(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記連結ボルトの内面と、前記スプールの外面との間にスリーブが配置され、前記ロックドレン流路および前記位相制御ドレン流路が前記連結ボルトの内面と前記スリーブの外面との境界に形成されている請求項1又は2に記載の弁開閉時期制御装置。
前記進角室と前記進角ポートとの間に進角流路が形成され、前記遅角室と前記遅角ポートとの間に遅角流路が形成され、前記ロックポートと前記凹部との間にロック制御流路が形成され、前記ロック制御流路の流路断面積が、前記進角流路の流路断面積と前記遅角流路の流路断面積との何れよりも大きく設定されている請求項1〜3のいずれか一項に記載の弁開閉時期制御装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されるように、弁開閉時期制御装置の回転軸芯と同軸芯に単一のスプールを備え、スプールの内部のドレン流路から流体を排出するようものでは、例えば、スプールの操作により進角室に流体を供給してロック状態に移行する場合には遅角室からの流体がドレン流路に流れると同時に、ロック解除流路からの流体もドレン流路に流れることになる。
【0006】
特許文献1にはスプールの内部に比較的大きい流路断面積となるドレン流路が示されているが、このように大径のドレン流路を備えていてもドレン排出能力が追いつかない場合にはドレン流路の圧力が上昇し、更に、内燃機関の稼動時には弁開閉時期制御装置と共にスプールが高速回転するため、ドレン流路では遠心力により流体がスプールの内周壁に押し付けられ、ドレン流路で流体の圧力が上昇するものであった。従って、このドレン流路にロック解除流路を合流させる構成では、合流した流体の流れが阻害され、結果としてロック解除を適正に行えないこともあった。
【0007】
特に、進角室へ流体を供給した際に、この供給に伴い遅角室から排出される流体には圧力が作用するものであるが、ロック時にロック流路から排出される流体には、ロック部材に作用するスプリングの付勢力に起因する圧力だけが作用するため、流体の排出時の圧力が低く、この流体の流れが阻害された場合には、ロック機構のロック状態への移行が適正に行われない現象を招いていたのである。
【0008】
ここで、中間ロック固有のロック状態への移行の難しさについて説明する。最遅角ロックあるいは最進角ロックのように、例えば、ベーンが壁部に当接して位相が停止した状態でロック移行を行うことが可能である。このような構成と比較して最進角あるいは最遅角以外にロック位相を備える構成においては、ロックへ移行する際には、ロック部材とロック凹部とが常に相対変位する状況においてロック部材とロック凹部とが係合可能な位相に達した時点で迅速にロック状態に移行する必要があり、この理由からロック状態への移行が困難であった。
【0009】
この不都合は、車両においてエンジンオイルを流体として用いる構成において、低温環境でエンジンを始動した直後のように流体の温度が低く、流体の粘性が高い場合に顕著となる。
【0010】
この不適正な作動を抑制するため、例えば進角室と遅角室とに給排される作動油を制御する位相制御用の油圧バルブと、ロック機構を制御するロック制御用の油圧バルブとを備えることも考えられる。このような構成では、ロック制御用の油圧バルブから流体を排出する状態で位相制御用の流体バルブを開弁制御することにより、相対回転位相がロック位相に達したタイミングでロック状態に確実に移行させることが可能となる。
【0011】
しかしながら、このような構成では2つの油圧バルブを必要とするため部品点数が増大し、油路構成が複雑化し、大型化を招くものであった。
【0012】
このような理由から、単一のスプールで流体を制御することにより位相回転位相の制御とロック機構の制御を行う構成でありながらロック機構のロック状態への移行を確実に行える弁開閉時期制御装置が求められる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の特徴は、内燃機関のクランクシャフトと同期回転する駆動側回転体と、
前記駆動側回転体の回転軸芯と同軸芯に配置され弁開閉用のカムシャフトと一体回転する従動側回転体と、
前記駆動側回転体と前記従動側回転体との間に形成される進角室および遅角室と、
前記駆動側回転体および前記従動側回転体の一方に形成された凹部に係合可能なロック部材を前記駆動側回転体および前記従動側回転体の他方に備えたロック機構と、
前記回転軸芯と同軸芯に配置され前記従動側回転体を前記カムシャフトに連結する連結ボルトとを備え、
前記連結ボルトは、前記回転軸芯と同軸芯で、
ボルト頭部から前記連結ボルトの内部に亘る領域に筒状に形成された内部空間を有し、前記進角室に連通する進角ポートと、前記遅角室に連通する遅角ポートと、前記凹部に連通するロックポートとが前記内部空間と外周とを結ぶ貫通孔として形成され、
前記連結ボルトの前記内部空間に前記回転軸芯に沿う方向に移動自在、
且つ、外端を前記ボルト頭部側から露出させるようにスプールを収容して弁ユニットが構成され、
前記スプールを前記回転軸芯に沿う方向に最も押し込んだ位置が前記ロックポートからの流体を排出する第1ロックポジションとして設定され、
前記弁ユニットは、前記スプールが前記回転軸芯を中心として流体が供給される内部流路を有し、
前記第1ロックポジションにおいて、前記ロックポートから流体を排出する
第1ロックドレン流路と、前記進角室または前記遅角室から流体を排出する位相制御ドレン流路とが
前記内部空間内の異なる流路として形成され
、
前記第1ロックドレン流路は、前記第1ロックポジションにおいて、前記ロックポートからの流体を、前記スプールの外周を通って前記スプールの前記外端から排出する点にある。
【0014】
この特徴構成によると、スプールがロックポートから流体を排出する
第1ロックポジションに設定された場合には、流体が
第1ロックドレン流路を介して排出される。この
第1ロックドレン流路は、進角室または遅角室からの流体を排出する位相制御ドレン流路とは異なる流路であるため、進角室または遅角室から排出される流体と合流することがなく
第1ロックドレン流路において抑制されることなく流体を排出できる。
従って、単一のスプールで流体を制御することにより位相回転位相の制御とロック機構の制御を行う構成でありながらロック機構のロック状態への移行を迅速確実に行える弁開閉時期制御装置が構成された。
また、連結ボルトが、ボルト頭部から内部に亘る内部空間を有し、位相制御ドレン流路が進角ポートまたは遅角ポートからの流体をボルト頭部に向けて排出できる。
更に、スプールを最も押し込んだ第1ロックポジションに設定した場合には、第1ロックドレン流路の流体を、スプールの外端から排出できる。
【0015】
他の構成として、
前記スプールが前記回転軸芯に沿う方向に押し込まれていない位置が前記ロックポートからの流体を排出する第2ロックポジションとして設定され、
前記第2ロックポジションにおいて、前記ロックポートから流体を排出する第2ロックドレン流路と、前記進角室または前記遅角室から流体を排出する位相制御ドレン流路とが前記内部空間内の異なる流路として形成され、
前記第2ロックドレン流路は、前記回転軸芯を中心として、前記位相制御ドレン流路と異なる位相で形成されても良い。
【0016】
これによると、
第2ロックポジションにおいても、第2ロックドレン流路と、位相制御ドレン流路とに流れる作動油が混じり合うことがなく、個別に排出することが可能となる。
【0017】
他の構成として、前記連結ボルトの内面と、前記スプールの外面との間にスリーブが配置され、前記ロックドレン流路および前記位相制御ドレン流路が前記連結ボルトの内面と前記スリーブの外面との境界に形成されても良い。
【0018】
これによると、例えば、連結ボルトの内面に溝を形成することや、スリーブの外面に溝を形成するだけでロックドレン流路および位相制御ドレン流路を形成することが可能となり、例えば、貫通孔でロックドレン流路や位相制御ドレン流路を形成するものと比較して弁開閉時期制御装置の製造が容易となる。
【0019】
他の構成として、前記進角室と前記進角ポートとの間に進角流路が形成され、前記遅角室と前記遅角ポートとの間に遅角流路が形成され、前記ロックポートと前記凹部との間にロック制御流路が形成され、前記ロック制御流路の流路断面積が、前記進角流路の流路断面積と前記遅角流路の流路断面積との何れよりも大きく設定されても良い。
【0020】
これによると、ロック制御流路の流路断面積が、進角流路と遅角流路との何れの流路の流路断面積より大きいため、ロック制御流路から流体が排出される際の流路抵抗を小さくしてロック状態への移行を一層迅速に行える。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
〔基本構成〕
図1、
図2に示すように、駆動側回転体としての外部ロータ20と、従動側回転体としての内部ロータ30と、作動流体としての作動油を制御する電磁制御弁Vとを備えて弁開閉時期制御装置Aが構成されている。
【0023】
この弁開閉時期制御装置Aは乗用車等の車両のエンジンE(内燃機関の一例)の吸気カムシャフト5の開閉タイミング(開閉時期)を設定するため吸気カムシャフト5の回転軸芯Xと同軸芯に備えられている。
【0024】
内部ロータ30(従動側回転体の一例)は、吸気カムシャフト5の回転軸芯Xと同軸芯に配置され、連結ボルト40で吸気カムシャフト5に連結することにより吸気カムシャフト5と一体回転する。外部ロータ20が内部ロータ30を内包しており、この外部ロータ20(駆動側回転体の一例)は、回転軸芯Xと同軸芯上に配置されエンジンEのクランクシャフト1と同期回転する。この構成から外部ロータ20と内部ロータ30とは相対回転自在となる。
【0025】
弁開閉時期制御装置Aは、外部ロータ20と内部ロータ30との相対回転位相を
図2に示す中間ロック位相Mに保持するロック機構Lを備えている。この中間ロック位相MはエンジンEの始動に適した開閉タイミングであり、エンジンEの停止制御時に中間ロック位相Mに移行する制御が行われる。
【0026】
電磁制御弁Vは、エンジンEに支持される電磁ユニットVaと弁ユニットVbとで構成されている。弁ユニットVbは、連結ボルト40と、この連結ボルト40の内部空間40Rに収容されるスプール55とを備えている。
【0027】
電磁ユニットVaは、ソレノイド部50と、回転軸芯Xと同軸芯に配置されソレノイド部50の駆動制御により出退作動するプランジャ51を備えている。弁ユニットVbは、作動油(作動流体の一例)の給排を制御するスプール55を回転軸芯Xと同軸芯に配置しており、プランジャ51の突出端がスプール55の外端に当接するように各々の位置関係が設定されている。
【0028】
電磁制御弁Vは、ソレノイド部50に供給する電力の制御によりプランジャ51の突出量を設定してスプール55を操作する。この操作により作動油の流れを制御して吸気バルブ5Vの開閉時期を設定し、ロック機構Lのロック状態への移行とロック状態の解除との切換を行う。この電磁制御弁Vの構成と作動油の制御形態は後述する。
【0029】
〔エンジンと弁開閉時期制御装置〕
図1に示すように、エンジンEは、上部位置のシリンダブロック2のシリンダボアにピストン3を収容し、このピストン3とクランクシャフト1とをコネクティングロッド4で連結した4サイクル型に構成されている。エンジンEの上部には吸気バルブ5Vを開閉作動させる吸気カムシャフト5と、図示されない排気カムシャフトとを備えている。
【0030】
吸気カムシャフト5を回転自在に支持するエンジン構成部材10にはエンジンEで駆動される油圧ポンプPからの作動油を供給する供給流路8が形成されている。油圧ポンプPは、エンジンEのオイルパンに貯留される潤滑油を、供給流路8を介して作動油(作動流体の一例)として弁ユニットVbに供給する。
【0031】
エンジンEのクランクシャフト1に形成した出力スプロケット6と、外部ロータ20のタイミングスプロケット21Sとに亘ってタイミングチェーン7が巻回されている。これにより外部ロータ20は、クランクシャフト1と同期回転する。尚、排気側の排気カムシャフトの前端にもスプロケットが備えられ、このスプロケットにもタイミングチェーン7が巻回されている。
【0032】
図2に示すように、クランクシャフト1からの駆動力により外部ロータ20が駆動回転方向Sに向けて回転する。内部ロータ30が外部ロータ20に対して駆動回転方向Sと同方向に相対回転する方向を進角方向Saと称し、この逆方向を遅角方向Sbと称する。この弁開閉時期制御装置Aでは、相対回転位相が進角方向Saに変位する際に変位量の増大に伴い吸気圧縮比を高め、相対回転位相が遅角方向Sbに変位する際に変位量の増大に伴い吸気圧縮比を低減するようにクランクシャフト1と吸気カムシャフト5との関係が設定されている。
【0033】
尚、この実施形態では、吸気カムシャフト5に備えた弁開閉時期制御装置Aを示しているが、弁開閉時期制御装置Aは排気カムシャフトに備えて良く、吸気カムシャフト5と排気カムシャフトとの双方に備えても良い。
【0034】
〔外部ロータ・内部ロータ〕
図1に示すように、外部ロータ20は、外部ロータ本体21と、フロントプレート22と、リヤプレート23とを有しており、これらが複数の締結ボルト24の締結により一体化されている。外部ロータ本体21の外周にはタイミングスプロケット21Sが形成されている。
【0035】
図2に示すように、外部ロータ本体21には径方向の内側に突出する複数の突出部21Tが一体的に形成されている。内部ロータ30は、外部ロータ本体21の突出部21Tに密接する円柱状の内部ロータ本体31と、外部ロータ本体21の内周面に接触するように内部ロータ本体31の外周から径方向の外方に突出する複数のベーン部32とを有している。
【0036】
このように外部ロータ20が内部ロータ30を内包し、回転方向で隣接する突出部21Tの中間位置で、内部ロータ本体31の外周側に複数の流体圧室Cが形成される。この流体圧室Cがベーン部32で仕切られることで進角室Caと遅角室Cbとが区画形成される。更に、内部ロータ本体31には、進角室Caに連通する進角流路33と遅角室Cbに連通する遅角流路34とが形成されている。
【0037】
図1、
図2に示すように、ロック機構Lは、外部ロータ20の2つの突出部21Tの各々に対し半径方向に出退自在に支持されるロック部材25と、ロック部材25を突出付勢するロックスプリング26と、内部ロータ本体31の外周に形成したロック凹部27とで構成されている。内部ロータ本体31には、ロック凹部27に連通するロック制御流路35が形成されている。
【0038】
このロック機構Lは、2つのロック部材25がロックスプリング26の付勢力で対応するロック凹部27に同時に係合することで相対回転位相を中間ロック位相Mに規制するように機能する。このロック状態においてロック制御流路35に作動油を供給することでロックスプリング26の付勢力に抗してロック部材25をロック凹部27から離脱させロック状態の解除が可能となる。これとは逆に、ロック制御流路35から作動油を排出することによりロックスプリング26の付勢力でロック部材25をロック凹部27に係合させロック状態への移行を可能にする。
【0039】
尚、ロック機構Lは単一のロック部材25を対応する単一のロック凹部27に係合するように構成されるものでも良い。また、ロック機構Lは、ロック部材25が回転軸芯Xに沿う方向に沿って移動するようにガイドされる構成のものでも良い。
【0040】
〔連結ボルト〕
図1、
図4、
図9に示すように連結ボルト40は、全体的に筒状となるボルト本体41と、外端部(
図4で左側)のボルト頭部42とが一体形成されている。連結ボルト40の内部には回転軸芯Xに沿う方向に貫通する内部空間40Rが形成され、ボルト本体41の内端部(
図4で右側)の外周に雄ネジ部41Sが形成されている。
【0041】
図1に示すように吸気カムシャフト5には回転軸芯Xを中心にするシャフト内空間5Rが形成され、このシャフト内空間5Rの内周に雌ネジ部5Sが形成されている。シャフト内空間5Rは、供給流路8と連通しており油圧ポンプPから作動油が供給される。
【0042】
この構成から、ボルト本体41を内部ロータ30に挿通し、その雄ネジ部41Sを吸気カムシャフト5の雌ネジ部5Sに螺合させ、ボルト頭部42の回転操作により内部ロータ30が吸気カムシャフト5に締結される。この締結により内部ロータ30が吸気カムシャフト5に締結固定され、シャフト内空間5Rと連結ボルト40の内部空間40R(厳密には流体供給管54の内部の空間)とが連通する。
【0043】
連結ボルト40の内部空間40Rの内周面のうち回転軸芯Xに沿う方向での外端側には回転軸芯Xに近接する方向に突出する壁部としての規制壁44が形成されている。また、連結ボルト40の内周で中間位置から先端に達する領域には複数(4つ)のドレン流路Dが回転軸芯Xに沿う姿勢で溝状に形成されている。これにより規制壁44のうち4つのドレン流路Dと重複する部位に係合凹部44Tが形成される。
【0044】
この構成では、後述するようにスプール55が第1進角ポジションPA1に設定された場合に遅角室Cbからの作動油と、ロック凹部27からの作動油とがドレン流路Dに流れるため、このスプール55が第1進角ポジションPA1に設定された場合だけドレン流路Dがロックドレン流路DLに共用される。
【0045】
ボルト本体41には、進角流路33に連通する進角ポート41aと、遅角流路34に連通する遅角ポート41bと、ロック制御流路35に連通するロックポート41cとが内部空間40Rと外周面とを結ぶ貫通孔として形成されている。
【0046】
規制壁44は、後述するスリーブ53の外端側の端部(
図4で左側の端部)が当接することでスリーブ53の位置を規制し、後述するスプール55のランド部55bが当接することにより突出側の位置を規制する。
【0047】
〔弁ユニット〕
図1、
図4、
図9に示すように弁ユニットVbは、連結ボルト40と、ボルト本体41の内周面に密着状態で嵌め込まれるスリーブ53と、回転軸芯Xと同軸芯で内部空間40Rに収容される流体供給管54と、スリーブ53の内周面と流体供給管54の管路部54Tの外周面に案内される状態で回転軸芯Xに沿う方向にスライド移動自在に配置されるスプール55とを備えている。
【0048】
また、弁ユニットVbは、スプール55を突出方向に付勢する付勢部材としてのスプールスプリング56と、逆止弁CVと、オイルフィルター59と、固定リング60を備えている。
【0049】
図9に示すように、逆止弁CVは等しい外径の金属板で形成される開口プレート57と弁プレート58とを備えている。開口プレート57の中央位置には回転軸芯Xを中心とする円形の開口部57aが穿設されている。弁プレート58は中央位置には前述した開口部57aより大径となる円形の弁体58aが配置され、外周に環状部58bが配置されると共に、弁体58aと環状部58bとを繋ぐバネ部58Sを備えている。
【0050】
逆止弁CVは、これより下流側の圧力が上昇した場合や、油圧ポンプPの吐出圧が低下した場合に、バネ部58Sの付勢力により弁体58aが開口プレート57に密着して開口部57aを閉じるように構成されている。
【0051】
オイルフィルター59は開口プレート57と弁プレート58と等しい外径で中央部が作動油の供給方向の上流側に膨らむ網状部材を有する濾過部を備えて構成されている。固定リング60は連結ボルト40の内周に圧入固定され、この固定リング60でオイルフィルター59と開口プレート57と弁プレート58との位置が決まる。
【0052】
〔弁ユニット:スリーブ〕
図1、
図4、
図9に示すようにスリーブ53は、回転軸芯Xを中心とする筒状であり、外端側(
図4、
図9で左側)に回転軸芯Xに沿う方向に突出する複数(2つ)の係合突起53Tを形成し、内端側(
図4で右側)を回転軸芯Xに直交する姿勢に屈曲させて端部壁53Wを絞り加工等により形成している。
【0053】
前述した規制壁44は環状の領域に形成されるものであるが、ドレン流路Dに対応する部位を切り欠くことで4箇所の係合凹部44Tが形成されている。
【0054】
また、スリーブ53には進角ポート41aを内部空間40Rに連通させる複数の進角連通孔53aと、遅角ポート41bに内部空間40Rを連通させる複数の遅角連通孔53bと、ロックポート41cを内部空間40Rに連通させる複数のロック連通孔53cとが形成されている。更に、スリーブ53のうち、内端側に第1ドレン孔53daが形成され、これより外端側に第2ドレン孔53dbが形成されている。
【0055】
進角連通孔53aと遅角連通孔53bとロック連通孔53cとは、回転軸芯Xを中心とする周方向の4箇所で、回転軸芯Xに沿う方向に並列して形成されている。また、第1ドレン孔53daと第2ドレン孔53dbとは、回転軸芯Xを中心とする周方向の4箇所で進角連通孔53aと遅角連通孔53bとロック連通孔53cとに対して異なる位相で形成されている。
【0056】
前述した係合突起53Tは、4箇所に形成される第1ドレン孔53daと第2ドレン孔53dbのうち回転軸芯Xを挟んで対向する位置の2箇所のものと同位相で回転軸芯Xに沿う方向での延長線上に配置されている。
【0057】
この構成から、係合突起53Tを規制壁44の係合凹部44Tに係合させ、規制壁44にスリーブ53の前端縁を当接させる状態でスリーブ53を嵌め込んでいる。
【0058】
そして、進角連通孔53aと進角ポート41aとが連通し、遅角連通孔53bと遅角ポート41bとが連通し、ロック連通孔53cがロックポート41cに連通する。更に、第1ドレン孔53daと第2ドレン孔53dbとがドレン流路Dに連通する。
【0059】
〔弁ユニット:流体供給管〕
図4、
図9に示すように流体供給管54は、内部空間40Rに嵌め込まれる基端部54Sおよび基端部54Sより小径の管路部54Tが一体形成され、この管路部54Tの先端部の外周で基端部54Sに近い位置に複数(3つ)の第1供給口54aが形成され、これより外端側に複数(3つ)の第2供給口54bが形成されている。
【0060】
基端部54Sは、回転軸芯Xを中心とする嵌合筒部54Saと、この嵌合筒部54Saから管路部54Tに亘る領域に形成され回転軸芯Xに直交する姿勢の中間壁54Sbとで構成されている。
【0061】
3つの第1供給口54aは周方向で幅広で、回転軸芯Xに沿う方向に伸びる長孔状であり、これに対応する位置においてスプール55に形成される4つの中間孔部55cは円形状である。このような構成から管路部54Tからの作動油を、中間孔部55cに対して確実に作動油を供給できる。
【0062】
第2供給口54bも第1供給口54aと同様に、回転軸芯Xに沿う方向に伸びる形状であり、これに対応する位置においてスプール55に形成される4つの端部孔部55dは円形である。このような構成から管路部54Tから端部孔部55dに対して確実に作動油を供給できる。
【0063】
〔弁ユニット:スプール・スプールスプリング〕
図4、
図9に示すようにスプール55は、筒状で外端側に当接面が形成されたスプール本体55aと、この外周に突出状態で形成された4つのランド部55bとが形成されている。また、スプール55の内部には内部流路が形成され、回転軸芯Xに沿う方向で内端側の一対のランド部55bの中間位置には内部流路に連通する複数の(4つの)中間孔部55cが形成され、回転軸芯Xに沿う方向での外端側の一対のランド部55bの中間位置には内部流路に連通する端部孔部55dが形成されている。
【0064】
スプール55のうち、当接面と反対側にはスプール55が押し込み方向に操作された際に、端部壁53Wに当接して作動限界を決める当接端部55rが形成されている。この当接端部55rは、スプール本体55aを延長した領域の端部に備えられるものであり、スプール55が過大な力で押し込み操作された場合でも、スプール55が作動限界を超えて作動する不都合を抑制する。なお、スプール55が押し込み方向に操作された際に作動限界を決めるものとして、スプール55が押し込み方向に操作された際にスプール55の外端側の内面(
図4の左側の内端)と、流体供給管54の突出側の端部(
図4の左側の外端)とが当接する構成を採用しても良い。
【0065】
スプールスプリング56は、圧縮コイル型であり内端側のランド部55bとスリーブ53の端部壁53Wとの間に配置されている。この付勢力の作用により、電磁ユニットVaのソレノイド部50に電力が供給されない場合には、スプール55は外端側のランド部55bが規制壁44に当接して
図4に示す第1進角ポジションPA1に維持される。
【0066】
この弁ユニットVbでは、スリーブ53の端部壁53Wと、流体供給管54の中間壁54Sbとが互いに当接するように位置関係が設定され、このように当接する端部壁53Wと中間壁54Sbとの平面精度を高くすることにより作動油の流れを阻止できるように構成されている。
【0067】
つまり、この構成では、流体供給管54の基端部54Sの位置が固定リング60によって固定されるため、この基端部54Sがリテーナとして機能する。また、スリーブ53の端部壁53Wにはスプールスプリング56の付勢力が作用するため、この端部壁53Wが基端部54Sの中間壁54Sbに対して圧接する。従って、スプールスプリング56の付勢力を利用して端部壁53Wを中間壁54Sbに密着させ、この部位での作動油のリークを抑制できるのである。
【0068】
〔弁ユニットの詳細〕
このような構成から、弁ユニットVbを組み立てる場合には、スリーブ53の内部にスプールスプリング56とスプール55とを挿入しておき、これらを連結ボルト40の内部空間40Rに挿入する。この挿入時にはスリーブ53の係合突起53Tが規制壁44の係合凹部44Tに係合することで連結ボルト40とスリーブ53との回転軸芯Xを中心にした相対的な回転姿勢が決まる。
【0069】
次に、流体供給管54の管路部54Tをスプール55のスプール本体55aの内周に挿入するように流体供給管54を配置する。これにより流体供給管54の基端部54Sが連結ボルト40の内部空間40Rの内周壁に嵌り込む位置関係となる。
【0070】
この位置関係において、逆止弁CVを構成する開口プレート57と弁プレート58とを重ね合わせ、オイルフィルター59を更に重ねるように内部空間40Rに配置し、固定リング60を内部空間40Rの内周に圧入固定する。
【0071】
このように固定リング60で固定することによりスリーブ53の外側の端部が規制壁44に当接する状態となり、回転軸芯Xに沿う方向での位置が決まる。尚、固定リング60に代えて、スナップリングを用いても良い。
【0072】
〔作動形態〕
この弁開閉時期制御装置Aでは電磁ユニットVaのソレノイド部50に電力が供給されない状態では、プランジャ51からスプール55に押圧力が作用することはなく、
図4に示すようにスプールスプリング56の付勢力により、その外側位置のランド部55bが規制壁44に当接する状態にスプール55の位置が維持される。
【0073】
このスプール55の位置が第1進角ポジションPA1であり、電磁ユニットVaのソレノイド部50に供給する電力を増大することにより、
図3に示すように、第2進角ポジションPA2と、中立ポジションPNと、第2遅角ポジションPB2と、第1遅角ポジションPB1とに、この順序で操作自在となる。つまり、電磁ユニットVaのソレノイド部50に供給する電力の設定により5つの操作ポジションの何れか1つの位置に操作できるように構成されている。
【0074】
また、この弁ユニットVbでは第1進角ポジションPA1と、第1遅角ポジションPB1とがロックポジションとしており、これらのロックポジションではロック機構Lのロック状態への移行を可能にする。尚、スプール55を第1遅角ポジションPB1に操作する場合にソレノイド部50に供給する電力が最大となる。
【0075】
第1進角ポジションPA1と第2進角ポジションPA2との何れかに操作された場合には、油圧ポンプPから供給される作動油がスプール55の中間孔部55cと進角連通孔53aとを介して進角ポート41aに送られ、更に進角流路33から進角室Caに供給される。これと同時に遅角室Cbの作動油が遅角流路34から遅角ポート41bに流れ第1ドレン孔53daからドレン流路Dに排出される。
【0076】
特に、第1進角ポジションPA1では、
図4に示すように、ロック凹部27の作動油がロック制御流路35からロックポート41cに流れ、第2ドレン孔53dbからドレン流路Dに排出される。つまり、第1ドレン孔53daより第2ドレン孔53dbの位置が下流側にあり、第2ドレン孔53dbが連結ボルト40の外端位置に近いため、ロック凹部27から作動油が排出されやすい。このような作動油の給排の結果、相対回転位相が進角方向Saに変位しつつ、中間ロック位相Mに達した時点でロック機構Lがロック状態に移行する。
【0077】
更に、第2進角ポジションPA2では、
図5に示すように、進角室Caへの作動油の供給と連係して作動油がロックポート41cからロック制御流路35を介してロック凹部27に流れ、ロック部材25に作動油の圧力を作用させるため、ロック機構Lのロックが解除された状態での進角方向Saへの作動が継続的に行われる。
【0078】
スプール55が中立ポジションPNに操作された場合には、
図6に示すように一対のランド部55bがスリーブ53の進角連通孔53aと遅角連通孔53bとを閉じる位置関係となり、進角室Caと遅角室Cbとに対する作動油の給排が遮断され相対回転位相が維持される。
【0079】
また、この中立ポジションPNでは、作動油がロックポート41cからロック制御流路35を介してロック凹部27に流れ、ロック部材25に作動油の圧力を作用させ、ロック機構Lのロックが解除される状態が継続される。
【0080】
第2遅角ポジションPB2と第1遅角ポジションPB1との何れかに操作された場合には、油圧ポンプPから供給される作動油がスプール55の中間孔部55cと遅角連通孔53bとを介して遅角ポート41bに送られ、更に遅角流路34から遅角室Cbに供給される。これと同時に進角室Caの作動油が進角流路33から進角ポート41aに流れ第2ドレン孔53dbからドレン流路Dに排出される。
【0081】
特に、第2遅角ポジションPB2では、
図7に示すように、遅角室Cbへの作動油の供給と連係して作動油がロックポート41cからロック制御流路35を介してロック凹部27に流れ、ロック部材25に作動油の圧力を作用させるため、ロック機構Lのロックが解除された状態での遅角方向Sbへの作動が継続的に行われる。
【0082】
更に、第1遅角ポジションPB1では、
図8に示すように、ロック凹部27の作動油がロック制御流路35からロックポート41cに流れ、スプール55の外端位置から連結ボルト40の外端側に直接的に排出される。このような作動油の給排の結果、相対回転位相が遅角方向Sbに変位しつつ、中間ロック位相Mに達した時点でロック機構Lがロック状態に移行する。
【0083】
特に、スプール55の外端位置から連結ボルト40の外端側に作動油を直接的に排出する領域がロックドレン流路DLであり、このロックドレン流路DLは、進角室Caから作動油が排出されるドレン流路Dと異なる領域に形成されているため、作動油が迅速に排出されロック機構Lを迅速にロック状態に移行する。
【0084】
〔実施形態の作用・効果〕
このようにスプール55の内部流路の作動油を進角室Caと遅角室Cbとロック凹部27とに供給し、各々からの作動油を単一のスプール55の操作で排出できるように構成しているため、弁開閉時期制御装置Aの小型化を可能にしている。
【0085】
また、流体供給管54に対して回転軸芯Xに沿って直線的に作動油を供給できるため、圧損が小さく進角室Caと遅角室Cbに対して圧力低下のない作動油を供給して応答性を高く維持する。この逆止弁CVの開口プレート57の開口部57aが回転軸芯Xと同軸芯に配置されているため、逆止弁CVが油路抵抗として作用することもない。
【0086】
スリーブ53に形成された第1ドレン孔53daあるいは第2ドレン孔53dbから排出された作動油を、スリーブ53の外面と連結ボルト40の内面との境界のドレン流路Dを介して連結ボルト40の頭部側から排出するため、ドレン流路の構成が簡素化し部品点数の増大や、加工行程の複雑化を招くことがない。
【0087】
特に、ドレン流路Dとは異なる流路としてロックドレン流路DLを形成しているため、ロック機構Lのロック状態を解除する場合には、ロック凹部27からの作動油を妨げられることなく排出し、作動油の温度が低く粘性が高い場合でもロック機構Lのロック状態への移行を迅速確実に行える。
【0088】
〔別実施形態〕
本発明は、上記した実施形態以外に以下のように構成しても良い(実施形態と同じ機能を有するものには、実施形態と共通の番号、符号を付している)。
【0089】
(a)
図10〜
図12に示すように、第2ドレン孔53dbを、回転軸芯Xを中心として進角連通孔53aと遅角連通孔53bと異なる位相にあり、また、第1ドレン孔53daに対しても異なる位相にあるようにスリーブ53に形成する。更に、この第2ドレン孔53dbが連通するように連結ボルト40の内周にロックドレン流路DLを溝状に形成する。
【0090】
この別実施形態(a)では、スリーブ53に対して一対の第1ドレン孔53daと一対の第2ドレン孔53dbとを形成しており、連結ボルト40の内周面には、一対の第1ドレン孔53daに連通する一対のドレン流路Dが形成されると共に、一対の第1ドレン孔53daに連通する一対のロックドレン流路DLが溝状に形成される。
【0091】
このようにドレン流路Dとロックドレン流路DLとが異なる位置に形成されるため、ドレン流路Dとロックドレン流路DLとに作動油が流れる場合に、作動油が混じり合うことがなく作動油を個別に排出することが可能となる。
【0092】
従って、
図10に示すようにスプール55が第1進角ポジションPA1にある場合には、ロック凹部27の作動油がロック制御流路35からロックポート41cに流れ、第2ドレン孔53dbからロックドレン流路DLに流れ、連結ボルト40の外端側に排出される。また、この別実施形態(a)の構成においても、スプール55が第1遅角ポジションPB1に操作された場合には、スプール55の外端位置からロックドレン流路DL(
図8を参照)を介して連結ボルト40の外端側に作動油を排出することも可能である。
【0093】
このため、例えば、スプール55が他の操作ポジションから第1進角ポジションPA1に操作された場合のように、遅角室Cbから作動油が排出される場合にも、この作動油の流れがロックポート41cから排出される作動の流れを抑制する不都合を解消してロック機構Lのロック状態への移行を迅速確実に行えることになる。
【0094】
別実施形態(a)の変形例として、ドレン流路Dとロックドレン流路DLと溝を深く形成することや、ドレン流路Dとロックドレン流路DLとの数を多くすることで流路断面積を拡大しても良い。
【0095】
また、別実施形態(a)の変形例として、ドレン流路Dとロックドレン流路DLとを形成する溝をスリーブ53の外周に形成しても良い。
【0096】
(b)
図13に示すように、進角流路33の流路断面積と遅角流路34の流路断面積との何れよりもロック制御流路35の流路断面積を大きく設定する。この別実施形態(b)では進角流路33の直径と遅角流路34の直径とをDM1としており、ロック制御流路35の直径をDM2として示しており、DM1<DM2となるように関係を設定する。
【0097】
つまり、孔状に形成される流路では、流路断面積が大きいほど流路抵抗を小さくするため、ロック制御流路35の流路断面積を大きくすることで作動油の排出を迅速に行わせロック機構Lのロック状態への移行を迅速確実に行わせるのである。尚、流路抵抗から考えると、進角流路33と遅角流路34とロック制御流路35との直径を拡大することが有効であるものの弁開閉時期制御装置Aの大型化を招くことになるため、流路の直径に差を作ることにより弁開閉時期制御装置Aの大型化を抑制している。
【0098】
(c)上述した実施形態では、スプール55が5つのポジションに操作できる構成であるが、例えば、第1進角ポジションPA1が存在しないように操作領域を設定することでスプール55を4つの操作ポジションに操作するように構成しても良い。
【0099】
尚、第1進角ポジションPA1を備えない4つの操作ポジションにスプール55を操作する構成では、中間ロック位相Mでロック状態に移行する場合には、相対回転位相を中間ロック位相Mより進角側にセットしておき、スプール55を第1遅角ポジションPB1に操作することにより相対回転位相を遅角方向Sbに変位しつつロック状態に移行する制御形態となる。
【0100】
(d)上述の実施形態と比較して、進角ポート41aと遅角ポート41bとの配置が逆になり、進角連通孔53aと遅角連通孔53bとの配置が逆になるように弁ユニットVbを構成しても良い。