特許第6809171号(P6809171)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6809171電子機器、電源装置および電子機器の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6809171
(24)【登録日】2020年12月14日
(45)【発行日】2021年1月6日
(54)【発明の名称】電子機器、電源装置および電子機器の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 25/07 20060101AFI20201221BHJP
   H01L 25/18 20060101ALI20201221BHJP
   H01L 23/28 20060101ALI20201221BHJP
   H05K 5/00 20060101ALI20201221BHJP
   H05K 1/14 20060101ALI20201221BHJP
   H05K 3/28 20060101ALI20201221BHJP
【FI】
   H01L25/04 C
   H01L23/28 K
   H05K5/00 B
   H05K1/14 G
   H05K3/28 B
   H05K3/28 G
【請求項の数】7
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-230815(P2016-230815)
(22)【出願日】2016年11月29日
(65)【公開番号】特開2018-88475(P2018-88475A)
(43)【公開日】2018年6月7日
【審査請求日】2019年8月21日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成28年6月1日に、石澤一樹及び高橋和俊が、東洋電機株式会社にて、石澤一樹及び高橋和俊が発明した電子機器(電源装置:PH300A280)をサンプル出荷した。
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104787
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 伸司
(72)【発明者】
【氏名】石澤 一樹
(72)【発明者】
【氏名】高橋 和俊
【審査官】 川原 光司
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−090448(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/059699(WO,A1)
【文献】 特開2007−073849(JP,A)
【文献】 特開2012−186371(JP,A)
【文献】 特開平11−121909(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/28−23/31
H01L 25/00−25/07
H01L 25/10−25/11
H01L 25/16−25/18
H05K 1/14
H05K 3/28
H05K 3/36
H05K 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品実装面同士が対向するように配置された第1の電子部品実装基板および第2の電子部品実装基板を備えると共に、前記第1の電子部品実装基板の前記部品実装面に実装された第1の電子部品に接するようにポッティング材が配設され
前記第2の電子部品実装基板の前記部品実装面に開口部を向けた状態で前記第1の電子部品実装基板および当該第2の電子部品実装基板の間に配設された凹状部材と、
前記第1の電子部品実装基板および前記第2の電子部品実装基板の側方を囲うケーシングとを備え、
前記ポッティング材は、前記凹状部材の外周面に接するように配設され、
前記第2の電子部品実装基板は、当該第2の電子部品実装基板の前記部品実装面に実装されている第2の電子部品が前記凹状部材の凹部内に位置するように配置され
前記第1の電子部品実装基板および前記第2の電子部品実装基板は、前記ケーシングにそれぞれ固定されている電子機器であって、
前記ケーシングおよび前記凹状部材のいずれか一方に係合部および被係合部のいずれか一方が設けられ、かつ当該ケーシングおよび当該凹状部材の他方に当該係合部および当該被係合部の他方が設けられると共に、前記被係合部に対する前記係合部の係合によって前記第1の電子部品実装基板に対して前記凹状部材が位置決めされている電子機器。
【請求項2】
部品実装面同士が対向するように配置された第1の電子部品実装基板および第2の電子部品実装基板を備えると共に、前記第1の電子部品実装基板の前記部品実装面に実装された第1の電子部品に接するようにポッティング材が配設され
前記第2の電子部品実装基板の前記部品実装面に開口部を向けた状態で前記第1の電子部品実装基板および当該第2の電子部品実装基板の間に配設された凹状部材を備え、
前記ポッティング材は、前記凹状部材の外周面に接するように配設され、
前記第2の電子部品実装基板は、当該第2の電子部品実装基板の前記部品実装面に実装されている第2の電子部品が前記凹状部材の凹部内に位置するように配置されている電子機器であって、
前記第1の電子部品実装基板および前記第2の電子部品実装基板は、当該第1の電子部品実装基板および当該第2の電子部品実装基板を相互に電気的に接続する接続端子にそれぞれ固定されている電子機器。
【請求項3】
前記凹状部材は、絶縁性樹脂で形成されている請求項1または2記載の電子機器。
【請求項4】
前記凹状部材には、前記第1の電子部品実装基板および前記第2の電子部品実装基板の間に配設された状態において前記第1の電子部品の当該第2の電子部品実装基板との対向部の少なくとも一部を覆うように当該第1の電子部品実装基板の前記部品実装面に沿って延出させられた延出部が設けられている請求項記載の電子機器。
【請求項5】
請求項1からのいずれかに記載の電子機器を備えて構成されている電源装置。
【請求項6】
部品実装面同士が対向するように配置された第1の電子部品実装基板および第2の電子部品実装基板を備えると共に、前記第1の電子部品実装基板の前記部品実装面に実装された第1の電子部品に接するようにポッティング材が配設されている電子機器を製造する電子機器の製造方法であって、
前記第1の電子部品実装基板上に、開口部を上向きにして凹状部材を配設する第1の工程と、
前記第1の電子部品の外周面および前記凹状部材の外周面に接するように前記ポッティング材をポッティングする第2の工程と、
前記第2の電子部品実装基板の前記部品実装面に実装された第2の電子部品が前記凹状部材の凹部内に位置するように当該第2の電子部品実装基板を配置する第3の工程とをこの順で実行する電子機器の製造方法。
【請求項7】
部品実装面同士が対向するように配置された第1の電子部品実装基板および第2の電子部品実装基板を備えると共に、前記第1の電子部品実装基板の前記部品実装面に実装された第1の電子部品に接するようにポッティング材が配設されている電子機器を製造する電子機器の製造方法であって、
前記第1の電子部品の外周面に接するように前記ポッティング材をポッティングするA工程と、
前記ポッティング材に接するように開口部を上向きにして前記第1の電子部品実装基板上に凹状部材を配設するB工程と、
前記第2の電子部品実装基板の前記部品実装面に実装された第2の電子部品が前記凹状部材の凹部内に位置するように当該第2の電子部品実装基板を配置するC工程とをこの順で実行する電子機器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部品実装面同士が対向するように配置された第1の電子部品実装基板および第2の電子部品実装基板を備えた電子機器、そのような電子機器を備えた電源装置、並びにそのような電子機器を製造する電子機器の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、下記の特許文献には、絶縁金属基板および集積回路基板の2枚の電子部品実装基板を備えた集積回路基板内臓パワーモジュール(以下、単に「パワーモジュール」ともいう)が開示されている。
【0003】
この場合、上記の絶縁金属基板は、金属ベースにおける一方の面に主回路配線パターンが形成されると共に、この主回路配線パターンの形成面(部品実装面)に電力制御半導体素子などの電子部品が実装されている。また、上記の集積回路基板は、有機材基板の表裏両面に制御回路配線パターンがそれぞれ形成されると共に、両制御回路配線パターンの形成面(部品実装面)に制御素子などの電子部品がそれぞれ実装されている。
【0004】
さらに、このパワーモジュールでは、絶縁金属基板における部品実装面と、集積回路基板における両部品実装面の一方とを対向させた状態で、接続端子一体ケース(以下、単に「ケース」ともいう)における各接続端子に両基板がそれぞれ半田付けされ、これにより、両基板がケースを介して相互に位置決めされている。
【0005】
また、この特許文献に第2の実施例として開示されているパワーモジュールでは、金属ベースの部品実装面にポッティング材(エポキシ樹脂やシリコン樹脂等)をポッティングして形成した封止材によって絶縁金属基板の電子部品が金属ベースに対して封止されると共に、有機材基板の両部品実装面における一方(同文献の例では、絶縁金属基板とは反対側の面)にポッティング材をポッティングして形成した封止材によって集積回路基板の電子部品が有機材基板上に対して封止されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−63604号公報(第4−5頁、第1,5−8図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、上記の特許文献に開示されているパワーモジュールおよびその製造方法には、以下のような解決すべき問題点が存在する。
【0008】
具体的には、上記のパワーモジュールでは、絶縁金属基板における部品実装面と、集積回路基板における両部品実装面の一方とを対向させた状態で両基板がケースを介して相互に位置決めされている。また、上記の特許文献における第2の実施例に開示のパワーモジュールでは、絶縁金属基板における集積回路基板との対向面に実装されている電子部品が封止材によって金属ベースに対して封止されている。
【0009】
この場合、第2の実施例のパワーモジュールは、部品実装面への電子部品の実装が完了している絶縁金属基板をケースに取り付けた後に金属ベースにおける部品実装面にポッティング材をポッティングして(封止材を形成して)電子部品を封止すると共に、両部品実装面への電子部品の実装が完了している集積回路基板をケースに取り付けた後に有機材基板の両部品実装面における一方(絶縁金属基板とは反対側の面)にポッティング材をポッティングして(封止材を形成して)電子部品を封止することで製造されている。
【0010】
したがって、図13に示すように、第2の実施例のパワーモジュールと同様に構成されたパワーモジュール1xでは、集積回路基板5xの絶縁金属基板4xとの対向面に電子部品9xのような高背の電子部品を実装しようとしたときに、絶縁金属基板4xに形成されている封止材(ポッティング材)7xに対して同図に示すように電子部品9xが当接してしまうため、これを回避すべく、集積回路基板5xを絶縁金属基板4xから十分に離間させる必要が生じる。
【0011】
このため、電子部品9xのような高背の部品を集積回路基板5xに実装するときには、絶縁金属基板4xおよび集積回路基板5xの離間距離を増加させる分だけ、パワーモジュール1xの高さ(絶縁金属基板4xおよび実装基板5xの離間方向に沿った大きさ)を増加させなくてはならず、これに起因して、パワーモジュール1xが大形化してしまうという問題点がある。
【0012】
この場合、絶縁金属基板4xに形成する封止材7xを薄厚とすることにより、絶縁金属基板4xおよび集積回路基板5xの離間距離を増加させることなく、電子部品9xの封止材7xへの当接を回避することができる。しかしながら、そのような構成・製造方法を採用した場合には、絶縁金属基板4xに形成される封止材7xによる電子部品の封止力が不十分となるおそれがある。
【0013】
本発明は、かかる解決すべき課題に鑑みてなされたものであり、大形化を招くことなくポッティング材によって電子部品が好適に封止された電子機器、電源装置および電子機器の製造方法を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成すべく、本発明に係る電子機器は、部品実装面同士が対向するように配置された第1の電子部品実装基板および第2の電子部品実装基板を備えると共に、前記第1の電子部品実装基板の前記部品実装面に実装された第1の電子部品に接するようにポッティング材が配設され前記第2の電子部品実装基板の前記部品実装面に開口部を向けた状態で前記第1の電子部品実装基板および当該第2の電子部品実装基板の間に配設された凹状部材と、前記第1の電子部品実装基板および前記第2の電子部品実装基板の側方を囲うケーシングとを備え、前記ポッティング材は、前記凹状部材の外周面に接するように配設され、前記第2の電子部品実装基板は、当該第2の電子部品実装基板の前記部品実装面に実装されている第2の電子部品が前記凹状部材の凹部内に位置するように配置され、前記第1の電子部品実装基板および前記第2の電子部品実装基板は、前記ケーシングにそれぞれ固定されている電子機器であって、前記ケーシングおよび前記凹状部材のいずれか一方に係合部および被係合部のいずれか一方が設けられ、かつ当該ケーシングおよび当該凹状部材の他方に当該係合部および当該被係合部の他方が設けられると共に、前記被係合部に対する前記係合部の係合によって前記第1の電子部品実装基板に対して前記凹状部材が位置決めされている
【0017】
また、本発明に係る電子機器は、部品実装面同士が対向するように配置された第1の電子部品実装基板および第2の電子部品実装基板を備えると共に、前記第1の電子部品実装基板の前記部品実装面に実装された第1の電子部品に接するようにポッティング材が配設され、前記第2の電子部品実装基板の前記部品実装面に開口部を向けた状態で前記第1の電子部品実装基板および当該第2の電子部品実装基板の間に配設された凹状部材を備え、前記ポッティング材は、前記凹状部材の外周面に接するように配設され、前記第2の電子部品実装基板は、当該第2の電子部品実装基板の前記部品実装面に実装されている第2の電子部品が前記凹状部材の凹部内に位置するように配置されている電子機器であって、前記第1の電子部品実装基板および前記第2の電子部品実装基板は、当該第1の電子部品実装基板および当該第2の電子部品実装基板を相互に電気的に接続する接続端子にそれぞれ固定されている。
【0018】
また、本発明に係る電子機器は、前記凹状部材は、絶縁性樹脂で形成されている。
【0019】
さらに、本発明に係る電子機器は、前記凹状部材には、前記第1の電子部品実装基板および前記第2の電子部品実装基板の間に配設された状態において前記第1の電子部品の当該第2の電子部品実装基板との対向部の少なくとも一部を覆うように当該第1の電子部品実装基板の前記部品実装面に沿って延出させられた延出部が設けられている。
【0020】
また、本発明に係る電源装置は、上記のいずれかの電子機器を備えて構成されている。
【0021】
また、本発明に係る電子機器の製造方法は、部品実装面同士が対向するように配置された第1の電子部品実装基板および第2の電子部品実装基板を備えると共に、前記第1の電子部品実装基板の前記部品実装面に実装された第1の電子部品に接するようにポッティング材が配設されている電子機器を製造する電子機器の製造方法であって、前記第1の電子部品実装基板上に、開口部を上向きにして凹状部材を配設する第1の工程と、前記第1の電子部品の外周面および前記凹状部材の外周面に接するように前記ポッティング材をポッティングする第2の工程と、前記第2の電子部品実装基板の前記部品実装面に実装された第2の電子部品が前記凹状部材の凹部内に位置するように当該第2の電子部品実装基板を配置する第3の工程とをこの順で実行する。
【0022】
また、本発明に係る電子機器の製造方法は、部品実装面同士が対向するように配置された第1の電子部品実装基板および第2の電子部品実装基板を備えると共に、前記第1の電子部品実装基板の前記部品実装面に実装された第1の電子部品に接するようにポッティング材が配設されている電子機器を製造する電子機器の製造方法であって、前記第1の電子部品の外周面に接するように前記ポッティング材をポッティングするA工程と、前記ポッティング材に接するように開口部を上向きにして前記第1の電子部品実装基板上に凹状部材を配設するB工程と、前記第2の電子部品実装基板の前記部品実装面に実装された第2の電子部品が前記凹状部材の凹部内に位置するように当該第2の電子部品実装基板を配置するC工程とをこの順で実行する。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る電子機器では、第2の電子部品実装基板の部品実装面に開口部を向けた状態で第1の電子部品実装基板および第2の電子部品実装基板の間に配設された凹状部材を備えると共に、凹状部材の外周面に接するようにポッティング材が配設され、かつ第2の電子部品実装基板の部品実装面に実装されている第2の電子部品が凹状部材の凹部内に位置している。また、本発明に係る電源装置は、上記の電子機器を備えて構成されている。
【0024】
したがって、本発明に係る電子機器および電源装置によれば、ポッティング材を薄厚化することなく、十分な厚みにポッティングしたポッティング材内に少なくとも一部が埋没した状態となるように配設されている凹状部材の凹部内に第2の電子部品を位置させた分だけ第2の電子部品が第1の電子部品実装基板の部品実装面に対して十分に接近させられているため、第1の電子部品実装基板および第2の電子部品実装基板の離間距離が十分に小さくなる結果、十分に小形化された電子機器(電源装置)を提供することができる。また、十分な厚みのポッティング材によって第1の電子部品などが好適に封止された電子機器(電源装置)を提供することができる。
【0025】
また、本発明に係る電子機器では、第1の電子部品実装基板および第2の電子部品実装基板の側方を囲うケーシングを備え、第1の電子部品実装基板および第2の電子部品実装基板が、ケーシングにそれぞれ固定されている。また、本発明に係る電源装置は、上記の電子機器を備えて構成されている。
【0026】
したがって、本発明に係る電子機器および電源装置によれば、電子機器(電源装置)の製造に際して第1の電子部品実装基板の部品実装面にポッティング材をポッティングするのに先立って第1の電子部品実装基板をケーシングに固定しておくことで第1の電子部品実装基板、および第1の電子部品実装基板の側方を囲むケーシングによって上面開口の容器体が構成される。これにより、流動性が十分に高いポッティング材をポッティングすることができるため、第1の電子部品などの周囲の細部に亘ってポッティング材を行き渡らせて各電子部品が一層好適に封止された状態とすることができる。
【0027】
さらに、本発明に係る電子機器では、ケーシングおよび凹状部材のいずれか一方に係合部および被係合部のいずれか一方が設けられ、かつケーシングおよび凹状部材の他方に係合部および被係合部の他方が設けられると共に、被係合部に対する係合部の係合によって第1の電子部品実装基板に対して凹状部材が位置決めされている。また、本発明に係る電源装置は、上記の電子機器を備えて構成されている。
【0028】
したがって、本発明に係る電子機器および電源装置によれば、電子機器(電源装置)の製造に際して第1の電子部品実装基板の部品実装面にポッティングしたポッティング材が硬化する以前に凹状部材が第1の電子部品実装基板に対して移動することが好適に回避される結果、凹部内に位置させられる第2の電子部品と凹状部材との位置関係が想定外の位置関係となった不良品が製造されることがないため、良好な電子機器(電源装置)を提供することができる。
【0029】
また、本発明に係る電子機器では、第1の電子部品実装基板および第2の電子部品実装基板が、両電子部品実装基板を相互に電気的に接続する接続端子にそれぞれ固定されている。また、本発明に係る電源装置は、上記の電子機器を備えて構成されている。
【0030】
したがって、本発明に係る電子機器および電源装置によれば、第1の電子部品実装基板および第2の電子部品実装基板を電気的に接続する作業(半田付け作業)を行うだけで両電子部品実装基板の固定を完了させることができる。
【0031】
また、本発明に係る電子機器では、凹状部材が絶縁性樹脂で形成されている。また、本発明に係る電源装置は、上記の電子機器を備えて構成されている。
【0032】
したがって、本発明に係る電子機器および電源装置によれば、第1の電子部品実装基板に実装されている第1の電子部品と、この第1の電子部品の近傍に位置させられる第2の電子部品との間の絶縁性を十分に向上させることができる。
【0033】
さらに、本発明に係る電子機器では、第1の電子部品実装基板および第2の電子部品実装基板の間に配設された状態において第1の電子部品の第2の電子部品実装基板との対向部の少なくとも一部を覆うように第1の電子部品実装基板の部品実装面に沿って延出させられた延出部が凹状部材に設けられている。また、本発明に係る電源装置は、上記の電子機器を備えて構成されている。
【0034】
したがって、本発明に係る電子機器および電源装置によれば、延出部の存在によって第1の電子部品および第2の電子部品の間の絶縁距離が延長されるため、第1の電子部品および第2の電子部品の間の絶縁性を一層向上させることができる。
【0035】
また、本発明に係る電子機器の製造方法では、第1の電子部品実装基板上に、開口部を上向きにして凹状部材を配設する第1の工程と、第1の電子部品の外周面および凹状部材の外周面に接するようにポッティング材をポッティングする第2の工程と、第2の電子部品実装基板の部品実装面に実装された第2の電子部品が凹状部材の凹部内に位置するように第2の電子部品実装基板を配置する第3の工程とをこの順で実行する。
【0036】
したがって、ポッティング材をポッティングしてから凹状部材を配設した場合には、凹状部材によって押し避けられたポッティング材によって凹状部材の周囲にポッティング材の盛り上がり部が生じるおそれがあるのに対し、本発明に係る電子機器の製造方法によれば、第2の工程に先立って第1の工程を実行することで、上記のようなポッティング材の盛り上がり部が生じる事態を好適に回避することができる。
【0037】
また、本発明に係る電子機器の製造方法では、第1の電子部品の外周面に接するようにポッティング材をポッティングするA工程と、ポッティング材に接するように開口部を上向きにして凹状部材を配設するB工程と、第2の電子部品実装基板の部品実装面に実装された第2の電子部品が凹状部材の凹部内に位置するように第2の電子部品実装基板を配置するC工程とをこの順で実行する。
【0038】
したがって、本発明に係る電子機器の製造方法によれば、第1の電子部品実装基板の部品実装面にポッティング材をポッティングする際に凹状部材が第1の電子部品実装基板上に存在していないため、誤って凹状部材の凹部内にポッティング材がポッティングされる事態を好適に回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】蓋体2bを取り外した状態における電源装置1の平面図である。
図2図1におけるA−A線断面図である。
図3図1におけるB−B線断面図である。
図4図1におけるC−C線断面図である。
図5】凹状部材6の外観斜視図である。
図6】枠体2aの一部および凹状部材6の外観斜視図である。
図7】電源装置1の製造方法について説明するための説明図である。
図8】電源装置1の製造方法について説明するための他の説明図である。
図9】電源装置1の製造方法について説明するためのさらに他の説明図である。
図10】電源装置1の製造方法について説明するためのさらに他の説明図である。
図11図1におけるD−D線断面図(電子部品22,23間の絶縁について説明するための説明図)である。
図12】電源装置1の他の製造方法について説明するための説明図である。
図13】従来のパワーモジュール1xの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、電子機器、電源装置および電子機器の製造方法の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
【0041】
図1〜4に示す電源装置(パワーモジュール)1は、「電子機器」を備えて構成された「電源装置」の一例であって、ケーシング2、接続端子3、実装基板4,5、凹状部材6およびポッティング材7を備えて構成されている。
【0042】
ケーシング2は、図2〜4に示すように、枠体2aおよび蓋体2bを備えて構成されている。
【0043】
枠体2aは、「ケーシング」の一例であって、図1〜4に示すように、実装基板4,5の側方を囲うように絶縁性樹脂等の絶縁性材料によって平面視四角枠状に形成されている。この枠体2aには、複数の接続端子3,3・・が固定される端子固定部11が形成されている。また、枠体2aには、後述するように実装基板4の固定位置を位置決めするための位置決め用爪部12(図1,4参照)が形成されている。さらに、枠体2aには、図3,6に示すように、凹状部材6を位置決めするための係合用孔Hを有する被係合部13(「被係合部」の一例)が形成されている。蓋体2bは、枠体2aにおける両開口部の一方を閉塞可能に絶縁性樹脂等の絶縁性材料によって平面視四角板状に形成されている。
【0044】
この場合、本例の電源装置1では、枠体2aにおける上縁部(実装基板4が取り付けられる側とは反対側の縁部)に形成された被係合部(係合用孔または係合用凹部:図示せず)に、蓋体2bにおける下縁部に形成された係合部(係合用爪部:図示せず)が係合させられることによって蓋体2bに枠体2aが固定される構成が採用されている。なお、図示を省略するが、例えば、実装基板5における後述の部品実装面Fc(実装基板4側とは反対側の面)に「ポッティング材」を配設して部品実装面Fcを「ポッティング材」によって覆うことによって蓋体2bを不要とすることもできる。
【0045】
接続端子3は、ケーシング2における枠体2aの端子固定部11に圧入固定されている。この接続端子3は、実装基板4,5の各配線パターン(図示せず)を外部装置(電源装置1を接続する装置の回路基板:図示せず)に接続するための接続具として機能する。また、接続端子3は、後述するように、実装基板4に形成された配線パターンに半田付けされることで枠体2aに実装基板4を固定する固定部材として機能する(端子固定部11に固定された各接続端子3を介して実装基板4が枠体2aに固定される構成の一例)。さらに、接続端子3は、実装基板5に形成された配線パターンに半田付けされることで枠体2aに実装基板5を固定する固定部材として機能する(端子固定部11に固定された各接続端子3を介して実装基板5が枠体2aに固定される構成の一例)。
【0046】
実装基板4は、「第1の電子部品実装基板」の一例である片面実装基板であって、一例として、アルミニウム等で形成された平板の一面に形成された絶縁膜(図示せず)の上に配線パターン(図示せず)が形成されている。また、図2〜4に示すように、実装基板4の配線パターンの形成面(部品実装面Fa)には、電子部品21や電子部品22などの各種の「電子部品」が実装されている。
【0047】
なお、本明細書において参照する各図では、電源装置1の構成に関する理解を容易とするために、実装基板4の層構造に関する図示、および電子部品21,22以外の電子部品の図示を省略している。また、実装基板4には、ケーシング2における枠体2aの位置決め用爪部12が係合可能な切欠き4a(図1,4参照)が形成されている。
【0048】
実装基板5は、「第2の電子部品実装基板」の一例である両面実装基板であって、一例として、ガラスエポキシ材等で形成された平板の表裏両面に配線パターン(図示せず)がそれぞれ形成されている。また、実装基板5は、表裏両面に形成されている両配線パターンの一方の形成面(部品実装面Fb)に電子部品23などの各種の「電子部品」が実装され、かつ表裏両面に形成されている両配線パターンの他方の形成面(部品実装面Fc)にも各種の「電子部品」が実装されている。
【0049】
なお、本明細書において参照する各図では、電源装置1の構成に関する理解を容易とするために、実装基板5の層構造に関する図示、および電子部品23以外の電子部品の図示を省略している。
【0050】
この場合、本例の電源装置1では、実装基板4における部品実装面Fa、および実装基板5における部品実装面Fbがそれぞれ「部品実装面」に相当し、両部品実装面Fa,Fbが対向するように実装基板4,5が配置されている。また、本例の電源装置1では、実装基板4の部品実装面Faに実装されている電子部品22が「第1の電子部品」に相当する。さらに、本例の電源装置1では、実装基板5の部品実装面Fbに実装されている電子部品23が「第2の電子部品」に相当する。
【0051】
凹状部材6は、「凹状部材」の一例であって、図5,6に示すように、絶縁性樹脂等の絶縁性材料によって凹状に形成されている。この凹状部材6は、凹部31a(実装基板5に実装されている電子部品23の本体部が位置させられる(挿入される:収容される)「凹部」:図2,10参照)、および凹部31b(実装基板5に実装されている電子部品23のリード線23aが位置させられる(挿入される:収容される)「凹部」:図3参照)の開口部を実装基板5の部品実装面Fbに向けた状態で実装基板4,5の間に配設されている。
【0052】
また、図5,6に示すように、凹状部材6には、枠体2aの被係合部13に係合可能な(被係合部13の係合用孔Hに挿入可能な)係合部32(「係合部」の一例)が形成されている。さらに、凹状部材6には、「延出部」の一例である延出部33が形成されている。なお、延出部33の機能(延出部33によって奏される効果等)については、後に具体的に説明する。
【0053】
ポッティング材7は、「ポッティング材」の一例であって、実装基板4の部品実装面Faにエポキシ樹脂やシリコン樹脂等の流動性樹脂をポッティングして硬化させることで「絶縁層」および/または「部品固定層(封止層)」として機能するように形成されている。この場合、本例の電源装置1では、一例として、「部品実装面Faにおける電子部品22の近傍領域」だけでなく、実装基板4における部品実装面Faの全域(電子部品の実装場所を除く)を覆うようにしてポッティング材7の層が形成されている。また、本例の電源装置1では、凹状部材6における外周面の底部寄りの部位(外周面の少なくとも一部)に接するようにポッティング材7の層が形成されている。
【0054】
この電源装置1の製造に際しては、まず、ケーシング2の枠体2aの端子固定部11に接続端子3を圧入して固定する。また、部品実装面Faに電子部品21,22などを実装して実装基板4を製造する。さらに部品実装面Fb,Fcに電子部品23などをそれぞれ実装して実装基板5を製造する。
【0055】
次いで、図7に示すように、部品実装面Faを上向きにして枠体2aの下端部に実装基板4を位置させる。この際には、図4に示すように、実装基板4の切欠き4aに枠体2aの各位置決め用爪部12を係合させることにより、枠体2aに対する実装基板4の取付け位置(実装基板4に対する枠体2aの取付け位置)が位置決めされる。また、図7に示すように、実装基板4の部品実装面Faに実装されている電子部品21,22などの各種電子部品が枠体2a内に位置した状態となる。
【0056】
続いて、枠体2aの端子固定部11に固定されている各接続端子3,3・・の下端部を実装基板4の部品実装面Faに形成されている配線パターンに半田付けする。これにより、各接続端子3,3・・が実装基板4の配線パターンに対して電気的に接続されると共に、端子固定部11に固定されている接続端子3を介して実装基板4が枠体2aに固定された状態となる。
【0057】
なお、本例の電源装置1では、部品実装面Faに形成されている配線パターンへの接続端子3の半田付けによって枠体2aに実装基板4を固定しているが、このような構成に代えて(または、このような構成に加えて)接着剤や固定用ねじ等(図示せず)を用いて枠体2aに実装基板4を固定する構成を採用することもできる。
【0058】
次いで、図8に示すように、実装基板4における電子部品22の近傍に、凹部31a,31bの開口部を上向きにして凹状部材6を配設する(「第1の工程」の実行)。具体的には、凹部31a,31bの開口部を上向きにした状態で、枠体2aの被係合部13における係合用孔Hに係合部32を係合させるようにして実装基板4の上に凹状部材6を設置する。これにより、同図に示すように、電子部品22の近傍に凹状部材6が配設された状態となる。
【0059】
続いて、図9に示すように、実装基板4の部品実装面Faにポッティング材7をポッティングする(「第2の工程」の実行)。この際に、本例の製造方法では、一例として、枠体2aに固定された状態の実装基板4における部品実装面Faの全域がポッティング材7によって覆われ、かつ、電子部品21,22のような高背の「電子部品」の表面(上面)がポッティング材7から露出するようにポッティング材7をポッティングする。
【0060】
これにより、接続端子3と配線パターンとの半田付け部位、電子部品21,22などの配線パターンへの半田付け部位、および部品実装面Faに形成されている配線パターン等がポッティング材7によって覆われる。また、被係合部13に対する係合部32の係合によって枠体2aに対して位置決めされている凹状部材6における外周面の一部にポッティング材7が接した状態(すなわち、凹状部材6の一部がポッティング材7内に埋没した状態)となる。これにより、ポッティング材7が硬化したときに、凹状部材6がポッティング材7によって枠体2aや実装基板4に固定された状態となる。
【0061】
次いで、図10に示すように、部品実装面Fbを下向きにして実装基板5を蓋体2bに固定する(「第3の工程」の実行)。この際には、まず、実装基板5の部品実装面Fbに実装されている電子部品23(「第2の電子部品実装基板に実装された第2の電子部品」の一例)の本体部が凹状部材6の凹部31a内に位置させられ、かつ電子部品23のリード線23aが凹状部材6の凹部31bに位置させられるように実装基板5を枠体2aの端子固定部11上に載置する。なお、この「第3の工程」については、「第2の工程」においてポッティングしたポッティング材7が硬化した状態において開始するのが好ましい。
【0062】
次いで、端子固定部11に固定されている各接続端子3,3・・を実装基板5の部品実装面Fcに形成されている配線パターンに半田付けする。これにより、各接続端子3,3・・が実装基板5の配線パターンに対して電気的に接続されると共に、端子固定部11に固定された接続端子3を介して実装基板5が枠体2aに固定された状態となり、実装基板4の部品実装面Faと実装基板5の部品実装面Fbとが対向した状態で両実装基板4,5が位置決めされる。
【0063】
また、本例の電源装置1では、「第3の工程」が完了した時点において、凹状部材6の上縁部が実装基板5の部品実装面Fbに接した状態となる。これにより、部品実装面Fbに実装されている電子部品23が凹状部材6によって覆われて周囲から好適に絶縁された状態となる。なお、「第3の工程」が完了した時点において、凹状部材6の上縁部が実装基板5の部品実装面Fbに接した状態となる例を説明したが、電子部品23が周囲から好適に絶縁されていれば、凹状部材6の上縁部が実装基板5の部品実装面に接していない構成を採用することもできる。
【0064】
なお、本例の電源装置1では、部品実装面Fcに形成されている配線パターンの接続端子3への半田付けによって枠体2aに実装基板5を固定しているが、このような構成に代えて(または、このような構成に加えて)接着剤や固定用ねじ等(図示せず)を用いて枠体2aに実装基板5を固定する構成を採用することもできる。この後、実装基板5の部品実装面Fcを覆うようにして枠体2aに蓋体2bを装着することにより、図1〜4に示すように、電源装置1が完成する。
【0065】
この電源装置1では、図11に示すように、実装基板4,5の間における電子部品22の近傍に配設されている凹状部材6の凹部31a,31bに電子部品23の本体部およびリード線23aが位置している。また、凹状部材6は、電子部品22の上面(電子部品22において)実装基板5の部品実装面Fbとの対向する一面)の一部を覆うように実装基板4の部品実装面Fa(すなわち、部品実装面Faに実装されている電子部品22の上面)や、実装基板5の部品実装面Fbに沿って延出させられた延出部33を備えている。
【0066】
この場合、電子部品22の近傍に配設された凹状部材6の凹部31a,31b内に電子部品23が位置している本例の電源装置1では、電子部品22,23の離間距離が非常に短くなっている。このため、本例の電源装置1では、電子部品23が位置させられる凹状部材6に延出部33を設けることにより、電子部品22,23の間の絶縁性を向上させる構成が採用されている。
【0067】
具体的には、本例の電源装置1における凹状部材6とは異なり、延出部33を備えていない「凹状部材」を採用した場合には、図11に示す距離Laと距離Lbとの和が電子部品22,23の間の絶縁距離となる。このような構成の「凹状部材」を採用した場合においても、上記の距離Laと距離Lbとの和が、「凹状部材」を備えていない構成における電子部品22,23の絶縁距離である距離L0よりも長くなっているものの、電子部品22,23間に生じる電位差によっては、十分な絶縁性を確保できないおそれがある。
【0068】
これに対して、本例の電源装置1では、凹状部材6が延出部33を備えていることにより、上記の距離Laと距離Lbとの和よりも十分に長い距離L1と距離L2との和が電子部品22,23の絶縁距離となる。したがって、延出部33を備えていない「凹状部材」を採用したときよりも、電子部品22,23の間の絶縁性が十分に向上している。
【0069】
このように、この電源装置1では、実装基板5の部品実装面Fbに開口部を向けた状態で実装基板4,5の間に配設された凹状部材6を備えると共に、凹状部材6の外周面に接するようにポッティング材7が配設され、かつ実装基板5の部品実装面Fbに実装されている電子部品23が凹状部材6の凹部31a,31b内に位置している。
【0070】
したがって、この電源装置1によれば、ポッティング材7を薄厚化することなく、十分な厚みにポッティングしたポッティング材7内に少なくとも一部が埋没した状態となるように配設されている凹状部材6の凹部31a,31b内に電子部品23を位置させた分だけ電子部品23が実装基板4の部品実装面Faに対して十分に接近させられているため、実装基板4,5の離間距離が十分に小さくなる結果、十分に小形化された電源装置1を提供することができる。また、十分な厚みのポッティング材7によって電子部品21,22などが好適に封止された電源装置1を提供することができる。
【0071】
また、この電源装置1では、実装基板4,5の側方を囲う枠体2a(ケーシング)を備え、実装基板4,5が、枠体2aに各接続端子3を介してそれぞれ固定されている。
【0072】
したがって、この電源装置1によれば、電源装置1の製造に際して実装基板4の部品実装面Faにポッティング材7をポッティングするのに先立って実装基板4を枠体2aに固定しておくことで実装基板4、および実装基板4の側方を囲む枠体2aによって上面開口の容器体が構成される。これにより、流動性が十分に高いポッティング材7をポッティングすることができるため、電子部品21,22等の電子部品の周囲の細部に亘ってポッティング材7を行き渡らせて各電子部品が一層好適に封止された状態とすることができる。
【0073】
さらに、この電源装置1では、枠体2aに被係合部13が設けられ、かつ凹状部材6に係合部32が設けられると共に、被係合部13に対する係合部32の係合により、枠体2aに固定された状態の実装基板4に対して凹状部材6が位置決めされている。
【0074】
したがって、この電源装置1によれば、電源装置1の製造に際して実装基板4の部品実装面Faにポッティングしたポッティング材7が硬化する以前に凹状部材6が実装基板4に対して移動することが好適に回避される結果、凹部31a,31b内に位置させられる電子部品23と凹状部材6との位置関係が想定外の位置関係となった不良品が製造されることがないため、良好な電源装置1を提供することができる。
【0075】
また、この電源装置1では、凹状部材6が絶縁性樹脂で形成されている。
【0076】
したがって、この電源装置1によれば、実装基板4に実装されている電子部品22と、この電子部品22の近傍に位置させられる電子部品23との間の絶縁性を十分に向上させることができる。
【0077】
さらに、この電源装置1では、実装基板4,5の間に配設された状態において電子部品22の実装基板5との対向部の少なくとも一部を覆うように実装基板4の部品実装面Faに沿って延出させられた延出部33が凹状部材6に設けられている。
【0078】
したがって、この電源装置1によれば、延出部33の存在によって電子部品22,23の間の絶縁距離が延長されるため、電子部品22,23間の絶縁性を一層向上させることができる。
【0079】
また、この電源装置1の製造方法では、実装基板4上に、開口部を上向きにして凹状部材6を配設する「第1の工程」と、電子部品22の外周面および凹状部材6の外周面に接するようにポッティング材7をポッティングする「第2の工程」と、実装基板5に実装された電子部品23が凹状部材6の凹部31aに位置するように実装基板5を配置する「第3の工程」とをこの順で実行する。
【0080】
したがって、ポッティング材7をポッティングしてから凹状部材6を配設した場合には、凹状部材6によって押し避けられたポッティング材7によって凹状部材6の周囲にポッティング材7の盛り上がり部が生じるおそれがあるのに対し、この電源装置1の製造方法によれば、「第2の工程」に先立って「第1の工程」を実行することで、上記のようなポッティング材7の盛り上がり部が生じる事態を好適に回避することができる。
【0081】
なお、「電子機器」、「電源装置」の構成、および「電子機器の製造方法」は、上記の電源装置1の構成、および電源装置1の製造方法の例に限定されない。例えば、部品実装面Faにポッティング材7をポッティングする「第2の工程」に先立って、実装基板4が固定されている枠体2aに凹状部材6を取り付ける「第1の工程」を実行する製造方法について説明したが、上記の電源装置1は、以下のような製造方法に従って製造することもできる。
【0082】
まず、前述の製造方法と同様にして、図7に示すように枠体2aに実装基板4を固定した後に、図12に示すように、実装基板4の部品実装面Faにポッティング材7をポッティングする(「A工程」の実行)。
【0083】
この際には、一例として、枠体2aに固定された状態の実装基板4における部品実装面Faの全域がポッティング材7によって覆われ、かつ、電子部品21,22のような高背の「電子部品」の表面(上面)がポッティング材7から露出するようにポッティング材7をポッティングする。また、後に配設される凹状部材6の存在を考慮して、凹状部材6の配設位置にポッティングするポッティング材7の量をやや少量とする。これにより、接続端子3と配線パターンとの半田付け部位、電子部品21,22などの配線パターンへの半田付け部位、および部品実装面Faに形成されている配線パターン等がポッティング材7によって覆われた状態となる。
【0084】
次いで、ポッティング材7が硬化するのに先立ち、図9に示すように、実装基板4における電子部品22の近傍に、凹部31a,31bの開口部を上向きにして凹状部材6を配設する(「B工程」の実行)。具体的には、凹部31a,31bの開口部を上向きにした状態で、枠体2aの被係合部13における係合用孔Hに係合部32を係合させるようにして実装基板4の上に凹状部材6を設置する。これにより、同図に示すように、電子部品22の近傍に凹状部材6が配設され、この凹状部材6における外周面の一部にポッティング材7が接した状態(すなわち、ポッティング材7内に凹状部材6の一部が埋没した状態)となって凹状部材6がポッティング材7によって枠体2aや実装基板4に固定された状態となる。
【0085】
続いて、図10に示すように、部品実装面Fbを下向きにして実装基板5を蓋体2bに固定する(「C工程」の実行)。なお、この「C工程」以降の各工程については、前述の製造方法における「第3の工程」以降の各工程と同様のため、詳細な説明を省略する。これにより、図1〜4に示すように、電源装置1が完成する。
【0086】
このように、上記の電源装置1の製造方法では、電子部品22の外周面に接するようにポッティング材7をポッティングする「A工程」と、ポッティング材7に接するように開口部を上向きにして電子部品22の近傍に凹状部材6を配設する「B工程」と、実装基板5の部品実装面Fbに実装された電子部品23が凹状部材6の凹部31aに位置するように実装基板5を配置する「C工程」とをこの順で実行する。
【0087】
したがって、この電源装置1の製造方法によれば、実装基板4の部品実装面Faにポッティング材7をポッティングする際に凹状部材6が実装基板4上に存在していないため、誤って凹部31a,31b内にポッティング材7がポッティングされる事態を好適に回避することができる。
【0088】
一方、実装基板4における部品実装面Faの全域にポッティング材7を配設した例について説明したが、ポッティング材7をポッティングする領域はこれに限定されず、「第1の電子部品」としての電子部品22に接するように部品実装面Faの一部の領域だけにポッティング材7を配設することもできる。
【0089】
また、枠体2a(ケーシング)に被係合部13を形成すると共に、凹状部材6に係合部32を形成し、被係合部13に対する係合部32の係合によって凹状部材6を位置決めする構成を例に挙げて説明したが、このような構成に代えて、「ケーシング」に「係合部」を形成すると共に、「凹状部材」に「被係合部」を形成し、そのような「被係合部」に対する「係合部」の係合によって「凹状部材」を位置決めする構成を採用することもできる(図示せず)。さらに、「ケーシング」に対して「凹状部材」を位置決めする構成に代えて、「第1の電子部品実装基板」に対して「凹状部材」を位置決めする構成を採用することもできる(図示せず)。
【0090】
また、「第1の電子部品実装基板」および「第2の電子部品実装基板」を「ケーシング」に固定する構成(上記の例では、ケーシング2の端子固定部11に固定された接続端子3を介してケーシング2に固定する構成)を例に挙げて説明したが、「ケーシング」を備えているか否かを問わず、「第1の電子部品実装基板」および「第2の電子部品実装基板」を相互に電気的に接続する「接続端子」に両基板をそれぞれ固定することで「部品実装面」同士を対向させた状態に位置決めする構成を採用することもできる。このような構成を採用することにより、「第1の電子部品実装基板」および「第2の電子部品実装基板」を電気的に接続する作業(半田付け作業)を行うだけで両基板の固定を完了させることができる。
【0091】
さらに、「延出部」の一例である延出部33を有する凹状部材6を備えた電源装置1を例に挙げて説明したが、「延出部」を有していない「凹状部材」を備えて「電子機器(電源装置)」を構成することもできる。加えて、「電子機器」は、電源装置1のような「電源装置」に限定されず、部品実装面同士が対向するように配置された2枚以上の電子部品実装基板を備えた各種の電子機器において、上記の電源装置1と同様にして「凹状部材」を設ける構成を採用することができる。
【符号の説明】
【0092】
1 電源装置
2 ケーシング
2a 枠体
2b 蓋体
3 接続端子
4,5 実装基板
6 凹状部材
7 ポッティング材
11 端子固定部
13 被係合部
22,23 電子部品
23a リード線
31a,31b 凹部
32 係合部
33 延出部
Fa,Fb 部品実装面
L1,L2,La,Lb 距離
H 係合用孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13