【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成26年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「低炭素社会を実現する新材料パワー半導体プロジェクト」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
電力用半導体装置として、400V、600V、1200V、1700V、3300V、6500Vあるいはそれ以上の耐圧を有するトレンチゲート型MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor:絶縁ゲート型電界効果トランジスタ)等が公知である。例えば、炭化珪素(SiC)を用いたトレンチゲート型MOSFET(以下、SiC−MOSFETとする)は、コンバーター・インバーター等の電力変換装置に用いられている。この電力用半導体装置は、低損失・高効率と同時に要求耐圧を有することが求められる。また、中容量、大容量の電力用半導体装置では、素子面積の増大に伴い、チップ面内のゲート電極の電位分布にばらつきが生じないように、活性領域とエッジ終端領域との間にゲートランナーを配置する必要がある。
【0003】
従来のトレンチゲート型SiC−MOSFETとして、隣り合うゲートトレンチ間にコンタクトトレンチを備えた装置が提案されている(例えば、下記特許文献1および下記非特許文献1参照。)。ゲートトレンチとは、ゲート絶縁膜を介してゲート電極が埋め込まれたトレンチである。コンタクトトレンチとは、隣り合うゲートトレンチ間(メサ部)に設けられ、金属電極(ソース電極)が埋め込まれたトレンチである。コンタクトトレンチの内壁に露出する半導体領域と金属電極とでコンタクト(電気的接触部)が形成される。従来のトレンチゲート型SiC−MOSFETの活性領域とエッジ終端領域との間の境界領域の構造について説明する。
図14は、従来のトレンチゲート型SiC−MOSFETの活性領域とエッジ終端領域との間の境界領域の構造を示す断面図である。
【0004】
図14に示す従来のトレンチゲート型SiC−MOSFETは、炭化珪素からなる半導体基体(以下、炭化珪素基体とする)110に、活性領域141とエッジ終端領域142との間に境界領域143を備える。炭化珪素基体110は、炭化珪素からなるn
+型支持基板(以下、n
+型炭化珪素基板とする(不図示))101上にn
-型ドリフト領域102(102a,102b)およびp型ベース領域103となる複数の炭化珪素層を順にエピタキシャル成長させてなる。活性領域141は、基板の厚さ方向での電流の流れを担う領域である。活性領域141には、コンタクトトレンチ108およびトレンチゲート型のMOSゲート(金属−酸化膜−半導体からなる絶縁ゲート)構造が配置される。エッジ終端領域142は、境界領域143を挟んで活性領域141の周囲を囲むように配置される。符号140は、エッジ終端領域142の全域にわたって炭化珪素基体110のおもて面を、活性領域141よりも低くしてなる(ドレイン側に凹ませた)段差である。
【0005】
MOSゲート構造を構成するp型ベース領域103は、コンタクトトレンチ108の内壁(底面108aおよび側壁108b)に沿って設けられ、その一部113がコンタクトトレンチ108の底面108aに沿った部分でゲートトレンチ(不図示)よりもドレイン側に達している。以下、p型ベース領域103のうち、浅い部分を第1p型ベース領域103とし、コンタクトトレンチ108の内壁に沿った一部113を第2p型ベース領域113とする。第2p型ベース領域113は、活性領域141の外周においてコンタクトトレンチ108の側壁108bから境界領域143に延在し、エッジ終端領域142の接合終端(JTE:Junction Termination Extension)構造130に接する。境界領域143の第2p型ベース領域113およびJTE構造130は、フィールド酸化膜114で覆われている。境界領域143は、ゲートランナー120を配置するために設けられる。境界領域143においてフィールド酸化膜114上には、ポリシリコン(poly−Si)層121および金属層122を順に積層してなるゲートランナー120が配置されている。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる半導体装置および半導体装置の製造方法の好適な実施の形態を詳細に説明する。本明細書および添付図面においては、nまたはpを冠記した層や領域では、それぞれ電子または正孔が多数キャリアであることを意味する。また、nやpに付す+および−は、それぞれそれが付されていない層や領域よりも高不純物濃度および低不純物濃度であることを意味する。なお、以下の実施の形態の説明および添付図面において、同様の構成には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0021】
(実施の形態)
実施の形態にかかる半導体装置の構造について、炭化珪素(SiC)を用いたトレンチゲート型MOSFET(SiC−MOSFET)を例に説明する。
図1は、実施の形態にかかる半導体装置の活性領域の構造を示す断面図である。
図1には、隣り合う単位セル(素子の機能単位)間の構造を示し、これらの単位セルに隣接するように繰り返し配置された他の単位セルを図示省略する。
図1に示すように、実施の形態にかかる半導体装置は、活性領域41において、炭化珪素からなる半導体基体(n型炭化珪素基体(半導体基板))10のおもて面(n
-型ドリフト領域2側の表面)側に、トレンチゲート型のMOSゲート構造と、コンタクトトレンチ(第1溝)8と、を備える。活性領域41は、半導体基板の厚さ方向に流れる電流を担う領域であり、SiC−MOSFETがオン状態のときに電流が流れる。
【0022】
具体的には、炭化珪素基体(半導体チップ)10は、炭化珪素からなるn
+型支持基板(以下、n
+型炭化珪素基板とする)1上にn
-型ドリフト領域2(2a,2b)およびp型ベース領域3となる複数の炭化珪素層を順にエピタキシャル成長させてなる。炭化珪素基体10のおもて面(p型ベース領域3側の面)側には、n
+型ソース領域(第3半導体領域)4、ゲートトレンチ5、ゲート絶縁膜6およびゲート電極7からなるMOSゲート構造が設けられている。n
-型ドリフト領域2の不純物濃度は、基体裏面側の部分(以下、n
-型低濃度ドリフト領域とする)2aに比べて基体おもて面側の部分(以下、n型高濃度ドリフト領域とする)2bで高くてもよい。
【0023】
ゲートトレンチ5は、基体おもて面から例えばn
-型低濃度ドリフト領域2aに達しない深さで設けられている。ゲートトレンチ5の内部には、ゲート絶縁膜6を介してゲート電極7が埋め込まれている。隣り合うゲートトレンチ5間(メサ部)には、コンタクトトレンチ8が設けられている。コンタクトトレンチ8とは、隣り合うゲートトレンチ5間(メサ部)に設けられ、金属電極(後述するソース電極(第1電極)11)が埋め込まれたトレンチである。コンタクトトレンチ8の内壁(底面8aおよび側壁8b)に露出する半導体領域と金属電極とでコンタクト(電気的接触部)が形成される。コンタクトトレンチ8の深さは、ゲートトレンチ5の深さよりも深い。
【0024】
p型ベース領域3は、隣り合うゲートトレンチ5間にわたって、ゲートトレンチ5よりも浅い深さで設けられている。また、p型ベース領域3の一部(第2半導体領域)13は、コンタクトトレンチ8の内壁に露出するようにコンタクトトレンチ8の内壁に沿って設けられ、コンタクトトレンチ8の底面8aに沿った部分でゲートトレンチ5の深さよりも深くドレイン側に達している。p型ベース領域3の一部13は、例えば、コンタクトトレンチ8の底面8aに沿った部分で、n
-型低濃度ドリフト領域2aとn型高濃度ドリフト領域2bとの界面よりもドレイン側に達していてもよい。
【0025】
このように、p型ベース領域3の一部13がゲートトレンチ5の底面5aよりもドレイン側に達していることで、SiC−MOSFETのオフ時、p型ベース領域3の、コンタクトトレンチ8の底面8aに沿った部分で電界負担される。このため、ゲートトレンチ5の底面5aにおけるゲート絶縁膜6への電界集中が緩和される。符号5bは、ゲートトレンチ5の側壁である。以下、p型ベース領域3のうち、隣り合うゲートトレンチ5間のゲートトレンチ5よりも浅い部分を第1p型ベース領域3とし、コンタクトトレンチ8の内壁に沿った一部13を第2p型ベース領域13とする。第2p型ベース領域13のうち、コンタクトトレンチ8の底面8aに沿った部分13aの不純物濃度を、コンタクトトレンチ8の側壁8bに沿った部分13bの不純物濃度より高くしてもよい。
【0026】
n
+型ソース領域4は、第1p型ベース領域3の表面領域に選択的に設けられている。第1p型ベース領域3の表面領域にp
+型コンタクト領域(不図示)が選択的に設けられていてもよい。層間絶縁膜9を深さ方向に貫通するコンタクトホール9aは、コンタクトトレンチ8につながるように形成されている。ソース電極11は、コンタクトホール9aおよびコンタクトトレンチ8に埋め込まれるように設けられ、第1,2p型ベース領域3,13、n
+型ソース領域4およびp
+型コンタクト領域に接する。炭化珪素基体10の裏面(n
+型ドレイン層であるn
+型炭化珪素基板1側の面)には、裏面電極としてドレイン電極(第2電極)12が設けられている。
【0027】
次に、活性領域41よりも外側(チップ端部側)の構成について説明する。
図2は、実施の形態にかかる半導体装置の活性領域とエッジ終端領域との間の境界領域の構造を示す断面図である。活性領域41よりも外側には、活性領域41の周囲を囲むようにエッジ終端領域42が設けられている。エッジ終端領域42は、炭化珪素基体10のおもて面の電界を緩和して耐圧を保持する領域である。エッジ終端領域42の全域にわたって炭化珪素基体10のおもて面に、エッジ終端領域42を活性領域41よりも低くした(ドレイン側に凹ませた)段差40が形成され、n
-型ドリフト領域2(例えばn
-型低濃度ドリフト領域2a)が露出されている。
【0028】
段差40の底面40aは、段差40の形成によりエッジ終端領域42に新たに形成された、炭化珪素基体10のおもて面(基体おもて面)である。段差40の側壁40bは、段差40の底面40aと、当該段差40よりも内側(活性領域41側)の基体おもて面(後述する第2メサ部45の表面)と、の間に位置し、かつ当該第2メサ部45の表面に対する角度θ2を鋭角とする斜度を有する、炭化珪素基体10のおもて面である。段差40の側壁40bの角度θ2は、第2メサ部45の表面に対して略90度であってもよい(0度<θ2≦90度)。段差40の側壁40bは、例えば、活性領域41とエッジ終端領域42との間の境界領域43に位置する。
【0029】
段差40の底面40aに露出されたn
-型ドリフト領域2には、例えばJTE構造30が配置されている。JTE構造30とは、外側に配置されるほど不純物濃度を低くした複数のp型半導体領域(以下、p
-型低濃度領域(不図示)とする)を、活性領域41の周囲を囲む同心円状に隣接して配置した耐圧構造である。JTE構造30を構成するp
-型低濃度領域の不純物濃度は、境界領域43の第2p型ベース領域13の不純物濃度よりも低い。JTE構造30は、フィールド酸化膜14で覆われている。フィールド酸化膜14は内側の境界領域43に延在し、境界領域43において基体おもて面および後述するテーパートレンチ(第2溝)23の内壁(底面23aおよび側壁23b)を覆う。エッジ終端領域42および境界領域43において基体おもて面に露出とは、フィールド酸化膜14に接するように配置されていることである。
【0030】
境界領域43には、コンタクトトレンチ8の最も外側の側壁8bからテーパートレンチ23よりも浅い深さで第2p型ベース領域13が延在する。境界領域43の第2p型ベース領域(第1半導体領域)13(13c)は、基体おもて面およびテーパートレンチ23の内壁に沿って設けられ、基体おもて面およびテーパートレンチ23の内壁に露出する。境界領域43の第2p型ベース領域13の、テーパートレンチ23の底面23aに沿った部分は、n
-型低濃度ドリフト領域2aとn型高濃度ドリフト領域2bとの界面よりもドレイン側に達していてもよい。また、境界領域43の第2p型ベース領域13は、段差40の側壁40bに沿って、段差40の底面コーナー部(段差40の底面40aと側壁40bと境界)40cを覆うように延在し、JTE構造30の最内周のp
-型低濃度領域(不図示)に接する。境界領域43の第2p型ベース領域13(13c)の不純物濃度は、活性領域41の第2p型ベース領域13のうち、コンタクトトレンチ8の底面8aに沿った部分13aの不純物濃度と略同じであってもよい。
【0031】
境界領域43において基板おもて面上には、フィールド酸化膜14を介してゲートランナー20が設けられている。ゲートランナー20は、例えば、ポリシリコン(poly−Si)層21および金属層22を順に積層してなる。ゲートランナー20は、例えば、活性領域41の周囲を囲むリング状の平面レイアウトに配置されている。また、境界領域43において基板おもて面には、ゲートランナー20よりも内側に、テーパー状の断面形状をなすトレンチ(以下、テーパートレンチとする)23が設けられている。テーパートレンチ23は、活性領域41と離して、活性領域41の周囲を囲むリング状の平面レイアウトに配置されている。テーパートレンチ23の深さは、例えばコンタクトトレンチ8の深さと同じであってもよい。
【0032】
テーパートレンチ23の側壁23bは、基板おもて面(後述する第1,2メサ部44,45の表面)に対する角度θ3を鋭角とする斜度を有する(0度<θ3<90度)。かつ、テーパートレンチ23の側壁23bの基板おもて面に対する角度θ3は、コンタクトトレンチ8の側壁8bの基板おもて面に対する角度θ1よりも小さい(θ3<θ1≦90度)。このようにテーパー状の断面形状をなすテーパートレンチ23を境界領域43に設けることで、活性領域41の外周において、第2p型ベース領域13の、コンタクトトレンチ8の底面コーナー部(コンタクトトレンチ8の底面8aと側壁8bと境界)8cに沿った曲率の大きい部分13dへの電界集中が緩和される。
【0033】
また、テーパートレンチ23の側壁23bの基板おもて面に対する角度θ3を鋭角とすることで、テーパートレンチ23の底面コーナー部(テーパートレンチ23の底面23aと側壁23bと境界)23cの曲率が小さくなる。したがって、テーパートレンチ23の内壁に沿って延在する第2p型ベース領域13の、テーパートレンチ23の底面コーナー部23cに沿った部分13eの曲率が小さくなり、この部分13eに電界集中が生じにくい。このため、テーパートレンチ23とエッジ終端領域42との間(後述する第2メサ部45)に、上述したゲートランナー20が配置される。
【0034】
境界領域43には、コンタクトトレンチ8、テーパートレンチ23および段差40により2つのメサ部(以下、内周側から順に第1,2メサ部44,45とする)が形成される。すなわち、活性領域41とエッジ終端領域42との間に、活性領域41の周囲を囲む同心円状に第1,2メサ部44,45が配置される。外周側の第2メサ部45(テーパートレンチ23と段差40との間)に、上述したようにゲートランナー20が配置される。第2メサ部45の幅D
2は、少なくてもゲートランナー20を配置可能程度に広い。活性領域41に隣接する第1メサ部44の幅(コンタクトトレンチ8とテーパートレンチ23との間の距離)D
1は、例えば8μm以下程度であることが好ましい。その理由は、次の通りである。
【0035】
図3は、実施の形態にかかる半導体装置の耐圧特性を示す特性図である。実施の形態にかかる半導体装置(
図1,2参照)において第1メサ部44の幅D
1(
図3には距離Dとする)を変えたときの耐圧の実測値を
図3に示す。耐圧とは、活性領域41よりも外側の部分(境界領域43およびエッジ終端領域42)の耐圧である。また、
図3には、トレンチゲート型SiC−MOSFETの耐圧の理論値を示す。上述したゲートランナー120を配置した従来構造(
図14参照)において、活性領域141に隣接するメサ部(コンタクトトレンチ108と段差140との間)144の幅D
100(距離D)を変えたときの耐圧をシミュレーションした結果を理論値としている。
【0036】
図3に示す実測値から、本発明において第1メサ部44の幅D
1が8μm以下程度であれば目標耐圧(目盛線よりも粗い横破線)51以上を確保することができることが確認された。また、
図3に示す結果より、実測値および理論値ともにメサ部の幅D
1,D
100(距離D)が広くなるほど耐圧が低下することが確認された。図示省略するがゲートランナー120を配置した従来構造(
図14参照)では、活性領域141に隣接するメサ部(コンタクトトレンチ108と段差140との間)144の幅D
100は10μm以上となることが確認された。このため、
図3の理論値から、
図14に示すゲートランナー120を配置した従来構造では、目標耐圧51を確保することが困難であることがわかる。
【0037】
次に、実施の形態にかかる半導体装置の製造方法について、3300V耐圧クラスのトレンチゲート型SiC−MOSFETを作製(製造)する場合を例に説明する。
図4〜10は、実施の形態にかかる半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である。まず、例えば1×10
18/cm
3以上1×10
20/cm
3以下程度の不純物濃度を有するn
+型炭化珪素基板1(
図1参照)を用意する。次に、エピタキシャル成長により、n
+型炭化珪素基板1のおもて面に、例えば2×10
15/cm
3以上4×10
15/cm
3以下程度の不純物濃度を有するn
-型低濃度ドリフト領域2aとなるn
-型炭化珪素層を例えば30μm程度の厚さで成膜(形成)する。
【0038】
次に、エピタキシャル成長により、n
-型低濃度ドリフト領域2a上に、例えば1×10
16/cm
3以上1×10
18/cm
3以下程度の不純物濃度を有するn型高濃度ドリフト領域2bとなるn型炭化珪素層を例えば0.5μm以上3.0μm以下程度の厚さで成膜する。ここまでの工程により、n
+型炭化珪素基板1上にn
-型ドリフト領域2(2a,2b)を順に積層した炭化珪素基体(半導体ウエハ)10が形成される(
図4)。
【0039】
次に、炭化珪素基体10のおもて面に例えば1.5μm以上2.5μm以下程度の厚さで酸化膜(不図示)を堆積する。次に、この酸化膜をフォトリソグラフィおよびエッチングによりパターニングし、エッジ終端領域42の段差40の形成領域と、境界領域43のテーパートレンチ23の形成領域と、に対応する部分を露出させる。次に、酸化膜のパターニングに用いたレジストマスク(不図示)を除去した後、酸化膜の残部をマスクとして等方性エッチングを行い、例えば0.5μm以上2.5μm以下程度の深さで段差40およびテーパートレンチ23を形成する。これにより、テーパートレンチ23と段差40との間に第2メサ部45が形成される。ここでは、エッジ終端領域42の全域にわたってn型高濃度ドリフト領域2bを除去し、n
-型低濃度ドリフト領域2aを露出させた場合を例に説明する。
【0040】
段差40およびテーパートレンチ23を同一のエッチング工程により形成することで、工程数を増加させることなく、
図1,2に示す実施の形態にかかる半導体装置を作製することができる。段差40の底面40aおよびテーパートレンチ23の底面23aに、n
-型低濃度ドリフト領域2aが露出される。テーパートレンチ23の側壁23bの基板おもて面に対する角度θ3は、例えば20°以上70°以下程度であってもよい(20°≦θ3≦70°)。段差40の側壁40bの角度θ2も、第2メサ部45の表面に対して例えば20°以上70°以下程度となる(20°≦θ2≦70°)。そして、段差40およびテーパートレンチ23の形成に用いた酸化膜の残部を除去する。ここまでの状態が
図5に示されている。
【0041】
次に、炭化珪素基体10のおもて面に例えば1.5μm以上2.5μm以下程度の厚さで酸化膜(不図示)を堆積する。次に、この酸化膜をフォトリソグラフィおよびエッチングによりパターニングし、JTE構造30のp
-型低濃度領域の形成領域に対応する部分を露出させる。次に、酸化膜のパターニングに用いたレジストマスク(不図示)を除去した後、酸化膜の残部をマスクとしてp型不純物をイオン注入する。そして、この酸化膜の残部を除去する。これら酸化膜の堆積およびパターニング、レジストマスクの除去、p型不純物のイオン注入、酸化膜の残部の除去を1組とする工程を、異なるイオン注入条件で複数回行う。このイオン注入は、例えば、次の条件範囲内で種々変更する。
【0042】
JTE構造30のp
-型低濃度領域を形成するためのイオン注入において、ドーパントは例えばアルミニウム(Al)であってもよい。イオン注入時の温度は、200℃以上600℃以下程度の範囲内であってもよい。ドーズ量は、例えば1.0×10
12/cm
2以上1.0×10
14/cm
2以下程度の範囲内であってもよい。加速エネルギーは、例えば15keV以上460keV以下程度の範囲内であってもよい。注入角度は、段差40の底面40aに対して例えば0°以上10°以下程度の範囲内であってもよい。これにより、段差40の底面40aに露出するn
-型低濃度ドリフト領域2aに、JTE構造30を構成する複数のp
-型低濃度領域が選択的に形成される。ここまでの状態が
図6に示されている。
【0043】
次に、炭化珪素基体10のおもて面に例えば1.5μm以上2.5μm以下程度の厚さで酸化膜(不図示)を堆積する。次に、この酸化膜をフォトリソグラフィおよびエッチングによりパターニングし、コンタクトトレンチ8の形成領域に対応する部分を露出させる。次に、酸化膜のパターニングに用いたレジストマスク(不図示)を除去した後、酸化膜の残部をマスクとしてエッチングを行い、例えば0.5μm以上2.5μm以下程度の深さでコンタクトトレンチ8を形成する。これにより、コンタクトトレンチ8とテーパートレンチ23との間に、第1メサ部44が形成される。コンタクトトレンチ8の側壁8bの基板おもて面に対する角度θ1は、例えば71°以上90°以下程度であってもよい(71°≦θ1≦90°)。ここまでの状態が
図7に示されている。
【0044】
次に、コンタクトトレンチ8の形成に用いた同一の酸化膜をマスクとしてp型不純物をイオン注入し、コンタクトトレンチ8の側壁8bに沿った部分に第2p型ベース領域(第1拡散領域)13(13b)を形成する。この第2p型ベース領域13(13b)は、異なるイオン注入条件での複数回のイオン注入(多段イオン注入)により形成してもよい。第2p型ベース領域13(13b)を形成するためのイオン注入において、ドーパント、温度、ドーズ量および加速エネルギーは、JTE構造30のp
-型低濃度領域を形成するためのイオン注入と同じ範囲内であってもよい。注入角度は、基板おもて面に対して例えば11°以上50°以下程度の範囲内であってもよい。そして、コンタクトトレンチ8および第2p型ベース領域13(13b)の形成に用いた酸化膜の残部を除去する。ここまでの状態が
図8に示されている。
【0045】
次に、炭化珪素基体10のおもて面に例えば1.5μm以上2.5μm以下程度の厚さで酸化膜(不図示)を堆積する。次に、この酸化膜をフォトリソグラフィおよびエッチングによりパターニングし、コンタクトトレンチ8の底面8aおよび境界領域43の形成領域に対応する部分を露出させる。次に、酸化膜のパターニングに用いたレジストマスク(不図示)を除去した後、酸化膜の残部をマスクとしてp型不純物をイオン注入する。これにより、コンタクトトレンチ8の底面8aおよび境界領域43における基板おもて面に、それぞれ第2p型ベース領域(第2拡散領域)13(13a,13c)が形成される。第2p型ベース領域13(13a,13c)は、多段イオン注入により形成してもよい。
【0046】
この第2p型ベース領域13(13a,13c)を形成するためのイオン注入において、ドーパント、温度、加速エネルギーおよび注入角度は、JTE構造30のp
-型低濃度領域を形成するためのイオン注入と同じ範囲内であってもよい。ドーズは、1.0×10
13/cm
2以上1.0×10
15/cm
2以下程度の範囲内であってもよい。ここまでの工程により、活性領域41の外周においてコンタクトトレンチ8の側壁8bから境界領域43に延在し、かつ第1p型ベース領域3およびJTE構造30に接する第2p型ベース領域13が形成される。そして、第2p型ベース領域13(13a,13c)の形成に用いた酸化膜の残部を除去する。ここまでの状態が
図9に示されている。
【0047】
次に、一般的な方法により、活性領域41に第1p型ベース領域3、n
+型ソース領域4(
図1参照)やp
+型コンタクト領域(不図示)を形成する。これら活性領域41の形成は、エッジ終端領域42および境界領域43の形成前であってもよい。第1p型ベース領域3は、厚さと不純物濃度に応じて多段イオン注入又はエピタキシャル成長により形成することができる。次に、例えば炭化珪素基体10のおもて面を熱酸化して、ゲート絶縁膜6(
図1参照)を形成する。次に、炭化珪素基体10のおもて面に層間絶縁膜9およびフィールド酸化膜14となる絶縁層を例えば0.1μm以上5.0μm以下程度の厚さで堆積(形成)する。次に、この絶縁層上に、ゲート電極7およびゲートランナー20となるポリシリコン層を0.1μm以上1.0μm以下程度の厚さで堆積(形成)する。次に、フォトリソグラフィおよびエッチングによりポリシリコン層をパターニングし、ゲートトレンチ5の内部にゲート電極7となるポリシリコン層を残すとともに、第2メサ部45にゲートランナー20となるポリシリコン層21を残す。
【0048】
次に、ポリシリコン層のパターニングに用いたレジストマスク(不図示)を除去した後、絶縁層(層間絶縁膜9およびフィールド酸化膜14)およびゲート絶縁膜6をフォトリソグラフィおよびエッチングによりパターニングし、コンタクトホール9aを形成する。このとき、コンタクトホール9aにn
+型ソース領域4およびp
+型コンタクト領域(不図示)を露出させるとともに、コンタクトトレンチ8の底面8aおよび側壁8bの第2p型ベース領域13(13a,13b)も露出させる。次に、絶縁層およびゲート絶縁膜6のパターニングに用いたレジストマスク(不図示)を除去した後、ソース電極11およびゲートランナー20となる例えばアルミニウム層を1.0μm以上10.0μm以下程度の厚さで堆積(形成)する。
【0049】
フォトリソグラフィおよびエッチングによりアルミニウム層をパターニングし、活性領域41にソース電極11となるアルミニウム層を残すとともに、第2メサ部45にゲートランナー20の金属層22となるアルミニウム層を残す。次に、ソース電極11およびゲート絶縁膜6のパターニングに用いたレジストマスク(不図示)を除去した後、炭化珪素基体10の裏面(n
+型炭化珪素基板1の裏面)にドレイン電極12を形成する。その後、半導体ウエハをチップ状にダイシング(切断)して個片化することで、
図1,2に示すトレンチゲート型SiC−MOSFETが完成する。
【0050】
上述した実施の形態にかかる半導体装置の製造方法により作製されたトレンチゲート型SiC−MOSFETの平面レイアウトについて説明する。
図11〜13は、実施の形態にかかる半導体装置の平面レイアウトの一例を示す平面図である。
図11に示すように、活性領域41は、略矩形状の平面レイアウトに配置される。ソースパッド(Source Pad)となるソース電極11は、活性領域41のほぼ全面を覆う略矩形状の平面レイアウトに配置される。テーパートレンチ23は、ソース電極11の周囲を囲む同心円状の平面レイアウトに配置される。第2メサ部45は、テーパートレンチ23の周囲を囲む同心円状とゲートパッド(Gate Pad)15の周囲を囲む同心円状の平面レイアウトに配置される。段差40は、第2メサ部45の周囲を囲む略矩形状の平面レイアウトに配置されている。
【0051】
図12に示す実施の形態にかかる半導体装置の平面レイアウトが
図11に示す実施の形態にかかる半導体装置の平面レイアウトと異なる点は、活性領域41の一部を略凹状の平面レイアウトに配置した点である。この場合、テーパートレンチ23の一部を、活性領域41の凹状部41aが内部に突出する凸状の平面レイアウトに配置し、この凸状部にゲートパッド15を配置し、ゲートパッド15の周囲を囲むようにテーパートレンチ23を配置する。
【0052】
図13に示す実施の形態にかかる半導体装置の平面レイアウトが
図11に示す実施の形態にかかる半導体装置の平面レイアウトと異なる点は、活性領域41に例えば略矩形状の平面レイアウトに無効領域61を設け、この無効領域61にゲートパッド15を配置した点である。この場合、活性領域41における有効領域62と無効領域61との間の境界領域63に、無効領域61の周囲を囲む略矩形枠状の平面レイアウトに第2テーパートレンチ46(23)が配置される。無効領域61とは単位セルを配置しない領域であり、有効領域62とは単位セルを配置する領域である。
【0053】
図13には図示省略するが、第2テーパートレンチ46(23)は隣り合う第1メサ部と第2メサ部間に形成される。この第2テーパートレンチ46(23)の構成は、活性領域41とエッジ終端領域42との間の境界領域43のテーパートレンチ23と同様である。第2テーパートレンチ46(23)により、活性領域41の有効領域62の内周において、第2p型ベース領域13の、コンタクトトレンチ8の底面コーナー部8cに沿った曲率の大きい部分13dへの電界集中が緩和される。
【0054】
また、
図11〜13には図示省略するが、ゲートパッド15には、活性領域41に配置された図示省略するすべてのゲート電極7(
図1参照)、および、第2メサ部45に配置されたゲートランナー20(
図2参照)が電気的に接続される。
【0055】
以上、説明したように、実施の形態によれば、境界領域に配置したテーパートレンチにより、活性領域の外周におけるコンタクトトレンチへの電界集中を緩和することができる。このため、電界集中が生じにくいテーパートレンチとエッジ終端領域との間にゲートランナーを配置することで耐圧低下を防止することができる。
【0056】
以上において本発明は種々変更可能であり、上述した各実施の形態において、例えば各部の寸法や不純物濃度等は要求される仕様等に応じて種々設定される。また、上述した製造工程フローは一例であり、各部を形成する順番は種々変更可能である。例えば、コンタクトトレンチ、テーパートレンチ、段差を形成する順番をそれぞれ入れ換え可能である。また、第2p型ベース領域のうち、コンタクトトレンチの側壁に沿った部分と、この部分以外の部分と、JTE構造と、を形成する順番を入れ換え可能である。また、上述した実施の形態では、MOSFETを例に説明しているが、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor:絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)などのMOS型半導体装置にも本発明を適用可能である。また、活性領域とエッジ終端領域との間に境界領域を設けることで、活性領域のトレンチ(溝)底面コーナー部付近に電界が集中してしまう様々な構成の半導体装置に本発明を適用可能である。また、各実施の形態では第1導電型をn型とし、第2導電型をp型としたが、本発明は第1導電型をp型とし、第2導電型をn型としても同様に成り立つ。