と粘着力を両立し易い。なお、本発明で軟化点とは、JISK6863に規定される方法により求められる温度である。すなわち、ホットメルト粘着剤を充填した規定の環を12時間以上静置させた後、熱媒体中に入れて規定の球を、ホットメルト粘着剤を充填した規定の環の上に置き、一定の割合で熱媒体の温度を上昇させたとき、ホットメルト粘着剤の軟化により球が沈み環台の底板に触れたときの温度である。
【0022】
粘着付与剤は、例えばロジン系樹脂、水素添加されたロジン系樹脂、テルペン系樹脂、水素添加されたテルペン系樹脂、炭化水素系樹脂、水素添加された炭化水素系樹脂、エポキシ系樹脂、水素添加されたエポキシ系樹脂、ポリアミド系樹脂、水素添加されたポリアミド系樹脂、エラストマー系樹脂、水素添加されたエラストマー系樹脂、フェノール系樹脂、水素添加されたフェノール系樹脂、ケトン系樹脂、水素添加されたケトン系樹脂、石油径樹脂、水素添加された石油径樹脂、スチレン系樹脂および水素添加されたスチレン系樹脂などが挙げられる。これらの中でも色相の観点から水素添加されたテルペン系樹脂がより好ましい。粘着付与剤は、単独または2種以上併用できる。
【0023】
粘着付与剤の配合量は、ホットメルト粘着剤100重量%のうち、3〜60重量%が好ましく、20〜35重量%がより好ましい。配合量が前記範囲内にあると粘着力と凝集力を高いレベルで両立しやすくなる。
【0024】
軟化剤は、ホットメルト粘着剤を加熱塗工する際に、ホットメルト粘着剤の粘度を塗工に適する粘度に下げる機能を有する。
【0025】
軟化剤は、その分子量が100〜10000であることが好ましい。分子量が前記範囲内にあるとホットメルト粘着剤を塗工するために加熱する際の粘度が低下し易い一方、ブリードアウトがより生じ難くなる。本発明で分子量は、単一化合物の場合は化学式量、混合物の場合は重量平均分子量である。また、本発明で重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(以下、「GPC」とも略記する)によるポリスチレン換算された重量平均分子量である。
【0026】
軟化剤は、ホットメルト粘着剤に使用できる公知の軟化剤が使用できるところ、例えば例えば流動パラフィン、パラフィン、スクワラン、ミスチル酸、ミスチル酸イソプロピル、ミスチル酸亜鉛、ミリスチン酸オクチルドデシル、トリイソオクタン酸グリセリン、オクチルドデカノール、ヘキシルデカノール、アジピン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジエチル、ステアリン酸、イソステアリン酸、クロタミトン、中鎖脂肪酸トリグリセリト、サリチル酸エチレングリコール、エチルヘキサン酸セチル、オレイン酸、オリーブ油、カルナウバロウ、米胚芽油、コーン油、サザンカ油、ジステアリン酸グリコール、セテアリルアルコール、セタノール、ツバキ油、パルミチン酸セチル、パルミチン酸エチルヘキシル、パルミチン酸イソプロピル、ヒマシ油、ベヘニルアルコール、ホホバ種子油、ミンク油、ワセリン、ミツロウ、ユーカリ葉油、はちみつ、パラフィン鎖炭素数が全炭素数の50%以上を占めるパラフィン系鉱物油、ナフテン環炭素数が全炭素数の30〜40重量%を占めるナフテン系鉱物油、および芳香族炭素数が全炭素数の30重量%以上を占める芳香族系鉱物油などが挙げられる。これらの中でも粘着テープの生産性の面から流動パラフィン、パラフィン鎖炭素数が全炭素数の50%以上を占めるパラフィン系鉱物油がより好ましい。軟化剤は、単独または2種類以上を併用できる。
【0027】
軟化剤の配合量は、ホットメルト粘着剤100重量%のうち、20〜60重量%が好ましく、30〜50重量%がより好ましい。配合量が前記範囲内にあることで加工性と凝集力をより高いレベルで両立しやすくなる。
【0028】
ホットメルト粘着剤は、さらに以下の添加剤を配合できる。例えば酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、接着昂進防止剤、シランカップリング剤、抗菌剤、消臭剤、香料、保湿剤、吸水剤、電解質塩が挙げられる。
【0029】
酸化防止剤は、例えばフェノール系酸化防止剤およびリン系酸化防止剤が好ましい。
酸化防止剤は、例えばペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ジエチル〔[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル〕ホスフォネート、4,6−ビス(オクチルチオメチル)−o−クレゾール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3−(5−t−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル]プロピオネート、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト等が挙げられる。酸化防止剤は、単独または2種類以上を併用できる。
【0030】
紫外線吸収剤は、公知の化合物が使用できる。例えば、サリチル酸系化合物、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物が挙げられる。紫外線吸収剤は、単独または2種類以上を併用できる。
【0031】
光安定剤は、公知の化合物が使用できる。例えば、ヒンダードアミン系化合物が挙げられる。紫外線吸収剤は、単独または2種類以上を併用できる。
【0032】
シランカップリング剤は、例えばビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、メルカプトブチルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシランが挙げられる。シランカップリング剤は、単独または2種類以上を併用できる。
【0033】
抗菌剤は、例えばブテナフィン及びその塩等のベンジルアミン系抗菌剤;ビフォナゾール、ネチコナゾール、ケトコナゾール、ラノコナゾール、クロトリマゾール、ミコナゾール、オキシコナゾール、チオコナゾール、クロコナゾール、オモコナゾール、スルコナゾール及びこれらの塩等のイミダゾール系抗菌剤;テルビナフィン及びその塩などのアリルアミン系抗菌剤;アモロルフィン及びその塩等のモルホリン系抗菌剤;リラナフタート、トルナフテート及びトルシクラート等のチオカルバミン酸系抗菌剤;ナイスタチン、トリコマイシン、バリオチン、シッカニン、ピロールニトリン等の抗生物質等の抗菌剤;熊笹エキス、茶カテキンが挙げられる。抗菌剤は、単独または2種類以上を併用できる。
【0034】
消臭剤は、消臭効果を有する公知の化合物が好ましい。例えば、ラウリルメタクリレート、ゲラニルクロリネート、シトロネリルセネシオネート、テルペンアルデヒド類、ピルビン酸エステル、2−エチルヘキサン酸亜鉛、リシノール酸亜鉛が挙げられる。消臭剤は、単独または2種類以上を併用できる。
【0035】
香料は、例えばピネン、リモネン等の炭化水素系香料、リナロール、ゲラニオール、シトロネロール、メントール、ボルネオール、ベンジルアルコール、アニスアルコール、β−フェネチルアルコール等のアルコール系香料、アネトール、オイゲノール等のフェノール系香料、n−ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、ヘキシルアルデヒド、シトラール、シトロネラール、ベンズアルデヒド、シンナミックアルデヒド等のアルデヒド系香料、カルボン、メントン、樟脳、アセトフェノン、イオノン等のケトン系香料、γ―ブチルラクトン、クマリン、シネオール等のラクトン系香料、オクチルアセテート、ベンジルアセテート、シンナミルアセテート、プロピオン酸ブチル、安息香酸メチル等のエステル系香料が挙げられる。香料は、単独または2種類以上を併用できる。
【0036】
保湿剤は、例えば1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、マルチトール、トレハロースなどの多価アルコール、ピロリドンカルボン酸、乳酸、尿素、アミノ酸などの天然保湿因子(Natural Moisturizing Factor/NMF成分)、ヘパリン、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、キチン、キトサン、アルギン酸ナトリウム、アロエ、ペクチンなどの多糖類、コラーゲン、エラスチン、ケラチン、ゼラチン、カゼイン、シルク、小麦プロテイン、ワセリン、大豆プロテイン、DNAなどのペブチド及びその加水分解物、塩化ナトリウム、海水などのミネラル、セラミド、コレステロールエステルが挙げられる。保湿剤は、単独または2種類以上を併用できる。
【0037】
吸水剤は、例えばデンプン、架橋カルボキシルメチル化セルロース、アクリル酸またはアクリル酸アルカリ金属塩の重合体ならびにその共重合体、架橋ポリアクリル酸およびその塩ならびにポリアクリル酸塩グラフト重合体が挙げられる。吸水剤は、単独または2種類以上を併用できる。
【0038】
電解質塩は、例えばハロゲン化ナトリウム、ハロゲン化カリウム、ハロゲン化マグネシウム、ハロゲン化カルシウム等のハロゲン化アルカリ金属;ハロゲン化アルカリ土類金属または他の金属ハロゲン化物;各種金属の次亜塩素酸塩、亜塩素酸塩、塩素酸塩、過塩素酸塩、硫酸塩、硝酸塩、燐酸塩、アンモニウム塩;各種錯塩等の無機塩;酢酸、安息香酸、乳酸、酒石酸等の一価カルボン酸塩;フマル酸、コハク酸、アジビン酸、クエン酸等の多価カルボン酸塩;スルホン酸、アミノ酸金属塩;有機アンモニウム塩;ポリ(メタ)アクリル酸、ポリビニルスルホン酸、ポリターシャルブチルアクリルアミドスルホン酸、ポリアリルアミン、ポリエチレンイミン等の高分子電解質の塩が挙げられる。電解質塩は、単独または2種類以上を併用できる。
【0039】
添加剤の配合量は、ホットメルト粘着剤100重量%のうち、合計0.01〜10重量%程度である。
【0040】
<ホットメルト粘着剤層(A)>
ホットメルト粘着剤層(A)は、水分を透過させるため表面の空隙率が5%〜50%であることが好ましい。空隙率が5%以上になると皮膚の蒸れやかゆみを抑制できる。また、空隙率が50%以下になると粘着シートが意図せずに皮膚から剥がれることが減少する。なお、表面の空隙率とは粘着剤層1平方ミリメートルあたりに存在する孔の面積比率である。なお、ホットメルト粘着剤層(A)がパターン塗工されている場合、粘着剤層の非形成部は、表面の空隙率を算出する場所として使用しない。
【0041】
また、ホットメルト粘着剤層(A)は、1平方ミリメートル当たりに円相当径が10〜400μmの孔を2個以上有する。円相当径が10μm以上になると孔の形状を経時で保持しやすい。また、円相当径が400μm以下になると粘着力と透湿性のバランスを取りやすい。孔を2個以上になると皮膚の蒸れやかゆみを抑制できる。孔は水分を透過できる貫通孔であればよく、その形状は限定されない。なお、円相当径は、30μm〜300μmがより好ましく、30μm〜200μmがさらに好ましい。
孔の個数は、100mm四方のサンプルの任意の5か所について、1平方ミリメートルあたりの孔の個数を数え、任意の5か所の平均値を孔の個数とした。孔の形状は、例えば、円、楕円等の形状;勾玉、アメーバ状等の不定形が挙げられる。なお、孔は、3個以上が好ましく、5個以上がより好ましい。孔の個数の上限は、円相当径の大小により変動するため正確に定めることが難しいため規定できない。そのため孔の個数の上限は、表面の空隙率が50%を超えない個数であれば良い。
【0042】
前記孔は、真円や楕円のように径を算出し易い形状が少なく不定形が多いため、円相当径(面積円相当径)で定義する。なお、円相当径は、空隙(孔)一つの面積をSとする場合に相当する直径(円相当径):L=√(4×S/π)で規定する。表面の空隙率の測定は、レーザーマイクロスコープ VK−X100(キーエンス社製)を用い、100mm四方のサンプルの任意5か所について、1平方ミリメートルあたりの空隙部分の面積の和を算出し、任意5か所の平均値を空隙率とした。また、円相当径:Lは、空隙1個あたりの面積を求めた後、上述式より算出した。
【0043】
ホットメルト粘着剤層(A)の形状は、全面べた塗工で粘着剤層が形成されていても、パターン状に形成されていても、ドッド状に形成されていても、全くランダムな形状に形成されていても構わない。粘着剤層の形状に関わらず、所定の空隙率および孔の数を満たせばよい。
【0044】
パターン状とは、格子状、ブロック状、ストライプ状、など一定絵柄の繰り返し模様をいい、粘着剤層部分と非粘着剤層が繰り返される。
パターン状にホットメルト粘着剤層を塗工する方法としては、公知の方法を使用できる。粘着剤層と非粘着剤層の面積比は、粘着剤層:非粘着剤層=10:1〜10:10の範囲が好ましい。粘着剤層の比率が非粘着剤層と同等以上であると粘着力がより向上する。
【0045】
ホットメルト粘着剤層(A)は、厚さ10〜200μmであることが好ましく、より好ましくは30μm〜100μmの範囲である。この範囲を満たすことで、粘着力がより向上する。
【0046】
<粘着シートの製造方法>
本発明の粘着シートの製造方法は、ホットメルト粘着剤層(X)と、通気性フォーム体とを加熱圧着して、表面の空隙率が5〜50%、かつ1平方ミリメートル当たり円相当径が10〜400μmの孔を2個以上有するホットメルト粘着剤層(A)を形成できれば良く、その製造方法は限定されない。
【0047】
粘着シートの製造方法の好ましい実施態様の一つは、下記の通りである。
ホットメルト粘着剤層(X)と、通気性フォーム体とを加熱圧着して、ホットメルト粘着剤層(A)を形成することが好ましい。前記加熱圧着によりホットメルト粘着剤層(X)と通気性フォーム体が圧縮されながらホットメルト粘着剤層(X)の一部が多数の孔を有する通気性フォーム体に沈み込みつつ(含浸しつつ)、粘着剤層に通気性フォーム体の孔に基づく孔が形成されることでホットメルト粘着剤層(A)が得られる。
加熱圧着に用いる装置は、例えば加熱ロールラミネーターが挙げられる。
【0048】
ホットメルト粘着剤層(X)は、剥離性シート上に予め加熱溶融させたホットメルト粘着剤を塗工し、形成する。ホットメルト粘着剤層(X)の厚さは、50μm〜300μmが好ましく、80〜200μmがより好ましい。厚さが所定の範囲内にあることで通気性フォーム体との密着性および粘着力がより向上し、所望の空隙率および孔が得易い。
粘着剤の加熱溶融温度は、粘着剤の組成に応じて100℃〜200℃に設定され、塗工は、例えばコンマコーター、ダイコーターなど公知のホットメルト塗工機で一定膜厚塗工する。
【0049】
剥離性シートは、表面に剥離剤を塗布し、公知の素材を使用したシートを使用できるところ表面が平滑なシートが好ましい。素材は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のプラスチック、ならびに紙のシートにポリエチレンテレフタレートを貼り合わせた、いわゆるポリラミシートが挙げられる。
【0050】
加熱圧着は、例えばロール圧着、平版圧着が挙げられる。これらの中でも生産性の面でロール圧着がより好ましい。
加熱圧着の温度は、ホットメルト粘着剤に配合する原料の選択により適宜設定すれば良く限定されないところ、60〜120℃程度が好ましく、70〜100℃程度がより好ましい。
【0051】
加熱圧着の圧力は、通気性フォーム体の硬さや孔等の密度の程度、ならびにホットメルト粘着剤に配合する原料の選択により適宜設定すれば良く限定されないところ、平版圧着であれば、例えば1平方cm当たり0.2〜5kg程度が好ましい。また、ロール圧着であれば、例えば1cm当たりの線圧が0.1〜5kg程度が好ましい。
【0052】
ホットメルト粘着剤層(A)は、プレス前のホットメルト粘着剤層(X)の一部が通気性フォーム体に沈み込むことで、厚さ10〜200μmの粘着剤層が形成されることが好ましく、より好ましくは30μm〜100μmである。
【0053】
また、所望の空隙率および孔を有するホットメルト粘着剤層(A)を作成する他の実施態様は、例えば、通気性フォーム体および粘着剤層を備えた粘着シートの粘着剤層側から剣山(けんざん)のように複数の針を有する装置(ないし機材等)を通気性フォーム体側に向けて押し込むことでホットメルト粘着剤層(A)を形成する方法や、ホットメルト粘着剤層(X)を、エアを混入し加熱溶融されたホットメルト粘着剤を従来公知の塗工方式で塗工したり、ホットメルト粘着剤をスプレー状に塗工して形成し、ホットメルト粘着剤層(X)と通気性フォーム体と加熱圧着し、所望の空隙率および孔を有するホットメルト粘着剤層(A)を形成する方法、通気性基材に、エアを混入し加熱溶融されたホットメルト粘着剤を従来公知の塗工方式で直接塗工したり、ホットメルト粘着剤をスプレー状に直接塗工しホットメルト粘着剤層(A)を形成する方法などが挙げられる。
なお、本発明の皮膚貼付用粘着シートは、ホットメルト粘着剤層(A)が、表面の空隙率が5〜50%であり、1平方ミリメートル当たりに円相当径が10〜400μmの孔を2個以上有するという構成を満たせば良いため、その製造方法は、これまでに説明した方法に限定されないことはいうまでもない。
【0054】
ホットメルト粘着剤層(A)の厚さは、ホットメルト粘着剤層(X)が通気性フォーム体に沈み込んだ部分を除き、通気性フォーム体から独立して観察できる粘着剤層部分のみの厚さである。ホットメルト粘着剤層(A)の厚さは、粘着テープの断面を光学顕微鏡や電子顕微鏡を用いて測定できる。
【0055】
<粘着シートの用途>
本発明の粘着シートの用途は、皮膚貼付用途に限らず、被着体から放出される液体を通過させる用途に使用できる。皮膚貼付用途でいうと、例えば、絆創膏、貼付剤、パップ剤、テーピング、医療機器固定用テープ、サージカルテープなどが挙げられる。なお、被着体とは、粘着シートを貼り付ける相手方である。
【実施例】
【0056】
以下、本発明を実施例により具体的かつ詳細に説明するが、これらの実施例は本発明の
一態様に過ぎず、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。なお、以下「部」は「重量部」を意味し、「%」は「重量%」を意味する。
【0057】
実施例で使用する原料は下記の通りである。
<スチレン系ブロック共重合体>
SEBS1:SEBS、スチレンの比率30重量%、トリブロック含有100%
SEBS2:SEBS、スチレンの比率30重量%、トリブロック含有30%、ジブロック含有70%
SEBS3:SEBS、スチレンの比率60重量%、トリブロック含有100%
SEPS1:SEPS、スチレンの比率20重量%、トリブロック含有100%
SEPS2:SEPS、スチレンの比率25重量%、トリブロック含有100%
SIS1:SIS、スチレンの比率19重量%、トリブロック含有100%
SIS2:SIS、スチレンの比率24重量%、トリブロック含有70%、ジブロック含有30%
【0058】
<軟化剤>
軟化剤1:パラフィン系鉱物油
軟化剤2:流動パラフィン
軟化剤3:ナフテン系鉱物油
【0059】
<粘着付与剤>
粘着付与剤1:テルペン系樹脂 軟化点100℃
粘着付与剤2:ロジンエステル系樹脂 軟化点110℃
粘着付与剤3:水素添加された石油系樹脂 軟化点90℃
【0060】
<粘着剤の作成>
スチレン系ブロック共重合体としてSEBS1を10部、SEBS2を3部、SEPS1を20部、軟化剤1を40部、粘着付与剤1を27部を攪拌機を備えたニーダーに投入し、160℃加熱下3時間撹拌を行い、粘着剤1を得た。
【0061】
粘着剤1の原料および配合量を表1に記載された通りに変更した以外は、粘着剤1と同様に行うことでそれぞれ粘着剤2〜8を得た。
【0062】
【表1】
【0063】
<実施例1>
得られた粘着剤1をホットメルト塗工機を使用してPET製剥離性シート上に厚さ150μmにべた塗り塗工して、ホットメルト粘着剤層(X)を得た。得られたホットメルト粘着剤層(X)と、厚さ1mmの軟質ポリウレタンフォーム(水蒸気透過率4000g/m・24時間)とをロール式の加熱ラミネーターを用いて温度80℃・圧力2MPa・速度1M/分の加熱圧着条件で貼り合せ、ホットメルト粘着剤層(A)の厚さが100μmの皮膚貼付用粘着テープを得た。
得られた皮膚貼付用粘着テープのホットメルト粘着剤層(A)の表面をレーザーマイクロスコープ(VK−X100 キーエンス社製)で観察したところ、1平方ミリメートル当たり平均4個の孔を有し、その表面空隙率は20%であった。
【0064】
<実施例2〜8ならびに比較例1〜2>
実施例1の粘着剤1を表2に記載された粘着剤、ホットメルト粘着剤層厚み、加熱圧着条件に変更した以外は、実施例1と同様に行うことでそれぞれ実施例2〜8ならびに比較例1〜2の皮膚貼付用粘着テープを得た。次いで実施例1と同様にホットメルト粘着剤層(A)の表面を観察した。孔の平均個数および空隙率は表2に記載した。
【0065】
<実施例9>
図1に示す粘着剤層の幅11 2mm、および着剤層の塗工間隔12 2mmのストライプ状に粘着剤層を形成可能な塗工ヘッドを有するホットメルトダイコーターにて、PET製剥離性シート上に、粘着剤1を厚さ100μm塗工して、ホットメルト粘着剤層(X)を作製した。得られたホットメルト粘着剤層(X)と、軟質ポリウレタンフォームを加熱ラミネーターを用いて表2に記載された条件で加熱圧着することで、厚さ50μmのホットメルト粘着剤層(A)を有する皮膚貼付用粘着テープを得た。
得られた皮膚貼付用粘着テープのホットメルト粘着剤層(A)は、レーザーマイクロスコープで観察したところ、1平方ミリメートル当たり平均3個の孔を有し、その表面空隙率は10%であった。
【0066】
<実施例10>
図2に示す粘着剤層の幅21(メッシュ幅)2mm、および粘着剤層の塗工間隔22(幅)2mm・粘着剤層の塗工間隔23(縦)2mmのメッシュ状に粘着剤層を形成可能な塗工ヘッドを有するホットメルトダイコーターにて、PET製剥離性シート上に粘着剤2を厚さ150μm塗工して、ホットメルト粘着剤層(X)を作製した。得られたホットメルト粘着剤層(X)と、軟質ポリウレタンフォーム(厚み1mm)を加熱ラミネーターを用いて表2に記載しした条件で加熱圧着することで、厚さ100μmのホットメルト粘着剤層(A)を有する皮膚貼付用粘着テープを得た。
得られた皮膚貼付用粘着テープのホットメルト粘着剤層(A)は、レーザーマイクロスコープで観察したところ、1平方ミリメートル当たり平均6個の孔を有し、その表面空隙率は30%であった。
【0067】
<比較例3>
アクリル系粘着剤(BPS4849−40:トーヨーケム社製、不揮発分40%)を100部、硬化剤(BHS8515:イソシアネート硬化剤 トーヨーケム社製 不揮発分37.5%)を2.5部混合し、ハンドアプリケーターを使用してPET製剥離性シート上にべた塗り塗工し、乾燥を行うことで厚さ50μmの粘着剤層(X)を得た。得られた粘着剤層(X)と軟質ポリウレタンフォーム(厚み1mm)とをラミネーターを用いて表2に記載する条件で加熱圧着することで、厚さ20μmの粘着剤層(A)を有する皮膚貼付用粘着テープを得た。
得られた皮膚貼付用粘着テープの粘着剤層(A)は、1平方ミリメートル当たり円相当径10〜400μmの範囲内の孔を0個有し、表面空隙率は0%であった。
【0068】
<比較例4>
比較例3の粘着剤および硬化剤をウレタン系粘着剤(SP700:トーヨーケム社製、不揮発分45%)に、硬化剤(BXX5627:イソシアネート硬化剤 トーヨーケム社製 不揮発分50%)を1部に変更した以外は比較例3と同様の方法で行うことで、表2に示す皮膚貼付用粘着テープを作製した。
【0069】
<比較例5>
得られた粘着剤1を、ホットメルト塗工機を使用してPET製剥離性シート上に厚さ50μmにべた塗り塗工して、ホットメルト粘着剤層(X)を得た。表2に記載した条件で得られたホットメルト粘着剤層(X)と、厚さ1mmの軟質ポリウレタンフォーム(水蒸気透過率4000g/m・24時間)とを加熱ラミネーターを用いて温度80℃・圧力2MPa・速度1M/分の加熱圧着条件で貼り合せ、ホットメルト粘着剤層(A)の厚さが30μmの皮膚貼付用粘着テープを得た。
得られた皮膚貼付用粘着テープのホットメルト粘着剤層(A)の表面をレーザーマイクロスコープ(VK−X100 キーエンス社製)で観察したところ、1平方ミリメートル当たり平均4個の孔を有し、その表面空隙率は70%であった。
【0070】
<比較例6>
実施例9と同様にストライプ状の厚さ100μmのホットメルト粘着剤層(X)を作製した。表2に記載した条件で得られたホットメルト粘着剤層(X)と、軟質ポリウレタンフォームを加熱ラミネーターを用いて加熱圧着することで、厚さ50μmのホットメルト粘着剤層(A)を有する皮膚貼付用粘着テープを得た。
得られた皮膚貼付用粘着テープのホットメルト粘着剤層(A)は、レーザーマイクロスコープで観察したところ、1平方ミリメートル当たり平均0個の孔を有し、その表面空隙率は0%であった。
【0071】
得られた皮膚貼付用粘着テープについて下記項目を評価した。
【0072】
<自着面粘着力>
自着面粘着力は、皮膚に貼付する前に粘着剤層同士を誤って接触させた場合、剥離後の粘着シートを使用できるか否かの面で評価する。
得られた皮膚貼付用粘着シートを縦25mm横150mmの大きさに2枚準備して試料として。次いで2枚の試料から剥離性フィルムを剥がし、試料の粘着剤層同士を重ね、通気性フォーム体上からローラー(重さ500g)を1往復させて圧着し貼り合せた。貼り合せ後、一方の通気性フォーム体の面をステンレス(SUS)板上に両面粘着テープで固定し、他方の方の通気性フォーム体の面を剥離角度180度、剥離速度50mm/分の速度で剥がし、粘着剤層同士の粘着力の測定し自着面粘着力とした。
【0073】
<粘着力>
得られた皮膚貼付用粘着シートを縦25mm横100mmの大きさに2準備して試料としJIS Z0237に準拠して粘着力を測定した。試料から剥離性シートを剥がし、露出した粘着剤層をSUS板に貼付し、通気性フォーム体上にロール(重さ2kg)を1往復させて圧着し、20分経過後に粘着力を測定した。剥離条件は、剥離角度180度、剥離速度50mm/分で行った。なお、皮膚の状態は個人差があり、数値がばらつくためSUS板を使用している。
【0074】
<再貼付性>
再貼付性は、皮膚貼付用粘着シートの貼付位置を誤った場合の貼り直しが可能か否か面で評価する。
上記粘着力試験を行った後の試料をローラー(重さ500g)を1往復させて圧着しSUS板に貼付し20分経過後の粘着力を測定した。剥離条件は、剥離角度180度、剥離速度50mm/分の速度で行った。再貼付性の評価基準は以下の通りである。
〇:2回目の粘着力と1回目の粘着力の差が20%未満、良好
×:2回目の粘着力と1回目の粘着力の差が20%以上、実用不可
【0075】
<皮膚貼付性>
得られた粘着シートを、縦10mm横50mmの大きさに準備して試料とした。次いで試料から剥離性シートを剥がし露出した粘着剤層を上腕の内側に貼付した。貼付24時間後に試料を剥がし、剥離後に皮膚状態を目視で観察し以下の基準で評価した。なお、対象とした被験者数は20名で、貼付箇所の蒸れ及びかゆみの発生有無を○△×で評価した。
1.蒸れ(水分による皮膚の白化)
○:蒸れが発生した人数が3人以下、良好
△:蒸れが発生した人数が4人〜8人、実用可
×:蒸れが発生した人数が9人以上、実用不可
××:貼付24時間経過前に粘着シートが剥がれた。実用不可
2.かゆみ
○:かゆみが発生した人数が3人以下、良好
△:かゆみが発生した人数が4人〜8人、実用可
×:かゆみが発生した人数が9人以上、実用不可
××:貼付24時間経過前に粘着シートが剥がれた。実用不可
【0076】
【表2】
【0077】
表2の結果から実施例1〜10は、皮膚貼付で皮膚に蒸れやかゆみの発生が少ない効果に加え、適度な自着面粘着力を有することで粘着シートのロスが少なく、再貼付可能という予想外の効果が得られた。
【符号の説明】
【0078】
11 粘着剤層の塗工幅
12 粘着剤層の塗工間隔
21 粘着剤層の幅
22 粘着剤層の塗工間隔
23 粘着剤層の塗工間隔
図1
図2