(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
電気所の電気設備を操作するための制御回路に直流電源装置から直流母線を介して直流電源を供給する複数の直流電源供給回路のいずれかに地絡故障が発生したとき動作する直流地絡継電器をロックし、
前記直流電源装置に接続される正極のP電線と負極のN電線との間のPN電圧を測定し、
前記P電線または前記N電線への接続を切り換えて前記P電線または前記N電線のいずれかを接地し前記P電線または前記N電線に流れる電流を検出する検出回路ユニットを前記P電線と前記N電線との間に接続し、
前記検出回路ユニットに増幅器及び高感度直流電流クランプメータを接続すると共に高感度直流電流クランプメータにローパスフィルタを接続し、
前記高感度直流クランプメータのゼロ点調整を行い前記P電線または前記N電線のうち絶縁抵抗を測定する側の反対側の電線を前記検出回路ユニットにより接地し、
前記増幅器で増幅され前記高感度直流クランプメータで検出された前記P電線または前記N電線に流れる電流から前記ローパスフィルタで商用電源の周波数成分を除去した前記P電線または前記N電線に流れる直流分電流を測定し、
前記PN電圧及び前記ローパスフィルタで得られた前記P電線または前記N電線に流れる直流分電流に基づいて複数の直流電源供給回路の合成絶縁抵抗を求めることを特徴とする直流電源供給回路の絶縁抵抗測定方法。
電気所の電気設備を操作するための制御回路に直流電源装置から直流母線を介して直流電源を供給する複数の直流電源供給回路のいずれかに地絡故障が発生したとき動作する直流地絡継電器をロックし、
前記直流電源装置に接続される正極のP電線と負極のN電線との間のPN電圧を測定すると共に前記P電線と大地との間のPE電圧及び前記N電線と大地との間のNE電圧を測定し、
前記PE電圧及び前記NE電圧に基づいて前記直流地絡継電器がロックされていることを確認し、
前記P電線または前記N電線への接続を切り換えて前記P電線または前記N電線のいずれかを接地し前記P電線または前記N電線に流れる電流を検出する検出回路ユニットを前記P電線と前記N電線との間に接続し、
前記検出回路ユニットに増幅器及び高感度直流電流クランプメータを接続すると共に高感度直流電流クランプメータにローパスフィルタを接続し、
前記高感度直流クランプメータのゼロ点調整を行い前記P電線または前記N電線のうち絶縁抵抗を測定する側の反対側の電線を前記検出回路ユニットにより接地し、
前記増幅器で増幅され前記高感度直流クランプメータで検出された前記P電線または前記N電線に流れる電流から前記ローパスフィルタで商用電源の周波数成分を除去した前記P電線または前記N電線に流れる直流分電流を測定し、
前記PN電圧及び前記ローパスフィルタで得られた前記P電線または前記N電線に流れる直流分電流に基づいて複数の直流電源供給回路の合成絶縁抵抗を求めることを特徴とする直流電源供給回路の絶縁抵抗測定方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、定期点検の都度、絶縁抵抗計にて絶縁抵抗値を測定する方法では、電気設備の充電を停止する必要があり、停止した電気設備のみの絶縁抵抗値しか測定ができない。また、絶縁抵抗値の測定機会が定期点検の周期であるという制約があるため、周辺環境の変化、例えば気象条件を考慮した絶縁抵抗値の傾向を把握するのが難しい。
【0008】
また、特許文献1のものでは、直流回路から直流電力の供給を受ける電力機器の運転を停止させることなく、活線状態で直流回路の正極側及び負極側の対地絶縁抵抗値を簡単に計測でき、絶縁抵抗値の傾向を把握できるが、絶縁抵抗の測定精度の向上が見込めない。絶縁抵抗に流れる電流は微少であり、漏洩電流を検出する漏洩電流計測手段(デジタルメータリレー)の測定精度に限界があるからである。また、直流地絡継電器は、直流回路の直流母線の正極と負極とを抵抗分圧した分圧回路に設けられ、分圧回路の分圧中点は抵抗を介して接地されているので、その接地点に漏洩電流が流れ込み、絶縁抵抗と対大地間との漏洩電流の測定精度が落ちる。
【0009】
本発明の目的は、電気所の電気設備を操作するための制御回路に直流電源を供給する複数の直流電源供給回路の合成絶縁抵抗を精度よく求めることできる直流電源供給回路の絶縁抵抗測定方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の発明に係る直流電源供給回路の絶縁抵抗測定方法は、電気所の電気設備を操作するための制御回路に直流電源装置から直流母線を介して直流電源を供給する複数の直流電源供給回路のいずれかに地絡故障が発生したとき動作する直流地絡継電器をロックし、前記直流電源装置に接続される正極のP電線と負極のN電線との間のPN電圧を測定し、前記P電線または前記N電線への接続を切り換えて前記P電線または前記N電線のいずれかを接地し前記P電線または前記N電線に流れる電流を検出する検出回路ユニットを前記P電線と前記N電線との間に接続し、前記検出回路ユニットに増幅器及び高感度直流電流クランプメータを接続すると共に高感度直流電流クランプメータにローパスフィルタを接続し、前記高感度直流クランプメータのゼロ点調整を行い前記P電線または前記N電線のうち絶縁抵抗を測定する側の反対側の電線を前記検出回路ユニットにより接地し、前記増幅器で増幅され前記高感度直流クランプメータで検出された前記P電線または前記N電線に流れる電流から前記ローパスフィルタで商用電源の周波数成分を除去した前記P電線または前記N電線に流れる直流分電流を測定し、前記PN電圧及び前記ローパスフィルタで得られた前記P電線または前記N電線に流れる直流分電流に基づいて複数の直流電源供給回路の合成絶縁抵抗を求めることを特徴とする。
【0011】
請求項2の発明に係る直流電源供給回路の絶縁抵抗測定方法は、電気所の電気設備を操作するための制御回路に直流電源装置から直流母線を介して直流電源を供給する複数の直流電源供給回路のいずれかに地絡故障が発生したとき動作する直流地絡継電器をロックし、前記直流電源装置に接続される正極のP電線と負極のN電線との間のPN電圧を測定すると共に前記P電線と大地との間のPE電圧及び前記N電線と大地との間のNE電圧を測定し、前記PE電圧及び前記NE電圧に基づいて前記直流地絡継電器がロックされていることを確認し、前記P電線または前記N電線への接続を切り換えて前記P電線または前記N電線のいずれかを接地し前記P電線または前記N電線に流れる電流を検出する検出回路ユニットを前記P電線と前記N電線との間に接続し、前記検出回路ユニットに増幅器及び高感度直流電流クランプメータを接続すると共に高感度直流電流クランプメータにローパスフィルタを接続し、前記高感度直流クランプメータのゼロ点調整を行い前記P電線または前記N電線のうち絶縁抵抗を測定する側の反対側の電線を前記検出回路ユニットにより接地し、前記増幅器で増幅され前記高感度直流クランプメータで検出された前記P電線または前記N電線に流れる電流から前記ローパスフィルタで商用電源の周波数成分を除去した前記P電線または前記N電線に流れる直流分電流を測定し、前記PN電圧及び前記ローパスフィルタで得られた前記P電線または前記N電線に流れる直流分電流に基づいて複数の直流電源供給回路の合成絶縁抵抗を求めることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明によれば、絶縁抵抗の測定の際には直流地絡継電器をロックし、直流地絡継電器の分圧回路の分圧中点の接地点に漏洩電流が流れ込むのを防止するので、絶縁抵抗に流れる漏洩電流の検出精度が向上する。また、検出回路ユニットに増幅器を接続して漏洩電流を増幅し、漏洩電流を検出する直流電流クランプメータとして高感度直流電流クランプメータを使用するので、絶縁抵抗に流れる漏洩電流の検出精度が向上する。さらには、高感度直流電流クランプメータにローパスフィルタを接続するので、P電線またはN電線に流れる漏洩電流に重畳する商用電源の周波数成分を除去でき、漏洩電流の直流分成分だけを抽出できる。そして、検出したPN電圧及びローパスフィルタで得られたP電線またはN電線に流れる電流に基づいて複数の直流電源供給回路の合成絶縁抵抗を求めるので、測定精度の良い絶縁抵抗を得ることができる。
【0013】
請求項2の発明によれば、請求項1の発明の効果に加え、PE電圧及びNE電圧に基づいて直流地絡継電器がロックされていることを確認するので、直流地絡継電器の分圧回路の分圧中点に漏洩電流が流れ込む状態で絶縁抵抗の測定を行うことがなくなる。従って、絶縁抵抗の測定精度が高まる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を説明する。
図1は本発明の第1実施形態に係る直流電源供給回路の絶縁抵抗測定方法の工程を示すフローチャートである。また、
図2は本発明の直流電源供給回路の絶縁抵抗測定方法が適用される電気所の電気設備の直流回路の概略構成を示すブロック図、
図3は本発明の直流電源供給回路の絶縁抵抗測定方法が適用される電気所の電気設備の直流回路の等価回路図である。
【0016】
図2において、電気所の電気設備の直流回路は、直流電源装置11が直流母線12を介して複数の直流電源供給回路13に接続され、複数の直流電源供給回路13から電気所の電気設備を操作するための制御回路に直流電源装置11からの直流電源を供給する。
図2では、複数の直流電源供給回路13として3個の直流電源供給回路13を示している。直流母線12には、いずれかの直流電源供給回路13に地絡故障が発生したことを検出するための直流地絡継電器14が設置されている。
【0017】
図3において、
図2に示した複数の直流電源供給回路13を並列接続して形成された回路を1つの直流電源供給回路13として等価回路で示している。すなわち、等価回路は直流母線12に1つの直流電源供給回路13が接続された構成となっている。直流電源装置11は、直流母線12の正極のP電線15と負極のN電線16との間に接続され、直流母線12には直流地絡継電器14が接続されている。直流地絡継電器14は、直流回路の直流母線12の正極と負極とを抵抗分圧した分圧回路17に設けられ、分圧回路17の分圧中点は抵抗及び開閉スイッチ18を介して接地されている。
【0018】
図3では、直流母線12に1つの直流電源供給回路13が接続された構成となっていることから、正極のP電線15の絶縁抵抗RPは複数の直流電源供給回路13の正極側の合成絶縁抵抗であり、負極のN電線16の絶縁抵抗RNは複数の直流電源供給回路13の負極側の合成絶縁抵抗である。また、P電線15は対地静電容量CPを有しN電線16は対地静電容量CNを有する。また、P電線15にはP電線15に接続するためのP端子19が設けられ、N電線16にはN電線16に接続するためのN端子20が設けられている。さらに、大地に接地するためのE端子21が用意されている。
【0019】
これらP端子19、N端子20及びE端子21は、電気所の電気設備の直流給回路の作業用分電盤や直流母線12などに設けられている。正極のP電線15の絶縁抵抗RPを求めるにあたっては、N端子20とE端子21とを接続してN線路を接地して、直流電源装置11から絶縁抵抗RPに流れる漏洩電流を測定し、直流電源装置11のPN電圧と絶縁抵抗RPを流れる漏洩電流とから絶縁抵抗RPを求めることになる。同様に、負極のN電線16の絶縁抵抗RNを求めるにあたっては、P端子19とE端子21とを接続してP線路を接地して、直流電源装置11から絶縁抵抗RNに流れる漏洩電流を測定し、直流電源装置11のPN電圧と絶縁抵抗RNを流れる漏洩電流とから絶縁抵抗RNを求めることになる。これにより、直流回路が活線状態であっても絶縁抵抗RPまたは絶縁抵抗RNを測定できる。つまり、電気設備の充電を停止しなくても直流回路の絶縁抵抗の測定ができる。
【0020】
このように、絶縁抵抗RPまたは絶縁抵抗RNを求めるにあたってはE端子21を接地することになるから、もし、漏洩電流が大きい場合には直流電源供給回路を通して制御回路に漏洩電流が流れ込むことになり、制御回路内に電気所の電気機器を操作するリレーが接地して接続されている場合には、そのリレーを誤動作させる可能性がある。
【0021】
そこで、後述のように、P電線15またはN電線16への接続を切り換えてP電線15またはN電線16のいずれかを接地し、P電線15またはN電線16に流れる電流を検出するための検出回路ユニット内に、E端子21に流れる電流を所定値以下に制限する限流抵抗rを設ける。これにより、E端子21に流れる漏洩電流の大きさは制御回路が誤動作しない程度の大きさに制限される。
【0022】
図1において、
図3に示す直流回路の絶縁抵抗RPまたは絶縁抵抗NPを測定するにあたっては、まず、直流地絡継電器をロックする(S1)。直流地絡継電器14をロックするのは以下の理由による。
図3に示すように、直流地絡継電器14は、直流回路の直流母線12の正極と負極とを抵抗分圧した分圧回路15に設けられ、直流回路が活線状態では、分圧回路15の分圧中点は開閉スイッチ18はオンしており接地されている。開閉スイッチ18がオンしていると分圧回路15の分圧中点は接地された状態であるので、その接地点に漏洩電流が流れ込み、漏洩電流は絶縁抵抗RPまたは絶縁抵抗NPと対大地間の漏洩電流だけではなくなり、絶縁抵抗RPまたは絶縁抵抗NPを測定するのに適した漏洩電流を検出することができなくなるからである。そこで、開閉スイッチ18をオフとし直流地絡継電器14をロックする。
【0023】
次に、
図1において、直流電源装置に接続される正極のP電線と負極のN電線との間のPN電圧を測定する(S2)。
図3のP端子19とN端子20との間に電圧測定器を接続してPN電圧を測定する。そして、検出回路ユニットをP電線とN電線との間に接続し(S3)、検出回路ユニットに増幅器及び高感度直流電流クランプメータを接続すると共に高感度直流電流クランプメータにローパスフィルタを接続する(S4)。
【0024】
図4は、
図3の等価回路に、検出回路ユニット、増幅器、高感度直流電流クランプメータ、ローパスフィルタを接続した状態を示す回路図である。
図4において、検出回路ユニット22は、P電線15またはN電線16への接続を切り換えてP電線15またはN電線16のいずれかを接地し、P電線15またはN電線16に流れる電流を検出するものである。すなわち、検出回路ユニット22は、P電線15のP端子19及びN電線16のN端子20の間に接続され、また大地に接地するためのE端子21に接続される。E端子21には、前述したように制限抵抗rが接続される。また、検出回路ユニット22は切換スイッチ23を有し、切換スイッチ23によりP電線15またはN電線16への接続を切り換えてP電線15またはN電線16のいずれかを接地する。
【0025】
増幅器24は、直流電源装置11からP電線15またはN電線16を通って大地に接地するためのE端子21に流れる電流を増幅するものである。増幅器24は巻線で構成され巻線の巻数nに比例して電流を増幅する。直流電源装置11からP電線15を通ってE端子21に流れる電流は絶縁抵抗RN及び対地静電容量CNに流れる漏洩電流であり、直流電源装置11からN電線16を通ってE端子21に流れる電流は絶縁抵抗RP及び対地静電容量CPに流れる漏洩電流である。
【0026】
増幅器24で増幅された漏洩電流は、高感度直流電流クランプメータ25に入力される。高感度直流電流クランプメータ25としては、市販のもの(共立電気計器株式会社製、CDミリアンペアクランプメータ、KEW2500、測定範囲10μ〜120mA)を採用する。高感度直流電流クランプメータ25で測定された漏洩電流は、商用電源の周波数成分を除去するためのローパスフィルタ26を介して電流測定器27に出力される。
【0027】
図1のステップS3において、検出回路ユニット22をP電線15とN電線16との間に接続し、
図1のステップS4において、検出回路ユニット22に増幅器24及び高感度直流電流クランプメータ25を接続すると共にローパスフィルタ26を接続した後に、高感度直流クランプメータのゼロ点調整を行いP電線またはN電線のうち絶縁抵抗を測定する側の反対側の電線を検出回路ユニットにより接地する(S5)。
【0028】
ここで高感度直流電流クランプメータ25は測定精度を安定させるために事前に電源を入れておくことが望ましい。そこで、
図1のステップS4の段階で、つまり、増幅器24に高感度直流電流クランプメータ25を設置する段階で高感度直流電流クランプメータ25の電源を入れておく。
【0029】
図5は、
図4の回路において負極のN電線の絶縁抵抗RNを求める場合の回路図である。負極のN電線16の絶縁抵抗RNを求めるにあたっては、絶縁抵抗RNを測定する側の反対側のP電線15を接地する。すなわち、切換スイッチ23をP端子19に接続し、P端子19とE端子21とを接続してP線路15を接地する。これにより、
図5の点線で示すように、直流電源装置11→P電線15→P端子19→切換スイッチ23→E端子21→大地→絶縁抵抗RNと対地静電容量CNとの並列回路→直流電源装置11の回路が形成される。
【0030】
図6は、
図4の回路において正極のP電線の絶縁抵抗RPを求める場合の回路図である。正極のP電線15の絶縁抵抗RPを求めるにあたっては、絶縁抵抗RPを測定する側の反対側のN電線16を接地する。すなわち、切換スイッチ23をN端子19に接続し、N端子20とE端子21とを接続してN線路16を接地する。これにより、
図6の点線で示すように、直流電源装置11→P電線15→絶縁抵抗RPと対地静電容量CPとの並列回路→大地→E端子21→切換スイッチ23→N端子20→直流電源装置11の回路が形成される。
【0031】
ここで、高感度直流電流クランプメータ24のゼロ点調整を行うのは、高感度直流電流クランプメータ24は2次側に交流バイアスを流して直流の電流を検出するものであることから、ゼロ点オフセットを補正するために測定の度にゼロ点調整を必要とするからである。
【0032】
図1のステップS5において、高感度直流クランプメータのゼロ点調整を行い、P電線またはN電線のうち絶縁抵抗を測定する側の反対側の電線を検出回路ユニットにより接地した後に、増幅器で増幅され高感度直流クランプメータで検出されたP電線またはN電線に流れる電流からローパスフィルタで商用電源の周波数成分を除去したP電線または前記N電線に流れる直流分電流を測定する(S6)。
【0033】
図5、
図6において、増幅器24は、直流電源装置11からP電線15またはN電線16を通って大地に接地するためのE端子21に流れる電流を増幅する。これは、P電線15の絶縁抵抗RPまたはN電線16の絶縁抵抗RNに流れる漏洩電流の検出精度を向上させるためである。前述したように、本発明の実施形態で使用する高感度直流クランプメータ25の測定範囲は10μ〜120mAであり、測定範囲は高感度ではあるが、増幅器24を設けて、さらに検出精度を高めている。すなわち、P電線15の絶縁抵抗RPまたはN電線16の絶縁抵抗RNの健全な抵抗値は、15〜20MΩであり、直流電源装置11のPN電圧は通常110Vである。従って、健全な絶縁抵抗RPまたは絶縁抵抗RNに流れる電流は5.5μ〜7.3μAであり、高感度直流クランプメータ25の測定範囲10μ〜120mAより小さい値であるから、これに対応できるようにするためである。
【0034】
増幅器24は巻線で構成され巻線の巻数nに比例して電流を増幅するので、本発明の実施形態では、例えば巻数nを100として100倍の検出精度とする。これにより、増幅器24及び高感度直流電流クランプメータ25により、0.1μ〜1.2mAの漏洩電流が測定できることになる。
【0035】
高感度直流電流クランプメータ25で測定された漏洩電流には、P電線15が対地静電容量CPを有し、N電線16が対地静電容量CNを有することから、P電線15を接地したときは対地静電容量CNに流れる過渡電流が含まれ、同様に、N電線16を接地したときは対地静電容量CPに流れる過渡電流が含まれる。そこで、この過渡電流が流れなくなった後の安定した電流を測定対象とする。
【0036】
高感度直流電流クランプメータ25で測定された漏洩電流は、ローパスフィルタ26を介して電流測定器27に出力される。ローパスフィルタ26は、P電線15またはN電線16に重畳する商用電源の周波数成分の電流を除去するものである。
図7は、高感度直流電流クランプメータ25で測定された漏洩電流の一例を示す波形図である。
図7では、対地静電容量CPや対地静電容量CNに流れる過渡電流の図示は省略している。
図7に示すように、高感度直流電流クランプメータ25で測定された漏洩電流には、P電線15またはN電線16に商用電源の周波数成分の電流が重畳しているので、ローパスフィルタ26で商用電源の周波数成分の電流を除去する。
図8はローパスフィルタ26で商用電源の周波数成分の電流を除去した後の漏洩電流の一例を示す波形図である。このローパスフィルタ26で得られたP電線15またはN電線16に流れる直流分電流は電流測定器17に入力され、電流測定器17でP電線15またはN電線16に流れる直流分電流の電流が測定される。この電流は、絶縁抵抗RPまたは絶縁抵抗RNに流れる漏洩電流である。
【0037】
図1のステップS6において、増幅器で増幅され高感度直流クランプメータで検出されたP電線またはN電線に流れる電流からローパスフィルタで商用電源の周波数成分を除去したP電線または前記N電線に流れる直流分電流を測定した後に、PN電圧及びローパスフィルタで得られたP電線またはN電線に流れる直流分電流に基づいて複数の直流電源供給回路の合成絶縁抵抗を求める(S7)。
【0038】
PN電圧は、ステップS2において求められ、P電線に流れる直流分電流またはN電線に流れる直流分電流はステップS7で求められていることから、絶縁抵抗RPは、絶縁抵抗RP=PN電圧/P電線に流れる直流分電流、絶縁抵抗RNは、絶縁抵抗RN=PN電圧/N電線に流れる直流分電流で求めることができる。
【0039】
図9は、本発明の実施形態で測定した絶縁抵抗の誤差率を示すグラフである。いま、本発明の実施形態で測定した絶縁抵抗をR1、絶縁抵抗計で測定した絶縁抵抗をR0とすると、誤差率は、(絶縁抵抗R1−絶縁抵抗R0)/絶縁抵抗R0で示される。
図9から分かるように、100MΩ以下では誤差率5%以下であり、40MΩ以下では誤差率2〜3%以下である。絶縁抵抗が大きくなる程、つまり漏洩電流が小さくなる程、誤差率は大きくなる傾向にあるが、前述したように、P電線15の絶縁抵抗RPまたはN電線16の絶縁抵抗RNの健全な抵抗値は15〜20MΩであるので、実用上は高精度で絶縁抵抗が測定できることが分かる。
【0040】
第1実施形態によれば、P電線15の絶縁抵抗RPまたはN電線16の絶縁抵抗RNを求めるにあたっては、E端子21を接地し、直流電源装置11から絶縁抵抗RPまたは絶縁抵抗RNに流れる漏洩電流を計測して絶縁抵抗RPまたはN電線16の絶縁抵抗RNを求めるので、電気設備の使用中に絶縁抵抗の測定ができ、短時間で電気設備の直流回路のすべての合成絶縁抵抗を測定することができる。また、絶縁抵抗の測定機会に制約がないので、測定回数を増やすことにより絶縁抵抗の劣化傾向の把握が容易になる。
【0041】
そして、絶縁抵抗RPまたは絶縁抵抗RNの測定の際には直流地絡継電器14をロックし、直流地絡継電器14の分圧回路17の分圧中点の接地点に漏洩電流が流れ込むのを防止するので、絶縁抵抗RPまたは絶縁抵抗RNに流れる漏洩電流の検出精度が向上する。また、検出回路ユニット22に増幅器24を接続して漏洩電流を増幅し、漏洩電流を検出する直流電流クランプメータとして高感度直流電流クランプメータ25を使用するので、健全な絶縁抵抗RPまたは絶縁抵抗RNに流れる微少な漏洩電流であっても検出できる。
【0042】
さらには、高感度直流電流クランプメータ25の後段にローパスフィルタ26を接続するので、P電線またはN電線に流れる漏洩電流に重畳する商用電源の周波数成分を除去でき、絶縁抵抗に流れる漏洩電流の直流分成分だけを抽出できる。そして、検出したPN電圧及びローパスフィルタで得られたP電線またはN電線に流れる電流に基づいて複数の直流電源供給回路の合成絶縁抵抗を求めるので、測定精度の良い絶縁抵抗を得ることができる。
【0043】
次に、本発明の第2実施形態を説明する。
図10は本発明の第2実施形態に係る直流電源供給回路の絶縁抵抗測定方法の工程を示すフローチャートである。この第2実施形態は、
図1に示した第1実施形態に対し、ステップS2に代えて、ステップS2A、ステップS2Bを設けたものである。すなわち、直流電源装置に接続される正極のP電線と負極のN電線との間のPN電圧を測定することに加え、P電線と大地との間のPE電圧及びN電線と大地との間のNE電圧を測定し(S2A)、PE電圧及びNE電圧に基づいて直流地絡継電器がロックされていることを確認する(S2B)ようにしたものである。
図1と同一ステップには同一符号を付し重複する説明は省略する。
【0044】
まず、
図1に示した第1実施形態と同様に、直流地絡継電器をロックする(S1)。分圧回路15の開閉スイッチ18をオフし直流地絡継電器14をロックするのは、分圧回路15の接地点に漏洩電流が流れ込むのを防止し、絶縁抵抗RPまたは絶縁抵抗NPを測定するのに適した漏洩電流を得るためである。
【0045】
次に、直流電源装置に接続される正極のP電線と負極のN電線との間のPN電圧を測定すると共にP電線と大地との間のPE電圧及び前記N電線と大地との間のNE電圧を測定する(S2A)。PN電圧の測定はP端子19とN端子20との間に電圧測定器を接続して測定する。PE電圧の測定はP端子19とE端子21との間に電圧測定器を接続して測定し、同様に、NE電圧の測定はN端子20とE端子21との間に電圧測定器を接続して測定する。
【0046】
そして、PE電圧及びNE電圧に基づいて直流地絡継電器がロックされていることを確認する(S2B)。
図3において、直流地絡継電器14がロックされていないとき(開閉スイッチ18がオンのとき)は、前述したように、直流電源装置11のPN電圧は通常110Vであることから、PE電圧及びNE電圧は55Vで平衡する。これは、分圧回路15の中点で抵抗分圧されその中点が接地された状態であるからである。一方、直流地絡継電器14がロックされているとき(開閉スイッチ18がオフのとき)は、PE電圧及びNE電圧は55Vから所定の時定数で0Vに変化する。これは、
図3において、PE電圧及びNE電圧の初期値は55Vであるが、分圧回路15の中点が開放された状態となったことに伴い、P電線15の対地静電容量CPまたはN電線16の対地静電容量CNにチャージされた電荷が放電されるからである。
【0047】
そこで、PE電圧及びNE電圧は55Vでほぼ平衡しているときは、直流地絡継電器14はロックされていないと判断し、PE電圧及びNE電圧が55Vから0Vに減少しているときは、直流地絡継電器14はロックされていると判断する。直流地絡継電器14はロックされていないときは、ステップS1に戻り、直流地絡継電器14をロックする。直流地絡継電器14はロックされているときは、
図1に示した第1実施形態と同様に、ステップS3〜ステップS7の処理を行う。
【0048】
本発明の第2実施形態によれば、実施形態1の効果に加え、PE電圧及びNE電圧に基づいて直流地絡継電器14がロックされていることを確認するので、直流地絡継電器14の分圧回路の分圧中点に漏洩電流が流れ込む状態で絶縁抵抗の測定を行うことがなくなる。従って、絶縁抵抗の測定精度が高まる。
【0049】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。