(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記流量演算式は、予め設定された定数、前記第1パラメータ、前記第2パラメータ、前記第3パラメータ、前記第4パラメータの平方根、及び前記圧力センサの検出結果の平方根を乗算する式である、請求項1記載の流量測定装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、差圧式の流量測定装置は、上述の通り、プライマリエレメントの上流側と下流側との間に生ずる圧力差を流量に変換することで流体の流量を測定するものであることから、上記の圧力差を流量に変換するための流量変換式が必要である。この流量変換式は、プライマリエレメントの種類や開発元のメーカーによって異なるため、新たにプライマリエレメントが規格化された場合、或いは新たにプライマリエレメントが開発された場合には、新たなプライマリエレメントに適した流量演算式を新たに実装する必要がある。尚、流量演算式は、例えば流量測定装置で用いられるファームウェアに実装される。
【0006】
しかしながら、新たなプライマリエレメントの規格化等が行われる度に、新たなプライマリエレメントに適した流量演算式を規定して流量測定装置のファームウェアに実装するのは煩雑であるという問題がある。また、例えば故障等によって流量測定装置を交換する必要が生じた場合には、流路に設けられたプライマリエレメントに適した流量演算式が実装されている新たな流量測定装置を用意する必要があり、極めて面倒な作業を強いられるという問題も考えられる。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、流量演算式を変更することなく種々のプライマリエレメントに対応可能な流量測定装置、設定装置、及び設定プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の流量測定装置は、流体(FL)の流路(PP)に設けられたプライマリエレメント(PE)の上流側と下流側との間に生ずる圧力差を流量に変換することで流体の流量を測定する流量測定装置(1)において、前記プライマリエレメントの種類に応じて設定される流量係数、気体の膨張補正係数、及び形状係数と、前記プライマリエレメントの上流側と下流側との間に生ずる圧力差及び前記プライマリエレメントの上流側及び下流側の何れか一方の圧力と真空圧力との圧力差を検出する圧力センサ(SN1、SN2、SN10)の検出結果を用いて、流量を算出するために必要なパラメータ群を求める処理を行う要素別処理部(13a)と、前記要素別処理部で求められる前記パラメータ群を要素とする流量演算式に基づいた演算を行って前記流体の流量を求める処理を行う統合処理部(13c)と、を備える。
また、本発明の流量測定装置は、前記要素別処理部が、前記流量係数を用いて第1パラメータを得る処理、前記気体の膨張補正係数と前記圧力センサの検出結果とを用いて第2パラメータを得る処理、及び前記形状係数を用いて第3パラメータを得る処理を行い、前記流量演算式が、前記第1パラメータ、前記第2パラメータ、及び前記第3パラメータを乗算する乗算式を含む。
また、本発明の流量測定装置は、予め前記プライマリエレメントの種類毎に設定された流体密度に係る係数のうち、前記プライマリエレメントの種類に応じた係数を求める処理を行うエレメント別処理部(13b)を更に備えており、前記要素別処理部が、前記エレメント別処理部で求められた係数を用いて第4パラメータを得る処理を行い、前記流量演算式は、前記乗算式に対して前記第4パラメータの平方根を乗算する式を含む。
また、本発明の流量測定装置は、前記流量演算式が、予め設定された定数、前記第1パラメータ、前記第2パラメータ、前記第3パラメータ、前記第4パラメータの平方根、及び前記圧力センサの検出結果の平方根を乗算する式である。
また、本発明の流量測定装置は、外部と通信を行う通信部(15)を更に備えており、前記流量係数、前記気体の膨張補正係数、及び前記形状係数が、前記通信部を介して外部から設定される。
本発明の設定装置は、上記の流量測定装置に対する設定を行う設定装置(2)であって、前記プライマリエレメントの種類毎の前記流量係数、前記気体の膨張補正係数、及び前記形状係数を格納する格納部(23)と、前記プライマリエレメントの種類を特定する特定部(21)と、前記特定部で特定された種類に応じた前記流量係数、前記気体の膨張補正係数、及び前記形状係数を前記格納部から読み出して前記流量測定装置に設定する処理を行う処理部(24)と、を備える。
本発明の設定プログラムは、コンピュータを、上記の流量測定装置に対する設定を行う設定装置として機能させる設定プログラムであって、前記コンピュータを、前記プライマリエレメントの種類毎の前記流量係数、前記気体の膨張補正係数、及び前記形状係数を格納する格納手段(23)と、前記プライマリエレメントの種類を特定する特定手段(21)と、前記特定手段で特定された種類に応じた前記流量係数、前記気体の膨張補正係数、及び前記形状係数を前記格納手段から読み出して前記流量測定装置に設定する処理を行う処理手段(24)と、して機能させる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、流体の流路に設けられたプライマリエレメントの種類に応じて設定される流量係数、気体の膨張補正係数、及び形状係数と、圧力センサの検出結果とを用いて、流量を算出するために必要なパラメータ群を求める処理を行い、求められるパラメータ群を要素とする流量演算式に基づいた演算を行って流体の流量を求める処理を行うようにしている。このため、流量演算式を変更することなく種々のプライマリエレメントに対応可能であるという効果がある。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態による流量測定装置、設定装置、及び設定プログラムについて詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態による流量測定装置及び設定装置を示す図である。
図1に示す通り、本実施形態の流量測定装置1は、本実施形態の設定装置2と接続されて、設定装置2との間で各種データの送受信が可能である。尚、流量測定装置1と設定装置2との接続形態は任意であり、例えば有線接続であっても良く、無線接続であっても良い。以下、これら流量測定装置1及び設定装置2について順に説明する。
【0012】
〈流量測定装置〉
図2は、本発明の一実施形態による流量測定装置の要部構成を示すブロック図である。
図2に示す通り、流量測定装置1は、A/D変換部11a〜11c、圧力演算部12、流量演算部13、出力部14、及び通信部15を備えており、差圧センサSN1(圧力センサ)、静圧センサSN2(圧力センサ)、及び温度センサSN3の検出結果を用いて、配管PP内を流れる流体FLの流量を測定し、測定された流量を示す流量信号Foutを出力する。
【0013】
この流量測定装置1は、流体FLの流路である配管PPに設けられたプライマリエレメントPEの上流側と下流側との間に生ずる圧力差(差圧)を流量に変換することで流体の流量を測定する差圧式の流量測定装置である。プライマリエレメントPEは、流体FLの流路を絞るための絞り機構であり、例えばオリフィス、ピトー管(
図3(a)参照)、コーン計(
図3(b)参照)等が挙げられる。尚、プライマリエレメントPEの詳細については後述する。
【0014】
差圧センサSN1は、プライマリエレメントPEの上流側と下流側との間に生ずる圧力差を検出するセンサである。静圧センサSN2は、プライマリエレメントPEの上流側の圧力と真空圧力との圧力差(プライマリエレメントPEの上流側の静圧)を検出するセンサである。温度センサSN3は、配管PPの温度(流体FLの温度)を検出するセンサである。
【0015】
ここで、プライマリエレメントPEの上流側の圧力を「P1」とし、下流側の圧力を「P2」とする。差圧センサSN1は、圧力差「P1−P2」を検出し、静圧センサSN2は、圧力差「P1−0」を検出する。尚、静圧センサSN2は、プライマリエレメントPEのした下流側の圧力と真空圧力との圧力差(プライマリエレメントPEの下流側の静圧)を検出するものであっても良い。
【0016】
A/D変換部11a,11b,11cはそれぞれ、差圧センサSN1、静圧センサSN2、及び温度センサSN3の検出結果(アナログ信号)をディジタル信号に変換する。圧力演算部12は、A/D変換部11a,11bから出力されるディジタル信号に対する演算処理を行って、プライマリエレメントPEの上流側と下流側との間に生ずる圧力差を示す差圧ディジタル信号DS1と、プライマリエレメントPEの上流側の静圧を示す静圧ディジタル信号DS2とを出力する。
【0017】
流量演算部13は、圧力演算部12から出力される差圧ディジタル信号DS1及び静圧ディジタル信号DS2と、A/D変換部11cから出力されるディジタル信号DS3とを用いて、予め規定された流量演算式に基づいた演算を行って配管PP内を流れる流体FLの流量を算出する。この流量演算部13は、流量演算式を変更することなく種々のプライマリエレメントPEに対応可能とするために、要素別処理部13a、エレメント別処理部13b、及び統合処理部13cを備える。尚、これら要素別処理部13a、エレメント別処理部13b、及び統合処理部13cの詳細については後述する。
【0018】
出力部14は、流量演算部13で求められた流体FLの流量を示す流量信号(ディジタル信号)をアナログ信号に変換して流量信号Foutとして出力する。尚、出力部14から出力される流量信号Foutは、例えば2線式伝送線等の伝送線を介して伝送される。通信部15は、例えば
図1に示す設定装置2と接続されて、設定装置2との間で各種データの送受信を行う。
【0019】
次に、流量演算式(質量流量演算式)について検討する。ここでは、プライマリエレメントPEとしてピトー管が用いられる場合の流量演算式と、プライマリエレメントPEとしてコーン計が用いられる場合の流量演算式とを例に挙げて説明する。
図3は、プライマリエレメントPEが設けられた配管の断面図である。
図3(a)はピトー管が設けられた配管の断面図(配管の長手方向に直交する面における断面図)であり、
図3(b)はコーン計が設けられた配管の断面図(配管の長手方向に沿う面における断面図)である。
【0020】
図3(a)に示す通り、ピトー管PTは、長手方向に沿って複数の孔部Hが設けられた円環状の部材である。このピトー管PTは、その長手方向が流体FLの流れ方向に垂直(或いは、略垂直)となるように配管PPの内壁面に取り付けられている。また、
図3(b)に示す通り、コーン計CNは、軸方向に沿って外径が徐々に大径となる略円錐形状の部材である。このコーン計CNは、その軸方向が流体FLの流れ方向に沿うようされ、且つ配管PPの中央部に配置されるよう配管PPに取り付けられている。
【0021】
図3(a)に示すピトー管がプライマリエレメントPEとして用いられる場合において、流体FLの流量Q
mを求める流量演算式は以下の(1)式で表される。
【数1】
【0022】
但し、上記(1)式中の変数は、以下の通りである。
C
A :流量係数(
図3(a)に示す配管径DとセンササイズSzとの関数)
ε
A :気体の膨張補正係数
D :配管径
ΔP:差圧
ρ :流体密度
【0023】
上記の気体の膨張補正係数ε
Aは、以下の(2)式で表される。
【数2】
但し、上記(2)式中の変数は、以下の通りである。
ε
11,ε
12:気体膨張係数
P:静圧
γ:アイゼントロピック指数
【0024】
図3(b)に示すコーン計がプライマリエレメントPEとして用いられる場合において、流体FLの流量Q
mを求める流量演算式は以下の(3)式で表される。
【数3】
【0025】
但し、上記(3)式中の変数は、以下の通りである。
C
B :流出係数
ε
B :気体の膨張補正係数
D :配管径(
図3(b)参照)
d :コーン直径(
図3(b)参照)
β :配管径とコーンサイズとの比(d/D)
ΔP:差圧
ρ :流体密度
【0026】
上記の気体の膨張補正係数ε
Bは、以下の(4)式で表される。
【数4】
【0027】
但し、上記(4)式中の変数は、以下の通りである。
ε
21,ε
22:気体膨張係数
P:静圧
γ:アイゼントロピック指数
【0028】
ここで、上記(1)式と
(3)式とを比較すると、両式は似た形をしていることが分かる。具体的に、上記(1)式及び
(3)式の右辺は、4つの要素の積と平方根との積で表される式であり、平方根内は差圧ΔPと差圧ΔP以外の要素との積で示される式である。そこで、
図4に示す通り、上記(1)式及び
(3)式の右辺の6つの要素を、6つのパラメータK
1〜K
6を用いて表すと、流体FLの流量Q
mを求める流量演算式は以下の(5)式で表される。
【数5】
【0029】
つまり、
図3(a)に示すピトー管がプライマリエレメントPEとして用いられる場合、及び
図3(b)に示すコーン計がプライマリエレメントPEとして用いられる場合の何れの場合であっても、上記(1)式又は上記
(3)式に応じたパラメータ群(パラメータK
1〜K
6)を設定することによって、上記(5)式で示される共通の流量演算式を用いて流体FLの流量を測定することが可能になる。
図4は、本発明の一実施形態において、共通の流量演算式を用いて流量を測定する際に設定されるパラメータ群を示す図である。
【0030】
ここで、パラメータK
1は、流量演算式の定数項を規定するパラメータである。パラメータK
2は、流量演算式の流量係数を用いて得られるパラメータ(第1パラメータ)である。パラメータK
3は、流量演算式の気体の膨張補正係数を用いて得られるパラメータ(第2パラメータ)である。パラメータK
4は、流量演算式の形状係数を用いて得られるパラメータ(第3パラメータ)である。形状係数とは、プライマリエレメントPEの形状に応じて値が変化する係数である。パラメータK
5は、流体FLの差圧を示すパラメータである。パラメータK
6は、流体密度に係る係数を用いて得られるパラメータ(第4パラメータ)である。
【0031】
尚、パラメータK
2を得るために用いられる流量係数、パラメータK
3を得るために用いられる気体の膨張補正係数、及びパラメータK
4を得るために用いられる形状係数は、
図2に示す通信部15を介して外部(例えば、
図1に示す設定装置2)から設定される。例えば、プライマリエレメントPEがピトー管である場合には、流量係数(C
A)、気体の膨張補正係数(気体膨張係数ε
11,ε
12)、及び形状係数(D
2)が、設定装置2によって設定される。これに対し、プライマリエレメントPEがコーン計である場合には、流出係数(C
B)、気体の膨張補正係数(気体膨張係数ε
21,ε
22)、及び形状係数(D
2−d
2)が、設定装置2によって設定される。
【0032】
図2に示す流量演算部13に設けられた要素別処理部13a、エレメント別処理部13b、及び統合処理部13cは、上記(5)式に示される流量演算式を用いて流体FLの流量Q
mを求める処理を行う。要素別処理部13aは、上記(5)式に示される流量演算式を用いて流体FLの流量Q
mを求めるために必要となるパラメータ群(パラメータK
1〜K
6)を求める処理を行う。
【0033】
具体的に、要素別処理部13aは、プライマリエレメントPEがピトー管である場合には、
図4中の「ピトー管」で特定される列に表示されている各係数を用いてパラメータ群を求める処理を行う。これに対し、プライマリエレメントPEがコーン計である場合には、
図4中の「コーン計」で特定される列に表示されている各係数を用いてパラメータ群を求める処理を行う。
【0034】
エレメント別処理部13bは、要素別処理部13aでパラメータを求める際に用いられる係数のうち、プライマリエレメントPEの種類によって演算式が大きく変わる係数を求める処理を行う。具体的に、エレメント別処理部13bは、予めプライマリエレメントPEの種類毎に設定された流体密度に係る係数(
図4において、「パラメータK
6」の行に表示されている係数)のうち、プライマリエレメントPEの種類に応じた係数を求める処理を行う。
【0035】
統合処理部13cは、エレメント別処理部13bで求められるパラメータ群を用いて、上記(5)式に示される流量演算式を用いて流体FLの流量Q
mを求める処理を行う。例えば、統合処理部13cは、エレメント別処理部13bで求められるパラメータ群に含まれるパラメータK
1、パラメータK
2、パラメータK
3、パラメータK
4、パラメータK
5の平方根、及びパラメータK
6の平方根を乗算する処理を行って流体FLの流量を求める処理を行う。
【0036】
〈設定装置〉
図5は、本発明の一実施形態による設定装置の要部構成を示すブロック図である。
図5に示す通り、設定装置2は、操作部21(特定部、特定手段)、表示部22、格納部23(格納手段)、処理部24(処理手段)、通信部25、及びドライブ装置26を備えており、操作部21に対する操作指示に応じて、流量測定装置1に設定する各種係数の送信等を行う。このような設定装置2は、例えばノート型のパーソナルコンピュータ、或いはタブレット型のパーソナルコンピュータにより実現される。
【0037】
操作部21は、例えばキーボードやポインティングデバイス等の入力装置を備えており、設定装置2を使用するユーザの操作に応じた指示(設定装置2に対する指示)を処理部24に出力する。表示部22は、例えば液晶表示装置等の表示装置を備えており、処理部24から出力される各種情報を表示する。尚、操作部21及び表示部22は、物理的に分離されたものであっても良く、表示機能と操作機能とを兼ね備えるタッチパネル式の液晶表示装置のように物理的に一体化されたものであっても良い。
【0038】
格納部23は、例えばHDD(ハードディスクドライブ)やSSD(ソリッドステートドライブ)等の補助記憶装置を備えており、各種データを格納する。具体的に、格納部23は、プライマリエレメントPEの種類毎の流量係数C1、気体の膨張補正係数C2、及び形状係数C3を格納する。例えば、格納部23は、流量係数C1として、上記(1)式中の流量係数C
A及び上記(3)式中の流出係数C
Bを格納し、気体の膨張補正係数C2として、上記(2)式中の気体膨張係数ε
11,ε
12及び上記(4)式中の気体膨張係数ε
21,ε
22を格納し、形状係数C3として、上記(1)式中の形状係数D
2及び上記(3)式中の形状係数(D
2−d
2)を格納する。
【0039】
処理部24は、操作部21から入力される操作指示に基づいて、設定装置2の動作を統括して制御する。例えば、処理部24は、操作部21が操作されてプライマリエレメントPEの種類が特定された場合には、特定されたプライマリエレメントPEの種類に応じた流量係数C1、気体の膨張補正係数C2、及び形状係数C3を格納部23から読み出し、通信部25を制御して流量測定装置1に設定する処理を行う。
【0040】
通信部25は、処理部24によって制御され、流量測定装置1との間で通信を行う。ドライブ装置26は、例えばCD−ROM又はDVD(登録商標)−ROM等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体Mに記録されているデータの読み出しを行う。この記録媒体Mは、設定装置2の各ブロックの機能(例えば、処理部24の機能)を実現するプログラム(設定プログラム)を格納している。
【0041】
このような記録媒体Mに格納されたプログラムがドライブ装置26によって読み込まれ、設定装置2にインストールされることにより、設定装置2の各ブロックの機能がソフトウェア的に実現される。つまり、これらの機能は、ソフトウェアとハードウェア資源とが協働することによって実現される。尚、設定装置2の各ブロックの機能を実現するプログラムは、記録媒体Mに記録された状態で配布されても良く、インターネット等の外部のネットワークを介して配布されても良い。
【0042】
〈流量測定方法〉
次に、配管PPを流れる流体FLの流量を流量測定装置1で測定する方法について説明する。以下では、配管PPに新規に取り付けられた流量測定装置1によって、配管PPを流れる流体FLの流量を測定する方法を例に挙げて説明する。尚、新規に取り付けられた流量測定装置1には、上述した(5)式に示す流量演算式、流量演算式の定数項を規定する係数、及びエレメント別処理部13bで用いられる係数(
図4において、「パラメータK
6」の行に表示されている係数)が実装されている。
【0043】
まず、流量を測定するために必要となる各種係数を、設定装置2を用いて流量測定装置1に設定する作業が作業者によって行われる。この作業では、作業者によって設定装置2の操作部21が操作され、プライマリエレメントPEの種類が特定される。すると、特定されたプライマリエレメントPEの種類に応じた流量係数C1、気体の膨張補正係数C2、及び形状係数C3を格納部23から読み出し、通信部25を制御して流量測定装置1に設定する処理が設定装置2の処理部24によって行われる。
【0044】
例えば、プライマリエレメントPEとしてピトー管が特定された場合には、流量係数(C
A)、気体の膨張補正係数(気体膨張係数ε
11,ε
12)、及び形状係数(D
2)が設定装置2によって設定される。これに対し、プライマリエレメントPEとしてコーン計が特定された場合には、流出係数(C
B)、気体の膨張補正係数(気体膨張係数ε
21,ε
22)、及び形状係数(D
2−d
2)が設定装置2によって設定される。かかる設定が完了すると、上記(5)式中のパラメータK
2,K
3,K
4を求めることが可能になる。
【0045】
また、特定されたプライマリエレメントPEの種類を、流量測定装置1に通知する処理が設定装置2の処理部24によって行われる。特定されたプライマリエレメントPEの種類が通知されると、流量測定装置1では、予めプライマリエレメントPEの種類毎に設定された流体密度に係る係数(
図4において、「パラメータK
6」の行に表示されている係数)のうち、プライマリエレメントPEの種類に応じた係数を求める処理がエレメント別処理部13bで行われる。この係数が求められると、上記(5)式中のパラメータK
6を求めることが可能になる。
【0046】
以上の初期設定が完了し、流量測定装置1の動作が開始されると、流量測定装置1では、差圧センサSN1及び静圧センサSN2の検出結果が一定の周期(例えば、1秒周期)で取得される。取得された差圧センサSN1及び静圧センサSN2の検出結果はそれぞれ、A/D変換部11a,11bでディジタル信号に変換されて圧力演算部12に入力される。圧力演算部12では、入力されたディジタル信号に対して所定の演算処理を行って差圧ディジタル信号DS1と静圧ディジタル信号DS2とを出力する処理が行われる。
【0047】
圧力演算部12から出力された差圧ディジタル信号DS1及び静圧ディジタル信号DS2は、流量演算部13に入力される。すると、流量演算部13の要素別処理部13aでは、上述した初期設定で設定された流量係数を用いてパラメータK
2を得る処理、上述した初期設定で設定された気体の膨張補正係数と、入力された差圧ディジタル信号DS1及び静圧ディジタル信号DS2とを用いてパラメータK
3を求める処理、及び上述した初期設定で設定された形状係数を用いてパラメータK
4を得る処理が行われる。
【0048】
また、要素別処理部13aでは、予め設定されている流量演算式の定数項を規定する係数を用いてパラメータK
1を得る処理、入力された差圧ディジタル信号DS1からパラメータK
5を得る処理が行われる。更に、要素別処理部13aでは、エレメント別処理部13bで求められた係数を用いてパラメータK
6を得る処理も行われる。以上の処理によって、流体FLの流量を測定するために必要となる6つのパラメータK
1〜K
6からなるパラメータ群が求められると、統合処理部13cにおいて、上述した(5)式に示す流量演算式に基づいた演算が行われ、これにより流体FLの流量が求められる。
【0049】
尚、本実施形態では、説明を簡単にするために、温度センサSN3の検出結果を無視して、差圧センサSN1及び静圧センサSN2の検出結果を用いて流体FLの流量を測定する例について説明した。しかしながら、差圧センサSN1及び静圧センサSN2の検出結果に加えて、温度センサSN3の検出結果も用いて流体FLの流量を測定するようにしても良い。尚、温度センサSN3の検出結果を用いる場合にも、上記(5)式に示す流量演算式と同様の式に基づいた演算が行われて流体FLの流量が求められる。
【0050】
以上の通り、本実施形態では、プライマリエレメントPEの種類に応じて流量係数、気体の膨張補正係数、及び形状係数を設定し、これら設定された係数と差圧センサSN1及び静圧センサSN2の検出結果とを用いて、流量を算出するために必要なパラメータ群を求め、パラメータ群を要素とする流量演算式に基づいた演算を行って流体FLの流量を求めるようにしている。これにより、プライマリエレメントPEの種類に応じて、設定する流量係数、気体の膨張補正係数、及び形状係数を変えれば良く、流量演算式を変更することはない。このように、本実施形態では、流量演算式を変更することなく種々のプライマリエレメントに対応可能である。
【0051】
以上、本発明の一実施形態による流量測定装置、設定装置、及び設定プログラムについて説明したが、本発明は上述した実施形態に制限されることなく、本発明の範囲内で自由に変更が可能である。例えば、上記実施形態では、プライマリエレメントPEがピトー管とコーン計である場合を例に挙げたが、他の種類のもの(例えば、オリフィス等)についても同様に適用可能である。
【0052】
また、上記実施形態では、要素別処理部13aでパラメータを求める際に用いられる係数のうち、プライマリエレメントPEの種類によって演算式が大きく変わる係数を求める処理をエレメント別処理部13bで行うようにしていた。しかしながら、この処理を設定装置2で行い、流量係数、気体の膨張補正係数、及び形状係数と同様に、プライマリエレメントPEの種類に応じて流量測定装置1に設定しても良い。
【0053】
また、上記実施形態では、差圧センサSN1と静圧センサSN2とが分離された圧力センサを用いた例について説明したが、
図6に示す通り、差圧と静圧との両方を測定することが可能な単一の圧力センサSN10を用いても良い。
図6は、本発明の一実施形態による流量測定装置の変形例を示すブロック図である。尚、このような単一の圧力センサSN10が用いられる場合には、A/D変換部11a,11bに代えてA/D変換部11dが流量測定装置1に設けられる。