(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0007】
<第1実施形態>
  
図1は、本発明の第1実施形態における通信システム100の構成図である。第1実施形態の通信システム100は、店舗または駅等の各種の施設に設置された情報提供システム12と、施設に来訪した利用者が携帯する端末装置14とを含んで構成される。
 
【0008】
  情報提供システム12は、音波を放射する複数の放音装置16を具備する。例えばひとつの施設の相異なる場所に複数の放音装置16が設置される。例えば駅構内では、複数のプラットホームの各々に放音装置16が設置される。また、例えばショッピングモール等の店舗では、複数のフロアの各々に放音装置16が設置される。
 
【0009】
  複数の放音装置16の各々は、空気振動としての音波を伝送媒体とする音響通信で識別情報Dを周囲に送信する送信機として機能する。任意の1個の放音装置16から送信される識別情報Dは、当該放音装置16またはその設置場所を識別するための符号である。
図1に例示される通り、識別情報Dを音響成分として含有する音響信号Xを各放音装置16に供給することで放音装置16から識別情報Dが音波として送信される。
 
【0010】
  音響信号Xの生成には公知の技術が任意に採用され得る。例えば、所定の周波数の正弦波等の搬送波を識別情報Dにより周波数変調することで音響信号Xを生成する構成、または、拡散符号を利用した識別情報Dの拡散変調と所定の周波数の搬送波を利用した周波数変換とを順次に実行して音響信号Xを生成する構成が好適である。音響信号Xの周波数帯域は、放音装置16による放音と端末装置14による収音とが可能な周波数帯域であり、かつ、利用者が通常の環境で聴取する音声の周波数帯域を上回る周波数帯域(例えば18kHz以上かつ20kHz以下)に包含される。したがって、識別情報Dの音響成分を利用者は殆ど聴取できない。もっとも、音響信号Xの周波数帯域は任意であり、例えば可聴帯域内の音響信号Xを生成することも可能である。また、施設内で再生される背景音楽または施設を案内する案内音声等の各種の音響成分に識別情報Dの音響成分を混合して放音装置16から放射することも可能である。
 
【0011】
  端末装置14は、例えば携帯電話機またはスマートフォン等の可搬型の情報端末である。なお、実際には多数の利用者が情報提供システム12のサービスを利用し得るが、以下の説明では便宜的に1個の端末装置14に着目する。
 
【0012】
  図2は、端末装置14の機能に着目した構成図である。
図2に例示される通り、端末装置14は、制御装置22と記憶装置24と収音装置32と通信装置34と表示装置36と操作装置38とを具備する。収音装置32は、周囲の音を収音する音響機器(マイクロホン)である。具体的には、収音装置32は、情報提供システム12の1個の放音装置16から放射される音波を収音して音響信号Yを生成する。音響信号Yは、識別情報Dの音響成分を含有し得る。すなわち、収音装置32は、空気振動たる音波を伝送媒体とした音響通信で識別情報Dを受信する受信機として機能する。なお、収音装置32が生成した音響信号Yをアナログからデジタルに変換するA/D変換器の図示は便宜的に省略した。
 
【0013】
  通信装置34(無線通信部の例示)は、施設内に設置された無線通信機18との間で無線通信が可能である。通信装置34と無線通信機18との間の通信は、例えばWi-Fi(登録商標)またはBluetooth(登録商標)等の近距離無線通信である。無線通信機18(例えば無線LANのアクセスポイント)との間で通信装置34が無線通信を実行するためには、当該無線通信機18を識別するための識別情報(SSID:Service Set Identifier)と暗号化鍵(PW:Password)とを含む接続情報が必要である。
 
【0014】
  表示装置36は、例えば液晶表示パネルで構成され、制御装置22による制御のもとで各種の画像を表示する。操作装置38は、利用者からの指示を受付ける入力機器である。例えば利用者が操作する複数の操作子、または、表示装置36の表示面に対する接触を検知するタッチパネルが操作装置38として好適に利用される。
 
【0015】
  制御装置22は、端末装置14の全体的な動作を制御する処理回路であり、例えばCPUを含んで構成される。記憶装置24は、制御装置22が実行するプログラムと制御装置22が使用する各種のデータとを記憶する。例えば半導体記録媒体等の公知の記録媒体が任意に採用され得る。端末装置14に対して着脱可能な記録媒体を記憶装置24として利用することも可能である。
 
【0016】
  第1実施形態の記憶装置24は、参照テーブルTaと参照テーブルTbとを記憶する。参照テーブルTaは、
図3に例示される通り、音響通信により送信され得る複数の識別情報D(D1,D2,…)の各々に位置情報L(L1,L2,…)を対応させたデータテーブルである。任意の1個の識別情報Dに対応する位置情報Lは、その識別情報Dが送信される場所(すなわち放音装置16の設置場所)を示す情報である。具体的には、位置情報Lは、識別情報Dが送信される場所の住所または名称(例えば「ABCショッピングモール1階」等)を表す。なお、地図上の特定の地点の緯度および経度を表す位置情報Lを利用することも可能である。
 
【0017】
  参照テーブルTbは、
図4に例示される通り、相異なる識別情報D(D1,D2,…)に対応する複数の位置情報L(L1,L2,…)の各々に関連情報を対応させたデータテーブルである。任意の1個の位置情報Lに対応する関連情報は、当該位置情報Lが示す場所に関連する情報である。第1実施形態において1個の位置情報Lに対応する関連情報は、その位置情報Lが示す場所に設置された無線通信機18との間で通信装置34が無線通信を実行するための接続情報Za(Za1,Za2,…)である。接続情報Zaは、前述の通り、例えば無線通信機18の識別情報(SSID)と暗号化鍵(PW)とを包含する。
 
【0018】
  図2の制御装置22は、記憶装置24に記憶されたプログラムを実行することで、識別情報Dに応じたサービスを利用者に提供するための複数の機能(情報抽出部42,特定処理部44,表示制御部46)を実現する。なお、制御装置22の一部の機能を専用の電子回路で実現した構成、または、制御装置22の機能を複数の装置に分散した構成も採用され得る。
 
【0019】
  情報抽出部42は、収音装置32が生成した音響信号Yから識別情報Dを抽出する。具体的には、情報抽出部42は、識別情報Dの音響成分を含む周波数帯域の帯域成分を強調するフィルタ処理と、音響信号Xの生成時の変調処理に対応した復調処理とを、音響信号Yに対して実行することで識別情報Dを抽出する。情報抽出部42が音響信号Yから識別情報Dを抽出するための処理(以下「情報抽出処理」という)は、例えば周期的に反復される。以上の説明から理解される通り、収音装置32および情報抽出部42は、音響通信により送信された識別情報Dを取得する音響通信部60として機能する。
 
【0020】
  図2の特定処理部44は、音響通信部60が取得した識別情報Dに対応する接続情報Zaを特定する。通信装置34は、関連情報特定部54が特定した接続情報Zaを利用して無線通信機18との無線通信を確立し、無線通信機18を介して他装置と通信する。例えば、通信装置34は、表示装置36に表示されるウェブページのデータを無線通信機18から受信する。
 
【0021】
  図2に例示される通り、第1実施形態の特定処理部44は、位置情報特定部52と関連情報特定部54とを含んで構成される。位置情報特定部52は、音響通信部60が取得した識別情報Dに対応する位置情報Lを特定する。位置情報特定部52による位置情報Lの特定には、
図3に例示した参照テーブルTaが利用される。具体的には、第1実施形態の位置情報特定部52は、参照テーブルTaに登録された複数の識別情報Dのうち音響通信部60が取得した識別情報Dに対応する位置情報Lを参照テーブルTaから特定する。
 
【0022】
  関連情報特定部54は、位置情報特定部52が特定した位置情報Lに対応する関連情報を特定する。第1実施形態の関連情報特定部54は、記憶装置24に記憶された
図4の参照テーブルTbを利用して、位置情報Lに対応する接続情報Zaを関連情報として特定する。具体的には、関連情報特定部54は、参照テーブルTbに登録された複数の位置情報Lのうち位置情報特定部52が特定した位置情報Lに対応する接続情報Zaを参照テーブルTbから特定する。すなわち、音響通信部60が受信した識別情報Dが送信された場所にある無線通信機18の接続情報Zaが特定される。
 
【0023】
  表示制御部46は、表示装置36に画像を表示させる。例えば、表示制御部46は、通信装置34が受信したデータが表すウェブページのほか、
図5に例示される操作画面70を表示装置36に表示させる。
図5に例示される通り、操作画面70は、収音レベル画像72と操作子74とを含んで構成される。収音レベル画像72は、音響信号Yのうち識別情報Dの音響成分を含む帯域成分の音量を図形的に表現した画像(円グラフ)である。なお、操作画面70に対する操作を契機として、情報抽出部42による情報抽出処理の周期を短縮する(情報抽出処理の頻度を上昇させる)ことも可能である。
 
【0024】
  図5の操作子74は、関連情報の特定を利用者が端末装置14に指示するための画像である。具体的には、操作装置38を利用して利用者が操作子74を操作すると、識別情報Dに対応する関連情報を特定するための処理を特定処理部44が実行する。具体的には、位置情報特定部52による位置情報Lの特定と関連情報特定部54による接続情報Zaの特定とが実行される。操作子74は、情報抽出処理により識別情報Dが抽出された状態では、利用者による操作を受付ける有効状態に制御され、識別情報Dが抽出されていない状態では、利用者による操作を受付けない無効状態に制御される。有効状態と無効状態とでは操作子74の表示態様(例えば色彩や階調)が相違する。例えば、無効状態にある操作子74は白黒で表示(グレイアウト表示)され、情報抽出処理により識別情報Dが抽出されることで有効状態に遷移すると操作子74はカラーで表示される。
 
【0025】
  図6は、第1実施形態における制御装置22の動作のフローチャートである。例えば操作装置38に対する利用者からの指示(プログラムの起動指示)を契機として
図6の処理が開始される。
図6の処理を開始すると、情報抽出部42は、収音装置32が生成した音響信号Yから識別情報Dを抽出するための情報抽出処理を実行する(Sa1)。情報抽出処理は、識別情報Dが実際に抽出されるまで周期的に反復される(Sa2:NO)、情報抽出処理により識別情報Dが抽出されると(Sa2:YES)、表示制御部46は、操作子74の表示態様を、有効状態を示す態様に変更する(Sa3)。
 
【0026】
  特定処理部44は、利用者が操作子74を操作するまで待機する(Sa4:NO)。有効状態にある操作子74を利用者が操作すると(Sa4:YES)、特定処理部44は、直前の情報抽出処理で抽出された識別情報Dに対応する接続情報Zaを特定する(Sa5,Sa6)。具体的には、位置情報特定部52が、識別情報Dに対応する位置情報Lを参照テーブルTaから検索し(Sa5)、関連情報特定部54が、位置情報Lに対応する接続情報Zaを参照テーブルTbから検索する(Sa6)。以上の処理が完了すると、通信装置34は、特定処理部44が特定した接続情報Zaを利用して無線通信機18との無線通信を開始する。なお、利用者による操作子74の操作を待機することなく、識別情報Dの抽出(Sa2:YES)に引続いて位置情報Lの特定(Sa5)と接続情報Zaの特定(Sa6)とを実行することも可能である。すなわち、
図6のステップSa4は省略され得る。
 
【0027】
  以上に説明した通り、第1実施形態では、音響通信により送信された識別情報Dに対応する位置情報Lが特定されるから、例えばGPSを利用して端末装置14の位置情報を生成する構成と比較して、位置情報Lの取得に必要な消費電力を低減することが可能である。また、放音装置16による再生音量の調整または遮音壁の設置により、識別情報Dを受信可能な範囲を容易かつ詳細に規定できるという利点もある。
 
【0028】
  また、第1実施形態では、位置情報Lに対応する接続情報Zaが関連情報として特定されるから、例えば無線通信機18の識別情報および暗号化鍵を利用者が入力する必要がない。したがって、無線通信機18との間の無線通信を容易に実現できるという利点がある。
 
【0029】
<第2実施形態>
  本発明の第2実施形態について説明する。なお、以下に例示する各形態において作用または機能が第1実施形態と同様である要素については、第1実施形態で使用した符号を流用して各々の詳細な説明を適宜に省略する。
 
【0030】
  図7は、第2実施形態における参照テーブルTbの説明図である。
図7に例示される通り、第2実施形態の参照テーブルTbにおいては、複数の位置情報L(L1,L2,…)の各々に対して案内情報Zb(Zb1,Zb2,…)が関連情報として対応付けられる。任意の1個の位置情報Lに対応する案内情報Zbは、当該位置情報Lが示す場所に関する案内(例えば交通案内または観光案内)を表す。第2実施形態では、位置情報Lが示す場所に関する質問と当該質問に対する回答との複数組を含む問答集(FAQs:frequently asked questions)を表す案内情報Zbを例示する。例えば、「京都駅」を表す位置情報Lには、
図8に例示される通り、「京都駅から金閣寺に行く経路を教えて下さい」という質問と、「京都駅西口の第1番乗り場からA系統のバスに乗車し、『金閣寺前』バス停で降車して下さい」という回答との組を含む案内情報Zbが対応付けられる。なお、質問と回答とを複数の言語(例えば端末装置14が所在する国の言語と端末装置14に設定された使用言語)で表現した案内情報Zbを参照テーブルTbに登録すれば、外国人旅行者が質問と回答とを容易に理解することが可能である。
 
【0031】
  識別情報Dに対応する関連情報(第2実施形態では案内情報Zb)を特定するための具体的な動作は、
図6を参照して説明した第1実施形態の動作と同様である。すなわち、識別情報Dの抽出後(Sa2:YES)における操作子74の操作(Sa4:YES)を契機として、特定処理部44は、識別情報Dに対応する案内情報Zbを関連情報として特定する(Sa6)。表示制御部46は、例えば
図8に例示される通り、関連情報特定部54が特定した案内情報Zbが表す問答集を表示装置36に表示させる。案内情報Zbが表す問答集のうち利用者が指定した質問および回答を選択的に表示装置36に表示することも可能である。なお、識別情報Dの抽出(Sa2:YES)に引続いて位置情報Lの特定(Sa5)と案内情報Zbの特定(Sa6)とを実行することも可能である。すなわち、
図6のステップSa4は省略され得る。
 
【0032】
  第2実施形態においても第1実施形態と同様に、位置情報Lの取得に必要な消費電力を低減することが可能である。また、第2実施形態では、位置情報Lに対応する案内情報Zbが関連情報として特定されるから、端末装置14の利用者が所在地で所望する可能性が高い質問と回答とを利用者に対して容易に提示できるという利点がある。
 
【0033】
<第2実施形態の変形例>
  第2実施形態の変形例では、例えば交通または観光に関する複数の質問の各々を複数の言語で表現した文字列を表す質問集のデータが記憶装置24に記憶される。
図9は、操作子74の操作を契機として表示制御部46が実行する処理のフローチャートである。
図9に例示される通り、表示制御部46は、情報抽出部42が識別情報Dを抽出した状態にあるか否か(すなわち位置情報Lの特定の可否)を判定する(Sb1)。識別情報Dが抽出されている場合(Sb1:YES)、表示制御部46は、第2実施形態と同様に、関連情報特定部54が特定した案内情報Zbが表す問答集を表示装置36に表示させる(Sb2)。他方、識別情報Dが抽出されていない場合(Sb1:NO)、表示制御部46は、記憶装置24に記憶された質問集を表示装置36に表示させる(Sb3)。具体的には、表示制御部46は、質問集のうち利用者が指定した質問を複数の言語により表示装置36に表示させる。利用者は、表示装置36に表示された質問を例えば駅員等の案内者に提示することで質問に対する回答を知得する。
 
【0034】
  図10および
図11は、第2実施形態の変形例における表示画面の例示である。
図10に例示される通り、識別情報D
が抽出された場合(位置情報Lを特定できる場合)には、質問と回答とを含む問答集が表示装置36に表示される。他方、識別情報Dが抽出されない場合(位置情報Lを特定できない場合)には、
図11に例示される通り、質問のみを含む質問集が表示装置36に表示される。なお、案内情報Zbが示す問答集とは別個に質問集のデータを記憶装置24に保持することも可能であるが、案内情報Zbが示す問答集から抽出された質問を、識別情報Dが抽出されない場合に表示することも可能である。すなわち、識別情報Dが抽出される場合と抽出されない場合とで質問が共用される。
 
 
 
【0035】
  以上の説明から理解される通り、識別情報Dの抽出により位置情報Lを特定できる状態では、質問と回答との双方を含む案内情報Zbの表示により、利用者は自身の質問に対する回答を知得することが可能である。他方、識別情報Dが抽出されていない状態(位置情報Lも特定できない状態)では、表示装置36に表示された質問の提示により案内者から自身の質問に対する回答を知得することが可能である。
 
【0036】
  なお、位置情報Lの特定の可否に応じて質問の表示順または表示内容を変化させることも可能である。例えば位置情報Lが特定されていない状態では、全般的な分野の質問が表示される一方、位置情報Lが特定された状態では、利用者の位置に関連する分野の質問(例えば特定の位置から観光地までの経路を問う質問)が優先的または選択的に表示される。
 
【0037】
<第3実施形態>
  
図12は、第3実施形態における参照テーブルTbの説明図である。
図12に例示される通り、第3実施形態の参照テーブルTbにおいては、複数の位置情報Lの各々に対して所在情報Zc(Zc1,Zc2,…)が関連情報として対応付けられる。任意の1個の位置情報Lに対応する所在情報Zcは、その位置情報Lが示す場所に関するウェブページの所在を表す。例えば、商業施設の特定のフロアで取得可能な識別情報Dに対応する位置情報Lには、そのフロアの案内(例えばフロアマップまたはイベント情報)を表すウェブページの所在情報Zcが対応付けられる。例えばウェブページのURL(Uniform Resource Locator)が所在情報Zcの典型例である。
 
【0038】
  識別情報Dに対応する関連情報(第3実施形態では所在情報Zc)を特定するための具体的な動作は、
図6を参照して説明した第1実施形態の動作と同様である。すなわち、識別情報Dの抽出後(Sa2:YES)における操作子74の操作(Sa4:YES)を契機として、特定処理部44は、識別情報Dに対応する所在情報Zcを関連情報として特定する(Sa6)。通信装置34は、関連情報特定部54が特定した所在情報Zcが示すウェブページのデータを配信サーバから通信網を介して受信し、表示制御部46は、通信装置34が受信したデータが表すウェブページを表示装置36に表示させる。なお、識別情報Dの抽出(Sa2:YES)に引続いて位置情報Lの特定(Sa5)と所在情報Zcの特定(Sa6)とを実行することも可能である。すなわち、
図6のステップSa4は省略され得る。
 
【0039】
  第3実施形態においても第1実施形態と同様に、位置情報Lの取得に必要な消費電力を低減することが可能である。また、第3実施形態では、位置情報Lに対応する所在情報Zcが関連情報として特定されるから、利用者が所望のウェブページを指定する手間を必要とせずに、利用者の所在地に関するウェブページを提供できるという利点がある。
 
【0040】
<第4実施形態>
  
図13は、第4実施形態における参照テーブルTbの説明図である。
図13に例示される通り、第4実施形態の参照テーブルTbにおいては、複数の位置情報Lの各々に対して地図情報Zd(Zd1,Zd2,…)が関連情報として対応付けられる。任意の1個の位置情報Lに対応する地図情報Zdは、その位置情報Lが示す場所を含む地図を示す。例えば、位置情報Lが示す場所を含む地図の画像データ(以下「地図データ」という)の所在を示すURLが地図情報Zdの典型例である。地図情報Zdが示す地図は、例えば避難所および医療機関等の防災に関する施設が表示された防災マップである。例えば行政区画毎に地図が用意される。
 
【0041】
  識別情報Dに対応する関連情報(第4実施形態では地図情報Zd)を特定するための具体的な動作は、
図6を参照して説明した第1実施形態の動作と同様である。すなわち、識別情報Dの抽出後(Sa2:YES)における操作子74の操作(Sa4:YES)を契機として、特定処理部44は、識別情報Dに対応する地図情報Zdを関連情報として特定する(Sa6)。通信装置34は、関連情報特定部54が特定した地図情報Zdが示す地図データを配信サーバから通信網を介して受信し、表示制御部46は、通信装置34が受信した地図データが表す地図を表示装置36に表示させる。なお、識別情報Dの抽出(Sa2:YES)に引続いて位置情報Lの特定(Sa5)と地図情報Zdの特定(Sa6)とを実行することも可能である。すなわち、
図6のステップSa4は省略され得る。
 
【0042】
  第4実施形態においても第1実施形態と同様に、位置情報Lの取得に必要な消費電力を低減することが可能である。また、第4実施形態では、位置情報Lに対応する地図情報Zdが関連情報として特定されるから、利用者が地図を指示する手間を必要とせずに、利用者の所在地を含む地図を提供できるという利点がある。例えば利用者が端末装置14を携帯して移動すると、移動先に対応する地図が表示装置36に自動的に表示される。
 
【0043】
  なお、以上の説明では、地図データの所在を示すURLを地図情報Zdとして例示したが、地図データを端末装置14の記憶装置24に事前に格納しておくことも可能である。地図データが記憶装置24に格納された構成では、位置情報Lが示す位置を含む地図の地図データが格納された記憶装置24内の記憶領域を地図情報Zdが指定する構成が好適である。表示制御部46は、記憶装置24のうち地図情報Zdが指定する記憶領域に記憶された地図データを利用して表示装置36に地図(すなわち位置情報Lが示す場所を含む地図)を表示させる。また、位置情報特定部52が新たな位置情報Lを特定することを契機として、その位置情報Lが示す場所を含む地図の地図データを通信装置34が受信して記憶装置24に格納することも可能である。
 
【0044】
  識別情報Dの抽出(Sa2:YES)を契機として(すなわち利用者からの指示を必要とせずに)、地図情報Zdが示す地図データを取得して記憶装置24に格納することも可能である。地震等の災害の発生時には通信網を介した通信が困難となる状況が想定される。識別情報Dの抽出を契機として地図データを事前に記憶装置24に格納する構成によれば、災害の発生前に地図データを準備しておくことが可能である。
 
【0045】
  なお、識別情報D(または位置情報L)の抽出を契機として操作子74を有効状態に設定し、地図データを記憶装置24に格納した状態において、当該地図データが表す地図の範囲(例えば特定の行政区画内)内に端末装置14が所在する場合には、操作子74は有効状態に維持される。他方、取得済の地図データが表す地図の範囲外に端末装置14が移動すると、音響通信部60が受信する識別情報Dが変化するから、位置情報Lの特定(Sa5)と地図情報Zdの特定(Sa6)とが改めて実行される。表示制御部46は、地図情報Zdが示す地図データを通信装置34が受信した場合には、操作子74を引続き有効状態に維持し、通信装置34が地図データを受信できない場合(例えば地図データが配信サーバに用意されていない場合)には、操作子74を有効状態から無効状態に変更する。
 
【0046】
<変形例>
  以上に例示した各態様は多様に変形され得る。具体的な変形の態様を以下に例示する。以下の例示から任意に選択された2個以上の態様は、相互に矛盾しない範囲で適宜に併合され得る。
 
【0047】
(1)第1実施形態ないし第4実施形態から任意に選択された2以上の形態は併合され得る。例えば、前述の各形態では、参照テーブルTbにおいて各位置情報Lに1種類の関連情報を対応付けたが、
図14に例示される通り、複数種の関連情報を位置情報Lに対応付けることも可能である。
図14の参照テーブルTbでは、第1実施形態で例示した接続情報Zaと、第2実施形態で例示した案内情報Zbと、第3実施形態で例示した所在情報Zcと、第4実施形態で例示した地図情報Zdとが、複数の位置情報Lの各々に対応付けられる。
 
【0048】
  操作画面70には、例えば
図15に例示される通り、相異なる関連情報に対応する複数の操作子74(74a,74b,74c,74d)が配置される。任意の1個の操作子74が操作されることを契機として、その操作子74に対応する関連情報を利用した処理が実行される。例えば、操作子74aが操作されると、第1実施形態と同様に、接続情報Zaを利用した通信装置34と無線通信機18との無線通信が実行される。操作子74bが操作されると、第2実施形態と同様に、案内情報Zbが示す質問および回答が表示装置36に表示される。操作子74cが操作されると、第3実施形態と同様に、所在情報Zcが示すウェブページが表示装置36に表示される。操作子74dが操作されると、第4実施形態と同様に、地図情報Zdが示す地図が表示装置36に表示される。
 
【0049】
(2)第2実施形態では、案内情報Zbが示す質問と回答とを表示装置36に表示したが、以上の構成に代えて(または以上の構成とともに)、案内情報Zbが示す質問と回答とを音声として再生することも可能である。
 
【0050】
(3)情報提供システム12が利用される場面は任意である。例えば、前述の商業施設または交通施設(例えば駅)のほか、博物館もしくは美術館等の展示施設、名所もしくは史跡等の観光施設、競技場もしくは体育館等の運動施設、または、ホテルもしくは旅館等の宿泊施設においても、前述の各形態が利用され得る。
 
【0051】
(4)複数の位置情報Lの各々に対応させる関連情報の種類は、前述の各形態での例示に限定されない。例えば、タクシーの配車を依頼するための連絡先を示す情報、電車もしくはバス等の交通機関の乗換もしくは乗降を案内する情報、レストラン、宿泊施設もしくは店舗等の商業施設に関する情報、または、商業施設内で販売される商品に関する情報を、関連情報として位置情報Lに対応させることも可能である。
 
【0052】
(5)交通機関の運賃や商品の価格等の各種の金額に関する情報を関連情報として利用者に提示する場合、特定の通貨の金額を別の通貨に換算した金額を計算して表示することも可能である。通貨間の為替レートについては、例えば為替等を取扱うサイトから自動的に取得したり、利用者が任意の数値を入力したりすることが可能である。
 
【0053】
(6)位置情報Lが示す店舗で販売される商品の価格を関連情報として利用者に通知することも可能である。例えば、端末装置14の特定処理部44(関連情報特定部54)は、音響通信部60が受信した識別情報Dに対応する位置情報Lと、利用者の所望の商品の識別情報Pとを含む情報要求を、通信装置34から通信網を介して管理装置(図示略)に送信する。例えば商品に付加された光学的に読取可能な画像(以下「読取画像」という)を端末装置14の撮像装置(図示略)により撮像することで、当該商品の識別情報Pを取得することが可能である。読取画像は、例えば、バーコード,QRコード(登録商標)またはカメレオンコード(登録商標)等である。また、商品自体を撮像装置により撮像した画像について画像認識等の解析処理を実行することで商品を識別し、商品毎に識別情報Pが登録されたテーブルを参照することで当該商品の識別情報Pを特定することも可能である。利用者が操作装置38を操作して商品の識別情報Pを入力してもよい。
 
【0054】
  管理装置(例えばウェブサーバ)は、複数の商品の各々の価格が登録されたデータテーブル(以下「価格テーブル」という)を店舗毎に保持する。価格テーブルに登録された価格は、所定の通貨(以下「第1通貨」という)での金額である。なお、店舗毎に設置された管理装置が当該店舗の価格テーブルを保持することも可能である。店舗の位置情報Lと商品の識別情報Pとを含む前述の情報要求を端末装置14から受信すると、管理装置は、情報要求内の位置情報Lが示す店舗の価格テーブルを参照して、情報要求内の識別情報Pが示す商品の価格(以下「特定価格」という)を検索する。管理装置は、価格テーブルから検索した特定価格(第1通貨)を情報要求の送信元の端末装置14に送信する。
 
【0055】
  管理装置から送信された特定価格を通信装置34が受信すると、関連情報特定部54は、第1通貨とは相違する第2通貨に特定価格を換算した価格(以下「換算価格」という)を関連情報として算定する。第2通貨は、例えば操作装置38に対する操作で利用者が指定した通貨、または、例えば端末装置14にて指定された言語に対応する通貨(例えば当該言語を公用語とする国で使用される主要な通貨)である。なお、特定価格を換算価格に変換するための為替レートは、例えば為替等を取扱うサイトから自動的に取得したり、利用者が任意の数値を入力したりすることが可能である。
 
【0056】
  表示制御部46は、関連情報特定部54が関連情報として特定した換算価格を表示装置36に表示させる。例えば、撮像装置が撮像する商品の画像(すなわちライブビュー画像)に重畳するように換算価格を表示すること(AR:拡張現実)も可能である。なお、関連情報特定部54が特定価格を関連情報として管理装置から取得し、表示制御部46が当該特定価格を表示装置36に表示させることも可能である。特定価格および換算価格の双方を表示装置36に表示してもよい。以上の説明から理解される通り、関連情報特定部54は、位置情報Lが示す場所で取引される商品の価格(特定価格および換算価格の一方または双方)を特定する要素として表現される。
 
【0057】
  以上の構成では、位置情報Lが示す店舗内で販売される商品の価格が第2通貨の金額として利用者に自動的に提示されるから、例えば店舗で買い物をする外国人旅行者にとって非常に便利である。また、読取画像または商品自体を撮像するための簡便な操作で、利用者は当該商品の価格を第2価格で知得できる。
 
【0058】
  なお、以上の説明では端末装置14と通信可能な管理装置が価格テーブルを保持する構成を例示したが、端末装置14の記憶装置24に価格テーブルを記憶させることも可能である。端末装置14が例えば管理装置から価格テーブルを取得する時期は任意である。例えば、価格テーブルをプログラムとともに端末装置14に配信することが想定される。また、端末装置14が通信可能な状態に遷移したことを契機として端末装置14が価格テーブルを管理装置から取得する構成、または、プログラムの起動を契機として端末装置14が価格テーブルを管理装置から取得する構成も採用され得る。関連情報特定部54は、記憶装置24の価格テーブルを参照することで特定価格を特定し、特定価格を換算価格に換算する。以上に例示した通り、端末装置14の記憶装置24に記憶された価格テーブルを使用する構成と、例えば利用者が操作装置38に対する操作で為替レートを指定する構成とを採用すれば、通信装置34を利用した通信を必要とせずに、利用者が所在する店舗の所望の商品の価格を利用者に通知することが可能である。
 
【0059】
(7)端末装置14で使用される参照テーブルTaおよび参照テーブルTbの一方または双方(以下では単に「参照テーブルT」という)は、例えば、移動体通信網またはインターネット等の通信網を介して特定の配信サーバから配信されて記憶装置24に記憶される。なお、配信サーバから端末装置14に参照テーブルTが配信される時期は任意である。例えば、所定の周期で参照テーブルTを定期的に更新することが可能である。また、例えばプログラムの起動毎に、参照テーブルTを更新することも可能である。
 
【0060】
(8)前述の各形態では、端末装置14の記憶装置24に参照テーブルTaおよび参照テーブルTbを記憶した場合を例示したが、移動体通信網またはインターネット等の通信網を介して端末装置14と通信する管理サーバに参照テーブルTを保持することも可能である。例えば、端末装置14は、情報抽出部42が抽出した識別情報Dを含む配信要求を管理サーバに送信する。管理サーバは、端末装置14から受信した配信要求内の識別情報Dが示す関連情報を参照テーブルTaおよび参照テーブルTbから特定して要求元の端末装置14に送信する。以上の構成によれば、端末装置14に参照テーブルTaおよび参照テーブルTbを保持する必要がないという利点がある。他方、端末装置14に参照テーブルTaおよび参照テーブルTbを保持した前述の各形態の構成によれば、通信網を介した通信を必要とすることなく、識別情報Dに対応する位置情報Lと位置情報Lに対応する関連情報とを特定できるという利点がある。
 
【0061】
(9)前述の各形態では、識別情報Dと位置情報Lとを対応付ける参照テーブルTaと、位置情報Lと関連情報(Za,Zb,Zc,Zd)とを対応付ける参照テーブルTbとを例示したが、識別情報Dと関連情報とを対応付ける単体の参照テーブルを利用して、音響通信部60が取得した識別情報Dに対応する関連情報を特定処理部44が特定することも可能である。すなわち、位置情報Lは省略され得る。
 
【0062】
(10)前述の各形態では、放音装置16またはその設置場所を識別するための識別情報Dを例示したが、場所以外の各種の情報を識別情報Dに含ませることも可能である。例えば、識別情報Dの音響成分を案内音声に混合して放音装置16から放射する構成では、案内音声を識別するための符号が識別情報Dに追加され得る。以上の構成によれば、識別情報Dとともに再生された案内音声の内容を識別情報Dから特定できるから、案内音声に関連する情報(例えば案内音声の文字列またはその翻訳文)を端末装置14において利用者に提供することも可能である。
 
【0063】
(11)前述の各態様に係る端末装置14は、前述の各形態の例示の通り、制御装置22とプログラムとの協働で実現される。前述の各形態に係るプログラムは、音響通信により送信された識別情報Dを取得する音響通信部60、および、識別情報Dと当該識別情報Dが送信される場所を示す位置情報Lとを対応させた参照テーブルTaを利用して、音響通信部60が取得した識別情報Dに対応する位置情報Lを特定する位置情報特定部52としてコンピュータを機能させる。以上に例示したプログラムは、コンピュータが読取可能な記録媒体に格納された形態で提供されてコンピュータにインストールされ得る。記録媒体は、例えば非一過性(non-transitory)の記録媒体であり、CD-ROM等の光学式記録媒体(光ディスク)が好例であるが、半導体記録媒体または磁気記録媒体等の公知の任意の形式の記録媒体を包含し得る。なお、非一過性の記録媒体とは、一過性の伝搬信号(transitory, propagating signal)を除く任意の記録媒体を含み、揮発性の記録媒体を除外するものではない。また、通信網を介した配信の形態でプログラムをコンピュータに提供することも可能である。
 
【0064】
(12)以上に例示した形態から、例えば以下の構成が把握される。
<態様1>
  本発明の好適な態様(態様1)に係る端末装置は、音響通信により送信された識別情報を取得する音響通信部と、識別情報と当該識別情報が送信される場所を示す位置情報とを対応させた参照テーブルを利用して、前記音響通信部が取得した識別情報に対応する位置情報を特定する位置情報特定部とを具備する。以上の態様では、音響通信により送信された識別情報に対応する位置情報が特定されるから、例えばGPSを利用して端末装置の位置情報を生成する構成と比較して、位置情報の取得に必要な消費電力を低減することが可能である。
<態様2>
  態様1の好適例(態様2)に係る端末装置は、前記位置情報特定部が特定した位置情報が示す場所に関連する関連情報を特定する関連情報特定部を具備する。以上の態様では、端末装置が所在する場所に関連する関連情報を提供することが可能である。
<態様3>
  態様2の好適例(態様3)に係る端末装置は、無線通信機との間で無線通信が可能な無線通信部を具備し、前記関連情報特定部は、前記位置情報特定部が特定した位置情報が示す場所に設置された無線通信機との間で前記無線通信部が無線通信するための接続情報を前記関連情報として特定する。以上の態様では、位置情報に対応する接続情報が関連情報として特定されるから、無線通信機との間の無線通信を容易に実現できるという利点がある。
<態様4>
  態様2または態様3の好適例(態様4)において、前記関連情報特定部は、前記位置情報特定部が特定した位置情報が示す場所に関する質問と当該質問に対する回答とを示す案内情報を前記関連情報として特定する。以上の態様では、位置情報に対応する案内情報が関連情報として特定されるから、端末装置の利用者が所在地で所望する可能性が高い情報卯を容易に提示できるという利点がある。
<態様5>
  態様2から態様4の何れかの好適例(態様5)において、前記関連情報特定部は、前記位置情報特定部が特定した位置情報が示す場所に関するウェブページの所在を示す所在情報を前記関連情報として特定する。以上の態様では、位置情報に対応する所在情報が関連情報として特定されるから、利用者が所望のウェブページを指定する手間を必要とせずに、利用者の所在地に関するウェブページを提供できるという利点がある。
<態様6>
  態様2から態様5の何れかの好適例(態様6)において、前記関連情報特定部は、前記位置情報特定部が特定した位置情報が示す場所を含む地図を示す地図情報を前記関連情報として特定する。以上の態様では、位置情報に対応する地図情報が関連情報として特定されるから、利用者が地図を指示する手間を必要とせずに、利用者の所在地を含む地図を提供できるという利点がある。